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203 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/10/27(日) 22:26:23 ID:/XGun1gI0
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( ^ω^) 「……」
魔女の魔力によって生み出されたであろうこの猪の能力を探るべく。
そしてツンの「味方」という発言で様子見を決め込んでいたブーンだったが、改めて剣を握りなおす。
ツンは、正直なところ思慮深い性格では無い。
直情的だし、すぐ突っ込むし、後先考えないし、もうちょっと脳みそに仕事させてほしいと思うことが何度もあった。
だがしかし、今現在、生半可な覚悟でこの選択肢を導き出したわけでないだろうことは、分かる。
その意志を、できれば踏みにじりたくはない
無論、だからといって魔女の関わった「力」に対する警戒心を捨てたわけではない。
(;'A`) 『……できうる限り、元に戻す方法を考えてみる……だが……』
ただし、猪の力の矛先が、しかるべき目標を見失ったその時は、容赦は出来ない。
制御を失った強大な力が一体どれほどの被害を生むか、ブーンは嫌というほど知っている。
ξ゚听)ξ 「ィシさん、そいつは、ブーンは敵じゃないから、攻撃しなくても大丈夫」
ブーンが一歩近づいただけで腕を突き出し、木片を放つ動きを見せていた猪、ィシ=ロックス。
ツンのその一言を聞き、僅かに逡巡する間を置いて腕を下した。
少なからず驚く。
ここまで変貌してなお、人語を理解し行動を律する精神が残っているとは。
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204 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/10/27(日) 22:28:26 ID:/XGun1gI0
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〈;;(。个。)〉 「厄介な展開になったな」
イ(゚、ナリ从 「だから早めにあいつぶっころべきだった。だんちょのせい」
爪;'ー`)y‐~ 「やははは、厳しいね……でもまあ、人間相手なら俺も役には立てるかな」
ィシを挟み、ツンはサイボーグと、ブーンは逆さ男、剣の女イナリ、そしてだんちょ、フォックスと向かい合う。
単純な数では三対四。現状のィシが超人の能力を持っていることを考えれば、不利なバランスでは無い。
危惧すべきは、ィシがどこまで味方でいてくれるか、だ。
現段階ではブーンやツンに危害を加えることは無いが、魔女の力に飲まれている以上安心するべきではない。
いざというときはィシ、ヨコホリたちの双方からツンを守らなければならなくなるだろう。
ィシの雄叫び。
ぱっくりと体を割いていた傷はもう修復が済んでいた。
あの咄嗟の一瞬に正中線を躱していたのは、この再生力を自ら知らなかったのか、それとも。
人間だったころの名残といえばそうかもしれないが、注視しておく必要はありそうだ。
ブーンはドクオに猪の観察を任せ、逆さ男たちにククリを突き出した。
〈;;(。个。)〉 「……貴様、大五郎には関係ないと聞いていたが」
( ^ω^) 「大五郎の関係者では無く、この場を見かねて飛び込んだ正義の味方ってことで頼むお」
〈;;(。个。)〉 「……正義か。嫌味な言葉を使う」
( ^ω^) (この臭いは……)
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205 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/10/27(日) 22:29:19 ID:/XGun1gI0
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イ(゚、ナリ从 「だんちょ、煙早く!!」
言うが早いか、イナリが前へ。
剣はィシが引っこ抜き、明後日の方へ投げ飛ばしていたが、拾う気はないらしい。
太腿のホルダーに差してあった投具を抜き取り、近い間合いから振りかぶって投げつける。
ブーンは冷静に射線を見切り、ククリの先端を合わせて弾く。
軌道をずらされた小型の刃は錐もみ回転しながら森の中へ消える。
進行方向を横に変え、イナリがもう一本の投具を放つ。これもブーンは最小限の動きで弾いた。
この間、逆さ男が弧を描いて接近。
ィシとブーン、どちらも狙える位置を取っている。
ちらりと後方を確認するブーン。
ィシはその場から動かず、ヨコホリを木片で狙撃。
ツンは巻き添えを食わぬように横へ流れながらヨコホリに格闘を挑んでいる。
ヨコホリを二人に任せ、自らは逆さ男へ。
迷いなく顎を砕きに来た前蹴りを、仰け反って避ける。
当たれば口中の歯列ごと砕かれるだろう。表情には出さないが、背筋に冷たい電流が走る。
振り切られた男の足は、引き戻されるかと思いきやブーンの左腕に絡みついた。
