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421 名前: ◆x5CUS.ihMk[] 投稿日:2014/09/14(日) 22:30:30 ID:28fNLYgo0
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胸の傷は、意外に痛まなかった。
あの瞬間ニョロが障壁を張ってくれたのだ。
おかげで即死はせずに済んだ。
それだけでない、傷口が魔法で保護されている。
応急処置の魔法。
自分でかけたものではものでは無い。
ξ ー )ξ 「……アンタ、本当に賢いね。この魔法も覚えちゃったの?」
ほっぺたを撫でる心地のいい感触。
目でそちらを見ると、ニョロが心配げな顔で擦り寄っている。
いつでも可愛らしい奴だ。手でそっと撫でた。
尻尾が激しく左右に動く。
傷みで、これ以上体が動かない。
いや、違う。大きな傷を負ったことは何度もあった。
これ以上に激しい痛みの中戦ったことは何度もあった。
今、体が動かないのは、もっと別の理由がある。
ξ )ξ 「……魔法、組まなきゃ……」
風の強化魔法を組み始める。
これを使えばまだ体を動かせる。
だけれど。
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422 名前: ◆x5CUS.ihMk[] 投稿日:2014/09/14(日) 22:32:43 ID:28fNLYgo0
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どうしたらいいのか分からない。
ドクオが攻撃したってことは、ィシはもう元に戻らないんだろう。
あの紫の魔法は、蛇のキメラを倒したのと同じもの。
足止めや一時的な拘束の為に使うような代物ではなかった。
彼はヘタレで甘いから、助けられる方法があるのなら、そちらを優先していたはず。
だからと言って、ィシを殺すのか。
大切な人を奪われて、同じ境遇の人間に手を差し伸べて戦ってきたあの人を。
もっと倒すべき他の敵を差し置いて、殺さなければならないのか。
気づけば、魔法で降らせた雨は止んでいた。
戦いの音がする。
ブーンだ。すさまじい音を立ててィシを圧倒している。
強い。
あれくらい強ければ、こんな事態になることを防げたかもしれない。
悔しかった。
また、弱いままだ。
目の前で壊れていく物を、ただ見ているしかできない。
なんと、無様なことか。
粋がり師の元を飛び出し、結局はこの有様だ。
あの時と、何も変わってはいない。
雨は止んだが、頬が濡れた。
ニョロが、床が鳴るようなか細い声で鳴く。
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423 名前: ◆x5CUS.ihMk[] 投稿日:2014/09/14(日) 22:34:04 ID:28fNLYgo0
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優勢だったブーンの動きが、途端に停止した。
操り人形の糸が切れたようだ。
そのままィシ洒落にならない勢いで弾き飛ばされる。
死んだかもしれない、と肝を冷やしたが、一応は生きているようだ。
ィシが手に木の礫を作り始める。
まだ射撃系の攻撃が出来たのか。
とにかく、あれを喰らえば、ブーンはただですまないだろう。
意識がはっきりとしないツンの視界にの端、捲れ上がった木の根の陰に、ヨコホリの姿が見えた。
ツンより先にィシにぶん殴られていたが、やはり死んではいなかったようだ。
それに加え何か怪しい動きをしている。
まだ生きているのか。
多くの人を殺し、ィシがこんなになるまで追い込んで。
それでもなお、魔女に与えられた力でのうのうと無事でいる。
体の中に渦巻く悔いと悲しみが、フツフツと湧き上がって怒りに変わってゆく。
ξ# 听)ξ 「“……ただ、天の意思のままに―――”」
なにがどうなろうと、あの男を倒さなければならないことに変わりはない。
ならば答えははシンプルだ。
らしくない悩みは、その辺の穴に捨ててしまえ。
ィシが、木の礫を放つ。
その時点ですでに、ツンの体の重さは消えていた。
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424 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/09/14(日) 22:35:07 ID:28fNLYgo0
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「“―――マリオット”!!!」
