('A`)人生は選択だ!のようです
第4話



116 名前: ◆tDN4QF.obM[sage] 投稿日:2013/06/19(水) 05:10:25 ID:C73lRth20
【0】

私は素晴らしいおもちゃを手に入れた。

偶然、本当に偶然の事象が起こって、彼はカードを手に入れ、私はついに『選択』出来る。


『人間を生涯死ぬまで5択のみで選ばせ続けたらどうなるのか?』


人間界でいう『ゲーム』のようなそれは、私の心を昂らせ、

心が見えなくて、操作できるということが、私の至福になる。

それでは、『ゲーム』を始めよう。リセットはないが、きっと私を満足させてくれる。

短い間だがよろしく頼むよ、ドクオ君。

117 名前: ◆tDN4QF.obM[sage] 投稿日:2013/06/19(水) 05:11:06 ID:C73lRth20
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        ('A`)人生は選択だ!のようです 第4話



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118 名前: ◆tDN4QF.obM[sage] 投稿日:2013/06/19(水) 05:11:56 ID:C73lRth20
【1】

〜〜天界の酒場〜〜

ザワ
    ザワ

「おい聞いたか?人間の話……」

「聞いた聞いた!ソーサク血戦『不参加』だってな……!」

(;^ω^)「……」


僕がドクオからソーサク血戦の不参加を言われた10日後(天界基準、人間界では約1か月後)、
何故か天界の民衆の間ではドクオの話がじわじわと広がっていた。

もちろん僕はドクオのことなど口にはしなかったし、口を開いたとしてもただ一人にしか話していない。


ξ;゚听)ξ「はぁ、すっかり広まっちゃってるわね……」

(;^ω^)「……」


いま僕の横で不安そうに話しているのが、同じ天使のツン。
先ほど言ったドクオの事はツンにしか話していないし、
彼女が言いふらすような性格じゃないことは80年も前から知っている。

119 名前: ◆tDN4QF.obM[sage] 投稿日:2013/06/19(水) 05:14:01 ID:C73lRth20

(;^ω^)「……おそらく、ドクオのカードの所有者が言いふらしているんだろうね」


ソーサク血戦に『罪人』以外の存在である『人間』が参加することは珍しくはない。
数百回にも及ぶ過去の対戦では10回ほど人間が参加したことがあり、みな優勝している。

原則『罪人』を参加させることが条件なので、いずれも僕のように何かしらのドジを踏み、手違いでカードの契約を成立させた者たちだ。
その『人間』たちはみな一様にソーサク血戦への参加を承諾して、呪いとも言えるカードの選択を解いたという。

だが今回はその真逆。
前例の無い出来事に、天界の民衆はざわついているのだ。

ザワ
   ザワ

「最近人間が参加したのがなんだっけ?中世の剣闘士だよな?」

「そうそう!あの頃はよかったなぁ、最近の『罪人』はヒョロくてかなわない……」


民衆はカードを落とした張本人である僕には一切話しかけてこない。
おそらくこれもドクオの行動を選んでいる本人が、「私が選んだ」と騒いでいるせいだろう。

ツンも一緒に酒場に足を運んだのは、そう騒いだ本人の情報を少しでも得るためだ。


( ^ω^)「ツン、僕は向こうの席を、君はこっちをお願いするお」

ξ゚听)ξ「分かったわ」

120 名前: ◆tDN4QF.obM[sage] 投稿日:2013/06/19(水) 05:14:45 ID:C73lRth20

ツンがテーブル席に聞き込みに行ったのを確認してから、僕はカウンターの席に向かい、客に話しかける。


「何?あぁ、人間の事ならコイツが喋ってたよ」

「え?俺は向こうの奴から聞いたよ?」

「いやぁ、周りの奴らが騒いだのを聞いただけだしなぁ」


が、帰ってくる返答は曖昧なものばっかりで、たどり着けそうな情報は見つからず仕舞い。
一通り聞き終わった僕は、ため息を吐きながらカウンター席に座る。
少ししてからツンが僕の横の席に腰を下ろしたが、いまいち晴れないような顔をしている。


