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214 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/09/18(火) 22:15:53 ID:bIEcoEpo0
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遠くから鶏の鳴き声が聞こえた。
薄っすらと目を明けると、カーテン越しに日の光が溢れている。
ツンは起き上がり欠伸を一つ。
ベッドから起きると、着替えをしようと壁にかけてあった服を手に取る。
部屋干ししていたスラックスはまだ微妙に乾いていない。
カーテンを空け、カーテンレールに干しなおす。
直ぐに出るため気休めだが、日に当てると当てないとでは違うだろう。
それにしても、そろそろ着替えを買いに行かないと。
下着姿のまま、水道を捻り水を飲む。
少々カルキ臭いが冷たくて気持ちがいい。
蛇キメラとの戦闘から三日。
身体の調子はいまいち戻りきってはいないが、大分マシにはなった。
タカラは一命は取り留めたものの、まだハインリッヒのところで療養している。
ブーン達もこの街にしばらく滞在するといっていた。
魔女の目撃情報にくわえ、あのキメラが魔女の手によるものだと確信していて、
ここで魔女を探すつもりらしい。
一応、ツンも仕事の合間に手伝うつもりだ。
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215 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/09/18(火) 22:16:41 ID:bIEcoEpo0
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禁酒委に保護された後、ツンは無事大五郎に引き渡された。
タカラは前述のようにハインリッヒのところへ運ばれ、ツンは専用の宿舎に。
支社があるといってもまだ準備段階に近いため、人は少なかった。
というのも、ツンたちと共に運ばれた荷物が、まず最初の商品だったらしいのだ。
故に例の襲撃で全て潰されたせいで休業中。
大五郎も品物に限りがあるため予定外の補給は簡単にはできない。
噂によると、ツンたちの襲撃があった日、他の地域でも大きな暴動があり、
輸出用のストックが薄くなっているのだそうだ。
そもそもまだ市場を開拓できていないサロンよりも他を優先するのは、まあ仕方がないだろう。
更に悪い噂では、サロン進出を見合わせるかも知れないというのだ。
迅速に動いた禁酒委に抗おうと計画を強行したものの、度々の襲撃で完全な赤字状態。
そもそも禁酒委がいないから手を出そうとしていたので、今の状態は割に合わんということらしい。
よって、ツンちゃんはお仕事しながらも、糞お暇状態。
警備の巡回という名目でうろつきまわっているだけである。
社員も傭兵も商品も補充されないことを考えると、諦めようというのは本当なのかもしれない。
そもそも飲酒文化が希薄なサロンに展開しようとしたことが間違いだと思うが。
ツンは、直接話した印象で大五郎酒造社長、渋沢を尊敬しているもののちょっと幻滅だ。
魔法と戦闘の才能はあっても、商才はないのかもしれない。
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216 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/09/18(火) 22:17:32 ID:bIEcoEpo0
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ξ゚听)ξ「たっかーらくーぅっん、あーそーぼっ」
そんなわけで。指定されたルートを外れ、ツンはハインリッヒの家に来ていた。
手には近所の直売所で買ったミルクとバター、木苺ジャムとパンをバスケットに入れて持っている。
从 ゚∀从 「あのな、普通に入って来いよ」
ξ゚听)ξ「変化のない田舎の日常に変化を求めてみたの」
出迎えてくれたハインリッヒと共に、中へ。
ハインリッヒの家は、それなりに大きな二階建てだ。
二階にハインリッヒの個人的な生活スペースがあって、一階は丸々診療スペースになっている。
从 ゚∀从 「つっても、俺は往診がメインだから、ここで治療することは少ないんだけどな」
というのは初めてここを訪れたときにハインリッヒが言っていた言葉。
確かに、それらしい設備はあるものの、使用感はない。
ξ゚听)ξ「これ、お土産」
从 ゚∀从「ああ、もって行ってやれよ。なまものは食っちまってくれよな」
ξ゚听)ξ「違う、重いから持って」
从 ゚∀从「お前も中々人を小ばかにしてるよな」
失礼な。ツンちゃんは甘えられる人にはついつい甘えちゃう系女子なだけである。
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217 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/09/18(火) 22:18:13 ID:bIEcoEpo0
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診療所の奥、入院患者用の狭い病室にタカラはいる。
ベッドで枕を背もたれに上半身を起こし、本を読んでいた。
( ,,^Д^) 「お、今日も来たのかにゃ」
ξ゚听)ξ「暇だから遊びに来ちゃった」
( ,,^Д^) 「いや働けにゃ」
