時をかける俺以外

126 名前: ◆QS3NN9GBLM[] 投稿日:2016/04/02(土) 22:59:29 ID:JUjYJa420
ツンは逮捕されず、彼女の実家の生花店も存続した。
僕の叶えたかった夢のすべてが、すでに遂げられていた。

町内会は相変わらず寂れていたが、駅が発展して、お客さんも微増していた。
ツンは商店街の振興に積極的に働きかけ、町内会のキャラクターを考案した。

銀色タイツの宇宙人。

ξ^凵O)ξ「これ、着てよ。絶対ショボンに似合うんだから」

彼女の生花店でバイトしていた僕は、その着ぐるみを着て毎日軒先に立った。
客を呼び込み、花を選び、カウンターでお金を受け取る。
その繰り返しの毎日が、ただツンの生きているという事実だけで嬉しく思えた。

これ以上、望むものもない。
このまま、何事も起きなければいい。

このままツンが笑顔のまま、僕のそばにいてくれれば。

(´・ω・`)「それだけで、いい」

庇の下から空を見上げて、暮れゆく空に一人つぶやいた。

127 名前: ◆QS3NN9GBLM[] 投稿日:2016/04/02(土) 23:01:22 ID:JUjYJa420
あれからブーンの母の姿も一度もみなかった。
ツンが暗い気持ちを込めているしぐさも見られなかった。

僕はすっかり安心して、毎日を受容しようと努力していた。

しかし、ひとつ気がかりなことがあった。

ξ゚听)ξ「じゃあ、お店番よろしくね」

週に何度か、ツンは僕にそう言い伝えて店を後にした。
行き先は知っている。

ξ^凵O)ξ「ドクオのところ」

質問をしたら、何度もでも温かい顔でそう答えてくれた。

その友達が誰なのか、僕はうわさで聞いている。
学生時代の自殺未遂で頸椎を損傷し、半身不随となった男だ。

甲斐甲斐しい両親の世話もあって未だに生きてはいるものの、身体はほとんど動かないでいる。

128 名前: ◆QS3NN9GBLM[] 投稿日:2016/04/02(土) 23:02:19 ID:JUjYJa420
ツンは週に二、三度ドクオに会いに行っている。
彼を介護するためだ。

それが何故かと問われると、彼女はいつでも「友達だから」と口にした。

僕はその言葉を信じた。
店番を頼んでくるのも、一人で店にこもるのも、彼女とためだと思って口を閉ざし続けた。

我慢強さには昔から自信があった。
耐えて耐えて、ツンのためにいよう。

そう思っていた。

病室に行ったのは、いつ頃のことだろう。
大地震が起こる何日か前の日だ。

その日僕は手が空いていたので、ツンと一緒に病室へと入った。

('A`) ・・・

横たわっている彼がドクオだった。

僕に目を向けて、歪んだ舌で言葉でもない何かを呻いている。

129 名前: ◆QS3NN9GBLM[] 投稿日:2016/04/02(土) 23:03:19 ID:JUjYJa420
(;´・ω・`) ・・・

僕は怖気づいていた。
辛い病状であることは百も承知だったのに、ドクオの視線の暗さに怯えていた。

ツンは何も気にしていないふうに、ドクオのそばに寄り添い、太ももを持ち上げた。

ξ゚听)ξ「今日はね、私の友達が来てくれたんだよ」

ドクオの耳元まで顔を寄せて、ツンがいう。

('A`) ヴァ

言葉じゃない。
空気の掠れ音だ。

そうだというのに、ツンは僕を見た。

ξ^凵O)ξ「ほら、ショボンも挨拶してよ」

ツンの突きつけてきた笑顔が僕の胃の腑に重く落ちた。

130 名前: ◆QS3NN9GBLM[] 投稿日:2016/04/02(土) 23:04:19 ID:JUjYJa420
ドクオが空虚な目を僕に向ける。
この男は本当に生きているのか。
そんな疑問を抱きたくなるくらい感情のない顔をしている。

胃がきりきりと痛んだ。

(;´・ω・`)「ごめん、ツン。僕、ちょっと席を外すから」

痛んだ腹をさすりながら、ツンとブーンにさよならをする。
振り返りもせずにリノリウムの床を走り、トイレんにかけこみ便器を前にうずもれた。

胸板の裏側で心臓が乱暴に跳ねている。

ツンはいったい何年間彼の世話をしているのだろう。
高校時代からだとすれば、とっくに十年は経っているはずだ。

その十年を、ツンは友達の世話で潰したというのか。

(;´・ω・`)「そんなの……悲しすぎる」

気づけば僕は胸に手を当てていた。

131 名前: ◆QS3NN9GBLM[] 投稿日:2016/04/02(土) 23:05:32 ID:JUjYJa420
そのとき、気づいた。
掌の中に何かが入っている。

