-
621 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/09/08(土) 23:38:43 ID:zQrr6gCIO
-
出会ってからほんの数ヶ月程度の間に、私は先生に散々振り回されてきた。
語っていない怪談はまだまだある。
他の話に比べると些細な怪現象ばかりだから、話しはしない。
今まで私が語ってきたのは、特に印象に残ったものを選んでいただけだ。
そんな怪談も、今夜で最後。
今夜で終わり。
どうか、暇潰しにでも聞いてほしい。
私と先生の──
最終夜『怪奇夜話』
.
-
622 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/09/08(土) 23:39:51 ID:zQrr6gCIO
-
旧Mトンネルの件から一ヶ月。
私は先生と会うこともなく、平穏な日々を過ごしていた。
平穏とはいっても、要するに何事もなかっただけであって、
私の胸中は先生に対する不安で度々荒れていたのだけれど。
もしも街中で会うことがあれば、心霊スポットに行くのをやめさせよう、と思っていた。
なのに、これまでの「ばったり」はどこへやら、とんと先生を見なくなった。
無事でいるんだろうか。
そう思いながら居間でぼんやりとテレビを眺めていた私に、母が慌てた様子で声をかけてきた。
J(;'ー`)し「ペニサス、ちょっと……」
母は手に持った新聞を私に渡した。
その中の、小さな記事を指差す。
それに目を通した途端、私の頭の中が一気に痺れた。
母が何かを言っていたが耳に入らなかい。
機械的に、私の目が文字を追っていく。
-
623 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/09/08(土) 23:40:46 ID:zQrr6gCIO
-
大学教授が失踪したという記事。
そこに載っている写真も、盛岡デミタスという名前も、間違いなく先生のものだった。
10日ほど前から連絡がつかなくなり、
暮らしているマンションにも帰ってきた形跡がないそうだ。
旅行に行くとか、そういった話は誰も聞いていない。
先生は独り身だし、ご両親も既に亡くなっているので、彼のプライベートを詳しく知る者がいなかった。
現在、警察が行方を調べている──
新聞に記された情報は、それだけ。
その僅かな情報さえ、理解するのに時間が掛かった。
理解しても、それでも尚、何も分からなかった。
*****
-
624 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/09/08(土) 23:42:58 ID:zQrr6gCIO
-
冷静な思考と混乱の極みを何度も往復し続け、耐えきれなくなった私は、
数日後の夕方、先生のことを全て弟に話した。
先生の趣味や、心霊スポットに何度も連れていかれたこと、彼が失踪したこと。全部。
なぜ弟に話したのかといえば、家族の中だと
こいつが一番こういう話を真剣に聞いてくれるからだった。
小さい頃、おばけがいると周囲に訴えては「嘘つきめ」と泣かされてきた貞子ちゃん。
そんな幼馴染みを庇い続けて育ったためか、弟は、基本的に怪談の類は何でも信じる。
今回も例に漏れず私の話を聞いてくれた弟は、首を捻りながら携帯電話を取り出した。
爪'ー`)「正直、俺よりも貞子に聞いてもらった方がいいと思うぞ」
言われてみれば、なるほど、それもそうか。
弟は貞子ちゃんにメールを送ると、私を連れ、貞子ちゃんの家に向かった。
弟に話している間も、貞子ちゃんの家へ歩いている間も、
どこか、ぼんやりとした靄に脳内を占められているような心持ちだった。
それほど先生の失踪にショックを受けていたのだと思うと、ちょっと笑えた。
.