从 ゚∀从「まったくだ」
ハインリッヒが、ベッドサイドのテーブルに、土産の入ったバスケットを置く。
ツンはその中からビン入りのミルクを取り出し、タカラに渡した。
籠に下級の氷結魔法をかけているので、ひんやりと冷たい。
( ,,^Д^) 「いっつもわるいにゃ〜」
ξ゚听)ξ「さっさと復帰してよね。知らない人ばっかりで居心地悪いの」
( ,,^Д^) 「俺は平気だって言ってるのにリッヒがダメだって言うんだにゃ」
タカラの体の傷はもうほぼふさがって直っているが、毒でただれた痕はまだ残っている。
赤くざらついた皮膚を見ると、ツンは少し胸が痛む。
これは、ツンを庇うために負ったものだ。
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218 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/09/18(火) 22:18:55 ID:bIEcoEpo0
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从 ゚∀从 「あのなあ、あのキメラの毒舐めんじゃねーぞ」
ξ゚听)ξ「舐めないわよ。死んじゃうじゃない」
从 ゚∀从 「……」
ξ゚听)ξ「イタッ」
ハインリッヒに頭を小突かれ軽口を紡ぐ。
ちょっとした愛嬌じゃないか。何も叩かなくても。
从 ゚∀从「除毒には成功したが、体の至るところの細胞が破壊されてんだ」
从 ゚∀从「死ななかったのが奇跡なくれーなんだぞ。あと三日はは安静にしてもらうぜ」
( ,,^Д^) 「にゃあ、しかたないにゃ」
ξ゚听)ξ「そんなやばい毒だったんだ」
从 ゚∀从「ああ、本体の見た目と同じく複数の毒のブレンドだ。魔法じゃなかったらまず無理だったな」
気持が少し重くなる。
もしあそこでハインリッヒが来てくれなかったら、タカラが死んでいたかもしれないというのは初めて聞いた。
あまりにも普通にしているから、特別なものではないと思っていたのに。
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219 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/09/18(火) 22:19:42 ID:bIEcoEpo0
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从 ゚∀从 「お前もあんまり無茶すんなよ。あくまで部分部分を繋ぎなおしただけなんだから」
ξ゚听)ξ「分ってますって」
こちらは耳にたこが出来るほど注意された。
戦闘を終えたツンはあまりに短期間に怪我を重ねたため、治療魔法をただかけるのは非常に危険だった。
なので、最低限の内出血や骨折を繕い、もれた髄液などを除去するだけにとどまっている。
今、ツンが動いていられるのは、ハインリッヒの施した保護と麻酔の魔法のお陰だ。
服をめくれば、打撲の痕がボコボコある。
ξ゚听)ξ「あの時は先生だってノリノリだったくせに」
从 ゚∀从「まさか、そんな鉄砲玉みたいな体の使い方すると思わなかったんだよ」
从 ゚∀从「ったく、乳は小さくても一応女だろうが。もう少し身体を労われ」
ξ;゚听)ξ「ちっちゃくないわ!邪魔だからさらしで抑えてるだけじゃ!」
从 ゚∀从「あのな、俺は軽く触っただけで身体の状態が分るんだよ」
ξ゚听)ξ
从 ゚∀从「虚しい嘘、つくなよ」
ξ∩凵ソ)ξ「哀れまないで!馬鹿にしてもいいから哀れむのはやめて!!」
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220 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/09/18(火) 22:20:23 ID:bIEcoEpo0
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タカラの見舞いを終え、ツンは再び巡回に戻っていた。
ブラブラと適当に道を歩き、見かけた人に挨拶をして、また適当に歩く。
仕事に出るようになったのは昨日からだが、ツンは既に飽きていた。
この前のキメラ襲撃が嘘のようにサロンは平和だった。
人々は畑で農作業に励み、牛が牧草を食む。
柵に身体をあずけてその様子を見守っていると、自然に欠伸が出た。
長閑だ。長閑過ぎる。
腰に剣を差しているのがアホらしいくらいだ。
( ^ω^)「仕事サボって何やってんだお?」
ξ゚听)ξ「仕事中よ」
いつの間にかブーンが横にいたが、特別驚くこともなかった。
彼は今ハインリッヒの家に部屋を借りている。
今日はもう出かけたと聞いていたので歩いていれば出くわすこともあるだろうと予想していた。
( ^ω^)「草むしりするおじさんのお尻を見るのが仕事なのかお?」
ξ゚听)ξ「どっしりしたいいお尻してるわよね」
( ^ω^)「……」
ξ゚听)ξ「アンタは?」
( ^ω^)「僕はキメラ探しってところだお」
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221 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/09/18(火) 22:21:12 ID:bIEcoEpo0
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あの、満身創痍で何とか倒したキメラが魔女由来のものだとブーンは考えているらしかった。