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425 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/09/14(日) 22:37:04 ID:28fNLYgo0
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全身を風が覆う。
考える間もなくツンは地を蹴った。
全てがスローモーに見える。
二歩目。地面が爆発したように弾け、ツンはさらに加速する。
放たれた礫は螺旋の回転を帯び、一直線にブーンの頭へ。
ξ#゚听)ξ 「ッらぁぁああ!!!」
三歩め、走るのではなく、跳んだ。
間に合う。精一杯手を伸ばした。
手の甲にすさまじい衝撃。
風の鎧を手に集中することで勢いを殺すが、相殺しきれない。
鋭い先端が、僅かにだが皮膚を破り肉に突き刺さる。
歯を食いしばって耐え、跳んだ勢いのまま転がった。
地面の水が飛沫になり、枯葉や土で体が塗れる。
木片は食い込んだ先からツンの手に根を張ってゆくが、引き剥がしている暇はない。
ξ#゚听)ξ 「ブーン!無事!?」
( ;^ω ) 「えっあっ、はい」
ξ#゚听)ξ 「迷惑かけてごめん、後は任せて」
( ;^ω ) 「任せてって、どうす……」
ξ#゚听)ξ 「今から考えるッ!!!」
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426 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/09/14(日) 22:38:12 ID:28fNLYgo0
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ξ#゚听)ξ 「ヨコホリ=エレキブラン!!!」
遠くでこそこそとしていたヨコホリを指さす。
ツンに襲い掛かろうとしていたィシがその気迫に気圧され動きを止めた。
名前を呼ばれた彼は気怠そうにツンを見る。
ξ#゚听)ξ 「ィシさん、思い出して!!倒すべきはあいつ!!戦わなきゃいけないのは、あの糞野郎!!!」
(//‰ ゚) 「……やれやれ。どうやったらしおらしくなるンだあの娘は」
ヨコホリはため息を吐くが姿を見せない。
姿を見えないものを敵と認識できないのか、言葉虚しくィシは槍を手にツンへ。
動けないブーンよりも先に、動くツンを狙っている。
前傾の踏み込みからの、全身で振りかぶっての武器攻撃。
ツンは強化された膂力で飛びのく。
やはり容赦がない。反応が遅れれば確実にもらっている。
ξ゚听)ξ 「ニョロ、この魔法と同じのを、あの人に、いいね?」
指示が通ったことを尻尾の動きで確認。
自身は、動けずに芋虫と化しているブーンの襟首を鷲掴みにする。
( ;^ω ) 「ツンさん―――?」
ξ#゚听)ξ 「危ないから退いてて!!」
魔法の力を全開にし、ブーンを一度ぐるりと振り回し、勢いをつけて遠くに放り投げる。
落下と同時にブーンは屁のような声を吹いた。
そのまま勢い死なず転がっていく。少々荒っぽかったが、距離は取れた
これで巻き込む心配はないだろう。ツンちゃんはとても優しいのだ。
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427 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/09/14(日) 22:39:11 ID:28fNLYgo0
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しかし、同時に大きな隙も生まれた。
投げ終りでバランスを崩すツンヘ、ィシの槍が横薙ぎに振るわれる。
横に活路は無い。上か下か後ろか。
ξ#゚听)ξ 「ふぬ!!」
風の魔法で強制的に体を仰け反らせ、後退。
目の前を木の尖った切っ先が過ってゆく。
風圧だけで鼻の先が折れそうだ。真面に受ければ頭が木端微塵になってしまう。
ツンは後転しさらに距離を取ろうとする。しかし、追うィシはさらに速い。
先ほどの攻撃の終わりから、小さめの歩幅で二歩。
この間に武器を振るう準備を終える。
ツンの背筋を、氷の舌が這い上がった。
横へ転んだのは、本能的な反射でしかない。
先ほどまでツンのいた場所に、ィシの一撃が振り下ろされる。
空振った矛先は地面に叩き付けられ、地面を抉り、へし折れて土と共に炸裂する。
今の回避はあまりの殺気に体が勝手に動いただけ。
喰らわなかっただけで、実質負けのようなものだ。
現にツンの本能は敗北を自覚し、逃走すべしとアラートを鳴らしまくっている。
ξ;゚听)ξ (本気どころの話じゃない……!)
