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204 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2013/03/25(月) 23:06:08.89 ID:oUxuTfUO0
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控え室に戻ったクールはあらためて、
今しがた自分が背負っていたプレッシャーの重さを認識させられた。
ほぼ有罪で間違いないしぃの窮境に、
それをわかっていながらもハッタリをかまし続けることに対する良心の呵責。
開廷前以上に、クールは「帰りたい」と思うようになっていた。
法廷係官がすぐそこにいるのにも関わらず、むすっとしたような顔になった。
川 ゚ -゚)「……しぃさん」
(*゚−゚)「……はい」
クールが言わんとすることを空気で察したのか、しぃも重苦しい顔をした。
今の彼女を見れば、とても彼女をアイドルとは認められないだろう。
しかし、アイドルとは得てしてそういうものなのだ。
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206 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2013/03/25(月) 23:07:59.22 ID:oUxuTfUO0
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川 ゚ -゚)「なによりもまず確認したいのが、『拳銃』 の指紋だ。
正直、これがある限り、いつまで経っても君への疑いは晴れないだろうと思う」
(*゚−゚)「……それ、ですか」
川 ゚ -゚)「殺したかどうか、はさておくとしよう」
川 ゚ -゚)「 “撃った” のか?」
(*゚−゚)「撃ってません」
しぃは頑なになって即答した。
クールはよけいにむすっとした。
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209 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2013/03/25(月) 23:10:33.39 ID:oUxuTfUO0
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川 ゚ -゚)「なら、どうして指紋が残っている」
(*゚−゚)「………。」
川 ゚ -゚)「答え――」
(*゚−゚)「……カレの家に行ったとき」
川 ゚ -゚)「!」
(*゚−゚)「家に行ったら…… 『上画面』 の位置に、ギコくんが、頭から血を流して倒れてた。
わけがわからなくなって、なんとか、その現状…?を、把握しようとしたんです」
(*゚−゚)「そのときに、足元に 『拳銃』 が転がってたのが見えて……
何の気なしに…… “拾った” 、んです」
川 ゚ -゚)「…… “拾った” 、ねえ……」
クールは腕を組んだ。
自分が思っていたのと同じだったため、さして驚くことはなかったが。
しかし、それを聞いても、表情が晴れることはなかった。
しぃにかかっている容疑も、同様だ。
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213 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2013/03/25(月) 23:13:03.06 ID:oUxuTfUO0
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(*゚−゚)「パニックだったなか、それが 『拳銃』 だってわかって……
怖くなって、そのまま、それを捨てて逃げ出したんです」
川 ゚ -゚)「警察には通報しなかったのか?」
(;*゚ー゚)「なッ…、できるわけないでしょ!」
川 ゚ -゚)「いや、でも君が無実なら恐れることは――」
(;*゚ー゚)「ギコくんとの関係がバレちゃうじゃないですかっ!」
川 ゚ -゚)
言われて、クールはぽかんとした。
「……え、それだけのこと?」
続けて、クールはそう思った。
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217 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2013/03/25(月) 23:15:35.11 ID:oUxuTfUO0
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川 ゚ -゚)
川 ゚ -゚)「……ま、まあ… 『拳銃』 については、わかった」
(*゚ー゚)「……」
川 ゚ -゚)「次。 『紛失した携帯電話』 だが……心当たりは?」
(*゚ー゚)「………それって、ギコくんの、ですよね……?」
川 ゚ -゚)「ああ」
(*゚ー゚)「知らないですよ、そんなの」
川 ゚ -゚)「!」
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219 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2013/03/25(月) 23:16:48.29 ID:oUxuTfUO0
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(*゚ー゚)「私、現場と拳銃を見て、びっくりしちゃって……そのまま、逃げたんですから」
川 ゚ -゚)「……じゃあ、携帯電話はどこに行ったんだ?」
(*゚ー゚)「真犯人が持ち去ったに決まってるじゃないですか!」
川 ゚ -゚)「真犯人、ねえ……」
クールは腕を組んだ。
そう都合よく「真犯人」など見つかるものか――といったような心情だ。
クールがそう思っていると、今度はしぃのほうから口を開いてきた。
おや、と思うと、彼女は先ほどまでには見られなかった、朗らかな笑顔を見せた。
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221 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2013/03/25(月) 23:18:28.07 ID:oUxuTfUO0