禁酒委の中尉と何か話したのかは知らないが、魔女がこの街にいるという確信を得たらしい。
ξ゚听)ξ「魔女、見つかりそう?」
( ^ω^)「うーん。いっそこの街消すぐらい大暴れしてくれれば見つかるかも」
ξ゚听)ξ「割と冗談になってないわ、それ」
ブーンは昨日いっぱい情報屋の言っていた目撃情報の発進主を探していたが、一向に見つかる気配が無い。
それどころか尋ねた人全てが初耳と言った顔で驚き怯えるので、聞き込みは断念した。
しかし、あのキメラがいたことを考えると、デマだったとは考えにくい。
キメラが目撃されるようになった時期も、魔女の目撃情報があった時期に一致している。
デマに偶然が重なったとも取れるが、それにしては出来すぎだ。
そこでブーン(実際は相棒のドクオ)が導き出した推測は、内部からのリーク。
魔女と手を組み何か企む禁酒委上層部(または一部の過激派?)に気付いた内部の人間が
情報を流したと考えるのが自然なのだとか。
そう考えれば、「この街に魔女がいる」という情報の信憑性も増す。
ツンからすると、他にあてが無いから、こじつけているようにも思えるのだけれど。
ξ゚听)ξ「とりあえずいるならいるでさっさと捕まえてよね。物騒だし」
( ^ω^)「おーん、善処するお」
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222 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/09/18(火) 22:22:04 ID:bIEcoEpo0
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ξ゚听)ξ「あ、そうだ。今ドクオ起きてる?」
( ^ω^)「お?ちょっと待ってお」
ツンにはよく分らないのだが、ブーンとドクオは、その時優位な人格では無いほうも
別に意識を失っているわけではないらしい。
意識の奥に引っ込んだり出てきたりはあるものの、基本的には見聞きしたものを共有しているそうだ。
ドクオは魔法関連の考え事をするため、体をブーンに任せて引きこもることが多い。
気まぐれに表れることもあるが、大抵はブーンも分らない意識の深層で理屈をこねている。
('A`) 「おはよ。どうした?」
ξ゚听)ξ「おは。あのさ、いつでもいいからさ、私に魔法教えてよ」
('A`) 「んー?別にいいけど、お前師匠いるんだろ?そっちに習えよ」
ξ゚听)ξ「いやー、なんていうか、私途中で師匠のところ飛び出してきたからさ」
('A`) 「ならなおさらだ。俺とお前じゃ展開法の系統が違うし、ちゃんと師匠のトコで修めた方がいいぜ」
ξ゚听)ξ「それがですねえ」
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223 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/09/18(火) 22:23:29 ID:bIEcoEpo0
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('A`) 「なんか問題あんのか?」
ξ゚听)ξ「師匠と喧嘩して、色んな魔法具とか壊したり盗んだりして飛び出してきちゃったから」
('A`) 「……」
ξ゚听)ξ「師匠ぶちキレ、みたいな?見つかったら天叢雲でみじん切り、みたいな?」
('A`) 「……」
ドクオの、長ーいため息。
頭をボリボリと掻いて、面倒臭そうに考え込んだ。
('A`) 「お前、ホント人を小ばかにしてるよな」
ξ゚听)ξ「考えて出した結論それかよ」
ドクオも中々失礼な奴である。
ツンはツンなりに真面目に生きている。ちょっとバカだって言われるけど。
('A`) 「……分った。基礎的な部分なら大丈夫だろ」
ξ゚听)ξ「やった。ありがと」
ドクオは再びため息。いかにも厄介ごとだ、という顔をしていた。
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224 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/09/18(火) 22:24:17 ID:bIEcoEpo0
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後日魔法の教練を受ける約束を取り付け、ツンは巡回に戻った。
ドクオは再びブーンに身体を預け、新しい魔法の構成だかを始めたらしい。
力として魔法を扱えればいいだけのツンにとっては、魔法の研究など変態のやることだ。
拾った木の枝を振り回しながら農道を行く。
地面の石をゴルフの要領で打とうとして腰が痛くなったので、その後は大人しく歩いた。
一口に農の街サロンシティとは言っても全てが全て農地というわけでは無い。
中心街は比較的都会の雰囲気を持ち、そこから偏狭に行くにつれての農地へと変わっていく。
農地も、隣接するオーマ湖に近い場所には水を多く必要とする野菜等の作物が。
荒野側の比較的乾いた土地には、果物や乾燥に強い作物が生産されている。
ツンは荒野側の農地区画をぐるりと周り、例のキメラに襲われた場所へ。
現場はロープが張られ当時のままになっている。
魔法や咬撃によって抉れた地面と、焦げたキメラの血の痕。
あの時、残っていたキメラの体の破片は禁酒委員会が総出で焼き尽くした。
よって、再生できるほどの細胞はもう残っておらず、キメラだった物の炭が残っているばかりだ。
ξ゚听)ξ(あの毒、採取できたら色々便利だったろうなあ)