このまま避けるだけでは掴まる。
しかし攻撃する気も無ければ、できるような隙も無い。
ほぼ、詰みだ。
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428 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/09/14(日) 22:41:24 ID:28fNLYgo0
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再び迫るィシから全力で距離を取る。
その際、ニョロの尻尾が激しく動く。合図だ。
ξ#゚听)ξ 「ニョロ!」
ニョロが強化魔法『マリオット』を発動する。
しかし、対象はツンでは無い。ィシだ。
密度の高い風がィシの四肢に絡みつく。
それにバランスを取られ、ィシの動きが大幅に鈍った。
風の外骨格によって助力を得るこの魔法。
他者に発動すれば拘束具としての利用もできる。
完全に動きを封じることはできずとも、大幅に性能を抑えることは可能だ。
しかし。
ィシが体を大の字に開くと同時に、風の鎧が弾け飛んだ。
集まっていた風が、ツンも巻き込んで方々へ散る。
拘束が破られた。
元来封印術などでは無いので強い反発を受ければ破られことは承知の上である。
だが、まさかこんなにも早く、分解に頼らぬ力技の選択をしてくるとは。
ツンは大きく体勢を崩す。
外骨格の魔法が、同系統の魔法の破片に干渉されてしまい統制を失った。
この隙をィシは見逃さない。
身動きの取れないツンに、ィシが肉薄する。
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429 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/09/14(日) 22:43:00 ID:28fNLYgo0
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ξ#゚听)ξ 「どっっっせええええええい!!!!」
刹那、ツンは自らが纏う風をィシに向かって解き放った。
その反動で後方へ飛び退き、間合いの確保を図った。
だが、ィシは強風をものともせず、さらに数歩の踏み込みを追加。
着地してバランスを崩しているツンヘ、中段突きを放つ。
硬い感触が、ツンの肩を捉える。肉に食い込む、頑強な拳。
骨が軋み、口から唾液と息が漏れた。風の余力で浮きかけていたツンの体は軽々宙を舞う。
吹っ飛んだのは、逆にセーフだ。真面に喰らっていたら弾かれる前に体が砕けていただろう。
ξ;゚)ξ 「いっつぅぅ……」
転がり受け身を取って這いつくばる。
立ち上がろうとするが、腕に力が入らない。
拳を受けた側だ。折れた、とは違う。脱臼。幸だ。
右手と体勢を利用して、無理やり骨をはめる。
電流の通った木槌で殴られたような、独特の痛みに目がちかちかしたが、へたっている余裕は無い。
立ち上がろうとして、左手に刺さったままの木片に気づく。
そういえば抜いていなかった。痛みが無いので忘れていた。
ξ゚听)ξ (コレ、死んだみんなを操るのにつかったやつ?)
麻酔を受けたように感覚が薄れている。
皮膚の下に根を張られながらも気付かなかったのはそのせいだ。
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430 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/09/14(日) 22:44:10 ID:28fNLYgo0
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ξ゚听)ξ 「……あ」
声を漏らすと同時、自分の影に別の影が重なるのに気付いた。
見るまでも無い。横に転がると、頭のあった場所にィシの足が突き刺さる。
飛びのいて逃げる。ィシの目は、ツンを捉えて逃さない。
ξ;゚听)ξ (これ、もしかしたら……)
肉薄するィシ。
折れた槍の柄で脇構えからの突き。
ツンは身を捻って何とか躱す。
しかし、それで終わらない。ィシはさらに一歩前へ。
突き出した腕を開く形で、ツンが逃れた方向へ払う。
既に体勢は崩れている。
ささくれた木の先端がツンの肩を薙いだ。
強引な連撃だ。力は万全でない。ただし、あくまで剛力を誇るィシにしては、という話。
シャツを裂かれ、体を捻られながら、ツンは吹き飛ばされた。
地面を転がる。ダメージが大きい。すぐには動けない。
