※『ブーン系図書館主催・百物語のようです』参加作品です 百物語のようです まとめ - 短い( ^ω^)のようですブログ
- 317 名前:('A`)百物語、のようです 蛇の話[] 投稿日:2010/08/29(日) 00:21:05 ID:mAjCum9E0
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百物語、54本目
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(i,)
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- 318 名前:('A`)百物語、のようです 蛇の話[] 投稿日:2010/08/29(日) 00:21:48 ID:mAjCum9E0
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しゅぅぅ、とどこかで音が聞こえた気がした。
空気が漏れるような、かすかな音。
音の出ところを確認しようにも、あたりは暗く、何も見えなかった。
――当然だ。
部屋の明かりは一つ残さず消されている。
あけ放たれた襖の向こうにある部屋も同様に、明かりが消えている。
( ゚д゚ )「怖い話はそれほど知らん」
その中で、ミルナがぼそりと声をあげた。
その言葉が、俺たちがずっと続けているあることに関する話であることはすぐにわかった。
百物語。
怪談話を百話して、蝋燭を一本ずつ消していくっていう定番の怪談スタイル。
俺たちはその真っ最中だった。
( ゚д゚ )「――百物語というのは、不思議な話も大丈夫だったな」
('A`)「そうらしいな、俺も最近知った」
- 319 名前:('A`)百物語、のようです 蛇の話[] 投稿日:2010/08/29(日) 00:22:35 ID:mAjCum9E0
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百物語って言っても、そんじょそこらのヌルいもんじゃない。
ミルナの爺様のやたらと古くてでっかい屋敷の三つ続きの和室を借りた本格仕様。
ちゃんと新月の夜も選んだし、一番奥の部屋には百本の蝋燭が並べた馬鹿でっかい火鉢。
明かりを落とした部屋の中は、同じ部屋にいる相手の顔が見えないほどに暗い。
( ゚д゚ )「詳しいな」
('∀`)「ウィキペディア先生は、偉大だぜ」
青い紙を張った行灯までは無理だったが、けっこう頑張って準備したほうだと思う。
まあ、冷房がついてないから風が止まると絶望的に暑いのと、菓子飲み物完備なところが情緒もへったくれもないが。
ブーンなんかはついさっきも携帯で人を呼んでたし、本格的な百物語や情緒とはもともと程遠いのかもしれない。
('A`)「それで、何の話をするんだ?」
( ゚д゚ )「美通府寺の和尚から聞いた話だ」
美通府寺というと、この辺りにかなり古くからある寺の名前だった。
今から軽く1000年前には余裕で存在していたとかなんとか。
( )「美通府って、至辺里亜山の?」
( )「しべりあ……っていったらあれじゃん。小学校のころ遠足で行った」
('A`)「ああ、遠足か。小学校の」
- 320 名前:('A`)百物語、のようです 蛇の話[] 投稿日:2010/08/29(日) 00:23:19 ID:mAjCum9E0
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案の定、地元の話が出た途端にその場が急に盛り上がる。
えーと、この声はショボンと……誰だっけ?
