(*^ω^)<20minutes challenge!

【負幽霊】

93 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/02/05(火) 01:36:32 ID:uy2FT2rc0
【負幽霊】

自宅近くにある、とある廃工場。
一週間前にここでいじめ殺されて死に、幽霊になってしまったドクオ少年はとても困っていた。

('A`)<えっと……

川д川<だからねー、幽霊には二種類あるのー。
      陰陽の二極をつかさどる、『負幽霊』と『正幽霊』……

(;'A`)<はあ……

なぜだか突然現れた長髪少女に、妙な話を聞かされているのだ。
それも、結構一方的に。

川д川<だからー、今ここにいるのは『正』のほうのドッくんなのー。
      もう一方、あなたの片割れの『負幽霊』のほうが欠けているのよー

初対面だというのに、ドッくん呼ばわりまでされている。
一体この霊感少女は何者なのか、と、ドクオは内心首を傾げながらも

(;'A`)<えっと……それって何がまずいんですか?

とりあえず、聞いてみることにした。

川д川<うっふふー。いやね、あなたにマズいことっていうのは特にないんだけどー。
      『負』の方が強すぎるせいか、あなたをいじめてたメンバーを祟り殺そうとしてるみたいなの

('A`)<祟り殺す? ……うーん、おれ、そんなキャラでしたっけ

と、ドクオは教室での自分の行動を思い出してみる。
誰ともかかわりたくない、人間の近くに寄るのも、寄られるのもめんどうくさい。
そんな自分が、人を祟ったりするものだろうか。

川д川<あなたにも生前、憎しみや怒りはあったのよー。それを思い出せないのは、あなたが正幽霊だから

94 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/02/05(火) 01:39:58 ID:uy2FT2rc0
そんなもんか、と、とりあえずドクオは納得することにした。

('A`)<えーと、で、おれは何をすればいいんでしょう?

川д川<うっふふー、そうねえ。何もする必要はないかなあ

('A`)<は?

川д川<ぶっちゃけー、『負』のドッくんが祟ってる相手のことはどーでもいいんだけどー。
      『負』のほうのドッくんにたのまれちゃってえ

(;'A`)<……はあ

そこで、霊感少女はまた「うっふふー」と笑った。
何が楽しいのか、ドクオにはさっぱり分からない。

川д川<『負』のほうの彼はねー、苦しんでるのー。
      いくら恨みに任せてとはいえ、人を苦しめることを、本心で彼は望んでいないのー

('A`) ……

川*д川<うっふふー、完全に『負』になりきれないドッくんは本当にきれいでかっこいいのー。
      私はそんな彼をずっと見ていたいんだけど、
      でもでもー、ドッくんがそこから解放されるところも、見て見たくもなきにあらず、なのねぇ

聞いていてドクオは、イライラした。

('A`)<……あんたは、結局どうしたいんです

川*д川<だからー、わたしはどっちでもいいのぉ。問題は、あなたがどうしたいかー。

(;'A`)<どうしたいって、おれは……

川*д川<『正幽霊』のあなたが『負幽霊』のあなたに会いにいけば、
      ふたつは一つとなって現世から消滅するのぉ。いわば『成仏』、でもでもー、
      そのときは『負幽霊』のドッくんが持ってる、『罪悪感』をあなたも背負うことになる

(;'A`)<罪悪感……?

川*д川<そう、残念ながら、世界には天国も地獄も実在しないからー。
      地獄に落ちるなんてことはない、これは終わりの迎えかたの問題なのぉ

(;'A`) ……

95 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/02/05(火) 01:41:25 ID:uy2FT2rc0
ドクオは考える。
自分をいじめたメンバーたちを怨んで、祟っているのはここにいる自分じゃない。
自分の恨みや憎しみという『負』の側面を背負った自分。

そんなものとわざわざ一つになって、最後を迎える意味はあるのだろうか?

(-A-)(もしそうなったら、きっと、すごく後悔することになるんだろうな、おれは)

今は『正』の部分が抜け落ちているから、好き勝手に暴れられているが、
『自分』が加わり、元のドクオとなれば、きっと自分はそれに耐えられないほど苦しむだろう。

(;'A`)<このまま、『正幽霊』として消えることもできるのか?

川*д川<できるよぉ。もちろん。

(;'A`) ……

ドクオが黙ったままでいると、ふいに貞子がぽつり、と呟いた。

川д川<結局ね、生きてる人間も死んでる人間も同じだとおもうのぉ

('A`)<え?

「うっふふー」と、不気味に彼女は笑う。
照れているのか? そのときドクオはそう感じた。

川д川<正と負が、常に自分の中で相対していて、いっつもどっちかに偏ってしまうのねぇ。
      どちらかが苦しんでいるとき、それを救えるのは、世界に一人しかいないのよぉ

びっ、と彼女はドクオを指さして、笑った。

川*д川9m<自分を救えるのは、自分だけなのよぉ。
        生きている人間でも、死んでいる人間でも、それだけはかわらないのぉ

('A`)

(-A-)<おれは―――


――
―――

96 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/02/05(火) 01:42:43 ID:uy2FT2rc0
―――
――


夕暮れのさしこむ廃工場、長髪の霊感少女は、
もう使われない機器に腰かけて、夕日を眺めていた。

川д川<うっふふー……やっぱり逝っちゃったねぇ、ドッくん

霊感少女の彼女には、もうドクオ少年がこの世にいないことがわかっていた。

少し寂しそうに、彼女は脚を左右交互にゆらゆらさせる。

川д川<初恋、だったのになぁ

夕暮れに照らされた、彼女の横顔。
「うっふふー」と笑う、その顔は、やはりどこか寂しさを称えていた。

     +おし(-A-)人(-A-)まい+

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