( ´_ゝ`)時間を司るようです(´<_` )
第25話「始」



522 名前: ◆MH/VTCEj3A[] 投稿日:2013/05/02(木) 00:09:12 ID:hoDqzuOo0
 
 
 
 
 
君よ、さらば。
 
 
 
第25話「始」

523 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/05/02(木) 00:10:19 ID:hoDqzuOo0
( ´_ゝ`)「……ああ、やっぱり」

兄者は読んでいた本を閉じると、天井を仰いでそう呟いた。
ふ、と眉を寄せて困ったように微笑んだ。

( ´_ゝ`)「モララー」

静かに呼ばれた、モララーは壁に背を預けている。
声にゆっくりと瞳を開けて、眉間に皺を寄せたまま兄者に視線を遣った。

( ´_ゝ`)「お願いがあるんだ」

( ・∀・)「……しょうがないね、君は」

諦めたように、モララーは首を振った。
悪いな、と兄者は笑った。

524 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/05/02(木) 00:12:25 ID:hoDqzuOo0
 
 
 
 
 
(`・ω・´)「流石ー」

(´<_` )「?」

呼ばれた声に振り返ると、どこかを指差している友人がいる。
その先を見た弟者は、驚きで目を見開いた。

( *´_ゝ`)「弟者ー!」

(`・ω・´)「あれ、お前の兄さんだろ」

(´<_` )「……ああ」

525 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/05/02(木) 00:14:07 ID:hoDqzuOo0
学校の敷地内に入る手前の、校門の向こうで兄者が手を振っている。
同じ顔が校門前で手を振っていたら確かに気付いて声をかけるだろう。
突然の行動にどうしたのかと驚く弟者に、友人は笑いながら行って来いよと促してくる。

(`・ω・´)「こないだのこともあったし心配だったんだろ。部活の方には俺から言っとくから」

(´<_` )「……悪い」

気にするな、と笑う友人を背に弟者は肩の鞄を掛け直した。
駆け寄ってくる弟者を笑って見つめる兄者は手ぶらで何の荷物も持っていない。
仕事はどうしたのか、という疑問を口に出す前にやけに陽気な声で話しかけられた。

( *´_ゝ`)「弟者! 着いてきてほしい所があるんだ」

(´<_` )「……なんでまた、っていうか朝に言ってくれよ」

526 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/05/02(木) 00:15:15 ID:hoDqzuOo0
( *´_ゝ`)「俺も今日知ったばっかなんだって!」

溜息を吐きながらも、弟者は兄者の隣を歩く。

こんなことをするのは初めてだ、と思った。
と言うよりは、今まで兄者は仕事で弟者は学校と部活だったからこんな機会など無かったのだが。

兄者はご機嫌に鼻歌まで歌っている。
余程嬉しいことがあったのかと、つられるように弟者も微笑む。

これまでの日々を振り返って暗い表情をすることが多かった兄者の、明るい表情を久々に見て弟者は嬉しかった。
特に本人が気にしているのは、弟者がロマネスクを殺したことだろう。
何も言わずとも目を見れば雄弁だ。

527 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/05/02(木) 00:16:16 ID:hoDqzuOo0
(´<_` )(……良かった)

安心して、弟者は兄者の歩調に合わせて歩いた。
 
 
 
 
 
( ・∀・)「やあ、おかえり」

(´<_` )「……ただいま?」

どうしてこんな出迎えを受けているのだろう、と弟者は困惑した。

結局兄者が目指して辿り着いたのは自宅だった。
何故だか守護者全員勢揃いで、自宅前に集まっている。

528 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/05/02(木) 00:17:26 ID:hoDqzuOo0
兄者はきょろきょろと周りを見渡すと、「いけるー」と軽い調子で言って弟者の手を握った。
間もなくもう一方の手をしぃに繋がれる。

(´<_`; )「え、」

( ´_ゝ`)「我、過去を司る者」

こんな外で、と慌てて周りを見渡すが誰もいない。
先程の兄者の行動はこれか、と理解した。

( ´_ゝ`)「過去を辿り、我をその場所へと導き給え」

青い光が溢れる。

529 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/05/02(木) 00:18:19 ID:hoDqzuOo0
ふと、光に包まれるその瞬間に弟者のYシャツの襟元に侵入する手があった。
驚いて手を離しそうになったが、これを離すと移動ができなくなると気が付いてぐっと堪える。
眩しさに瞑る目を開いて見れば、兄者の悲しげな微笑みが見えたような気がした。
 
 
 
 
 
(´<_` )「……ここ、は」

目を開けて、目の前に広がったのはあの荒地だった。
未来の守護者達が眠る場所。
視線を巡らせれば、確かに盛り上がった地面がいくつか見て取れてドクオが視界の端で俯いた。
否、ドクオだけではなかった。

530 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/05/02(木) 00:19:33 ID:hoDqzuOo0
兄者とモララー、そして弟者を除いた全員。
ドクオ、ギコ、しぃ、内藤、ツンは、皆俯いている。
その中でもドクオとツンは肩が震えているようにも見えた。

( ´_ゝ`)「ここ、さ。今はこんな荒地だけど、嘗ては街で……142年前の受継者が、死んだ場所だったんだ」

(´<_` )「……そう、なのか。いや、そうじゃなくて」

兄者。
弟者の声は掠れ、茶色の瞳は大きく見開かれている。

(´<_`; )「兄者、なんで」
 
 
 
