- 1 名前: ◆x5CUS.ihMk[] 投稿日:2016/07/09(土) 22:06:48 ID:Q7uZ6AsA0
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過去話を忘れた人のためにヒロインを中心に振り返るここまでのお話。
一話:街の暴漢に襲われあわや貞操の危機。
二話:大五郎の兵士に追い詰められピンチ。
三話:大五郎に雇われるも早速サロン(田舎)へ飛ばされることが確定。
四話:サロンへの移動。死にかける。
五話:キメラ(蛇と狼)と戦う。死にかける。
六話:キメラの毒牙(直喩)で死にかける。
七話:ニョロを拾った直後目の前で職場が木端微塵。 ※1
八話:夜道で襲われ失神。
九話:拘束され軟禁。しかし颯爽と脱出(ブーンは死にかけ)
十話:大活躍で勝利。(ブーンは死にかけ)
十一話:久々の安寧。
十二話:ロンリードッグ先生と学ぶ楽しい魔法学。
十三話:キメラ(大犬と鯨)との戦闘にロケット首突っ込み。
十四話:キメラ相手にマジギレ。
十五話:決着。死にかける。
十六話:ヨコホリに襲われる。あぶない。ィシと出会う。
十七話:安寧の日々(ブーンはアンデッドに襲われる)
十八話:禁恨党に拉致される。
十九話:ニダー一派との戦闘。死にかける。息が臭くなる。
二十話:スカートを履く!!! ヨコホリに弄ばれる。
二十一話:ロミスと共に檻に閉じ込められる。ロミスを殴り続ける。
二十二話:ィシたちの戦闘に合流。格上達に喧嘩を売る。
二十三話:ドクオのショータイム開始のお知らせ。
二十四話:ドクオのショータイム終了のお知らせ。
二十五話:死にかける。死ぬ。 ※2
二十六話:死にかけたまま。
二十七話:流石兄弟のターン。
二十八話:「なー―――〜〜んてね☆」
二十九話:復活しごはんをたべる。
三十話:師匠襲来。死んだ(暫定)。
……※1 ここらへんからあらすじをまとめるのに飽きる。
……※2 もう完全に飽きてテラバトルをやり始める。
- 2 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2016/07/09(土) 22:07:33 ID:Q7uZ6AsA0
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- 3 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2016/07/09(土) 22:09:25 ID:Q7uZ6AsA0
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( 从,、人,、
、 __ ソY(彡 ヾゝ
´ 人,,,、 /|,,,,,,彳^ヾ彡 ミ
, 〃 / ̄\ゝ| ,ィ^ーへィ、,ゞ
/ (‖) 〉 〉」/:::8゚::::::,ノ
) / / / Yヾ'⌒ー‐イ
,イ /ヘ、 // l
/ Υ/ ソ
|:; ∧ / /
〈 丶_/
ヽ__イ))\ {
\\ \_l\ ヘ
`>\ \_l\ | /^), ヘ * * *
\ \_l\〈 :ノマ::::|
\ .へ__ハ...::::./
\/=i>< 剣と魔法と大五郎のようです
Third thread.
* * *
.
