( ゚д゚)土地神様に憑かれちゃったようです

1 名前: ◆cYvcLUF1CM 投稿日:2016/04/03(日) 23:49:59 ID:hfyj6fNQ0

木造二階建て 築60年
内装のリフォームによって今風の皮を被ったぼろアパート
家賃激安
しかし何故か人が寄り付かず、部屋数8に対し、入居者は僅か2人

自分はその2人目として、不動産屋に拝み倒されるようにして契約書にサインしてしまった

アパートから駅まで徒歩5分 駅から職場まで30分
家賃激安
億劫なご近所付き合いや騒音問題の懸念も一切なし
良い契約だと思った
良い契約だと、思っていた


( ゚д゚)「…………またか」

入居から一週間
既に後悔しはじめていた

2 名前: ◆cYvcLUF1CM 投稿日:2016/04/03(日) 23:57:40 ID:hfyj6fNQ0
.


( ゚д゚)土地神様に憑かれちゃったようです



.

3 名前: ◆cYvcLUF1CM 投稿日:2016/04/03(日) 23:58:09 ID:hfyj6fNQ0


ぴちょん

朝のキッチンに立ち尽くす

洗い物は昨夜のうちに終わらせ、食器もしっかり水気を拭き取って、戸棚にしまってから眠りに付いた

( ゚д゚)「…………」

しかし朝起きて流し台を覗き込むと、そこには使用済みのグラスがひとつ


( ゚д゚)「……とうとう牛乳にまで手を出したか」


流し台に置かれたグラスには、白い汚れがくっきりと残っている
試しに冷蔵庫の牛乳パックを確認してみると、見事に空っぽになっていた

( ゚д゚)「飲み切ったならしまい込むなよ……」

ため息をつきながら、牛乳パックを濯ぎ、資源回収用に綺麗に切り開いた

朝食のお供としてあてにしていた牛乳の代わりに、インスタントのコーヒーを淹れた
寝起きの胃に悪いような気もしたが、普段よりすっきりと頭が冴えた気がする

( ゚д゚)「……さすがに対応を考えないとな……」

4 名前: ◆cYvcLUF1CM 投稿日:2016/04/03(日) 23:58:35 ID:hfyj6fNQ0

人が寄り付かない
家賃格安
何かあるとは思っていた
事故物件か、いわくつきか……なんにせよ気にさえしなければ、「見え」たことのない自分には何も問題はないと思っていた
しかしこうして物理的な現象が起こるとなると、看過するわけにはいかない

しかし、どうすればいいのか
朝食のパンを齧りながら考える


越して来て三日目には、この現象が起こり始めていた
物が移動していたり、今日のように身に覚えのない洗い物が増えていたりと、現象は様々だ

一応何か怪現象がある度に、戸締りは確認している
玄関や窓はすべてきちんと鍵がかかっていた

怪現象をオカルティックな怪奇現象として捉えるか、家の なか に誰かがいる可能性を考えるか
……後者は考えたくなかった


( ゚д゚)「……違約金…引っ越し代…………暫くは無理だな……」

合掌して洗い物をした後、食器を片付けてから家を出た

5 名前: ◆cYvcLUF1CM 投稿日:2016/04/03(日) 23:59:05 ID:hfyj6fNQ0


***


帰宅した時、違和感を感じた
外気に不釣り合いなほどに、家の中が暖かい

( ゚д゚)「…………」

電気をつけないまま、息を殺して家に上がり込む
足音を忍ばせてリビングの戸に近づいた

( ゚д゚)「…………」

磨りガラスの引き戸の向こう 暗闇の中に、ぼんやりとした何かが見える

(;゚д゚)「…………」

生唾を呑む
ここ数日悩まされた怪現象の犯人が、おそらく引き戸の向こうにいる
逸る心臓を掌で押し潰し、一度大きく深呼吸をする

意を決して引き戸に手をかけ、勢いよく引き開けた

( ゚д゚)「―――ッ……!」

6 名前: ◆cYvcLUF1CM 投稿日:2016/04/03(日) 23:59:31 ID:hfyj6fNQ0


( ><) そ


(;゚д゚)



(;><)「…………」


(;゚д゚)「…………」




(;><)「……見つかっちゃったんです」

(;゚д゚)「み……みつけちゃったんです……」


真っ暗なリビングで勝手に暖房をガンガンに効かせて、
お楽しみにとっておいたアイスとポテチの袋を抱えた小柄な少年が、リビングの真ん中で寛いでいた

7 名前: ◆cYvcLUF1CM 投稿日:2016/04/04(月) 00:00:31 ID:NP9rgBes0


パチン

(;><)「ひゃぁっ!」

リビングの電気をつけると、少年はびくりと跳ねて目を覆った
眩しかったのかもしれない

照明に照らされた少年をまじまじと見入る

(;><)「そ……」

( ゚д゚)「そ?」

(;><)「……そ…………そんなに、見ないでほしいんです……////」

( ゚д゚)「人の家で全力で寛いでおいて、難しいことを言うな」

ポテチの油と溶けたアイスでべたべたになった小さい手で顔を覆う少年を、穴があくほど眺めてやった

8 名前: ◆cYvcLUF1CM 投稿日:2016/04/04(月) 00:01:02 ID:NP9rgBes0

少年は不思議ななりをしていた
見た目は5.6歳くらいに見える
肩に触れる程度の長さの、濡れたように艶やかな黒髪
うっすら二重で垂れ気味の細目
一見どこにでもいる幼女のような、可愛らしい顔立ちと、細い手足
しかし身に纏っているのは、いまではあまり見かけない簡素な浴衣だった
藍色と白の地に、南天のような赤い斑点の模様が控えめにあしらわれている
脛の中ほどまでしかない裾からすっと伸びた細いふくらはぎは、雪のように白かった