主に、暗殺とか。
そんな物騒な考えを引っ込め、ツンは中心地へと踵を返した。
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225 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/09/18(火) 22:24:57 ID:bIEcoEpo0
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ξ゚听)ξ「あら?」
それは、支店へ報告へ帰るために禁酒委員会の支部の近くまで来た時のことだ。
何で禁酒委員会の傍を見て回らなくちゃならないのか甚だ疑問だったが、敵情視察の一言で片付けられた。
この組織と係わり合いを持ちたくないというツンの望みは、そんなあやふやな理由で却下。
そもそもまともに業務展開できていないのに視察も糞も無いと思う。
なので支部が近づくにつれ少しづつイライラしていツンだったが、丁度いはけ口を見つけた。
禁酒委サロン支部の裏手で、ゴミ出し作業をしている兵士がいる。
この間ツンの見張りについた、あの女だ。
ξ゚听)ξ「手伝いましょうか?一級曹」
/ ゚、。;/ 「僕の仕事だし、手を出さなくていいだし」
女、鈴木ダイオード一級曹は振り返らずにせっせと作業を続けている。
大方ツンを部下の誰かだと思っているのだろう。
仮にも兵士ならば背後にもっと気を配るべきだ。
ξ゚听)ξ「あなたソコソコ上の階級でしょ?何でそんな下っ端の仕事してるの?」
/ ゚、。;/ 「懲罰だから仕方ないんだし……」
_,
ξ゚ー゚)ξ 「へえ、懲罰なんだぁ」
ツンは、思いっきり嫌な笑みを浮かべた。
-
226 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/09/18(火) 22:25:58 ID:bIEcoEpo0
-
/ ゚、。;/ 「って!何でお前がここにいるんだし?!」
_,
ξ^ー^)ξ「ねえねえ、なんで懲罰なの?何やったの?」
/ ゚、。;/ 「ぐぬぬぬぬ」
_,
ξ^ー^)ξ「いいじゃない、大人しく白状しなさいよ」
/ ゚、。;/ 「機密だし!機密だからいえないし!」
_,
ξ^ー^)ξ「あ、もしかして、VIPでブーン襲って返り討ちにあった僕っ子ってアンタのこと?」
/ ゚、。;/ そ
_,
ξ^ー^)ξ
/ ゚、。;/ ´、
. _,
ξ;^ー^)ξ(わかり易すぎて不憫になってきた)
しかしツンは手を緩めたりはしない。
強敵と認めるからこそ決して容赦はしないのだ。
もといなんか気に入らないので弱みに付け込んでいびり倒すつもり満々である。
頭のついでに性格も悪いとかいうな。
-
228 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/09/18(火) 22:27:20 ID:bIEcoEpo0
-
/ ゚、。;/ 「むむむむ、大五郎なんかに肩入れする奴はいやな奴ばっかりだし!!」
_,
ξ゚ー゚)ξ「貴方が一級曹なんて、禁酒委員って間抜けの集団なのね」
/ ゚、。;/ 「……ぺちゃパイ」
_,
ξ゚ー゚)ξ
ξ゚听)ξ「あ?あんた人のこと言えんの?」
/ ゚、。 / 「僕は任務に邪魔だからさらしで抑えてるだけだし」
この二人、胸の大きさも同じならば言い訳も同じである。
世に言う同族嫌悪というものか。
ξ゚听)ξ「……斜め顔」
/ ゚、。 /「……髪の毛ペペロンチーノ」
ξ゚听)ξ
/ ゚、。 /
二人の間に火花が散る。
とてもしょうもない諍いの火蓋が切って落とされた。
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229 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/09/18(火) 22:28:40 ID:bIEcoEpo0
-
ξ#゚听)ξ「……ツンツーン、もう我慢できない。ぶちのめす」
/ ゚、。#/「人を小ばかにしやがってだし!切り刻んでやるだし!だしだしだしっ!!」
ツンはナイフを、ダイオードは腰のサーベルを抜いた。
リーチとしては不利だが、ツンには魔法のブーツがある。
ダイオードが何か手の内を隠している可能性もあるが、そんなもの使わせる前に勝てばいい。
先に動いたのはダイオード。
脇に構えたサーベルを横なぎに振るう。
ツンは上半身を引いて回避。
戻すバネでナイフを突き出すがダイオード゙はそれを戻した剣で受ける。
拮抗した力がが行き場を失い、刃がこすれあってカチカチと音を立てた。
ツンは空いている左の拳を小さな動きでダイオードの腹へ。
ダイオードの左手がそれを防ぎ、再び硬直状態に陥る。
同時に武器を弾きあい、二人は間合いを取った。
ξ゚听)ξ(流石は一級曹、そこらの雑魚とは話が違うみたいね)
/ ゚、。 / (女の身で大五郎の傭兵やってるだけはあるだし、コイツ)
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230 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/09/18(火) 22:29:56 ID:bIEcoEpo0
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ξ゚听)ξ(もったいないけど……)
ツンはブーツの魔法を発動。
足を基点に風が全身に絡みつき、その身を軽くする。
/ ゚、。 / (魔法具?!そんな上等なものを……?!)
