( ´_ゝ`)時間を司るようです(´<_` )
第5話「決」



90 名前: ◆MH/VTCEj3A[] 投稿日:2013/03/10(日) 21:39:20 ID:OMlIKBQI0
 
 
 
 
 
今更だ、と笑った。



第5話「決」

91 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/03/10(日) 21:40:31 ID:OMlIKBQI0
( ・∀・)「まだ説明、してなかったね」

怪我人が眠る場所で話すのも良くない、としぃを残して兄者達は別室へと移動した直後。
モララーは厳しい表情でそう言った。

( ・∀・)「その石は、受継者の状態を表す。何の問題も無ければ当然傷付かないし、逆に言えば半永久的に傷付かない。
でも、それが勝手に傷付いてるってことは」

弟君が、未来の受継者が何らかの怪我を負っているってことだ。

兄者は言葉を失った。

92 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/03/10(日) 21:42:44 ID:OMlIKBQI0

( ・∀・)「君たち受継者が力を、石がスイッチを持ってるようなものだよ。石は他者からの力で割れることは絶対にない。でも、例外がある」

( ・∀・)「君たちが死んだ時と、役割を放棄する時だ」

( ;´_ゝ`)「おまっ、」

最悪のケースを簡単に出してきたモララーに、兄者は思わず声を漏らす。だがモララーは「ご主人」と短く呼んで兄者を制した。

( ・∀・)「時間の受継者は皆関わりの深い二人組に力が受け継がれるって話はしたよね。過去と未来、片方が死ねばどうなると思う?」

( ´_ゝ`)「……均衡が、壊れる」

93 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/03/10(日) 21:44:04 ID:OMlIKBQI0

( ・∀・)「そう。そんなことが起きてはいけないんだよ。だから、時間の受継者は片方が死ねば必然的にもう片方も死ぬようになっている」

ひたすら、まるで音読をするように。
その身に課せられた、運命とも呪いとも思える事実を告げ続ける。

兄者はいつの間にか、弟者の緑の石も、服の下の自分の青い石も握り締めていた。
知らずのうちに、座っている膝に力が入る。

( ・∀・)「ご主人。君は、生きたいなら役割を放棄するべきだよ」

( ´_ゝ`)「……放棄、って」

94 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/03/10(日) 21:45:28 ID:OMlIKBQI0

( ・∀・)「受継者は、死ぬと――まあ、石が割れると、その身に受け継いだ力は自動的に次世代へと受け継がれることになってる。今は、弟君が下手をすれば死ぬような状況だ。
向こうに捕まってる弟君が死ねば、君も死んでしまう」

だから、とモララーは言うと兄者の肩を掴んだ。正面から真っ直ぐ見据えてくるその瞳は、決断を迫っていた。

( ・∀・)「君が、自分の石を自分で割れば。力は次世代に受継される。弟君は死ぬが、君は役割を放棄して『普通の人間』として生きることができるんだ」

( ´_ゝ`)(死ぬ? 死ぬのか。弟者は、)

95 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/03/10(日) 21:48:34 ID:OMlIKBQI0

死ぬのか。
心の中で繰り返し呟いただけなのに、弟者のいない世界を想像して、兄者は涙を流した。
 
 
 
 
 
('A`)「……」

白い天井が見える。知らない景色だった。
頭と腹が鈍く痛む。まだぼうっとする意識の中で、記憶が蘇ってくる。

(*゚ー゚)「ドクオ」

久しく聞いていなかった声だ、と思った。だがドクオはすぐその考えを否定する。
さっき、頭に響いていなかったか?

96 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/03/10(日) 21:51:09 ID:OMlIKBQI0

('A`)「――ッ!!」



川;゚ ー゚)『頼んだぞ、ドクオ』



('A`)「……しぃ、か」

ドクオはじわりと滲む涙を見せたくなくて目元を腕で擦った。
ベッドのそばにある椅子に座っているのだろう、しぃの「うん」という穏やかな声は枕元のすぐ近くから聞こえてくる。

97 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/03/10(日) 21:53:10 ID:OMlIKBQI0

('A`)「さっきは、悪かった」

(*゚ー゚)「大丈夫。それより、ドクオは?」

('A`)「何が」
 
 
 
(*゚ー゚)「ドクオの心は、大丈夫?」
 
 
 
しぃの言葉は、心にすとんと落ちてくる。
この分だと全て知れているのだろう、とドクオは眉を顰めた。

内藤がここまで連れてきてくれた。きっと未来の守護者達のことも知っている。
だが、未来の守護者達がどうやって死んだのかは、自分しか知らない。

98 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/03/10(日) 21:54:41 ID:OMlIKBQI0

大きく斬り付けられた心は未だに血を流してじくじくと痛む。
その傷口を抉るような、起こった出来事を話さなくてはいけないという事実。

('A`)「……ああ、大丈夫だ。話せる。オレには、話さなくちゃいけない義務がある」

ぎしぎしと音を立てる体を動かして、ドクオは上体を起こした。
「もう言っていいの?」心配そうに問うてくるしぃに、ドクオは「ああ」と答えた。

('A`)「守護者は死んだ。それでも、主はいる。オレが止まったせいで主を死なすなんて、守護者失格だ」

だから、話すんだ。

99 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/03/10(日) 21:56:23 ID:OMlIKBQI0

そう言うドクオに、しぃは淡く微笑んで肩にカーディガンを羽織らせた。

(*゚ー゚)「みんな別の部屋で話してる。激しい動きをすると傷に良くないから、ゆっくり一緒に行こう、ね?」

しぃの誘導に併せて、ベッドから立ち上がる。
そして二人は兄者達の部屋へと向かった。
 
 
 
 
 
