- 585 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/03/15(日) 01:14:48 ID:ZE3.OEMQ0
-
( #´_ゝ`) 「なんでダメなんだよ!!」
∬´_ゝ`) 「……落ち着きなさい、アニジャ」
( #´_ゝ`) 「アネジャは黙ってってくれ。俺は父者と話してるんだ」
彡⌒ミ
( ´_ゝ`) 「……」
アニジャはテーブルに拳を叩き付ける。
向かい合う父はさして驚く様子も無く、冷たい目で兄者を見返した。
そこに親愛の情は一切なく、純粋な侮蔑の意志のみが見て取れる。
それが、まだ幼いアニジャの頭に、更なる血を登らせた。
さらに口を開こうとしたアニジャの前に、手が翳される。
アニジャが鬱陶しそうに視線を向けると、一転冷静に父を見返す、双子の弟の横顔。
(´<_` ) 「……父者、俺も兄者と基本的な考えは同じだ」
彡⌒ミ
( ´_ゝ`) 「やれやれ、オトジャの方はもう少し冷静かと思ったが」
( #´_ゝ`) 「どういう意味だよ!」
(´<_` ) 「兄者、落ち着け。父者、俺は至って冷静だ」
- 586 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/03/15(日) 01:16:35 ID:ZE3.OEMQ0
-
荒野の中心に忽然と現れる、オアシスを中心とした酒と娯楽と武力の街、VIP。
その片隅、比較的閑静な住宅街の一軒家にて、その親子喧嘩は行われていた。
家の中心のリビングに居るのは、サスガ家の内四人。
大黒柱であるサスガ=チチジャ、長女のアネジャ、そして双子の兄弟であるアニジャ、オトジャ。
もう二人、母と末っ子の妹が居るのだが、今は席を外している。
一つのテーブルを挟み父と兄弟が向かい合い、姉は壁の傍で両者の動向を監視している。
彡⌒ミ
( ´_ゝ`) 「異国の内紛に干渉しようと言うのが、冷静な思考の末の提案であると?」
(´<_` ) 「ただの内紛じゃない。奴隷解放を目指す革命だ。力を貸してやるに足る理由はある」
彡⌒ミ
( ´_ゝ`) 「彼らの国の中で治める問題であることには変わらない。
国として支援することはいいだろうが、直接戦闘に介入するのは領分を越えている」
(´<_` ) 「……チャンネルは、大ぴらにはしていないが、政府側を支援している」
彡⌒ミ
( ´_ゝ`) 「だろうな」
( #´_ゝ`) 「分かってるならなんで!!」
- 587 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/03/15(日) 01:18:12 ID:ZE3.OEMQ0
-
彡⌒ミ
( ´_ゝ`) 「何度も言わせるな。アニジャ。領分を越えている」
( #´_ゝ`) 「……」
彡⌒ミ
( ´_ゝ`) 「確かに私たちが介入すれば、戦争は容易く終息させられるだろう」
(´<_` ) 「……」
彡⌒ミ
( ´_ゝ`) 「だからこそダメだ。サスガは真理の探究者であって一介の戦争屋であってはならない」
( #´_ゝ`) 「あんただって……!」
彡⌒ミ
( ´_ゝ`) 「父親に向かってあんたとは何事だ」
( #´_ゝ`) 「あんたで十分だよ、この分からず屋。昔は、あんたたちだって戦争に参加してたんだろ」
彡⌒ミ
( ´_ゝ`) 「それは自国の為であった。それでもなお、私はあの日々を後悔している」
(´<_` ) 「自分の後悔を俺たちに押し付けるわけだ」
彡⌒ミ
( ´_ゝ`) 「そうだ。年長者はそうして、若輩を正しき道に導く役目がある」
- 588 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/03/15(日) 01:19:43 ID:ZE3.OEMQ0
-
彡⌒ミ
( #´_ゝ`) 「お前たちのような無能が首を突っ込んで何ができる!!」
ドォッ
(´<_`# ) 「やってみなければ分からぬことはあるはずだ!」
彡⌒ミ
( #´_ゝ`) 「無駄死にして終わりだよ!お前たちは世界の広さも己らの小ささも知らん!」
( #´_ゝ`) 「だから!あんた達の元でそれが分かるってのかよ!」
ゴォオ
彡⌒ミ
( #´_ゝ`) 「いずれ見ることになる!その時を待てと言っているのが分からんのか!!」
(´<_`# ) 「分からんね!」
( #´_ゝ`) 「今俺たちの力を必要としている人が居るかもしれないだろ!!」
彡⌒ミ
( #´_ゝ`) 「大局を見ることも出来ん小僧共が!!」
バチィッ
( #゚'_ゝ゚) 「うっせぇハゲ!」
彡⌒ミ
( #゚'_ゝ゚) 「ハゲてねえよ!!」
ドンッ
(´<_`# ) 「ハゲてはいるだろ!」
∬´_ゝ`) 「……こりゃもうだめね。母者呼んで来よう」
- 589 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/03/15(日) 01:20:25 ID:ZE3.OEMQ0
-
魔法を撃ち合い、罵り合いながら空を駆ける三人の阿呆を見上げ、アネジャは頭を掻いた。
こうならないように話し合う機会を設けたのだが逆効果だったようだ。
円滑で穏やかな家庭を望む彼女の気苦労は全く絶えない。
アネジャはV響き渡る魔法の怒号を聞きながら、足早に近所の公園へ向かった。
そこに母と妹がいる。
話し合いの場に居ると弟たちが遠慮するので出かけて貰っていたのだ。
「サスガさんちは今日も仲良しねえ」と空を見上げるご近所さんに頭を下げながら歩くこと、数分。
目的の公園に着くと、母が妹を空高くに放り投げて遊んでいた。
一見して虐待のようだが、投げられている方は満面の笑みで喜んでいる。
∬´_ゝ`) 「母者」
@@@
@#_、_@
( ノ`) 「分かってるよ。……だから無駄だって言ったんだ」
ドーン!