-
625 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/09/08(土) 23:45:08 ID:zQrr6gCIO
-
川д川「……まず私は、お姉さんが
そんな馬鹿なことを何度も繰り返していたことに驚いてます」
貞子ちゃんの自室にて。
全て聞き終えた貞子ちゃんの第一声は、それだった。
貞子ちゃんは、先生とは何もかもが正反対だ。
たとえば、霊感がばりばりあるとか。
それなりに幽霊には慣れているけど、怖いものは怖いとか。
幽霊を下手に刺激するのを絶対に嫌がるとか。
本当に真逆。
「向こうから勝手に近付いてくるのはどうしようもないけれど、
こっちからわざわざ近付いていくのは愚行にも程がある」という考えの持ち主なので、
先生の趣味である心霊スポット巡りなんて、彼女からすれば軽蔑に値するものだろう。
-
626 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/09/08(土) 23:47:46 ID:zQrr6gCIO
-
川д川「心霊スポットに行くことがどんなに危険か、私、何度も話したじゃないですか……」
('、`;川「いや、そりゃ、私も重々承知してたよ。
でも何か……気付いたら言い包められてて」
私だって行きたくて行っていたわけじゃない。
弱々しい反論をすると、貞子ちゃんは溜め息をついた。
結構怒ってる。恐い。
爪'ー`)「道理で最近、ド深夜まで出掛けてたり朝帰りが増えたりしたわけだなあ」
炭酸ジュースを飲みながら、弟が言った。
いつにも増して呑気な声。
その声で貞子ちゃんの雰囲気が和らいだ隙に、私は訊ねた。
('、`*川「今まで霊感と無縁だった人が、急に目覚めることってあるの?」
川д川「……それは、あるんじゃないでしょうか」
私もたまに、びっくりするくらい霊感の無い人を見かけることはあります。
貞子ちゃんは、そう言葉を続けた。
-
627 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/09/08(土) 23:50:44 ID:zQrr6gCIO
-
川д川「そもそも人って、大なり小なり、そういう……霊感っていうのは持ってるもので。
その感覚が生まれつき強い人もいれば弱い人もいて、
中には、全く機能してない人もいるんです」
機能していない。
それはたとえば、生まれつき目が見えないとか耳が聞こえないとか、
そういうことと同じようなものらしい。
先生は、その、「霊感が全く機能してない人」なのだろうと貞子ちゃんは言った。
川д川「でも最近って、医学や技術の進歩のおかげで、
盲目の人の目が見えるようになったり、聞こえなかった耳が聞こえるようになったりするじゃないですか」
川д川「つまり生まれつき機能してないからって、絶対に一生そのまま、ってわけじゃないんです。
何かのきっかけで、ぱっと感覚が開くことは充分に有り得ることです」
('、`*川「霊感も?」
川д川「多分。……私だって何でも分かるわけじゃないから、話半分程度に聞いてくださいね?」
貞子ちゃんはその体質ゆえ、幼い頃には、しょっちゅう神社だの寺だのに連れていかれていた。
そこで「専門家」達から色々聞かされてきたというのだから、
説得力は、なかなかある。
-
629 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/09/08(土) 23:53:01 ID:zQrr6gCIO
-
川д川「お姉さんはその『先生』と出会ってから、よく幽霊を見るようになったんですよね。
きっとお姉さんの場合は、『先生』と出会ったことで、人並みだった霊感が
一気に強まってしまったんじゃないでしょうか」
('、`;川「先生のせい? 何で?」
川д川「ええと、その……ゼロって書いて零感でしたっけ」
('、`;川「うん……ネットで見た言葉だけど」
川д川「『先生』みたいに極端な零感の場合、幽霊からの干渉をほとんど受けないんです。
見えない聞こえない触れない……全部スルーしちゃうんですね」
川д川「だから、『先生』に何かしようにも何も出来ないから、
『先生』よりは感受性のあるお姉さんの方にみんな行っちゃうわけです」
爪'ー`)「要するにあれか、とばっちりか」
やっぱりあのジジイ、ろくなもんじゃない。
ささやかな殺意を覚えた私だったが、貞子ちゃんの話を反芻して、
あることに気付いてしまった。
零感だったからこそ、先生は幽霊からのアプローチを全て無視してこれたのだという。
なら──幽霊の声が聞こえるようになった先生は。
零感でなくなってしまった先生は、どうなるのだろう?
-
630 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/09/08(土) 23:55:54 ID:zQrr6gCIO
-
もしもそんな状態で、凶悪な霊がいるような場所に赴いたら──
('、`;川「……先生、何かに祟られたのかしら」
ほぼ無意識に漏れた呟き。
貞子ちゃんは、かくりと首を傾げた。