腕の上側にふくらはぎを乗せ、角度と足首のひねりで、つま先だけを下側に回し込み引っ掛ける。
蹴りを放った後とは思えない精密な動作。
ブーンが右手のククリを振るおうとするよりも早く、逆さ男が右足に体重を乗せた。
絡めとられた腕を押し下げられ、肩の関節が悲鳴を上げる。
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206 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/10/27(日) 22:30:27 ID:/XGun1gI0
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( ;^ω^) 「?!」
ブーンが何とか押し返そうと力を込めた瞬間に逆さ男は体を後ろへ倒す。
自らの力も利用され、ブーンはあっさりと引きつけられた。
巴投げの要領。
咄嗟に判断し、何とか堪えようとしたブーンの鳩尾を、軸足であったはずの左足が蹴り抜いた。
重さは、それほどではない。それでも一瞬意識を白濁させるには十分。
左足の爪先はさらに食い込み、ブーンの体を持ち上げる。
地面に肩を突き、全身のバネで足を振り切った逆さ男の力に空中で逆らうこともできず。
落ち着きのない空中浮遊を楽しむ暇も無く、離れた木の根に直接叩き付けられた。
(;'A`) 『足だけの投げ技なんて初めて見た……』
( ;^ω^) 「……喰らってみる?」
(;'A`) 『また今度ね』
小ボケを楽しむ余裕すら逆さ男は与えない。
地面に肩をついた姿勢から、腕の力でクルリと体を向き直し、起き上がる勢いでそのままブーンへ接近する。
体操選手かよ、死ね。という悪態もそこそこ、ブーンもダメージ色濃く残る体で迎撃を体勢を取った。
その向こうで、イナリが落ちていた手斧を拾い、ィシへ向かうのが見える。
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207 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/10/27(日) 22:31:54 ID:/XGun1gI0
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逆さ男のスタイルはブーンが今までかつて体験したことの無い型だ。
負ける気はないが、楽勝というには今のブーンでは苦しいだろう。
(;'A`) 『ブーン、仕方ねえ使え』
( ^ω^) (……僕も、そう思ったところだお)
小さな踏み込み。
ククリの先端を土に食い込ませ、撒き上げる。
逆さ男は舞い上げられた土を、体幹の回転で円の軌道を描き回避。
この僅かに稼いだ時間に、ブーンは逆へ距離を取る。
そして右手の袖をまくり、手首を露出させた。
太く力強いそこに嵌っていたのは、大きな銀のブレスレット。
ドクオの師の元にあった、魔道具の一つ。
形態としては星。現在封じられている魔法は。
( ^ω^)( 'A`) 「『“我、永遠喰らう者―――汝を、蹂躙す”!!』」
ドクオが使える中で、最も効果の高い身体強化魔法。
腕輪から吹き出した炎の帯がブーンの体にまとわりつき、全身の筋力を増強してゆく。
初手を取ろうと蹴りを構えていた逆さ男は、咄嗟に距離を取る。
ブーンから溢れだす圧力が、普段の比では無くなっていた。
本人からすれば、本来の能力にもまだ至らない、不完全なものではあるが。
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208 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/10/27(日) 22:32:45 ID:/XGun1gI0
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(;'A`) 『副作用は相変わらずだ。無理はすんなよ』
( ^ω^) 「……お」
ゆらりと、ブーンが前へ。
余計な力が篭っていない。
力む必要が無いからだ。
〈;;(。个。)〉 「?!」
( ^ω^) 「杉浦双刀流変式一刀の型―――」
ブーンが気配を消す。
逆さ男程の相手に使うには、動揺の見える今しかない。
軽やかに地を蹴り、間合いを詰める。
逆さ男は既にブーンへ意識を戻していた。
だがそれは、早いが、遅い。
( ^ω^) 「“攫い百舌鳥”」
左脇へ居合抜きの構えから放たれたのは、左の貫き手。
当然斬撃を回避する意識であった逆さ男は面食らう。
後退し身を捩じって交わすも、反撃を放つには不十分な姿勢へ。
ブーンの動きは止まらない。
貫き手を放った勢いのまま、一回転。軸足が瞬時に入れ替わり、重心が滑らかに移動する。
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209 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/10/27(日) 22:34:17 ID:/XGun1gI0
