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370 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2012/10/04(木) 22:29:46 ID:CiNGJvak0
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( ゚∀゚) 「失礼します」
ジョルジュは支部長室へ入り、敬礼を一つ。
部屋の主、デミタス=モリオカは返事はせず、顎で椅子に座るように促した。
それを目で断り、椅子の傍まで歩き、立ち止まる。
_
( ゚∀゚) 「今密偵から連絡があって、オルトロスとサスガ兄弟の戦闘が始まったようです」
(´・_ゝ・`) 「そうか」
回転椅子に凭れ、デミタスは机に置かれていたマグカップを手に取る。
燃料を補給するような無機質さで、コーヒーを飲んだ。
それなりにいい豆を使っているのだが、香りを嗜んだりという様子は一切無い。
(´・_ゝ・`) 「お前は、どっちが勝つと思う?」
_
( ゚∀゚) 「自分には計りかねますが」
(´・_ゝ・`) 「何も具体的な論拠を示せってわけじゃないんだ。勘でいい。答えろ」
_
( ゚∀゚) 「……双方の過去の実績を信じるならば、僅差でオルトロスかと」
(´・_ゝ・`) 「だろうな」
ジョルジュは眉をひそめる。
オルトロスの排除を決めたのはデミタスよりも上の人間だが、人選はデミタスが行った。
勝てない可能性が高いと分って何故彼らに依頼したのだろうか。
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371 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2012/10/04(木) 22:30:28 ID:CiNGJvak0
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(´・_ゝ・`) 「そう訝しがる顔をするな」
再びコーヒーを一口。
この男嗜好の少ない男ではあるが、コーヒーだけは異常に好む。
客人を招くときこそ臭いを気にして紅茶に変えるもののそれ以外はほとんどコーヒーだ。
(´・_ゝ・`) 「お前も、何となく気付いているんだろ」
_
( ゚∀゚) 「……」
(´・_ゝ・`) 「あのオルトロスは、俺たちが噂に聞いたオルトロスとは違う」
_
( ゚∀゚) 「偽者、であると?」
確かにジョルジュも感じていた。
噂に聞くオルトロスは魔犬と称するのも生ぬるい、死神のような存在だ。
魔女のキメラを倒した実績を否定するわけでは無いが、事前の話よりも弱く感じたのが正直な所。
(´・_ゝ・`) 「本物が、何らかの理由で弱体化していると考えるのが妥当だと俺は思っている」
_
( ゚∀゚) 「……魔女」
(´・_ゝ・`) 「ああ、そうだ」
オルトロスが魔女を追っているという情報は既に入っていた。
魔女との間にある何らかの因縁により弱体化しているのだとすれば、オルトロスの覇気の無さも頷ける
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372 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2012/10/04(木) 22:31:16 ID:CiNGJvak0
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(´・_ゝ・`) 「「魔法使いと入れ替わった」ってあたりも関係あると思うけど、ま、そりゃおいといて」
(´・_ゝ・`) 「もし、今オルトロスが噂ほどの存在でないのなら、サスガ兄弟なら十分に殺せるだろう」
_
( ゚∀゚) 「……」
だったら、オルトロスそのものをほっといてもいいのではないか。
そもそも彼と大五郎の間に雇用関係が無いことは既に明らかになっている。
ジョルジュはこのオルトロス抹殺の指令が来た時点で首をかしげていた。
確かにオルトロス自体は一個人に留まらない脅威ではあるが、その矛先が禁酒委に向いているわけではない。
むしろ、下手なちょっかいを出すべきでは無いのではないか。
その矛先がこちらに向かないよう、上手く誘導することこそが、禁酒委のやり方ではないのか、と。
だから、脅威である人間が脅威で無いから倒せると判断し、刺客を当てる、というのは疑問が残る。
(´・_ゝ・`) 「これは、アラマキ委員長の言葉だが」
デミタスが持ち上げていたマグカップを唇に当てる。
焙煎豆特有の深い香りがジョルジュの鼻にも届いた。
(´・_ゝ・`) 「オルトロスは、禁酒委員会に必ず仇を成すんだそうだ」