ダイオードが僅かにたじろいだ一瞬に、ツンは地を蹴る。
高い位置からの胴回し回転蹴り。
魔法により速さを増したその蹴りは、ダイオードの反応を置き去りに振り下ろされた。
/ ゚、。;/ 「!!」
ξ゚听)ξ「?!」
ツンはその瞬間何が起きたのかまったく分らなかった。
足がダイオードの肩口に食い込むその寸前、体が突然吹き飛ばされたのだけは確実だ。
痛みというほどではないものの腹に何かを受けた感覚がある。
ただ単に、体が慣性や重力から切り離されたように、突然明後日の方向へ飛んだ。
片手を突いて着地。同時にダイオードへ目を向ける。
_
( ゚∀゚) 「……」
そこには、胃の辺りを手で押さえた、禁酒委中尉が立っていた。
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231 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/09/18(火) 22:31:10 ID:bIEcoEpo0
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/ ゚、。;/ 「ちゅ、中尉!」
ダイオードもあっけに取られていたらしく、彼の存在を知覚すると慌てて敬礼した。
中尉、ナガオカは振り返り様にダイオードへ上段回し蹴り。
ブーツの足がダイオードに当たると、打撃音も無くダイオードの体が吹き飛んだ。
その小柄な体がゴミ溜めの中に突っ込む。
恐らく、ツンもあんな感じで蹴られたのだろう。
_
( ゚∀゚) 「ダイオード一級曹。状況の説明を」
/ ゚、。;/ 「けぺっ!ぺっ!は、はい!」
ゴミから這い出したダイオードは口の中から何かを吐き出し、敬礼する。
頭にはジャガイモの皮がくっついている。
_
( ゚∀゚) 「聞こえなかったか?大五郎の傭兵と私闘に及んでいた理由を説明しろといっている」
/ ゚、。;/ 「え、えっと、そのです、ね」
聞きつつも大体の状況は飲み込めているのか、ジョルジュは顔をしかめ腹をさすっている。
視線を落として、目に見えそうなほど湿度たっぷりのため息を吐いた。
なんだろうこの人。明日くらいには死にそう。
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232 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/09/18(火) 22:32:34 ID:bIEcoEpo0
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_
( ゚∀゚) 「お前のことだ、どうせ安い挑発に乗ったんだろう」
/ ゚、。;/ 「そ、それはこの女が……」
_
( ゚∀゚) 「うるせえおっぱい揉むぞ」
/ ゚、。;/そ
ダイオードがだんまりになると、ジョルジュはツンに向き直る。
敵意を感じはしないが、不機嫌なのは間違いなさそうだった。
_
( ゚∀゚) 「そっちも、ウチと無駄に喧嘩するのは得策じゃないはずだが?」
ξ゚听)ξ「……そうね。悪かったわ」
ブーンとは別の、威圧感を感じる。
この男も強い。いざ戦うとなったらツンなど簡単にあしらわれてしまうだろう。
ツンは大人しくナイフを鞘に戻した。
_
( ゚∀゚) 「話が早くて助かる」
ξ゚听)ξ「アンタも、禁酒委の割りには感じがいいわ」
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( ゚∀゚) 「苦労してるんでね」
肩をすくめて苦笑いを浮かべる。
その全身からあふれ出る悲壮感のせいで笑うことは出来なかった。
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233 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/09/18(火) 22:33:24 ID:bIEcoEpo0
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半べそかきながら再びゴミの片づけを始めたダイオードを尻目に、ツンは仕事に戻る。
色々と余計な道草を食っていたため、中心街へ差し掛かる頃には日が暮れ始めていた。
すれ違う人々に会釈をして歩く。
まだツンの顔を見知る者は少なく、訝しげな顔で見られることも多いが、我慢だ。
中心街だけで言えば、サロンもVIPと大きな差は無いように見えた。
少し建物の密度は低いが料理屋もあれば娯楽を提供する店もある。
ただ決定的に違うのは、酒を取り扱う店が無いということだろう。
アルコールに馴染みの無い文化とは言え、酒を扱う店が皆無だったわけではないと思うが、
そういった店は既につぶれたか業務転換したのかもしれない。
ツン自身はそれほど酒をやらないとはいえまったく無いというのも少し寂しく思う。
ちなみに、年二回の祭事の際の酒は、老舗のワイン蔵が販売しているそうだ。
何でも、もともと輸出をメインに行っていた酒造のため、禁酒委員会もあえて手を出さなかったのだとか。