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〈;;(。个。)〉 「……くッ」
回転を活かした振り上げから、倒れるような踏み込みによる音速の斬撃。
逆さ男はこの一太刀を強引に避ける。
完全にとはいかない。先端が服と皮膚を浅くではあるが、切り裂いた。
( ^ω゚) 「ッ」
細く糸を引く逆さ男の血液。
ブーンは振り切ったククリをすぐさま引き戻し、獣を思わせる荒々しさで間を詰める。
逆さ男は崩れた体勢から前蹴りを放つが、ブーンの反応はそれを軽く回避。
腹の脇で蹴り足を掴まえ、そのまま強引に推す。
もはや崩れ切った体勢の逆さ男の体はいともたやすく浮き上がった。
ギリギリと足を締め付ける剛力は、脚甲が無ければ骨を折るほどだ。
地面に逆さ男を叩きつける。
足を離さぬまま押さえつけ、ククリを首を断つ形で一文字に放つ。
逆さ男はこれを腕で防御した。
袖の中のロンググローブに仕込んだ鉄板が切断を防ぐ。
( ω゚) 「ッ!!」
連続で、頭へ向かって振り下ろされるククリ。
逆さ男は辛うじて鉄板で受け、致命傷を防ぐ。
ブーンの動きは振るうというよりも、鍔元で殴りつけるような直線の動き。
勢いはないが、増強された身体能力により、すさまじい音が鳴り響く。
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210 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/10/27(日) 22:35:04 ID:/XGun1gI0
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このまま逆さ男が惨殺されるのは時間の問題かと思われたが、ブーンが何かに気づき逆さ男を解放した。
野性的な動きでその場を飛びのき、一気に距離を取る。
ブーンがマウントを取っていた逆さ男の上を、鞭のような青白い何かが揺らめく。
それは細く伸びる煙の筋であった。
爪;'ー`)y‐~~ 「いやぁ、待たせたね旦那。生きてる?」
〈;;(。个。)〉 「……この通りだ」
フォックスの魔法の煙が糸のように逆さ男の周囲を囲む。
具体的な効果はわからないが、危険な臭がプンプンする。
(;'A`) 『大丈夫か、一瞬飛んでただろ』
( ;^ω^) (……すまん……お、どうも、火の強化魔法は苦手だお)
(;'A`) 『興奮の副作用がお前には厄介すぎるな……辛いようなら解除しろよ』
( ;^ω^) (魔法なしでやるには、相手がちょっと悪いおね……)
爪'ー`)y‐ 「さーて、あんたも大概人外の臭いがするけど俺の魔法は効くのかな?」
煙が意志を持って揺らめく。
速度は無いが、確実にブーンへ迫っていた。
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211 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/10/27(日) 22:36:10 ID:/XGun1gI0
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(;'A`) 『魔法毒……いや、色が薄いな……精神干渉……』
( ;^ω^) (当たったらどうなる?)
(;'A`) 『……たぶん、無傷で倒れている奴らと同じ感じに』
( ;^ω^) (囲まれちゃったネ)
(;'A`) 『……ブーン、代われ策がある』
( ;^ω^) (……)
(;'A`) 『先生のタリズマンがある。簡単にやられたりはしない』
返事もそこそこにブーンの姿がドクオへと変わる。
フォックスは僅かに驚きを見せたが、逆さ男はすぐに対応。
魔法を使わせまいと一気に間合いを詰める。
(;'A`) 「“―――盾よ”!!」
ドクオの詠唱に呼応したのは、胸元に下げたタリズマン。
元から持っていた月の他にもう一つ、小さい指輪が括り付けられている。
弱い斥力効果を持つだけの障壁魔法式が刻まれた大地の。
魔力に適合性があるドクオしか使うことが出来ないが、発動スピードは他の魔法を圧倒的に凌ぐ。
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212 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/10/27(日) 22:37:09 ID:/XGun1gI0
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躍りかかる逆さ男の前に表れた六角形の障壁。
突然のことに避けきれず触れた彼の体は、眩しい発光と共にはじき返される。
逆さ男を一旦撃退するだけの任を全うして、障壁はすぐに消え去った。
爪'ー`)y‐~~ 「よくわからないけど、仕留める方向でいいんだね」
様子見で漂っていた煙がドクオへ迫る。
これに関しては物理面に重きを置いた盾の魔法では対抗できない。
既に――まだドクオであれば抵抗できるレベルではあるが――魔法が浸蝕してきている。