かくばった感触のそれは、見間違いでなく、青白い光を放ち始めていた。

(´・ω・`)「……これは、あのときの」

景色が歪んだ。
原色が光り、立ち位置がわからなくなる。

タイムリープのとき。

(´・ω・`)「好都合だよ」

ほくそ笑みながら、ショボンは掌の石をつまんだ。


   〇〇〇


    ↓


   零零零

132 名前: ◆QS3NN9GBLM[] 投稿日:2016/04/02(土) 23:06:37 ID:JUjYJa420
僕の体は縮んでいた。
学生時代。それも高校時代の僕。
親が帰ってくる前の静かな時間、自室で一人、理科のノートを開いていた。

(´・ω・`)「止めないと」

意識を取り戻した僕は、駆け足で街の外へと出た。

目的地はドクオの家。
住所の知識はなかったが、聞き込みをして自力でたどり着いた。

彼の死を食い止めなければならない。
そうしないと、ツンの日々が失われてしまう。

逼迫した感情が、僕を毎日のようにドクオの家に通わせた。

133 名前: ◆QS3NN9GBLM[] 投稿日:2016/04/02(土) 23:07:50 ID:JUjYJa420
うまくいくときはうまくいった。

('A`) ソロリ

早朝の窓から顔を出しているときに。

(´・ω・`)「おまわりさーん!」

(;'A`) ビクゥ

これだけで顔を引っ込めてくれれば御の字だ。
ドクオはもう出てこない。

しゃべったこともない男だったが、僕は熱心に彼の行動を研究した。

それでも失敗は幾度もあった。

( A )

窓から落ちて、腕やら脚やらがあらぬ方向に曲がった姿。
誰よりも先に発見したのは僕だった。

134 名前: ◆QS3NN9GBLM[] 投稿日:2016/04/02(土) 23:08:59 ID:JUjYJa420
弔いの気持ちを載せて、一瞬目を閉じる。

ドクオはすでに死んでいた。

(´・ω・`)「待ってな」

胸に手を当て、祈りを込める。



   零零壱



そして気づけば、僕は数時間前の自室にいた。



   零壱零


   零壱壱



途中からの分岐を変える回数を重ねた。
行動パターンを読み取ろうと後を追い続けた。

だけど、ドクオはなかなか改心しなかった。

   壱零零


   壱零壱

135 名前: ◆QS3NN9GBLM[] 投稿日:2016/04/02(土) 23:10:11 ID:JUjYJa420
僕が自殺を食い止めていることをドクオは決して知りえない。
だから反省だってしない。
そのたびごとに運が悪かったと思うだけで、諦めない限りは次々と新しい自殺方法を考案する。

僕は彼との頭脳争いにすっかり辟易してしまっていた。

加えて。

(´+ω+`) ウッ


タイムリープを終えると、目がかすむようになった。
頭にひどい痛みが残り、立っているのもやっとになった。

三十分ほど木陰に隠れて休んで、深呼吸。

体力がずいぶん減っている。
奇妙に思いながら、ふとポケットにいれた石を触った。

光り輝いている。
精神力が吸い取られている感覚に、ショボンは末恐ろしくなった。

136 名前: ◆QS3NN9GBLM[] 投稿日:2016/04/02(土) 23:11:01 ID:JUjYJa420
春休みがちっとも終わらない。
ドクオはもう百回は死にかけている。

こんなに自殺したがる人が世の中にいるものなのか。

( A ) アッ……

今度の死因は交通事故死。
自分から車道に突っ込んだ。
運転していた男はすぐに逃げて、道の真ん中にドクオがひとり横たわっている。

いつもならすぐ助けるのに、僕は疲れにかこつけて何もしないでいた。
目の前で、ドクオの動きがどんどん鈍くなっていく。
確実に死が近づいている。

137 名前: ◆QS3NN9GBLM[] 投稿日:2016/04/02(土) 23:12:03 ID:JUjYJa420
反省をした。
僕はドクオのことを知らない。