ィシが一呼吸で体勢を整え、ツンの脇腹を蹴りあげる。
ニョロが防壁を張った。防ぐためでなく緩和するためだ。
体が浮いて転がされた。内臓がせり上がるが、何とか体内に押し留める。
ξ;゚)ξ (ダメだ、悩んでる暇なんて無い)
地面に爪をたて、踏ん張る。
伸びをする猫のような体勢。
ツンは、立ち上がるでも、武器を構えるでもなく、手の甲から生える木の礫を鷲掴んだ。
そして。
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431 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/09/14(日) 22:46:12 ID:28fNLYgo0
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ξ#゚皿゚)ξ 「ふんっ……ぬっ!!」
力強く引っこ抜く。
皮膚が破れ血が溢れ出した。
失せていた傷みが、再燃した火のように神経を駆けあがる。
血に塗れる根には、付着した脂肪の粒。
ξ゚听)ξ 「……」
自身の血と肉片がこべりついたそれを、ツンは睨みつけた。
この木片は、人の神経に介入する。
死人の頭に刺されば生き返ったかのように再び動き出すし、生きている人間に刺されば感覚を奪う。
そして恐らくはィシ本体の意識とリンクしている。
確証こそないが、自律していたにしては統率がとれ過ぎていた死体を見ても間違いは無いだろう。
ξ゚听)ξ (原理は知らないけど、じゃあ……)
襲い来るィシを転がって躱す。視線は礫に向けたまま。
ツンはその場に膝立ちで、礫を両手で握りしめた。
鋭利な先端を自分の方へ向け、頭は後ろへ仰け反り勢いをつける。
そして、覚悟を固める。あるかも分からない可能性の為に。
ξ#゚听)ξ (こっちからの干渉だって、出来たっていいでしょ!!)
( ;^ω^) !!??
自らの手で、木片をこめかみに突き刺した。
頭中に音が響く。鋭い痛みと鈍い痛みの二重苦が、意識を激しく揺さぶる。
先端が頭蓋に触れる感触があった。
根が皮膚の下を這ってゆく感覚も、すぐにぼやけて認識できなくなったが、あった。
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432 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/09/14(日) 22:47:37 ID:28fNLYgo0
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ィシが迫った。
ツンはこめかみに両手をあてたまま、俯いている。
振り上げれれる槍。
濁ったィシの目に映っているのは、ツンでは無い。
壊さなければならない肉の塊だ。
容赦も情けも一切ない。
ただこの槍を突き刺し、殺し壊し、己の肉と―――
ξ# )ξ 「止まれ!!!!」
振り下ろされた槍。
空気が爆ぜる。
目に見える波紋となって空間をしびれさせる。
木の葉が舞った。
血が一筋、尾を引いて落ちてゆく。
槍の先端は、止まることなくツンの体を貫いた。
ただし、耳の、ほんの少し皮膚よりも深いだけのところを。
僅かな血の付いた槍は、ツンの頭に添うように止まっていた。
握りしめるィシも、ただの木になってしまったかのように、動くのを止める。
〈:: − 〉
静かな時間が唐突に訪れる。
雨に塗れた森は、風に舞う木の葉もなく、ただただ静寂だった。
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433 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/09/14(日) 22:49:37 ID:28fNLYgo0
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ィシは戸惑っていた。
不可思議な憎悪を放つだけの肉塊だったこれが、突然見知った少女に変わった。
彼女を殺すわけにはいかないし、攻撃するなどもっての他なのに、なぜ自分は槍を突きつけようとしていたのか。
俯いたツンの上半身がゆっくりと起きる。
それに合わせてィシも槍を引いた。
完全に顔が上を向いて、顔を合わせた。
ツンのこめかみには、角のような木が生えていた。
皮膚の下に根が広がり、それが脳のあたりにまで及んでいることは、なぜか考えるまでも無くわかった。
ξ 听)ξ 「ィシさん」
〈:: − 〉 「……ディレー……トリ」
( ;^ω^) (喋った!!!)