大五郎を潰せれば他に多少の酒蔵が残っても構わない、ということなのかもしれない。
農作業を終えた人々か、中心街には人が増え始めていた。
街灯には火が点され橙色の光が、夕日に負けじと輝いている。
ゆらゆらと揺れる炎は、見ていてどこか安心した。
同時に、急いで支社に戻らねば真っ暗になってしまうという焦りも沸く。
ツンにあてがわれた部屋は支社と中心地の間に位置する。
街灯が少ない地域なので、月の出ない夜は本当に真っ暗になってしまうのだ。
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234 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/09/18(火) 22:34:06 ID:bIEcoEpo0
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料理屋から流れ出てくるかぐわしい匂いに涎を溢れさせながら、ツンは街を抜けてゆく。
ハインリッヒの家でパンを食べてからロクに何も食べていない。
誘惑に負け、丁度通りがかった屋台で牛串を一本購入して齧る。
焼きたてのため熱々だ。
焦げ目のついた表面はカリッと歯ごたえがあり、肉を噛むほど旨みが口の中に広がる。
また、タレの味も丁度いい。
しょうゆをベースにした甘辛に、大蒜生姜の薬味が利いていて肉の味にマッチしていた。
牛串をもぎゅもぎゅと咀嚼しながら足を速める。
もう直ぐ市街地を抜け、支社のある地域に入るというところで、ツンは地面に何かが落ちているのを見つけた。
ロープのようなひょろ長い何か。丁度高い塀の作った影で、はっきりと見えない。
ξ゚听)ξ「なんだこれ」
ツンは眉を顰めた。
ロープではない。どちらかというと蛇のようだ。
しかし、どうやらただの蛇ではない。
一言でいうと、毛の生えた蛇(っぽいもの)。
基本的な骨格は蛇そのものだ。手足の無いながひょろいフォルムで、頭の形も似ている。
全身を覆う毛は黒よりの灰色で、触ってみると意外に柔らかい。
ξ゚听)ξ「これ、キメラとかじゃないよね」
はじめて見る生き物ではあるが、キメラ特有の異常さや禍々しさは感じられない。
新種の蛇か何かだろうか。
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235 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/09/18(火) 22:35:18 ID:bIEcoEpo0
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指先で突いて揺らしてみる。
全体が長いのでひっくり返ることは無く、ゆらゆらと動くだけだ。
摘まんでそーっと持ち上げる。
毛の柔らかさの奥に肉の弾力を感じた。
地面に半分垂れた上体で顔を除いてみると、目は閉じている。
ξ゚听)ξ「……生きてはいる」
僅かにだが脈動がある。
ふと思いついて、片手の牛串を蛇?の鼻先に近づけた。
蛇?の鼻がひくりと動き、口の隙間から下がチロチロと出る。
目を開けた。
予想していたような爬虫類の切れ長の瞳孔ではなく、どちらかというと犬のようなくりっとした目をしている。
正直ちょっと可愛い。
弱弱しさも相まって、ツンの母性本能が強く擽られた。
ξ゚听)ξ「ちょっと待っててね」
串に刺さった最後の肉を、食いちぎり指で摘まんで与える。
蛇?は先ほどと同じように匂いを嗅いでから、かぷり、とそれを食べた。
丸呑みし、次を催促するようにツンを見る。
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236 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/09/18(火) 22:36:19 ID:bIEcoEpo0
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ξ゚听)ξ「もっとほしい?」
結局残りの肉は全て蛇?の腹に収まった。
気のせいか、元気になっている。
毛艶もよくなったように見えるし、もしかしたら腹が減っていただけなのかもしれない。
蛇?は感謝を表しているのか、単にマーキングしているのか、ツンの足に擦りついた。
動き自体は蛇なのだが、やっていることはやはり犬のようだ。
ξ゚听)ξ「元気になったならお帰り」
ツンは蛇?を置いて再び歩き出しはじめた。
子供の頃、野良の動物に餌をやるなといわれていたのをちょっとだけ思い出す。
いいよね、ちょっとくらい。死にかけをちょっと助けてあげるくらいは、母もきっと怒りはしないだろう。
が、ツンはこの後、この餌付けを早速後悔した。
しばらく歩いて、ツンは振り返ると蛇?が後ろをついてきている。
立ち止まったツンの顔を見上げ、「どした?」とでも言うように首を捻った。
それからしばらく、支店の近くまで戻っても蛇?はついて来た。
何度か巻こうとしたが、平然と追いつかれてしまう。
先ほどまでぐったりしていたとは思えないほどの元気である