ξ‐凵])ξ「駄目ね、みんな周りからの情報みたい」

( ^ω^)「ツンのところもかお……」


二人で一緒にため息を吐きつつ、とりあえずカクテルを2つ頼む。
瑠璃色のカクテルが置かれてすぐに、僕は一気にグラスを空けた。

121 名前: ◆tDN4QF.obM[sage] 投稿日:2013/06/19(水) 05:15:26 ID:C73lRth20

ξ゚听)ξ「……ねぇ、ブーン」


どうしたらドクオのカードの所持者に会えるのだろう、と悩んでいると、ツンが僕の肩を軽くたたく。


( ^ω^)「なんだお?」

ξ゚听)ξ「今更でなんだけど、なんで人間のために動くわけ?」

( ^ω^)「それは……」

ξ゚听)ξ「やっぱ、負い目を感じてるの?あの時落としてなかったら……なんて」


ツンの言う通り、どこかで負い目を感じているのも確かだった。
僕が急いでなければ、ドクオはあのカードを拾うことなどなかったわけで。
でも僕が一番負い目を感じているのは、その先にあるものだった。


( ^ω^)「でも僕は、もめ事が日常でよく起こるようになって、それを限られた選択で……
      それも下手をすれば犯罪や、最悪死ぬことが起きるような選択を迫られる人生にされるのが嫌なだけだお」

( ^ω^)「それに……彼にも、申し訳が立たないお」


空になったグラスを揺らしながら、
いつかドクオが言っていた『人間』の目線で考えるキッカケを作ってくれた『罪人』と会った時をツンに話す。

122 名前: ◆tDN4QF.obM[sage] 投稿日:2013/06/19(水) 05:16:13 ID:C73lRth20
【2】

〜〜時は少し遡り〜〜


( ^ω^)「……」


僕は不参加を宣言したドクオと別れたその後に、監獄国ソーサクの面会室にいた。

天国にもいくつか国が分かれており、その中で
ソーサク血戦で使われるこの国『ソーサク』は、『罪人』を収容するいくつもの監獄が空中に浮遊している。

その時僕は、もともとソーサク血戦で一緒に戦うはずだった男の元に面会に来ていた。
透明な仕切りで隔たれた白い部屋の扉から見える、暗い空間の向こうから、ゆらりと姿を現す。


(´・ω・`)「……お久しぶり」


『殺人鬼』、ショボン。
彼がまだ『人間』の軍人であった頃に、そう呼ばれていた。
国のためとはいえ、彼が戦争で殺した数は実に600人を超え、そのうちの半数がナイフでの格闘によるものだったという。

そんな彼にも妻がいて、子どもがいた。
戦争が終結したあとに平和に暮らせると思っていた彼は、その命を張った国に危険人物として判断され、
同じような戦績を残した人間を乗せた車に乗せられて、もろとも底が深い崖から落とされ、死んだ。

僕はそんな彼の実力と、彼自身の性格に惚れてソーサク血戦に望むはず、だった。

123 名前: ◆tDN4QF.obM[sage] 投稿日:2013/06/19(水) 05:21:57 ID:C73lRth20

( ^ω^)「……僕の不祥事で、カードを落としてしまったお」

(´・ω・`)「そう……それで、そのカードは見つかったのかい?」

( ^ω^)「見つかったお、だけど、すでに……別の『神様』に使われたお」

(´-ω-`)「……そうか」


ショボンが、悟ったように瞳を閉じる。
ソーサク血戦には参加期間があり、ショボンはその回に参加できない場合、すぐにでも輪廻の輪の中に戻される立場だった。

僕はその時まだ参加する罪人が決まっておらず、時の流れが遅い人間界でツンと一緒に罪人の情報を探していたのだ。
一向に現れない参加者が現れ、僕の心は躍った。と同時に、契約に向かわないとという焦りと、参加応募に間に合うかどうか分からない時間だった。