_
( ゚∀゚) 「例の、委員長の勘ですか」
(´・_ゝ・`) 「あの爺さんの勘は侮れないから厄介なんだよなあ」
そうは言っても、勘で一人の人間を殺すというのもぶっ飛んだ話である。
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373 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2012/10/04(木) 22:32:00 ID:CiNGJvak0
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(´・_ゝ・`) 「ま、なんだ。俺もあの犬が今の禁酒委にとってあんまり好ましい奴では無いと思うよ」
_
( ゚∀゚) 「親大五郎派なのは確かですからね」
もう捨ててしまったが、オルトロスは大五郎の焼酎が入ったスキットルを所持していた。
それになにやら大五郎の傭兵と個人的な親交もあるらしい。
確かにいざというとき障害になる可能性もある。
だからこそ、ジョルジュもオルトロス抹殺を不満ながらも容認した。
(´・_ゝ・`) 「ま、サスガ兄弟も楽勝では無いなりにも、意地を見せてくれることを期待しよう」
_
( ゚∀゚) 「もし、サスガ兄弟が勝ったならば例の条件を飲むのですか?」
(´・_ゝ・`) 「ああ、魔女の居場所を教えるってやつ?まあ別にいいだろ」
_
( ゚∀゚) 「魔女本人がなんと言うか」
(´・_ゝ・`) 「あの変態なら、自分を殺そうとしている奴がいるなんて知ったら喜びそうだけどな」
否定は出来ない。
魔女との交渉は主にデミタスが行ってきたが、ジョルジュにも何度かその機会があった。
姿も見たことの無い化け物は、普通に狂っている。
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374 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2012/10/04(木) 22:33:16 ID:CiNGJvak0
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(´・_ゝ・`) 「今後の報告、俺に通すのは勝敗だけでいい。どうせ何か手を出せるわけでもねえし」
その言葉を最後に、ジョルジュは支部長室を出た。
廊下に控えていた部下に引き続き偵察の指示を出し、自分は部屋に戻る。
コーヒーの臭いは嫌いではないが苦手だ。
胃がむかむかとしてしまう。
デミタスと話すだけで多少なりとも胃が荒れるので、コーヒーだけのせいではないのだが。
引き出しを開け、胃薬を口に放り込む。
水無しで飲み下し息をついた。
「そんなに薬飲むと身体に悪いよ?優しさ足りてる?」
_
( ゚∀゚) 「」
薬のビンを床に落とした。
あらあら、という声がして、ビンが浮き上がり、ジョルジュの手に戻る。
言葉にならない呪詛を奥歯で噛み殺しながら、ジョルジュは頭を抑えた。
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( ゚∀゚) 「いつからいた」
「けっこー前」
_
( ゚∀゚) 「聞いてたのか」
「ばっちし!」
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375 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2012/10/04(木) 22:34:04 ID:CiNGJvak0
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( ゚∀゚) 「オルトロスが嗅ぎまわってるからしばらく来るなって言っただろうが……」
「それはそっちの都合でしょ。私は別にブーンに見つかっても困んないもーん。もんもーん」
まるで幼子のような言い回し。声も、甲高いとは言わずとも少女のような幼さがある。
どこか会うたびに幼さを増しているような印象さえあった。
資料によると半世紀は生きているはずなのだが、この女には時間の流れも関係ないのだろうか。
「それにしても、アニジャたちも私のこと探してたんだー。いがーい」
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( ゚∀゚) 「どうせアンタがなんかやったんだろ」
「んー?おぼえてないや☆」
この女の被害者は非常に多い。
気まぐれに消された街の住人はもちろん、暇つぶしに作ったキメラを放逐したり、気に入った物を強奪したり。
大半が怨みながらもその理不尽な魔法の力に報復を諦めているため、実際に追い回すものは少ないが。