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(*゚ー゚)「それはそうと弁護士さん」
川 ゚ -゚)「ム……なんだ」
(*゚ー゚)「事ある毎に『異議あり』って叫ぶのは、ナンセンスですよ」
川 ゚ -゚)「…」
川;゚ -゚)「…?」
(*゚ー゚)「せっかく若くて、私には敵わないにしても美人なんですから」
川 ゚ -゚)「ム」
(*゚ー゚)「もっと、『決めゼリフ』なんてものを作っておいたほうが、華がありますよ」
川 ゚ -゚)「私は、法に生きる人間だ。堅苦しくて結構」
(*゚ー゚)「私、一応アイドルだから。そこらへん気にするので、堅苦しいのはちょっと」
川 ゚ -゚)「あのなあ」
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224 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2013/03/25(月) 23:19:44.58 ID:oUxuTfUO0
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(*゚ー゚)「そこで! ひとつ、考えたんですよ。弁護士さんに合いそうで、
しかもインパクトが強い最高のフレーズを」
川 ゚ -゚)「…聞いてる?」
(* ー )「『クールにいこうではないか』」
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225 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2013/03/25(月) 23:22:28.07 ID:oUxuTfUO0
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川 ゚ -゚)「?」
(*゚ー゚)「――なんて、どうですか! こう、ヨユウたっぷりな素振りを交えて……」
しぃはそこで、「やれやれ」といいながら両方の手のひらを上に向けた。
ややうつむいて、首を左右に振る。
――私のマネのつもりか。
やがてそうわかると、クールは呆れたような顔を浮かべた。
じゃっかん目を細めて、彼女は無理やり話を本筋に戻した。
クールはもう一点、聞きたいことがあったのだ。
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228 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2013/03/25(月) 23:24:15.65 ID:oUxuTfUO0
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川 ゚ -゚)「あと、次の証人は事件当日、被害者と会ったみたいだが――
(*゚−゚)「無視…」
川 ゚ -゚)「その人物について、心当たりはあるのか?」
(*゚ー゚)「心当たり?」
(*゚ー゚)「………。」
( `・д・)ゞ「時間です」
川 ゚ -゚)「……まあ、なんとかなるさ。行こう」
(*゚ー゚)「あ……はい」
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229 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2013/03/25(月) 23:26:03.07 ID:oUxuTfUO0
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川 ゚ -゚) クールに決める逆転裁判のようです
File.1 「 逆転のバレンタイン 」
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232 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2013/03/25(月) 23:30:24.44 ID:oUxuTfUO0
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時間の十分を過ぎると、すぐに法廷が再開された。
裁判長もいようも、定位置に就いている。
休廷前と変わっていたのは、証人席だった。
ワカンナインデス刑事が消え、いまそこには、誰もいなかった。
そこに、新たな――「事件当日に被害者と会っていた人物」を迎え入れるのだろう。
クールは、現状を打破するにはその証人だけが頼りとなるため、その人に期待を寄せていた。
検察側の証人のはずなのに弁護側がそれを期待するとは――と、クールは少ししてから、笑った。
裁判長の手が鳴らす乾いた音が、法廷内に鳴り響いた。
よく通る音であり、傍聴人は皆、その音ひとつでとたんに私語を慎んだ。
( ´∀`)「さて、再開しましょう。準備はいいですね」
川 ゚ -゚)「むろん…だ」
( ´∀`)「よろしい。じゃあ――」
(=゚ω゚)ノ「弁護側に無駄に遅延行為をされているため、ちゃっちゃと事を済ませるよぅ」
( ´∀`)「係官、次の証人を」
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235 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2013/03/25(月) 23:32:30.47 ID:oUxuTfUO0
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裁判長の手の音。
続けて、スムーズに係官が動いた。
彼らも、「ちゃっちゃと」動くように指示されているのだろう。
クールはそうわかり、つまらなく思った。
爪゚ -゚)
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237 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2013/03/25(月) 23:34:29.98 ID:oUxuTfUO0
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( ´∀`)「証人。職業とお名前を」
爪゚ -゚)
爪゚ー゚)「……杉浦、じぃ。フリーターです」
川 ゚ -゚)「(……女、か……)」
杉浦じぃと名乗った彼女は、背がしぃ以上に低かった。
栗色の髪で顔つきも幼いのだが、かぶる帽子といい服といい、深緑一色である。