ブーンがひょいひょい人を呼ぶから、誰が誰だかよくわからんな。
( )「おっおっブーンの学校は、日南所池だったお。 こっからだと超近いおwww
ショボンはどうだったお?」
(; )「どうだったも何も、同じ学校だったじゃないか……」
( )「じゃあ、ドクオのとこだけかお」
ミルナの爺さんの家はでっかいとか、日南所池には神様がいるとか、雑談が続くことしばし。
そのうちに話題がひと段落して、辺りはようやく静かになった。
こうして話すのもいいが、今日はせっかくの百物語。それだけで終わっては、せっかくの準備の甲斐がない。
( ゚д゚ )「この武雲市が、まだ揺出須と言われていた頃の話だ」
――そして、ミルナは話しはじめた。
('A`)百物語、のようです
蛇の話
- 321 名前:('A`)百物語、のようです 蛇の話[] 投稿日:2010/08/29(日) 00:24:01 ID:mAjCum9E0
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( ´∀`)「今日も、都からの文はなし……か」
……いつになれば、帰れることができるのやら」
揺出須の集落の外れ。日南所池のすぐそばに、ある男が住んでいた。
元々はやんごとない家の出であったが、時の権力者に疎まれた末、都にいられなくなった。
思いつく限りの親類知人を頼り、とうとう美通府寺で修行する弟のもとへと身を寄せることになった。
とはいえ、弟は出家の身。
妻と娘を連れた身で、いつまでも寺に身を寄せるわけにもいかない。
しかし、他に行くあてもなく、男はこの揺出須の集落の外れに住まうこととなった。
( ゚¥゚)「いましばらくの辛抱です」
( ´∀`)「この世は憂いことばかり、モナ」
訪ねてくるのは、弟のみ。
都からの文も、許される気配もなく、男は嘆き悲しむばかり。
下働きもろくにおらぬ、貧しい暮らし。
都のようなきらびやかさのない、寂しい日々。
己をこのような地に追いやったものへの恨みと、都への思いはつのる一方であった。
(゚A゚* )「せめて、せめて娘に良き夫さえあれば」
- 322 名前:('A`)百物語、のようです 蛇の話[] 投稿日:2010/08/29(日) 00:24:46 ID:mAjCum9E0
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全てを失ってしまった男であったが、彼にはまだ希望ともいえるものが残っていた。
(*゚ー゚)
それは、年頃を迎えた彼の一人娘。
玉のように美しい肌。
夜よりもなお深い、流れるような漆黒の髪。
柔らかな頬に、愛らしい口元、その瞳は吸い込まれそうなほどに黒かった。
鈴のように軽やかな声は、父親である男でさえもほれぼれとするものであった。
時が時なら帝の傍へ上がれるほどに、娘は美しかった。
(゚A゚* )「どこかの貴公子が娘を見初めてくれないものでしょうか」
妻のように言葉にこそ出さなかったが、男の気持ちも同じだった。
参詣か物見遊山のどこかの貴公子、でなければ都の有力者。
そのどちらかの奥方にでもなれば、また都へと戻ることができるのではないか。
男はずっと、そう考え続けてきた。
この揺出須の地に来て、男と妻はこれまで以上に娘を大切にした。
自分たちが下々のもののように働くことになっても、娘には家事一つやらそうとはしなかった。
都にいたときのように手習いをさせ、和歌を詠ませ、琴をひかせた。
- 323 名前:('A`)百物語、のようです 蛇の話[] 投稿日:2010/08/29(日) 00:25:35 ID:mAjCum9E0
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(*゚ー゚)「父上とも母上もご苦労をなされております。
それなのに、私が何もせずにおられましょうか」
娘は、そう男に訴えた。
娘の鈴のような声は、顔を見ずともわかるほどに沈んでいた。
( ´∀`)「このまま何をせずとも良い。
いずれお前の元に高貴なお方が通うようになる。お前はその方のことだけを考えなさい」
しかし、男の答えは冷たかった