「まあいいや☆わたしもちょっと見学してくるね☆」
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( ゚∀゚) 「おい、余計なことはするなよ」
「やだなージョルたん、わたしが余計なことしたことなんてあった?」
余計なことしかしないから困ってるんだろうが。
口に出さなかった悪態を読んだのか、魔女はふふふと笑って部屋を出て行った。
* * *
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376 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2012/10/04(木) 22:35:13 ID:CiNGJvak0
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ξ゚听)ξ「“痛いの〜〜〜痛いの〜〜〜、飛んでけ〜〜〜〜”!!」
ツンの魔法発動にあわせ、ブーンの傷口という傷口を淡い水色のベールが包んでいく。
それがピッタリと張り付くと、傷口から滾々と溢れていた出血がぴたりと止まった。
( ^ω^) 「おっおー、ちょっと痛くなくなったお」
ξ゚听)ξ「応急処置の魔法だから、傷を治したわけじゃないわ。そこは気をつけてね」
ハインリッヒに教わった、止血と痛覚緩和の魔法である。
ブーンが負っている傷はえげつないものばかりだが、致命傷というものは無いため、
血を止めて痛みを抑えれば多少は戦えるはずだ。
なんか骨っぽいのが覘いてる部分もあるけれど、そこは見なかったことにして。
( ´_ゝ`) 「“水竜を駆る”」
湖から立ち上った水が蛇の体をなし、そこにアニジャが飛び乗る。
そのままブーンとツン目掛け突進を仕掛けた。
二人はその場から飛び退き、それを回避。
アニジャは更なる追撃を仕掛けることも無く、水に乗ってオトジャの元にたどり着いた。
合流をあっさり許してしまったことに、ツンは舌を打つ。
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377 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/10/04(木) 22:36:01 ID:CiNGJvak0
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オトジャは身体に絡み付いていた網を完全に取り去り、首をくりくりと回す。
どこかに痛みを感じているのか若干動きが鈍いが、十分に動けそうだ。
その傍に、魔法を解除したアニジャが下りる。
アニジャの方は着地の際に顔を歪めたり、右腕が力なく垂れているのを見るに、オトジャよりは重症だろう。
( ´_ゝ`)「オトジャ、身体はどうだ」
(´<_` )「左の鎖骨が折れてるな。あとは全身に打撲。痛いが、動けないほどでもない。そっちは」
( ´_ゝ`)「右腕は使い物にならない。あとは肋骨が内臓に食い込んで、キツイ」
(´<_` )「なら、俺が前だ」
( ´_ゝ`)「すまん」
(´<_` )「問題ない」
オトジャが水の剣を右手に構えて前へ。
アニジャは早速魔法の展開を始めている。
ブーンは刀を持つ手に唾を吐いて、柄を握り直す。
その両の目は意識がハッキリしており、彼がまだ戦えることを表していた。
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378 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/10/04(木) 22:37:13 ID:CiNGJvak0
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( ^ω^)「これで十分だお。ツンは早く逃げるお」
ξ゚听)ξ「は?」
( ^ω^)「巻き込んじゃってすまないお。もっと危険な目に合う前に早く……」
ξ#゚听)ξ「どっせぇい!!」
ブーンの話をガン無視し、ツンは飛来した水の魔法弾を蹴り砕いた。
足がビリビリと痺れるが、仕込んである鉛のお陰もあって骨が折れるほどではない。
ξ゚听)ξ「あのね、私は自分が殴られたからお返しにあいつらをギッタンギッタンにしたいだけ」
ξ゚听)ξ「別にあんた助けたいわけじゃないんだから大人しくぶちのめすの手伝いなさいよ」
オトジャが前に出ていたツンに切りかかる。
ブーンは左手でツンの首根っこを掴んで引き寄せ小太刀で水剣の振り下ろしを受けた。
そのまま剣を弾き、互いに後退。
入れ替わりにその頭上を越えて水の鞭がブーンを襲う。
ツンはそれを回し蹴りで払い落とした。