ドクオは逆さ男に意識を配りながらも、煙の薄い方へ走った。
あからさまな誘導だ。それにはドクオも気づいている。
しかし、なんにせよ間合いは詰めなければこの策は成り立たない。
(;'A`) 「“盾よ”!!」
〈;;(。个。)〉 「……ッ」
迫る逆さ男を足止め。
盾を複数同時に生み出して、横への移動も制限する。
爪'ー`)y‐~~ 「お兄さん、戦い方がせこいねえ」
(;'A`) 「お前みたいなタイプには言われたか無いね」
爪'ー`)y‐~~ 「まあ、それも終わりさね」
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213 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/10/27(日) 22:38:23 ID:/XGun1gI0
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煙は、完全にドクオを囲んでいた。
しかし、まだやられるとは限らない。
精神干渉の魔法などは、魔法使いなど魔力の扱いに長けた者ならば抵抗することが出来る。
万全である今のドクオであれば十分耐えられるはずだ。
その隙に手に持ったククリでぶん殴れば勝てる。
格闘は苦手だが、今は筋力がちょっと増しているし、強化魔法の効果もあるので十分効く、と思う。たぶん。きっと。恐らく。お願い。
爪'ー`)y‐~~ 「言っておくけど、我慢なんてしない方がいい。辛いだけだ」
ドクオが耐えようとしていることを、フォックスも当然見抜いている。
だからこそ、拡散した煙で襲うのではなく、自らの近くまで誘い込んだのだ。
フォックスの手に現れた、濃密な煙の剣。
単に濃いだけでなく、追加の魔法式によって効果が大きく上昇している。
そのためフワフワと漂わせて操ることは困難になるので、扱いは易いようにこうしてまとめているのだ。
(;'A`) 「でえええ!!」
ドクオがダメもとで切りかかる。
しかしフォックスの動きはそれよりも早く、魔法の剣はドクオの胸を横に切り裂いていた。
痛みはない。ただ、ハーブ類のもたらす清涼感に似た冷たさがあった。
頭が一瞬、強く揺さぶられる。
眩暈だ。強烈な、目の前が一時見えなくなるほどの。
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214 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/10/27(日) 22:39:08 ID:/XGun1gI0
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眩暈の収まったドクオの目に留まったのは、荒れ果てた森の中の風景では無かった。
フォックスも、逆さ男も、分かれて戦っていたツンたちの姿も無い。
背の低い草が茂るなだらかな丘と、収穫され幹だけになった桑の畑が広がっている。
最近も立ち寄った、ドクオの故郷、クシンダの風景だ。ただ、少し古い。
フォックスの術に嵌った。そう判断した思考すら、すぐに意識の中から消え去った。
ドクオの立つ丘の頂上へ、誰かが歩いてくる。
女性だ。ロングのスカートに濃紺のカーディガン。手には食料品の入ったバスケットを持っている。
風が草を、スカートを靡かせた。ドクオは彼女のことを、よく知っている。
(;'A`) 「先生、ダメじゃないですか、町へ下りたりしちゃ」
川 ゚ -゚) 「大丈夫だよ、今日は体調がいいんだ」
(;'A`) 「そんなこと言ったって、もし何かあったら」
川 ゚ -゚) 「ふふ、ドクオは心配性だな」
女性の、先生の手がドクオの頭を撫でた。
まだ十代の前半で、その上発育の悪いドクオの頭は、女性の先生にも見下ろされる位置にある。
それが一人の男としてはもどかしいし、同時に優しく頭を撫でられることにこの上ない幸福を感じてしまう。
川 ゚ -゚) 「今日は、ドクオの好きなチキンのマリネだ」
(*'A`) 「本当ですか?やった!!」
痩せた先生の体に寄り添い支え、ドクオは暮らす家へと帰る。
これから口にするであろう、先生の美味しいマリネの味に、期待を膨らませながら。
なぜだか失ってしまったような気がしていた幸せを、じんわりと噛みしめながら。
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215 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/10/27(日) 22:39:51 ID:/XGun1gI0
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爪'ー`)y‐~~ 「ふぅー。魔法使い相手にも効いてよかった」
〈;;(。个。)〉 「落したのか」
爪'ー`)y‐~~ 「ああ、念入れて強力にしたから、もう戻ってこられないかもしれないけど」
〈;;(。个。)〉 「……」
爪'ー`)y‐~~ 「ま、心地いい夢を見ながら死ねるなら、幸せでしょう」