(;'A`) 『馬鹿な!あの状態じゃ意識なんて……』
ィシの左手が伸びて、ツンの頬に触れた。
慈愛に満ちた手つきでツンの顔に付着した泥を拭う。
先ほどまで満ち溢れていた敵意は、一切消えていた。
ξ゚听)ξ 「……倒すよ、ィシさん。あいつを。そして、全てに片を付けるの」
〈 ::゚−〉 「……ァア」
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434 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/09/14(日) 22:50:58 ID:28fNLYgo0
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ィシが槍をクルリと回し、向き直る。
ツンと共に睨む視線の先に居るのは、
(//‰ ゚) 「どういうコった。完全に理性はトんだと思ったンだが」
サイボーグ、ヨコホリ=エレキブラン。
ここまでの間に傷の修復を終えた彼は、最も万全に近い状態で立っていた。
逃げるつもりだったのか、失神した逆さ男を抱えている。
(//‰ ゚) 「悪いなディレートリ、そいつの相手は割に合わン。五月蠅いのも大人しくなったし、俺はトンズラ……」
手をひらひらとさせて余裕を見せていたヨコホリの胸に、木槍が突き刺さる。
ィシが投げたのだ。ブーンですら一瞬見失うほど速く、鋭く。
(//‰ ) 「ガッ……」
よろけ、担いでいた逆さ男が地面に落ちた。
槍はヨコホリの胸の中心を背中まで貫通している。
常人なら確実に致命傷。即死であってもおかしくは無いが、彼は倒れない。
笑みにも取れる形相で歯を食いしばり、槍を引き抜く。
吹き出していた血はすぐに収まった。
鋼鉄の繊維が破れた皮膚の間から覗くも、すぐに塞がって見えなくなる。
(//‰ ゚) 「どういう訳かはしらンが、俺に取っちゃ嬉しくない事態になった見てえだな……」
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435 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/09/14(日) 22:53:22 ID:28fNLYgo0
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腕を構えるヨコホリ。
風が生み出され、魔法弾が複数射出された。
しかし、この全ては霧散して消える。
ィシの胸元で、シーンが目を光らせている。ブーンに受けたダメージはほとんど回復してしまったらしい。
他の頭も、僅かではあるが動き、ヨコホリを睨みつけている。
ξ ゚)ξ 「ィシさん、思いっきりやっちゃって」
ツンへの返事は、そのまま行動となって表れた。
高い身長を活かした高速の駆け足で、ィシはヨコホリへ肉薄する。
ヨコホリは一歩前へ出て迎撃の体勢。
魔法は発動する様子なく、あくまで拳を主体に戦うつもりのようだ。
対しィシは急激な減速。
あと数歩と言うところで、振り上げた足を地面に叩き付ける。
大地が揺れ、鼓膜が痺れる。しかし、ィシの目的は震脚による牽制などでは無い。
(//‰ ゚) 「!?!!?」
ィシの足が突き刺さった地面から、木の蔓が飛び出し、そのままヨコホリに絡みついた。
槍を作るのと同じ原理だ。地面の有機物に干渉し、変形させて操った。
予想外の攻撃にヨコホリは対応は後手となる。
鋭い手刀で切り払うが、続けて襲い来る蔦の猛襲にあっけなく体を絡め取られる。
( ;^ω^) (あんな使い方出来たのか……!)
肝が冷えっぱなしである。
もしブーンに対して同じことをされていたら、さらに苦しい戦況を強いられただろう。
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436 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/09/14(日) 22:54:46 ID:28fNLYgo0
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木の蔓は、ィシの元のみならずヨコホリの傍からも生え出し、密に絡まってゆく。
いくら剛力を誇るヨコホリであってもこれだけ束縛された状態からの脱出は困難。
魔法で吹き飛ばそうにも、腕が明後日の方向に向けられているため狙いが定まらない。
ヨコホリの拘束が済み、ィシは足を引き抜く。
すぐに接近はせず、ゆっくりと近づいた。
(//‰ ゚) 「こんの、糞アマァ!!」
拳の届く間合い。
蔓はヨコホリの顔までは覆っていない。つまり、ここ以外に攻撃する部分はほぼない。
ヨコホリが腕を固定されたまま風の榴弾を放つ。