バゴーン!!
l从・∀・*ノ!リ人 キ キャッキャッ
∬´_ゝ`) 「……早く止めないと、叔父者に迷惑かかっちゃうよ」
- 590 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/03/15(日) 01:21:35 ID:ZE3.OEMQ0
-
@@@
@#_、_@
(# ノ`) 「仕方ないね……“紅蓮盛りて―――”」
∬´_ゝ`) 「さぁ、姉者と遊ぼうねイモジャ、あぶないからね~」
l从・∀・*ノ!リ人 キ キャッキャッ
∬´_ゝ`) 「よく楽しめるわね、この状況……やっぱり血なのかしら……」
火火火
火#_、_火
(# ノ`) 「“―――炎神招来”」
短い魔法式展開の後、ハハジャの体が炎に包まれた。
単に燃えているのではなく、魔法による炎の外骨格を纏っているのだ。
火火火
火#_、_火
(# ノ`) 「アネジャ、イモジャをよろしく頼むよ」
∬´_ゝ`) 「うん」
纏う炎を一際大きく膨らませハハジャは自宅の方向へ飛翔した。
強化した筋力で跳躍、炎の噴射で滞空時間を延ばしているだけなのだが、
中身が母であることもあって人間サイズの隕石にしか見えない。
∬´_ゝ`) 「さて、ゆっくり帰るころには終わるかな」
l从・∀・*ノ!リ人 キ キャッキャッ
- 591 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/03/15(日) 01:22:33 ID:ZE3.OEMQ0
-
しばらくして。
∬´_ゝ`) 「ただいま」
@@@
@#_、_@
( ノ`) 「おかえり」
___ ___ ___
//⌒___ \ //⌒___ \ //⌒___ \
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\\ \ \\ \ \\ \
(( | (( | (( |
| ∩ | ∩ | ∩
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__________/__/_________/__/_______/__/______
∬´_ゝ`) 「さて、晩御飯の用意しなきゃ」
@@@
@#_、_@
( ノ`) 「今日はカレーにしようかね」
l从・∀・*ノ!リ人 キ キャッキャッ
* * *
- 592 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/03/15(日) 01:24:06 ID:ZE3.OEMQ0
-
<_フ;゚ー゚)フ 「じゃあ、何か?それで家飛び出してきたってのか?」
( ´_ゝ`) 「そうだよ」
<_プー゚)フ 「お前ら何歳だっけ?」
(´<_` ) 「もう13歳だ」
<_プ ,゚)フ 「……もうって、俺より一回りも下じゃねえか!」
( ´_ゝ`) 「でもショーグンは戦力になれば誰でも良いって言ってた」
<_プ ,゚)フ 「…………いや、まあ、お前らが役に立つのは散々見たけどよ…………」
(´<_` ) 「エクストは大人なのに弱いよな」
<_プД゚)フ 「よっ……弱くはねえよ!これでも一応隊長やってんだよ!!」
( ´_ゝ`) 「革命軍は人員不足」
(´<_` ) 「ああ、人員不足だな」
<_プ ,゚)フ 「このクソガキ共…………」
- 594 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/03/15(日) 01:24:55 ID:ZE3.OEMQ0
-
父との喧嘩の二カ月後、双子の兄弟は異国の革命軍のキャンプにいた。
荒野の岩山の麓に出来た洞穴を利用した場所で、いわゆる見張り台としての役割をもっている。
本拠はここからさらに西、本国の人間は知らないオアシスの元の廃墟群にある。
この場に居るのは兄弟と、分隊長であるエクスト=プラズマンと
⌒*リ´・-・リ 「エクストたいちょぉ~、おばちゃんがくれたよ~~」
革命軍により開放され、そのまま革命軍に入った元奴隷のリリ=アウロリ。
本拠へ戻っていた彼女が返ってきたので、丁度四人である。
エクストの部下に当たる兵士は残り三人いるが、今はもう一つのポイントに出張っていて今は居ない。
⌒*リ´・-・リ 「あ、双子ちゃんもいる!食べる?豆の粉で出来た焼き菓子だよ!」
( ´_ゝ`) 「あ、はい」
(´<_` ) 「いただきます」
<_プー゚)フ 「なんでお前らリリには素直なの」
⌒*リ´・-・リ 「リリはお姉さんですから!」
リリは、小柄な胸を精一杯張る。
年齢は兄弟よりも上なのだが、彼女の身体ははるかに年下の少女に見えるほど、不自然に未発達であった。
- 595 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/03/15(日) 01:25:45 ID:ZE3.OEMQ0
-
<_プー゚)フ 「リリ何歳だっけ?」
⌒*リ´・-・リ 「14歳!」
