ξ゚听)ξこちら妖の便利屋兼退治屋のようです( ^ω^)
第4話



2 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2013/06/12(水) 20:53:07.44 ID:fyi5f5Pq0
o川;゚ー゚)o「きゃああああ何あれ何あれえええええ」


 キュートが叫ぶ。


( ;^ω^)「とにかく逃げるお!」


 ブーンが促す。


(;`・ω・´)「ど、どこまで」


 シャキンが尋ねる。


ξ;゚听)ξ「あいつが追いかけて来なくなるまで!」


 そして私が答える。

 ああもう、何だってこんな事態に巻き込まれているのか。
 後ろからぎしぎしと金属の軋む音がした。


.

4 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2013/06/12(水) 20:54:02.68 ID:fyi5f5Pq0
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ξ゚听)ξこちら妖の便利屋兼退治屋のようです( ^ω^)

            【第4話】


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5 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2013/06/12(水) 20:55:42.74 ID:fyi5f5Pq0
 進級した春の日のこと。
 私とブーンは、喫茶店「おばけやしき」を訪ねていた。


(´・_ゝ・`)「おや」


 からん、とベルを鳴らして入ると、懐かしい顔があった。


( ^ω^)「お? ……あ、前に依頼してくれた」

(´・_ゝ・`)「お久しぶりですね」

ξ゚听)ξ「そうですね」


 以前、クーの紹介で依頼を受けた妖だ。
 ここで報告と報酬の受け渡しをしたのだった。

7 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2013/06/12(水) 20:57:14.67 ID:fyi5f5Pq0
( ´∀`)「デミタスさん、あれからちょくちょく来てくれてるモナ。
      もう常連さんモナね」

(´・_ゝ・`)「はは、思いの外コーヒーが美味しかったので」

<_プー゚)フ「だろお? ほい、おかわり〜」

(´・_ゝ・`)「ああ、どうも」

ミ,,´∀`彡 モサモサ
 ';´∀`'; モサー


 よく見ると、膝の上に謎生物――ブーンはもっさりさん、またはモサーと呼んでいる――がいた。
 触り心地よさそう。

 エクストも普段より楽しそうにしている。
 普段から楽しそうじゃないことはないのだが、やはり妖という括りのおかげだろうか。


( ^ω^)「そうだ、……、デミタスさん」

(´・_ゝ・`)「はい?」

( ^ω^)「報酬の石、ありがとうございましたお」


 ぺこりとブーンが頭を下げる。
 何度か助けられました、と添えて私も軽く会釈した。

8 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2013/06/12(水) 20:59:05.62 ID:fyi5f5Pq0
.

(´・_ゝ・`)「正当な報酬ですよ。が、役に立ったのなら私も嬉しいです」


 言って、私の手元とブーンの胸元を順番に見る。
 少し笑ったようだった。


(´・_ゝ・`)「細工や加工の方も、いい腕をされているようだ」

ξ゚听)ξ「……ありがとう、ございます」


 腕を褒められるのは、素直に嬉しい。
 もしかしてブーンのことも、と思ってしまって、少しだけ間が空いてしまったが。


(´・_ゝ・`)「私たちは石を抱いて生まれ、石と共に成長します。
      石は私たちの命と言ってもいい。時折削ったり、自然と欠けたり。
      欠片であっても、妖力が詰まっています」


 相性がよかったのですね、と元依頼人――デミタスは続けた。
 ロマネスクさんとヒート。彼らからも、同じような見解を聞いた。

.

10 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2013/06/12(水) 21:01:08.74 ID:fyi5f5Pq0
.

