■( ´_ゝ`)時間を司るようです(´<_` )
└第12話「否」
- 241 名前: ◆MH/VTCEj3A[] 投稿日:2013/03/22(金) 23:12:25 ID:vmfo4mZ20
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覚めたくないと思ったのは今まで無かった。
第12話「否」
- 242 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/03/22(金) 23:13:42 ID:vmfo4mZ20
- ( つ_ゝ`)「……」
酷い夢だった。
見たくもない映像を延々と頭の中に流されていた。
自分の意思など関係ないように、一方的に事実を淡々と。
( ´_ゝ`)「……頭いてえ」
( )『幸せになるのじゃ!』
( _ゝ )「……ッ!」
こちらが望まないことまで、伝わってきた。
初めて自分の運命を呪った日だった。
- 243 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/03/22(金) 23:15:03 ID:vmfo4mZ20
-
( ∀ )「……はは」
書庫の中で、モララーは天井を仰いで乾いた笑いを漏らした。
彼の正面には、ドクオが片手で顔を覆っている。
その表情には色濃い疲労と。何より、後悔の念が強く表れていた。
モララーは持っていた本をばさりと放った。
本の山に投げ出されたその本の、開いたページには古めかしい写真がある。
映っていたのは。
- 244 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/03/22(金) 23:16:31 ID:vmfo4mZ20
- ( ・∀・)「杉浦ロマネスクか。そうだよ、道理で聞き覚えがあると思ったんだ」
('A`)「……これは、過去の受継者に話を聞きに行かないとな」
( ・∀・)「ああ。起きているといいんだけどね」
「ついでに全員集めないと」モララーは座り込んでいた床から立ち上がり、固まった背を解そうと伸びをした。
大きく溜息を吐いて、書庫を出る扉へと向かう。
ドクオもワンテンポ遅れてそれに続いた。
( ・∀・)「弟くんの予想が当たるなんてね」
- 245 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/03/22(金) 23:17:49 ID:vmfo4mZ20
- ('A`)「できれば当たってほしくなかったがな」
誰もいなくなった書庫の扉が、音を立てて閉まった。
( ・∀・)「杉浦ロマネスク。受継者を狙っている。弟くんを襲撃したのも主犯はこいつだ」
全員が集結した部屋で、一つの丸テーブルを囲むようにして全員が立っていた。
兄者の顔色はあまり良くない。
隣に立つ弟者が兄者に声をかけるが、兄者は「大丈夫」と作り笑いをするだけだった。
- 246 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/03/22(金) 23:19:40 ID:vmfo4mZ20
- ( ・∀・)「はっきり言おう。こいつはおそらく不老不死だ」
( ,,゚Д゚) 「なんだと?」
モララーが口にした非現実的な言葉に、ギコが怪訝そうに眉を寄せる。
「まあ聞いてよ」苦笑いを隠しきれないモララーが、すっと視線を伏せる。
( ・∀・)「杉浦ロマネスク。何か聞き覚えがある名だと思ったんだが、嫌なことに当たってね。
今から142年前。脱獄したまま行方を眩ませた、殺人鬼の名だ」
- 247 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/03/22(金) 23:21:22 ID:vmfo4mZ20
- ξ;゚听)ξ「は……?」
ツンの表情が引き攣った。
ツンにとっては、妹のデレのこともある。
妹が仕える相手が、不老不死の殺人鬼など。信じられないのだろう。
( ・∀・)「27人を殺害。死罪として処刑日まで牢獄にいた間、脱獄してそれきりだ。
そして、受継者に守護者が付くというシステムが生まれたのも142年前」
さらにだ、と話すモララーを見つめながら。
兄者が小声で「やっぱり」と呟いた。
- 248 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/03/22(金) 23:22:31 ID:vmfo4mZ20
- (´<_` )「? 兄者?」
( ・∀・)「書庫中の本ひっくり返して調べたら、今まで読んだことのない本が出てきてね。おかげにそれが重要物だときたもんだ」
( ・∀・)「それが、受継者のことについて詳細に書かれた本でね」
モララーはそう言って、本を取り出した。
茶革のカバーをかけられた本は、見ただけで年季が入っているとわかった。
どこかクラシカルなデザインのそれは、まだ埃を被っているようにも見える。
- 249 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/03/22(金) 23:24:11 ID:vmfo4mZ20
- ( ・∀・)「これによると。時間の受継者には、石なんて存在しなかったらしい」
(´<_`; )「えっ」
石を首から下げた弟者が声を上げる。
( ・∀・)「石が生まれたのも142年前。この142年前、っていう同時期がすごくひっかかるんだけどさ」
どうかな、ご主人?