川д川「人為的な事件の可能性だって充分ありますし……というかその可能性の方が高いだろうし、
ともかく、警察に任せる以外に出来ることはないと思いますよ。
何でもかんでもオカルトに結びつけるのは良くありません」
言外に、下手な考えで行動するなと釘を刺されたようだった。
分かっている。
貞子ちゃんのように、積極的に関わらないようにするのが賢明なのは、分かっている。
それでも。
*****
-
631 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/09/08(土) 23:59:26 ID:zQrr6gCIO
-
翌日、私はVIP大学へ赴いた。
来てなかったらどうしようと思っていたものの、しばらく正門で待っていると、
運良くミルナさんを捕まえることが出来た。
驚くミルナさんに、先生の件について何か知らないかと詰め寄る。
かなり渋っていたが、しつこく食い下がると、ようやく教えてくれた。
( ゚д゚ )「……とりあえず、俺が知ってることだけ話す」
ある日、先生が大学に来なかった。
学生や教授達が先生の携帯電話と自宅の番号に掛けても、繋がらなかったという。
そういう状態が何日か続いてから、警察に届けたそうだ。
私は先生の携帯電話の番号すら知らないことに気付いた。
日頃、互いに連絡を取り合う必要がなかったし、
私が先生に言うことがある場合は、VIP大学の事務室に電話を掛けて取り次いでもらっていたから。
思えば変な関係だ。
泊まり込みで心霊スポットに行く程度には気を許しているけれど、
お互いに把握し合えているのは、職場と名前、あとは些末なことくらい。
-
633 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/09/09(日) 00:01:06 ID:YWhnb/9EO
-
( ゚д゚ )「……先生がオカルト好きだったのは学生の間でも有名だった。
学内じゃ、変な祟りにでも触れたんじゃないかって噂が流れてる。
ここ最近、先生は目に見えて疲れきってたし」
あの日の、ひどく眠たそうな先生を思い浮かべる。
やはり学生からしても異常だったのか。
そのことを警察は知っているのかと問うと、ミルナさんは頷いた。
そんな話、警察は歯牙にもかけなかったみたいだけれど。
たしかに、まともな思考の持ち主なら、馬鹿らしいと言って一笑に付すような話だ。
寧ろ先生のオカルト趣味を知られたことで、
奇人が行方をくらませただけだと認定されてしまったのではないだろうか。
先生が子供じゃないのもネックだ。
大人の失踪となると、警察の方もあまり熱心に探すことはない(らしい)。
ミステリーみたいに、たとえば、先生の車から血痕でも発見されれば別だろうけども。
-
634 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/09/09(日) 00:04:56 ID:YWhnb/9EO
-
('、`*川「……そういえば、先生の車は?」
( ゚д゚ )「マンションの駐車場にあったそうだ。
……せめて車で移動してくれてりゃ、それを手掛かりにして先生を探せただろうにな」
どうしようもないのだという響きが、ミルナさんの声に滲んでいた。
私もミルナさんも口を閉じて、場には沈黙が降りた。
彼の瞳を見つめる。
まだ何か言いたげだ。
根気強く待っていると、やがて、ミルナさんが鞄からファイルを出した。
そこから、小さなメモ用紙を抜き取る。
( ゚д゚ )「……先生のパソコンに、ある町を調べた履歴が残ってたらしい」
('、`*川「町?」
( ゚д゚ )「他県にある町だ。
警察がそこを調べても、有力な情報は得られなかったそうだけど」
手渡されたメモ用紙には、隣の県名と、馴染みのない町名が書かれていた。
ここについて何か聞いていないか、と警察官に問われたときに
ミルナさんがこっそりメモをとったのだという。
-
636 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/09/09(日) 00:07:03 ID:YWhnb/9EO
-
( ゚д゚ )「めちゃくちゃ怪しいよな?
だから、俺たち盛岡ゼミのメンバーで、この町について調べてみた。
そしたら──いくつか、心霊スポットがあるのが分かったんだ」
('、`*川「……」
私の脳裏に、先生の姿が浮かぶ。
新幹線か電車にでも乗って、遠くにあるその町に行って、近くにいた人に声をかけて。
それから──私の頭の中で、先生は黒い手に引っ張られて、闇に消える。
いつもの先生なら、そんな手に気付きすらしないだろう。
けれど私が最後に見た先生は、どんなに小さな手にも引かれそうな、そんな頼りなさがあった。
( ゚д゚ )「それが分かった途端、みんな『絶対ここに行ったんだ』って盛り上がってさ。
1人が張り切っちゃって、3日くらい前だったかな……実際に行ってきたんだと」
それはまた、なかなか行動力のある。
私が興味深く聞いていると、ミルナさんは首を振り、肩を竦めた。
-
637 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/09/09(日) 00:09:07 ID:YWhnb/9EO