<_プー゚)フ 「はぁ~~~、ガキばっかだよなぁ、ウチ」
( ´_ゝ`) 「でもこの中で一番弱いのエクストだよな」
(´<_` ) 「最弱」
⌒*リ´・-・リ 「隊長かっこわるい」
<_プ―゚)フ 「おまえらな……」
⌒*リ´・-・リ 「いいからお菓子食べましょ。はい、隊長」
<_プ―゚)フ 「……おう」
⌒*リ´・-・リ 「よっこいしょっと」
<_プ―゚)フ 「おい、俺に座るな」
⌒*リ´・-・リ 「地面堅い」
<_プ―゚)フ 「わかる」
⌒*リ´・-・リ 「隊長はリリの椅子」
<_プ―゚)フ 「わからない」
- 596 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/03/15(日) 01:27:36 ID:ZE3.OEMQ0
-
⌒*リ´・-・リ ポリポリ
つOと
<_プ~゚)フ ポリポリ
( ´_ゝ`) モグモグ
(´<_` ) モグモグ
⌒*リ´・-・リ 「甘いもの久しぶり~」
<_プー゚)フ 「な。砂糖どうしたんだろ」
⌒*リ´・-・リ 「どこかから支援があったって聞きましたよ」
<_プー゚)フ 「奇特なトコもあったもんだな。大抵の国が革命の波及を恐れて鎮圧を願ってるだろうに」
⌒*リ´・-・リ 「むずかしい。私たち、自由になりたかっただけなのに」
( ´_ゝ`) モグモグ
(´<_` ) モグモグ
<_プー゚)フ 「大丈夫、勝てるさ。外がどうだって、国内の大半は俺たちの味方なんだ」
( ´_ゝ`) 「…………」
(´<_` ) 「…………」
- 597 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/03/15(日) 01:30:34 ID:ZE3.OEMQ0
-
⌒*リ´・-・リ 「じゃ、私向こうの人たちにも持ってくね!」
<_プー゚)フ 「ついて行かなくて大丈夫か?」
⌒*リ´・-・リ 「うん!なんたって私隊長より強いし!」
<_プー゚)フ 「おう。もうちょっと小さい声で言おうな」
( ´_ゝ`) 「今更だろ」
(´<_` ) 「公然の事実」
<_プ ‐゚)フ 「温もりが欲しい」
手を振って出て行くリリを見送る。
小柄で幼く見え、どう捉えても戦闘要員では無いが、事実「隊長より強い」という言葉は冗談では無い。
<_プー゚)フ 「ったく、どんどん生意気になりやがる」
(´<_` ) 「……嬉しそうだが」
<_プー゚)フ 「まあな。ガキが生意気ってのは、健康的で良い」
- 598 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/03/15(日) 01:31:28 ID:ZE3.OEMQ0
-
( ´_ゝ`) 「なあ、エクスト」
<_プー゚)フ 「なんだ?」
( ´_ゝ`) 「リリって、奴隷、だったんだよな?」
<_プー゚)フ 「あれ、言ってなかったか?」
(´<_` ) 「ぼんやりとな。詳しくは聞いてない」
<_プー゚)フ 「そっか、すっかり全部知ってるもんだと思ってたわ」
( ´_ゝ`) 「どんな奴隷だったんだ。いくら雑に扱われていても、あんなに傷を負うとは……」
<_プ ,゚)フ 「……あー―……胸糞悪いからあんまり言いたい話でもないんだがな」
(´<_` ) 「それなら……」
<_プ ,゚)フ 「……いや、せっかくだから、聞いてくれ。手短にするからよ」
この国には富豪や貴族など身分の高い人間同士の諍いが起きた場合、
それぞれの所有する奴隷を戦わせその勝敗で落としどころを決める風習がある。
いわば、代理決闘だ。
当人たちの命を懸けずに済むため、些細な諍いでも行われるようになり、
現代ではそれだけが目的の貴族の戯れの一つとなっていた。
リリは、それに使われていたとある富豪の戦闘奴隷の一人である。
金に物を言わせ調教し魔法によって改造し、齢14歳にして、身長140cm未満にして
大型の獣を素手で屠る超人となった。
- 599 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/03/15(日) 01:32:15 ID:ZE3.OEMQ0
-
<_プ ,゚)フ 「助け出してすぐは、あんなに表情も豊かじゃなったんだよ。
……やっと、呪縛が取れてきたように思う 」
( ´_ゝ`) 「……」
<_プー゚)フ 「お前らが来てくれたおかげもあると思うんだ。年が近い奴、いなかったからよ」
(´<_` ) 「……役に立てているなら、嬉しいが」
<_プー゚)フ 「んだよ、謙遜か?」
( ´_ゝ`) 「だって、あんまり役に立ててないし……」
<_プ ,゚)フ 「……おら」
( ;´_ゝ`) 「いってぇ!なんで蹴るんだよ」
<_プ ,゚)フ 「腹立つ」
( ;´_ゝ`) 「なんでだよ」
<_プ ,゚)フ 「お前等が役に立ってないんだったら俺は何だ、極潰しか?」
(´<_` ) 「エクストは人が良いから」
( ;´_ゝ`) 「うん」
<_プ ,゚)フ 「生々しいフォローやめろよ」