 ドアのベルが鳴る。


( ´∀`)「いらっしゃいませモナ」

o川*゚ー゚)o「こっんにっちはー」

ξ゚听)ξ「……あ」


 入ってきたのは、同じクラスの素直キュートと埼シャキン。
 どうしてここに。


(`・ω・´)「津出さんに内藤くんじゃないか」

o川*゚ー゚)o「あーほんとだー。やっほー」

( ^ω^)「お、こんにちは」

ξ゚听)ξ「奇遇ね」


 言いながらデミタスの方を窺うと、もさもさ達がカウンターの中に入る所だった。
 エクストは隠れてない。
 ……まあ視える人じゃないと視えないから、大丈夫かしら。

 私とブーンは、四人掛けのテーブル席に座った。

12 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2013/06/12(水) 21:02:21.77 ID:fyi5f5Pq0
 
o川*゚ー゚)o「やっぱりツンちゃん達、ここの常連なんだねー」

ξ゚听)ξ「ええ、まあ」


 言いながら二人は、というかキュートは私の隣に座った。
 「あっ座るね!」と事後承諾もいい所な明るい声がした。


( ^ω^)「やっぱり?」

o川*゚ー゚)o「ほら、前にこの店の前で会ったし。
       おいしいのかなーって思って来てみたんだ」

( ^ω^)「うん、ここは美味しいお」

( ´∀`)「ありがとモナ。ご注文、お決まりモナ?」


 カウンターからモナーが出てくる。
 そういえば、私たちもまだ注文していなかった。
 メニューにちらりと目を通す。
 

15 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2013/06/12(水) 21:04:24.01 ID:fyi5f5Pq0
 
(`・ω・´)「カフェラテを」

o川*゚ー゚)o「あっまだ決めてない! えっとーアイスティー!」

( ´∀`)「モナモナ。ツンちゃんとブーンくんは?」

ξ゚听)ξ「ホットコーヒーで」

( ^ω^)「僕もそれでお願いしますお」

( ´∀`)「モナ、じゃあ少し待っててモナね」


 モナーがカウンターの中に戻る。


<_プー゚)フ〜□つ

           □つ
<_プー゚)フそ 彡∩(´∀` )


 エクストが浮かしたカップを素早く奪い取っていた。
 意外にあれで、常識人な所はあるのだ。

 

16 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2013/06/12(水) 21:06:12.97 ID:fyi5f5Pq0
 
o川*゚ー゚)o「ツンちゃん達居てよかったー、話あったの」

ξ゚听)ξ「何かしら」

o川*゚ー゚)o「肝試ししようよ!」

( ^ω^)「えっ」


 ……今は春だ。
 進級したばかりの。


o川*゚ー゚)o「内藤くんもさー、同じクラスになったし、他にも何人か誘ってるの!」

(`・ω・´)「別にカラオケでもボーリングでもいいと思うんだけど、
       肝試しがいいってきかなくて」

ξ゚听)ξ「……素直さん、どうして肝試し?」

o川*゚ー゚)o「キューちゃんって気軽に呼んでー、こいつはシャキンで」

(`・ω・´)「だから何で、俺は呼び捨てなんだ」


 ごめんね、とシャキンが言う。
 それよりも理由が聞きたい。
 

17 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2013/06/12(水) 21:07:40.09 ID:fyi5f5Pq0
 
o川*゚ー゚)o「ほら、男女の仲を深めるには吊り橋効果がいいって言うじゃん。
       クラスの仲を深めるにも、いけるんじゃね!? って」

( ^ω^)「ああ……なるほど」

o川*゚ー゚)o「そんな訳で、二人も参加してね!」

ξ゚听)ξ「……、」


 別に、肝試しなんてする必要はない。
 『いる』と知っている。
 行かないと即答しなかったことに、意味はない。
 ただ、


( ´∀`)「お待たせモナ」

o川*゚ー゚)o「わーい! どうもでーす」


 彼女が余りにも、きらきらした目で見てくるから。

 

18 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2013/06/12(水) 21:09:03.14 ID:fyi5f5Pq0
 