-
( ゚д゚ )「でも、心霊スポットを一通り見てきたけど、何も分からなかったってさ」
まあ、それで見付かるようだったら、警察が既に発見しているか。
私は改めてメモ用紙を見下ろし、少しして、ふと顔を上げた。
ミルナさんと視線が絡んだ。
( ゚д゚ )「……俺は進んで関わる気はないよ。正直に言うと怖いし。
でも伊藤さんがどうするかは自分で決めればいい」
言いながら、ミルナさんの顔が何だか情けない色合いになっていて、
私は少し笑ってしまった。
私に教えて良かったのかどうか、未だに悩んでいるように見えた。
('、`*川「……うん、ありがとうございます」
( ゚д゚ )「無茶はするなよ。何があるか分かんないんだから」
メモ用紙を財布にしまい、ミルナさんに何度もお礼を言った。
これからどうするかという具体的な考えはなかったけれど、重要な一歩に思えた。
*****
-
638 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/09/09(日) 00:12:21 ID:YWhnb/9EO
-
('、`*川「というわけで、そこに行ってきます」
帰宅後、弟と兄に宣言した。
誰にも何も言わずに行くつもりだったけど、「万が一」ということもあるし、
家族の1人くらいには話しておいた方がいいと思ったからだ。
じゃあ誰に話すかと考えたとき、選択肢から真っ先に両親が消え、この2人が残ったのである。
兄弟姉妹と仲のいい人なら分かってくれるだろうか。
こういうときに腹を割って話せるのは、両親ではなく、きょうだいなのだ。
2人は顔を見合わせていた。
先に口を開いたのは兄。
彼にはつい数分前に一から説明したばかりなので、まだ微妙に困惑しているようだった。
('A`)「その町に行って、具体的に何すんだ?」
('、`*川「心霊スポット全部見てくる」
バイトの休みはもらっている。
明日一日、心霊スポット探索に費やすつもりだ。
兄はペットボトルを開けて緑茶を一口飲み、再び弟と共に互いを見交わした。
今度は、弟が言葉を落とした。
-
639 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/09/09(日) 00:13:14 ID:YWhnb/9EO
-
爪'ー`)「なに使って行くんだよ」
('、`*川「まず新幹線で行って……後はバスとかタクシーで回るつもりだけど」
爪'ー`)「なら、兄貴が車で連れてってやった方がいいんじゃね?」
あっけらかんと言い放つ。
ちょっと、びっくりした。
弟は、オカルト関係においては貞子ちゃんに絶対の信頼を寄せている。
だから貞子ちゃんみたいに「行くな」と言うだろうと思っていたのに。
(そして無視してやろうと思っていたのに)
('、`;川「え?」
('A`)「そうだな、そうすっか」
('、`;川「え? え?」
爪'ー`)「明日って土曜だよな? 俺も行くわ」
('、`;川「ふぉっく、え、は? 何で?」
予想外だった。
2人が乗り気すぎて、逆に私が引いたくらいには。
-
641 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/09/09(日) 00:15:08 ID:YWhnb/9EO
-
('A`)「新幹線だのタクシーだの使ってたら金かかるだろうし」
爪'ー`)「1人で行かせるのも心配だし?」
言葉を失う私を見て、弟がけらけら笑う。
口開いてる、と顔を指差され、私は口を押さえた。
('、`;川「止めないの?」
爪'ー`)「止める意味あんの?」
('、`;川「……。先生が見付からないまま無駄足になる確率だって高いわよ」
爪'ー`)「まあ俺らはドライブ感覚で行かせてもらうわ。『先生』っての知らねえし」
('、`;川「私、オカルトを前提にしてるのよ。馬鹿馬鹿しいと思わない?」
兄が、ペットボトルの蓋を私の額に向けて弾いた。
真っ直ぐ飛んできた蓋が見事に命中する。
-
642 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/09/09(日) 00:17:27 ID:YWhnb/9EO
-
(>、<;川「痛っ」
('A`)「だって、お前が『先生』を探すとしたら、その線から攻めるしかないんだろ?」
('、`;川「……うん」
('A`)「じゃあ、それでいいだろ」
2人は、ああだこうだ言いながら携帯電話で地図を調べ出した。
それを眺めつつ、私は額を撫でる。
いい兄弟を持ったものだ。
*****
-
644 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/09/09(日) 00:19:25 ID:YWhnb/9EO
-
次の日の朝、兄の車で出発した。
両親には兄弟3人でドライブに行くと伝えておいた。
そんなに間違っていない。
爪'ー`)「何か買ってこうぜ」
途中、弟が空腹を訴えたのでコンビニに寄った。
おにぎりや惣菜、飲み物を買う。
何とはなしに、「あれ」も買っておいた。
.