- 4 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2016/07/09(土) 22:10:24 ID:Q7uZ6AsA0
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|゚ノ ^∀^) 「――――と、いう訳で」
ξ゚听)ξ
|゚ノ ^∀^) 「ここで、わたしがあなたを鍛え直すことになりましたから」
ツン=ディレートリは混乱していた。
朝、目が覚めると何故かベッドの前に師匠のレモネード=ピルスナーがいる。
おかしい。ツンは師匠の元を逃げ出してきたのだ。目の前にいるわけがない。
仮に師匠が追ってきたとしても、厄災規模の方向音痴によって年単位の時間が必要になったはずだ。
少なくともまだ数か月しか経っていない現在、ここにたどり着けるわけがない。
それなのに、当たり前のように目の前に存在し、あまつさえツンを鍛え直すなどとのたまっている。
こんなおかしなことがあっていいのだろうか。
あ、そうか。
これも夢だ。
ィシの呪具の影響で様々な夢を見たし、その一環なのだろう。
となればもう少し眠ろう。
速く回復してブーンたちと修行をしなければならないのだ。
でも、師匠の顔、夢でもちょっと懐かしいな、なんて思いながらツンは再び目を閉じた。
久しく浮かべていなかった、穏やかな微笑みが自然と浮かぶ。
|゚ノ ^∀^) 「……“―――インパクト”」
その数秒後。ツンは魔法でベッドごと吹き飛ばされた。
「ですよね」って心の中で言った。ちょっと泣いた。
- 6 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2016/07/09(土) 22:11:28 ID:Q7uZ6AsA0
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|゚ノ ^∀^) 「――――というわけで」
ξ゚听)ξ 「すいません師匠。どういう訳なのかわかりません」
|゚ノ ^∀^) 「まあ、昨日あれほど話したというのに、もう忘れたのですか」
ハインリッヒの家のリビング。
ツンは改めて師匠と向かい合い座っている。
隣には、ニコニコとご満悦そうなデレと、どこか状況に順応できていない様子のミンクス。
家主であるハインリッヒは、キッチンで朝食の準備をしている。
ξ゚听)ξ 「話って……」
ツンは顎に指を当て昨日のことを思い出そうとする。
目が覚めて。ブーンたちに稽古をつけてもらうことになって。ブーンたちがオルトロス(笑)になって。
ご飯を食べて。ドクオと魔法について話して。そして一旦眠ることにして。起きたらミンクスがいて。少し話して。
そうしたら師匠たちが部屋に突っ込んできて……そこからがどうしても思い出せない。
正直に言えば、記憶はあるような気がするのだが、引き出そうとすると体に謎の寒気が奔る。
- 7 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2016/07/09(土) 22:12:46 ID:Q7uZ6AsA0
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ζ(゚ー゚*ζ 「ししょーはおねえちゃんに戻ってきなさいって言ったけど、おねえちゃんは絶対ヤダって言って」
ξ゚听)ξ 「うん」
ζ(゚ー゚*ζ 「そのままおねえちゃんはししょーのおしおき魔法に耐え兼ねて失神したの!」
ξ゚听)ξ 「なるほど」
師匠が追ってきた理由まではわかる。
愚かな復讐で「せっかくの弟子を損ないたくない」とか、「まだ半人前のまま外には出せない」とかだ。
一緒に暮らしていたころ、仇を探しに出たいと訴える度にそんな返事をされ続けてきた。
だから、今回も、ツンを連れ戻すために来たと、そう思っていたのに。
師匠の顔を見る。
どうやらツンの思考を読んだらしく、師匠はため息を吐いた。
|゚ノ ^∀^) 「貴方が気絶した後、みなさんからこれまでの経緯は伺いました」
ξ゚听)ξ「……」
|゚ノ ^∀^) 「ご両親の仇が判明したことも含めて」
- 8 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2016/07/09(土) 22:13:28 ID:Q7uZ6AsA0
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|゚ノ ^∀^) 「予想はしていましたが、相当に無茶をしてきたようですね」
ξ゚听)ξ 「……まあ」
|゚ノ ^∀^) 「道中知り合った方々にも、迷惑をおかけした」
ξ゚听)ξ 「うん」
ミンクスが何かを反論しようとしたが、ツンとレモナ、両者の視線を受けて口を紡いだ。
