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165 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/02/18(月) 00:55:40 ID:9x8/nNoM0
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【パラボラアンテナ】
ばかみたいに広がる、青空の下に、雲みたいに白い、その施設はあった。
('A`)<○月×日―――
天に向けられた、巨大なパラボラアンテナ。
その下に位置する受信施設で、ドクオはヘッドフォンをとった。
(-A-)<本日も通信試みるが、応答はなし、か……
この施設は、彼が昔乗っていた宇宙船を改造したものだ。
この惑星の近くでエンジントラブルを起こし、
まだ緑の草原も、青い空もなかったころの、この場所に彼を案内し、
そして彼を孤独にした張本人。
ドクオはそれを改造して、この惑星から外宇宙に情報の発信ができる施設を造った。
('A`)<……はあ
施設から出て、彼はため息をついた。
目の前にあるのは、青い空と、緑の草原。
これらは宇宙船に乗っていたテラフォーミングキットを使って、ドクオが創ったものだ。
きれいだとは思う。
生えている草は色々な味がして栄養もあるし、実用性も欠いてはいない。
(-A-)(でもなあ……)
しかし、自分が創ったものを見て、自分でいくらきれいだと思っていても、
それは、なんだかむなしいだけだ。
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166 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/02/18(月) 00:56:50 ID:9x8/nNoM0
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彼は空をあおいだ。
('A`)
この星には自分しかいない。
そして、この空の向こうにいる人々は、誰も自分のことに気付いていなくて、
自分がここにいることも知らない。
( A )
そう思ったら、自然と涙がこぼれた。
気付いて欲しい。
誰かに、気付いて欲しいんだ。
おれが、ここにいることを。
( A )<メーデー……メーデー
空に向かって叫ぶ。
( A )<<誰か、応答願う!!
自分はここにいるぞ、誰かにその言葉が届くように。
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167 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/02/18(月) 00:57:34 ID:9x8/nNoM0
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( A )
当然ながら、その声はだだっ広い草原を渡っていくだけで、空の向こうには届かない。
( A )<―――何やってんだ、おれは
顔をあげた彼の目線の先には、涙に滲んだパラボラアンテナ。
メッセージを送るほうの施設は、もっとこじんまりしているのに。
受信のためのアンテナは、こんなにも大きくなった。
誰かの声が、聞きたかったのだ。
( A )(ばかみたいだ)
その気持ちも、なんだかばかばかしいことに思えて、
いっそこんなもの壊してしまおうか、と彼が思ったとき。
ヒュウウウウウウウウウウン
( A )?
(;'A`)!?
どごーん、という巨大な音が、あたりに響き渡った。
(;'A`)<<な、なんだ!?
見れば、草原のかなたに、火の柱が立っていた。
(;'A`)<隕石……いや
彼は見つけた、火の柱に包まれたそれに、『羽』がついているのを。
(;'A`)<宇宙船だ!!
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168 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/02/18(月) 00:58:24 ID:9x8/nNoM0
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――
―――
めらめら燃える、火の柱の前で、彼女は立っていた。
川 ゚ -゚)<やあ
(;'A`)<あ……
手をひらひらと、振りながら、宇宙服を着た女性はこちらに歩いてきた。
川 ゚ -゚)<キミか、こんな宇宙のはてから、助けを求めていたのは
(;'A`)<あなたは……
川 ゚ -゚)<名前はクールだ。気軽にクーと呼ぶがいい
(;'A`)<クー、さん
まだ目の前の光景が信じられないドクオが、ぼんやりと彼女の名前を呟いたところで、
クーは思い出したように、「あ」と言った。
川 ゚ -゚)<どうしよう、私はキミを助けに来たと言うのに、宇宙船がこれでは……
無表情でそんなことを言いながら、「やっちゃったな」みたいな顔をしている女性。
( A )
それを見ながら、ドクオは泣いていた。
川;゚ -゚)<す、すまん。私は昔っからドジでな……
言い訳をしようとするクーに、ドクオは「ちがう、そうじゃない」と言った。
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169 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/02/18(月) 00:59:58 ID:9x8/nNoM0
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川 ゚ -゚)?
( A )<ずっと、待ってたんだ。何度も何度も。応答を
草原に、風が吹いている。
( A )<でも、誰も反応してくれなくて。だから造ったんだ、パラボラアンテナ。
そしたら、誰かの声が聞こえるかもしれないって
やさしい風だと、ドクオは思った。それを創ったのも、もちろん自分なのだけれど。
( A )<でも、やっぱり、声は聞こえなくて。
寂しくて、寂しくて、アンテナだけが大きくなっていって
自分が創った風が、自分の頬をなで、涙をかわかして行く。
( A )<ばからしくなって、もうあんなアンテナ壊してしまおうって思ったとき、あんたが来た
川 ゚ -゚) ……
彼は風がかわかしきれなかった涙を、ぐじぐじとぬぐって、そして、くしゃくしゃな顔で笑った。
(* A )<ありがとう、やっと、人に会えた
川 ゚ -゚)
川 ゚ー゚)
無理矢理な笑顔で笑うドクオに、クーはにこりと笑ってみせた。
自分のドジも、たまには役に立つようだ。
そんなことを思いながら。
―――○月×日。本日も通信試みるが、応答はなし。
ただし、来訪者が一名。
+ヨシヨシ川 ゚ -゚)ノシ( A *)ヨ、ヨセ!おしまい+