( ^ω^)「……ツン」


 遠慮がちにブーンが口を開く。


ξ゚听)ξ「何?」

( ^ω^)「僕……参加、してみたいお」

(`・ω・´)「いいのかい?」

( ^ω^)「うん。……ツンがよかったら、一緒に参加したいお。きっと、楽しいから」

o川*゚ー゚)o「ツンちゃん!」


 三人の視線が一気に集まる。
 ……もう。
 仕方ないわね、なんてちょっとため息をついてみせた。


ξ゚听)ξ「行きたいなら、いいわ」

o川*゚ー゚)o「ほんとー!? やったあ」

(`・ω・´)「ありがとう、ツンさん。あ、俺もツンさんて呼んでいいかな」

ξ゚听)ξ「……まあ、別に」

20 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2013/06/12(水) 21:10:33.40 ID:fyi5f5Pq0
 
o川*゚ー゚)o「じゃ、ケータイ。赤外線ー」

( ^ω^)「おっ」


 キュートがデコデコした携帯電話を取り出す。シャキンはスマートフォンだった。
 慣れた様子で、キュートは手早く操作をすませた。


(`・ω・´)「ごちそうさま」

( ´∀`)「お粗末様モナ」

(`・ω・´)「おいしかったですよ」

( ´∀`)「モナモナ」

(´・_ゝ・`)「私もごちそうさまでした。では」

( ´∀`)「またお越し下さいモナー」


 デミタスが席を立つ。
 静かだったのは、正体が万一にもバレないように、ということだったのだろう。
 

21 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2013/06/12(水) 21:12:06.99 ID:fyi5f5Pq0
 
(´・_ゝ・`)"ペコ

( ^ω^)"

ξ゚听)ξ"


 軽く目礼を交わし、彼は去っていった。


o川*゚ー゚)o「知り合いー?」

ξ゚听)ξ「常連だから」

o川*゚ー゚)o「そーなんだー」

(`・ω・´)「キュート、俺はそろそろ帰るけど」

o川*゚ー゚)o「あ、じゃあ私も。後でメールするね!」

(`・ω・´)「また学校で」

o川*゚ー゚)o「ばいばーい!」


 そうして二人は騒々しく帰って行く。
 残ったのは、机の上のケータイに二人分のアドレス。
 

22 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2013/06/12(水) 21:13:24.05 ID:fyi5f5Pq0
 
( ´∀`)「お友達、楽しそうな人モナね」

ξ゚听)ξ「……そう?」


 何故か嬉しそうにモナーが言う。


( ^ω^)「うん、楽しい人たちだお」


 ブーンも嬉しそうに言う。そうね、騒がしい人たちだ。
 でも、嫌いではない。

 まだ熱の残るコーヒーを、飲み干した。

 

23 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2013/06/12(水) 21:14:32.53 ID:fyi5f5Pq0
* * * * *



 あっという間に時間は過ぎ、肝試し当日。


o川*゚ー゚)o「皆、参加ありがとー!
       じゃあ早速、第一回どきどき☆春の肝試し大会、はっじめっるよー!」


 キュートの無駄にテンションの高い挨拶で、肝試しは始まった。
 集まったのは他クラス含めて10人程。
 学期末にはクラス全員でやろうと、始まったばかりにも関わらず、そんなことを言っていた。


o川*゚ー゚)o「ツンちゃーん、よろしくねー」

ξ゚听)ξ「ええ」


 そして男女混合クジ引きの結果、私はキュートと。


(`・ω・´)「内藤くん何番? 俺は5」

( ^ω^)「おっ、じゃあ崎くんと一緒だお」


 ブーンはシャキンとペアになった。

24 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2013/06/12(水) 21:15:54.18 ID:fyi5f5Pq0
 
 会場は学校の裏山。
 大きな一本杉があり、その近くの小さな木に紐を結びつけてくる。
 帰りは道を変えるのだが、塚が並んでいる所があり、その数を数えてくるのもルールの一つだ。

