■( ´_ゝ`)時間を司るようです(´<_` )
└第18話「劣」
- 381 名前: ◆MH/VTCEj3A[] 投稿日:2013/04/08(月) 22:45:46 ID:tZsIa3Oc0
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喉の奥に飲み込んだ言葉を。
第18話「劣」
- 382 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/04/08(月) 22:47:07 ID:tZsIa3Oc0
- ζ(゚ー゚*;ζ「ぐ……っ!」
青に押され、デレの周りに渦巻いていた風がぱあんと弾けて消えた。
両側から襲いかかる青い衝撃波をまともに食らい、デレの体が浮き上がって後ろの壁へと叩き付けられた。
彼女が叩き付けられたすぐ横には、茶色い木で作られた扉がある。
背から叩き付けられたからか、デレは壁に背を預けたままいくつか咳き込んだ。
その様子を、ツンは動かずその場からじっと見ていた。
ぜえはあと肩で息をし、うまく酸素を取り込めていないデレとは違ってツンは普通だった。
その2人の差は明らかで、勝敗も見えたようなものだった。
- 383 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/04/08(月) 22:48:05 ID:tZsIa3Oc0
- ξ ゚听)ξ「……もう、」
終わりにしよう、と。
そう紡ぎかけた唇は、デレが壁に手を着いて立ち上がったことで止まった。
なおも紅い瞳で睨み付けてくる妹に、ツンは目を細めた。
すう、と息を吸う。
ξ ゚听)ξ「『当たれ』」
それは、とても曖昧な言葉だった。
ツンの周りに、青い球体が現れる。それは野球ボールと同じような大きさで、ツンが瞬きをしたと同時にデレへ向かって発射された。
瞬きをして、瞳を開いた先には。
腹を押さえたデレが、微かに見える口元を歪めて笑っているのが見えた。
- 384 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/04/08(月) 22:49:18 ID:tZsIa3Oc0
-
ζ( ー *ζ「『砕けろ』」
そう放たれた紅い光が、向かい来る青に勢いよくぶつかった。
意味が明確に定まっている言葉の方が強い。
ツンの青い光は紅い光にぶつかると、ばらばらに砕け散って床に落ちる前に消えた。
ζ( ー *ζ「……ははっ」
不釣り合いな声だ、とツンは眉を顰めた。
デレは俯いたまま笑い声を上げている。緩くカールされたツインテールがゆらゆらと揺れた。
ぐん、とデレは顔を上げた。
- 385 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/04/08(月) 22:50:34 ID:tZsIa3Oc0
- ζ(゚ー゚*ζ「そうやって、また突き放すんだ?」
どくり。
ツンの心臓が、嫌な音を立てた。
ζ(゚ー゚*ζ「先に行って、突き放して――また私を置いて行くんだ、お姉ちゃん?」
ξ ゚听)ξ「……違う」
ζ(゚ー゚*ζ「何が違うの?」
ξ;゚听)ξ「違うっ」
眩暈がする、とツンは思った。
ぐらりぐらりと今まで考えないように、意識してきた想いが揺らぐ。
- 386 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/04/08(月) 22:52:04 ID:tZsIa3Oc0
- ξ;゚听)ξ「私は別にっ、デレを突き放したわけじゃ」
ζ(゚ー゚*ζ「突き放したよ」
ふと、ツンは自分の周りの風が揺らぎ始めていることに気が付いた。
そしてその風が、目に見えずとも分かる軌道を描いて――デレの元に向かっていることも。
ζ(゚ー゚*ζ「ねえ、ツンお姉ちゃん」
顔を上げてしまう。
目が、合ってしまう。
ζ(゚ー゚*ζ「あなたは、一度でも私の話を聞いてくれた?」
ξ;゚听)ξ「――あ、」
- 387 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/04/08(月) 22:53:15 ID:tZsIa3Oc0
-
ζ(゚ー゚*ζ「『切り裂け』ッ!!」
デレは、容赦をしなかった。
ふっと気が緩んだツンの隙を見逃さず、叫ぶ。
デレの周囲に現れた紅い三日月がやって来る方向もばらばらに、複雑に交差しながらツンに襲い掛かる。
はっと気が付いた時には既に遅く、最初の紅い三日月がツンの脹脛を切り裂いた。
( ;^ω^)「ツンッ!!」
- 388 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/04/08(月) 22:54:30 ID:tZsIa3Oc0
- 内藤の叫びも空しく、紅い三日月は次々とツンの体を切り裂いて消えて行った。
紅い三日月に切り裂かれた傷口から、もう少し赤黒い血が飛沫を上げる。
床にぱたぱたと血を落としながら、ツンはその場に崩れ落ちた。
うつ伏せに倒れ込んだ、ツンの服にじわじわと赤い染みが広がっていく。
ツンの元に駆け出そうとした内藤を、モララーが静かに止めた。
モララーを振り返って、ぎりりと悔しげに唇を噛んだ内藤の視線はモララーからデレへと移る。
デレは少しよろけながらもしっかりと歩み寄り、倒れたツンの前にしゃがみ込んだ。
ζ(゚ー゚*ζ「ねえ、まだ生きてるでしょう?」
ξ )ξ「……」
- 389 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/04/08(月) 22:55:30 ID:tZsIa3Oc0
- ツンは返事を返さない。
最早意識があるのかさえ危うかった。
デレはつまらなさそうに唇を尖らせると、立ち上がってツンの横に回って脇腹を蹴り上げた。
僅かな呻き声と共にツンの体がごろりと転がり、うつ伏せから仰向けになる。
目元は前髪に隠れて見えなかった。
ζ(゚ー゚*ζ「無様だねー」
そう言って、またしゃがみ込んだ。
しゃがんだ膝に肘を乗せ、頬杖をついてツンを見つめながらデレは口を開く。
ζ(゚ー゚*ζ「私ね、ずっと自分が嫌いだった」
そう、切り出した。
- 390 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/04/08(月) 22:56:22 ID:tZsIa3Oc0
- ζ(゚ー゚*ζ「だってさあ、いつでもあなたと比べられるんだもの。
いつでもみんなお姉さんは、お姉さんはーって。
親御さん代わりにお姉さんが頑張ってるんですね、
お姉さんのおかげであなたは学校に行けるのねって。もう嫌になっちゃうよね。
だから私は自分が嫌いだった。
いつでも比べられる自分が、お姉ちゃんに頼らなきゃ生きていけない自分が。嫌いだった。
でもさ、本当に転機だったんだ。受継者の守護者の使命とか何とか?