〈;;(。个。)〉 「ヨコホリの援護へ行くぞ留めはあとでいい」
爪;'ー`)y‐~~ 「ちゃー、俺で役に立てるかねぇ……」
地面に膝を突き、ぽろぽろと涙をこぼすドクオ。
その意識は既になく、逆さ男が触れても何の反応も見せなかった。
魔法使いの方であれば耐えられる可能性があると考えたようだが、無意味だったなと、逆さ男は息を吐く。
言葉の通り、逆さ男とフォックスは激しい戦闘を続けるヨコホリたちの方へ。
逆さ男が前に出て、フォックスが後方で援護の陣形。
( ^ω^) 「―――無刀の型」
爪;'ー`)y‐、~ 「?!」
( ^ω^)「“囚人殺し”」
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216 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/10/27(日) 22:40:31 ID:/XGun1gI0
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油断しきっていたフォックスの背中。
肋骨の隙間に、ブーンの両拳から突き出した中指が食い込んでいる。
声にならぬ嗚咽を漏らしながら、フォックスは地面に倒れた。
四つん這いの姿勢で何とか息をしようとしているが、無駄だ。
突き抜けた指の刺突は、肺に著しい損傷を与え、しばらくの呼吸を奪う。
漂っていた煙が中空に消えたのに僅かに遅れ、フォックスも泡を吹いて意識を失った。
〈;;(。个。)〉 「貴様、フォックスの術に……」
( ^ω^) 「かかったのは、ドッグの方。僕は問題無いお」
ドクオの策は、これだった。
精神、つまりは脳に干渉する術ならば、その後に入れ替われば、もう片方には影響がない。
ブーンとドクオは合成され、神感応系の魔法によってリンクはしているが、存在としては個別のままなのである。
入れ替わった後でもそれぞれに自我を保っていられるのがその証拠だ。
故に、この特性を活かし、ドクオを囮にして無力化されたと思い込ませ、隙を作り。
ブーンがどちらでもいいから、討つ。
その作戦は見事に決まった。
問題があるとすれば、深層に引っ込んだドクオの意識が未だフォックスの術に囚われたままだということだが。
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217 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/10/27(日) 22:41:49 ID:/XGun1gI0
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( ^ω^) (ドッグ。ドッグ…………ダメか)
フォックスの首根っこを掴み、巻き添えを喰らわないように投げ飛ばす。
逆さ男は再びブーンを攻撃の対象として構えていた。
奥に見えるツンとィシの戦闘はほぼ五分か。
ィシは強いが、魔女の呪具により著しく知性を欠損している。
無意識レベルまで体に刷り込まれた技は使うことが出来たとしても、連携や罠への対処はどうしても直感や本能便りになっていた。
それでも十分恐ろしい性能を持っているが、ヨコホリの性能もまた人外の域にある。
( ^ω^) (……追い詰められて完全に自我を失う可能性もある……早めに援護したいけれど)
テンポよくステップを踏む逆さ男。
ここまでの地に足をつけた安定感のあるスタイルから一転、軽やかに小刻みな跳躍を繰り返す。
( ^ω^) (斬る気で行かなきゃ、推し負ける)
腕輪の魔法の効果はまだ続いている。
効果が切れてしまう前にせめて逆さ男を倒さなければ。
もう一回残ってはいるが何度も使いたい代物では無い。
〈;;(。个。)〉
睨みあうこと十数秒。
逆さ男が助走をつけるような無防備さでブーンに駆け寄る。
この力みのなさに、逆に強い警戒を覚えた。
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218 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/10/27(日) 22:43:37 ID:/XGun1gI0
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逆さ男の体がふわりと浮き上がり、右の回し蹴りを放つ。
頭を狙ったこれを、ブーンは伏せて躱した。
逆さ男は振り切った右に次いで、左の逆回し蹴り。
コンパクトな振りで顔面を狙いに来る。
ブーンはあえて回避せず、腕を折りたたむようにククリを振り上げた。
盾として構えられた刃と脚甲がぶつかり合う。
衝撃が体を突き抜け地面にまで届くが、なんとか耐えられない重さでは無い。
狭い間合いから弾かれたのは逆さ男。
馬力についてはやはりブーンに分がある。
さすがに微動だにしないというわけにもいかなかったが想定の範囲内だ。
ブーンが体勢を整えるのと、逆さ男の着地はほぼ同時。
挙動の速さは、僅かに逆さ男が先行した。
体を屈めた状態から一歩踏み込み、足に力を溜める。
体が浮くその瞬間を狙うため、ブーンはククリを脇に構えた。