知らないでいるけれど、うわさには聞いている。
彼の自殺を食い止めなければ、ツンが罪の意識を感じて、ブーンの母を殺してしまう。

小手先ではだめだ。
ドクオの死を阻止するだけではない。

解決するには、もっと根本から。

(´・ω・`)「神様なのか何なのか、わからないけど、お願いだ」

いつしか、この次元ではない誰かに祈りをささげるようになっていた。


   零零零


   ↓↓↓


    000

138 名前: ◆QS3NN9GBLM[] 投稿日:2016/04/02(土) 23:12:59 ID:JUjYJa420
ξ゚听)ξ「タイム……リープ」

致し方ないことだった。

ドクオのことを知っているものでないと、彼の生活を把握できはしない。

必要なのは仲間だ。
僕の知っている中で、もっとも条件を見たしていたのはツンだけだった。

実家の生花店のことは僕もよく知っていた。だから簡単に忍び込めた。

(´・ω・`)「これからドクオはたくさん死のうとする。君なら、彼をきっと救えるだろう」

面と向かっての突飛な話を信じてもらえたのは、話の中に、高校生活で知りえたツンのプライベートな事柄をちりばめていたからだ。
とりわけドクオの自殺願望について、ツンにも思うところがあったらしく、真剣に耳を傾けてくれていた。

(´・ω・`)「協力が必要なんだ。頼む」

139 名前: ◆QS3NN9GBLM[] 投稿日:2016/04/02(土) 23:14:00 ID:JUjYJa420
ξ゚听)ξ「ねえ、ひとつだけきかせて」

僕の提案に乗る前に、ツンが僕を呼び止めた。

ξ゚听)ξ「あなたはいったい何者なの。私の知り合い?」

(´・ω・`)「いいや。今のところは」

ξ゚听)ξ「あ、もしかして今度くるっていう転校生?」

(´・ω・`)「ははは」

そんな噂がもう広がっているらしい。
きっと担任のデミタスがうっかり漏らしてしまっていたのだろう。

(´・ω・`)「とりあえず、秘密ってことにしてくれよ」

僕は言葉を濁して、ツンの家を後にした。

140 名前: ◆QS3NN9GBLM[] 投稿日:2016/04/02(土) 23:15:00 ID:JUjYJa420
   001

   010

   011


ドクオの自殺の阻止は思った以上にうまくいった。
行動パターンをつかむ可能性が前よりも格段に増えた。

ツンがどれほどドクオを把握しているのか。
今もってしてよくわかる。

春休みが終わった。
ドクオは学校に無事通った。

時は流れて、夏が過ぎた。
うるさかったセミたちも、今ではヒグラシが夕暮れ過ぎに鳴くだけだ。

九月になって、僕は教室の扉をくぐった。
たどり着いた窓際の席。

ξ゚听)ξ「やっぱり」

隣にいたツンが、驚きと微笑みの入り混じった複雑な顔をする。

(´・ω・`)「うん。すまないね」

軽く頭を下げておいた。

ドクオは学校を休みがちだった。
それでも学校に籍はあった。

望みはあった。
このままドクオが死ななければ、万事うまくいく。

141 名前: ◆QS3NN9GBLM[] 投稿日:2016/04/02(土) 23:16:00 ID:JUjYJa420
ツンと一緒にドクオの自殺を阻止するのは、僕たちの日課になった。
タイムリープするのはツン。僕は彼女といっしょに作戦を練った。

    100

本来の自殺が春だったことを考え見れば、季節はすでに秋。
半年以上も生きながらえていることになる。

    101

    110

    111

だが、依然として自殺は続く。
どうもドクオ自身の気持ちが晴れていないらしかった。

根本的に時を戻さなければならないケースも増えてきていた。


   AAA

142 名前: ◆QS3NN9GBLM[] 投稿日:2016/04/02(土) 23:17:00 ID:JUjYJa420
   AA∀


   A∀A

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
   EEE

   EE∃


いくつもの時間軸を乗り越えて、次第にツンは物静かになっていった。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

   yyy


   yyλ

143 名前: ◆QS3NN9GBLM[] 投稿日:2016/04/02(土) 23:18:12 ID:JUjYJa420
タイムリープを行えばツンの精神は削られていく。
そのことについては伝えてあった。
無理をするなとも言っておいた。

ξ゚听)ξ「気にしないわよ」

ドクオを守るためだから。
言葉のあとには、いつもそう続いていた。

(´・ω・`) ・・・

(´・ω・`)「そうかい」

僕は、聞こえないふりをしていた。



   ∽∽∽

   ∽∽S


      ・
      ・
      ・

144 名前: ◆QS3NN9GBLM[] 投稿日:2016/04/02(土) 23:19:14 ID:JUjYJa420
その日、ドクオは久しぶりに死にたくなったらしい。
夕方過ぎにふらりと家を出て、駅まで自転車でむかっていった。