(=゚ω゚)ノ「証人が召喚された理由は、たった一つだよぅ」
(=゚ω゚)ノ「 《額の打撲痕は事件と関係があるのか》 ……そのことについて、証言してもらうためだよぅ」
(=゚ω゚)ノ「だから、証人の、それ以外のことに関しては深追いはやめてもらいたいよぅ」
(=゚ω゚)ノ「以上を踏まえた上で、まずは 《被害者との関係》 について証言してもらうよぅ」
( ´∀`)「関係……わかりました。お願いします」
爪゚ー゚)「……」
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239 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2013/03/25(月) 23:36:22.21 ID:oUxuTfUO0
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じぃは言われて、こくり、とうなずいた。
そして、そのちいさな口を、ゆっくりと開いた。
爪゚ー゚)「……わたしは、ギコくんの、恋人です」
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242 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2013/03/25(月) 23:39:09.90 ID:oUxuTfUO0
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川;゚ -゚)「!」
(;*゚−゚)「!!」
( ´∀`)「!!!」
――じぃの、そのはじめの一言で、法廷内が凍りついた。
傍聴人も、裁判官も、皆である。
川;゚ -゚)「い、異議あり! 証人!」
爪゚ー゚)「なんですか?」
川;゚ -゚)「そ、その…… “変人” の間違いじゃなくて?」
(=゚ω゚)ノ「異議ありィ! ソレはないよぅ、ソレは」
川;゚ -゚)「しかし、“恋人” と言えば……」
場内の人間が、クール――の、前にいる人物に視線を注いだ。
(;*゚−゚)「…? ……?」
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245 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2013/03/25(月) 23:43:02.26 ID:oUxuTfUO0
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川;゚ -゚)「アイドルの、椎名しぃ――のハズ、だぞ!」
爪゚ー゚)「……」
( ´∀`)「これは、どういうことですかな?」
(=゚ω゚)ノ「検察側から説明するよぅ。
. 彼女は確かに、被害者の恋人だよぅ」
( ´∀`)「しかし、だとすると被告人は……」
(=゚ω゚)ノ「そう。被告人は、“二股” ……を、してたんだよぅ」
( ´∀`)「ふ…二股……」
そう聞かされて、裁判長は気難しい顔をした。
事の如何については納得がいったが、根本的なところでつまずいているような――そんな様子だった。
(=゚ω゚)ノ「確かに、二股は重要そうな情報だよぅ。
. でも今はそれは関係ないから、スルーしてほしいよぅ。
. 証人が、証言しづらくなったらどうするんだよぅ」
( ´∀`)「それもそうですね。はい、静粛にー」
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247 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2013/03/25(月) 23:45:19.89 ID:oUxuTfUO0
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川 ゚ -゚)「……しぃさん」
(;*゚−゚)「?」
川 ゚ -゚)「君と被害者は……どういう関係なんだ?」
(;*゚ー゚)「………」
川 ゚ -゚)「答え――」
(=゚ω゚)ノ「失礼したよぅ。では、本筋に戻るよぅ」
川 ゚ -゚)「……まあ、いいか」
(;*゚ー゚)「………。」
いようが言うと、クールは注意を再び証人、じぃへと向けた。
彼女は法廷内のざわめきに反し、一人だけ、ずっと平静を保っていた。
そのため、彼女だけが、この法廷から浮いているように見えた。
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251 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2013/03/25(月) 23:49:15.32 ID:oUxuTfUO0
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(=゚ω゚)ノ「証人は、被害者と恋人関係にあった。では、二月十四日もトーゼン……」
爪゚ー゚)「会いました」
(=゚ω゚)ノ「そのときのことを話してほしいよぅ。それも…… “額の痕” も踏まえて」
爪゚ー゚)「わかりました」
川 ゚ -゚)「(さて……どう出る?)」
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254 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2013/03/25(月) 23:51:30.23 ID:oUxuTfUO0
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爪゚ー゚)「わたし、午前中はバイトがあったので、カレと会ったのは午後からでした。
. 確か、16時をじゃっかん回ったくらいだと思います」
爪゚ー゚)「カレの自室で撮りだめされてた刑事ドラマとか観て……
. 確か、一時間経ったくらいだと思います」
爪゚ー゚)「その刑事ドラマに出てた主演の俳優さんのサインがあるって話になったんですが
. “リビングの棚に飾ってあった” ということで、二人でそっちに向かったんです」
爪゚ー゚)「でも、ほら、棚はソファーの後ろじゃないですか。
. しかも、植木鉢がその通路を邪魔してるし」
爪゚ー゚)「だから……棚の前に立とうとしたとき、植木鉢に足を引っ掛けて、
. カレは “転んだ” んです。そのときに、おでこをゴチン、って打って……」
爪゚ー゚)「冷蔵庫から保冷剤をとって、それでカレに応急処置をほどこして……
