-
5 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2013/03/25(月) 19:39:56.19 ID:oUxuTfUO0
-
「……どうして?」
「もう、何度も言っているだろ。俺はお前を愛せない」
「だから、……どうして……?」
「俺はお前以外に、好きな奴ができた。…ただ、それだけだ」
「わ、わたしのことは……?」
「だから、何度も言ったはずだ。……別れてくれ」
「…………嘘……。」
「カネは払う。いくらだ。言われたとおりの額を出そう」
「お、お金の問題じゃない! わたしは、わたしは――」
「しつこいぞ」
.
-
6 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2013/03/25(月) 19:41:52.26 ID:oUxuTfUO0
-
「……ッ……!」
「いたずらに、お前の恋心を煽って……悪かったと、思ってる」
「カネが嫌なら、なにがいい。服か? 宝石か?」
「………。」
「だから……もう、別れてくれ。これ以上は、言わん」
「…………。」
.
-
7 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2013/03/25(月) 19:42:39.23 ID:oUxuTfUO0
-
「……ギコくん、ばいばい」
「………ああ。また街とかで会ったら、挨拶でもするよ。……じぃ」
「……じゃ……」
「………」
「出て行った、か……」
「……あいつ、呼ばないとな」
「………」
.
-
8 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2013/03/25(月) 19:43:44.94 ID:oUxuTfUO0
-
「もしもし。俺だ、ギコ」
「すまんが、もう一度、俺の家に来てくれないか」
「……さっき、言い忘れたことがあったんだ」
「留守電でメッセージを入れるより、直接話したい」
「………待ってるぞ」
『キロク シマシタ
. 2ガツ14ニチ 18ジ36プン』
.
-
9 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2013/03/25(月) 19:44:37.29 ID:oUxuTfUO0
-
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
川 ゚ -゚) クールに決める逆転裁判のようです
File.1 「 逆転のバレンタイン 」
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
−1−
.
-
12 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2013/03/25(月) 19:45:38.88 ID:oUxuTfUO0
-
最後の戦争が終わってから何年経つのだろうか。
かつてこの国が抱いていた窮乏や不安はいまやその面影すらなくし、
いまや、平和と怠惰が人々のなかにはびこるようになっていた。
民主主義、個人の尊重などを政府がかなりプッシュしてきた結果
なんの皮肉か、犯罪件数は数十年前よりも増加の一途しか辿らないようになってしまった。
だが、日々増える犯罪に、警察の捜査が追いつかない――ことは、ない。
ちいさな犯罪を切り捨て、大きな犯罪を優先して片付けるようになったため
犯人を検挙するに至るまでの経緯は、決して絶えることがなかった。
しかし、問題は警察ではなかった。
その、警察が検挙した犯人を裁く――つまり、裁判に、問題ができた。
犯罪件数が多すぎて、既存の司法制度ではとても処理しきれないようになったのだ。
そこで試験的に実施されるようになったのが、「序審法廷制度」と呼ばれるシステムだ。
それまでのように、刑罰の重さやその処置のとり方などを逐一最初から最後まで争っていると、
裁判所が一日にこなす仕事量よりも、舞い込んでくる犯罪件数のほうが上回る計算になったのである。
.
-
13 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2013/03/25(月) 19:46:41.90 ID:oUxuTfUO0
-
序審法廷制度とは、文字通り「序審」が設けられたことが一番の特徴で、
まずはこの序審で、被告人にかかった容疑の事実関係を追究、
無実だったならその時点で釈放し、有罪だったなら後日改めてその刑罰を決める、というのだ。
あくまで追究するのは事実関係のみで、もし被告人がどう見ても犯人だった場合は
検察側がその証拠や証言を揃えれば法廷はそれで終了――となるし
逆に検察側の用意するそれがいささか立証能力に欠けるようであれば、無罪推定の原則が適用され釈放――となる。
序審は最長でたったの三日だ。
つまり、三日で、推定無罪の人を釈放することができるのだ。
このシステムのおかげで、推定無罪の人が被告人の事件を
本来裁判所でこなすべき仕事から抜くことができるようになったため、裁判所の仕事効率は格段に上昇した。
――だが、一見この画期的に見えるシステムには、ひとつ、大きな欠点があった。
「推定無罪をあらかた除外できる」というメリットは、言い換えれば
「有罪と認定されればそれを覆すのがおよそ不可能になる」という点であった。
もっと簡略的に言うなれば、弁護側は三日間で被告人の無罪を立証しなければならない。
「真実としては無罪だが、おそろしいほど自分に不利な証拠が並べられた場合は無実の罪を着せられることになる」。
これが、この「序審法廷制度」における、最大の欠点と言えるようになった。
.