 ……滅多なことをしなければ、住んでる者に怒られることはないと思うけど。


o川*゚ー゚)o「あ、5分経ったね。行こっか。楽しみだねー、ツンちゃん」

ξ゚听)ξ「……そうね」


 彼女は果たして、『滅多なこと』をしない人物だろうか。
 しない、と信じたい。

 

25 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2013/06/12(水) 21:17:29.87 ID:fyi5f5Pq0
* * * * *



 ざくざくと山道を歩く。
 人がよく通っているのだろう、意外にもちゃんと道になっていた。
 時折、木の葉のざわめく音が心地よい。


o川*゚ー゚)o「うっわー、予想以上に暗いー」

ξ゚听)ξ「夜だもの」

o川*゚ー゚)o「こわー。何か出そう」

ξ゚听)ξ(出るのを期待して肝試しするんじゃないのかしら)

o川*゚ー゚)o「ねえねえ、ツンちゃん私服可愛いね」

ξ゚听)ξ「……そう?」


 今日は制服でも仕事着でもなく、薄紅のチュニックとジーンズだ。
 仕事着は、所謂ゴスロリに近い。
 趣味といえば趣味だけど、お父さんとお母さんの教えでもある。

 『人形』を使う時、礼を表す為だと。
 お父さんはスーツを、私は人形が着ているようなドレスを着る。
 何かを封じ込める為の人形もそうだし――ブーンのことでもある。
 だからこそ余計に、私は、飾るのだ。

26 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2013/06/12(水) 21:19:23.50 ID:fyi5f5Pq0
 
o川*゚ー゚)o「ツンちゃん色白いし、赤似合うねー。いいなー」

ξ゚听)ξ「素直さんも、白いじゃない」

o川*゚ー゚)o「あーまた! 名前で呼んでってばー。
       言ってみてー、キューちゃん」

ξ゚听)ξ「……」

o川*゚ー゚)o「りぴーとあふたーみー、キューちゃん!」

ξ゚听)ξ「…………キュート」

o川*゚ー゚)o「おっけえええええい!!」

o川*^ー^)o「やったあ、ようやく呼んでくれたー」


 どうしてそんなに。
 根負けして、呼んだだけなのに。


o川*^ー^)o「よーし進もうー!」


 ……嬉しそうだから、いい、かしら。
 

29 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2013/06/12(水) 21:20:44.23 ID:fyi5f5Pq0
* * * * *



(`・ω・´)「そろそろ半分くらいか」


 ふと崎くんが呟いた。
 懐中電灯が辺りを照らしている。


( ^ω^)「崎くんはこの山、詳しいのかお?」

(`・ω・´)「昔から遊び場でね。そういえば内藤くん、ツンさんにはブーンって呼ばれてるよね」

( ^ω^)「お? 小さい頃からのあだ名なんだお」

(`・ω・´)「何でブーン?」

( ^ω^)「ああ……僕、走るのが好きだったんだお。こう――」

⊂( ^ω^)⊃「ぶーん、って。一人称もブーンだったから」


 だから、ツンは僕をブーンと呼ぶ。
 モナーさんやエクストはツンの呼び方に影響されてるだろうし、
 クーやデルタさんは昔から知っている。
 ――ドクオもだ。
 

30 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2013/06/12(水) 21:22:51.41 ID:fyi5f5Pq0
 
(`・ω・´)「なるほど。俺もブーンって呼んでいいかな」

( ^ω^)「勿論だお!」

(`・ω・´)「俺も名前で呼んでくれていいから」

( ^ω^)「おー、じゃあシャキンくんって呼ぶお」

(`・ω・´)「そういえば、走るの好きって、陸上部とかには入らないのかい?」

( ^ω^)「……お」


 それは――便利屋をやっているからだ。
 走るのは、好きだ。
 でも、それ以上にドクオを、自分の身体を、ツンの心を――何とかしたい。
 放課後の時間は、ツンとの時間でもあるのだ。