(*゚ー゚)「……ですが」
娘は美しく、そして誰よりも優しかった。
娘は両親の苦境に心を痛め、その助けになることを願っていた。
しかし、それもかなわず娘は心を痛め、ふさぎこむばかりであった。
(*゚−゚)「どなたか、」
(*;−;)「どなたか、父上を……母上をお救いくださいませ」
- 324 名前:('A`)百物語、のようです 蛇の話[] 投稿日:2010/08/29(日) 00:26:24 ID:mAjCum9E0
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(*- -) 〜〜 〜〜♪
娘の引く琴の音は、揺出須の集落、至辺里亜の山、日南所の池にまで響きわたった。
美しくも悲しい響きを聞いた者は皆、ことごとく涙を流した。
このように美しい琴の音は聞いたことがない。
さぞかし美しい姫が演奏しているのだろうと、人々は涙ながらに噂した。
そんな美しい琴の音とともに、父母を思う娘のつぶやきを聞いたものがいた。
( )「……」
娘の琴の音は毎夜、毎夜響き渡る。
娘はさめざめと泣けば泣くほど、その琴の音はますます美しくなるようだった。
(*- -) 〜〜 〜〜♪
――娘の父である男の夢枕に貴公子が現れたのは、それからまもなくのことだった。
- 325 名前:('A`)百物語、のようです 蛇の話[] 投稿日:2010/08/29(日) 00:27:10 ID:mAjCum9E0
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(,, Д )
男の枕元にいつの間にか現れたこの貴公子は、ひと目で高貴な者だとわかった。
今の男には手の届きそうもない上等な衣、優雅な身のこなし、その全てが洗練されている。
そしてそれ以上に、男の目を引き付けたのは貴公子の輝くばかりの美しさであった。
(,,゚Д゚)
おなごの様に白い艶やかな肌。
夜の闇の中でも光を失わぬ瞳は、目を離そうとしてもはなせないほどに妖しく澄んでいる。
眉の形、鼻の形、唇の色形、その全てが完璧なまでに整っていた。
( ´∀`)「そこにいるのはどなた様でありますモナ?」
(,,゚Д゚)「故ありて、名はなのれぬ」
その言葉を聞いて、「これは人ではない」と男は思った。
これは御仏の化身か、さもなくば人を惑わすモノに違いない。
――それでも、苦しい身の上にある男は聞かずにはいられなかった。
( ´∀`)「何用で、私のもとへと?」
- 326 名前:('A`)百物語、のようです 蛇の話[] 投稿日:2010/08/29(日) 00:28:07 ID:mAjCum9E0
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(,,゚Д゚)「――娘を、もらい受けに」
男は、その言葉に息をのんだ。
目の前に立つ貴公子は、見栄えだけなら婿として申し分ない。
しかし、相手は素性もしれぬ、人とも妖ともしれぬ存在。
おいそれと、首を振れるものではない。
( ´∀`)「それはできませぬ」
(,,゚Д゚)「そなたらに、子孫永劫までの繁栄を約束しよう」
( ;´∀`)「・・・・・・モナ?!」
貴公子の言葉に、男は息を止めた。
それでも、貴公子の言葉は遙かに魅力的であった。
男は口を開き、
( ;´∀`)「 」
なにやら答えたところで――、目を覚ました。
- 327 名前:('A`)百物語、のようです 蛇の話[] 投稿日:2010/08/29(日) 00:29:55 ID:mAjCum9E0
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その翌日から、娘の元に一人の貴公子が忍んで訪れるようになった。
その貴公子は毎夜、娘の元へと通った。
貴公子が現れるのは決まって、男と妻が眠りについた時分。
そして、帰るのもまた、空が白むよりもはるかに早い時間。
男も妻も幾度かこの貴公子を留めようとしたが、その姿を見ることすらままならなかった。
辛うじて見て取れたのは見るからに貴人のものと思われる牛車と、顔を隠した供の者が幾人か。
