( ´_ゝ`)時間を司るようです(´<_` )
第17話「向」



363 名前: ◆MH/VTCEj3A[] 投稿日:2013/04/04(木) 23:43:41 ID:xLZahnos0
 
 
 
 
 
逃げないと一緒に決めたから。
 
 
 
第17話「向」

364 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/04/04(木) 23:45:06 ID:xLZahnos0
('A`)「……不気味だな」

ドクオがぽつりと零した言葉に、兄者は頷いた。

弟者が囚われていた部屋から出ると、廊下に出た。
建物の内壁は灰色の石材が使われているらしい。
ひたすら灰色に覆われた室内は、すべての音を吸収しているのではないかと思うほど静かだった。
部屋を出た廊下は明かりが点いていたので、ランタンは早々に必要が無くなった。
ランタンを消したギコが先頭に、しぃ、モララー、兄者、弟者、ドクオ、内藤、ツンの順番で一行は進んでいる。
今は廊下の端にあった階段を登っていた。

365 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/04/04(木) 23:47:13 ID:xLZahnos0
('A`)「一体何階分登ったんだ? かれこれ10分はずっと登ってるぞ」

( ・∀・)「おそらく、弟くんがいた部屋が地下牢のようなものだったからだろうね。それにしては長すぎる気もするけど」

( ;´_ゝ`)「早くも疲れてきたんだが」

(´<_` )「体力作りの成果はどうした成果は」

弟者の言葉に兄者はぐ、と言葉を詰まらせた。
はいはい、と弟者は呆れたように呟きながら兄者の背を押した。

(´<_` )「まだ着いてもいないんだ。ここでくたばらないでくれ」

( ;´_ゝ`)「わーってるよ!!」

366 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/04/04(木) 23:48:48 ID:xLZahnos0
( ,,゚Д゚)「……おい」

兄者が弟者が言い合っていると、頭上から声が降ってくる。
その声は至って真剣な声音で、思わず兄弟は声を止めた。

( ,,゚Д゚)「扉だ」

階段の先には扉があるだけで、それ以上上に上がる階段も無かった。
ギコが言いながら、後ろを振り返る。
こくりと全員が頷いたのを確認して、ギコはドアノブに手をかけた。
その刹那。

( ;,゚Д゚)「ッ!」

(;*゚ー゚)「ギコ!」

367 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/04/04(木) 23:50:32 ID:xLZahnos0
手をかけたドアノブが付いた扉がすさまじい勢いでこちら側に開かれる。
咄嗟に手を離したギコは手を扉と壁に挟まれることは無かったが、次いで襲ってきた紅い光の衝撃波に瞠目する。
なんとか武器を発現させたはいいものの、自分の体の前の床に突き刺して盾にする。
両断するのもできない速度だと判断したその行動は、両手剣がまともに衝撃波を受け止めるだけで済んだ。
両手剣がびりびりと衝撃を受けて震えている。
「大丈夫か」と後ろを振り返り、怪我が無いことを確認すると再び前に向き直った。

ζ(゚ー゚*ζ「あらあら皆さん、お揃いで」

( ,,゚Д゚)「……デレ、か」

(´<_`; )「!」

368 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/04/04(木) 23:51:50 ID:xLZahnos0
聞こえた声とギコが忌々しげに呟いたその名前に、弟者が弾かれたように顔を上げた。
ギコが階段から部屋に足を踏み入れる。
恐る恐る、部屋に入った全員は部屋の中心に立つデレに向き合った。
視線を受けたデレは、その場で恭しくお辞儀をして見せた。
地下牢から階段にかけての石だらけの壁とは違い、その部屋は病院のような真っ白な壁と床と天井だった。
そこの中心に立つ、紅いワンピースに金髪のデレは酷く目立つ。

ζ(゚ー゚*ζ「改めまして、デレと申します。
        ロマネスク様の命で――受継者2人以外、全員、死んでもらいましょうか」

顔を上げたデレの瞳は紅い色をしている。

369 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/04/04(木) 23:53:28 ID:xLZahnos0
それに身構えた全員の中で――1人が、前に進み出た。

ξ ゚听)ξ「みんな、下がってて」

(´<_`; )「ツン、」

ξ ゚听)ξ「私1人で十分だわ」

ζ(゚ー゚*ζ「……へえ」

言い放ったツンに大して、デレがぎん、と睨み付けた。

ζ(゚ー゚*ζ「嘗められてるんだね、私」

ξ ゚听)ξ「……ええ、そうよ」

371 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/04/04(木) 23:55:11 ID:xLZahnos0
ツン、と弟者が名を呼んだ。
ツンはそれに振り返る。

