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1 名前:名無しさん 投稿日:2016/04/02(土) 22:00:12 ID:irZNHmM.0





私は、気違いによる殺人ショーの、観客だった。
けれど、何時の間にか、そうではなくなっていて、気付いたら、私も舞台の上に立っていた。








.

2 名前:名無しさん 投稿日:2016/04/02(土) 22:01:21 ID:irZNHmM.0
私は、全てを失った。

私は、昨日まで自分の家「だった」場所で、立ち尽くしている。



突然私の銀行口座が消えた。
これが、今朝の出来事である。
銀行会社に幾ら問い合わせても、どの、記録にも私の存在は見当たらなかった。

私は、気が動転して、一度家に帰った。
そこに、妻や、子供、私の兄弟……家族の姿は、無かった。

それどころか、全ての家族の記録が消え去ってしまった。

3 名前:名無しさん 投稿日:2016/04/02(土) 22:06:03 ID:irZNHmM.0
まるで、元から存在しなかったかのように。

私は、役所まで駆けた。
私や家族の住民票は、存在せず、私の家は空き地扱いになっていた。


私は、手持ちの金を、交通費と昼食で全て使い切り、今に至る。


(  ∀) 「は………はは……」


私は、ただ笑うしかなかった。
空は、雨雲が覆っており、ぱらぱらと、小雨が降り出した。

4 名前:名無しさん 投稿日:2016/04/02(土) 22:06:38 ID:irZNHmM.0

私は、公園のベンチで項垂れている。

今まで、存在して来た私という個体は、こうして消え去ってしまった。





気付くと、夜になっていた。
眠ってしまったのか。夢は、見なかった。


( -∀-) ん……

5 名前:名無しさん 投稿日:2016/04/02(土) 22:08:06 ID:irZNHmM.0

起き上がる。
顔から土が落ちた。

私は―――地べたで眠ってしまったのだ。
何処までも情けない男だな。私は。



さて、そろそろ、死のうか。

溺死にしても、近くに水場は無い。
首吊りが、手っ取り早いか。

ロープはどうする?金がないから、買えない。
……いや、どうせ死ぬんだ。盗んだってどうって事はないな。

私は、マーケットに向かおうと、立ち上がった。
―――私の目の前に、目を疑う様な光景が広がっていた。

6 名前:名無しさん 投稿日:2016/04/02(土) 22:08:44 ID:irZNHmM.0

若者が、五人。
死んでいた。

それぞれ、服は破かれ、露わになった腹部からは、内臓が飛び出ている。

(|| ∀) 「お゛えっ………」

私は、思わず、吐いてしまった。
そして、突然伝わって来た、全身の痛みによって、全てを思い出した。





……結局、夕暮れまで、私は、ベンチで項垂れたままだったのだ。

それで突然、この五人組は私に言い寄って来た。

('A`)「何してんだオッサン」

五人の中でも、一番偉そうな男が、私に話しかけた。

( ・∀・)「……失せてろ。ゴミが」


私がこう言った瞬間、彼のパンチが、私の顔面を直撃した。

7 名前:名無しさん 投稿日:2016/04/02(土) 22:10:42 ID:irZNHmM.0
私はベンチから吹っ飛び、後ろの地面に倒れた。

( #)∀) 「ぐっ……」

彼は、うずくまる私の腹に何度も蹴りを加えた。


('A`)「なあ。あんまり調子に乗ってると、殺すぞ?」

('A`)「何してんだって聞いてんだ。オッサン」

( #)∀)「ちゃんと学校には、行ってるか?」

彼は、私の胸ぐらを掴んで引き込み、私を頭から近くのコンクリートに叩き付けた。


それからの、記憶が無い。
そうして今に繋がるのだろう。


しかし、何故?
彼らはこうして死んでいるのだろう?


(A。)

私を痛め付けた男は、眼球をくり抜かれて死んでいた。

8 名前:名無しさん 投稿日:2016/04/02(土) 22:12:14 ID:irZNHmM.0
まさか、私がこんな事を?