-
15 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2013/03/25(月) 19:48:09.09 ID:oUxuTfUO0
-
川 ゚ -゚)「……だというのに、どうして」
素直クールは、この「序審法廷制度」のことを再認識しながら、そうため息をついた。
開廷まで、もう十分もない。
一通りの資料には目を通しており、物理的な準備は既にできていた。
だが、心の準備、がまったくできていなかった。
「なに暗い顔してるんですか」
川 ゚ -゚)「…ム」
クールは、後ろから肩を叩かれた。
その明るい声を聞いて、更に、クールの心の準備が整わなくなった。
今更触れるまでもない。
クールの憂鬱の原因は、声をかけてきた彼女、にあるのだから。
.
-
17 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2013/03/25(月) 19:49:53.78 ID:oUxuTfUO0
-
(*゚ー゚)「もう裁判はじまりますよ」
川 ゚ -゚)「……君は、すごく軽いんだな」
(*゚ー゚)「アイドルたるもの、いつでも笑顔! がモットーですから」
川 ゚ -゚)「周りから笑顔を吸い取って自分だけが笑顔になるのは、どうかと思うぞ」
(*゚ー゚)「あっはは。弁護士さん、面白いですね」
川 ゚ -゚)「ああ。まったくを持って “不” 愉快だ」
――比較的長身なクールよりも頭一個分ほど背の低いしぃは、そう言っては陽気にふるまった。
クールはもともと沈着な人なのだが、彼女が隣にいるせいで、よけいに口数が減りつつあったのだ。
口数を減らす代わりに、ため息をつく回数が増えたと感じられる。
クールは今すぐにでも、この裁判を放棄してはやく家に帰りたがっていた。
.
-
18 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2013/03/25(月) 19:51:17.97 ID:oUxuTfUO0
-
川 ゚ -゚)「で、だ。……もう一度、訊くが」
(*゚ー゚)「またですか」
川 ゚ -゚)「最後の確認だ。……えっと、その」
(*゚ー゚)「…」
クールは、もう何周にも渡って目を通しておいた
資料の内容を脳裏に浮かべながら、言った。
川 ゚ -゚)「ほんとうに、君は……殺してない、のだな?」
(*゚ー゚)「…はい」
――猫乃ギコ殺害事件の被告人、椎名しぃはうなずいた。
担当弁護士の素直クールは、最終確認、を続ける。
.
-
19 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2013/03/25(月) 19:52:11.97 ID:oUxuTfUO0
-
川 ゚ -゚)「あの日……二月十四日、君はなにをしていた」
(*゚ー゚)「……14時頃に、ギコくんとカレの家で待ち合わせして。
そこから15時40分ほどまで、遊んでいました」
川 ゚ -゚)「しかし、その日のうちにもう一度、君は被害者宅に足を運んだ。
そこらについて、もう一度言ってほしい」
(*゚ー゚)「………私は、殺してなんかいない」
川 ゚ -゚)「それを信じるためにも、このときのことを教えてほしい」
(*゚ー゚)「……」
川 ゚ -゚)「……」
.
-
20 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2013/03/25(月) 19:53:12.05 ID:oUxuTfUO0
-
そこで、しぃ、クールともに黙った。
被告人第三控え室では、ほかに音を出す存在は無い。
そのため、とたんに、彼女ら二人は静寂につつまれることになった。
時計の針が音を刻む。
クールはどうしたものか、と思っていると、控え室の扉が開かれ、
続けて男――法廷係官の声が、聞こえた。
( `・д・)ゞ「まもなく開廷します。被告人、並びに弁護人は、裁判の用意をしてください」
川 ゚ -゚)「……行くぞ」
(*゚ー゚)「はい」
クールとしぃは、少しぎこちない様子でありながらも、
法廷係官に先導されては、この控え室をあとにした。
.