-
645 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/09/09(日) 00:20:11 ID:YWhnb/9EO
-
3時間もすると県境を越えた。
目的の町には、そこから数十分ほどで到着する。
私は、昨日ミルナさんが別れ際に書いてくれた「心霊スポットリスト」と携帯電話を使って、
一番近いところから行くことにした。
初めは廃ビル。
真っ昼間といえど、人気の少ない場所にぽつんと立つビルの中を、弟と2人で歩くのは怖かった。
静かだし薄暗いし。あと、侵入したのが誰かにバレたらどうしようという恐怖も少々。
次にゲームセンター、その次は大きめの公園。
全くもって不慣れな土地なので、一つ一つの移動にかなり時間が掛かってしまった。
成果の方はといえばゼロだ。
幽霊が出ることもなければ、先生が来た痕跡も見当たらない。
ゲームセンターの店員や公園の管理人に訊いてみたが、先生らしい人は見ていないという。
覚悟はしていた。期待はしていなかった。
それでもやっぱり残念だった。
-
646 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/09/09(日) 00:23:16 ID:YWhnb/9EO
-
('、`*川「──教えてもらった場所は次で最後だわ」
公園を出て、私と兄は車に乗り込んだ。
後部座席で待機していた弟が携帯電話を閉じた。
その動作が少し慌てていたように見えたが、無視しておく。
シートベルトを絞めながら、兄が言った。
('A`)「時間からしても、これで終わりにしねえとな」
夕方が近付いていた。
丑三つ時だけでなく、夕方の「たそがれ時」と夜明け前の「かわたれ時」も、幽霊が好む時間なのだと
私に教えてくれたのは、貞子ちゃんだったか先生だったか。
そろそろ、たそがれ時。
幽霊なんて何時だろうと出てくるときは出てくるのだけれど。
そうは言っても、夕方の独特な雰囲気は、それと分からぬ程度に「恐れ」を擽ってくる。
-
648 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/09/09(日) 00:25:04 ID:YWhnb/9EO
-
爪'ー`)「その最後の心霊スポットって、どういう場所だよ」
('、`*川「ん。ちょっと待ってね」
携帯電話を取り出し、昨日の内にブックマークに入れておいたオカルトサイトを開いた。
この県内の心霊スポット情報を集めたサイトで、
大雑把な道順まで記されている。
('、`*川「……昔、無理心中があった家だって。
両親と子供、みんな死んじゃったらしいわ」
いつぞやの、心霊写真の話を思い出す。
あちらは第三者により家族全員が殺されたらしいが、
こっちは本人達(子供がどうだったかは知らないけれど)の意志による自殺だ。
爪'ー`)「家って、もう誰も住んでねえの? 中に入る気か?」
('、`*川「空き家みたいだけど……正直、ご近所さん達に見られないように入るのは難しいかも」
-
649 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/09/09(日) 00:25:53 ID:YWhnb/9EO
-
('A`)「とにかく行ってみるしかねえだろ。どう行きゃいいんだ?」
('、`*川「あ、えっとね、まず──」
オカルトサイトが示す道筋は、ある小学校を出発点にしていた。
その学校の名前を、兄がカーナビに入力する。
今まで訪ねた3つの心霊スポットと違い、
これから目指すのは、民家が並ぶ地域の中の、たった一軒だ。
暗くなる前に辿り着けるだろうか。
ひとまずは、小学校を目指す。
-
650 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/09/09(日) 00:27:26 ID:YWhnb/9EO
-
爪'ー`)「……なあ」
不意に、弟が口を開いた。
振り返る。弟は自分の携帯電話に目を落としていて、私のことは見ていなかった。
爪'ー`)「何で姉貴はここまでして、その『先生』を見付けようとしてんだよ」
('、`*川「何でって」
爪'ー`)「大学のゼミ生が探しに行ったって話は、まだ分かるよ。
何年かの付き合いがあるだろうからさ」
爪'ー`)「でも姉貴は、ここ数ヶ月程度の関係なんだろ?
相手の家も電話番号も出身地も知らないし」
──それは。
別に。複雑な理由があるわけじゃないけど。でも。
弟は携帯電話から視線を外し、答えあぐねる私を見た。
しばらく口ごもった後、私は逆に質問を返した。
-
651 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/09/09(日) 00:28:23 ID:YWhnb/9EO
-
('、`;川「どうして急にそんなこと訊くのよ」
爪'ー`)「だって貞子が、」
弟は口を滑らした。
本当に「ついうっかり」といった感じで、この馬鹿は、あ、と声を漏らしていた。
('、`*川「……貞子ちゃん?」
爪;'ー`)「あー」
そこで私は、先程、車に乗ったときに弟が携帯電話を閉じていたのを思い出した。
あの慌てたような仕草。今の発言。
黙って運転していた兄も、私と同じ結論に至ったらしかった。
('A`)「お前、貞子ちゃんにバラしたろ」
爪;'ー`)「うあー」
-
652 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/09/09(日) 00:29:31 ID:YWhnb/9EO
-
('、`;川「あんたねえ、後で怒られたらどうすんの!
あの子本気で怒ると恐いのよ! あんたが一番よく知ってるでしょうが!」
爪;'ー`)「でも、だって、なあ?
