( ´_ゝ`)時間を司るようです(´<_` )
第15話「感」



312 名前: ◆MH/VTCEj3A[] 投稿日:2013/04/01(月) 23:09:20 ID:4ylLcPSM0
 
 
 
 
 
笑顔の裏に隠された真意は。
 
 
 
第15話「感」

313 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/04/01(月) 23:10:55 ID:4ylLcPSM0
少し荒れたリビングで、全員が円になって話し合っていた。

( ,,゚Д゚)「敵陣に侵入するにしても、時間が欲しいな。主達の訓練をもっとちゃんとしたい」

('A`)「いくら守護者がいると言っても、完全に守り切れるわけじゃないしな。問題はどこを使うかだ」

ギコの言葉に、ドクオが苦々しい表情で頷いた。
弟者という人質が居たにしても、襲撃してきた相手は2人。
それに対して未来の守護者は5人で挑み――3人が死んでいるのだ。
カバーしきれないところが必ず出てくるだろうと踏んでの判断だった。

314 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/04/01(月) 23:12:20 ID:4ylLcPSM0
場所、という単語にモララーが考えるように腕を組んだ。
眉を寄せながら首を傾げて、いかにも考えながらという感じで口を開く。

( ・∀・)「飛空艇、まだあいつがいるかな? あれは自動操縦だから人質にする対象も無いとは思うんだけど」

ξ ゚听)ξ「そういえばモララー、アンタ書庫はちゃんと閉めてきたの?」

( ・∀・)「ああ、それは大丈夫。見られても困るようなものは鍵付だし」

モララーはポケットに手を突っ込むと、そこから取り出した琥珀の鍵をひらひらと振って見せる。
もう一度あそこに戻るのか、とドクオが難色を示した。

315 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/04/01(月) 23:14:35 ID:4ylLcPSM0
( ・∀・)「なんなら、僕達だけで行ってみるかい。それならきっと平気だろう」

('A`)「……そうだな」

まあそれはまた後だ、とモララーとドクオは話題を戻した。

(´<_` )「侵入経路は? 俺が捕まってた所まで兄者の能力で行けばいいのか」

( ・∀・)「そうなるね。そこから奴さんの住処を回って、早めにロマネスクに辿り着けばいいんだけど」

( ^ω^)「……相手が一体何人いるのか分からないおね」

316 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/04/01(月) 23:17:12 ID:4ylLcPSM0
内藤が不安げに零したその言葉に、兄者はほぼ反射的に「それは大丈夫だ」と声に出していた。
自然と視線は兄者に集まる。

( ´_ゝ`)「ロマネスクは不死だ。つまり、仲間ができてもずっと一緒にいることはできない。
      今周りにいるのもデレと、ショボンって奴と、あとまだ会ってない奴が1人。
      これは確証がある」

(*゚ー゚)「デレはツンと同じスタイルってことでいいのかな?」

ξ ゚听)ξ「ええ」

声から変化した衝撃波。これについては、使い手のツンがいるのだから弱点などもはっきり分かるだろう。
だがショボンと、未だ会っていないというもう1人については不安が残る。

317 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/04/01(月) 23:19:02 ID:4ylLcPSM0
( ,,゚Д゚)「ショボンについてはどうだったんだ? ドクオ」

('A`)「専ら銃を使ってたな。だがあれは主を抱えながらだったから、本当はもっと違う武器の使い手かもしれないっていう線は捨てきれない」

ξ ゚听)ξ「一般人だったはずが、自分の店を畳んでまであいつに従う理由が分からないわね」

訥々とずるずると、話は重い雰囲気を抱えたまま続いていく。
結局、大した結果も得られないままその日の会議は終わった。
 
 
 
 
 
( ´_ゝ`)「……やっぱ布団足りないな」

(´<_` )「だろうな」

318 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/04/01(月) 23:20:14 ID:4ylLcPSM0
飛空艇に迂闊に戻れず、かと言って行くところもない。
当分の間は流石兄弟の家で寝泊まりをすることになりそうだった。
リビングで雑魚寝をすることになったのだが、2人で住んでいた家にそんなに布団の数があるわけがない。
守護者が2人ずつ交代で寝ずの番をするらしいが、それでも足りなかった。

( ´_ゝ`)「頑張っても4組しかないなー……毛布はあるから誰か2人はソファーで寝てもらうか」

(´<_` )「……なあ、兄者」

( ´_ゝ`)「うん?」

(´<_` )「守護者であるあいつらが、俺達をソファーで寝かせると思うか?」

( ´_ゝ`)「……」

うん、無いな。

319 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/04/01(月) 23:21:22 ID:4ylLcPSM0
自分達がどんなに説得しても決して折れることのないであろう事態に、兄者は遠い目になった。