ホームに並んで、アナウンスを聞いた。

「特急電車が通過します」

白線の内側に下がる人々の間に立って、ドクオは全く動かない。
その時点で、彼を怪しげに見つめる人もいた。
異様な雰囲気を察したのかもしれない。

踏切の音が聞こえてきた。
ドクオがわずかに身を沈める。足に力が入っている。

ライトが差し込んできた。
特急電車がやってくる。

(´・ω・`)「おい」

ドクオの肩に手を触れたら、不快そうにはらわれた。
まだこちらを向いてくれない。

そして。

ξ゚听)ξ「久しぶり、ドクオ」

146 名前: ◆QS3NN9GBLM[] 投稿日:2016/04/02(土) 23:20:12 ID:JUjYJa420
そのとき、ドクオは何を思っていたのだろう。
突然現れたツンと僕を交互に見た。

学校に出てこないでいる彼に親しく話しかけるのはツンくらいしかいない。
そのツンだって、ぎこちない雰囲気は隠せないでいる。

まして転校生の僕となると、名前だって覚えていてくれているのか自信はない。

ドクオが眉を寄せた。

あたりが静まり返る。
一定のリズムで動いていたヒグラシの声が、急にトーンを落とした。

声は自然と強調される。

「なあ」





('A`)「お前らさ、タイムリープしてね?」

147 名前: ◆QS3NN9GBLM[] 投稿日:2016/04/02(土) 23:21:13 ID:JUjYJa420
いったいどこで気づいたというのだろう。
時を遡っているなんて発想が普通の人に浮かぶものだろうか。

時をかけてなどいないというのに、ドクオはそれに気づいてしまった。



   SSS



気づいたら、駅のホームの階段だった。

(;´・ω・`)「ツン?」

傍らにたつツンは、手の甲を握って壁に寄りかかっている。

ξ; )ξ ハア、ハア

荒く息を吐いており、額には脂汗が滲んでいた。

(;´・ω・`)「おい!」

148 名前: ◆QS3NN9GBLM[] 投稿日:2016/04/02(土) 23:22:38 ID:JUjYJa420
精神力の限界。
自分も一度陥ったことのある境地だ。

特急電車の走る音が聞こえてくる。
衝突音、それから悲鳴。

ホームの喧騒を振り返らずに、僕はツンを連れて屋外に出た。

夜空の下の駅前広場。
星の光は夜の街の騒々しい光に相殺されている。

ツンをベンチに座らせて、僕も横に座り、一息ついた。
あわただしく人の行き来する駅を見ながら、しばらくお互い黙っていた。

救急車の音が聞こえてくる。
助かる見込みはあるのだろうか。
粉々に砕ける姿が頭をよぎり、急いで首を横に振った。

149 名前: ◆QS3NN9GBLM[] 投稿日:2016/04/02(土) 23:23:40 ID:JUjYJa420
喧噪は後ろにしながら振り返らず、ツンの肩を支えていた。
そうしていないと彼女が身体ごと倒れてしまいそうだった。

(´・ω・`)「深呼吸をしよう」

彼女の背中をさすりながら、提案をした。
ツンの首肯を見届けてから、大きく息を吸って、夜空を見上げた。
目に見えない僕らの吐息が音を立てて流れていく。

何度か繰り返しているうちに、ツンも落ち着いてきたらしい。
肺は大きく膨らむが、苦しそうな声は止んだ。

(´・ω・`)「どうしてタイムリープをしたんだい」

救急車の音が聞こえてきて、自然とその問が浮かんだ。

ξ;凵G)ξ「わからないの」

語尾を震わせたか細い声だ。
口を開けば、彼女の狼狽は晒されてしまう。

ξ;凵G)ξ「本当に、どうしてなんだろう。せっかくドクオを助ける機会だったのに」

150 名前: ◆QS3NN9GBLM[] 投稿日:2016/04/02(土) 23:25:04 ID:JUjYJa420
本当にわからない。
壊れてしまった玩具のように、ツンはそう繰り返していた。

(´・ω・`) ・・・

(´-ω-`)