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379 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/10/04(木) 22:38:10 ID:CiNGJvak0
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ブーンが言いたいことは分っていた。
単純なツンの実力ではこの場にいても邪魔にしかならないだろう。
出頭で兄弟を吹っ飛ばせたのは奇襲と魔法の重ねがけが活きていたからに過ぎないのは自分でも分る。
だが、舐めてもらっては困る。
ツンちゃん、ただの足枷で終わるつもりは毛頭無い。
足枷だって、思いっきり振り回せば武器になるのだ(多分)。
ブーツの魔法はあと一回しかないし、強化魔法は解けてしまったけれど。
身体を縛っていた縄を切るのに魔力使いすぎて魔力もかなり少ないけど。
そこは愛と勇気と希望でカバー。
ξ゚听)ξ「文句ある?」
( ^ω^)「あるけど、言ってる場合じゃないおね」
ブーンが飛び出しオトジャへ切り下ろし。
オトジャは後退しながら剣でそれを右へ払い、返す刃で胴を狙う。
ブーンは左腰の鞘をベルトから外し、その薙ぎを受けた。
鞘は鉄張りの木製で、体重の乗っていなかった刃は途中で止まる。
この好機をにブーンは弾かれた刀を力任せに斬り戻した。
しかし、この一撃も金属音と共に障壁に阻まれる。
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380 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/10/04(木) 22:38:58 ID:CiNGJvak0
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一瞬の膠着を打破するため放たれたオトジャの前蹴りを、ブーンは膝で受ける。
者の体が弾かれ距離が出来たところ、ツンがオトジャに突っ込んだ。
剣ギリギリの間合いで手を突き出し、衝撃魔法を発動。
ξ#゚听)ξ「“インパクト”!!」
振動の塊がツンの掌から放射上に放たれ、オトジャを襲う。
しかし、間に割って入るように飛び込んだ水の弾がそれを相殺した。
激しい水しぶきがツンとオトジャを濡らす。
腕と剣で身体を庇ったオトジャは、水しぶきが止んだ直後、ツンに対し剣を真一文字に振るった。
ツンはそれを後転して回避。
すぐさま入れ替わりにブーンがオトジャの開いた胴へ突きを放つ。
オトジャはこれを無視し、カウンター気味にブーンの頭へ剣を振った。
小太刀は障壁に、水の剣は鞘に阻まれる。
ブーンはすぐさま障壁を外しての、連突き。
オトジャは鞘を払いながら後退しこれをかわす。
ξ゚听)ξ「“その身に宿せ風の鼓動―――”」
( ´_ゝ`)「“八つ足を断つ”」
後方に回り強化魔法を展開していたツンへ、アニジャが八つの水刃を放つ。
ブーンは間に割って入りながら内の六本を斬り砕くが、残りの二本はやや弧を描く軌道のため届かない。
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381 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/10/04(木) 22:39:45 ID:CiNGJvak0
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ξ;゚听)ξ「!」
魔法式を瓦解させないよう意識を集中させ、ツンは飛び上がり二本の刃の間で身を捻る。
それぞれに僅かに肌を裂いたが、直撃を避け、着地した。
ξ#゚听)ξ「“ビートアップ”!」
身体強化魔法を自分に対し発動。
風が身体に染み込んで行き、全身の血肉が剛さを増す。
本来であればブーンに掛けたいところではあったが、全身に傷のある今は負担が大きいので断念した。
ツンを援護し、隙の出来ていたブーンは、オトジャの連撃にやや推され気味だった。
オトジャは的確に急所を狙うことで片手で剣を振るう力の足りなさを補っている。
ブーンは一度崩された体勢を上手く立て直させてもらえず、上手く攻勢に出られない。
ツンは強化され膂力の増した身体で地面を蹴り、飛び上がった。
ブーンの頭上を越え、オトジャへ。
力の篭った落下蹴りを放つ。
(´<_` )「!」
オトジャは反撃するのは危険と判断し右へ飛んでそれをかわす。
ブーンはその隙を見逃さず追尾、先ほどから一転、有利な状況を得る。
( ´_ゝ`)「“怪魚を断つ”」
が、上空から振り下ろされた水のギロチンを察知し、すぐさまその場から身を避けた。