その供の者ですら、声をかけようとするたびに姿を消す有様だった。
(゚A゚* )「今宵もですか?」
( ´∀`)「……モナ」
娘のもとへと通う男の姿を見た者は、誰もいなかった。
それでもその男が貴公子と知れたのは、娘の部屋に残された衣からであった。
それは、――男の夢枕に立った貴公子が着ていたものだった。
( ∀ )「――同じ衣を持つものなど、他にいる」
(; ∀ )「物見遊山の貴公子か、どこかの大臣の落し胤に違いないモナ」
男は娘のもとを訪れるのはあの夢の貴公子だと、決して認めようとしなかった。
繁栄につられて娘をあやしげなものの妻としたなどと、認めたくはなかったのだろう。
その姿は通ってきているのはあの貴公子ではないと、信じ込もうとしているようだった。
- 329 名前:('A`)百物語、のようです 蛇の話[] 投稿日:2010/08/29(日) 00:31:09 ID:mAjCum9E0
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(*- -) 〜〜♪ 〜〜〜〜♪
( )
貴公子が来る夜、娘は必ず琴をひいた。
よほど、娘の琴が気に入りだったのだろう。夜毎に美しい琴の音が流れた。
琴の音に合わせて、澄んだ笛の音が響くこともあった。
( ) ♪ ♪
貴公子は、訪れるたびに贈り物を残していった。
初めは、娘に似合いそうな桃色の着物。
紅や、美しい染め色の布、美しい花の時もあれば、扇や、櫛の時もあった。
(゚A゚* )「まぁ、見てくださいこの文箱。
なんという美しい細工なのでしょうか」
( ´∀`)「……モナ」
(゚A゚; )「……あ」
(;´∀`)「どうしたモナ?」
- 330 名前:('A`)百物語、のようです 蛇の話[] 投稿日:2010/08/29(日) 00:32:14 ID:mAjCum9E0
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(゚A゚; )「文箱の中に玉や、珊瑚が。
ああ、このように沢山。私、はじめてみました」
(; ∀ )「――っ」
宝物のつまった文箱や、月明かりのように輝く玉、この上もなく珍しい宝。
貴公子からの様々な贈り物で、男の家は徐々に豊かになっていった。
家の仕事は下働きに、娘には女房を、そして家を守るために警護のものを。
いつしか、男の家は都にいた頃よりも豊かになっていた。
それは、まるで夢枕のお告げのように……。
( ゚¥゚)「都から、許しの文は?」
( ´∀`)「……あったらここにはいないモナ」
( ゚¥゚)「では、何かあったのですか?」
男の生活の変わりようは、美通府寺の弟のもとへと伝わった。
この弟は兄の生活の貧しさを誰よりも知っていたので、その変化に誰よりも驚いた。
世俗とは縁の切れた身ではあるが、兄の身を憂いその理由を尋ねた。
(;´―`)「……今は、言えぬ」
もっとも親しい弟にも夢の貴公子のことを話せず、男は沈黙するだけであった。
- 331 名前:('A`)百物語、のようです 蛇の話[] 投稿日:2010/08/29(日) 00:33:52 ID:mAjCum9E0
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男の家が豊かさを取り戻したその年は、長く続く日照りに苦しめられた年でもあった。
いくつもの国で、雨が降らず作物は枯れる一方であった。
(*゚−゚)「今日も、雨は降りませんでしたね」
( )「――斯様な年のようだ」
そしてそれは、揺出須の地でも同じであった。
揺出須の者は神の住まう日南所池の水は使わない。雨が降らず湧水が枯れれば、揺出須の者の命はない。
そんな状況だというのに、貴公子は娘に笑いかけ、こう告げた。
( Д )「屋敷中の器という器を外に出せと伝えろ。
甕から桶、杯や皿にいたるまで全て、外に出すといい」
(*゚ー゚)「?」
娘は夫の言葉の意味が意味するのかわからなかった。
とまどいの表情を浮かべる娘に、夫である貴公子は美しい顔を和らげて告げた。
(,,゚Д゚)「――――雨が降るのだ」
