( ´_ゝ`)時間を司るようです(´<_` )
第3話「実」



38 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/03/06(水) 17:49:32 ID:fXNF5Kx60
('A`)「……」

倒れ込んだ地面はカラリと乾いていて、衣服に大して泥を付けることはなかった。
元から衣服は血塗れで汚れているのだが。

('A`)「……」

地面に倒れ込んだ男は、痛む腹に顔を顰める。
襲いくる強烈な眠気にいよいよ負けそうになって、閉じまいとしていた瞼から力を抜いた時だった。

( ^ω^)「――ドクオ? ドクオ!!」

一度は確信が無かったのか、疑問で上がった語尾。
二度目は確実に自分の存在を認識して、呼んできた。

ドクオは動かすのも億劫だった表情筋で、微かに笑った。

39 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/03/06(水) 17:51:03 ID:fXNF5Kx60
 
 
 
 
 
その内に秘められた力を知る時は来た。
 
 
 
第3話「実」

40 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/03/06(水) 17:52:53 ID:fXNF5Kx60
 
 
 
( ・∀・)「つまりさ、ご主人。君、その気になれば歴史の改変もできるんだよ」

( ´_ゝ`)「……たとえば?」

( ・∀・)「織田信長を本能寺で死なないようにするとか」

( ´_ゝ`)「なんで織田信長なんだ」

( ・∀・)「なんとなく?」

茶化すように笑うモララーに、眩暈がした。
溜息を一つ吐いて、兄者は頭を抱える。

理解がとても追いついていかない。もういっそ新手の詐欺集団ではないかと思い始めたところだ。
だが、それにしては話が凝り過ぎている。

それに、兄者はもう1つ認めざるを得ない点があった。

41 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/03/06(水) 17:54:02 ID:fXNF5Kx60
 
( ´_ゝ`)(……石、1度も人に見せたことなんかなかったのに)

物心付いた頃から持っている、石の付いたネックレス。兄者は青を、弟者は緑を。
親の写真も1枚も持っていなかった兄弟が、唯一持っていたものだ。

2人だけの生活には金が要る。その為ひたすらバイトをしてきた兄者は、それらしい友達も居らず石が見つかる可能性はほぼ無かった。
高校に通う弟者は、体育の時などにどうやって隠しているのかは謎だが。

とにかく、石のことは誰にも見せたり話したりしてはいけないと。兄弟間でそう決めていた。
どうしてそうしたのかは、もう思い出せないが。

42 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/03/06(水) 17:55:14 ID:fXNF5Kx60
 
( ´_ゝ`)「……あ」

そう思い返していた兄者は、ふと重要なことに気が付いた。唐突に思考を止めた額に冷たい汗が流れる。

どうして、
どうしてさっき、問われたときに気が付かなかったのか。

( ;´_ゝ`)「……ひじょーに申し上げにくいんですが」

黙り込むなり青い顔をしてそう切り出した兄者に、周りは怪訝そうな顔をする。
あああ泣きそうだ、と兄者は今から口にする言葉を引っ込めたくなる気持ちでいっぱいだった。

( ;´_ゝ`)「弟者の石……家に置きっぱなしだわ」

43 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/03/06(水) 17:56:50 ID:fXNF5Kx60
 
 
 
 
 
ξ ゚听)ξ「……大丈夫みたいね」

( ;´_ゝ`)「申し訳ない……」

兄者が家に石を取りに行くのに、ついてきたのはツンとギコだ。
敵が残っている可能性もあり、護衛で兄者に付き添っている。

ツンが玄関先を見張り、ギコが窓の外を見遣る。その間で兄者はリビングに置いてある棚の引き出しを開けた。

44 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/03/06(水) 17:58:24 ID:fXNF5Kx60
家を離れる前と同じ場所に、緑の石はそこにあった。

( ´_ゝ`)「よかった……」

( ,,゚Д゚)「終わったか?」

( ´_ゝ`)「ああ」

ギコの問いに答え、緑の石のネックレスを隠すように自分の首にかけようとした時だった。

( ´_ゝ`)「……? あ、れ」

緑の石に、わずかに罅が入っていた。

45 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/03/06(水) 18:00:15 ID:fXNF5Kx60
ξ;゚听)ξ「なんでっ!?」