……そんな訳、あるはずがない。


「………なんだ。生きてたのか」

突然、後ろから男の声がした。

(; ・∀・)「だ、誰だ!?」


木陰に居る人物は、姿形が黒く塗り潰されていて、良く分からない。
ニタニタ、笑っているのか、分からないが、そんな感じがした。


「……痛快だろ?」

(; ・∀・) 「は?」

男は、そう言うと、木陰から姿を表した。
電灯に照らされた男の顔は、焦げ付いたように、黒かった。

9 名前:名無しさん 投稿日:2016/04/02(土) 22:13:42 ID:irZNHmM.0
( ^ω^)「……もし、生きてたら、楽しんでくれるかと思って」

( ^ω^)「残酷に殺してやったんだ。どうだ?」

私は、何も言う事が出来ずにいた。

(; ・∀・)

狂っている。
この男は。間違いない。

私は、逃げる事を考えた。
しかし、彼の細い目は、私の考えを見透かしているようだった。

10 名前:名無しさん 投稿日:2016/04/02(土) 22:14:59 ID:irZNHmM.0


( ^ω^)「逃げようとしてるな?」

( ・∀・)「……そんなことはない」

( ^ω^)「……そうか。お前には、勇気があるな」

男は、そう言うと、私に近付いて来た。

(; ・∀・) 「ひっ」

私は、腰を抜かし、地べたにへたり込んでしまった。
男はそれを見ると、腹を抱えてひとしきり笑った後、私に手を差し出した。

( ^ω^)「冗談だよ。俺が怖いんだろ?」

( ^ω^)「何もしないってんだったら、助けてやる」

11 名前:名無しさん 投稿日:2016/04/02(土) 22:15:39 ID:irZNHmM.0
(; ・∀・)

私が男の手を取ろうとすると、男は、その手を握り、私の目の前に持って来た。

( ^ω^)「勘違いするなよ。お前は俺に付いて来るんだ。俺が死ぬまでな」

(; ・∀・)「わ、分かった……」

死ぬって、何時迄だ。
私は、そう思ったが、言えなかった。

( ^ω^)「俺の名は、ブーンだ」

(; ・∀・)「……私は、モララーだ」

お互い名乗り合うと、男は、笑った。
私も、それにつられて、変な笑みが零れてしまった。

蝿の羽音が、耳元を通り過ぎていった。

12 名前:名無しさん 投稿日:2016/04/02(土) 22:17:42 ID:irZNHmM.0

男は、私を車に乗せ、何時間か走らせた。
車は、幾つかの町を通り過ぎた。

車は、ある丘の上にある町で止まった。

その頃には既に、月は高く登っていた。


( ^ω^)「こっちだ」

男は、私を連れて、路地裏に入って行く。

道は、暗く、汚い。
何処までも伸びて行く。

月明かりが、青白く、微かに、先行する男の姿を照らしている。

( ・∀・)「……なあ」

(   )「……何だ」

( ・∀・)「今から……何をするつもりなんだ」


私がそう問うと、男は、立ち止まった。
冷や汗が、背中を伝う。

(   )「……人殺しさ」

13 名前:名無しさん 投稿日:2016/04/02(土) 22:18:52 ID:irZNHmM.0
( ・∀・)「何故、そんな事を」

(  ^ω)「……復讐だよ」

男は、懐からナイフを取り出し、空に翳した。
刃は月明かりに照らされ、鈍く、銀色に光っている。

(  ^ω)「……俺と似ているんだよ。お前は」

(; ・∀・)「え?」

(  ^ω)「……」

(    )「……静かにしてろ。そろそろだ」

14 名前:名無しさん 投稿日:2016/04/02(土) 22:19:41 ID:irZNHmM.0

男と私は、物陰に潜んで、ある人物が通るのを待ち受けていた。

男は、私の隣で、ナイフを構えている。


( ^ω^)「隠れてろ。逃げるなよ」

言われなくても、そうするさ。
私は、頷いた。


向かい側の壁に、薄く、長い影が映った。
それは、若い男の姿にも見えた。

足音が、近付いてくる。

15 名前:名無しさん 投稿日:2016/04/02(土) 22:21:32 ID:irZNHmM.0
男が、飛び出した。

静寂の中で、ナイフが肉を裂く音が、嫌に良く聞こえた。
続く、微かな呻き声。

周囲に、おびただしい量の血が飛び散った。

とてもじゃないが、私は、その惨状を見る気にはなれなかった。

( ^ω^)「お待たせ」

暫くして、男が、物陰で震える私に声をかけた。
男の服や、皮膚には、一滴たりとも返り血は付いていなかった。
ただ、右手に持つナイフだけが、鮮血に染まり、血を滴らせていた。