( ・∀・)「ま、これはあくまで一個人としての意見だけどね」

100 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/03/10(日) 21:58:31 ID:OMlIKBQI0
先ほどまでの真剣な表情はどこへやら、ぱっと掴んでいた肩を離しておどけたように笑って見せた。

道化のようだ、と兄者は思った。
ころころとすぐに表情を変えて掴み所が無く、本心が見えないモララーが。

( ´_ゝ`)「モララー」

うん? とモララーは首を傾げる。兄者を見つめる漆黒の瞳は笑ってはいない。

( ´_ゝ`)「お前の本心はどこにあるんだ?」

( ・∀・)「……さあね?」

くすくすと笑うモララーに、見ていた内藤達が溜息を吐いた。

101 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/03/10(日) 22:01:07 ID:OMlIKBQI0

( ,,゚Д゚)「主、深く考えるなよ。こいつはいつもこんな感じだ」

( ´_ゝ`)「……ん」

( ・∀・)「ちょっと酷いよギコぉ」

まあとにかく、とモララーはパンと手を打った。話題を戻そうという合図らしい。

( ・∀・)「真剣に話そうか。未来の守護者サマも到着したみたいだし」

ちらりと視線を横に遣ったモララーは、そこにいたドクオを茶化すように笑った。

102 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/03/10(日) 22:03:14 ID:OMlIKBQI0

('A`)「相変わらずムカつくツラだな、モララー」

( ・∀・)「それは僕の顔が変わってないってことだよね? 僕もまだまだ若さを保ってるんだなあ」

('A`)「めんどくせえよお前」

唾棄しそうな勢いでドクオは言った。

( ^ω^)「仲の悪さも相変わらずだお……」

ξ ゚听)ξ「モララーと仲が良い奴なんかいるの?」

そうひそひそと話す内藤とツンに、モララーは見逃さず笑みを向ける。「うざいんだけど」とツンに一蹴されたが。

103 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/03/10(日) 22:04:06 ID:OMlIKBQI0
ごほん、とギコがわざとらしく咳払いをした。

( ・∀・)「さあさあ、どうする? 僕らとしては君を守らせてもらえればそれでいいんだけどさ」
 
ξ ゚听)ξ「ちょっと、それじゃ意味ないじゃない。コイツだけ守っても、絶対コイツ自身は納得しないわよ」
 
ツンは言葉と共にモララーの鳩尾に肘打ちを繰り出した。
にこやかで胡散臭い笑顔を貼り付けたままモララーは鳩尾を押さえてその場に崩れ落ちる。

言っとくが、と口を開いたドクオに自然と視線が集中する。

104 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/03/10(日) 22:05:25 ID:OMlIKBQI0

('A`)「それ以上言ってくれるなよ。お前らはオレの主が死のうがどうでもいいみてえだが、オレはまだ諦めるつもりはねえからな」
 
( ・∀・)「はは、怒るな怒るな。別に君の主を見殺しにするつもりはないよ。僕らの主が見捨てない限りはね」
 
('A`)「……」
 
ドクオは腑に落ちないという顔をしていた。

一際強くモララーを睨み付けると、寄り掛かっていた壁から離れてよろよろと歩き出す。
そのカーディガンの前から覗く包帯には赤がにじんでいた。
その危なっかしい後ろ姿を見つめながら、モララーは「馬鹿だねえ」と呟いた。

105 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/03/10(日) 22:06:21 ID:OMlIKBQI0
モララーは振り返ると、心配そうにドクオの後ろ姿を見つめていたしぃに声をかけた。
 
( ・∀・)「しぃ、傷が開いているみたいだから頼んでいいかい? 面倒事を押し付けてすまないね」

(*゚ー゚)「! うん!」
 
( ,,゚Д゚)「……」
 
( ・∀・)「ギコも一緒に行ってくれるかい?」
 
( ,,゚Д゚)「……! おう」
 
しぃの後に続いたギコが、立ち止まってちらりとモララーに視線を向ける。

106 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/03/10(日) 22:07:32 ID:OMlIKBQI0
視線を受けたモララーは、にやりと意味ありげに笑った。カッとギコの顔が赤くなる。
 
( ,,゚Д゚) お ぼ え て ろ !
 
( ・∀・)ニヤニヤ
 
しぃに聞かれたくないからだろう、口パクで伝えたギコはそのまま通路の向こうへと姿を消した。
さて、とモララーは椅子に座ったままの兄者に向き合った。
 
( ・∀・)「心は決まったかな? 僕らのご主人」

( ´_ゝ`)「最初から決まってらぁ。おめーらの会話に口を挟めなかっただけだよ」

107 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/03/10(日) 22:09:06 ID:OMlIKBQI0
 
兄者はぎゅっと、血がこびり付いた緑の石を握りしめた。
優しげな色合いとは裏腹に、石は突き刺すような冷たさを兄者の手に伝えてきた。悔しさに唇を噛む。
座っていた椅子から立ち上がった。
目元の涙はもう乾いて、表情を変えると引き攣るような感覚がした。
 
( ´_ゝ`)「弟者を助けに行く。だから、」
 
ざわりと空気が変わる。
真っ直ぐに見つめる兄者の瞳が茶から青に色を変えた。
首から下げた蒼い石がふわり、浮き上がって熱を持った。

108 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/03/10(日) 22:10:10 ID:OMlIKBQI0
目の当たりにしてツンは息を飲み、モララーは目を細めて楽しげに腕を組んだ。
すう、っと息を吸う。それだけで、この部屋の空気が震えた気がした。
 
( ´_ゝ`)「だから、手伝え。助けろ」
 
( ・∀・)「仰せのままに――ご主人?」
 
( ・∀・)(これはこれは。僕らのご主人は、将来有望だ)



第5話「決」・終



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