通常の物に追尾性をプラスした特殊弾。
宙空に放たれたそれは弧を描き、ブーメランのように転回。
拳を構えるィシの頭部を狙う。
だが、これだけ悠長に飛んでくる魔法をシーンが分解できないわけがない。
魔法は全て消え、ィシを止めるものは何一つなくなった。
全身を使った伸びのある拳が、ヨコホリの顔面をとらえる。
拘束され、衝撃を逃がすことさえできないヨコホリ。
凄まじい金属音が鳴り、響き何かの破片が宙を舞った。
鼻と頬が陥没し、引いたィシの拳に血が糸を引く。
これで終わりでは無い。
左右を入れ替えるように左の拳。
今度はフックのかかった軌道でヨコホリの顎を横に跳ね上げる。
頭が捩じれ、首の骨が千切れる音が、離れたブーンの耳にも聞こえた。
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437 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/09/14(日) 22:55:57 ID:28fNLYgo0
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まだまだ終わらず。
さらに半身を切り替えての拳打。
前の攻撃をそのまま予備動作に繋げた、大きな振りかぶりの打ち下ろし。
もはや耳に馴染みそうな金属音に、肉の水っぽさが混じる。
粘度の高い血が飛び散り、雨に飲まれて地に落ちる。
さらに追撃。
しっかりと体勢を整え、左の拳を腰元に。
はちきれんばかりに力を蓄え、力強い踏み込み。
全身の体重を乗せた正拳突きが、ヨコホリの頭部をまっすぐに打ちぬいた。
一連の攻撃に、蔓の方が耐えられず引き千切られる。
ヨコホリの体が投げ出され。血の尾を引いて地面に転がった。
すぐに動き出す気配は無い。しかし油断もできない。
彼は、巨体であった猪状態の拳での圧撃にすら耐えきった。
頭部をピンポイントで破壊したとはいえ、生きている可能性は高い。
(;'A`) 『心なしか、やり口がテクニカルになってねえか?』
ドクオの言う通りだ。
ィシの攻撃は元から力任せというわけでは無かったが、
それでも組み合わせや用法においての知性がやや欠如している印象があった。
あくまで僅かな隙程度の単純さではあったのだが、それがさらに小さくなっている。
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438 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/09/14(日) 22:57:32 ID:28fNLYgo0
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ィシは拘束に使っていた木の蔓の塊に触れた。
蔦がずるずると渦を巻き、一つの木へと変化してゆく。
出来上がったのは巨大な槌。体を丸めた大人一人程に大きいそれを、ィシは軽々と持ち上げた。
(//‰ ゚) 「ガッァ……てめえ……!!」
横に薙ぐ。
起き上がろうとしたヨコホリの体は跳ね飛ばされる。
実に軽々だ。
鋼鉄を纏うヨコホリはかなりの重量があるのだが、ィシの前ではただの人間と大差ない。
振り切った槌を難なく制動し、ィシはヨコホリを追う。
ヨコホリは修復も間に合わず動作が緩慢。
起き上がりかけの胴に、高い位置から巨大な木の槌が叩き付けられた。
槌の衝撃が土と水を爆発させ、高く舞い上げる。
潰されたヨコホリの体は地面へ押し込まれ、はみ出した四肢が槌を抱くように跳ねあがる。
強烈な音だ。地崩れの一つ、すぐに起きてもおかしくは無い。
( ;^ω^) 「ツン、これは一体……」
ξ )ξ 「……ちょっと、黙ってて。気を抜くと、私まで飲まれそうなる」
立ったまま傍観していたツンだったが、体をよろめかせ膝をついた。
額の木がさらに大きくなっている。
表情も非常に苦しそうだ。脂汗を滲ませ、土を握りしめて耐えている。
怪我のせい、では無いだろう。
時折プルプルと震えているあの木が、ツンに何かをしているのだ。
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439 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/09/14(日) 22:58:58 ID:28fNLYgo0
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(;'A`) 『……まさか、あのバカ!!』
( ;^ω^) (何、なんかわかったのかお?)
(;'A`) 『あの木だ。ツンの奴、あの木の機能使って、逆に本体に干渉してるんだ』
( ;^ω^) (そんなこと出来るのかお?)