その結果が、この状況を作っている。


( ^ω^)「……すまないお」

(´・ω・`)「何、君が謝る事なんてないさ」

(´-ω-`)「……ただ、もう一度だけ妻と、子どもに会いたかったかな……」


彼の願いは、『妻と子どもに会って、一緒の時間を過ごしたい』というものだった。

罪人は原則で長い間生き返る事は出来ない。
その期間を過ぎるか、犯罪行為をひとつでもすると元の場所に戻されて、輪廻の輪の中に戻っていく。
優勝しても罪人は罪人。いわゆる『最後に夢を見せてやる』のが、このソーサク血戦なのである。

124 名前: ◆tDN4QF.obM[sage] 投稿日:2013/06/19(水) 05:23:23 ID:C73lRth20

僕は少しでも彼の夢に、期待に添えなかったことが悔しくて。
カードを拾ったドクオのこと、それを使った神様を恨んだ。

天使が誰かを恨むなどあってはならないことだ。
僕と彼の会話を聞いていた監察官の天使が、僕から視えた『負』のオーラを感じてこちらを見たので、慌てて考えを改める。


(;^ω^)「ぼ、僕はそのカードの所持者……『人間』と話をしたんだお、『血戦に参加しないのか?』って」

(´・ω・`)「へぇ。 それで、その人は何て?」

( ^ω^)「……『参加しない』、そうだお」

(´・ω・`)「参加したくなかったのか?罪のない生きている『人間』なら優勝なんか簡単なのに」

( ^ω^)「いや……僕は彼から本心が感じ取れなかったお……
      何ていうか、神様の言いなりになっているような、そんな感じで」


ショボンは信じられない、といったように眉をひそめながら考えるような仕草をする。
僕はそれに付け加える様に、ドクオが「これが本心だ」と告げたこと、僕に『人間』の立場になって見ることを勧めたことを話す。
ショボンは僕の話を黙って聞き、時折何かに納得するように頷くと、顔を上げる。

125 名前: ◆tDN4QF.obM[sage] 投稿日:2013/06/19(水) 05:24:29 ID:C73lRth20

(´・ω・`)「彼は随分、平和な世界で育ってきたんだな……それも何もかもが充実したような世界みたいだ」

(´・ω・`)「充実することは良いことだ。僕たちもそのために戦争で勝利を勝ち取ったのだから」

(´-ω-`)「だが……充実し過ぎた世界となれば話は別だ……何もかも満たされると人は何もやろうとしなくなる」

(´-ω-`)「結果、彼は心が決めたことで動くことがない。いや、その世界の人間は何人もそんなのがいるだろうな」

(´・ω・`)「それじゃ神様に良いように操られて当然だ……
      彼が叫ぼうが、わめこうが、本心から思ったことが無いなら、何も変えることができない」

(´・ω・`)「そんな彼には、丁度いい薬になると僕は思うけどね」


でも、血戦中ならともかく、ドクオは一生を限られた選択で過ごさなければいけないじゃないか。
そう言おうと身を乗り出そうとすると、僕の言わんとすることが分かっていたようにショボンは手で『待った』を作る。


(´・ω・`)「ただ、一生そんな生活は送れない。僕だって妻子を危険にさらすような生活になったらと考えるだけでゾッとする」

(´・ω・`)「だからブーン、君が彼を救ってくれ」

(;^ω^)「そんなことを言われても、あのカードは人間が死ぬまで効果が続くんだお?どうやって……」

(´・ω・`)「それを君が考えるのさ。この血戦を作った神様は、こうなることを事前に想定していたはずだよ」


確かに、このソーサク血戦を作った神様なら、何か対策を練っている可能性は十分にある。
しかし、どうして対策を練っていながら敢えて僕ら天界の人間には何も言わなかったのだろう。

126 名前: ◆tDN4QF.obM[sage] 投稿日:2013/06/19(水) 05:25:10 ID:C73lRth20


( ^ω^)「……まさか」


(´・ω・`)「そう……恐らく君が考えたのは……」


「そろそろ時間だ」


ショボンが答えを口に出す前に、監視官が時間を告げる。
……この面会が終われば、ショボンは恐らく、新しい何かに生まれ変わるために消えるだろう。
ショボンもそれが分かってるのか、一瞬どこかもの哀しげな表情をする。


