ξ゚听)ξこちら妖の便利屋兼退治屋のようです( ^ω^)
第1話



2 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2013/01/23(水) 22:34:50 ID:cvuLdAoy0
 森というものは、色んな雰囲気があるものだと思うけど、ここは何て静謐なのだろう。
 じめじめして不気味な森や、騒がしい森なんかも知っているだけどに、余計そう思う。
 神域と言われる場所だからだろうか。

 ところで僕は今、困っていた。
 何故かと言うと、


(  _ゝ )「うぐぅ……」


 目の前に、行き倒れさんがいるからである。


( ^ω^)(この人、いや人じゃないかも、どうしよ)


 ひとまず声を掛けようか。
 僕はゆっくりと、行き倒れさんに向かって歩き始めた。

5 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2013/01/23(水) 22:35:25 ID:cvuLdAoy0
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ξ゚听)ξこちら妖の便利屋兼退治屋のようです( ^ω^)


            【第1話】



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6 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2013/01/23(水) 22:36:04 ID:cvuLdAoy0
.


 この世には、目には見えない闇の住人たちがいる。


 某地獄先生の台詞だ。
 闇とは限らないのだけど、僕にはそれが見えている。
 それが、僕が便利屋なんてものをやっている理由の一つ。

 もう一つ、というか、最も大きな理由。
 僕の友達(ドクオという)を、復活させる為。
 そして、僕の本当の身体に戻る為。
 その為には、妖力が必要だった。

 だから妖からの依頼を受けて、妖の対価を受け取っている。

 今日は、その定期的な仕事をこなしに神域である森の泉にまでやってきたのだけれど。


(  _ゝ )


( ^ω^)


 冒頭に戻る。

.

8 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2013/01/23(水) 22:36:37 ID:cvuLdAoy0
 というかだ。この森にいる時点で一般人でないのは確定なんだけど。
 何だってこんな所で倒れているのか。


( ^ω^)「あの」

( ´_ゝ`)そ「へあっ!! え、人、えっ何で」

( ^ω^)「そんなに驚かなくても……あのう、大丈夫ですかお?」

( ´_ゝ`)「あ、あんまり……血が足りなくて……」


 貧血? だろうか。
 そうなると、とりあえず寝ていること位しか僕には思いつけない。
 あ、そうだ足を高くするといいんだっけ?

9 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2013/01/23(水) 22:37:14 ID:cvuLdAoy0
( ^ω^)(お、丁度いい枝が)

( ´_ゝ`)「……? 血の匂いが、しない……」

( ^ω^)「お?」


 僕が彼の言わんとすることを悟る前に、彼は続けた。


( ´_ゝ`)「――君は、人間かい?」


 ――僕は。
 人形の身体に魂。

 僕は、

 生身と違う感触。骨格。形態。



ξ )ξ『ごめんなさい』



( ^ω^)「僕、は――」

.

10 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2013/01/23(水) 22:38:04 ID:cvuLdAoy0
.


      「ブーン。何してるの」



 思考の波を止めたのは、


ξ゚听)ξ


( ^ω^)「ツン!!」


 僕の幼馴染で、『人形』たる僕の『主人』。
 共に便利屋を営む、津出・コトーハ・ツン。

 訝しげに窺うツンは、僕の足元――行き倒れさんに目を向けた。



( ^ω^)「ここ来たら倒れてたんだお」

( *´_ゝ`)「おにゃのこ!」


 と、行き倒れさんが突然がばっと顔をあげた。

11 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2013/01/23(水) 22:38:54 ID:cvuLdAoy0
.

ξ゚听)ξ「……は?」


( *´_ゝ`)「すみません! あなたの血を下さい!」


( ^ω^)

ξ゚听)ξ



    サッ
ξ゚刄m( ^ω^).......  (´く_` )「えっ」


ξ゚听)ξ「ブーン」
     +
( ^ω^)∩+「うん」

( ;´_ゝ`)「えっあっ何それ手光って、ちょ、」
      +
( ^ω^)⊃+

( ;´_ゝ`)「待ってえええええ! 誤解だ! きっと誤解だから! お願い話を聞いてええええ!!」

12 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2013/01/23(水) 22:39:59 ID:cvuLdAoy0
* * * * *