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382 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/10/04(木) 22:40:41 ID:CiNGJvak0
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巨大な首刈り刃が地面に深い筋を作る。
ブーンは直ぐに体勢を整え、オトジャへ。
ξ゚听)ξ「“叩くは撃鉄、走るは螺旋”」
ツンは着地したその場で魔法式の展開をはじめていた。
できる限り速くて威力の高いものを選ぶ。
オトジャの目がツンへ向く。しかし、ブーンが間髪おかず切り込んだため、妨害には回れない。
アニジャが魔法式を展開し、一瞬で発動へ繋ぐ。
僅かだが、ツンが遅い。
ξ゚听)ξ「“脳天をぶち抜け―――”」
( ´_ゝ`)「“貝を砕く”」
数個の水弾がツンへ。
展開式を維持したまま回避しようと横へステップを踏んだが、一発がわき腹を強打する。
口から唾液が吹き出すと共に、魔法式が霧散。注いでいた魔力も共に消えた。
歯を食いしばりアニジャを睨みつけ、そちらへと標的を代える。
その距離全力で詰めれば十歩ほど。一度魔法をかわせば十分たどり着ける。
砂を蹴り、直進。
オトジャがブーンの剣をいなし、牽制を放ってからツンを追う。
ブーンも牽制を軽くかわしそれに続いた。
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383 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/10/04(木) 22:41:55 ID:CiNGJvak0
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( ´_ゝ`)「“番を別つ”」
アニジャへの進路を断つように、水の壁が現われた。
一見簡単に破れそうだったが、高い密度に加え振動を帯びているため、触れるのすら危険だ。
足が止まった一瞬に、オトジャが背後から切りかかった。
ツンは振り返りの勢いのまま横っ飛び。
獲物を逃した剣は壁に触れ、水同士とは思えない堅い音を響かせる。
隙の出来たオトジャの背中へ、ブーンが横なぎの刀を放った。
しかし、アニジャが追加した魔法式により壁の魔法が変化。
壁から生えた刃がブーンの斬撃を防ぎ、オトジャを守る。
( ´_ゝ`)「“海神(ワダツミ)を纏う”」
水の壁がさらに変化。幅の広い帯状になり、アニジャに巻きついた。
壁から開放されたブーンとオトジャは同時に剣を振るう
刃が鍔元でかち合い、オトジャがやや押され気味に。
ツンは標的を切り替えオトジャへ踏み込みの突き蹴り。
オトジャに回避する余裕は無い。
そこへアニジャの元から水の帯が割り込み、ツンの蹴りを弾く。
足がビリビリと痺れた。ブーツの底のゴムが削れて、散る。
帯はそのまま刃のようにツンの胴を凪ぐ。
ツンは大きく仰け反ってそれをかわした。
空気の痺れる甲高い音が目の前を過ぎ去り、ツンの背中が冷たい汗で濡れる。
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384 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/10/04(木) 22:42:43 ID:CiNGJvak0
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ツンは仰け反った姿勢から後ろに手を突き、跳ねるように後転。
帯は再びアニジャに巻き戻る。
オトジャの体がブーンに力任せに弾かれ、後ずさる。
ブーンはそのまま踏み込みで切りかかろうとするが、そこへ水の帯。
間一髪刀で受けたブーンだが、衝撃に逆らえず押し返された。
帯が伸びきっている隙を突いてツンはアニジャへ。
がら空きの身体に蹴りを叩き込もうと一瞬で間合いを詰めるが、帯が伸びきったまま横なぎに振るわれる。
あと一歩で届くというところで身体を弾き飛ばされた。
広い面で打たれたため、身体を真っ二つにされるということは無かったがガードで持ち上げた腕から血が出ていた。
見ると、シャツが裂け、触れた面が広く擦り切れている。
ξ゚听)ξ「“痛いの飛んでけ〜〜”」
突き下ろし追撃をかわし直ぐに応急処置。
本来全身に効果を及ぼす魔法を、出来る限り範囲を限定することで素早く展開する。
止血が済んだのを確認することも無く再びアニジャへ。
ブーンが体勢を立て直し、オトジャに切り込む。
上体を目一杯前のめりにしての斬り払いで胴を狙う。
オトジャはこれを見切って大きく下がった。