16 名前:名無しさん 投稿日:2016/04/02(土) 22:22:41 ID:irZNHmM.0

(|| ∀ )

( ^ω^)「……人の死体ってのは、綺麗なもんだぜ。見てみろよ」


冗談じゃない。
私は、弱々しく首を横に振った。

( ^ω^)「なんだ」

( ^ω^)「……気分が悪そうだな。ビールでも買ってやるよ」

( ^ω^)「早く、ここを出るぞ」

(|| ∀ )「……ああ」

17 名前:名無しさん 投稿日:2016/04/02(土) 22:23:33 ID:irZNHmM.0
私は、足早に、その場を立ち去った。
血溜まりに足を踏み入れてしまった時、猛烈な吐き気が襲って来て、私は吐いた。
男は私の靴を脱ぐ様に命じ、私は靴下で歩いた。

決して、振り向かなかった。

18 名前:名無しさん 投稿日:2016/04/02(土) 22:24:24 ID:irZNHmM.0




また、車で何時間か走った。



人里離れた草原で、車は止まった。
辺りは真っ暗だ。

私は、ビールの缶を傾けた。
何も流れ込んで来ない。空だ。
そんな事を、もう何回も繰り返していた。

( ^ω^)「おい」

男は、不意に、私に呼びかけた。


(  ∀ )「……なんだ」

( ^ω^)「もっと、明るく行こうじゃないか」

19 名前:名無しさん 投稿日:2016/04/02(土) 22:25:31 ID:irZNHmM.0
随分と、馴れ馴れしくなったものだ。
私は、そう思いながら、男の言葉を聞いていた。

( ^ω^)「お前にこれをやる」

男はおもむろに、一丁の拳銃を懐から取り出し、
それを私の手に押し付けた。

冷たい。
恐ろしい程に、冷たかった。


(  ∀ )「なんで」

(  ∀ )「もし、私が、お前を撃ったら」

20 名前:名無しさん 投稿日:2016/04/02(土) 22:27:39 ID:irZNHmM.0
( ^ω^)「撃て」

(  ∀ )「……は?」

( ^ω^)「俺が、お前を殺そうとしたら」

( ^ω^)「俺を撃て」


男の口から出た言葉を、私は信じられなかった。
何故か、
男の目は、狂気にまみれつつも、その時だけは、確かな、正気を持ち合わせていた。

(  ∀ )「なんで………」

( ^ω^)「俺から、全てを奪った連中を殺す」

狂気の中の微かな正気、それは、復讐の炎だった。
男の目は、その時、復讐に燃えていたのだ。

21 名前:名無しさん 投稿日:2016/04/02(土) 22:28:27 ID:irZNHmM.0

( ^ω^)「奴らは、お前からも奪っただろ?」


続く、言葉に、私は、絶句した。


奴ら?
私の家族は、戸籍は、財産は、何者かに奪われたのか?

(  ∀ )「詳しく……聞かせてもらおうか」


朝日が、登り始めていた。
まばゆい光が、車内を照らした。

男の顔は、微かに笑っていたようだった。




.

22 名前:名無しさん 投稿日:2016/04/02(土) 22:30:10 ID:irZNHmM.0


ブーンは、話してくれた。

一人の男。私や、彼の全てを奪った男の事を。

男の名は、モナー・ディレストア。
34歳。VIP市庁勤務。妻子持ち。

モナーは、政府からの特殊工作員だ。
彼は、この広大なVIP州の闇社会の均衡を調整する役割を果たしているのだとか。
私の家族や、全ての情報は、彼の思惑によって抹消された。

あれから、ブーンは、幾つかの街を過ぎ、人を殺した。
全て、モナーを炙り出す為だ。

23 名前:名無しさん 投稿日:2016/04/02(土) 22:31:26 ID:irZNHmM.0
私は、闇社会の情勢を良く知らない。
ブーンは、自分の行いを、ジェンガの根元を抜いていくようだと例えていた。