 行き倒れさん――流石兄者さんは、血を吸って生きる妖だそうだ。
 仕事の息抜きにふらふらと散歩していたら、いつの間にか神域に入り込んで、
 間の悪いことにお腹もすいてきて、相乗効果で倒れたと。
 神域と言いつつ結界張ってるわけでもないから、妖でも入れるとか。意外と穴がある。
 でも神気に中てられたんなら、結局結界みたいなものかな。


( ´_ゝ`)「そういう訳で、ほんと他意はないんだ」

ξ゚听)ξ「ふうん」

( ´_ゝ`)「一口だけ! 一口だけだから!」
      +
( ^ω^)∩+

( ;´_ゝ`)「えっ何で光らせるんだ!?」


 そんな言い方で信用できると思ってんのかこの人は。

13 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2013/01/23(水) 22:40:54 ID:cvuLdAoy0
.

ξ゚听)ξ「ま、いいわよ」

( *´_ゝ`)「えっ本当!? やったあああ!!」

( ^ω^)「いいのかお、ツン」

ξ゚听)ξ「ええ。一口だけね」


 兄者さんの顔がぱあっと輝く。分かりやすい。
 じゃあ、と兄者さんは屈んだツンの首に牙を向け――


( ;^ω^)「ストぉぉぉぉップ!!」

( ;´_ゝ`)「ぐえっ」

( ^ω^)「何で首なんだお」

( ´_ゝ`)「え、だって一番吸いやすいし。ダメなの?」

( ^ω^)「ダメに決まってるお!」


 誰が好き好んで首元に、き、きす、みたいなことを!

.

14 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2013/01/23(水) 22:41:30 ID:cvuLdAoy0
( ´_ゝ`)「じゃあ手……」

ξ゚听)ξ「却下。肩、腕、指も論外」

( ´_ゝ`)「うーんと、じゃあ」

ξ゚听)ξ「脚ならいいわ」

( ^ω^)「で、でもツン、そしたら動きにくいお?」


 ツンは人形(依代になったり封じたりする、特別なものだ)を作る、人形師。
 繊細な作業をする手は命だ。
 かといって脚だと歩きにくくならないだろうか。

 正直に言えば、ツンの身体のどこも触れてなんて欲しくない。
 だけどツンはさっさと靴を脱いで素足を晒している。

15 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2013/01/23(水) 22:42:12 ID:cvuLdAoy0
( ´_ゝ`)「ありがとう! それじゃあ」

ξ゚听)ξ「ええ。……別に脚なら支障ないわよ」

( ^ω^)、

ξ゚听)ξ「だってあんたが抱えてくれるでしょ」


 言って、ツンはふいと顔を逸らした。


( *^ω^)「……うん」


 これだけで機嫌のよくなる僕は、まったくもって現金だと思う。

16 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2013/01/23(水) 22:42:51 ID:cvuLdAoy0
* * * * *



( ´_ゝ`)「はー、ごちそうさまでした」


 兄者さんは本当に一口で復活した。
 心なしか顔色もつやつやしてる。


( ´_ゝ`)「いやあ、本当助かった。ありがとう」

ξ゚听)ξつ「そう」

( ´_ゝ`)「ん? その手は?」

ξ゚听)ξつ「お代」

( ;´_ゝ`)「……えっ?」

ξ゚听)ξつ「無償だなんて一度でも言ったかしら」

( ;´_ゝ`)「……い……言ってない、けど」


 兄者さんがちらりと僕を見る。
 首を横に振った。
 抵抗は無意味だと思う。

17 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2013/01/23(水) 22:43:30 ID:cvuLdAoy0
( ;´_ゝ`)「え……えーと……」

ξ゚听)ξ「私たち、便利屋なの。それ相応の対価は頂くわ」

( ´_ゝ`)「便利屋?」

ξ゚听)ξ「ええ」

( ^ω^)「だお」

( ´_ゝ`)「便利屋……」

ξ゚听)ξ「……」

( ^ω^)「……」

( ´_ゝ`)「……」


.