-
25 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2013/03/25(月) 19:57:30.29 ID:oUxuTfUO0
-
◆
傍聴人のざわめく音が聞こえるのは、まだ開廷されていないからだ。
本来傍聴人とは、遺族や関係者のほかに、裁判に興味を持つ一般人で埋め尽くされるものだ。
法学部在住の学生なんかが、近年では傍聴が多くなっているらしい。
しかし、今日に限っては違った。
今日、傍聴席の多数を占めているのは、そんな人たちではなかった。
アイドル「しぃ」が被告人――ということに惹かれた野次馬やファン、で埋め尽くされていたのだ。
また、各メディアの報道陣も、この裁判の行く末を、不純な動機のもと心待ちにしている。
皆、被告人が著名なアイドルだから――という理由だけで傍聴席に就いていたのである。
開廷数分前に、クールとしぃが入廷して、所定の位置に就く。
しぃの登場を見てさまざまな声をかける傍聴人たちであったが、
直後に裁判長がやってきたのを見て、その声はとたんに消え失せてしまった。
裁判長が席に就いたところで、彼は、その威厳に満ちた口を開いた。
このときクールは、今までにないくらい、緊張していた。
.
-
26 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2013/03/25(月) 19:58:19.76 ID:oUxuTfUO0
-
( ´∀`)「……えー、では」
川;゚ -゚)
( ´∀`)「これより、猫乃ギコ殺害事件の審理を、はじめます」
( ´∀`)「弁護側、及び検察側。準備はよろしいですかな?」
(=゚ω゚)ノ「検察側、いつでもいいよぅ!」
川;゚ -゚)
( ´∀`)「そうですか……ん? 弁護側、準備は?」
川;゚ -゚)
川 ゚ -゚)「…! あ、大丈夫……です」
(;*゚ー゚)「弁護士さん……」
.
-
27 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2013/03/25(月) 19:59:10.41 ID:oUxuTfUO0
-
クールは、なんとか声を絞り出したものの、その声はどこかか細く聞こえた。
威勢がなく、聞くからに「大丈夫」でないのがわかるような声だった。
そのため、裁判長は首を傾げた。
( ´∀`)「はて。ほんとうに大丈夫ですか?」
(=゚ω゚)ノ「裁判長。彼女は確か、今日が “初” の法廷だそうですよぅ」
( ´∀`)「なんと! それはそれは、まあ……いいですなあ」
(=゚ω゚)ノ「この検事歴八年の伊予いようがいるからには、そこまで緊張しなくていいんだよぅ」
川 ゚ -゚)「(中途半端だな)」
(*゚ー゚)「中途半端ですね」
.
-
29 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2013/03/25(月) 20:00:00.42 ID:oUxuTfUO0
-
ひょろひょろとした体躯を持ついよう検事は、そう言っては男にしては高い声で笑いだした。
だが、笑えるだけマシだ、とクールは内心で思っていた。
クールは、今回が、初の法廷なのだ。
しかも、その内容が殺人事件。
まして、依頼人が、著名なアイドルのしぃである。
クールのプレッシャーは、他人が理解できないほどには高まっていた。
が、裁判長はそれを気に留めることもなく、両手を叩いた。
彼の鳴らすその渇いた音で、法廷内を静まらせるのだ。
木槌を使わない代わりに、彼はこうやって、静粛を訴えるのである。
( ´∀`)「はいはい、静粛に。まあ、緊張せずに、のんびりして結構ですよ。ほっほっ」
川 ゚ -゚)「…」
.
-
30 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2013/03/25(月) 20:00:47.87 ID:oUxuTfUO0
-
( ´∀`)「……では、開廷しましょう。まず、いよう検事」
(=゚ω゚)ノ「なんだよぅ」
( ´∀`)「早速ではありますが、冒頭陳述を」
(=゚ω゚)ノ「任せてくれよぅ!」
川 ゚ -゚)
(*゚ー゚)「……どう、しました」
川 ゚ -゚)「…胃が痛い」
(*゚ー゚)「は、はあ」
.
-
32 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2013/03/25(月) 20:01:46.52 ID:oUxuTfUO0
-
裁判長に促され、いようは、ゴホンと咳払いをした。
そして余裕に満ちた表情を浮かべ、彼は口を開く。
(=゚ω゚)ノ「これは、二月十四日……
. そう、世間の恋人たちがともに愛を語らう日に起こった、“惨劇” だったよぅ。
. そして被告人、椎名しぃもまた、その恋人たちの一人だった――ハズなんだよぅ」
(=゚ω゚)ノ「しかし、殺されたのは、被告人と交際関係にあったとされる人。
. 猫乃ギコ、二十八歳。…死ぬには、あまりにも若すぎる年齢だよぅ」
(=゚ω゚)ノ「本法廷において、検察側は被告人が有罪であることを間違いなく立証するよぅ。
. と、こんなところだよぅ」
( ´∀`)「わかりました。ところで……」
(=゚ω゚)ノ「?」
( ´∀`)「被害者が恋人だ、というのはいいのですが、ほら……被告人は、アイドルでしょう?
