( ^ω^)ちょっと便利な異能力、のようです

第五話 目的の優先順位

125 名前:>>1[] 投稿日:2016/06/06(月) 19:32:01 ID:FP92GiL.0


~~~~~~~~~~~~

……。 ……。 ……。
 ……。 ……。  ……。
  ……。……。 ……。
 ……。……。 ……。
……。 ……。……。
 ……。 ……。……。
  ……。 ……。 ……。

次。 次。 次。 次。

何度も何度も画面をノートを交互に見る。
その合間合間に臼取のように動く右人差し指。

少しでも効率化を図りたくて無心でやってたけど。

こんなこと考え始めた時点で、もうダメだな。
うん、ダメだね。

そして何より、眠い。

時計を見れば13時。

126 名前:名無しさん[sage] 投稿日:2016/06/06(月) 19:32:43 ID:FP92GiL.0

大きく伸びをしたので、少し頭が冴えた。
起きてから半日ちょい、ってとこか。

ご飯……は、まだ、炊き置きがあったはず。
起きたら食べよう。

パソコンを閉じて。

電気を消して。

眼鏡を外す。
眼をつむりながら首を振ってしまうのは、どうしてだろう。
気付けば事後、何故かやってしまっている。

それは置いといて、そのまま眼鏡も机に置く。

傍らのレバーを引き椅子を倒して、膝に掛けていた毛布をかぶる。
目をつぶる。
いざ体勢をとると、思った以上に猛烈だ。
自我を奪われを気持ちいいほど感じる。
本能すごい。 これはきっと一分コース。


机の上の携帯が震える。

127 名前:名無しさん[sage] 投稿日:2016/06/06(月) 19:33:05 ID:FP92GiL.0

眼を開ける。

危なかったね。
あと数秒遅かったら、許さないところだった。

起き上がる。


携帯を手におさめ、メールを開く。


『差し出し人:素直 久潤
件名:友人
本文:守屋モララー
moriyaezu-moralyze@hardbung.jp
090-XXXX-XXXX
まあよろしく』


……、なにこれ。

久々に連絡があったと思ったら。
いや、ホントに何これ。

128 名前:名無しさん[sage] 投稿日:2016/06/06(月) 19:33:30 ID:FP92GiL.0

主語がない会話ってのはよくあるけど、これ、述語すらないよ。

えと、この人が何者で、私はどうしろって。
ううん……

ああ、だめ、考えても無駄だこれ。
いいや。


いや、眠い。
後でいいや。
うん、後でいいよね。

えーっと、とりあえず返しとこう。


『宛先:moriyaezu-m…
件名:今からねるのでまたあとで詳しくきく
本文:』

送れた。

129 名前:名無しさん[sage] 投稿日:2016/06/06(月) 19:34:25 ID:FP92GiL.0


おやすみ。


~~~~~~~~~~~~

130 名前:名無しさん[sage] 投稿日:2016/06/06(月) 19:34:47 ID:FP92GiL.0

なんだこれ。


震えた携帯に目をやると、メールの受信通知。
差し出し人を見れば、知らないアドレス。
ここまではまだいい。
問題なのは、その内容。

たまに来る迷惑メールの類かと思えば、何だ、これ。
誰だ、これ。

一応アドレスを確認してみれば、ちゃんとしたドメイン。
僕の使ってるこれも含めた、大手の三大携帯電話メーカーのそれだ。
しかし、だからといって、確実に安全である、と言い切れるのかどうか。
何事にも、絶対というものは絶対に存在しない。

131 名前:名無しさん[sage] 投稿日:2016/06/06(月) 19:35:14 ID:FP92GiL.0

そう、それは違う。
絶対が絶対ないなら絶対ないことも絶対にない。
揚げ足を取られる前に回収しておくスタイル。
ゲソ天は食われる前に食っておこう。

というわけで、以下の通り訂正いたします。
何事にも、100%というものは九分九厘存在しない。

九分九厘、つい先日まで、何故かクブンクリって読んでたのは内緒である。
ついでにいえば、特筆もトッピツって読んでいたのである。
なぜか変換できなくて、初めて間違いに気付いたのである。