(;'A`) 『じゃねえと、いきなり自我を取り戻した理由に説明がつかねえ』
ドクオの予想はおおよそ正解だった。
ツンの頭に刺さっているのは、本体と交信するための呪具の断片だ。
主にィシの側からの命令を伝えるためのものだが、操られている側の五感の送信も行われている。
ツンはこの機能を用いてィシの精神に逆介入。
呪具の精神汚染に飲まれたィシ本来の意識を呼び起こした。
しかし、簡単な話では無い。
干渉に耐え、逆に干渉するだけの精神力が必須となり、激しい消耗を生む。
しかも、一度救えばそれで終わりともいかず。
既に呪具の効力は限界近くまで発揮されており、ツンが介入を辞めた時点で状態は逆戻り。
彼女が自我を持ってヨコホリと戦っていられるのは、呪具の精神汚染が妨げられているから。
ツンはフィルターだ。精神汚染を無くしたのではなく一時的に肩代わりしているだけ。
今彼女が意識を失うなどすれば、ィシは再び理性のない魔物へと化す。そして今度こそあらゆる対象を蹂躙する。
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440 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/09/14(日) 23:00:54 ID:28fNLYgo0
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ξ )ξ 「……くっ、は」
木の角が根を深めてゆく。
物理的に脳へ侵攻して干渉を容易くしようとしている。
ツンは根の周囲に自身の魔力を集め抑制する盾としているが、やはり魔女の呪具の方が馬力は上だ。
ξ )ξ (もう少し……もう少し……)
ィシは執拗に木の槌をヨコホリに叩き付けている。
接触面には血がこべりつき相当に破壊されていることを物語っていた。
シーンが分解するよりも、安全で確実だ。
ヨコホリの魔法攻撃は初動が早く、彼の性格もあってタイミングが読めない。
ィシの力で止めを刺せるのならば、シーンは魔法の警戒に回る方が安全。
ξ )ξ (せめて、此奴を倒さないと)
もう何十と殴っただろうか。
ヨコホリの反応が希薄になったのを確認し、木の蔓でその体を持ち上げた。
四肢がだらりと垂れ、鋼鉄の体の隙間からは血が流れだしている。
戦闘不能だ。むしろまだ微かに息があるのが脅威である。
体を見ると、肌の下に金属の繊維が張り巡らされており、これでいくらかダメージを緩和していたのだろう。
(//‰ ) 「が、ハ……、」
ヨコホリの右腕が動いた。
即座に蔓が巻き付き、拘束。放たれた魔法は全く関係の無い方向へ飛んでいった。
ィシが落ちていた剣の一つを、木の蔓で手元へ引き寄せる。
これで首を落とす。いくら生命力が強くとも、頭と胴を切り離せば生きてはいられまい。
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441 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/09/14(日) 23:02:44 ID:28fNLYgo0
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両手で剣を構え、振りかぶるィシ。
体を捩じり力を溜め、足を振り上げる。
踏み出す足。
前へ移動する重心。
力は鋼の切っ先に乗り、空気を割いてヨコホリの首へ。
(//‰ ) 「……ナァ、ィシ=ロックス」
ヨコホリの首を捉えた剣が、耳に痛い音を立てて折れ飛んだ。
切っ先がクルクルと回り、ひっくり返った切り株に突き刺さる。
(//‰ ) 「そんな呪具で、本当に俺を殺せると思ったのか」
ヨコホリの首が、鋼になっていた。
正確には、鋼鉄に覆われていた。
右腕の鎧状のものとは異なり、編まれた繊維が皮膚のように体に張り巡らされている。
これが、斬撃を弾き、砕いた。
(//‰ ) 「お前はよ、あくまで人間として俺に立ち向かい、人間として死ぬべきだったんだよ」
仮面の右目が魔法陣を宿し赤く輝いていた。
濃く、不気味で鮮烈な魔力の波が、漏れ出し空気を犯してゆく。
ィシは咄嗟に後退。
明らかに、これまでとは違う。
ヨコホリを拘束していた木の蔓が黒く変色し崩れ落ちた。
露わになった彼の体は、首から広がる鋼鉄の皮に覆われて行く。
破壊しつくした顔面も、鉄線が内側に張り巡らされることで瞬く間に再建された。
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442 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/09/14(日) 23:04:31 ID:28fNLYgo0