ブーンは振り切った刀をそのまま予備動作に繋げる。
遅れていた下半身を素早い足捌きで追いつかせ、伸びのある刺突。
高速の連撃にオトジャは身を引きながら、切っ先を下に向けた剣を合わせる。
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385 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/10/04(木) 22:43:44 ID:CiNGJvak0
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切っ先がいくらかオトジャの腹に食い込んだところで、小太刀はブーンから見て右手へ流された。
必然的に腹が切り裂かれるが、身体を引いたせいもあってさほど深くは無い。
流した勢いでオトジャは腕を大きく回転。
小太刀を払いながら、円を描くように剣を振り上げる。
頭を丸出しにしたブーンへ、やや窮屈な姿勢ながらも振り下ろした。
完全に力を乗せられているわけではないが、少なくとも鞘で受け止められるものではない。
ブーンは素早く左手の鞘を手放し、オトジャの手首を掴んだ。
低い姿勢で長身のオトジャと力比べは不利と判断し、指先の力で引っかくように横に逸らす。
同時に右足を軸に左足を右後方へ引き、振り返る要領でやや仰け反りがちに身体を回転。
攻撃をかわしつつオトジャの体勢を崩し、引き戻した刀でオトジャの足を撫でた。
幾度にも渡る打ち合いで刃毀れの増えていた刀だったが、難なく皮を分け肉を断つ。
ブーンはオトジャに背を向けた姿勢から即座にその場を飛び退いた。
アニジャの放った帯が地面を穿ったがブーンには掠りもしない。
舌打ちがアニジャの口から漏れる。
ツンの相手に手間取っていたためオトジャへの援護が遅れたのだ。
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386 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/10/04(木) 22:44:32 ID:CiNGJvak0
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ξ゚听)ξ「へっへーんだ!」
アニジャの足止めに目的を切り替えたツンは跳ね飛ばされても跳ね飛ばされても攻撃を止めなかった。
お陰で全身がボロボロだが、オトジャにも深手を負わせられたので結果オーライ。
少なくとも、これでオトジャの戦力は大きく低下したはずだ。
ブーンを信じてよかったってもんである。
(´<_` )「すまんアニジャ」
( ´_ゝ`)「すまんオトジャ」
オトジャは左手で傷口を掴み、止血しながらアニジャの元まで下がる。
ブーンはそれを追わず、見送った。
表情こそ変わっていないが息が非常に荒い。
全身の傷は応急処置魔法の効果も虚しく、再び血を流している。
あの様子では痛みも戻ってきているはずだ。
ξ゚听)ξ「ブーン大丈夫!?」
( ;^ω^)∩
汗と血にまみれた左手での返事。
大丈夫と答えたいようだ。
聞いといてなんだが、ツンには全然大丈夫じゃないように見える。
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387 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/10/04(木) 22:45:48 ID:CiNGJvak0
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これ以上ブーンに無理をさせるわけには行かない。
出血の量が尋常では無く、今動けているのがおかしいくらいなのだから。
ツンが頑張るしかない。
ブーンが兄弟と戦わざるを得ない理由を作ったのはツンなのだから。
アニジャの扱う水の帯はドクオの防御魔法と同じく、継続に多量の魔力を使うと予想できる。
上手く無駄遣いさせれば、直ぐにすっからかんに出来るはずだ。
兄弟が手負いの今、魔力を奪いきることはツンの思いつく限り最も堅実な勝利法だった
オトジャは水の剣を消し、アニジャの肩に手を掛けた。
バランスを崩して支えにした、という風ではない。
なにやら嫌な気配を感じ、ツンは弾けるように飛び出す。
ブーンも同じく動いた。
怪我を感じさせない体運びだが、全身から血が噴出している。
オトジャと自分を守るようにアニジャは帯を全開に伸ばして巨大な剣を振るうように、二人をなぎ払った。
ブーンは少しでもツンの接近を助けようと、帯を受け止める。
刀すら切断されそうな高速の振動が、激しい金斬り音を生む。
ツンはこの隙を決して逃すまいと一気に加速。