( ^ω^)「……うん、今はいいんだお。
      シャキンくんは剣道部だおね?」

(`・ω・´)「ああ、よく知ってたね」

( ^ω^)「校内新聞の部活紹介で――」


 見た、と言いかけたその時。
 前方から小さな光に照らされた。

31 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2013/06/12(水) 21:24:21.92 ID:fyi5f5Pq0
 
(`・ω・´)「眩しいな」

( ^ω^)「懐中電灯? 道間違えたのかお」

(`・ω・´)「いや、前の組はキュートだから、間違えないと思うんだが――」


 話している間に光はどんどん近づいてくる。
 何かあったのか、とようやく思い当った時、既に光は間近にあった。


o川;゚ー゚)o「ああー! シャキンにブーンくーん!!」

(`・ω・´)「おい、どうs」

ξ;゚听)ξ「走って!」


 何が、と見つめたその先に、月明かりに不気味に照らされた、金属質が、そこにあった。
 ぎしぎし、嫌な音をたて、まるでクモのように。
 そのくせ硬質で、この山にまるで相応しくない。
 …………、


( ;^ω^)「「はぁ!?」」(`・ω・´;)


 次の瞬間我に返った僕たちは、走り出していた。
 

33 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2013/06/12(水) 21:25:56.79 ID:fyi5f5Pq0
* * * * *


 ガシャン ガシャン ガシャ...


o川;゚ー゚)oゼエハア

(;`・ω・´)ハッ

( ^ω^)(……行ったかお?)

ξ゚听)ξ(……みたいね)ハァ


 茂みの中に身を寄せ合い、何とかアレから隠れることが出来た。

 何か出るか、とは思った。
 思ったけど、妖でも幽霊でもないものが出るなんて、ふざけんな。


( ^ω^)「二人とも大丈夫かお?」

(`・ω・´)「ああ、俺は……」

o川;゚ー゚)bゼーハーゼーハー

ξ゚听)ξ「大丈夫そうね」
 

36 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2013/06/12(水) 21:28:20.43 ID:fyi5f5Pq0
 

 キュートが喋らないと本当に静かだ。


(`・ω・´)「あれ、なんだろう。とにかく危なそうっていうのは分かったが」

ξ゚听)ξ「そうね。逃げた方がいいわ」


 あの機械? の目的は分からないが、彼らを巻き込む訳にはいかない。
 出来ることなら、私たちの力のことは知らないで欲しい。


ξ゚听)ξ「二手に分かれて山を下りましょう」

o川*゚ー゚)o「えっ? バラバラに?」

ξ゚听)ξ「あいつの狙いを逸らした方がいいと思うわ」

( ^ω^)「僕たちが囮になるから、二人はとにかく山を――」

ξ゚听)ξ(っそんな言い方したら――)

o川*゚ー゚)o「駄目だよそんなの!!」


 ……ほら。
 考えは、ブーンと同じ。だけど、そんな風に正直に言ってしまっては駄目だ。
 

37 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2013/06/12(水) 21:30:04.04 ID:fyi5f5Pq0
 
(`・ω・´)「俺も同意見。皆で逃げた方がお互い助けられる」

o川*゚ー゚)o「危ないよ、あれよく分かんないけど駄目だよ!」

( ^ω^)「う、いや……」


 ちらりとブーンがこちらを窺う。
 馬鹿、と唇だけ動かした。


( ´ω`)「……ごめんお」


 小さくブーンが謝る。
 とにかく二人を説得しないと――



 ぎぃいぃぃ。


 軋んだ音。
 それはまるで鳴き声のようだった。

 

39 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2013/06/12(水) 21:31:17.25 ID:fyi5f5Pq0
 