何か不安だったんだよ。姉貴が『先生』に憑かれてんじゃねえかと思って、」
弟はまた、「しまった」みたいな顔をした。
右手で口を隠している。
('、`*川「……何それ」
爪;'ー`)「や。あの」
沈黙。
じっと睨みつける私に、弟が折れた。
爪;'ー`)「……どっか、人目につかないような場所で死んじまってたりして……。
それで姉貴のことを自分の方に呼び寄せようとしてるんじゃ、ないか、な、って、……」
弟も私も、怖い話をよく貞子ちゃんから聞いているし、ホラー映画も嫌いじゃない。
だから、そういう考えが浮かんだのだろう。
あまりよろしくない発想だけど。
-
653 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/09/09(日) 00:30:53 ID:YWhnb/9EO
-
爪;'ー`)「いや、死んだって決めつけてるわけじゃねえよ? もしも、だ。もしも。
……そんで貞子に訊いてみたんだ。そういうこと有り得んのかって」
爪;'ー`)「そしたら──貞子は、『先生』がよっぽど姉貴に会いたがってるようなら、
有り得なくもないって言ってた」
先生がどこかで亡くなっているかも、という考えは、私の頭にも、うっすらとあった。
でも仮にそうだとして──仮にでも考えたくはないけど──果たして先生は、私を呼ぶだろうか?
それは絶対にない。と思う。
先生にとって私は、さほど重要な存在ではない筈だ。
卑屈になっているわけではなく、そういうものなのだと割りきっているだけ。
('、`*川「……先生なら有り得ないわ。
あの人は私に会いたがったりしない」
弟の頭を軽く叩いておく。
それから車内は静まり返り、気まずい空気が流れた。
*****
-
654 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/09/09(日) 00:32:46 ID:YWhnb/9EO
-
四苦八苦しつつ、何とか、件の家があるであろう住宅街にやって来た。
空が赤い。夕方。たそがれ。
道が入り組んでいるし、似たような造りの家が多いため、初めて来る人は注意──と
オカルトサイトに書いてあったので、歩いて探すことにした。
車でのろのろうろうろしていたら、ご近所さんに怪しまれるのではないかと考えたから。
('A`)「暗くなる前に戻ってこいよ」
近くにあったコンビニの駐車場に車を停め、兄は私に言った。
私は鞄を持ち、頷いて答える。
兄を残して、私と弟は車を降りた。
-
655 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/09/09(日) 00:34:01 ID:YWhnb/9EO
-
爪'ー`)「……家、入んの?」
('、`*川「入れそうならね」
立ち並ぶ家々とサイトを確認しながら進む。
私が前を歩き、弟が数歩後ろを追う形だ。
歩き始めて3分ほど。
サイトの大雑把な説明では、すぐに迷ってしまった。
('、`;川(面倒くさー)
心中で愚痴る。
本当に面倒臭い。
買い物帰りらしい女性が通りかかる。
思いきって道案内してもらおうか。
いや駄目か。
('、`;川「ねえフォックス」
弟の名を呼び、振り返る。
いない。
-
657 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/09/09(日) 00:35:07 ID:YWhnb/9EO
-
('、`;川「……おう? フォックスー?」
名前を呼びながら辺りを見渡しても、弟の気配すらない。
そういえば家を探すのに必死で、ろくに弟と話していなかった。
はぐれてしまったようだ。
はて、どうしよう。
──そのとき、服の裾を引っ張られた。
('、`;川「ほわっ!?」
悲鳴が漏れる。
危うく転びかけたほど跳ね上がった。
胸を押さえながら後ろを見れば、そこにいるのは、5歳にはなろうかという小さな女の子。
-
658 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/09/09(日) 00:36:05 ID:YWhnb/9EO
-
ξ゚听)ξ
私のリアクションに驚いたらしく、目を丸くさせていた。
互いに言葉を発しないまま、見つめ合う。
やがて──女の子が、泣いた。
ξ;;)ξ
('、`;川「ええっ!?」
あんまりにも唐突に泣くから、理由も何も分からない。
とりあえず彼女の前でしゃがみ、私は女の子の肩や手に触れた。
('、`;川「どうしたの? 何? どこか痛い?」
ξ;;)ξ
女の子が首を横に振る。
必死にあれこれ声をかけるも、言葉による答えは返ってこない。
鞄からコンビニで買ったチョコレート菓子を出し、一欠片、女の子の唇に当てる。
女の子は感触を確かめるように唇を動かし、それからお菓子を口に入れた。
-
659 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/09/09(日) 00:38:56 ID:YWhnb/9EO
-
ξ*; -;)ξ
少しは落ち着いたらしい。涙が途切れてきた。