この恋仲は、世間一般で認められたカップルなのですかな?」
(=゚ω゚)ノ「さすがは裁判長、いいところに気がつきましたよぅ」
いようはそう言って、腕を組んだ。
スーツの袖の裾から細い腕が見える。
声の高さといい、あまり男性らしくはない男性だな、とクールは思った。
.
-
33 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2013/03/25(月) 20:02:36.98 ID:oUxuTfUO0
-
(=゚ω゚)ノ「むろん、アイドルのしぃと言えば、世間的に有名なアイドルなんだよぅ。
. 彼女の交際は、事務所が許そうと、世間が許すハズないんだよぅ」
( ´∀`)「ということは……その、アレですかな」
( *´∀`)「……す、すきゃんだらすな交際だったわけですな!」
(=゚ω゚)ノ「そうだよぅ。だから、被告人には、彼女のプライベートを
. 調べるまでもなくその点において既に動機があるんですよぅ」
( ´∀`)「禁じられた恋……ソソりますねえ」
川 ゚ -゚)「(……おちゃめな人なんだな)」
( ´∀`)「そうとわかれば、早速証言に移ってもらいましょう。
いよう検事、最初の証人を召喚してくださいな」
(=゚ω゚)ノ「了解だよぅ!」
( ´∀`)「して、最初の証人は……?」
法廷の入り口を見ながら、裁判長は訊いた
「ふふん」と鼻を鳴らして、得意げにいようは答えた。
.
-
35 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2013/03/25(月) 20:04:03.45 ID:oUxuTfUO0
-
(=゚ω゚)ノ「これでも、新米弁護士さんに対する心遣いはあるんだよぅ」
川 ゚ -゚)「…私?」
(=゚ω゚)ノ「まず最初は、この事件の捜査を担当した刑事に、この事件のあらましを言ってもらうよぅ。
. そっちのほうが、有罪の立証も手早く済むし、一石二鳥なんだよぅ」
( ´∀`)「わかりました。係官、証人を」
裁判長が短く言うと、係官はすぐに応じた。
そして入り口からは、背丈の低く、柔和な顔を浮かべる「刑事」がやってきた。
( ><)
( ´∀`)「ふむ。お名前とご職業はなんですかな」
( ><)「はい! VIP県警捜査一課、刑事の稚内ワカンナインデスなんです!」
( ´∀`)「随分と元気がいい刑事さんなんですな」
( ><)「それほどでも……あるんです!」
川 ゚ -゚)「(うざいな)」
.
-
36 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2013/03/25(月) 20:04:56.31 ID:oUxuTfUO0
-
( ´∀`)「そうですか、わかりました。じゃあ早速、証言のほうを」
(=゚ω゚)ノ「 《二月十四日の『惨劇』》 ……言ってやるんだよぅ!」
( ><)「ガッテンです!」
川 ゚ -゚)「……いよいよ、だな」
(;*゚ー゚)「べ、弁護士さん?」
川 ゚ -゚)「? どうした」
証言がはじまる、と実感して、クールは意気込みをした。
しかしそれを聞いて、しぃは青い顔で後ろにいるクールに話しかけた。
小声ではあるが、切羽詰った様子はクールにも充分伝わった。
.
-
37 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2013/03/25(月) 20:05:49.64 ID:oUxuTfUO0
-
(*゚ー゚)「どうした」
(;*゚ー゚)「じゃないですよ! え、あなた、これが “初” の法廷だったんですか!?」
川;゚ -゚)「……うん」
(;*゚ー゚)「どど、どうして言ってくれなかったんですかっ!」
川;゚ -゚)「いやあ、言ったじゃないか。……… 『若いよ』って」
(;*゚ー゚)「若さ自慢をしただけじゃないですか!」
川 ゚ -゚)「まあ、なんとかなるだろう。君が無実なら、な」
(;*゚ー゚)「……そ、それはそうですが……」
ワカンナインデスは、証言をするに際して必要なものを用意しているようだ。
しぃはそれを横目で見やってから、クールに引き続き言葉を放った。
.