- 600 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/03/15(日) 01:33:16 ID:ZE3.OEMQ0
-
(´<_` ) 「……次の作戦、リリも連れていくのか?」
<_プ ,゚)フ 「ショーグンはそのつもりだ。俺も、アイツの戦力は必要だと思ってる」
( ´_ゝ`) 「……いいのか?」
<_プ ,゚)フ 「なにが」
(´<_` ) 「エクストの、リリへの接し方は、戦力とかそういう観点じゃないように見える」
( ´_ゝ`) 「うん」
<_プ ,゚)フ 「……そりゃお前ら、あいつをただの「武器」とは見られねえだろ」
( ´_ゝ`) 「……」
(´<_` ) 「……」
<_プ ,゚)フ 「なんだよ」
( ´_ゝ`) 「まともな大人だ」
(´<_` ) 「初めて見た」
<_プ ,゚)フ 「お前らやっぱり俺をバカにしてるよな?」
* * *
- 601 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/03/15(日) 01:35:39 ID:ZE3.OEMQ0
-
夜。夕刻に一旦仮眠を取った兄弟は、二人で見張りについていた。
昼間は出張していた三人も戻り、他の兵は皆洞穴の奥で眠っている。
荒野の夜は冷える。
アニジャは毛布にくるまり、索敵の魔法を見つめていた。
球形に浮き上がる青いビジョンには、なんの反応も映っていない。
( ´_ゝ`) 「…………寒いな」
(´<_` ) 「兄者、湯を沸かしてきた」
( ´_ゝ`) 「流石だなオトジャ」
(´<_` ) 「……どうだ?」
( ´_ゝ`) 「有視界範囲には接近は無い。探知もとりあえず反応は無いな」
(´<_` ) 「変わろう。わたせ」
( ´_ゝ`) 「おう……」
(´<_` ) 「……接続良好。探知範囲にノイズ無し」
- 602 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/03/15(日) 01:36:32 ID:ZE3.OEMQ0
-
静かな夜だった。
空は晴れており、お蔭で気温は低いが、風はさほど強くない。
時折吹くのに身を縮めればよい程度で、この荒野としては穏やかな方である。
アニジャは受け取った湯のカップで指を温めながら。
オトジャは索敵の魔法の精度を高めながら、透明な空気の夜を過ごす。
見惚れては居られないが、星が綺麗だ。
白く曇る息の先に、はっきりとした星屑の靄が見える。
( ´_ゝ`) 「……勝てると思うか」
土嚢に背を預け、空を仰ぎ見ながらアニジャが問う。
本人としてはつい零れてしまった言葉に過ぎなかったのだが、態々取り消す気も起きず、弟の返事を待つ。
(´<_` ) 「……さあ、な」
( ´_ゝ`) 「……正直、難しいと思うんだ。俺は」
(´<_` ) 「……」
- 603 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/03/15(日) 01:37:23 ID:ZE3.OEMQ0
-
( ´_ゝ`) 「確かに、今のところ民意は革命に傾いてる。でも、それだけじゃ勝てない」
(´<_` ) 「実際のところ、人も武器も足りてないからな」
( ´_ゝ`) 「俺たちみたいなガキが受け入れられたのだって、結局はそういう背景だ」
(´<_` ) 「そこは、ちゃんと腕を買ってもらったと思おう」
( ´_ゝ`) 「つったって、あんまり役に立ててないしな……」 ズズズッ
つU
(´<_` ) 「……まあ、な」
( ´_ゝ`) 「剣も魔法も、もっと上手に使えるつもりだったんだけどな」
(´<_` ) 「……経験の問題だろう。すぐに慣れるはずだ」
( ´_ゝ`) 「ちゃんとした師匠、欲しいよなー。父者たちは頑なに戦闘用の簡易魔法教えてくれなかったし」
(´<_` ) 「……とはいえそこらの魔法使いじゃ、役に立たんがな」
( ´_ゝ`) 「なーにが、真理の探究者だ。肝心な時に使えなきゃ、魔法なんて何の意味も無いっての」
(´<_` ) 「……」
- 604 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/03/15(日) 01:38:17 ID:ZE3.OEMQ0
-
⌒*リ´・-・リ 「……やっほー、双子ちゃん」
(´<_` ) 「リリ?もう交代の時間か?」
⌒*リ´・-・リ 「んーん。何となく眠れないから」
( ´_ゝ`) 「冷えるだろ。中に居た方が良い」
⌒*リ´・-・リ 「へーき、もっと寒い夜に木の根を枕に寝たことだってあるもん」 エッヘン
(´<_` ) 「……兄者」
( ´_ゝ`) 「分かってるよ。ほら、リリ。入れ」
⌒*リ´・-・リ 「大丈夫だって」
(´<_` ) 「出てきた今は平気でも、すぐ寒くなるだろ。入れ」
⌒*リ´・-・リ 「んー―……わかった……」 モゾモゾ
⌒*リ´‐ ,‐リ 「……あったかい」
( ´_ゝ`) ズズッ......