ポケットティッシュで鼻水を拭ってやる。
('、`*川「……どうしよっか」
参った。
私は、女の子を抱え上げた。
ぽんぽんと背中を叩くと、彼女は私に縋りつき、私の肩に顔を埋めた。
温かさとか冷たさとか、そういう人間らしい温度を感じられない手。
綿が入ったぬいぐるみみたいな、異常な軽さ。
この子、生きてない。
心底参った。
-
660 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/09/09(日) 00:40:05 ID:YWhnb/9EO
-
('、`*川「どこの家の子?」
ξ; -;)ξ
また首を横に振られた。
答える気はないってことか。
('、`*川「じゃあ、君は誰なのかねえ……」
たそがれ。誰そ彼。
「誰ですかあなたは」。なんて。
('、`*川「……どこ行ったらいいかな」
ひどく弱々しい感じがするから私もそこそこ冷静に対応しているけれど、
実際は、結構怖かった。
んく、と、女の子の喉が鳴る。
多分お菓子を飲み込んだ音。
途端に女の子は、私の肩を叩き始めた。
-
661 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/09/09(日) 00:42:09 ID:YWhnb/9EO
-
('、`;川「痛っ、痛いよ、何?」
ξ;;)ξ「やあ、やだ、やああ……」
やっと声を出した。
けど、何かを嫌がるような声をあげるだけで、彼女の意図はさっぱり理解出来ない。
また泣き出したし、どうしろっつうんだ。これ。
もう一口お菓子をあげればいいかなと鞄を探ろうとしたところへ、別の声がした。
(;^ω^)「ツン!」
('、`;川「ひうっ」
数メートル先の角を曲がり、中学生くらいの男の子が走ってきた。
真っ直ぐ私の前まで来て、彼は再び「ツン」と言った。
視線は女の子に向いている。この子の名前か。
男の子は、女の子と私を交互に見遣り、私に一礼した。
-
662 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/09/09(日) 00:44:08 ID:YWhnb/9EO
-
(;^ω^)「ごめんなさいお、うちの妹が」
('、`;川「え。妹さん。あ、え……」
当たり前みたいに女の子の名前を呼んで、当たり前みたいに私に謝る姿に、
混乱というか困惑が深まっていく。
女の子は恐らく幽霊だ。
そんな子に普通に声をかけ、妹だと言う少年は何者だろう。
男の子が手を伸ばしてきたので、私は女の子を彼に渡そうとした。
しかし、女の子は私にしがみついて離さない。
(;^ω^)「こら、ツン!」
ξ;;)ξ
(;^ω^)「あんまり迷惑かけるんじゃないお!」
('、`;川(何なのよう……)
男の子が叱りつけると、女の子の手から力が抜けた。
私から男の子へ、女の子は移動する。
その際、触れ合った男の子の手に温度がなくて、彼も生きた人間ではないのだと悟った。
-
663 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/09/09(日) 00:46:21 ID:YWhnb/9EO
-
あまりに淡々としすぎていてなかなか伝わらないと思うが、私は本当に怖くて堪らなかった。
後ろから肩を叩かれようものなら、それだけで腰を抜かしていたであろうくらいには。
彼は女の子を抱えて、もう一度私に頭を下げた。
(;^ω^)「本当にすみませんでしたお。
お姉さんのためにも、その、僕らのことは気にしない方がいいですお」
無茶言うな。
怖かったので、口の中で文句を消化した。
男の子が踵を返す。
そのとき、彼の肩に顔を乗せていた女の子と目があった。
涙を浮かべた目は、私を睨んだ。
敵意が込められた視線。
──私の本能は、「ついていってはいけない」と告げている。
──私の理性は、「何かの手掛かりになるかもしれない」と告げている。
男の子が角を曲がる。
私は駆け出した。
-
665 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/09/09(日) 00:48:15 ID:YWhnb/9EO
-
彼が通ったばかりの角を、私も曲がる。
すると、ずっと向こうの角を曲がっていく男の子の姿が、ちらりと見えた。
距離から考えれば、有り得ないスピードで移動している。
私は彼を追った。
何度も同じことが繰り返される。
やがて、5度目に道を折れた辺りで、私は完全に彼を見失った。
その代わりに見付けたものがあった。
他の家々より僅かばかり離れた場所に立つ、一軒家。
塀に表札が掛かっているが、文字は掠れていて読めない。
恐る恐る覗き込む。
ほんの少し昔の和風な家、という感じの佇まいだった。
狭い庭に縁側。朽ちた縁側は、腰掛けたら壊れてしまいそうだ。
縁側の向こうの障子は所々破けている。
そこから部屋の様子が窺えたが、家具や畳はぼろぼろだ。
-
666 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/09/09(日) 00:50:12 ID:YWhnb/9EO