18 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2013/01/23(水) 22:44:13 ID:cvuLdAoy0
ξ゚听)ξ「……で?」

( ´_ゝ`)「あっ、えっと、雑貨屋知ってる? デルタの」

ξ゚听)ξ「ええ」

( ´_ゝ`)「じゃあそこ経由で……」


 二人の間で着々と話が決まっていく。
 ……というか、兄者さんいいんだろうか。報酬貰うって前提なんだけど。
 最後に兄者さんは、懐から和紙を取り出した。


( ´_ゝ`)「これでデルタには話通じると思うから」

ξ゚听)ξ「分かったわ」

( ´_ゝ`)「それじゃこれで! ありがとな、二人とも!」

( ^ω^)「気を付けておー」

( ´_ゝ`)ノシ


 最初、倒れていた時とは別人のように、明るく兄者さんは去って行った。
 それを見届けて、ツンは踵を返す。

19 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2013/01/23(水) 22:45:05 ID:cvuLdAoy0
ξ゚听)ξ「行きましょ」

( ^ω^)「その前に脚、見せてくれお」

ξ゚听)ξ「兄者の薬は効いてるみたいだから大丈夫よ」

( ^ω^)「血、着いちゃうかもしれないお」


 ハンカチを取り出し、ツンの脚に巻く。
 確かに血は出てなかったけど、念には念を入れたい。


ξ--)ξ=3「……心配性なのよ、あんたは」

( ^ω^)「かもしれんお」


 ツンだって人のことは言えないと思うけど、口には出さないでおく。
 余計なことを言うと頬をつねられて、これがまた痛い。

 行くわよ、と言うツンに、頷いて僕らは歩き出した。

20 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2013/01/23(水) 22:46:09 ID:cvuLdAoy0
* * * * *


 ツンと便利屋を始めて、四年目になる。
 中学にあがる直前、僕は大怪我をし、ツンに助けられた。
 妖に襲われたのだ。
 その時、ツンは人形に僕の魂を移し、おかげで何とかこの世に繋ぎ止められた。

 妖を撃退したのは、僕の家に住んでいた、ドクオという妖。
 彼は、僕らの師匠であり、友達であり、命の恩人であり。
 そして僕が、人の身体に戻る方法を知っているかもしれない、あやかし。


ξ゚听)ξ「……清浄ね、ここの空気」

( ^ω^)「だおね。すっとするお」


 でも、と小さく呟いて、ツンは言葉を切った。


( ^ω^)「何だお?」

ξ゚听)ξ「何でもないわ」


 少し、息がしづらい。と、そう聞こえた気がした。


.

21 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2013/01/23(水) 22:46:55 ID:cvuLdAoy0
 無言のまま歩を進め、暫くして泉と小さな川の畔に辿り着いた。
 しんとした中で、こんこんと泉が湧いている。時折こぽりと泡の音がした。


ξ゚听)ξ「さて」

( ^ω^)「おー」


 背負った荷物を下ろす。
 透明なビンをそれぞれ取り出した。
 仕事、とは表したけれど、実の所、少し違う。

 今なお僕が人形の身体で生活しているのは、人形に一時定着した魂を戻せないから、だけではない。
 僕たちを襲った妖の毒が、未だに残っているからだ。
 毒を消し、魂の宿らない身体を維持する為に、この神域の清水が必要なのだ。


ξ゚听)ξ「ヒート」


 泉に手を差し入れ、ツンは名を呼ぶ。
 ほぼ同時に、水がぶわりとふくらんで、人の形をなした。


ノパ听)「何か用かー! ってツンとブーンかー!」


 赤みがかった髪、手の平程の、水干姿の少女。
 この神域の中に住む内の一柱で、この泉を住処にするヒートだ。

22 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2013/01/23(水) 22:47:50 ID:cvuLdAoy0
( ^ω^)「また貰いに来たお」

ノパ听)「おお、いいぞー! ところでお土産はなんだー!?」

ξ゚听)ξ「柿ピーと紅茶」

ノハ*゚听)「やったああー!!」


 この場から動くことのないヒートは殊の外、人の食べ物を好む。
 ツンが置いた柿ピーと紅茶の葉をするすると体内に取り込んでいった。

 他の神様なら「貢物」とか「お供え物」になりそうな所だけど、ヒートは「お土産」と言う。
 外見も手伝って、神様というより妖精みたいな感じだ。


( ^ω^)「よっせと」ザブン

ノパ听)「ブーン! ブーンはないのか、お土産ー!」

( ^ω^)「ツンと合同じゃダメかお?」

ノパ听)「駄目じゃないけど、残念だぞー……」


 しゅんとうなだれながらも、ぽりぽりと音はするから不思議なものだ。
 ツンもビンに水を入れ、立ち上がった。

23 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2013/01/23(水) 22:48:49 ID:cvuLdAoy0
ξ゚听)ξ「また来るわ。何がいい?」

ノパ听)「そうだなー、今度は甘いものがいいぞー!」

ξ゚听)ξ「その内、砂糖水になっちゃいそうね」

( ^ω^)「おいしいの持ってくるお」

ノパ听)「約束だぞー! あ、そうだツン、その腕輪――」


 ヒートの言葉をかき消すように、金属音が響いた。


 ――――いいいいぃぃい、いいいいぃ

  _,
ξ゚听)ξ「いつっ……」

( ^ω^)「何だお!」

.