- 333 名前:('A`)百物語、のようです 蛇の話[] 投稿日:2010/08/29(日) 00:37:19 ID:mAjCum9E0
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ざぁざぁ
ざぁざぁ
男の言葉通り、雨が降った。
世にも不思議なことに雨が降ったのは、至辺里亜山から日南所池。それから、男の家のある付近だけだった。
揺出須や、その付近の集落には一滴の雨も落ちなかった。
貴公子の言う通りに男が用意した器の中には、水がたっぷりとたまった。
その水を求めて集った揺出須の者たちに、男は水を分け与えた。
もとより貴族の身である男には、売るなどと言う発想はなかった。
雨などまたいつか降るという、貴族故の気楽さで男は揺出須の者たちに水を分け与えていった。
揺出須の者たちはそれを喜び、男を敬い、男の家のために力を尽くした。
そうするうちに男の家は、その地方一帯で一番大きな家となっていた。
- 334 名前:('A`)百物語、のようです 蛇の話[] 投稿日:2010/08/29(日) 00:39:11 ID:mAjCum9E0
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( ´∀`)「――神?」
( -¥-)「笑ってくださって結構です、兄上。
それでも、揺出須ではそのようなたわいのない噂でもちきりなのです」
そのような日々が続いたある日、男の弟が訪ねてきた。
弟は思い詰めたような表情で、男の家には神がおわすのではないかと尋ねてきた。
( ゚¥゚)「兄上の家は、此処に来て以前より豊かになりました。
それに至辺里亜の山と、兄上の家にだけ降った雨。
これは神や御仏の業としか思えませぬ」
( ´∀`)「……」
( ゚¥゚)「教えては下さいませんか」
これまで起こった数々の出来事は、男一人の胸に収めておくのには限界だった。
弟の言葉に、男は全てを打ち明けた。
夢に人とは思えぬ美しい貴公子が現れたこと、その貴公子は一度も姿を見せない娘の婿かもしれぬ。
雨が降るのを告げたのもまた、娘の婿であると男は告げた。
――人ではないものがいるとしたら、それは娘の婿か夢の貴公子に相違ない。
( -¥-)「その貴公子……とても人とは思えませぬ。
神か、妖しのものか分かりませぬが、油断はなさらないでください」
- 335 名前:('A`)百物語、のようです 蛇の話[] 投稿日:2010/08/29(日) 00:40:04 ID:mAjCum9E0
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男は弟の言葉に、ついに娘の婿の正体を確かめることに決めた。
しかし、これまで姿を現さなかった婿の正体は容易には突き止められなかった。
从'ー'从「婿様がどのような御方なのか、わからないのー。
婿様がお通いになられる刻限になりますと、姫様は私を退けるのですー」
(‘_L’)「牛車の後を追いましたが、姿を見失い……」
( ;´曲`)「伴の者に問いかけてみましたら、話せぬの一点張りで」
娘付きの女房や、警護の者たちに婿の正体を探らせてみたが、成功することはなかった。
男自身も引き留めようと靴を隠してみたりと苦心したが、男の姿も、隠したはずの靴もいつの間にか消える始末であった。
(*゚ー゚)「知りませぬ」
(*- -)「私には、わからないのです」
男は婿の正体について、娘に何度も問いかけた。
説得しても、怒っても、泣いて見せても、娘の答えはいつも同じ。
僧である弟や、母親、侍女にかわるがわる問いかけさせても見たが、娘の答えは変わらなかった。
どれだけ動いても明らかにならない婿の正体に、男は焦り始めた。
- 337 名前:('A`)百物語、のようです 蛇の話[] 投稿日:2010/08/29(日) 00:41:45 ID:mAjCum9E0
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(;´∀`)「どうすれば、いいのだ」
(゚A゚* )「婿君の衣に、糸を通した針を縫いつけてみるというのはいかがでしょうか?