132 名前:名無しさん[sage] 投稿日:2016/06/06(月) 19:35:51 ID:FP92GiL.0

考えてみれば、本やネットではしばしば目にすれど、自ら使う機会は意外とない言葉だ。
前後の文章や漢字の組み合わせから、直観的に意味が読み取れる熟語なので、
わざわざ調べる機会もなく、なおのこと間違いに気付くのに時間がかかった。

手前を庇ってでも言えば、漢字の読み間違いならば幾分は仕方ないかもしれない。
なにぶん、字と字の組み合わせ次第で飛んだり、跳ねたり、濁ったりする。
かと思えば、裏をかいてそのまま読ませたりもする。
挙句の果てに当て字や熟字訓。 初見で正しく読ませる気なんて彼らにはないのだ。

とはいえ、大概の漢字は大体の感じで読めば大抵合っていることが多い。
「漢字」という熟語の読み方そのものに、「フィーリングで読むのだ!」という意味が込められている、気がしなくもない。

133 名前:名無しさん[sage] 投稿日:2016/06/06(月) 19:36:45 ID:FP92GiL.0

しかし、かな文字で書いてあっても、そのまま読むことすらままならない錯覚のような言葉も、まま存在するのも事実。
コミニュケーション、シュミレーション、オードソックス。
まったく、まぎわらしい単語ばかりで嫌になる。


なんだったっけ。

134 名前:名無しさん[sage] 投稿日:2016/06/06(月) 19:37:08 ID:FP92GiL.0

そう、九分九厘。
なんともかわいらしい響きである。
萌えギャンブル漫画の主人公に据えたら絶対人気出る。

『ぜ〜んぶかけちゃえ! くぶくりん!!』
『(辛酸を)なめます! (悪条件でも)のみます! (全財産)つっこみます!』
ほらヤバいって。 絶対人気出るって。

普段は勝率9.9%のへなちょこなんだけど、覚醒すると99%モードへと変貌を遂げてめちゃめちゃ強いの。
で、めちゃめちゃかわいいの。

控え目に言って傾国。
誤解を恐れずに言えば宇宙兵器。

135 名前:名無しさん[sage] 投稿日:2016/06/06(月) 19:37:31 ID:FP92GiL.0

ライバルは、レイ・パーセントジョーンズ。
あらゆる確率を0%に変える恐ろしい奴。
夜道やら人気のない場所やら勝負をけしかけて、身ぐるみを剥いでいく恐ろしい奴。
口癖は「お前のすべてを貰うわぁ〜」とかそんな感じ。
なんやかんやで仲間になる。

最終的にはその互いの確率変動の力をもって銀河大戦にて奇跡の勝利をもたらし、
本当の意味で宇宙兵器としてその名を馳せることになるのだ。



そして平和な世界で九厘はヒロインと結ばれる。
レイは死ぬ。
完。


で、本当は何の話だったんだっけ。

136 名前:名無しさん[sage] 投稿日:2016/06/06(月) 19:37:56 ID:FP92GiL.0

ああ、ちゃんとした携帯キャリアのドメインだから危険はなさそうだけど、だった。
ついでに言えば、返信を誘うような内容でもなく、画像やリンクどころか本文すらない。
返信を誘う迷惑メール言っても、最近よく来るのは大体こんな感じだ。

『同窓会のおしらせ!

そこぱぬれしんて

同窓会を開きます、参加不参加の返信をお願いします!!
xxxxxxxx@spam.jp

そこぱぬれしんて

鈴木

そこぱぬれしんて』

毎回思うが、騙す気あるのかな、これ。
何らかの理由があるのはわかるけど、変態がパンツかぶって出歩いてるようなもんじゃないか。
あるいは、強さを過信するあまりに自らにハンデをつけた戦いを好む変態の類か。

137 名前:名無しさん[sage] 投稿日:2016/06/06(月) 19:38:21 ID:FP92GiL.0

それにしても変態の線引きは難しい。
公園をバク転しながら一周してたらちょっとカッコいいけど、でんぐり返しだったら多分変態扱いだ。 
飛び込み前転だと……微妙なラインだな。
馬鹿の紙一重は天才だと言うけど、変態の紙一重はカッコいいとかなのかもしれない。
天才なおバカや、カッコいい変態が存在するのもまた事実。
常人と一線を画する時点で、明確な定義を定めるのは難しいのかもしれない。


ええと?