しかし、目の前にいたはずの逆さ男の姿が、消える。
逆さ男は跳躍と全く同じ予備動作から、膝を折り地に伏せたのだ。
単純なフェイクではあるが、刹那の判断を繰り返す中では絶大な効果を発揮する。
下方への意識が薄れていたブーンの足を、鞭のような蹴りが刈り取りにかかった。
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219 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/10/27(日) 22:45:22 ID:/XGun1gI0
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間一髪。
跳躍による回避が間に合う。
蹴りを見たわけでは無い。
逆さ男の攻撃へ対応するためにとりあえず距離を取ろうとしただけだ。
伏せ、地面に着いた両腕を軋ませ、逆さ男は体を持ち上げる。
慣性に腕力を追加し、逆さまの状態から跳躍。
体の上下を捻って戻しながらの、乱気流の如き連続の回転蹴りでブーンを襲う。
予想外の位置からの追撃にブーンはさらに後退。
重さと速さを兼ね備えた逆さ男の蹴りは、たとえ身体強化された今であっても迂闊に手を出せない。
着地の瞬間を狙い、ブーンは前へ。
空中で既に体勢を整えていた逆さ男は、着地と同時に先手を打つ。
折り曲げ引き上げた足を延ばし振り上げるだけの、素早い足刀。
ただし、ブーンはこれをいなす十分な体勢を整えていた。
( ^ω^) 「“陽炎送り”」
前へ出る姿勢から一転、半歩後退しながら、左の手刀を合わせての受け流し。
自身の力を付与し、上へ力を流すことで逆さ男のバランスを大きく崩す。
軸足の浮き上がったところを軽く足で払うと、逆さ男の上下は簡単に入れ替わった。
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220 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/10/27(日) 22:47:23 ID:/XGun1gI0
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地面に背中から落ちる。
咄嗟に頭を強打させることは防いだが、それでもダメージはあった。
だからと言って落下の衝撃に呻く暇はない。
ブーンは、四股を踏むように大きく足を振り上げた。
逆さ男はすぐさま横へ転がる。
地面に叩き付けられたブーンの足を何とかやり過ごした。
そのまま数度転がり、勢いづけて立ち上がる。
半端な姿勢のところへブーンが切りかかるが、背後へ後転し刃を躱す。
〈;;(。个。)〉 (……)
( ^ω^) 「!」
闘志を高め、踏み込もうとしたブーンの動きが止まる。
互いの闘気とは異なる感覚が二人を襲い、ビリビリと肌が痺れた。
瞬間的な判断で、ブーンと逆さ男は距離を取る。
二人のいた、丁度中間の付近に、巨大な木片が落下し突き刺さった。
ィシの持っていたハルベルトだ。
腕ごともぎ取られ、ここまで吹き飛んできたのだろう。
( ^ω^) 「……」
〈;;(。个。)〉 「どうやら、いつまでも小競り合いをしている場合では無いようだ」
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221 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/10/27(日) 22:48:48 ID:/XGun1gI0
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ィシたちへ走る二人の視線。
自分たちの戦闘に集中するあまり、ほとんど気にかけることが出来ていなかった。
腕を吹き飛ばされたィシに、ヨコホリが迫っている。
巨大な木槌と化した左腕での迎撃は空を切った。
頭を下げ、腰元に右腕を構えていたヨコホリ。
体を起こすと同時に、開いた掌でィシの体を撫で上げた。
無論、ただ触れただけでは無い。
指先に生み出された鎌鼬が、ィシの体を駆ける。
大きく、深い。
さすがの巨体も、風の猛襲に揺らいだ。
(//‰ ゚) 「……」
振り上げた腕を、捻り腕甲を開く。
瞬く間に内部のタリズマンを差し替え、閉じた。
手早く、流れるよう。手の平は既に、バランスを立て直したィシへと向いていた。
ξ;゚听)ξ 「ィシさん!!」
連射された五つの風の榴弾。
二つはィシが左腕で防ぐ。
頑丈な腕は、表面を砕かれ罅を走らせたが、破壊しつくされることは無い。
しかし。後続の三つはヨコホリの操作によって防御をすり抜け、体へと直撃する。
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222 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/10/27(日) 22:50:31 ID:/XGun1gI0