-
荒れた庭や部屋からして──人は住んでいない。
まさか。
私は玄関に向かっていた。
頭の中で警鐘が鳴る。その音を靄が包む。
玄関の引き戸を開ける。
鍵は掛かっていなかった。
ぎいぎいと耳障りな悲鳴をあげながら、引き戸は滑っていく。
右側に、腰ほどの高さはある靴棚。
その前に散乱しているのは、小さな赤い靴と白いシューズ、サンダルと革靴。
どれも埃をかぶっている。
('、`*川「……お邪魔します」
まことに失礼ながら、靴を履いたまま上がった。
廊下も、埃や雨漏りの跡でいっぱいだった。
-
667 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/09/09(日) 00:51:29 ID:YWhnb/9EO
-
どこかで物音がした。
音の方へ進んでみると、どうやら、さっきの庭から見えた部屋に着いたらしかった。
部屋の隅に置かれたテレビは、最近ではあまり見掛けないような古い型のものだ。
真っ暗な画面。
立ち尽くす私と──隣に、あの女の子が映っている。
視線を横に移すと、女の子がいた。
ξ*゚ー゚)ξ
泣き止んでいる。
それどころか、嬉しそうに笑っていた。
あの敵意も見えない。
女の子が私の手を取る。
廊下を指差した。
もっと奥の部屋に行こう、と言われているように感じた。
廊下には男の子がいて、申し訳なさそうに私を見てから目を逸らしていた。
-
668 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/09/09(日) 00:53:13 ID:YWhnb/9EO
-
怖い。
なのに私は女の子に微笑みかけている。
手を引かれるまま、部屋を出ようとした──その瞬間。
近くにあった箪笥の上から、小さな段ボール箱が落ちてきた。
箱は私の眼前で着地し、盛大な音をたてて中身を吐き出した。
中身は錆びた金槌や釘、金属製の巻き尺で、それらが擦り合う音は、けたたましいと言うより他なかった。
-
669 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/09/09(日) 00:55:42 ID:YWhnb/9EO
-
('、`;川「……びっ……くりした……」
咄嗟に身を捩ったときに、女の子から手を離していた。
足元へ向けていた視線を上げる。
誰もいない。
急に体が冷えた。
恐怖が何倍にも膨らみ、足が震える。
壁に手をつきながら玄関へ行き、外に出た。
携帯電話を取り出す。弟からの着信が数件。
弟に電話を掛け、どこにいるんだと怒る声を聞きながら道を戻る。
それから適当に歩き回っていると、兄の車が停まっているコンビニに出た。
少し遅れて弟もやって来る。
何でも、一緒に家を探している最中、私がどんどん先を歩いていき、
どこかの角を曲がった瞬間に見失ったのだそうだ。
-
670 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/09/09(日) 00:57:26 ID:YWhnb/9EO
-
夜が空を侵食していく。
もう行かないと、日が変わる前に帰れなくなる。
('A`)「で、家は見付けられたか?」
('、`*川「……よく分かんない」
爪;'ー`)「人に散々心配かけさせといて、それかよ……」
車がコンビニの駐車場を出る。
結局先生を見付けられなかった。
ちゃんとした手掛かりすら掴めなかった。
あの家は、ほぼ間違いなく一家心中があった家だ。
あからさまに怪しい。
でも二度と行きたくはない。
けど、もしも先生があそこに行っていたら。
どうしよう。どうしよう。
-
671 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/09/09(日) 00:59:38 ID:YWhnb/9EO
-
('A`)「ペニサス?」
('、`*川「……はい?」
('A`)「大丈夫か?」
どうかしたのか、と弟が後ろから兄に問い掛けた。
兄は、私がずっと足元を見つめているのが気になったと答える。
('、`*川「ん、大丈夫。ちょっと疲れただけ」
('A`)「そっか。……なんだ、ええと……なんつうかな。役に立てなくて悪かった」
('、`*川「……何言ってんの、すごく助かったわよ。兄さんもフォックスもありがとう」
爪'ー`)「やっぱ、警察に任せるしかないんかな」
弟はほっとしているようだった。
「先生が私を呼んでいる」という先生に失礼な疑念を抱いていたらしいから、その反応も頷ける。
弟なりに私を心配してくれていたのだろうし、別に、不満はない。
私は鞄を開けた。
チョコレート菓子は、女の子にあげた一口分、しっかり欠けている。
あの女の子は、たしかに居たのだ。
-
672 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/09/09(日) 01:01:07 ID:YWhnb/9EO
-
そして、
('、`*川(……あ)
朝、コンビニで買った「あれ」が無くなっていた。
どこかで落としたのだろうか。
*****