つU
- 605 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/03/15(日) 01:39:40 ID:ZE3.OEMQ0
-
⌒*リ´・-・リ 「……ねえ、なに話してたの?」
(´<_` ) 「ん?」
⌒*リ´・-・リ 「二人とも怖い顔してた」
( ´_ゝ`) 「……見張りを笑顔でやる奴なんていないよ」
⌒*リ´・-・リ 「それもそっか……」
それからリリも無言になった。
兄弟の間に挟まりながらも体勢を変え、上を向く。
白い息が風に靡いた。
しばし誰も口を開かず、各々に荒野の地平を見つめる。
リリの視線の先には僅かにぼんやりと灯りの見える、王国の城下町があった。
⌒*リ´・-・リ 「双子ちゃんは、革命に味方したくて、家出してきたって、たいちょーが言ってた」
( ´_ゝ`) 「ああ」
⌒*リ´・-・リ 「なんで?」
( ´_ゝ`) 「なんでって、言われてもな……」
⌒*リ´・-・リ 「私たちが可哀想だから?」
( ´_ゝ`) 「そうじゃないよ。現状なんて、来て初めてちゃんと把握したんだから」
- 606 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/03/15(日) 01:41:20 ID:ZE3.OEMQ0
-
(´<_` ) 「……都合がよかったんだよ」
⌒*リ´・-・リ 「つごー?」
( ´_ゝ`) 「オトジャ」
(´<_` ) 「今更リリたちに嘘を言ってどうする」
⌒*リ´・-・リ 「どういうこと?」
(´<_` ) 「自分たちの力を試したかった。そのために、戦場が必要だったんだよ」
( ´_ゝ`) 「……大義名分をもって、心置きなく力を振るえる戦場が、な」
⌒*リ´・-・リ 「それが、革命軍だったの?」
(´<_` ) 「そうだ。世論には支持されているはずが、状況は劣勢の革命軍。これ以上の場所はないと思った」
( ´_ゝ`) 「奴隷制が残ってるのも胸糞が悪いし、敵に対して遠慮しなくて済むと、思ったんだ」
⌒*リ´・-・リ 「……そうだったんだ」
( ´_ゝ`) 「……すまん」
⌒*リ´・-・リ 「……」
(´<_` ) 「……今は、ちゃんとお前たちを勝たせたいと思っている」
⌒*リ´・-・リ 「……」
- 607 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/03/15(日) 01:42:01 ID:ZE3.OEMQ0
-
再びの沈黙。
珍しく風がやみ、静けさが耳に痛い程だ。
双子は時折魔法の管理を交換しながら地平に怪しい動きないか目を凝らしている、
どれほどの時間が経っただろうか。
アニジャの持っていた飲み残しの湯が完全に水に戻ったころ、リリの頭が前後に揺れ始める。
顔を見ると、瞼を重たげに今にも寝入ってしまいそうだった。
(´<_` ) 「……リリ」
⌒*リ´ - リ 「……寝てないもん」
( ´_ゝ`) 「……」 ファサッ
⌒*リ´ - リ 「…………アニちゃん、オトちゃん」
( ´_ゝ`) 「なんだ」
⌒*リ´ - リ 「……それでもね、助けに来てくれて、嬉しい」
( ´_ゝ`)
⌒*リ´ - リ 「……ありがとう」
( ´_ゝ`)
(´<_` )
⌒*リ´ , リ スゥー―......
- 608 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/03/15(日) 01:43:24 ID:ZE3.OEMQ0
-
( ´_ゝ`) 「……」
(´<_` ) 「……」
⌒*リ´ , リ スヤスヤ......
( ´_ゝ`) 「……来て正解だったと、思うか」
(´<_` ) 「……それはこれから決まることだろ」
( ´_ゝ`) 「……そうだな」
ヒュゥゥゥゥ......
カサササッ......
* * *
- 609 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/03/15(日) 01:44:30 ID:ZE3.OEMQ0
-
怒号の響き渡る戦場の中を、エクストは駆けていた。
双子とリリ、よりによって一番気にかけなければいけない子供たちとはぐれてしまった。
他に残っていた部下も既にやられている。
エクスト達が遊撃隊として援護するはずだった本体もほぼ壊滅状態。
最後の望みをかけて行った王都侵攻作戦は、この段階で、事実上の失敗だった。
<_フ;゚Д゚)フ 「ハァッ、ハァッ……、せめて、アイツらをにがさねえと……!」
<_フ;゚Д゚)フ 「……クソッ!いねえ!