放っておけば、モナーの死守してきた均衡は完璧に崩壊する。
私達に手を回すのも時間の問題だった。

24 名前:名無しさん 投稿日:2016/04/02(土) 22:32:40 ID:irZNHmM.0

そんな折、ブーンは、今朝、死んだ。
彼はやはり、狂っていたのだ。

ブーンは、私の首を絞め、殺そうとした。
私は、銃口を彼のこめかみに突き当て、引き金を引いた。
鼓膜を破かんばかりの衝撃音が車内に響き渡った。
私の首を握る手は弱まり、彼は、息絶えた。


こうして、私は自由になったのだ。

ブーンを殺した後、私は彼の車で近くの森まで急ぎ、彼の死体を埋めた。

25 名前:名無しさん 投稿日:2016/04/02(土) 22:34:21 ID:irZNHmM.0

そのまま、急いで数キロ移動し、今は、海沿いの安いモーテルの一室に泊まっている。

その後、私は倒れるように眠った。
目覚めて、今は、午後の七時だ。

( ・∀・)「……これから、どうするか」


私は、存在しなくなってしまった。
世界中の何処からも。

そんな私に、未来はあるのか。


少なくとも、もう、まともな人生を送る事は出来ない。

笑えてくるな。
私は、乾いた笑い声を洩らした。

26 名前:名無しさん 投稿日:2016/04/02(土) 22:37:55 ID:irZNHmM.0


考えてみれば、私の人生観なんて、しょうもない物だったのだ。

私の両親は、教育熱心だった。
これといった友人も作らず、ただ、勉強に励んでいた。
全ては、私の将来の為だと、半ば脅されるように。

恋愛だとか、そんな、青春じみた物とは縁が無かったのだ。

27 名前:名無しさん 投稿日:2016/04/02(土) 22:39:34 ID:irZNHmM.0

そのうち、私は大学に入り、大手企業への就職が決まった。
両親はそれを知ると、私に豪勢な食事を振舞ってくれた。

恋をしたのは、その後だった。


ζ(゚ー゚*ζ


デレ。
私の初めてのロマンス。
後に、私の妻になる女性だ。

思えば、彼女との出会いは何時だったか。
詳しく覚えていなかった。

彼女とは、ランチタイム中に立ち寄ったレストランで出会った……そんな記憶がある。

とにかく、あの時の私は、初めての恋というのに、すっかり嵌り込んでしまった。

28 名前:名無しさん 投稿日:2016/04/02(土) 22:42:10 ID:irZNHmM.0

彼女は、画家の卵であった。初めて個展をすると聞いた時は、誰よりも早く、私は飛んで行った。
その一方で、彼女の経済状況はあまり豊かであるとは言えなかった。

完全に浮かれていた。

恋人を1年くらいやった後、私は、彼女を両親に紹介した。
結婚を本気で考えていた。

しかし、両親の反応は芳しくなかった。

しかし私は浮かれていた。
愛の力で何もかも上手く行くと信じていたのだった。

……そして、第一子が誕生した。
私と彼女の間に出来た、初めての子供だった……。

29 名前:名無しさん 投稿日:2016/04/02(土) 22:43:21 ID:irZNHmM.0


気付くと、短針は8時を示していた。


( -∀-)「……腹が減った」

( ・∀・)「確か、レストランが近くにあったな」


私は、財布を持って、部屋から出た。
その時、懐から何かが抜け落ちた。

(; ・∀・)

ブーンから渡された拳銃だった。
私が彼を殺す為に使った、拳銃だ。

私は、急いで懐にそれをしまい直した。


……何故、これをまだ私は持っているのだろう?
彼を殺した後だ。もう必要無いじゃないか。
それなのに、私は、こうして大事に保持したままでいる。

30 名前:名無しさん 投稿日:2016/04/02(土) 22:44:18 ID:irZNHmM.0
―――モナーが私とブーンに手を回すと、言っていた。
だから、これは保身の為だ。

そう思い込もうとしたが、どうしても、違和感は消えなかった。
いや、きっとその真相に、気付きたくないのだ。

拳銃の、怪しげな冷たさが、暫く手から抜けなかった。


廊下を抜け、階段を降りる。
階段を降りている途中で、一人の男とすれ違う。

31 名前:名無しさん 投稿日:2016/04/02(土) 22:45:01 ID:irZNHmM.0


( `ハ´)