玄関先から聞こえてきたツンの声に、兄者とギコが弾かれるように視線を向けた。
困惑と焦り。ツンの声音に含まれたその色に、二人は何者かが現れたことを知る。
それがどうやら、味方ではなさそうなことも。

先導するギコの後ろに続き、玄関から伸びる廊下を伺った。
先に覗いたギコが、「な」と瞠目して声を漏らす。
つられるように兄者が顔を出す、と。

( ´_ゝ`)「……え?」

ξ;゚听)ξ「なんで、あんたがいるのよ――デレ!」

46 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/03/06(水) 18:01:29 ID:fXNF5Kx60

ツンと似ていて違う。ツンと比べれば顔立ちは柔らかく幼いだろう。
デレと呼ばれた少女は、この場の雰囲気に似合わない笑顔を浮かべて、玄関に立っていた。

ζ(゚ー゚*ζ「あら、あなたが兄者さん?」

目の前にいるツンなど見えていないかのように、奥にいた兄者に向かってデレは話しかけた。
綺麗だと表現されるその笑みにどこか薄ら寒いものを感じて、兄者はぞくりと肩を震わせる。
ギコがデレの視線から遮断するように、兄者の前にしっかりと立ち塞がった。

47 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/03/06(水) 18:03:03 ID:fXNF5Kx60

ζ(゚ー゚*ζ「初めまして、私デレっていいます。弟さんにはお世話になってます」

( ;´_ゝ`)「ッ!」

ξ ゚听)ξ「デレ!!」

明確な、敵だというアピール。
ツンは自分と目を合わさないデレの肩を掴むと、もう一度確かめるように名を呼んで揺さぶった。

48 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/03/06(水) 18:04:57 ID:fXNF5Kx60
ξ ゚听)ξ「見えてるでしょう、聞こえてるでしょう! どうしてあなたがここにいるの、答えなさいデレ!」
 
 
 
ζ(゚ー゚*ζ「――うるさい、なあ」
 
 
 
デレの声が、低く唸る獣のような獰猛さを持った。

ζ( ー *ζ「うるさい、うるさい、うるさい、うるさい」

俯いたデレが、そう呟きながらツンの手を払う。
兄者は、ふと家に流れる空気が風となって流れていることに気が付いた。

( ´_ゝ`)「なんで、窓も開けてないのに――」

風は自分の後ろから、廊下を通って玄関へと流れていく。
兄者がぽつりと零したその言葉に、ギコははっとして叫んだ。

49 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/03/06(水) 18:07:34 ID:fXNF5Kx60

( ,,゚Д゚)「主、ツン! 耳塞いで身を守れ!!」

( ´_ゝ`)「え、」

ζ( ー *ζ「あなたなんか――」

デレが俯いていた顔を上げる。

ζ(゚ー゚*ζ「『知らない』ッ!!」

刹那。
音。

ξ ゚听)ξ「――ぁっ、」

どんっ、と。
ツンの体が吹き飛ばされて、壁に強く叩き付けられた。

50 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/03/06(水) 18:08:58 ID:fXNF5Kx60
耳を塞いだのがあまり意味をなさないほどの、爆音。
それによって痛む頭に、兄者は小さく悲鳴を上げた。

デレの目の前にいたツンは吹き飛ばされている。
「ツンッ、」そう叫んだ兄者の前から飛び出していったのはギコだった。

ギコの手から眩い青い光が放たれて、一つに収束する。次の瞬間、青い光は青い両手剣へと形を変えていた。

( ,,゚Д゚)「ぁああっ!!」

声を上げ、斬りかかる。空気を切り、重い音を立てて迫るその刃は、

51 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/03/06(水) 18:10:57 ID:fXNF5Kx60

ζ(゚ー゚*ζ「『止まれ』ッ!」

( ,,゚Д゚)「ぐっ、」

デレが発したその言葉の振動とぶつかった。
だが、一瞬弾かれただけで留まる。

一度跳ね返った剣を、床を踏みしめ体を低く前に突き出せば手も自然についてくる。
体を前に出した反動で腕を薙げば、持った剣に逃げ切れなかったデレがぶつかるのをギコは感じた。
デレの体に突き進む感覚は浅い。
剣の届く範囲から逃げ出したデレは、ギコによって傷付けられた腕を押さえて身を翻した。

ξ ゚听)ξ「っで、れ、」

ツンの掠れた声に答えることはなく。
デレの姿は、扉の向こうに消えた。

52 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/03/06(水) 18:12:33 ID:fXNF5Kx60