(´・ω・`)「それじゃあ、さようなら」

(;^ω^)「……っ!」

(´・ω・`)「そんな顔するなよ、『罪人には深く関わるな』、これはソーサク血戦の掟にもあっただろう」

(;^ω^)「ショボン……」




(´ ω `)「出来ることなら……妻と子どもに宜しく伝えておいてくれ」

(´・ω・`)「そして……彼のことも、頼んだよ」


ショボンが、再び暗い空間に吸い込まれるように消えていく。

僕はもう何も言えず、ショボンの後姿を眺めているだけだった。

127 名前: ◆tDN4QF.obM[sage] 投稿日:2013/06/19(水) 05:25:52 ID:C73lRth20
【3】

ξ;゚听)ξ「……ちょっと待ってよ」


ツンが焦燥とした表情で僕を見る。
おそらく、僕の話の中で、ショボンが言いたかった答えがツンにも浮かんでいるのだろう。


ξ;゚听)ξ「ってことは、あんた分かってたの?分かっててこんな聞き込みを……」

( ^ω^)「……確信が、無かったんだお」

( ^ω^)「でも、もし『彼女』がこんなことを考えていたら、と思うと……」

ξ;゚听)ξ「……あり得ない、わね、たしかに……」

ξ;゚听)ξ「でも、もしそうだとしたら、狂気じみてるわ」


僕らは酒場の人間に聞こえないように、しかしお互いが聞こえるようにハッキリと、『彼女』の名前を告げる。



( ^ω^)「彼女の名前は……」
ξ゚听)ξ「彼女の名前は……」



.

128 名前: ◆tDN4QF.obM[sage] 投稿日:2013/06/19(水) 05:26:38 ID:C73lRth20
【4】


( A )「……」


あれから一か月
俺は、極力一日を寝て過ごすことにした

寝てればどんな選択が出たってかまうものかという俺なりの意地だった
時折窓の外であったり、玄関前であったり、夢の中ですら何かが起こっているような気がしたが関係ない
ただひたすら目を閉じた


( A )「……」

('A`)「……ハラヘッタ」


ただ寝て過ごす、しかし何時間も寝ていられるわけじゃない
腹も減るし、トイレにも行きたくなる
そんな時は仕方がないから何も音がしていないことを確認してから動くようにする

今のところ幽霊に出会うとか、ポルターガイストが起こるとか言った超常現象は出会っていない
おそらくそこまで強力な力は備わっていないのだろう、わざとそうしてるかもしれないがそこは考えないことにする

俺は何もないことを確認して、キッチンに置いてある買いだめたカップラーメンを漁り、封を開けてお湯を張る

129 名前: ◆tDN4QF.obM[sage] 投稿日:2013/06/19(水) 05:27:23 ID:C73lRth20









川 ゚ -゚)「やあ、まだ『ソレ』は出来ないのかい?」


(゚A゚)






キッチンから戻ると、テーブルの前には見たことが無いくらいの美人がいた

130 名前: ◆tDN4QF.obM[sage] 投稿日:2013/06/19(水) 05:28:13 ID:C73lRth20


ガタガタガタガタガタ
((゚A゚))「ま、ままま待て、お、ままお前誰dくぁwせdrftgyふじこlp;@「」

川 ゚ -゚)「おーおーお湯が零れるぞドクオ君」


謎の美人に気にかけられ俺はハッとすると、とりあえずカップラーメンをテーブルの上に置く
ていうかなんだ何が起きた俺はフラグ一級建築士だったか?いや建築できる状態だった


(;'A`)「ハッ!?そういえばなんで俺の名前を、つーかお前はなんだ!?」

川 ゚ -゚)「あぁ私か?そういや名を名乗るのを忘れてたな……」

川 ゚ -゚)「どうも、私はクール」






『このカードの創造神、および君のパートナーだ』






第4話 「パートナー」 続く



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