強化された脚力が速度を生み、ツンは瞬く間に間合いを詰めた。
オトジャがツンを迎撃すべく前に出る。
アニジャは帯でブーンを弾き飛ばした後、手元へと引き戻し、新たな魔法式の展開に入った。
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388 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/10/04(木) 22:46:55 ID:CiNGJvak0
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( ´_ゝ`)「“海神を刻む―――”」
ξ#゚听)ξ「んなろ!」
オトジャごと蹴り飛ばそうと全力のドロップキック。
バリスタから放たれた巨矢の如く、ツンの身体は風を切る。
オトジャは腕を右腕を盾にを迎え撃つ。
当身のように腰を入れ、ツンの両足と衝突した。
辛うじて痛みわけ。
ツンは自分の意思でオトジャの身体を足場に、後ろへ飛ぶ。
手を突いて着地したが、予想外の角度でぶち当たったため足首に鈍い痛み。
一方オトジャは衝撃を殺しきれず後ろへよろけた。
足の傷が響き踏ん張りが利かないところをアニジャが受け止める。
( ´_ゝ`)「“―――命を謳え”」
帯が輪となり兄弟を包んだ。
体勢を立て直し進撃していたブーンも嫌な気配を察知し、立ち止まり距離を計る。
ツンも同様。初めて見る魔法式にたじろぎ後退した。
額に新たな汗が滲む。
( ´_ゝ`)「“―――折れど波打つ無尽の剣”」
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389 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/10/04(木) 22:47:50 ID:CiNGJvak0
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水の帯が、音も無く分断された。
全部で七つとなった帯の断片は震えながら球となり、そこからさらに、細身の剣へと変形する。
限界まで圧縮された水の剣がアニジャたちの周囲をくるくると無機質に回った。
乱反射する光を微振動でさらに閉じ込めた藍色の刀身。
周囲の水分が全て吸い尽くし、空気がからからに乾燥している。
ξ;゚听)ξ(なんでまだこんな魔法を……?!)
明らかにおかしい。
先天的に魔力の保有量が多い人間というのは確かにいるが、それでも限度がある。
アニジャはこの剣を生み出した時点で卒倒してもおかしくないほど魔力を消費しているはずだ。
そこで、つい先ほどの、アニジャに手を掛けるオトジャの姿を思い出す。
ξ;゚听)ξ(……まさか、あれで魔力を委譲したって言うの?!んなバカな!!)
ツンが驚く暇も無く、剣の内二本が別々の軌道でツンを襲う。
一本は刺突の要領で直進。もう一本はツンの動きを窺うよう、くるくる回りながら弧を描く。
寸前でかわすような真似をすれば直ぐに串刺しにされる。
ツンはブーンとは逆へ走り出す。
直進した剣をかわし、遅れてきたもう一本を高く飛んで回避。
一本目が直ぐに切り返して空中にいるところを狙ってきたが、空中で身を捩って何とかかわした。
僅かに剣の触れていたブーツのつま先(鉛仕込)が切れて落ちる。
着地までの一瞬に唾を飲んだ。
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390 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/10/04(木) 22:48:48 ID:CiNGJvak0
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鉛をプリンのように切り裂いたところを見るに、ツンの障壁では時間稼ぎ程度にしかならないだろう。
天叢雲程ではないかもしれないが人を切るには十分すぎる切れ味だ。
( ;´_ゝ`)
これまで苦痛以外に表情の無かったアニジャの顔に苦悶が見える。
やはり相当な集中と魔力を必要としているらしい。
オトジャが再び魔力を分け与えているようだが、焼け石に水だろう。
ツンは剣を何とかかわしながらもアニジャたちへ近づく。
このまま魔力切れを待とうとしても、その前にツンがフレッシュミートソースになる可能性が高い。
ならば、ぶん殴って止める他無いじゃないか。
ブーンも考えは同じようだが、こちらは三本の剣をあてがわれやり過ごすので精一杯という様子。
残りの二本は守りのためか兄弟の周囲を未だ回っている。
切り傷ばかりが増え、一向に前に進めないツンに対し、ブーンは少しづつ接近している。