ツンが他者に助けられただけではないことを言ってくれようとしたのだろう。
しかし、師匠が言っているのはまた別の話なのだ。
|゚ノ ^∀^) 「一人前になったところで、成せることはほんの少し。半人前ならなおさら、ろくなことは成せません」
ξ゚听)ξ 「……」
|゚ノ ^∀^) 「貴女も痛感したはずです。己の無力さを」
ξ゚听)ξ 「……でも、師匠のとこで修行してたら、間に合わないことだってあった」
|゚ノ ^∀^) 「間に合って何かできましたか」
ξ゚听)ξ 「……」
|゚ノ ^∀^) 「貴女には両親から授かった才があります。大概のことは、その場の勢いや勘で何とか出来てしまうでしょう」
「ですが」と続ける。
|゚ノ ^∀^) 「それではダメなこと程、貴女にとっては大事なことだったはずです」
- 9 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2016/07/09(土) 22:15:16 ID:Q7uZ6AsA0
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VIPで初めてドクオに出会った時。
暴漢に襲われていたワタナベを助けようとして、結果的に自分の身も危険に曝した。
ドクオが現れなければ、あのままどうなっていたか分からない。
サロンにて蛇のキメラと戦った時。
囮役を買って出て追い込まれ、タカラに庇われた。
ドクオの魔法でキメラは倒せたが、代わりに毒を受けたタカラは、あわや死ぬという状態にまで陥った。
サスガ兄弟の襲撃を受けた時。
成す術も無く囚われ人質となり、ブーンを誘き出す出す餌にされた。
自ら加勢し撃退は出来たが、あと少し遅ければ、兄弟があと少し卑劣な手段を用いていたら、ブーンはどうなっていた。
湖にて海獣のキメラと戦った時。
もしタカラがあのまま大怪我をしていて、ニョロが魔法の能力に目覚めていなかったら。
結果としてキメラを倒したのはツンだったが、その前に確実に死んでいた。
そして、ヨコホリ=エレキブラン。
あの男に煮え湯を飲まされたのは一度や二度では無い。
襲撃され、目の前で人が死んだ。支店を吹き飛ばされ、ジョーンズを死なせるところだった。
荒野で一騎打ちとなり、手玉に取られた。ィシたちに助けられなければ危険だった。
無念を晴らしてやれぬまま、ィシを殺された。
綱渡りのような危機的状況を幾つも回避し、ツンは生きている。
ただ、それはツンの実力以上に、幸運と周囲の助力に恵まれていたからに他ならない。
これではダメなのだ。
両親に庇われ、逃がされ、ただただ生き延びたあの時と、何も変わらない。
- 10 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2016/07/09(土) 22:16:09 ID:Q7uZ6AsA0
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|゚ノ ^∀^) 「……逸るあなたの心を理解できないわけでは無いのです」
レモネードの目がツンの体を見た。
入院着から覗く体のいたる所に真新しい傷跡が出来ている。
どれがいつのものかツンもよく覚えていない。それほど沢山ある。
少なくとも師の元にいる時には無かったものばかりだ。
|゚ノ ^∀^) 「ただ、今無理に戦ったとして、貴女が心身に傷を負うだけ」
ξ゚听)ξ 「……でも」
|゚ノ ^∀^) 「ええ。あなたは止めるとは言わないでしょう。仇が分かってしまったのならなおさら」
「もう死んでいてくれれば、どれほどよかったか」と続け、ため息を吐いた。
その寂れた表情に、純粋に申し訳なく思う。
|゚ノ ‐ ‐) 「どうせ連れ戻しても、すぐに脱走するでしょうし。ならばせめて死なずに済むようここで鍛え直そうと、そう言う話になったのです」
ξ゚听)ξ 「師匠……」
|゚ノ ^∀^) 「良いのです……貴女は私の大切な弟子なのですからね……」
ξ゚听)ξ 「………………死ぬ寸前まで追い詰めて諦めさせようとか思ってますよね」
|゚ノ ^∀^) 「気付いても口に出さないのが大人の対応ですよ」
ξ゚听)ξ 「子供なんで」
∩ζ(゚∀゚*ζ 「はいはい!デレは気付いたけど言いませんでした!おとな!」
- 11 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2016/07/09(土) 22:17:35 ID:Q7uZ6AsA0
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从 ゚∀从 「仲睦まじいお話の最中で申し訳ないんだが、飯出来たぞ」
ハインリッヒの持つ白い皿からは仄かに湯気が立っていた。
いつも通りいい匂いがする。香りから察するに卵のようだが、少し濃厚に感じた。