とりあえず見つかった布団を持っていこうと、布団を抱えてリビングまで向かおうとした時だった。

( ´_ゝ`)「……弟者」

兄者が、弟者を呼んだ。弟者は「ん?」とそれに答える。
弟者の方が先に部屋を出ていたので、廊下に出たところで開きっ放しの扉から部屋の中にいる兄者を振り返るような形だ。

( ´_ゝ`)「弟者はさ、この生活を恨んでるか?」

(´<_` )「……この生活って?」

( ´_ゝ`)「2人での生活」

320 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/04/01(月) 23:22:26 ID:4ylLcPSM0
そう尋ねる兄者は俯いていて表情を確認することができない。
それでも聞こえる声が震えているような気がして、弟者は首を傾げた。
兄者の意図するところがよく分からない。
弟者は、とりあえず自分の思うままのことを言うことにした。

(´<_` )「恨んでる、とまではいかないが……まあ、あまり快いものじゃないな。兄者が自由なことをできないわけだし」

( ´_ゝ`)「……そう、か」

ああ、震えている、と。
兄者が吐息と共に吐き出したような返事に、弟者はそう確信した。
何かあったのだろうか、と心配して声をかけようとした。

321 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/04/01(月) 23:23:31 ID:4ylLcPSM0
( ´_ゝ`)「あのさ、弟者」

だが、それは先に声を出した兄者に遮られる。
顔を上げた兄者は震える声に反して笑っていた。
けれど穏やか過ぎるその笑顔を見て、弟者はますます訳が分からなくなった。
 
 
 
( ´_ゝ`)「お願いだから、さ。こうなった経緯を、決して恨まないでくれ」
 
 
 
そう言った兄者の声色は「お願い」というよりも、「懇願」に近かった。

322 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/04/01(月) 23:25:02 ID:4ylLcPSM0
何故なのかという言葉も、体の横で震えるほど握り締められていた拳の理由も、弟者は聞くことができなかった。
 
 
 
 
 
( ・∀・)「一応あいつはいなかったけど、行く時は注意が必要だね。訓練してたら襲撃されました、なんて最悪だ」

( ´_ゝ`)「あ、訓練する時ってなるべく俺がみんなを移動させた方がいいよな? 破片のストックってそんなに多いわけじゃないだろ」

(*゚ー゚)「うん、それはそうなんだけどね」

( ´_ゝ`)「?」

( ・∀・)「そう、そういえば言ってなかったね!」

323 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/04/01(月) 23:27:15 ID:4ylLcPSM0
苦笑いするしぃに兄者が首を傾げていると、モララーは突如兄者のことを指差した。
うおっと兄者は声を上げて驚く。

( ・∀・)「ご主人、もうちょっと体力を付けようか!」

( ´_ゝ`)「え、」

( ・∀・)「力のコントロールをする時間が無いからそっちはもうどうにもならない。
でもね、君ただでさえ力を使う度に体力持ってかれてゼエハア言ってるよね?
もっと体力を付けないとやっていけないよ」

( ´_ゝ`)「いや、でも体力付けるなんて……」

(´<_` )「ただでさえ兄者は3年間の高校生活にある体育をやってないんだからな。体力は無くて当然だろう」

( ;´_ゝ`)「いや、でも小学校と中学校の9年間の体育があるし……!」

(´<_` )「甘いな。兄者は高校の体育の持久走の辛さを知らない」

( ;´_ゝ`)「ええええ」

324 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/04/01(月) 23:28:39 ID:4ylLcPSM0
そんな、と声を上げる兄者に対して、全員がうんうんと頷いている。
1対7という、敗北がありありと見える図だった。

( ・∀・)「ご主人はあれだよね。始め友達と喋りながら走ってるんだけど、体力無くて一緒だった友達に置いて行かれるタイプ」

( ^ω^)「あー、分かる気がするお」

( ;´_ゝ`)「えっちょっやめてその妙なリアリティがある話」

最早やることは決定して覆せないのだろう、と理解した兄者がその場で項垂れた。
ちらりと石を見遣る。
確かに、体力が無いとは思う。
能力のコントロールができず、いつも使いすぎて変に疲れてしまっている。
コントロールを身に付ける為にも体力を付ける必要もあるが、果たしてそんな急に思い立ってやったところで短期間で体力が付くのかという疑問もあった。

325 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/04/01(月) 23:30:54 ID:4ylLcPSM0
( ´_ゝ`)「で、ちなみにその体力作りの内容は」