ああ。


では、迷惑メール以外で知らない携帯のアドレスからメールが来る理由とは。

138 名前:名無しさん[sage] 投稿日:2016/06/06(月) 19:38:45 ID:FP92GiL.0

知り合いがアドレスを変えた。
なら名乗るはずだから、違う。
うっかりさんなら仕方ない。

誰かが知り合いのつてで僕のアドレスを聞いた。
これも名乗るはずなので、違う。
うっかりさんなら仕方ない。

間違いメール。
僕のアドレスは他の誰かとかぶるようなもんじゃないし、これも違う。
うっかりさんでもこれはない。

故意か過失か、アド変を教えてくれなかった知り合いからのメール。
うん、色々並べ立てといて今さらだが、そういう問題ではない。
そもそも文面がおかしい。

139 名前:名無しさん[sage] 投稿日:2016/06/06(月) 19:39:11 ID:FP92GiL.0

こちらから何も送っていないのに、眠いからまた、って。
一応ツッコむなら、件名欄に全文突っ込んでるのもどうかと思う。
携帯使い始めたばかりのお父さんじゃないんだから。

でも、送り主については、なんとなく察しは付いている。
確証はないけど、タイミング的に考えても、おそらく間違いないだろう。

が、だ。
互いに見ず知らずの相手に、何故いきなりこんな文を送り付けたのか。
これがわからない。
フランクなんてもんじゃあない、これでは、まるでおざなりな関係だ。
第一声から打ち解け過ぎである。

140 名前:名無しさん[sage] 投稿日:2016/06/06(月) 19:39:37 ID:FP92GiL.0

確かに、素直さんは多少アレ、と評してはいたが。
うむ、それならばこれを送り付けてくるかもしれない。
かもしれないけども。
じゃあ、だとしても、どうすればいいのだろう。

うん、どうしようもないよな。
それなら、別にどうもしなくていいのかな。
寝るみたいだし、今ここで下手に返すと安眠妨害の恨みを買うかもしれないし。

喧嘩は売らない、恨みは買わない。
わざと負けない、ただでは起きない。
僕のモットーだ。

141 名前:名無しさん[sage] 投稿日:2016/06/06(月) 19:43:03 ID:FP92GiL.0

というかいくら日曜とはいえ、こんな真っ昼間に寝るとかどうなんだろう。
色々思い浮かべていたJD像がどんどん崩れていく。

なんにせよ、相手先が確定したわけではない。
仮に返信するにしても、はいわかりました、くらいしか思いつかない。
それに万が一、新手の迷惑メールだったら、返してしまうとエラいことになる。

ここはとりあえずスルー。
戦略的黙殺。
そう、沈黙は肯定である。

ただし、放課後に好きな異性に告白した場合のように、例外もある。
沈黙の校庭ってやかましいわ。

142 名前:名無しさん[] 投稿日:2016/06/06(月) 19:43:26 ID:FP92GiL.0

まあ、そんなわけで、ここは様子を見るコマンドが正解択であろう。
また、と言うくらいなんだから、しばらく待てば、なにかしら送ってくるのだろうし。
その時にでも、初心者でもわかるメールの作法というものをレクチャーしてくれよう。

……というか早く出掛けよう。
スゴロクだったらダイスを振るごとに“一回休み”状態だ。
そういう盤面なのか、単に出目が悪いのか。
ファンブルらしき状況に陥ってないだけ、まだマシか。
靴が爆発するとかはやめてくれよ。
とにも、かくにも、歩を進めなければ、何にもならぬ。

143 名前:名無しさん[] 投稿日:2016/06/06(月) 19:43:53 ID:FP92GiL.0

雲行きの怪しい前途に不安を覚え、思わず空を見上げれば、清く柔らな青と白。
何をしようと外に出たかを今一度、思い返してみたならば、一抹の淡い憂いはただ軽風の前に散り。
携帯を指先一つで寝かしつけ、するりとポッケに滑り込ませて、そこでようやく僕の手番が回りに回ってやって来た。