( ´_ゝ`)「ツン!」

兄者は叩き付けられて壁に背を預けたツンに駆け寄った。
出ていくデレを見届けてから気を失ったらしい。意識はなかった。

( ´_ゝ`)「これは、一体、」

( ,,゚Д゚)「ツンは『声』を武器にする」

デレが出て行った玄関を見つめていたギコが、もう戻ってこないと判断したのか兄者とツンの元へ近づいた。

( ,,゚Д゚)「声によって発生する空気の振動を、衝撃波に変えて攻撃するんだ。
風だと思ってたのは、それを作る為に必要な酸素を取り入れてたせいだろう。
まさか同じ能力を持っているとは……」

54 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/03/06(水) 18:14:04 ID:fXNF5Kx60
( ´_ゝ`)「あの、デレって子は?」

( ,,゚Д゚)「ツンの妹、だと思う。前に妹がいると話してた」

しゃがみこみ、ツンの苦痛に歪んだ顔を見てギコが顔を顰めた。

( ,,゚Д゚)「まずいな。肋骨が折れてるかもしれない」

( ´_ゝ`)「早く連れ帰らないと」

ツンを背負おうと手を伸ばしたが、ギコに止められる。
純粋な疑問に首を傾げた兄者は、まっすぐ見つめてくるギコに不安を覚えた。

( ´_ゝ`)「ギコ?」

( ,,゚Д゚)「しぃの治療を受ける必要はない」

主、と呼んだギコは兄者からまっすぐな視線を逸らすことなく、

55 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/03/06(水) 18:15:26 ID:fXNF5Kx60

( ,,゚Д゚)「主。あんたが、ツンを治すんだ」

そう言った。

( ´_ゝ`)「治す、って」

( ,,゚Д゚)「大丈夫だ。死に関わらない範囲なら、影響は無い」

( ;´_ゝ`)「ギコ、まさか」
 
 
 
( ,,゚Д゚)「過去を操る術を、ここで身につけろ。主」

無理だ、と兄者は口の中で呟いた。

56 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/03/06(水) 18:16:53 ID:fXNF5Kx60

 
自分が過去を操れるなど、ほんの数時間前に知ったばかりだ。
まだ頭の中はごちゃごちゃで理解できなくて、自覚なんてある筈もない。
ましてや、その力を使えなんて。

兄者の心情を知ってか知らずか、ギコは兄者に「自分の石は持ってるよな」と問うた。

( ,,゚Д゚)「操るのに必要な条件は3つあると聞いている。
これは今までの時間の受継者共通だったから、きっとあんたもこの方法でできるはずだ。

石を身に付けて、対象に触れ、願う」

( ´_ゝ`)「……願う、」

57 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/03/06(水) 18:18:01 ID:fXNF5Kx60
見つめてくるギコの視線に耐え切れず俯いた。
視線を落とすと、ツンの脚が目に入る。
ツンの、痛みからだろうか、苦しみに喘ぐ息が、兄者の耳を打つ。

眩暈がしそうだった。理解ができなかった。

けれど、今、それをやらなければ。
ツンは、このまま帰っても痛みを引きずることになる。
兄者はツンの顔を見て――きつく閉じられた瞼を見て、彼女の手に触れた。

( ´_ゝ`)(石を、身に付けて)

58 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/03/06(水) 18:19:21 ID:fXNF5Kx60
空いている手で、服の下に潜り込んだネックレスを引っ張り出す。

( ´_ゝ`)(対象に触れ)

女性の手は細くて柔い。
こんな弱弱しい手が、自分をこれから守ってくれる存在なのだと思うと申し訳なくなった。

( ´_ゝ`)(願う)

いつの間にか、言葉は頭に浮かんでいた。

( ´_ゝ`)「我、過去を司る者」

ギコの見守る中、兄者がその言葉を発した途端石が凶器のような光を放った。
強すぎるその光に一瞬目を閉じざるを得なくなる。

光を遮るように目元に手を遣って、その指の隙間から見えたのは。

59 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/03/06(水) 18:21:01 ID:fXNF5Kx60

光と同じ色、茶からその瞳を青色に変えた兄者の姿だった。

( ´_ゝ`)「彼の者を癒せ。巻き戻れ、時の歯車よ」

石から広がった光が、気を失ったツンを包み込んだ。
 
 
 
 
 
第3話「実」・終



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