怖ろしい集中力だ。
一見回避不能な攻撃を皮一枚でかわしきっている。
( ;´_ゝ`)「チッ」
流石に危険を感じたか、兄弟の下に留まっていた一本がブーンへと飛んでゆく。
ブーンが、チラリとツンを見た。
この状況下ではありえない余所見。しかしだからこそツンはその意図を読んだ。
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391 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/10/04(木) 22:49:42 ID:CiNGJvak0
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新たに一本が加わり、四本となったブーンを襲う剣。
前後左右を囲む逃げ場の限られる布陣を取り、一気に獲物を突きかかる。
ブーンは姿勢を下げ、前から来る剣に飛び込んだ。
身を右に捻るも、横からの剣が追尾があるため避けきれない。
前からの剣がブーンの胸を、右の剣がわき腹を切り裂いた。
ブーンの体が傾く。
しかし、倒れない。
支える足が地面を叩き、傷口から血が溢れた。
そのまま、ブーンは突進。血の軌跡が糸のようになびく。
それと同時、ツンもまた強引に剣をかわす。
ブーツの風魔法を発動。
左太ももの付け根と、右の肩と髪束をさっくりと裂かれるが刃を食いしばって切り抜ける。
( #^ω^)「おおおおおおおお!」
ξ#゚听)ξ「ツゥゥゥゥゥゥン!!!」
ややずれた前後から同時の挟み打ち。
空ぶった水の剣達が慣性を振りほどき、切っ先をツンとブーンそれぞれの背中へ向ける。
しかし、その延長線上に術者本人がいるためセーフティがかかり、アニジャの思うような速度が出ない。
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392 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/10/04(木) 22:50:41 ID:CiNGJvak0
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手元に残した剣をどちらに使うかという一瞬の迷い。
アニジャはブーンに標的を定め剣を真一文字に振るう。
同時、ツンに対しオトジャが立ちはだかる。
剣は無いが素手でツンを掴みにかかった。
ブーンとツン、両者の体が宙へと高く飛び立ち、それぞれに放たれた攻撃をかわす。
射線上に術者のいなくなった残りの剣が上昇加速して二人の身体を狙った。
刹那のアイコンタクト。
ブーンは上体を下へ。
ツンはその背中に足を掛け、ブーツの魔法を全力でブーンに叩き込む。
ツンはさらに飛翔。
ブーンは蹴られた勢いで急落下。
寸前まで二人の居た空間で、藍色の剣がけたたましく交差した。
( ´_ゝ`)「!」
(´<_` )「!」
ブーンの刀が降り立つと同時にオトジャを肩から縦に切り裂く。
勢いそのまま、ブーンの体が回転。
一度振り下ろされた刃は地面を擦って跳ね上がり、アニジャのわき腹を斜めに撫でた。
噴き出る二人の血飛沫。
その場から飛んで離れたブーンを追うことも無く、兄弟は立ち尽くす。
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393 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/10/04(木) 22:51:58 ID:CiNGJvak0
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ツンの着地と同時にアニジャの体が傾いた。
既に意識がないのか、耐える素振りもなく膝から折れ、地面へ。
オトジャはそれを支えようと手を出したが、身体はその逆、後ろへと引き込まれていく。
砂が人間を抱きとめる音が時間差で二つ響いた。
砂に細い血の川が延びていく。
そこからもう、二人は動かない。
術者を失った水の剣たちは、空中で魔法から開放され、無数の飛沫となって降り注ぐ。
一時の雨となったそれは、四人体にこびりつく血を洗い流していった。
ツンは着地の衝撃で痺れる足を引き摺りサスガ兄弟へ近づく。
死んではいないようだが、意識は無い。
少なくとも、すぐさま意識を取り戻して襲い掛かってくるようなことは無さそうだ。
ブーンが歩み寄る。ツンと目が合うと右手を上げた
( ^ω^)「ナイスアシスト」
ξ゚听)ξ「別に、あんたのためにやったんじゃないわよ」
ツンはそういいながらもブーンの右手に、右手を振りかぶる
ぶつかり合う、二人の掌。
勝利を喜ぶ軽快な音が、湖畔の静けさを振り払うように響き渡った。