(´<_`; )「なんで、俺の石を持ってる?」

531 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/05/02(木) 00:20:21 ID:hoDqzuOo0
 
 
 
兄者は、ただ笑うだけで言葉を返さない。

下げられた左手。その左手には、弟者が首にかけていたはずの緑の石がある。
兄者は問いに答えないまま、そのネックレスを青い石と一緒に自分の首に掛けた。

( ´_ゝ`)「弟者」

酷く穏やかに、兄者は弟者の名前を呼ぶ。

( ´_ゝ`)「ここが、ここが始まりだったんだ。だから、」

( ´_ゝ`)「ここで、終わりにする」

532 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/05/02(木) 00:21:56 ID:hoDqzuOo0
(´<_`; )「兄者、何を」

( ´_ゝ`)「世界を支える為に人柱が必要なんて、おかしいと思わないか?」

だって、と兄者は言う。
兄者は笑みを絶やさぬまま、不自然な程優しい声のまま話し続ける。

( ´_ゝ`)「人間が存在しなかった時代だってある。じゃあその時地球は安定してたはずなんだ」

(´<_`; )「兄者、答えてくれ」

( ´_ゝ`)「いつから人柱なんか使わなきゃいけなくなったのか」

(´<_`; )「兄者、」

533 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/05/02(木) 00:23:04 ID:hoDqzuOo0
( ´_ゝ`)「人間が、生まれたからだったんだ。知性があって、長く生きて。世界を荒らすから、その代償に人柱が生まれたんだ」

(´<_`; )「兄者!」

( ´_ゝ`)「でもさ、弟者」

そう言うなり、兄者はその場で膝を折った。
地面に膝を付けて、地面に両手を広げている。
屈んだ体勢になって兄者の首元で二つの石が揺れた。

( ´_ゝ`)「俺は、受継者によって今回みたいなことが起こるなら。受継者なんていらないと思うんだ」

534 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/05/02(木) 00:24:16 ID:hoDqzuOo0
足が動かない、と弟者は思った。
嫌な予感で冷や汗が背を伝う。
喉は渇いてうまく声を出せない。

( ´_ゝ`)「だから」

兄者が顔を上げた。
家に帰って来た弟者に「おかえり」を言うのと、同じ笑顔を浮かべて。

兄者は、泣いていた。
 
 
 
( ´_ゝ`)「この世界を、元に戻すよ」
 
 
 
(´<_`; )「やめろおおおおおおおッ!!!」

535 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/05/02(木) 00:25:22 ID:hoDqzuOo0
金縛りが解けて、駆け出そうとした体を後ろから背を強く押されて倒された。
すぐに立ち上がろうとするも、背に乗られて動けない。
抵抗しながら見上げれば、動きを封じているのはモララーだった。

( ´_ゝ`)「我、過去を司る者」

もう何度目聞いたか分からない詠唱が聞こえて、兄者の方を振り返る。
兄者は視線に気づいたのか、閉じていた目を開いて弟者と視線を合わせる。
その瞳の浮かべる色に見覚えがあった。
2人きりになった日、2人で生きていくと決意した日と同じ目だった。

( ´_ゝ`)「過去の在りし日へと姿を変えろ」

(´<_`; )「兄者、」

536 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/05/02(木) 00:26:55 ID:hoDqzuOo0
( ´_ゝ`)「巻き戻れ、時の歯車よ」

(;<_; )「兄者ッ!!」

青い光が。
兄者の掌から、地上全てへと伝っていく。

世界が青い光を帯びる。

叫んだ。
喉を嗄らすほどに、弟者は兄者の名を呼んだ。

兄者は、涙を流して弟者を見て、

さようなら、と唇で象って笑った。
 
そして、兄者の姿は掻き消えた。

537 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/05/02(木) 00:27:54 ID:hoDqzuOo0
 
 
 
 
 
l从・∀・ノ!リ人「ちっちゃいあにじゃー!」

(´<_` )「ん」

妹者の声に、振り返る。
久々に部活も休みの休日だったから、妹者が散歩に行きたいと主張するのに付き合って歩いていた。

どこに行くのか、と問うても妹者は「わからないのじゃ!」と答えるだけだった。

538 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/05/02(木) 00:29:06 ID:hoDqzuOo0
l从・∀・ノ!リ人「あ! きれいなお花なのじゃー! ちちじゃとははじゃとあねじゃに持って帰るのじゃ!」

(´<_` )「そうだな」

花畑に座り込んだ妹者を見て、自分も座り込む。

ふと、見渡す限り花しかないこの場所を眺めて、弟者は違和感を覚えた。
妹者が先導するのに黙って着いて来たこの場所。
行き方も、存在も全く知らなかったこの場所が。

どこか、懐かしい気がした。

妹者が弾かれたように、顔を上げる。
摘んでいた花を放って駆けていく小さな姿に、弟者も立ち上がって後を追った。

539 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/05/02(木) 00:31:30 ID:hoDqzuOo0
幼い割に素早く移動した妹者は、ある場所で立ち止まるとまた座り込む。
弟者は近付くにつれて、耳に赤子の泣き声が聞こえてくることに気が付いた。

l从・∀・ノ!リ人「ちっちゃいあにじゃー!」

妹者が、笑う。

l从・∀・ノ!リ人「おっきいあにじゃ、見つけたのじゃ!」
 
 
 
 
 
君よ、さらば。
 
そしてまた、会おう。
 
 
 
( ´_ゝ`)時間を司るようです(´<_` )・終



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