糸をたどれば、婿殿の在所を確かめることができましょう」
男を見かねた妻は、ある日そう提案した。
男は喜んで、娘に伝えさせたのだが、娘は頑としてそれを聞き受けなかった。
(*゚−゚)「私はあの御方の妻。
その御方を欺くような真似が、どうしてできましょうか」
いつまでたっても、何をしても男の正体はわからない。
頼りである娘は何も答えず、男の提案を拒絶する。
人ではないものは確かにそこにいるのに、それがどういうものなのかわからない。
( ´∀`)「太刀を持て」
( ; ゚¥゚)「あ、兄上?」
(#´∀`)「お前はここで待て。呼ぶまでは何があっても、姫の寝所に近づくな。
他のものも同様、禁を破りし時はその首無いものと思え!!!」
――追い詰められた男は、娘の寝間へと乗り込むことにした。
- 338 名前:('A`)百物語、のようです 蛇の話[] 投稿日:2010/08/29(日) 00:42:33 ID:mAjCum9E0
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(゚A゚; )「男と女の寝間に入るなどと」
( ´Д`)「止めるな」
(゚A゚; )「それならば、女房や母である私が……」
男の意志を伝え聞いた妻は、言葉を尽くして止めた。
しかし、男の意志は固く言葉では、止めることがかなわなかった。
(-A-*)「共に参ります。
そうでなければ、私は今ここで舌を噛みましょう」
(;´∀`)「――な」
結局、娘の寝間へは男と妻の二人で向かうことになった。
まるで、今日のような月のない夜。
妻の手にした紙燭の明かりだけが、夜を照らしていた。
娘の奏でていた琴の音はいつしか止み、聞こえるのはかすかな娘の声と、奇妙な音だけ。
( ´―`)「……」
男が几帳をどかすと、退けられその向こうの寝間の娘の姿が露わになった。
- 339 名前:('A`)百物語、のようです 蛇の話[] 投稿日:2010/08/29(日) 00:43:53 ID:mAjCum9E0
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しゅぅぅ
しゅぅぅ
紙燭に浮かび上がったのは、雪のように白い娘の肌。
(* ー )
幾重にも着こまれた鮮やかな着物ははだけ、袴も腰巻も取り去られたしどけない姿。
そのような姿でさえ、娘は美しかった。
そんな汗でぬれた娘の肌身に、一つの異様なものが這っていた。
(* )「――ぁ」
炎の明かりに照らされて、てらてらと光るそれ。
娘の肌にも負けぬ白い姿のそれは、人のものではなかった。
ふしゅぅうぅ
唸り声をあげるそれは――、一匹の、巨大な白蛇であった。
- 340 名前:('A`)百物語、のようです 蛇の話[] 投稿日:2010/08/29(日) 00:46:39 ID:mAjCum9E0
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(゚A゚;)「ひいっ」
蛇が、娘の汗ばんだ肌を舐めるように這い、動き、くねる。
白い肌に鱗が擦れ、娘の肌がかすかに色づいた。
(*゚−゚)「――とぉ、っさま?」
母親の声が聞こえたのか、娘はようやく男と妻の姿を見上げた。
紅潮した頬、潤んだ瞳、かすかに上がった娘の声はとろけるように甘かった。
(;´∀`)「くっ」
その娘の姿に男が息を飲んだのと同時に、しゅぅぅぅと声ともつかぬ音をあげ白蛇が首をもたげた。
妖しく澄んだ蛇の瞳が、じっと男の姿を見つめる。
男はおぞましい生き物の瞳から目をそらそうとして、そうすることが出来なかった。
(,,゚Д゚)
それはいつか夢で見た貴公子の瞳と、似ていた。
人と白蛇。その姿は似ても似つかぬものなのに、その瞳は確かに同じだった。
そんなことが、あっていいはずがない。
そんなことがあろうか――
- 341 名前:('A`)百物語、のようです 蛇の話[] 投稿日:2010/08/29(日) 00:48:50 ID:mAjCum9E0
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(♯´Д`)「姫から離れろぉおおおお!!!」
男は引き抜いた太刀を白蛇へと向け、振りあげる。
そしてそのまま、白蛇の首めがけて――
振り、
下ろし、
(*゚ー゚)「なりませぬ!!!」
太刀が蛇へと届くことはなかった。
娘の華奢な肌身が、刀を振るう男へと取りすがり、男の手を止めていた。
まるで白蛇を庇うかのように、娘は声をあげた。
(;゚ー゚)「おやめになってください、お父様!!!」
普段はしとやかな娘が出したとはとても思えぬ声に、男と妻は顔を見合わせた。
そして思った。
娘はこの蛇にとりつかれてしまったに違いない。