ξ゚听)ξ「――アイツ!」

o川;゚ー゚)o「きゃああああ来たああああああ!!」

(;`・ω・´)「お前の声じゃないのか、多分!」

o川;゚ー゚)o「ごごごごごめぇぇぇん!!」


 まずい。
 まだ逃がしてないのに、今から別れた所で、もし二人の方に行ってしまったら――
 ――駄目だ。
 絶対に駄目。


( ^ω^)「ツン!」


 ブーンが私たちとアイツの間に立ちふさがり、強く私の名を呼ぶ。
 そうね。
 もう、仕方がない。

 

40 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2013/06/12(水) 21:32:28.99 ID:fyi5f5Pq0
 
ξ゚听)ξ「――ブーン!」


 その呼ばう声だけで。


( ^ω^)「――うん!!」


 ブーンは、分かってくれる。
 手足が光った、と思った瞬間、既にブーンはアイツに飛びかかっていた。

 親指を犬歯で傷つける。溢れ出る血を唇に引いた。
 ――せめてもの装いだ。

 次いで紙に指を走らせ呪を描く。


o川*゚ー゚)o「ぶっ、ブーンくん、え」

ξ゚听)ξ「これ持ってて」

(`・ω・´)「え、あ、はい」


 動揺している二人にそれを押し付ける。
 妖用の結界がアイツ相手に通じるか分からないが、やるだけやってやる。

 ぎぃん、とブーンがアイツと戦う音が、断続的に響いている。

41 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2013/06/12(水) 21:34:06.84 ID:fyi5f5Pq0
 
* * * * *


 暗い夜道に、光が残像を描いて走る。
 クモのようなアイツは、ブーンの二倍はある。

 アイツの脚は思ったよりも細かく、早い。
 そして硬い。
 ブーンとアイツが組み合う度、金属質の音が木霊する。


o川;゚д゚)o「何これぇ? ええええ……シャキンー」

(;`・ω・´)「俺も分からん」


 後ろの二人は変わらず動揺している。
 無理もない。


ξ゚听)ξ「悪いけど、出来るだけ動かないで居て」

o川*゚ー゚)o「うっ、うん!」


 こうなってしまっては留まって貰った方が守りやすい。
 キュートは駄々もこねず、シャキンと身を寄せ合っている。
 助かる。
 

42 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2013/06/12(水) 21:35:21.09 ID:fyi5f5Pq0
 
( ^ω^)「ツンっ!!」


 ブーンの切迫した声が聞こえた。


ξ゚听)ξ「伏せて!」


 反射的に叫んで自分もしゃがむ。
 アイツの長い脚が一本、横に薙いだ。
 伏せた二人の頭上、何の抵抗もなく葉と枝をまき散らして通り過ぎた。

 結界は、やはり効かないか。
 と、思ったのも束の間、脚の関節に当たる部分がぱっくりと開く。
 白黒の光が渦を巻き――球となってこちらに打ち出された。


ξ゚听)ξ「くっ」


 一発目は避けた。
 二発目、この位置は――二人に当たる!
 

44 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2013/06/12(水) 21:37:29.92 ID:fyi5f5Pq0
ξ;゚听)ξ「避けて!」

o川;゚ー゚)o「えっ」

(;`・ω・´)「キュート!!」


 シャキンがキュートを引き倒す。
 私はその前に駆け寄る。
 考える間もなかった。

 二発目の白黒が発射され。
 

( ^ω^)「てやああああっ!!」


 ブーンがそれを弾いた。
 弾かれた球は私の頭上を通り――ばちんと音を立て、結界に拒まれた。


( ^ω^)「大丈夫かお!」

ξ゚听)ξ「ええ。……結界が」


 ブーンが再び飛び出し、その身体を貫こうとする脚を防ぎ、弾く。
 何度も。何度も。
 

45 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2013/06/12(水) 21:39:07.63 ID:fyi5f5Pq0
 