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ただ当たっただけならば、問題は無かった。
通常よりも強固な体は、このレベルの砲撃であれば十分に耐えられるのだ。
しかしながら、風の砲弾が捉えたのは鎌鼬によって切り裂かれた体のその深部。
そうなれば、話は変わる。
くぐもった爆音。
木片が爆ぜて飛び、ィシが悲鳴を上げた。
狭い裂傷の中で行き場の限定された爆風は、体表よりも脆い内部を荒々しく蹂躙する。
大きく抉れた肩口が、腕の重みでさらに引き裂かれる。
再生を始めようとしたそこへ、ヨコホリは再び砲撃をおこなった。
既に破壊を受け強度を下げた体は、木端へと変貌する。
ィシはすさまじい雄叫びをあげ、鋭い木片を周囲へとまき散らし反撃する。
威力はそれなりだが、急所でも無ければ当たったところで死にはしないだろう。
一応は味方であるブーンの目から見ても、ただの悪あがきであった。
木片は、ただ悪戯に周囲の戦闘不能の者たちばかりを傷つける。
ブーンも含め、動ける者たちは皆弾くなり回避するなりして無傷だった。
(//‰ ゚) 「面倒な力だったが、これならまだ、人間のままの方がヤバかったゼ、糞ババア」
大きなゴミを片付ける。
ヨコホリの顔に見えたのは、そんな気だるさだった。
既に勝負は着いたのだ。あと数発魔法を叩き込めば、胴を遺しただけの体は容易く破壊されるだろう。
-
223 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/10/27(日) 22:52:25 ID:/XGun1gI0
-
しかし、絡まり合ったィシと魔女の怨念は。
それほど容易い存在ではなかった。
(//‰ ゚) 「?!」
何者かがヨコホリの腕に飛び掛かる。
直後放たれた魔法弾は目標をそれ、地面の土を頭上高く舞い上げた。
( ^ω^) (危惧していたよりも、不味い事態かも……)
ヨコホリの腕にしがみついていたのは、禁酒党の兵士だ。
ィシに屠られ、死んだはずの、いわば死体である。
それが動き、あまつさえ味方であるはずのヨコホリの攻撃を妨害した。
敵味方問わず、戦慄が走る。
死体であるはずの彼がなぜ動いたのか、一目でわかったからだ。
彼の頭には、木片が突き刺さっていた。
そこから根が伸び、申し訳程度の葉をつけた枝も生え始めている。
先ほど木片をばら撒いたのは、生きている者を殺すためでは無かった。
既に死んだものを、蘇らせるためだったのだ。
〈;;(。个。)〉 「……ッ」
放置されていた死人たちが、次々と立ち上がる。
逆さ男たちの味方ばかりでは無い。
禁恨党の兵士たちも分け隔てなく、体に木片を宿している。
逃れたのは、ブーンが投げ捨てたフォックスと、ツンが木の陰に隠した瀕死の青年のみ。
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224 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/10/27(日) 22:53:53 ID:/XGun1gI0
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(//‰ ゚) 「チィッ!!」
ヨコホリが腕を真上へ振り上げた。
しがみついていた一体は、払われ空中に投げ出される。
そうして何も出来ぬまま、放たれた風の榴弾二発により胴を破砕され、頭のみで地面へと帰る。
小刻みに痙攣していたが、再び回復し動き出すことは無く。
そのまま動きを停止した。
(//‰ ゚) 「どこまでも、どこまでも胸糞の悪ィ呪具だ」
一斉に飛び掛かる、元禁酒党の兵士たち。
ただ単に雇い主が同じだけのヨコホリに、容赦はない。
魔法で、拳で、次々と粉砕する。
彼らは体を一部破壊した程度では死ななかった。
一体目同様体を完全に破壊しつくすか、頭を吹き飛ばしてやっと活動を止める。
不死身ではないが、厄介な性質だ。
恐らくは、彼らの動きはィシが統率している。
ヨコホリの援護に向かおうとしていた逆さ男にも、二人が割り振られた。
口をだらしなく開き、体に根を張り巡らされた兵士。
容赦は情けにならぬとばかり、一瞬で鋼鉄の足がその頭を蹴り飛ばす、
残りの一体は急激な伏せからの足払いで転倒させ。
跳躍から頭部を踏み砕く。どちらもしばし痙攣したのち、再び死体へと戻った。
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225 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/10/27(日) 22:56:10 ID:/XGun1gI0
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イ(゚、ナリ从 「逆さ!!だんちょ!」
〈;;(。个。)〉 「ッ、向こうで伸びている」
イ(゚、ナリ从 「こういうときこそ出番だろやくたたづ!!」
両手で持った手斧で、目の前に迫った一体の頭部を斬り砕くイナリ。
木化した体表と、肉のままの脳がまぜこぜに飛び散る。
( ^ω^) 「……」
どうする?