ξ゚听)ξ「……はぁ」
ツンは蛇?を抱き上げる。
蛇は別段悪い気もしないのかツンの胸に頭を摺り寄せた。
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237 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/09/18(火) 22:37:00 ID:bIEcoEpo0
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ξ゚听)ξ「お母さんごめんなさい。ツンが悪い子でした」
ついてきてしまった以上しかたがない。
家に連れて帰ろう。
部屋、ペット大丈夫だったかな。
素直に言うとツンは動物を飼うという行為に尋常ならざる憧れを持っている。
両親と暮らしていた時は家が飲食店のためペットは厳禁。
死別し親戚を渡り歩いている間は、ペットを飼いたいなどと言える立場には無かった。
その上、どうにも動物に好かれない体質のため、こうも懐かれてしまうと愛着が沸いて仕方が無い。
こいつ飼う。今はちゃんと自分でお金も稼いでいるし、ツンちゃん飼い主デビューである。
明日ハインリッヒのところに連れて行って病気とか寄生虫とか診てもらわなければ。
ξ゚听)ξ「そうと決まれば名前決めないとね」
ツンの腕に絡み付いて蛇?が首をかしげる。
いつまでも蛇?では可哀相だ。
なにかピッタリな名前を考えてあげよう。
ξ゚听)ξ「決めた。ニョロちゃん。あなたニョロちゃんね」
蛇が露骨に嫌そうな顔をする。
ツンは、色々な意味で安直な性格だった。
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238 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/09/18(火) 22:38:00 ID:bIEcoEpo0
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なんとかニョロという名前を承服させ、ツンは支社へ戻ってきた。
昼前に出立して夕暮れ時に帰還。
広い街ではあるが、少々時間をかけすぎだ。
支社の前では支店長のセント=ジョーンズが掃き掃除をしていた。
曰く、商品も何も無いのでろくな仕事が無いので毎日掃除しているのだそうだ。
確かに、支店は毎日ピカピカだ。もとより新品みたいなものなのだけれど。
(’e’) 「お帰り〜」
ξ゚听)ξ「ただいま、ジョーンズさん。今日はどうだった?」
(’e’) 「今日も特に何も変わらないよ〜」
間延びした喋り方が特徴の男で、気は穏やか。
元は別の街で敏腕を振るっていた営業マンだったらしいが、見る影も無い。
実際に精力溢れる営業マンだったならば、ここの支店長をさせるのは少々かわいそうだとも思う。
(’e’) 「ツンちゃんもお疲れ〜。報告書書いてお帰り〜」
ξ゚听)ξ「はーい」
本当にこんな状態でお金貰っていいのか、と考えなくも無いが
いざとなったら命を懸けなければいけないのだから普段はこれくらいで丁度いいのかもしれない。
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239 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/09/18(火) 22:38:55 ID:bIEcoEpo0
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ツンが支店の扉に手を掛けると、首に巻いていたニョロが急に慌て始めた。
シャツの襟に噛み付きぐいぐいと引っ張る。
支店から遠ざけようとしているようにも見える。
ξ゚听)ξ「どうしたのよ、ニョロ」
ニョロの焦りは尋常ではない。
必死にツンの襟を引っ張り何かを訴えている。
ξ゚听)ξ「なんなのよ、も――――
ツンがニョロを引き剥がそうとその胴を掴んだ瞬間、支店の屋根が爆ぜた。
空気の弾ける破裂音。木片と衝撃波がツンを襲う。
ξ;゚听)ξ「うおお!」
乙女にあるまじき声を上げてツンはその場を飛びのいた。
複数の魔法の気配が更に三つ。かなりの遠距離だが間違いなく支店を狙っている。
ξ;゚听)ξ「ジョーンズさん!」
(’e’) 「うわあ〜〜〜〜〜〜〜〜〜」
ツンはジョーンズに飛びつき庇う。
飛来した白い魔法弾は、一瞬の内に支店を木っ端へと変えた。
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240 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/09/18(火) 22:40:00 ID:bIEcoEpo0
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降り注ぐ大小さまざまな鋭い木片。
それが止むと、ツンはジョーンズに被さるのを止め、立ち上がる。
支店は柱を中途半端に残し、ほぼ全壊。