すれ違いざま、男が、こちらを見ていた。

アジア人。

黒いスーツに身を包んでいる。



そう思った時には、私の身体は宙に浮いていた。


(  ∀ )「うわっ………!!」

私の身体は、背中を下にして、階段の角に叩き付けられた。
衝撃で息が止まる。視界が明滅する。

32 名前:名無しさん 投稿日:2016/04/02(土) 22:45:41 ID:irZNHmM.0
急回転する、視界の中で、男が、私を見降ろしていた。

痛みは、感じなかった。
ああ、死ぬというのは、もしかして、こういう事なのかもしれない。

遠くから、困惑の声が聞こえる。
男は、私の肩を担ぎ、何か、従業員に話していた。

男は、そのまま、私をモーテルの外へ連れ出した。


モーテルのネオン灯が、どんどん遠くなっていく。
夜の闇の中に、消えて行ってしまう。



……やめろ。
男は、ここで、私を、殺すつもりだ。


.

33 名前:名無しさん 投稿日:2016/04/02(土) 22:46:23 ID:irZNHmM.0

男が、私を地に投げ飛ばす。
また、視界が明滅する。


銃口が、私に向けられた。


( `ハ´)「モララーだな」

(  ∀ )「……モナーは元気か?」


朦朧とした意識の中で、私は、ブーンに殺されかけたこと、ブーンを殺した事を思い出した。

男は、私の反応が気に入らなかったのか、私の事を蹴っ飛ばした。
私の身体は、玩具の様に、無様に転がった。


見ると、隣で、ブーンが同じ様に倒れていた。

34 名前:名無しさん 投稿日:2016/04/02(土) 22:47:05 ID:irZNHmM.0

( ^ω^)「久しぶり」

(  ∀ )「……ああ」

(  ∀ )「もうすぐ、俺も死ぬのか」


ブーンは、何も言わず、ただ、ケラケラと、笑っている。

( ^ω^)「あの世も楽しいもんだぜ」

……そうか。そうだな。それも、悪くない。
私も、笑った。つもりだったが、顔だけが微妙に歪んだ。

35 名前:名無しさん 投稿日:2016/04/02(土) 22:47:40 ID:irZNHmM.0

( ^ω^)「でもよ」


( ^ω^)「お前の懐には、銃が入ってる。違うか?」

( ^ω^)「殺せよ」


ブーンは、私に、そう、迫った。


「待って」


ブーンの後ろに、細い足が見えた。
穴の空いたジーンズ。何処か、見慣れた様に感じる。


ζ(゚ー゚*ζ「待って」

―――ああ、そうか。
デレの、足だったのか。

(  ∀ )「……デレ、」


彼女は、私をじっと、見据えている。

36 名前:名無しさん 投稿日:2016/04/02(土) 22:48:43 ID:irZNHmM.0

ζ(゚ー゚*ζ「人を殺すのはいけないことよ」

(  ∀ )「でも」

ζ(゚ー゚*ζ「分かるわ。話合えば、分かる」

( ^ω^)「そんなに甘い世界じゃねえよ」

ブーンが、デレの言葉に反応する。

それはまるで、私の中で、天使と悪魔が囁き合っているようだった。

37 名前:名無しさん 投稿日:2016/04/02(土) 22:49:15 ID:irZNHmM.0

(  ∀ )「デレ、君を、愛してる」

ζ(゚ー゚*ζ「……私もよ、モララー」

(  ∀ )「君は、本当に、其処に居るのかい?」

ζ(゚ー゚*ζ「……いいえ。居ないわ」

(  ∀ )「君の所へ行きたい」

ζ(゚ー゚*ζ「駄目よ。生きる、生きるの」

ああ、デレ。

そんな事を言わないでくれ。
今更生きたって、何の意味があるのだ。
全てを失った時、私はとうに死んでいたのだ!