|゚ノ ^∀^) 「泊めていただいた上にお食事までごちそうになって、なんとお礼を申し上げればよいやら……」
从 ゚∀从 「気にしなさんな。食料だけはアホ程貰うんでな」
ξ゚听)ξ 「……あれ?」
食事を始めるという段階になって、ツンは物足りなさに気付いた。
いつもならば犬の如く涎を垂らして食事を待っているはずのブーンが見当たらない。
まだ起きてきていないのかと思ったら、彼の分はそもそも用意されていなかった。
ξ゚听)ξ 「リッヒ、ブーンたちは?」
从 ゚∀从 「ああ、言ってなかったけか。明け方に出かけたよ」
ξ゚听)ξ 「どこに?」
从 ゚∀从 「魔女の住処だとよ」
名を聞いて、つい手を止める。
ブーンとドクオの半端な分離があって翌日の急な話だ。
停止したツンを見て、ハインリッヒは頭を掻いた。
- 12 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2016/07/09(土) 22:18:45 ID:Q7uZ6AsA0
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从 ゚∀从 「昨日、お師匠さんたちが突っ込んできた時に、もう一人いたのを覚えてるか?」
ξ゚听)ξ 「あー―……」
相変わらず記憶を引き出すのを体が拒絶しているが、それは覚えている。
あっさり済ませたためよく覚えていないが、なんだか樽臭い名前の男がいた。
そうだ。あれが師匠たちをツンの元に連れてきた諸悪の根源である。
一発くらい蹴り飛ばしておかなければならない。
从 ゚∀从 「ブーン達とつながりのあった情報屋の使いらしくてな。アイツが魔女の居場所の情報を持ってきた」
ξ゚听)ξ 「それで」
从 ゚∀从 「おう。いくらか話しこんでから、夜明けと同時に」
ξ゚听)ξ 「……大丈夫かしら」
从 ゚∀从 「とりあえず魔女がどうなったかだけ調べてくるって話だ。万が一魔女と遭遇しても、無茶はしねえだろ」
- 14 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2016/07/09(土) 22:19:34 ID:Q7uZ6AsA0
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|゚ノ ^∀^) 「そう言えばあなた、あの方々とはどういった知り合いなの?」
ξ゚听)ξ 「どういったって」
|゚ノ ^∀^) 「魔女に呪いを受けたとは聞いていますが」
ξ゚听)ξ 「そこらへんはあんまり詳しく聞いてない。あんな魔法かけられた経緯くらい」
|゚ノ ^∀^) 「そんな得体の知れない人たちを、稽古を申し込むほど信頼しているのですか?」
ξ;゚听)ξ 「ぐう」
|゚ノ ^∀^) 「出会った経緯は何かしらあるのでしょう」
ξ;゚听)ξ 「VIPでたまたま知り合って、それからなし崩しに一緒に戦ってきた感じ……」
|゚ノ ^∀^) 「どうやったら赤の他人と何度もなし崩しに戦う羽目になるんです」
ξ;゚听)ξ 「え〜と」
そう言われればそうだ。
通常の生活を送っていれば、出会って間もない他人と一緒にキメラやらなんやらと戦いまくったりしないはずである。
なんでだろう。不思議だな。
ζ(゚ー゚*ζ 「だっておねえちゃんだもんね!」
|゚ノ ^∀^) 「まあ確かに」
その納得のされ方は不満である。
- 15 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2016/07/09(土) 22:20:32 ID:Q7uZ6AsA0
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|゚ノ ^∀^) 「……しかし、貴女が見込むだけの腕はあるのですね」
ξ゚听)ξ 「うん。少なくとも、どっちもそこらにいるレベルじゃない」
|゚ノ ^∀^) 「…………そう」
ξ゚听)ξ 「?」
ツンは師匠の顔を窺った。
ブーンたちの話題になってから、どうも表情が違う気がする。
一応、ツンの連れであるし、魔女だのなんだのと物騒なワードも出ているので気にするのは当然だとは思うが。
ξ゚听)ξ 「もしかして、師匠アイツらと知り合い?」
|゚ノ ^∀^) 「……いいえ。ホライゾンさんについては、風の噂を聞いたことはありますが、どちらも初対面です」
ξ゚听)ξ 「まあ、悪い奴らじゃないですよ。変だけど」
|゚ノ ^∀^) 「そうね。それは少し話しただけでも感じたわ」
知らぬ間に増えたツンの知り合いだから気にしているのだろうか。
さらに言えば、ある意味弟子を横取りされかけたようなものだし。
師匠自身がそれ以上続ける気が無いのを察して、ツンもそれで話を切り上げた。