::::::::::::::::::::::::

144 名前:名無しさん[] 投稿日:2016/06/06(月) 19:44:23 ID:FP92GiL.0

夜遅くまで開いているお店というのは、本当に助かる。
大型ディスカウントストア、「ジャンヌ・ダ・ルク」、午前三時まで営業、年中無休。
素晴らしい。
大きな駅が最寄りであるという恩恵、思った以上の価値があるのかもしれない。
今後大学生活が始まれば、一層そのありがたみを噛みしめることになるのだろう。


結果から言おう。 十時間をゲーセンに費やした。
超楽しかった。
これから買い物をする次第だ。

146 名前:名無しさん[sage] 投稿日:2016/06/06(月) 19:45:37 ID:FP92GiL.0

( ・∀・)+「っはああああああああ!!」

いや、違うんだ。 まず聞いてほしい。
ほんの出来心だ、魔が差した。
本当に仕方なかったと言うほかない。
久々に気合入れてやったもんだから、ついつい夢中になってしまって。

三時間前くらいからあと一回、あと一回だけと考えてはいた、の、だが。
気付けば閉店時間である今の今まで居座ってしまった。
腕と指、ついでに立ちっぱなしだった足腰にも限界が来てはいるが、心はもう最高に満たされていた。

147 名前:名無しさん[sage] 投稿日:2016/06/06(月) 19:46:25 ID:FP92GiL.0

時間にして六百分、金額にして六千円、プレー数にして約六十回。
我ながら、随分と遊び倒したものだ。

(#・∀・)(あれマジわけわからん。 絶対に許さん)


復習しておきたいところを振り返りつつ、店外へ。
既に夜の帳は下りていて、あちこちのネオンが街灯よろしく、あわよくば通行人を惹き込まんと、誘蛾灯顔負けに眼を爛々と光らせていた。

昨日散策した駅前の大通り。
夜になればまた、顔が変わるものだ。
店の絶対数は昼夜変わらないはずなのに、こうも景色が変わるものか。
どちらが本性なのかはともかくとして、絶えず元気を振りまいているつくづくの働き者である。
ちなみに駅から見て、家に帰る方が北口で、栄えているこちら側は南口だ。

148 名前:名無しさん[sage] 投稿日:2016/06/06(月) 19:50:27 ID:FP92GiL.0
23時も半ば。 この素晴らしき日曜日も、あと小半刻もすればその文字の両端が垂れ下がる。
だらんと下がれば、月曜日。 憂鬱の使者。
そんな明日が控えているからであろうか、そこまで人は多くない。

居酒屋のキャッチらしきお兄さんもちらほらいるが、未知の言語で談笑している。
上井君の犬がどうとか聴こえるが、これが大学生の若者言葉というやつか。
僕も近いうち、ああいう感じで未来の友達と盛り上がれるのだろう。
その兄ちゃんズの一人がハンバーガーにかぶりつくのを見たとき、ここぞとばかりに胃が鳴いた。

そうか。 考えてみれば、今日は何にも食べていなかった。
というか、昨日も最後に何を口にしたかも覚えてないな。

これは、下手をすれば歩くたびにHPがこぼれ落ちていくやつだ。
そうと気付くと、体もお調子のいいもので、とたんに力が抜けていく、ような気がしてくる。
段々とめまいも、してくる、ような気もしてくる。

149 名前:名無しさん[sage] 投稿日:2016/06/06(月) 19:53:34 ID:FP92GiL.0

はいはい、わかったわかった。 ご飯にしましょう。
そう自分に言い聞かせると、飲食店を物色する力が戻ってくる。
本当にお調子のいいもので。

さて、それならば買い物前にいっちょガッツリ入れようか、と。
まだ成長期の胃袋に適うお店を探すため、少し目線を上げた時。
鞄のおなかも小さく鳴いた。

150 名前:名無しさん[sage] 投稿日:2016/06/06(月) 19:54:27 ID:FP92GiL.0


差し出し人:ちょっと便利な異能力、のようです。
件名:    第五話
本文:    目的の優先順位
        おしまい

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