ξ゚听)ξこちら妖の便利屋兼退治屋のようです( ^ω^)
番外編3



64 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2013/06/12(水) 21:56:53.12 ID:fyi5f5Pq0
番外編3【過去】



 赤子の頃、オレは幸せだった。
 小さな村の百姓の家に生まれ、貧しいながらも、何とか生きていた。

 少しばかり成長した頃、オレの周りでは不思議なことが起こった。
 何故だか火が大きくなったり、畑で花が咲き乱れたり。


 「どうしてかしらね」

 「この子は仏さんの生まれ変わりかもしれん」


 家族は単純に喜んだ。
 少しの薪で火が足りるし、収穫も増える。
 自分ではよく分からないが、家族が喜ぶのだからきっといいことなのだと思っていた。
 

66 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2013/06/12(水) 21:57:46.31 ID:fyi5f5Pq0
 

 少年になった頃、それは一気に姿を変えた。


 「うわっ!?」

 「おい壊すなよ」

 「いや、ちょっとしか力入れてないのに……」


 友達が力持ちになったり。


 「川の流れが急になっとる!」

 「雨が降ったらまずいぞ、土持って来い!」


 川の水量が増えたり。


 人にも自然にも、与える影響が大きくなっていた。

 

68 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2013/06/12(水) 21:58:45.97 ID:fyi5f5Pq0
 
 「あいつ」

 「毒男だ」

 「あいつのせいだ」

 「祟りだ」


 疎まれるのは、当然だった。


川 ゚ -゚)「なあ」


 当然、だったのに。


川 ゚ -゚)「これ、食べるか?」

('A`)「……」


 この頃オレは、すっかり人と話すのが怖くなっていた。
 山の方の、出来るだけ人の来ない場所に毎日行っていた。
 

70 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2013/06/12(水) 21:59:38.83 ID:fyi5f5Pq0
 
 何が影響を及ぼすか分からなかったから。
 オレの声かもしれない。手かもしれない。
 もしかしたら、オレの存在そのもの。

 ……それは後に、正しかったと知る。


川 ゚ -゚)「おい、手が疲れた」

('A`)「あ、え……ご、ごめ」

川 ゚ -゚)「一緒に食べよう」

('A`)「……う、ん」


 結局、寂しさが怖さに勝った。
 オレは毒男。いつしかそう呼ばれるようになって、慣れたつもりがそうじゃなかった。

 それから彼女は、度々オレの隠れ家を訪れた。
 作物が実った。
 もうすぐ誰それの祝言がある。

 ぽつぽつとそんな話をし、時には一緒にウサギの罠を仕掛け、飯を食う。
 

71 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2013/06/12(水) 22:00:53.06 ID:fyi5f5Pq0
 
('A`)「どうして、一緒にいてくれるの?」


 そう問いかけたのは、季節が一つ、巡った頃。


川 ゚ -゚)「好きだからさ」


 それは非常に簡素で、だが納得してしまう響きを持った言葉だった。


川 ゚ -゚)「……お前は?」


 どこか恐々と問う声。


('A`)「……す、きだ」


 オレの声も、震えていた。

 オレの名は毒男。彼女の名は空。
 彼女はオレの毒をものともせず、空に散らすように、受け入れてくれた。


 オレ達が共に村を出たのは、それからすぐのことだった。
 

72 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2013/06/12(水) 22:01:49.53 ID:fyi5f5Pq0
 
 旅をする内に、少しずつ自分の力がなんなのか分かるようになった。
 恐らくは、そいつの「本質」を引き出す力。
 花は咲くし、川は流れる。
 力持ちだったり、声が通ったり。

 それはオレと、傍に居る空にも例外なく及んだ。


('A`)「……なあ」

川 ゚ -゚)「何だ」

('A`)「どうして、オレに話しかけたの?」

川 ゚ -゚)「随分と今更だな」

('A`)「……だって」


 少しずつ身体が変化していった。
 小さく、丸く、手足は細長く。
 空は物を自分の大きさに変化させることが出来るようになった。

 ――妖に、近づいていた。

 

73 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2013/06/12(水) 22:02:45.05 ID:fyi5f5Pq0
 
川 ゚ -゚)「……気になってたんだ、前から」

('A`)「前?」

川 ゚ -゚)「目が、追うんだ。どうしてかは分からなかった。
     お前と話してみたら、落ち着くから、それでいいんだと思った」

('A`)「……そっか」


 そっと手を伸ばす。
 空が手を重ねた。


('A`)「一緒に、来てくれる?」

川 ゚ -゚)「お前となら、どこへでも行くさ」


 それでいい。
 妖でも、人でも。
 理由がなくたって、今オレは空が好きで、
 ……それで、いい。

 

74 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2013/06/12(水) 22:04:06.51 ID:fyi5f5Pq0
 
( ^ω^)「ドクオー、起きるおー」

('A`)「……んあ?」

ξ゚听)ξ「やっと起きたあ」

('A`)「ツン、来てたんだ」

( ^ω^)「だお! 遊ぼうお!」

ξ*゚听)ξ「お誘いに来たの」

('A`)「うん、いいよ」

( *^ω^)「じゃあじゃあ、今日はかくれんぼだお!」

ξ*゚听)ξ「その後はおままごとがいい!」

('∀`)「うん。順番に遊ぼう」


 時が経った。
 長い長い時が。
 オレもクーも、自分の力を制御出来るくらいには。


( ФωФ)「ドクオ」

('A`)「ん?」

75 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2013/06/12(水) 22:04:43.18 ID:fyi5f5Pq0
 
( ФωФ)「クーが来ているのである」

川 ゚ -゚)「やあ」

ξ*゚听)ξ「クー! クーも一緒に遊ぼう!」

川 ゚ -゚)「ああ、いいぞ。全部運んだからな」

( *^ω^)「やったおー!」

('A`)「はしゃぎ過ぎると転ぶぞ?」

川 ゚ -゚)「さて、庭に行くか」

⊂( ^ω^)⊃「競争だお! ブーン!」

ξ゚听)ξ「あっブーンずるい! 待ってよー!」

川 ゚ -゚)「……競争するか」

('∀`)「……そうしよっか」


 穏やかな、春の日の、一幕。


 おわり
 



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