- 16 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2016/07/09(土) 22:22:14 ID:Q7uZ6AsA0
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|゚ノ ^∀^) 「さて、じゃあ行きますか」
食事を終えると、レモナが立ち上がる。
デレも「はーい」と返事をして椅子を降りた。
ξ;゚听)ξ 「え、どこに行くんです?」
|゚ノ ^∀^) 「実は、サロンには少し所縁がありましてね。せっかくですから少し街を見て回ろうかと」
ξ;゚听)ξ 「大丈夫なの、二人で」
|゚ノ ^∀^) 「道案内はミンクスさんにお願いしましたわ。帰りは、転移魔法用のマーキングをしておきましたから」
ξ;゚听)ξ 「ミンクス、本当にいいの?」
ミ´・w・ン 「うん。支店に行かなきゃだし、ついでだよ」
ξ;゚听)ξ 「師匠の方向音痴酷いのよ」
ミ´・w・ン 「一本道みたいなものだぜ?」
ξ;゚听)ξ 「そうだけど……深淵の秘境に迷い込んで邪神の類に襲われたくなかったら、気を強く持ってね。」
ミ´・w・ン 「待って。僕の知ってる方向音痴と違う」
- 17 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2016/07/09(土) 22:23:28 ID:Q7uZ6AsA0
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|゚ノ ^∀^) 「大袈裟ねえ。ミンクスさんをそんなに脅してどうするんです」
ξ゚听)ξ 「大袈裟じゃないから脅してるんです」
ミ´・w・ン 「改めて聞くけど、そんなに、そんなになの?」
ξ゚听)ξ 「近所に山菜取りに行って、隣国の古代遺跡発見してきたことがある」
|゚ノ ^∀^) 「あの時は封印されていた鬼神が復活して大変でしたねえ」
ζ(゚ー゚*ζ 「東海の果てで沈没船と一緒に引き上げられたこともありますよね!」
|゚ノ ^∀^) 「そうそう、群生していたクラーケンの駆除に手間取って危うく酸欠になるところでした」
ミ´・w・ン 「」
|゚ノ ^∀^) 「でも最後には何とかなりますし平気ですわ」
ζ(゚ー゚*ζ 「慣れてみると迷子も楽しいですよ!」
ξ゚听)ξ 「わかったわねミンクス。これが今からあんたが連れて歩く二柱の悪魔よ」
ミ´・w・ン 「君のタフさってちゃんと由来があるんだね……」
- 18 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2016/07/09(土) 22:24:50 ID:Q7uZ6AsA0
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ζ(゚∀゚*ζノシ「行ってきまーす」
|゚ノ ^∀^) 「明日からみっちり稽古をつけますから、今日はちゃんと休むのですよ」
ξ;゚听)ξ 「明日までにはちゃんと帰って来てくださいね」
|゚ノ ^∀^) 「心配性ねえ」
ミ´・w・ン 「じゃあ、いきましょう。僕が縄を引くので、お師匠さんは僕の足元だけを見てついてきてください」
ξ゚听)ξ 「絶対にあんたが先頭を歩くのよ」
ミ´・w・ン 「大丈夫、必ず生きて帰る」
食事を終えた、レモネード、デレ、ミンクスの三人はハインリッヒの家を出て行った。
ちゃんと引率できる方法をミンクスに伝授したので大丈夫だろうが、それでも安心はし切れない。
同じ方法を用いた際に、師匠が無意識にツンを引きずってしまい全く別の土地に行きついたことがあったのだ。
とはいえ普通に支師匠を歩かせるよりははるかにマシだ。
あとはなんだかんだと死線をくぐってきたミンクスの運に期待するしかない。
ξ゚听)ξ (……ここで運を使い果たさなければいいけど)
- 19 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2016/07/09(土) 22:25:57 ID:Q7uZ6AsA0
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从 ゚∀从 「さてと、診療室に行くぞ」
ξ゚听)ξ 「うん」
食事の片づけを手伝ってから、ハインリッヒと共に診療室へと入る。
ツンの体の状態はほぼほぼ回復しており、大袈裟な魔法の処置は必要ない。
ここで仕上げの軽い治療魔法を受ければ、今日はある程度自由にしておいていい、というのがハインリッヒの指示だった。
ξ゚听)ξ 「どうにも鈍っちゃうから、動いていいってだけで気が晴れるわ」
从 ゚∀从 「とは言っても、激しいトレーニングとかはするなよ」
ξ^凵O)ξ
从 ゚∀从 「返事」
ξ゚听)ξ 「は〜〜〜い……」
手早く魔法の処置を終え、やや急ぎ足で出てゆくハインリッヒ。