-
38 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2013/03/25(月) 20:07:01.13 ID:oUxuTfUO0
-
(;*゚ー゚)「だ、大丈夫なんですか?」
川 ゚ -゚)「なにが」
(;*゚ー゚)「いまから、何をどうやればいいか……わかってるんですか?」
川 > -<)「ワカンナインデス」
(;*゚ー゚)「ふざけないでっ!」
川 ゚ -゚)「……まあ、やり方くらいならわかってるよ」
川 ゚ -゚)「…… “尋問” 、それが私の仕事だからな」
(*゚ー゚)「 “尋問” …?」
.
-
40 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2013/03/25(月) 20:08:00.07 ID:oUxuTfUO0
-
「ああ」と言って、クールは続けた。
川 ゚ -゚)「証言のなかに潜むムジュンやウソに証拠品を突きつけて、証言を崩すのだ」
(*゚ー゚)「そうなんですか?」
川 ゚ -゚)「いま適当に考えた」
(;*゚ー゚)「! ふざけてるんですか!」
川 ゚ -゚)「冗談だ。これでも、司法試験にとおっているのだぞ、私は」
(;*゚−゚)「頼みますよ、ほんとうに……」
.
-
41 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2013/03/25(月) 20:09:00.23 ID:oUxuTfUO0
-
( ><)「……あの、はじめていいですか?」
川 ゚ -゚)
川 ゚ -゚)「? 私か?」
(=゚ω゚)ノ「おしゃべりは済んだかよぅ?」
川 ゚ -゚)「なに?」
言われて、クールは周囲を見回した。
裁判官、裁判長、検事、傍聴人、証人――
皆が、弁護席、それもクールとしぃの方に向けられていた。
夢中に話しすぎた――
そう思うと恥ずかしくなったのか、クールは顔が耳まで真っ赤になった。
「初々しくて、いいですなあ」と裁判長が言ったのを皮切りに、ワカンナインデスは口を開いた。
はやく証言したくてたまらないのだろう、そう思うと彼からも初々しさが感じ取れた。
見るからに若いのだ、職歴もきっと浅いのだろう。
.
-
42 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2013/03/25(月) 20:10:22.66 ID:oUxuTfUO0
-
( ><)「 “惨劇” が起こったのは、二月十四日のことなんです。
被害者、猫乃ギコは、後頭部を銃で撃たれたことが直接的な死因となってるんです」
( ><)「死亡推定時刻は18時から19時、と解剖結果からわかったんですが……
犯行時刻は18時45分頃ではないか、という結果が捜査陣からあげられたんです」
( ><)「で、現場なんですが……」
川 ゚ -゚)「?」
ワカンナインデスが言葉を濁したかと思うと、彼は検事席にいるいように目配せをした。
それを合図に、いようが口を開く。
(=゚ω゚)ノ「これが現場の状況なんですよぅ。初心者の弁護人のために、簡略化した図を用意したんですよぅ」
( ><)「画面に注目してほしいんです!」
すると、弁護席と検事席の背後にある大きなモニターや
裁判官、裁判長の手元にあるちいさなモニターに、「それ」が映し出された。
(→ttp://boonpict.run.buttobi.net/up/log/boonpic2_855.png)
.
-
43 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2013/03/25(月) 20:12:18.94 ID:oUxuTfUO0
-
( ><)「これは、犯行現場……つまり猫乃宅のリビングを、上から描いたものなんです。
事件と関係のなさそうなものや血だまりなどなどは省いたんですが、
事件のあらましを説明するのにはまったく問題ないので安心してほしいんです」
( ´∀`)「そのほうがいいですな。血だまりなんて写されたら、倒れそうですぞ」
川 ゚ -゚)「(…… 『上画面』 か。何度も目を通しておいたが、念のためもう一度見ておこう)」
そう思って、クールが画面に目を遣る。
六つの楕円形でかたどられたのは、ギコの死体だ。
リビングの入り口からベランダ、テレビのほうに向かって倒れている。
( ´∀`)「しかし、いくつか気になることが」
( ><)「なんですか?」
( ´∀`)「まず、この×印はなんですか?」
( ><)「それは、“弾痕” なんです」
( ´∀`)「弾痕……」
.