24 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2013/01/23(水) 22:49:32 ID:cvuLdAoy0
 音の先、振り返った向こうには、能面をつけた男。
 鈍く光る鳥籠が、その横に浮いていた。


( ∴) ・
| | |


 感情を遮断するその顔は、ツンが作る人形にどこか似ている気がした。
 それはつまり――何かが宿る前、個性のない状態に、似ているということだ。





 いいいいぃぃぃ、いいぃいぃぃい


 断続的な金属音。
 能面の男は、ゆっくりとこちらに近づいてくる。

25 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2013/01/23(水) 22:50:26 ID:cvuLdAoy0
( ^ω^)「誰だお。どうして、ここに来たんだお」

( ∴)「……」
  ・
  | | |

 男は答えない。
 ゆらり、ゆらり。
 機械的な音と対照に、その動きはどこか覚束ない。


ξ゚听)ξ「……ブーン、あの籠見て」


 不意にツンの声が険しくなった。
 言葉通り、よくよく目を凝らしてみると――何か、ひかるものがある。
 ――いや、居る。


( ∴)., ・
   :|+|+|.,

26 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2013/01/23(水) 22:51:17 ID:cvuLdAoy0
( ^ω^)「まさか、ヒートと同じ……!」

ξ゚听)ξ「守り神が何柱か捕まっているようね。ヒート」

ξ゚听)ξ「……ヒート?」


 ヒートの答える声がない。
 視線を向けると、泉の淵でぐったりしているヒートが目に映る。


( ;^ω^)「ヒート!」


 ツンが駆け寄る。僕は能面と二人の間に割って入った。

.

27 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2013/01/23(水) 22:52:24 ID:cvuLdAoy0
.

( ∴)
    ・
   :|+|+|.,


( ^ω^)「止まれお」


 止まらない。
 止まるとは、思ってなかったけど。


ξ゚听)ξ「ブーン」

( ^ω^)「うん」


 そのたった一言でいい。
 僕は手足に力を集中させる。


 いいいいぃぃ、ぃぃぃいいぃい


 ぎち、と軋むような音がした。


.

29 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2013/01/23(水) 22:53:31 ID:cvuLdAoy0
* * * * *


 跳ねる。
 腕に機械の鎧を纏い、能面が走る。

 身体を沈めて、そのまま懐に入り込む。
 けれど能面も跳んで、僕の拳は宙を切った。


( ^ω^)(ゆらゆらしてるのに)


 捉えることが出来ない。
 さっきからずっとそうだ。鳥籠が能面の周りを回る。

 胸元のペンダントに軽く触れる。
 青い石のそれは、何の反応も示さない。


( ^ω^)(これからあの光があれば、やりやすくなるかもしれない、って)


 ツンとそんなことを話したけど、この前のは、何かの偶然だったんだろうか。
 と、そんなことを考えてる場合じゃない。

.

30 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2013/01/23(水) 22:54:13 ID:cvuLdAoy0
ξ゚听)ξ「ブーン! 供給源は、鳥籠!」

( ^ω^)「おっ」

ξ゚听)ξ「ラインを切って!」

( ^ω^)「分かったお! でもどこだお!」

ξ゚听)ξ「……」


 ツンにも分からない。
 なら、どうするか。鳥籠周辺は光っている。線は見えない。

 金属の腕が呻りをあげて伸びた。僕を越してツンとヒートの所まで。


ξ゚听)ξ「っ!」

( ^ω^)「ツン!!」

ξ゚听)ξ「大丈夫だから、前!」


 避けた拍子に足を泉につっこんで、ツンは叫ぶ。
 慌てて前を見ると、能面が近づいていた。

.

32 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2013/01/23(水) 22:54:59 ID:cvuLdAoy0
( ^ω^)「させないお」


 線が見えないなら、本体の能面をぶっ倒してやる。
 右足で蹴り出す。能面はそれを横に避ける。
 が、そこだ。


( ^ω^)「たっ!!」


 避けた所目がけて、突きを放った。
 今度こそ捉えた!