そうでなければ、蛇に身を這われながら、おやめになってくださいなどと言えるはずがない。
- 343 名前:('A`)百物語、のようです 蛇の話[] 投稿日:2010/08/29(日) 00:51:22 ID:mAjCum9E0
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(♯´Д`)「――放せ!!」
男はなんとかして娘を誑かしたこの蛇を、殺そうと決意をする。
太刀をふるおうと、すがりつく娘をふりほどこうとした――その、瞬間。
(;- -)「――ぅ、」
娘の顔が青ざめた。
口元と腹を押さえこむと、娘は力なく床に崩れ落ちた。
(;´∀`)「っ!! 誰か、誰か水を――!!」
苦しげなうめき声を上げる娘に、男も妻も息をのんだ。
(; ー )「――く」
(゚A゚; )「ああ、どうしたというのです。
――まさか、まさかそんな、……ややが」
慌てて人を呼び、男が顔をあげた時にはもう蛇の姿はなかった。
後に残るのは暗い闇と、苦しげな声をあげる娘の姿だけ。
はだけた着物の向こうに見える娘の腹は、心なしか膨れていた。
- 344 名前:('A`)百物語、のようです 蛇の話[] 投稿日:2010/08/29(日) 00:53:25 ID:mAjCum9E0
-
――その夜以降、婿の姿を見た者は誰もいなかった。
(*゚−゚)「……あの御方は、もう戻ってはこられないのでしょうか。
私は今も、待ち続けているというのに」
(,,^Д^)「ははうえ?」
(*- -)「……高良、あなたは私と一緒にいて頂戴ね」
男はその後も、手を尽くして貴公子の正体を調べたがその行方はしれなかった。
数々の贈り物ができそうなほど財をもった男は、美通府寺にも辺り一帯の集落に存在しなかった。
娘の男のもとに通ってきた男の正体は、最後までわからなかった。
( )「 」
( 川「 」
揺出須の者たちは、娘のもとに通ってきたのは蛇だったのだと噂したということだ。
- 345 名前:('A`)百物語、のようです 蛇の話[] 投稿日:2010/08/29(日) 00:56:00 ID:mAjCum9E0
-
( -д- )「――これで終わりだ」
最後にそう告げると、これまで饒舌だったのが嘘のようにミルナは静かになった。
('A`)「へ、それだけ?」
最後に貴公子の正体やら、娘のその後やらが判明するかと思っていた俺は、ついそう言ってしまう。
話が長かっただけに、最後のオチがこれなのはどうにも納得がいかなかった。
( )「うーん、いまいちもの足りないというか」
( )「 お前らどんな趣味してるんだよ。僕なら蛇が体に巻き付いてたらすっごく気持ちが悪いんだからな!」
( )「お婿さんは本当に蛇だったのかお?」
他の奴らもいろいろと思うところが、あったようだ。
ミルナの話を神妙に聞いていたのが嘘のように、皆は話しはじめる。
('A`)「それよりも、蛇の呪いとか、祟りは? っていうか、最後にオチとかないのか?」
( ゚д゚ )「無い」
(;'A`)「えー」
- 346 名前:('A`)百物語、のようです 蛇の話[] 投稿日:2010/08/29(日) 00:58:19 ID:mAjCum9E0
-
( ゚д゚ )「はじめに不思議な話と言った」
俺の言葉に、ミルナはきっぱりと言い切った。
どうやらサービス精神でホラーとかにしてくれる気はないらしい。
( )「まぁ、百物語は必ずしも怖い話をしろって決まりはないからね。
たまにはこんな話もいいんじゃないかな」
( )「十分気持ち悪いじゃん、お前らどんな趣味してるんだよー」
( )「おっおっwwwじゃあ話し終わった人は、ローソク消しに行くお」
ブーンたちは納得しているようだけど、俺はいまいちすっきりしない。
そのそも何で貴公子とやらが、娘の元にいくようになったのかわかんないし、本当に蛇だったのかもわからない。
せめて、本当に蛇だったんだよ!!ナンダッテー(ryちゃんちゃんでもよかったじゃないか。
――なんていうか、はっきりとしなくて気持ちが悪い。
('A`)「なぁ、ミルナ」
もっと詳しく聞いてないのかと聞こうと、ミルナの目を見て俺は息を止めた。
- 347 名前:('A`)百物語、のようです 蛇の話[] 投稿日:2010/08/29(日) 01:00:20 ID:mAjCum9E0
-
( ゚д゚ )「なんだ?」
暗闇の中、ミルナがじっと俺の顔を見つめ返している。
夏なのに日焼けしない白い肌、平凡そのものの顔立ちなのにやたらと存在感のある瞳。
思わずこっちみるなと言い返したくなって、だけど俺はその言葉を口にすることができなかった。
気づいてしまったから。
( )「なんだよー、お前まだ文句言いたいのか?