-
44 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2013/03/25(月) 20:14:14.49 ID:oUxuTfUO0
-
( ><)「一つが、台所の上にあった花瓶を。もう一つが、ソファーに。
被害者の命を奪ったのは、後者……つまり、ソファーのほうの弾なんです」
( ´∀`)「わかりました。もう一点、カウンターと冷蔵庫の下にある○印は?」
( ><)「それは、なんといいますか、カーテンみたいなものなんです」
( ´∀`)「カーテン?」
( ><)「廊下からこのリビングに入ると、まず最初に目に入るのが台所、カウンターなんですが……
このカーテンを閉めれば、それは視界から閉ざされることになるんですよ」
( ´∀`)「ほうほう」
( ><)「珍しかったので、一応図に載せておいたんです」
川 ゚ -゚)「……異議ありッッ!」
.
-
46 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2013/03/25(月) 20:15:30.90 ID:oUxuTfUO0
-
( ´∀`) !?
( ;><)「ひいいいいイイッ!!
. ……な、なんなんですか、いきなり!」
――突如として、クールは指を突きつけて、ワカンナインデスに怒鳴りかかった。
その声は女性にしては大きく、また声量はどうであれ
それまで法廷内は比較的静かだったため、彼女の声がひときわ大きく聞こえた。
結果、このタイミングでこの大きさの声を聞かされるとは
思ってもみなかったワカンナインデスが、露骨に驚いた。
泣きそうな顔をして、ワカンナインデスがクールの顔を見る。
当のクールは、なぜかそわそわとしていた。
川 ゚ -゚)「あ、えっと……」
川;゚ -゚)「べ、弁護側からも、質問が…ある!」
(*゚ー゚)「なら異議を唱えなくてよかったんじゃ……」
川;゚ -゚)「ど、どう止めればいいかわからなかったんだ」
.
-
47 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2013/03/25(月) 20:16:44.19 ID:oUxuTfUO0
-
( ;><)「質問ですか? どうぞ」
川 ゚ -゚)「……その、だ」
川 ゚ -゚)「そ、その、カーテンは……開いてたのか?」
「なんだ、そんなこと」とワカンナインデスは返した。
予想外に規模の小さな質問だったので、今しがたの驚きの反動で、一気に安堵が生まれたのだ。
( ><)「開いてたんです。これで満足ですか?」
川 ゚ -゚)「あ、えっと……、……はぃ…」
( ><)「声がちいさいんです……」
(=゚ω゚)ノ「まあ、“初” なんだから許してあげるんだよぅ。
. 刑事、続きを頼むよぅ」
( ><)「わかったんです。えっと、どこまで行ったっけ……」
( ><)「……あ、そうそう。じゃあ、本筋に戻るんです」
.
-
49 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2013/03/25(月) 20:18:06.85 ID:oUxuTfUO0
-
ワカンナインデスはそう言って、深呼吸をした。
彼は彼で、やはり緊張しているのだろう。
( ><)「……被害者は、被告人を18時36分に電話で呼び出したんです。
そして呼び出された被告人は、このリビングに案内されたと思われます。
そのときに被告人は、背後から、被害者に銃を向けて、二発撃ったんです」
( ><)「で、重要なのが、この二つの弾痕なんです」
( ´∀`)「見たところ、方向が違うようですが……」
( ><)「まず、一発目。リビングに入ると同時に、被害者に向けて一発。
このときははずれて、台所にある×印のところにそれは着弾したんです」
( ><)「撃たれたことで危機を感じた被害者は、そのまま逃げるようにベランダに向かったんです。
そのときに、被告人が二発目を撃ちました。ソファーに残った弾痕が、それなんです」
( ><)「それで、被害者は即死でした。あ、お手元の解剖記録の資料も見てほしいんです」
川 ゚ -゚)「( 『解剖記録』 ……これだな、うん)」
.
-
51 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2013/03/25(月) 20:19:37.64 ID:oUxuTfUO0
-
ワカンナインデスが注意をそちらに向けたところで、クールもそれに目を遣った。
中に書かれてあることは、何度も読み、把握している。
死亡推定時刻は、18時から19時の間。
一発の弾丸により、即死したものであるようだ。
ほかには、額に打撲の痕も確認されたことが書かれていた。
中に目を通すまでもないクールは、そのまま一度さげた視線を、ワカンナインデスのほうに向けた。
彼は「いいですか」と言って、皆の注意を自分に向けさせる。
( ><)「そうして被害者を銃殺したあと、これがまた問題だった。
被告人はあろうことか、慌てて被害者宅から “逃走” したんです!」
川 ゚ -゚)「なに?」
その言葉を聞いて、クールをはじめ傍聴人や裁判官が少し動揺を見せた。
解説するように、ワカンナインデスが付け足す。
( ><)「目撃者がいたんです」
.