 結界が、効いた。
 脚には効かなかったのに、白黒の球には効いた。
 つまりあの白黒は、霊力だとか妖力で出来ている、ということだ。

 だが結界が効くなら私は二人から離れた方がよさそうだ。
 流れ弾はともかく、脚の方が二人に当たったら洒落にならない。


( ^ω^)「たぁ!!」


 そうして数分、いや二分も経っていない間に攻防は激化していく。

 ブーンを貫こうと脚が伸びる。
 同時にこちらにも伸びる。
 何故か私の脇を通った。
 ブーンに対しては執拗に身体の中心を目がけているのに、私にはさっきからこの調子だ。

 何故?
 狙いを外してるとも考えにくい。
 白黒の球は確実に私を狙っているのに。

 ……何か、条件がある。
 狙っているものがある?

 

46 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2013/06/12(水) 21:41:12.91 ID:fyi5f5Pq0
 
 反射的に腕を見る。
 手首には青い石のブレスレット。
 ブーンの胸元には青い石のペンダント。


(´・_ゝ・`)『欠片であっても、妖力が詰まっています』


 ――妖力か!


 私たちに大分馴染んで来ているが、元は妖の命。
 それを狙ってる。

 思い出すのはヒートの所で出会った、あの能面のような、金属の腕をした男。
 あれは捉えた土地神達をラインで繋いでいた。
 そしてヒートを狙っていた。
 もし同じならば。


ξ゚听)ξ「ブーン! どこかに妖が捕らえられてるかも!」

( ^ω^)「おっ!」


 頷いてブーンは飛び上がる。
 そのままアイツの上に乗ろうとして、クネクネ曲がる脚に阻まれた。
 

49 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2013/06/12(水) 21:42:57.55 ID:fyi5f5Pq0
 
 どこだ。
 どこに捕らえている。
 その位置はどうしたら分かる。
 そもそも、どこから――


ξ゚听)ξ「――キュート!」


 はっと思い出した。


ξ゚听)ξ「塚って、由来とかある!?」

o川*゚ー゚)o「あ、う、ん。昔、この山で悪さしてた妖怪を、偉いお坊さんが封じたって」


 肝試しの帰り道、寄ることになっていた塚。
 そこのなら。
 土地に属するなら、あのクモもどきなんかより、そっちに牽かれる筈だ。
 

50 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2013/06/12(水) 21:43:42.60 ID:fyi5f5Pq0
 
ξ゚听)ξ「……塚まで案内してくれる!?」


 もしそこの妖じゃなかったら。
 二人に何かあったら。

 ……例え違っていても、絶対に二人は守って見せる。


o川*゚ー゚)o「……分かった! ツンちゃん信じるよ!」

(`・ω・´)「ああ。こっちだ!」


 二人は問い質すこともなく、走り出す。
 ブーンに声をかけて、二人を追いかけた。
 

51 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2013/06/12(水) 21:45:00.93 ID:fyi5f5Pq0
* * * * *


(`・ω・´)「ここだ! あの三つ塚!」


 シャキンが指さした先に、石が三つ並べてある。
 これが塚。


( ^ω^)「ぅわっ!」


 最後尾を走っていたブーンが追い付く。
 複数の脚がブーンを狙っていた。

 塚の前で人形を取り出す。
 石の欠片と土を塗りこむ。
 略式どころか乱暴もいい所だが、アイツが私の人形と同じように妖を封じ込めるなら、
 私の方が強い。
 ――強いに決まってるんだから。


ξ゚听)ξ「――来たれ!」


 人形を掲げる。

 

52 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2013/06/12(水) 21:45:55.97 ID:fyi5f5Pq0
 

 がち、


 明らかにさっきまでとは違う音がする。


 がた、がたがた


 それは――アイツの背中から、一部が盛り上がっている音。


( ^ω^)「はっ!!」


 気合を込めたブーンの蹴りが、アイツの脚を薙ぎ払う。
 その隙にブーンがこちらに飛んで、私の近くに着地した。


⊂( ^ω^)「ツン!」


 アイツの方を向いたまま、ブーンは手を私に伸ばす。


ξ゚听)ξ⊃「いってきなさい!」
 

54 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2013/06/12(水) 21:47:58.94 ID:fyi5f5Pq0
 