( ^ω^)「殺せ。殺して、生きろ」

ζ(゚ー゚*ζ「生きるのよ、希望を持つの」

38 名前:名無しさん 投稿日:2016/04/02(土) 22:50:39 ID:irZNHmM.0

やめろ。
私はもう、限界なのだ。生きることに、すっかり疲れてしまったのだ。

( ;∀; )「やめてくれ。もうこれ以上、辛い思いをしたく、ないんだ」

( ^ω^)「お前は型に嵌って動けないだけだ」

( ;∀; )「お前みたいに狂って生きるなら、死んだ方がマシだ!!」

ζ(゚ー゚*ζ「落ち着いて」

( ;∀; )「デレ!頼むから、君の所へ、行かせてくれ!」

ζ(゚ー゚*ζ「駄目よ。それは、駄目」

( ;∀; )「なんで……!」



涙に、視界が、歪んだ。
ブーンの姿も、彼女の姿も、ぼやけていって、何も、居なくなった。


身体が、千切れる様に痛い。

39 名前:名無しさん 投稿日:2016/04/02(土) 22:51:30 ID:irZNHmM.0

( `ハ´)「……泣いて、いるのか」


男が、私にそう問うた。


( ;∀; )「……殺せよ、早く」

( `ハ´)「……それは無理だ」

( `ハ´)「モナーは、死んだ。俺にはもう、お前を殺す必要がない」


モナーが、死んだ?
私は、呆然とした。

神は、何処までも私を苦しめるのか。


( ;∀; )「……煙草を」

( `ハ´)「……いいだろう」

40 名前:名無しさん 投稿日:2016/04/02(土) 22:52:27 ID:irZNHmM.0

男は、一本取り出して、私に渡した。


吸ったことなんて、一度もなかった。
初めての煙草を、殺し屋から貰うなんて、皮肉じみている。

( ;∀; )「ライターをくれ」

( `ハ´)「ああ」


私は、煙草に火を付けて、思い切り肺に満たした。
初めての煙草の味に、噎せてしまった。

不味い。最悪な、味だった。


( `ハ´)「まさか、初めてか?」

( つ∀;)「……不味い、不味いよ。良く吸えたもんだ」

それでも、私は、縋る様に、吸い続けるしかなかった。

41 名前:名無しさん 投稿日:2016/04/02(土) 22:53:01 ID:irZNHmM.0


( ・∀・)y-~「……俺には全部無い」

( ・∀・)y-~「戸籍も、家族も、金も」

( `ハ´)「俺もそうだった」

( `ハ´)「そんな輩は、ごまんと居るさ」

( ・∀・)y-~「……そうか。そうだよな」

( `ハ´)「……じゃあ、な。もう会う事も無いだろう」


私を殺そうとしていた男は、そう言って、闇の中に独り、消えて行った。



微かに、波の音が聞こえる。
世界は、変わらず、動き続けているようだ。
私の事など、意にも介さずに。


ふと、懐にあった拳銃に触れた。
冷たい。

彼の狂気を、託されたのだと、思った。

死んでも尚、復讐を果たす為に。
だが、その目的も、消え失せた。

42 名前:名無しさん 投稿日:2016/04/02(土) 22:53:37 ID:irZNHmM.0
( ・∀・)y-~

気付けば、煙草の味にも慣れていた。
私は、煙草を地面に捨て、靴で火を消す。

( ・∀・)「さよならだ」


私は、独りつぶやき、海へと歩き出した。

43 名前:名無しさん 投稿日:2016/04/02(土) 22:54:19 ID:irZNHmM.0


海は、底無しの闇で、地獄へと続く大きな穴の様に思えた。

( -∀-) 

……さよならだ。ブーン。
冥土の土産に、これを、持って行くがいい。

私は大きく振りかぶり、銃を、海へと投げた。

銃は、遠く闇の中を落ちて行き、見えなくなった。


さよならだ、デレ。
私の子よ。
君達の事を、愛していた。

だけど、もう、ここまでだ。
私は忘れるよ。

私は、生きるだろう。

まだ、人生は長い。

44 名前:名無しさん 投稿日:2016/04/02(土) 22:55:12 ID:irZNHmM.0







( -∀-)

( ・∀・)「冷えて来たな」


私は、モーテルへと歩き出した。









.

45 名前:名無しさん 投稿日:2016/04/02(土) 22:55:57 ID:irZNHmM.0


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