話を振られた兄者が、ごくりと唾を飲んだ。
- 250 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/03/22(金) 23:25:31 ID:vmfo4mZ20
- モララーと兄者以外は、何のことだかさっぱりわかっていない。
兄者はすう、と深呼吸を一つしてから石を握り締めた。
( ・∀・)「ご主人が気を失う直前だね。首を絞めてくるあいつの手を、抵抗しようと君は握っていたはずだ。その君の手が、気を失う直前に青く光っていたような気がしたんだけど」
( ´_ゝ`)「……よく見てたな、モララー」
( ・∀・)「ありがとう」
モララーは常と同じトーンで礼を言うと、じっと兄者を見つめた。
- 251 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/03/22(金) 23:26:20 ID:vmfo4mZ20
- 漆黒の瞳が、「さあどう出る」と試しているようにも思えた。
( ´_ゝ`)「……モララーの言う通りだ。自分の意思じゃないが、力が発動してた。
結果、あいつの過去に若干触れた」
全員が息を飲む。
その中で一番敏感に反応したのは弟者だった。
殺人鬼の記憶に触れる。それはつまり、その者の過ごした日々を見るということで。
人を殺す光景を、まともに見るということなのだ。
- 252 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/03/22(金) 23:27:09 ID:vmfo4mZ20
- 「兄者、」情けない声音で呼びかけてしまう。
だがそれだけで言おうとしたことが分かったのか、兄者は弟者に弱弱しく微笑んだ。
( ´_ゝ`)「142年前。ロマネスクが最後に殺した相手が、過去の受継者だった」
( ´_ゝ`)「気付いたのが遅かったらしくて、過去の受継者はもう力を使っても治せないところにまできてた」
( ´_ゝ`)「次からそんなことが無いように、と――未来の受継者が、力を石に変えて、割ったんだ」
- 253 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/03/22(金) 23:28:27 ID:vmfo4mZ20
- きっとそこから石ができたんだ、と兄者は締めくくった。
モララーはふむ、と口元に手をあてていたが、兄者が言葉を続ける気配が無くなったのを見て口を開いた。
( ・∀・)「でも、それぞれが石を身に付けていても相手の危機なんて分からないよね?」
( ´_ゝ`)「俺達の前の世代はみんな、自分のじゃなくて互いの石を付けてたみたいなんだ」
( ;^ω^)「……ちょ、ちょっと待ってくれお」
答えた兄者を、内藤が止めた。
- 254 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/03/22(金) 23:29:35 ID:vmfo4mZ20
- ( ;^ω^)「主、今、」
( ;^ω^)「どうして、142年前以後の受継者のことに答えられたんだお?」
内藤の質問に、しぃが少し考えるような表情をした後――はっとしたように兄者を振り返った。
まさか、音にこそならないがしぃの唇がそう象っていた。
しぃに答えるように、兄者は頷いた。
( ´_ゝ`)「ロマネスクは、ずっと時間の受継者を狙い、殺してるんだ」
- 255 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/03/22(金) 23:31:10 ID:vmfo4mZ20
- (;*゚ー゚)「……そんな」
「これは142年前の受継者に原因がある」石を握り締めていない方の下ろした手が、きつく握り締められていることに弟者は気が付いた。
そのまま視線を上げれば、何かを堪えるような表情をした兄者の姿がある。
自分にしか果たせないことだと、込み上げる苦痛に耐えているのだと弟者には分かった。
( ´_ゝ`)「その時代の未来の受継者は、過去の受継者を殺したロマネスクに呪いを残した。
ここは音声が不明瞭で、事情がよく分からなかったんだけど」
- 256 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/03/22(金) 23:32:52 ID:vmfo4mZ20
- ( ´_ゝ`)「『分からないなら永遠に与えてやる』って。そう言ってた。きっと、ロマネスクに訪れる死を無くしたんじゃないかって思う」
('A`)「……それで死ねなくなったロマネスクが、時間の受継者を殺してるって?」
こくりと兄者が頷いた。
モララーは目を閉じ、頭が痛いと小さく呟いた。
( ・∀・)「あくまで狙いは過去の受継者なんだね。過去の出来事を揉み消そうとでもしてるのかな」
- 257 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/03/22(金) 23:34:10 ID:vmfo4mZ20
- ( ´_ゝ`)「でも、過去を狙ってても必ず死ぬのは未来の方なんだ。
未来の受継者が過去の受継者を庇って死に、過去の受継者がそれに引きずられて死ぬ」
('A`)「だからいつまで経っても元に戻れない、と」
ドクオの言葉を最後に、全員が沈黙に沈んだ。
過去に起こった出来事は、兄者が望めば変えることができるのだろう。
『死を否定されたことを無かったことに』、触れながら願えば。
だが、それをやろうとする頃には兄者はきっと刃を突き立てられている。
- 258 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/03/22(金) 23:35:08 ID:vmfo4mZ20
- ( ・∀・)「……どうすればいいんだろうね」
モララーの言葉が、全員に重く伸し掛かった。
兄者の拳は、震えていた。
第12話「否」・終
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