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(//‰ ゚) 「見てみろ。化け物になって、分別も理性も無くし」
ヨコホリが前へ。ゆらりと、倒れるような力みのない動きだった。
消えたと見紛うほどの速さでィシに肉薄し、反射的な抵抗をすり抜け、その首を掴み上げる。
圧迫された木の肌が割れて捲れ、鋼鉄の指が深々と食い込んだ。
(//‰ ゚) 「自分の半分も生きていねえガキに、体を張って支えられているてめえの現状を」
ィシの手は、ヨコホリの腕を掴み外そうとしたが、すぐに思考を切り替え攻撃に転じる。
ダメージは皆無。逆にィシの手に罅が入る。
繰り返し何度も拳を叩き付けるも、悪あがき程度の効果すら見えない。
(//‰ ゚) 「俺はお前が怖かったんだよ。気概と冷徹さについちゃ、他の雑魚とは一線を画してた」
(//‰ ゚) 「そんなお前が、意志を抜き取った木偶になって何が出来る。力だけに縋り頼って、何が出来る」
ィシの首が音を立てて歪む。
鷲掴むヨコホリの指に、一切の容赦はない。
ξ#゚听)ξ 「おらぁぁぁあ!!!」
ツンが、真横からヨコホリに飛び掛かった。
狙いは首。全体重を乗せたナイフで、あの鉄の皮を破る。
ぶつかり合う鉄と鉄。毀れたのは、ツンのナイフのみ。
ヨコホリの方には、僅かに引っ掻き傷がついたかどうかといった状態。
着地したツンは、諦めない。
屈んだ姿勢から、そのまま脇腹へナイフを向ける。
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444 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/09/14(日) 23:07:59 ID:28fNLYgo0
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ヨコホリは、乱雑にィシをツンヘ投げつけた。
二人は共に吹き飛ばされ、地面を滑る。
(//‰ ゚) 「なあ、ディレートリ。そんな奴の為に体を張るのはよせ」
ξ゚听)ξ 「黙れ」
(//‰ ゚) 「そいつは諦めたんだよ、自分の力で戦うことを。お前が、その体を侵されてまで庇う価値はねえ」
ξ# )ξ 「黙れ!!」
ツンの怒声に合わせ、ィシが立ち上がる。
大きく開く口から吐き出される雄叫び。
木の破片や、戦闘に巻き込まれて損壊した死体のパーツが地面から飛び出し、ィシへ飛来。
損傷した個所が修復され、死体の比較的新鮮な肉を吸収する。
補給は十分。ィシは自ら前へ出た。
飛び上がってからの、蹴りによる首刈り。
ヨコホリは防御をせず、そのまま受け止めた。
響く打撃音。激しさとは裏腹、ヨコホリは微動だにしない。
代わりに、超至近距離から魔法弾を放つ。
飛びのきながら分解。
しかし、立て続けに放たれる魔法にやや押され始める。
一つ一つの威力が上がり、連射の間隔も短くなった。
分解に頼り切るのは危険だ。
直線的に狙われれば応対できるが、奇手を打たれた時点で詰む可能性がある。
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445 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/09/14(日) 23:09:36 ID:28fNLYgo0
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ξ゚听)ξ (打撃も、斬撃もあの体の前には通用しない。なら……)
生命魔法の分解。
元々ィシが切り札としていた手だ。
しかし、魔法攻撃が激しすぎてその隙が一切ない。
ィシの足で回避し続けられればいいが、この乱撃の前では困難を極める。
ヨコホリが右手の狙撃を続けながら、左手を大きく振りかぶった。
鉄の繊維で作られた鉤爪が、空気の揺らぎを湛える。
(//‰ ゚) 「ァァ!!」
何もない空間を爪で切り裂く。
生み出された真空が空気を掻き乱し、風の刃となってィシを急襲した。
指と同じ、五つの風の刃。
迅い。すべての分解は間に合わない。範囲が広く、横への回避も間に合わない。
ξ゚听)ξ 「ッ!!」
ツンとシーンの判断は必然的に一致した。
風の刃の内、内側の二本を分解。
余波の風だけになったその空間をへ、ィシは体滑り込ませるように跳躍。
体表のささくれが削れるほどの場所を、必殺級の鎌鼬が過ってゆく。
回避に成功し、着地。続けて襲い来る風の爪も、紙一重のところをすり抜ける。
せめてもの足しになればと吸収した死体の残骸は、意外にもィシの膂力を大幅に回復させてくれた。
元々のィシの戦闘センスも込みで考えれば、十分渡り合える。
問題は、どう殺すか。
これは、ツンに一つの案があった。