ィシの攻撃対象は、未だ根絶法側の人間に留まっている。
傀儡化した死体達も、戦闘に用いているのは敵側の物ばかり。
禁恨党のメンツたちはィシの周囲に集まり、少なくとも捨て駒としては使われていない。
意志はどこまで残っているのか。
仮に残っていたとして、ここまで人外化してしまっているこの状況、何とかできるものなのか。
魔法専門のドクオの意見を聞きたいところではあったが、未だ戻っては来ない。
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226 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/10/27(日) 22:59:16 ID:/XGun1gI0
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ブーンが迷いを捨てきれない中、ィシが新たに生やした細い腕で、兵士の一人を掴み上げた。
少女がお気に入りの人形を抱くような優しさとぞんざいな扱いで胸に押し付ける。
魔法使い風のその兵士は力なく四肢を垂らし、そのまま、
( ;^ω^)
ξ;゚听)ξ 「なっ……」
つるりと、ィシの体の中に飲み込まれた。
胸の中心に巨大な洞が開き、それがまるで口のように喰らったのだ。
その行動に思考が停止する間にも、兵士たちは次々とィシに取り込まれて行った。
ただ単に吸収して、体を肥大化させているわけでは無い。
胃が動くのと同じく、ィシの体がポンプのように収縮する。
同時に、一番最初に取り込んだ兵士の顔が、ィシの胸の中心に表れた。
一人に留まらず、取り込まれた物が次々と、木が芽吹くのと同じくィシの体に頭を生やす。
( ;^ω^) (解説のドクオさーん!ドクオさーん!)
相変わらずドクオからの応答はない。
ドクオだからといって状況を理解できるとは限らないが、少なくともブーンよりは適応できるはずだ。
現時点で、ブーンが考えられることとと言えば、頭をどの順番で叩き潰すかくらいのことである。
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227 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/10/27(日) 23:00:56 ID:/XGun1gI0
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(//‰ ゚) 「なァ逆さ、面倒になった。逃げていいか?」
〈;;(。个。)〉 「死ぬまでここにいろ」
(//‰ ゚) 「ゲェー」
〈;;(。个。)〉 「……この有様を見ても、まだそちらに与するのかオルトロス!!」
( ;^ω^) 「……」
〈;;(。个。)〉 「今はヨコホリへの敵意があるからまだ無事だが、此奴が街に下ったらどうするつもりだ」
(//‰ ゚) 「この傀儡の能力を街中で、それも脳筋バカどもが山ほどいる場所で使われたら手が付けられねえな」
逆さ男の言葉は、彼らが襲撃者側であるという前提を除けば、正当であった。
殺しても死なず、むしろ再生の度に周りを巻き込む。
今は僅かに残った自我か怨念かでヨコホリへの攻撃が中心になっているが、いつまで続くかわからない。
もしヨコホリが死ぬか、上手く逃げおおせたとしたら。
この暴威の矛先は、一体どこに向かうのか。
ξ;゚听)ξ 「ブーン?」
ツンの肩口には、イナリの投具が突き刺さっていた。
恐らく彼女の乱入によってィシを援護しきれなくなったのだろう。
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228 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/10/27(日) 23:03:07 ID:/XGun1gI0
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( ^ω^) 「……ツン、この人は、多分もうだめだ」
ξ;゚听)ξ 「……」
( ^ω^) 「僕は魔女の力が人を傷つけるさまを、これ以上見たくない」
ξ; )ξ 「……ィシさんはまだ、魔女の力に飲まれてなんかいない」
( ^ω^) 「……」
ィシの兵士吸収は、すでに終わっている。
異様な、異常な光景であった。
ヨコホリに破壊される前よりも一回り大きくなった体に、ィシ本来の物を含めて頭が八つ。
一つ放った咆哮に合わせ、全ての頭の目が開いた。
魔力由来の朱い光が穏やかに輝く瞳。
少なくとも、もう人では無い。
ξ )ξ 「……そもそも!」
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229 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/10/27(日) 23:04:07 ID:/XGun1gI0
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ξ# )ξ 「そもそもあんたたちのせいじゃない!!闇雲に人を殺して!!追い込んで!!」
〈;;(。个。)〉 「……」
ξ#゚听)ξ 「あんたたちがいなければ!ィシさんがこんなことになることも無かったのに!!」
ξ#゚听)ξ 「それを今更!人を気遣うような言葉を吐いてッ!!!」
ツンの叫びに、ィシの咆哮が被さった。
失ったハルベルトの代わりに、腕から木製の剣を生やす。
切れ味はよくなさそうだが、鈍器の役目も果たすと考えれば、十分武器になりうるだろう。
完全にプッツンしてしまったツンは、ナイフを構えィシの前に立ちはだかる。
本気であることは目を見ればわかった。
ξ#゚听)ξ 「ブーン。あんたが、魔女の力を嫌っているのも、倒すために旅しているのも、知ってる」
ξ#゚听)ξ 「だけど、ごめん。ィシさんが私の背中を攻撃するその瞬間まで、私はィシさんの味方をする」
( ^ω^) 「……そうかお」
ツンの体を風の鎧が包む。
ニョロも彼女の怒りに同調するように口を大きく開いた。
ξ#゚听)ξ 「……かかってきなさいよ糞野郎ども!!全員、ぶっ飛ばしてやるわ!!!」