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256 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/11/30(土) 01:52:03 ID:mfuivQNI0
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【水の都】
(゚、゚トソン<……
湖に、大都市が映っている。
そびえ立つビル群。
スーツを着た女性―――トソンはそれを見ていた。
(゚、゚トソン<なんだか、別物見たいですね。
彼女の後ろには、大都市がある。
彼女がオフィスレディとして働いている、都市があるのだ。
しかし、彼女はそちらを見ない。
もう見たくもないというように背を向け、湖に映った方の大都市ばかり見ている。
この都市の一番背の高いビルで、彼女は働いている。
つまらなくはない。
毎日が忙しく、充実している。
しかし―――
(゚、゚トソン(何か、その、もやもやしてますね。……なにかが、足りない。そんな気がする)
それが何か分からないから、彼女はこうして湖のほとりでぼーっとしているのだった。
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257 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/11/30(土) 01:53:09 ID:mfuivQNI0
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(゚、゚トソン ……
しばらく、彼女は無言で湖に映った街を眺めていた。
水面にゆらめく、青い大都市。
(゚、゚トソン(きれい……)
気付けば、彼女は湖に向かって歩を進めていた。
スーツを着たまま、水のなかに一歩一歩と踏み込み、
そして、勢いをつけて水の中に潜った。
(-、-トソンブクブクブク
顔に触れる、水の感触。
(゚、-トソン
彼女は、ゆっくりと目を開いた。
(゚、゚トソン
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258 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/11/30(土) 01:54:43 ID:mfuivQNI0
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青い、世界。
(゚、゚トソン
陽光が差し込む、水の中で彼女はそれを見た。
(゚、゚トソン(きれい……)
湖の中。
地上にあるのと、まったく同じ大都市が水中に佇んでいるのを、彼女は見たのだった。
足を動かす。
身体は自然と前に進む。
背の高いビルの合間を泳ぎながら、彼女はそれを見つけた。
(゚、゚トソン(私が働いているビル……)
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259 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/11/30(土) 01:56:22 ID:mfuivQNI0
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迷わず、中に入る。
煩わしい重力のない水の中では、待ち時間の長いエレベーターなど、不要で
(゚、゚トソン(これは……)
階段を泳ぎ、彼女はどんどん上に昇っていく。
(゚、゚トソン(たのしい……!)
煙草臭いオヤジどもの闊歩する廊下は、今は水の臭いしかせず、
資料やパソコンが浮くオフィスの中を、彼女は自由に泳ぎまわった。
(゚、゚トソン
(-、-トソン
(゚ー゚*トソン
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260 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/11/30(土) 01:58:54 ID:mfuivQNI0
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――
―――
(-、-トソン
(゚、゚トソン
気がつくと、湖の前に立っていた。
(゚、゚トソン
自分の体を見回すが、特に濡れた形跡はない。
(゚、゚トソン
夢でも見たのだろうか、と首を傾げながら、彼女は地上の大都市へと歩きだした。
重力のない、自由な水の都に背を向け、重力のある、地上の都へ。
(゚、゚トソン
( ー トソン
―――自由な都の記憶を、少しだけその胸に宿して。
+おしまい+