ここ最近の彼はツン達の治療や生活の世話など、かつての二倍にもなる仕事に追われていた。
目の下の隈も酷いし、よく飲んでいる魔力を回復する薬の量も増えた。
医者の不養生と言うかなんというか。
ツンが休まなければならないというのなら、彼だって同じくそうすべきだと思うのだが。
- 20 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2016/07/09(土) 22:26:39 ID:Q7uZ6AsA0
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ξ゚听)ξ 「さて、と」
さて、これからどうするべきか。
できればハインリッヒの言いつけに従いたい。
しかし元来じっとしていられないのがツンの性分。
大人しくはするとして、家事なりなんなりしておかないと頭からキノコが生えそうだ。
ξ゚听)ξ 「……ニョロ、はタカラのところか」
いつもの肌触りが無い首元に触れた。
今のツンでは相手するのが難しいからとタカラに世話を頼んだのだが、こうなってくると少し寂しい。
一先ず、とりあえずやりたいことも思いつかなかったので武装の手入れをすることにした。
ツンが勝手に特訓してから挑むと決めただけで、あの男は今日にでも襲撃してくるかもしれないのだ。
その時になって準備が整っていませんでした、では話にならない。
ナイフを手に取る。
購入してからさほど時期が過ぎたわけでもないのに刃こぼれが多い。
流石に少し研いでおかなければならないだろう。
正直研ぎは苦手なので、ブーンかミンクスにやってもらおうと思う。
折角の良品を下手な研ぎで鈍にはしたくない。
砥石は包丁用のものが調理場にあったはずだ。その時に成ったら拝借しよう。
- 21 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2016/07/09(土) 22:27:33 ID:Q7uZ6AsA0
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ブーツに仕込んだ星のタリズマンを取り出す。
星のタリズマンは容量に応じて魔法を保存しておける魔道具であるが、時間の経過と共に魔力を消耗してしまう。
微々たるものであるが、ある程度の時間が経った場合魔力を補てんしておかなければならない。
補填の方法は簡単。魔法を込めた本人が身に着けておけばタリズマンが勝手に魔力を吸収してくれる。
故に普段から身に着けておけば問題ないのだが、治療中はそうもいかなかった。
確認すると、込めた魔法自体が失われるほどの消耗は無いので、入院着の懐に入れておくだけで十分だろう。
次にブーツやその他の装備のほつれを点検していく。
ブーツはそもそもの出来が良かったのか、目だった損傷はない。
強いて言えば止め紐が部分的に摩耗しているので、交換しておいた方が良いか。
慣れた作業のため、点検自体はすぐに済んだ。
補修したいものもあるがハインリッヒに道具を借りなければならないので後回し。
ひと段落ついたということで、大きく背伸びをする。
ベッドの上に胡坐をかいて行っていたので少し背中が凝った。
組んだ手を頭上に伸ばしたまま体を回す。ぽきぽきと背中が音を立てた。
ξ゚听)ξ (……やっぱちょっと、重いって言うか、鈍いって言うか)
やっぱり体は動かしておきたい。
でもハインリッヒの言いつけを積極的に破るのは躊躇われる。
- 22 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2016/07/09(土) 22:28:18 ID:Q7uZ6AsA0
-
どうしたものかと悩んでいると、ふと天井が軋みを立てた。
反射的に見上げるが、特に何があるということも無い。
二階には今誰もいないはずだし、天井裏に鼠でもいたのだろうか。
しかし、ツンの意識は、それよりも天井の隅へ向いていた。
ξ゚听)ξ (結構、汚いな)
壁と天板の際に所々蜘蛛の巣があり、埃がこびりついている。
病室というのもあって、ハインリッヒはまめに清掃をしていたのだが、最近は手が回っていないようだ。
けが人はアホ程出るし、居候は増えるしで、本当に不憫である。
ξ゚听)ξ (……よし)
ツンはベッドの上に広がっていた自身の荷物を雑にまとめ、パンツとシャツを身に着ける。
タリズマンを仕込みなおしたブーツに足を通し、ナイフを腰のベルトに差す。
今は単純に邪魔なのでやめておくが、これでジャケットを着れば大よそ普段通りの装備だ。
ξ゚听)ξ (掃除をしよう)
師匠の元にいる時はそれ自体が鍛錬になるという理屈で毎日のようにやらされた。
正直方便に過ぎないとは思うが、久々に体を使う準備運動としては丁度いいだろう。
家が綺麗になるのだから多少動き過ぎたところでハインリッヒも許してくれるはずだ。