大丈夫だから、と。
笑顔のツンは、そう声に出さず唇を動かした。

ζ(゚ー゚*ζ「随分余裕だね――ッ『砕けろ』!」

(´<_`; )「ツン!」

後ろを向いたままのツンに対し、デレが先制攻撃を仕掛けた。
デレは砕けろ、と言った。
声の衝撃波は言われた「言葉の意味を持った」まま、衝撃波に変化して相手へと向かう。

372 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/04/04(木) 23:56:23 ID:xLZahnos0
もしそれが当たってしまったら。
 
 
 
ξ ゚听)ξ「『消えろ』」
 
 
 
それは、あまりにも小さい声だった。

後ろを向きながら、向かってくる衝撃波を目視しないまま放ったその小さな言葉が、ツンの体に近付いていた紅い衝撃波にぶつかり霧散する。
紅を消し去った、ツンから放たれた衝撃波は――青い色を、していた。

自分の攻撃を無力化されたデレが舌打ちする。
ゆうるりと振り返ったツンの瞳は、済んだ海の青色に光っている。

373 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/04/04(木) 23:57:33 ID:xLZahnos0
ξ ゚听)ξ「そりゃあ、余裕も持つわよ。こっちはずっと守護者としての力を身に付けてきたんだから」

ざわり、とツンのツインテールが揺れる。
ツンの体から青い光が立ち上った。

ξ ゚听)ξ「さあ、お姉ちゃんと喧嘩しましょうか――デレ」

ζ(゚ー゚*ζ「ふざ、けるなあッ!!」

「『切り裂け』ッ!」それは叫んでいるに等しい声だった。
轟、窓も何も無い筈の部屋で風が沸き起こる。
あまりに強いその風は、ツンとデレのもとに収束して彼女たちの周りに竜巻のように纏わりついた。

374 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/04/04(木) 23:58:35 ID:xLZahnos0
紅い光の刃が、デレの周りに無数に出現する。
三日月のような形をしたそれは、くるりとデレの周りを回転すると――それぞれバラバラのタイミングで、上下左右からツンへと襲いかかった。
向かい来る光の刃をじっと見つめていたツンが、今度は普通の会話するような声の大きさで言った。

ξ ゚听)ξ「『切り裂け』」

デレと言った言葉と全く同じ。だが、その違いは歴然だった。
デレが出したものの3倍近くはある。1つがツンの下半身と大体同じ大きさだろう。
そして、形はしっかりと丸い。だが薄く、円盤のような形をしていた。

375 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/04/04(木) 23:59:52 ID:xLZahnos0
ツンが出した青い刃が、デレの紅いそれに一直線に向かっていく。
速度も倍近くあった刃は、ぱあんと大きな音を立ててデレの三日月をいとも簡単に粉々に砕いた。

ξ ゚听)ξ「あんたのことだから、どうせ後ろの扉にも声で何か仕掛けてあるんでしょう。面倒くさいことするわよね」

ζ(゚ー゚*ζ「……うるさい!」

デレがかっと顔を怒りで顔を赤くして言った。
 
 
 
 
 
後ろで見つめている兄弟と守護者達は、2人の戦いを見守ることしかできなかった。

376 名前: ◆MH/VTCEj3A[] 投稿日:2013/04/05(金) 00:01:36 ID:IJ1y8Eeo0
ツンの背後に居る今、迂闊に動かない方がいいと判断した。
背後に居させることで庇っているという意味もあるのだろう、そこから下手に動くとデレに狙われてしまうのは目に見えている。

( ^ω^)「……ツン、」

内藤がぽつりと、心配するような声音で呟いた。
兄者はふとそれに気が付いて、「ブーン」と声をかける。

( ´_ゝ`)「どうしたんだ? 何か心配なことでも、」

( ^ω^)「……まあ、ツンが絶対に勝つって信じてるわけじゃないお」

377 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/04/05(金) 00:02:33 ID:IJ1y8Eeo0
それは全員同じだ。
だが、内藤の言い方ではそれ以外の意味も含んでいるようにも聞こえる。
内藤は、不安げに眉を寄せたままだった。

( ^ω^)「あの時……デレがいなくなったことに気が付いた時」

そう切り出した内藤に、弟者が視線を向ける。

( ^ω^)「あの時のツンは自分を責めて責めて、1週間近く塞ぎ込んでたんだお。
      相当弱って、僕が毎日ドアの前でずっと話しかけて、やっと立ち直ったくらいだお」

だから、と。

378 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/04/05(金) 00:03:45 ID:IJ1y8Eeo0
内藤がツンを見つめる目は、険しい。

( ;^ω^)「今も、相当無理してるはずなんだお。
        だからもし、本人にそこを突かれてしまったら、」

( ;^ω^)「ツンは、崩れてしまうかもしれないお」
 
 
 
 
 
第17話「向」・終



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