<_フ;゚Д゚)フ 「双子が居りゃあ、大丈夫だろうが……」
〈 =oOo〉 「……いたぞ!テロリストの残党だ!」
<_フ;゚Д゚)フ 「……ああ、やってらんねえ……!!」
エクストは戦わずに逃走を選択。
侵攻に失敗した今、優先すべきは一人でも多くの命を連れて逃げること。
それは、作戦開始前にリーダーである元将軍が言っていたことでもある。
- 610 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/03/15(日) 01:45:19 ID:ZE3.OEMQ0
-
一方、隊からはぐれた兄弟とリリは、破砕された民家の陰に身を寄せ、息を顰めていた。
兄弟は体の数か所に擦り傷があるのみで、目立った外傷はない。
問題は、リリの方である。
敵の魔法兵の放った爆破魔法から兄弟を庇い、飛び散った家屋の破片を腹に受けてしまったのだ。
絶え間なく敵と遭遇するため真面に処置する余裕が無く、破片は刺さったままになっている。
( ;´_ゝ`) 「エクストは?」
(´<_`; ) 「分からん。あれでも腕は立つから、死んだとは思いたくないが……」
⌒*リ´ - リ 「……ぅ、」
( ;´_ゝ`) 「リリ」
⌒*リ´ - リ 「……ごめん、双子ちゃん……私、お姉ちゃんなのに……」
(´<_`; ) 「喋るな、今傷を……」
( ;´_ゝ`) 「……?!」
魔法による止血を試みようと、オトジャが魔法式を展開する。
しかし、組み上がる前に荒々しい足音が響いた。
敵兵だ。
恐らく、魔法適正のある者に、魔法の気配を察知されたのだ。
- 611 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/03/15(日) 01:46:45 ID:ZE3.OEMQ0
-
〈 =oOo〉 「誰かいるのか?!」
( ;´_ゝ`) 「チッ」
〈 =oOo〉 「……おまえらぁ、革命軍のガキだな?」
兜の隙間から、兵士の口が歪むのが分かった。
こちらが子供とみて、油断したのだろう。
あるいは、良からぬ性癖によって喜んだとも取れるが。
しかし、その傲慢は、兄者が間を詰め、鎧の隙間より剣を突き刺すのに十分な時間であった。
〈 =oOo〉 「…………あえ?」
剣を抜くと同時に血が噴き出す。
アニジャは崩れ落ちる敵兵の体を慌てて支え、音が経つのを防いだ。
しかし、力を失った手から剣が落ち、けたたましい音を鳴らす。
「なんだ、今の音は?」
「おいどうした、何があった!」
( ;´_ゝ`) 「……くそ、ここもダメだ」
- 612 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/03/15(日) 01:48:04 ID:ZE3.OEMQ0
-
(´<_`; ) 「一先ずここを出よう」
⌒*リ´ - リ ハァッハッ......
( ;´_ゝ`) 「リリ、辛いけど我慢してくれ」
⌒*リ´ - リ 「ごめん、ね…………」
(´<_`; ) 「……急ごう!」
「居たぞ!!」
( ;´_ゝ`) 「!」
移動しようと、建物の陰から顔を覗かせた瞬間を、物音に寄ってきた敵兵に見つかる。
敵は五人。全員がぬかりなくすぐに武器を構えた。
先ほどのような奇襲は難しい。傷を負ったリリを抱えながら正面切って戦うには辛い人数差だ。
( ;´_ゝ`) 「クソ……」
(´<_`; ) 「アニジャ、俺が何とか道を開くからリリを連れて……」
「オトジャァアアアッ!!下がれェエエ」
( ;´_ゝ`) 「「!!?」」(´<_`; )
- 613 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/03/15(日) 01:49:08 ID:ZE3.OEMQ0
-
突然の雄叫び。
その方向も定かでないうちに、壁の向こうから人影が飛び出した。
煤焦げた壁の上部を蹴ったその男は、敵兵の前に。
着地と同時に手斧を振り下し、兜ごと敵の頭をかち割った。
動揺する残りの四人のうち、最も手近に居たもう一人に、すぐさま斧を振り上げる。
敵兵は反射的に盾を顔の前に引き上げたが、これはブラフ。
振り上げられた斧は半円を描いて横に滑り、がら空きになった肋骨を肺ごと割り潰す。
( ;´_ゝ`) 「エクスト!!」
突然現れたその男は、はぐれた仲間、遊撃隊隊長のエクストだった。
全身が血と埃にまみれており、相当の修羅場を強引に抜けてきたことが問わずともわかる。
<_フ;゚Д゚)フ 「ガキども!行くぞ!!」
〈 =oOo〉 「残党がァ!させるか!!」
<_フ;゚Д゚)フ 「やるかオラァアアアア!!!」
(´<_`; ) 「“蒼海に潜りて―――碧き刃を振るい―――魚を断つ!!”」
〈 =oOo〉 「?!」
オトジャの放った水の刃が残っていた敵兵の首を切り裂いた。