まったく、ドクオは昔っから性格悪いんだからな!」
( )「どうしたおー? 僕と一緒でお腹がすいたのかお?」
( ゚д゚ )「用がないなら、行く」
他の奴らの顔は闇に埋もれて、少しも見えない。
だけど、その中でミルナの顔だけがはっきりと見える。
まるで暗闇の中で爬虫類の瞳が光るみたいに……。
('A`;)「……あ」
- 348 名前:('A`)百物語、のようです 蛇の話[] 投稿日:2010/08/29(日) 01:02:28 ID:mAjCum9E0
-
立ち上がったミルナが、蝋燭を消すために立ち上がる。
だらだらと座り込んでいる俺たちにつまづくことも、ふらつくこともない、危なげのない動き。
はっきりとものが見えているような、動きだった。
(;'A`)「そういえば、さ。 お前それ美通布寺の坊主から聞いたって行ってたよな。
その男とか娘のいた家って、今も残ってんの?」
( ゚д゚ )「……」
ミルナの瞳が再び、俺を見る。
ちっとも瞬きをしない瞳がじっと、俺を見据え……ミルナの腕がそっと、伸ばされた。
(; A )「ひぃっ」
冷たい。
直前まで冷凍庫に突っ込んでたような死人みたいに冷たい手が俺に、触れる。
その手が俺の頭の上でごそごそと動いて、何かをつかむような動きをした。
( ゚д゚ )「虫がとまっていた」
(;'A`)「へ、虫?」
- 349 名前:('A`)百物語、のようです 蛇の話[] 投稿日:2010/08/29(日) 01:04:40 ID:mAjCum9E0
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( )「ドクオびびってるおwww」
( )「ブーン、あんまりそんなこと言ったら失礼だよ」
( )「今、すっげぇ変な声だったんだからな!」
ブーンたちの声が聞こえる、だけど俺はその声に笑い返すこともできない。
汗が頬を伝うのに、ミルナに触れられた部分だけは、ひどく冷たい。
( ゚д゚ )「さっきの質問だが、答えは『はい』だ。
その後も、男とその子孫の家は栄え続けた」
――それはお前の爺さんの家ではないかという言葉は、口にすることができなかった。
( )「次は誰が話す?」
( )「僕はパスー」
( )「じゃあ、僕が話すおー」
しゅぅぅ、しゅぅぅぅと空気の漏れるような音が聞こえる。
さっきも聞こえたあれは、きっと蛇の声だ。
- 350 名前:('A`)百物語、のようです 蛇の話[] 投稿日:2010/08/29(日) 01:06:15 ID:mAjCum9E0
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蝋燭を消しにミルナが姿を消した部屋に、声が上がる。
その会話に混ざることができず、俺はただ沈黙している。
(;'A`)「……」
娘のもとに現れた貴公子は、白蛇の化身だ。
日南所池に住まう神様は、水の神。
水の神は竜や蛇の姿をしているのだと、遠足で行った美通府寺でかつて聞いたことがある。
――今もあの蛇の血は生きている。
( ゚д゚ )「消してきたぞ」
帰ってきたミルナの首筋が、ぬらりと白く輝いた。
(
)
i フッ
|_|
蛇の話 了