彼女のことをかわいそうに思った。

なぜわからないのか。
いくら責めても、問いただしても、答えは返ってこないのだろう。

なぜなら彼女は、優しいからだ。

ほとんど毎日のようにツンと一緒にいる僕にはよくわかっていた。

ドクオが、駅のホームで私たちを振り返ったとき。
彼の視線にあった鋭い悪意に、僕は気づいていたし、彼女だって感じたのだろう。

彼女は、怖かったのだ。
タイムリープをしていた者として、ドクオに敵意を向けられることを。

それはきっと無意識のうちの拒絶なのだろう。
彼女はまだ、自分の瞳が常にドクオから離れないでいることに無自覚でいるのだから。

151 名前: ◆QS3NN9GBLM[] 投稿日:2016/04/02(土) 23:26:13 ID:JUjYJa420
僕はいつから気づいていたのだろう。
ドクオの自殺を食い止め始めてからだろうか。
その提案を彼女に持ち掛けてからだろうか。

あるいは、一番初めの時間軸で、彼女の隣の席に着いた時から、うっすらと気づいていたのかもしれない。

ツンはいつも、友人であるドクオの話をする。
ドクオの身を案じ、身を賭して救おうとする。


ツンは、ドクオの傍に居たがっている。
僕の入り込む余地はどこにもない。

気づくチャンスはいくらでもあった。
それでも僕は気づかないふりを通していた。
彼女を救うという大義名分を損なわないために、ドクオとツンとの関係を頭の中から消していた。

ξ;凵G)ξ「ドクオ……」

走り去っていく救急車の背中を見つめながら、ツンがぽつりと呟いた。
横に僕がいることなどまるで気にしていないかのように。

152 名前: ◆QS3NN9GBLM[] 投稿日:2016/04/02(土) 23:27:13 ID:JUjYJa420
ξ;凵G)ξ「ねえ、ショボン。私、もう一度タイムリープをしたい」

ツンの顔が僕の方へと向けられた。
泣き顔が、星々の光に照らされている。

綺麗な顔だ、と改めて思った。
懇願のために眉根を寄せているのがもったいないくらいだった。

(´・ω・`)「残念だが、君の精神は限界なんだ」

僕はなるべく淡々と説明してあげた。
タイムリープの限界で、意識を失う。
何が起こるか確証はもてない。下手したら廃人になるかもしれない。

事細かに説明すると、上気していたツンの顔が白んだ。

ξ;凵G)ξ「それじゃ、いったいどうすればいいの」

(´・ω・`)「方法はあるよ。石をくれ」

153 名前: ◆QS3NN9GBLM[] 投稿日:2016/04/02(土) 23:28:12 ID:JUjYJa420
ξ゚听)ξ「タイムリープをするときにもらった石?」

(´・ω・`)「そう」

提案はいたってシンプルだ。
ショボンの力で時を戻す。
ツンがまだタイムリープを授かっていない世界に行く。

精神力を削るのはタイムリープの本人であるショボンだけだ。

ξ;凵G)ξ「でも、ショボンの精神は大丈夫なの?」

(´・ω・`)「だいぶ休ませてもらったからね。ほんの数か月巻き戻すくらいわけないよ」

片手で胸元をたたいてみたら、思いのほかいい音がした。
ツンの泣き顔に、初めて笑いが入り込んだ。

それだけでも、この時間軸に来た甲斐があるというものだ。
口には出さずにそう考えて、ほうっと大きく息を吐いた。

ξ;凵G)ξ「ショボン、必ず私に会いに来てね。一緒のクラスになって、作戦を練ろう。ドクオを助けるために」

最後の最後まで、ツンはそう言っていた。

154 名前: ◆QS3NN9GBLM[] 投稿日:2016/04/02(土) 23:29:12 ID:JUjYJa420
(´・ω・`)「もちろんだとも」

いつの間にか彼女にさえ、僕は躊躇なく嘘を言うようになっていた。

ツンの顔が穏やかになる。

ξ゚听)ξ「ありがとう」

赤い目をしながらも、頬をぬぐって、涙の跡をさすっていた。

(´・ω・`) ・・・

(´・ω・`)「うん」

僕から与えてあげたのはほんの小さな同意だけ。
それでも十分だったらしく、ツンは口元を笑いで満たした。

(´・ω・`)「……ははは」

口から洩れた笑い声を野放しにして、僕は空へと祈りをささげた。
掌に包まれた黒の花弁がおりかさなって 熱を帯びる。

あたりがどんどん白んでいく。
駅も、ベンチも、人々も、ツンさえもその場に見えなくなる。

155 名前: ◆QS3NN9GBLM[] 投稿日:2016/04/02(土) 23:30:14 ID:JUjYJa420
(111=7)   SSS     





(110=6)   SS∽     




(101=5)   S∽S     



(100=4)   S∽∽     


(011=3)   ∽SS     

(010=2)   ∽S∽     
(001=1)   ∽∽S     
(000=0)   ∽∽∽     


    ↓↓↓


(000=0)   ∞∞∞

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