. で、そこから少ししてわたしは帰りました。その時間は、確か17時半頃頃です」
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256 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2013/03/25(月) 23:53:42.03 ID:oUxuTfUO0
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( ´∀`)「ほう、転んで打った、と……」
( ´∀`)「わかりました。では素直さん、尋問を」
川 ゚ -゚)「……ふう」
(*゚ー゚)「なにが『ふう』なんですか……」
川 ゚ -゚)「なにをどう尋問すればいいかわからなくてな」
(;*゚ー゚)「んなッ! ……大問題じゃないですか!」
川 ゚ -゚)「案ずるな。ひとつだけ、はっきりしてることがある」
(*゚ー゚)「なんですか?」
川 ゚ -゚)「 《ムジュン》 ……がある、ということだ」
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259 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2013/03/25(月) 23:56:19.24 ID:oUxuTfUO0
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(*゚ー゚)「! じゃあ、早くそれを “つきつけて” くださいよ!」
川;゚ -゚)「で、でも、証拠品をつきつけるって、どうすれば……」
(;*゚ー゚)「あんたそれでも弁護士か! 口頭で、その食い違いを指摘すりゃいいでしょ!」
川;゚ -゚)「そ、そういうものなのか……詳しいな」
(*゚ー゚)「考えるまでもないでしょ、ったく……」
(=゚ω゚)ノ「尋問なしなら、判決を下してもらうよぅ」
(=゚ω゚)ノ「 “額の打撲は転んでできた” ……事件との関連性は、皆無と見受けるよぅ」
(=゚ω゚)ノ「だから――」
川 ゚ -゚)「 異 議 あ り ッ ! ! 」
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264 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2013/03/25(月) 23:59:02.83 ID:oUxuTfUO0
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(;=゚ω゚)ノ「ひッ!!」
( ;´∀`)「こ、こら! 素直さん、声が大きすぎる!」
川;゚ -゚)「あ………も、申しわけない」
(;*゚ー゚)「(私が一番の被害者なんだけど……)」
クールが腹の底から声を出すと、法廷内にいたほかの皆がとたんに耳を塞いだ。
目の前にいたしぃは、とたんに目を見開き、呼吸を荒くさせていた。
それらを見て、クールはばつが悪そうな顔をしては後頭部を掻いた。
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265 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2013/03/25(月) 23:59:48.85 ID:oUxuTfUO0
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川 ゚ -゚)「気を取り直して……」
川 ゚ -゚)「異議あり!」
(=゚ω゚)ノ「なんだよぅ?」
川 ゚ -゚)「 “額の打撲は転んでできた” ……それはほんとうなのだな?」
(=゚ω゚)ノ「現に証人がそう言ってるよぅ。ウソをつく必要もないよぅ」
川 ゚ -゚)「しかし、それは真っ赤なウソだ!」
(=゚ω゚)ノ「異議ありだよぅ。無根拠にワレワレを冒涜されてはたまらないよぅ」
川 ゚ -゚)「なら証拠品を提示しよう」
(=゚ω゚)ノ「?」
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267 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2013/03/26(火) 00:01:11.35 ID:fJTgQXGu0
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そう言うと、クールはパネルを操作して、場内のモニターにあるものを移しだした。
白地に、簡潔なイラストが描かれている―― 『上画面』 。
川 ゚ -゚)「証言によれば、“被害者は植木鉢につまずいた” とあるが……」
川 ゚ -゚)「『花』は棚の左側!」
川 ゚ -゚)「これでは、つまずくことができないではないか!」
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268 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2013/03/26(火) 00:02:50.16 ID:fJTgQXGu0
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じぃの証言では、棚の前に立とうとするさい、
その前にあった植木鉢に足をとられ、そのまま転んだ――とあるが
『上画面』 を見る限りその場所に『花』はない以上、それに足をとられることがあるはずない。
そうとわかったとたん、クールの自信は一気に大きくなった。
もっとも、それが先ほどの叫び声にあったのだが――
( ´∀`)「そ、それはもっともです! これはどういうことですか!」
(=゚ω゚)ノ「言われると思ってたよぅ。ここで、検察側は新たな証拠品を提出するよぅ」
川 ゚ -゚)
川 ゚ -゚)「え?」
するといようは、こうなることを最初から
わかっていたかのような様子でその「新たな証拠品」を提示した。
それを見てクールはあっけにとられた。
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271 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2013/03/26(火) 00:04:54.05 ID:fJTgQXGu0