       +
ξ゚听)ξ⊃⊂( ^ω^)

           +
ξ゚听)ξ⊃ 三⊂( ^ω^)
          +

 光の残滓。
 態勢を立て直しかけたアイツの上に、ブーンは乗る。

 一閃。
 硬いアイツの背、盛り上がった部分にブーンの拳が撃ち込まれる。


 がた、


 一瞬の沈黙の後、薄い桜色のモヤが背中から放出された。
 それはアイツの脚に纏わりつき、その動きを鈍くさせる。


( ^ω^)「――これで、終わりだお!!」


 そしてブーンの重い一撃が、鈍い音と共にアイツを打ち砕いた。

 

56 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2013/06/12(水) 21:49:18.09 ID:fyi5f5Pq0
* * * * *



o川*゚ー゚)o「んーで。どーゆーことなのー?」


 解放された妖も無事塚に帰り、一安心、と思った矢先。
 全く一安心ではなかった。


ξ゚听)ξ「……まあ、今日のことは忘れなさい」

(`・ω・´)「ちょっとそれは苦しいな、ツンさん」


 キュートもシャキンも問い詰める気満々だった。
 騒ぎの最中に問わなかったのは――それは有り難かったんだけど。


( ^ω^)「うーん、と」

ξ゚听)ξ「……」

(`・ω・´)「今、全部言えとは言わないさ。でも、今日の分くらいは教えてくれないか」


 ……見てしまった以上、もう隠すのも無理か。
 ブーンとそっと目を交わし、頷きあう。
 

57 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2013/06/12(水) 21:50:10.53 ID:fyi5f5Pq0
 
( ^ω^)「つまり、そういうことなんだお」


 ブーンが話し始める。
 ――この世には、妖や幽霊なんてものが居て、私たちはそれらと交流しているのだと。


(`・ω・´)「なるほど。あの塚に入ってったモヤは、それか」

o川*゚ー゚)o「へええ。そうなんだ、ありがとー!」


 納得してくれたようだ。
 今日のことは言わない方がいい、と付け足して、立ち上がる。


ξ゚听)ξ「今日はもう帰りましょう」

(`・ω・´)「ああ、随分遅くなってる。連絡しないとな」

( ^ω^)「僕もおじいちゃんにメールしとくお」

o川*゚ー゚)o「うん、じゃあ続きは今度ね!」


 ……ん?

 

58 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2013/06/12(水) 21:51:36.67 ID:fyi5f5Pq0
 
ξ゚听)ξ「全部言えとは言わないって」

o川*゚ー゚)o「それ言ったのシャキンだしー、『今は』ってことだもーん」

( ;^ω^)「ええええ!? それ詐欺だお!」

o川*゚ー゚)o「詐欺じゃないもん、言ってなかっただけだもん」

ξ゚听)ξ「詭弁ていうのよ、それ」

(`・ω・´)「ま、日を改めて、ね」

( ;^ω^)「シャキンくーん!!」


 やいのやいのと言いながら山を下りる。
 ……肝試し、きっと帰り道もこんな風に騒ぎながら帰ったことだろう。

 さて、何をどう言おうかしら。

 言う気になっている自分に、ちょっとだけ驚きながら、私たちは山を後にした。

 

59 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2013/06/12(水) 21:52:35.10 ID:fyi5f5Pq0
 




 ――――だから、知らなかった。






 

60 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2013/06/12(水) 21:53:41.93 ID:fyi5f5Pq0
 



  「……邪魔が入ったか」





 何者かが、小さく呟いたのを。



 

61 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2013/06/12(水) 21:54:13.78 ID:fyi5f5Pq0
 


               【第四話】 了


 



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