私以外空っぽの家見て、ああ見捨てられたんだって。
家族なんてくだらないものより、血の使命の方が大切だったんだって。
同じ血を持っていても、あなたは私を関わらせようとはしなかった。
そこで初めて、私はやっと1人にしてもらえたんだって、そう思ったんだ」
- 391 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/04/08(月) 22:58:26 ID:tZsIa3Oc0
- デレが小さく、「『砕けろ』」と呟いた。紅く、ごつごつと歪な形をした光が、デレの背後にぷつぷつと現れる。
首を傾げて、デレは綺麗に笑った。
ζ(゚ー゚*ζ「ずっとずっとお姉ちゃんに劣ってた私とはもうお別れ。さよなら、お姉ちゃん」
( ;^ω^)「ッツン――!」
ξ )ξ「『弾けろ』」
紅い光とデレの体が、大きく吹き飛ばされた。
ζ(゚ー゚*;ζ「ッ、な――っ!?」
ξ ゚听)ξ「そう……よーく分かったわ」
- 392 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/04/08(月) 22:59:52 ID:tZsIa3Oc0
- ツンがそう呟いて、立ち上がった。ぷっ、と床に血の混ざった唾を吐き捨てる。
ふらり、と切れた脹脛でぐらついた体をなんとか持ちこたえ、床に投げ出されたデレを青い瞳で真っ直ぐ見据えた。
ξ ゚听)ξ「とにかく、さっさと目を覚まさせて話し合う必要があるわけね」
ζ(゚ー゚*;ζ「ッ、誰が寝惚けてるって!?」
ξ ゚听)ξ「あんたに決まってんでしょうが馬鹿デレ」
つかつかと歩いていくと、ツンは床に倒れたデレの胸倉を掴んで起こした。
間近まで顔を近づけ、「よく聞きなさい」と紅い瞳を覗き込む。
- 393 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/04/08(月) 23:01:23 ID:tZsIa3Oc0
- ξ ゚听)ξ「確かに私が、あなたのことをちゃんと見てあげられなかったのは認める。でもね、見捨てたりなんかしてない。
ちゃんと話を聞いてあげなかったし、普段からも話をする機会を設けなかったのは完璧に私が悪い。
デレ、でもね。私は一度も、あなたから話をしてくることを拒んだつもりは無いわ」
ζ(゚ー゚*ζ「……!」
デレが自分の力で起き上がれることに気が付くと、ツンは胸倉から手を離した。
両手でデレの頬を包み込んで、額を自分のそれと合わせる。
ξ ゚ー゚)ξ「ねえ、デレ。これまでの分、今から取り返そう。それじゃあ駄目?」
- 394 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/04/08(月) 23:02:53 ID:tZsIa3Oc0
- ζ(;ー;*ζ「……駄目じゃ、ない」
ぼろぼろと、デレの頬が涙で濡れる。
先ほどまで戦っていたとは思えないほどに、無防備にデレは泣き始めた。
僅かに開けた瞳からは、紅い色などどこにも無く。本来の、茶色の瞳が覗いていた。
(´<_` )「……盛大な、姉妹喧嘩だな」
呆れたような弟者の声に、ツンは笑顔を見せた。
デレの頬に添えた手はそのままに、顔だけ振り返る。
ξ ゚ー゚)ξ「ありがとう、弟者」
- 395 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/04/08(月) 23:04:21 ID:tZsIa3Oc0
- (´<_` )「……礼を言われるようなことはしてないさ」
そう笑い合った先で、扉ががちゃんと大きい音を立てた。
全員が振り返ると、デレが守っていた扉が独りでに開いているのが見える。
ξ ゚听)ξ「先に行ってて」
ツンがそう言った。
ξ ゚听)ξ「私はまだ動けそうにないから。後から絶対行く」
( ^ω^)「僕が手当てするお!」
名乗り出た内藤に、モララーが「頼んだよ」と頷いた。
- 396 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/04/08(月) 23:05:34 ID:tZsIa3Oc0
- ( ´_ゝ`)「じゃあ、先に行くな」
ξ ゚听)ξ「うん」
進んだモララーが、ドアノブを掴む。開けた先には同じようにまた灰色の石壁が続いていた。
次に来る敵に警戒しながら、全員は階段を登り始めた。
第18話「劣」・終
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