( ・∀・)「毎朝走る、訓練前に軽い体力作りトレーニングを済ませておく。これだね」

( ,,゚Д゚)「訓練前のトレーニングは向こうに行ってからその日のコーチである守護者が手伝う。ランニングは内藤が見てくれるそうだ」

( ^ω^)「走るのなら僕に任せるお!」

( ;´_ゝ`)「うええ」

既に内容を聞いただけでも兄者は嫌そうに表情を歪ませた。

( ・∀・)「まあ、やらないよりはマシだからね。ちなみに今朝の分として、今から行ってきてもらうから」

( ;´_ゝ`)「え゛!?」

326 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/04/01(月) 23:32:45 ID:4ylLcPSM0
( *^ω^)「よーし、行っくおー!」

「嘘だああああ」内藤に引きずられながら、小さくなっていく悲鳴と共に兄者は出て行った。
それを憐れみを含んだ目で見送ってから、弟者は守護者達の方に向き直った。
すう、静かに息を吸ってどこか緊張した面持ちをした守護者達に口を開く。

(´<_` )「で? 俺だけにしたってことは、何か話があるんだろう」

(*゚ー゚)「……やっぱり気付かれちゃったね」

しぃが眉を下げて笑う。ギコが気遣うようにそれをちらりと見遣っていた。
モララーがさて、と緊張を感じさせない声で言った。

327 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/04/01(月) 23:34:03 ID:4ylLcPSM0
ツンは腕を組んで眉を顰め、弟者を見つめている。

( ・∀・)「弟くん。君は、どうしたい」

(´<_` )「何を」

( ・∀・)「今回、重点的に狙われるのはご主人だってわかっている」

モララーの言葉に、弟者は不本意そうに目を細めた後渋々頷いた。

( ・∀・)「ご主人はロマネスクを止めようとしてる。
       どうやってかは分からないけど、それを実行するのには絶対に触れる必要があるはずだ。そしてその時に傷を負う可能性も」

(´<_` )「……で?」

328 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/04/01(月) 23:35:46 ID:4ylLcPSM0
( ・∀・)「僕らはそこで、君がご主人を庇って死ぬ可能性もあると当然考える」

モララーが改めて突き付けてきたその言葉に、弟者はぐっと唇を噛んだ。
否定ができないが故に、悔しかった。

そんなことが起これば、兄者に凶刃に倒れるようなことがあれば、それを見るなり自分はすぐさま代わりにと飛び出すだろう。
だがそれは、これまで受継者が辿ってきた歴史と同じだ。
何も変わらず、そして兄者も道連れになり、力は次の世代へと受継される。
また次の受継者がロマネスクに狙われることになる。

('A`)「だから、主。オレ達は主が望めば、それだけの力を身に付けさせると約束する」

(´<_` )「!」

329 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/04/01(月) 23:37:30 ID:4ylLcPSM0
ドクオの言葉に、他の守護者達も頷いた。

( ,,゚Д゚)「元からあんたは筋が良い。訓練じゃなく、模擬実戦の方が良いだろうと思ってな」

ξ ゚听)ξ「限りなく本物に近づければ、それだけ本番に使えるはずよ。そして、それだけ対抗することができる」

('A`)「だから、オレ達はそれを主がやってくれるか。こうして選んでもらいたいんだ」

(´<_` )「……そんなの」

やるに決まってるだろう。
弟者の言葉に、守護者達はほっと安心を露わにした。
緊張は崩れ去り、空気は穏やかに変化する。

330 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/04/01(月) 23:38:54 ID:4ylLcPSM0
ふと弟者は思い立ち、口を開いた。

(´<_` )「あんた達、守護者だって立場で俺らに付き動いてるけど、本当にそれでいいのか」

弟者の言葉に、守護者達は一瞬ぽかんと呆けたように弟者の方を見た。
だがすぐに笑顔になり、弟者の言っていることがおかしいとでも言うように溜息を吐いた。
何のことだか分からない弟者に対し、モララーは「残念ながら」と言った。

( ・∀・)「僕達守護者の一族は、どうも受継者に惹かれるようにできているらしい」

331 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/04/01(月) 23:41:08 ID:4ylLcPSM0
(*゚ー゚)「だから主人がどんなことをしようとしても、自然と従う気持ちになっちゃうんだ」

('A`)「まあ、それだけ主のやろうとすることも良いと思えるってことだがな」

(´<_` )「……そう、なのか」

弟者はそう呟いた。
自分の生死までも、自分達を守る為に費やす守護者達に、弟者は感謝と罪悪感を感じた。
 
 
 
 
 
第15話「感」・終



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