         +
( ∴)・ :|+|+|., +⊂(^ω^ ) 「っ!!」

    フォン


 ぎりぎりで拳を止めた、けど、


」( ∴)「


 代わりに、腹に一撃受けてしまった。

.

34 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2013/01/23(水) 22:55:48 ID:cvuLdAoy0
( ; ω-)「……っく」


 一瞬目の前で火花が散った気がした。
 鳥籠の中にはこの地の神様たちがいる。

 二撃、三撃。


 いぃぃいいいいいぃぃいぃ


 ああくそ。吐き捨てる。

 見えない。ライン、線、供給。
 僕もツンも、隠されているものを見るのは、得意じゃないのだ。


( ∴)
 ・
:|+|+|.,


ξ゚听)ξ ノハ )

.

35 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2013/01/23(水) 22:56:47 ID:cvuLdAoy0
.


 だけど。
 諦めてなんか、たまるか!!


ξ゚听)ξ「――ブーン!」


 ツンの声。
 瞬間、ごうと風が唸った。

.

36 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2013/01/23(水) 22:57:51 ID:cvuLdAoy0
* * * * *


 ブーンは苦戦していた。
 遠距離攻撃のできないブーンは、腕を伸ばしてくる相手になかなか攻撃出来ないでいる。


ξ゚听)ξ「ヒート、ヒートしっかりして」


 ヒートを手の上で揺すぶる。
 ふと思いついて、ポケットに入れていたチョコを押し付けた。


ノハ )「うくっ……」

ξ゚听)ξ「ヒート、起きて」

ノハ 听)「うぅ、あまい、うまい……」


 ……この食いしん坊はどうにかならないかしら。

.

37 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2013/01/23(水) 22:58:41 ID:cvuLdAoy0
ξ゚听)ξ「ヒート、ラインが見えない? 私じゃ分からない」

ノパ听)「うー……らいんかー……」


 いぃいいいいぃいいぃ、いいいい


ノハ )「むきゃっ」


 またあの金属音。
 どうやら精神体にはよく効くようだ。

 あの能面の男、明らかにヒートを狙っている。そのヒートはここから動けない。
 ならば向こうを撃退するしかないが、ブーンは鳥籠を盾にされて、うまく動けない。

 いつも、歯がゆい。
 戦闘になると、私に出来ることはない。隠されてるものを見ることもできない。
 だけど、だけど、


ξ゚听)ξ「諦めたくなんか、ないの……!」

.

38 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2013/01/23(水) 22:59:50 ID:cvuLdAoy0
.

 不意に、視界の端に光が映った。
 ブレスレット。
 ブーンとお揃いで作った、青い石の。


ノハ )「ツン、腕輪……水と、血……」


 ヒートが切れ切れに言う。
 足元を見ると、ブーンの巻いてくれたハンカチが解けて、水に血が滲んでいた。

 守りたいの。
 ブーンを、私も守りたいの。

 泉に腕ごとブレスレットを突っ込んだ。


ξ゚听)ξ「ブーン!!」


 叫んだと同時、石が光る。
 周囲の水と血が渦巻き――赤くなる。
 ごうごう、音を立てて赤い光の雨が降った。

.

39 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2013/01/23(水) 23:00:39 ID:cvuLdAoy0
.      .,
` .    .  , "
 ( ∴)     ・ .
    .   :|+|+|.,


( ^ω^)「……!」


.      .,
` .    .  , "
 ( ∴)〜〜〜・ .
    .   :|+|+|.,


 ラインが。赤い雨に照らされて。

 ブーンに駆け寄る。
 背中に手を当てる。いつもの力と共に、赤い光が吸収されていく。
 弾かれたように、ブーンが飛び出した。

.

40 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2013/01/23(水) 23:01:37 ID:cvuLdAoy0
.


( ^ω^)「てりゃああああ!!」


 ブーンがペンダントを腕に巻きつけたのが見えた。
 同時、赤い光が形を成す。



( ^ω^)}
     」     ・
( ∴)〜   〜:|+|+|.,


 きいぃん


 一際高い金属音が、聞こえた。

.

41 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2013/01/23(水) 23:02:26 ID:cvuLdAoy0
.