エクストに気を取られていたせいか防御は無し。断たれた動脈から血飛沫が噴き出す。
- 614 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/03/15(日) 01:49:57 ID:ZE3.OEMQ0
-
<_フ;゚ー゚)フ 「……おいおい、俺要らなかったじゃねーか。流石だな」
(´<_`; ) 「いや、助かった。ありがとうエクスト」
<_フ;゚ー゚)フ 「良いから行くぞ、市街に脱出する!」
エクストは再会を喜ぶ余裕も無く、すぐに走り出した。
今は彼の導きに従うしかない。
兄弟もリリを担ぎ、すぐにそのあとを追う。
( ;´_ゝ`) 「どうやって抜けるんだ?どこもかしこも」
<_フ;゚ー゚)フ 「いざって時の隠し通路があるんだ、そこまでいけば……」
(´<_`; ) 「……!?待て!!」
最後尾で魔法による探知を行っていたオトジャが、前を行くエクストとアニジャの襟首を掴む。
あまりに急だったので、二人は首を絞められ、目を白くする。
オトジャはふらついた男達とリリを引っ張り、瓦礫の影に身を隠した。
少し顔を覗かせて睨む先に居たのは敵の兵士たち。
- 615 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/03/15(日) 01:50:42 ID:ZE3.OEMQ0
-
〈 =oOo〉 「居たか?」
〈 =oOo〉 「新たに四名の残党を捕縛しました。やはりこの枯れ井戸、地下通路になっているようです」
〈 =oOo〉 「よし、これを餌として罠をはれ!くれぐれも逃がすなよ!!」
敵の数は十余名。
全員が武装しているが、見たところ戦闘の痕跡は無い。
恐らく、残党狩りを任された部隊なのだろう。
複数人で組みながら、近辺の瓦礫の陰などを探っている。
隠れている四人に気付くのは時間の問題だ。
(´<_`; ) 「ダメだ……ここは、もう」
<_フ;゚Д゚)フ 「そんな……嘘だろ……」
⌒*リ´ - リ 「ハァッ、ハッ……ゥグ……」
( ;´_ゝ`) 「……エクスト、離れよう」
<_フ -)フ 「……ああ」
- 616 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/03/15(日) 01:52:00 ID:ZE3.OEMQ0
-
<_プ-゚)フ 「……リリの傷はどうだ」
(´<_` ) 「急所は外れてる。少し血を流し過ぎたが、リリなら回復は見込める」
<_プー゚)フ 「……そうか」
目的にしていた集合ポイントから、さらに身を隠し移動したのは、とある民家の地下倉庫だった。
入口に丁度良く瓦礫が覆いかぶさり、入ることは出来るが目立たないようになっている。
ここならば、しばらく敵の目をやり過ごすことが出来るだろう。
( ´_ゝ`) 「……周囲はダメだ、やっぱり王国軍がうじゃうじゃしてる」
(´<_` ) 「……ここまで露骨に残党狩りしてるって、ことは」
<_プ-゚)フ 「……俺たちも、終わりだな」
( ´_ゝ`) 「……」
(´<_` ) 「一体、どうして王国軍はあんなに一気に盛り返したんだ」
<_プ-゚)フ 「数人、変な魔道具を使う兵が居た。あいつらの魔法で、主力の部隊がやられて総崩れだ」
(´<_` ) 「……魔道具か。ものによっては、確かにな」
( ´_ゝ`) 「なんとかできないのか」
(´<_` ) 「……」
- 617 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/03/15(日) 01:53:09 ID:ZE3.OEMQ0
-
<_プ-゚)フ 「……お前ら、怪我は?」
( ´_ゝ`) 「大したものは無い。戦闘の継続は可能だ」
(´<_` ) 「同じく。魔力もまだ十分ある」
<_プー゚)フ 「よし、じゃあお前ら二人は逃げろ」
( ´_ゝ`) 「……は?」
<_プー゚)フ 「お前ら二人だけでなら何とか逃げられるだろ。ここを感づかれて囲まれる前に逃げろ」
( ;´_ゝ`) 「そんなこと、出来るわけないだろ!」
<_プー゚)フ 「俺は裏切り者の元国軍兵士だし、リリは奴隷だ。絶対に見逃しちゃもらえないが、お前らは違う」
( ;´_ゝ`) 「違う、そういうことじゃない!そんなこと、やったらダメだって言ってるんだ!」
<_プー゚)フ 「お前らには世話になった。最期まで付き合わせるわけにはいかねえよ」
(´<_` ) 「……あんたはどうするんだ」
<_プー゚)フ 「そうさな……リリを連れて投降。革命軍残党の情報でも嘯いて命乞いしてみるか」
( ;´_ゝ`) 「だめだろそんなの!」
(´<_` ) 「アニジャ声がでかい」
( ;´_ゝ`) 「……万が一制裁を逃れられても奴隷に戻っちゃうんだぞ。いや、むしろ前よりも……」
<_プー゚)フ 「お前らには関係ないことだ。お前らが残ったって結果は同じだしな」