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(=゚ω゚)ノ「実はこの植木鉢―― 『上画面』 でいうところの『花』は、《移動させられていた》 んだよぅ」
( ´∀`)「移動…?」
(=゚ω゚)ノ「土の跡が、 『上画面』 でいうところの
. 『ソファー』と『棚』の間の道を塞ぐような位置に見られたんだよぅ」
(=゚ω゚)ノ「これがその証拠だよぅ」
( ´∀`)「 『土の跡』 ですね。受理します」
提示された写真には確かに、そこに円を描くように土の跡が見えた。
また同時に、そこに長らく植木鉢が置かれていたであろうことを示すための白い円も見られた。
つまり、それは確かに、「ほんとうはそこに植木鉢があった」ことを示す証拠であったわけだ。
それを周囲にわからせてから、いようは続けた。
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273 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2013/03/26(火) 00:06:49.57 ID:fJTgQXGu0
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(=゚ω゚)ノ「証言にあったように、被害者は棚からものを取り出そうと、
. ソファーと棚の間の道を進もうとしたんだよぅ」
(=゚ω゚)ノ「でもそこに植木鉢があったせいで転んでしまったんだよぅ。
. だから、証人は植木鉢を 『上画面』 の位置に動かした……違うかよぅ?」
爪゚ー゚)「そうです」
川;゚ -゚)「なに……?」
その二人のやり取りを見て、クールは異議を申し立てる前以上の苦境を感じた。
唯一、見つけることのできた反撃の糸口。
それは弁護側にとって有利なものではなく、むしろ、
検察側の作戦によって用意されたもの――となったのだから。
弁護側が指摘したのを好機にその証拠品を出すことで、
検察側は裁判長や裁判官に、強調することができる。
「被害者は確かに、その植木鉢に足をとられて転んだのだ」と。
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274 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2013/03/26(火) 00:08:30.12 ID:fJTgQXGu0
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( ´∀`)「だとすると、この打撲痕は事件とはまったくの無関係、と見てよろしいですね」
(=゚ω゚)ノ「そうだよう。これで立証終了だよぅ」
川;゚ -゚)「(……まずい!)」
(;*゚ー゚)「弁護士…さん……?」
そしてその検察側の作戦は、うまくいったようだ。
少なくとも裁判長の心証は、完全に検察側に傾いたようだからだ。
そうわかって、クールは焦らずにはいられなかった。
( ´∀`)「弁護側に反証がないようなら判決に移りたいのですが……」
川;゚ -゚)「異議あり! まだ反証は終わってない!」
(=゚ω゚)ノ「じゃあいますぐ言ってくれよぅ」
川;゚ -゚)「……っ!」
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276 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2013/03/26(火) 00:11:06.30 ID:fJTgQXGu0
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――しまった!
クールはつい、言ってからそのことを後悔した。
当然、いまの弁護側に、反証できるようなことはない。
ないが、判決を引き伸ばすために異議を申し立てた。
そこを、検察側に衝かれた。
これは言わば、「いますぐ反証してみせろ」「できなかったら即有罪だ」
――そう言っているようなものなのだ。
(=゚ω゚)ノ「まさか、反証材料がないのに反証がある、とか言ったよぅ?」
川;゚ -゚)「……い、……いや」
川;゚ -゚)「反証は………ある…。」
(=゚ω゚)ノ「そうかよぅ。じゃあ早くしてほしいよぅ」
いようが急かす。
クールはハッタリをかましていたとき以上に焦燥を感じた。
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278 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2013/03/26(火) 00:13:32.41 ID:fJTgQXGu0
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川;゚ -゚)「(反証は……ない。それは、私が一番よく理解している。
. そもそも、見てわかるような隙など、最初から検察側が用意するハズがない)」
川;゚ -゚)「(とすると、やはり、この証言に明確な隙――反証の余地はない、ということだ。
. これだと、一方的に弁護側の不利、となるのだが……)」
川 ゚ -゚)「(……!)」
川 ゚ -゚)「(……そうだ!)」
(*゚ー゚)『 “これは被告人が殺した何よりの証拠である” ……ってのは、
その証拠品にとって数ある見方のうちの一つに過ぎない……だから』
(*゚ー゚)『なんとか “違う。これは実はこういう意味だったのだ” とかなんとか言って、
テキトーにそれらしいでまかせでも言えば、たぶん……なんとか、なります』
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281 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2013/03/26(火) 00:15:08.25 ID:fJTgQXGu0
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川 ゚ -゚)「(なにも、ハッタリをかますだけが手じゃあない)」
川 ゚ -゚)「( “イチャモン” をでっち上げれば、なんとかなるかもしれないじゃないか!)」
(*゚−゚)「弁護士さん……ワルい顔になってますよ」
川;゚ -゚)「……すべては君のためにやってるんだぞ」
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