( ∴)、

( ^ω^)「逃がさないお!」

     +
( ^ω^)⊃)∴) ゴッ
      +


 動きが止まり、一歩引いた能面を、ブーンが捉える。


  ・
|+|+|.,


 鳥籠が落下し、あっけなく、それは終わった。

42 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2013/01/23(水) 23:03:23 ID:cvuLdAoy0
* * * * *


ノパ听)「ありがとなー、助かったぞー!」


 鳥籠に囚われていた神様を助け出し、ヒートもすっかり調子を取り戻した。
 能面の男は、ネジが切れたように立ち尽くして居たが、近づくと逃げ出した。
 吃驚するほどに素早くて、結局そのまま逃がしてしまった。


( ^ω^)「無事でよかったお」

ξ゚听)ξ「ええ。ヒート、この石のこと知ってたの?」

ノパ听)「ん? 何がだー?」

ξ゚听)ξ「赤い光とかのこと」

ノパ听)「全然だぞー! ただ何かな、ふいんきてきになー!」

ξ゚听)ξ「……そう」


 この石に助けられたのは二度目だ。
 あの依頼をくれた妖には感謝しなければ。


ノパ听)「その石の妖力の形質と、私の司る水が作用したんだー!
     鎖とツンの血がうまいこと中和させたんだろーなー!」

44 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2013/01/23(水) 23:04:26 ID:cvuLdAoy0
( ^ω^)「それ雰囲気ってレベルの分かり方じゃないお」

ノパ听)「そーかー?」


 何にしても、ヒートは無事だった。
 この先、またあの能面が来ないとも限らないけど、
 一時結界を張るということで、神様たちはそれぞれの場所に帰って行った。


ノパ听)「今度お礼するから、また来いよー!」


 じゃあ寝る! と言って、ヒートは泉の中に帰る。
 ……お礼を言い損ねてしまった。


( ^ω^)「それじゃ、帰ろうお、ツン」

ξ゚听)ξ「……そうね」


 今度は、甘いお菓子を沢山持って行ってやろう。
 ブーンを守れたお礼に。

.

45 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2013/01/23(水) 23:05:18 ID:cvuLdAoy0
* * * * *


 屋敷の和室。
 大きな水槽が、結界に囲まれている。

 清水を流し込む。
 ぼんやりと、光った。


( -ω-)


 水槽にあるのは、僕の身体。
 自分の顔のながら、間抜け面だなあと思う。


 しゅうしゅう、泡がたつ。
 傷口から少しずつ、毒が抜ける音。


( ^ω^)「…………」


 この作業を、大抵僕は一人でやる。
 ツンにやってもらったこともあったが、僕からお願いしてやめてもらった。
 ツンは、僕がこうなったのは自分のせいだと思っている。
 なのに、こうして傷を見せるのは、そのままツンの傷を抉ると思ったからだ。

.

46 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2013/01/23(水) 23:06:24 ID:cvuLdAoy0
.

( ^ω^)「…………ちがう、かな」


 ツンは何でもない顔をする。
 でも、僕が、そんなツンを見たくないのだ。

 襖を開ける。
 ツンが壁に寄りかかり、体育座りで待っていた。


ξ゚听)ξ

( ^ω^)「かなり良くなってたお」

ξ゚听)ξ「……そう」


 代わりに、ツンはいつもここで待っている。
 立ち上がろうとするツンに手を貸した。


ξ゚听)ξ「ロマネスクさん、そろそろ戻ってくるかしら」

( ^ω^)「そうだおね。おじいちゃん、今日の便で帰ってくるって言ってたし」


 視ることに長けたおじいちゃんは、時々頼まれて家を空ける。
 できることなら、おじいちゃんにも孫の傷ついた姿なんて見て欲しくないから、僕としては丁度よかった。

47 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2013/01/23(水) 23:07:26 ID:cvuLdAoy0
( ^ω^)「ツン、ありがとだお」

ξ゚听)ξ「……何?」

( ^ω^)「あの赤い光の雨。ツンのおかげだお」

ξ゚听)ξ「……ヒートのおかげよ」


 ツンはくるりと背を向けた。
 メンテナンスするわよ、と言ってツンはさっさと歩いていってしまう。


( ^ω^)「あ、待ってお」


 追いかけて隣に並ぶ。
 はやく、ツンを笑顔にしたいな。

 ぴしゃり、と外で鯉の跳ねる音がした。




              第一話 終



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