周囲には支店の瓦礫が散らばり、見るも無残な光景だった。
音を聞きつけた近隣の住民が野次馬に現れる。
また攻撃が来ると危険だが、いくら探っても魔法の気配は無い。
ξ;゚听)ξ「ジョーンズさん大丈夫?」
(’e’) 「ツンちゃんに恋しそう〜」
ξ;゚听)ξ「しないで」
(’e’) 「失恋して辛い」
ジョーンズの無事を確認して、魔法の軌跡を辿る。
ほとんど消えていたが、北東の方向、オーマ湖の方角までは割り出した。
ξ゚听)ξ(あの魔法、間違いなくこの前の……)
目にしたのは一瞬だけだったが確実に馬車のときと同一の襲撃犯だ。
この破壊力と連続性、そうそう誰にでも生み出せるものではない
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241 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/09/18(火) 22:41:22 ID:bIEcoEpo0
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ξ゚听)ξ「ジョーンズさん、皆呼び戻して!私は一足先に行ってるから」
ジョーンズの返事も待たず、ブーツの魔法を開放。
家屋を全て飛び越えて一直線に湖を目指す。
距離はかなり遠い。以前の馬車と違い動かない店舗ならば距離があっても問題ないということだろう。
迎撃の魔法弾が二発飛来。
その射線上に人がいないことを確認し、ツンは飛んでかわす。
魔法弾はツンを通り越した後、上空へ飛翔。
追尾するように切り替えした。
ξ;゚听)ξ「追尾式?!」
追われていることに気付いたツンは、ナイフを抜き、魔法弾へ投擲。
ナイフを受けた一つが音と衝撃波を撒き散らして弾けた。
残り一つはしつこくツンを追ってくる。
何とか逃げ回ってはいるが、魔法弾の速度はツンよりもはるかに速いため、上手くかわさなければ追いつかれる。
それに、このまま飛び回られてはどこに被害が及ぶか分らない。
首に巻いたままのニョロが、ツンの襟を引っ張る。
それにつられて視線を横に流すと、地面に縦長の木の板が落ちていた。
柵か何かが外れたものだろうか。
ツンは素早くそれを拾う。
背後まで迫っていた魔法弾を、身を捻り間一髪で回避。
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242 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/09/18(火) 22:42:26 ID:bIEcoEpo0
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ξ゚听)ξ「だらぁ!」
再び切り返し追ってきた魔法弾を迎え撃つように、板を放り投げた。
白い魔弾は盾の如く立ちふさがった板に衝突し、破裂する。
飛び散った木片がツンの頬に傷を作ったが、直撃は避けられただけマシだ。
しかし、かなり手間を取った。
魔法の気配を完全に見失ってしまう。
とりあえずたどり着いた湖畔の砂浜。
支店からの距離は大体1kmほどだろうか。
振り返ってみると、支店まで障害物らしいものが丁度無い位置だった。
状況を確認する視力と精密な狙撃能力さえあれば確かに狙撃は出来そうだ。
あくまで特殊な技量を持った人間ならではの話で、並大抵の人間には不可能だろうが。
周囲を見渡すも、襲撃犯らしき姿は無い。
ξ゚听)ξ「……糞ッ」
地団駄を踏む。またもしてやられて逃げられた。
人は死ななかったからいいものの、拠点を瓦礫にされて何の抵抗も無しでは面目丸つぶれ。
元々少ない仕事が更に減ってしまう。
ニョロが不安気にツンの顔を見た。
ツンはその頭を撫で、嘆息する。
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243 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/09/18(火) 22:43:32 ID:bIEcoEpo0
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ξ゚听)ξ「ん?」
視線を落としたその先の砂浜に何か書かれているのを発見した。
既に薄暗くなっているためよく見えず、顔を近づけ確認した。
ξ゚听)ξ「……」
『また会おう。かわいいお嬢さん』
木の枝か何か、尖ったもので手早く掻かれた砂の文字。
ツンは、無言でその挑発文を消す。
足で何度も砂を乱す度、少しづつ抑えていた怒りがわき上がって来た。
ξ#゚听)ξ「ツーンツーンツーーーン」
しつこく、しつこく、足を地面に打ちつける。
何が可愛いお嬢さん、だ。
女の子としては嬉しくても、傭兵としてはこれ以上の侮蔑の言葉は無い。
脳内に襲撃犯のドヤ顔が浮かんできて、更に腹立たしい。
完ッ全にツンを小ばかにしている。
ξ#゚听)ξ「くっそ!次こそはぶちのめしてやるクソボンクラーー!!」
静かな湖畔にツンの叫びがこだました。
後日、近隣の住人から「猛獣らしき咆哮がが聞こえた」と通報があるが、それはまた別の話である。