- 618 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/03/15(日) 01:54:45 ID:ZE3.OEMQ0
-
( ;´_ゝ`) 「そうかも、しれないけど!」
(´<_` ) 「……待て、二人とも」
潜ませた声でオトジャが二人を制す。
耳を澄ませると、地面を踏む足音が複数。
たまたま通りがかったというには、人数が多すぎる。
(´<_` ) 「気づかれた」
<_プ-゚)フ 「チッ」
(´<_` ) 「……人数は、二十弱か。まだ増えるかもな」
<_プ-゚)フ 「お前らなら何とかぬけられるだろ。俺が囮になるから」
( ´_ゝ`) 「……逃げないよ」
<_プ-゚)フ 「いうこと聞けクソガキ」
( ´_ゝ`) 「お断りだ。俺たちは大人の言うことが聞けないからここに居るんだ」
(´<_` ) 「まったくだな。どうする気だ」
( ´_ゝ`) 「今取り囲んでる兵士を出来るだけ倒して、挑発した上で引きつけて逃げる」
(´<_` ) 「……その隙に、リリを連れて逃げられるかエクスト」
<_プ-゚)フ 「お前ら……」
- 619 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/03/15(日) 01:56:17 ID:ZE3.OEMQ0
-
( ´_ゝ`) 「時間が無い、行くぞオトジャ」
(´<_` ) 「ああ」
<_プ-゚)フ 「おい!」
( ´_ゝ`) 「俺たちは自分たちの力を測りたくて。強くなりたくてここに来た」
(´<_` ) 「せめてあんたらだけでも助けられなきゃ、コケンに関わるんだ」
<_プД゚)フ 「だから……」
制止しようとするエクストを無視し、双子は地下室を飛び出した。
間もなく、怒号と剣のぶつかり合う音が響いてくる。
とても二対多とは思えないほど、絶え間なく激しい戦闘の音。
それが、双子がまだ生きている証明であり、これから殺されるかもしれない不安でもあった。
<_プ-゚)フ 「……クソ……ッ!」
⌒*リ´ - リ 「たい……ちょお……?」
- 620 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/03/15(日) 01:58:17 ID:ZE3.OEMQ0
-
エクストの腕の中で、リリが意識を取り戻した。
状況を呑み込めていないのか呆けた目で顔を見上げてくる。
そっと、優しく、エクストはその額の脂汗を指で拭った。
<_プ ,゚)フ 「リリ、大丈夫か?」
⌒*リ´ - リ 「……私は、平気。それより双子ちゃん……」
<_プ ,゚)フ 「……」
⌒*リ´ - リ 「わたしも戦うから……双子ちゃんを、助けにいこう」
<_プД゚)フ 「そんな傷で戦ったら死んじまうだろうが」
傷に響かないよう、少しだけ強くリリを抱きしめて窘める。
そんなエクストの頬に、小さな手が伸びた。
傷跡だらけの腕だ。
刃物では無く、鞭や鈍器で作られた引き裂かれたような抉れたような歪な白い蛇行。
エクストはその痕にそっと指を這わせる。
僅かに感じる凹凸は、それがいかに深くリリを苦しめていたかを物語っていた。
- 621 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/03/15(日) 01:59:23 ID:ZE3.OEMQ0
-
⌒*リ´ - リ 「……わたしは、ほんとうなら、もうしんでた」
<_プ-゚)フ 「……ッ」
⌒*リ´ - リ 「……あの時たいちょーがきてくれなかったら、きっと……」
<_フ )フ
⌒*リ´ - リ 「……あそこには怖いものしかなかったもの」
<_フ )フ
⌒*リ´ - リ 「だから、これでじゅうぶんだよ。自由を夢見れたそれだけで………」
<_フ )フ
⌒*リ´ - リ 「…………だから」
- 622 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/03/15(日) 02:00:58 ID:ZE3.OEMQ0
-
リリの言葉を、轟音が遮った。
落雷の音。ただ、雲もない今日の陽気には、あまりに突拍子の無い音だ。
エクストの頭に、仮面をかぶった敵兵の姿が浮かんだ。
本来であればもっと善戦できたはずの革命軍を壊滅にまで追い込んだ、妙な魔道具を扱う集団。
奴らが用いていたのは、一瞬見ただけではあるが、雷を操る類のものだった。
となると。
⌒*リ´ - リ 「たいちょー、双子ちゃんが……」
<_プ ,゚)フ 「……」
雷鳴を境に、戦闘の音が止んでいた。
立ち去る雑踏も無い。
幾つか聞こえた敵兵の声が聴き間違いでなければ、恐らくあの兄弟は。
<_プ-゚)フ 「……わかった、いくぞ」
⌒*リ´ぅ- リ
<_プ-゚)フ 「ギリギリまで俺を食え、出来るな?
⌒*リ´・-・リ 「……うん!」
* * *