( ゚д゚)「……足はあるな。てことは普通に人間か」

少し間を開けて、少年の隣に胡坐をかいて座り込んだ
床まで食べカスだらけで、後で掃除しなければと思った

改めて少年をまじまじと眺めていると、少年はにっこりと笑って人差し指で自分の頬を指した

( ><)「ぼくの名前はびろーどなんです」

( ゚д゚)「キラキラネーム……なるほど今風だな」

( ><)「きらきら……?びいどろじゃないんです。びろーどなんです」

( ゚д゚)「ビロードは生地の種類だ。語感が良かったのかもな」

( ><)「きじ……?ごかん……?」

( ゚д゚)「あぁ、お前の歳じゃわからんだろう。気にするな」

9 名前: ◆cYvcLUF1CM 投稿日:2016/04/04(月) 00:01:33 ID:NP9rgBes0

びろーど、びろーど…… と、口で語感を楽しみながらティッシュの箱を手繰り寄せる
話の片手間に、拾える食べカスだけでも片付けておこうと思った
少年は隣で、餅のような頬をふくりと膨らませた

( ><)「……なんかばかにされた気がするんです」

( ゚д゚)「気のせいだ」

食べカスを拾う前の綺麗な手で少年の頬をそっとつついた
……餅というより大福か練り切りに近いかもしれない

( ゚д゚)「ところで親御さんはどうした?心配してるんじゃないか?」

( ><)「あ、やっぱり子供扱いされてるんです」

( ゚д゚)「子供扱いもなにも……」

( ><)「僕は子どもじゃないんです。こう見えてもゆうに300歳を超えた、立派な大人なんです」

( ゚д゚)「そうかそうか、すごいすごい」

( ><)「あ、信じてませんね」

10 名前: ◆cYvcLUF1CM 投稿日:2016/04/04(月) 00:01:58 ID:NP9rgBes0

少年はすっくと立ち上がると、油と糖分にまみれた手を腰に添え、食べカスだらけの顔でどやっと胸を張った

( ><)「ぼく、こう見えて土地神様なんです!実はすごいんです!」

( ゚д゚)「土地神ごっことはまた渋いな……地縛猫の影響かな」

( ><)「あんなインチキ自地縛霊と一緒にしてほしくないんです!」

( ゚д゚)「概要まで知ってるあたり、しっかり見てはいたんだな」

( ><)

( ゚д゚)

( ><)「……これだから大人はきらいなんです」

( ゚д゚)「自称300歳の言葉とは思えんな」

11 名前: ◆cYvcLUF1CM 投稿日:2016/04/04(月) 00:02:20 ID:NP9rgBes0

雑談を交わしながらあらかた食べカスを拾い集め、ティッシュにくるんでゴミ箱に放り込んだ
壁掛け時計を見上げると、ちょうど長針が1に重なるところだった
時刻は9時  帰宅してから一時間も経っていたことになる

( ゚д゚)「……さて、残りの掃除は後にするとして……」

そろそろ重い腰を上げて、この少年を彼の家ないし交番に送り届けなければならない
出来れば警察の手を借りず、騒ぎを大きくしないまま、親元へ送り届けたかった

( ゚д゚)(警察に「家に帰ったら少年が勝手に上がり込んでいました」なんて言っても信じてもらえんだろうし……)

( ゚д゚)(……正直、そんな誘拐の嫌疑をかけられるようなリスキーな真似はしたくない……)

全ては我が身我が生活の安全が第一だった


( ゚д゚)「…………」

ポテチの袋を抱えて離さない少年をまじまじと眺める
先程から会話した感じ、帰らない事への焦りや不安さは微塵も感じられない
それどころか、放っておいたらこのままいつまでも居座られそうな雰囲気だった

( ゚д゚)「…………」

少年の言葉を真に受けているつもりはないが、先程から少年に違和感は感じ始めている
いまどきの子供は、びいどろなんてものを知っているのだろうか
あれくらいの歳の子が、よりにもよって土地神ごっこなんかするだろうか

12 名前: ◆cYvcLUF1CM 投稿日:2016/04/04(月) 00:02:50 ID:NP9rgBes0

ようやくポテチをたいらげたらしい、口の周りまで油ギッシュな少年に声をかける

( ゚д゚)「…………お前、いつ帰るんだ?」

( ><)「やしろにひとりぼっちはさみしいんです。ここならあったかいお部屋で、おいしいものも食べ放題なんです」

( ゚д゚)「勝手に上がり込んで勝手に暖房をつけて勝手に菓子にまで手をつけるクソガキの、親の顔を見てみたい」

( ><)「やおよろずの端くれとはいえ神様に向かってクソガキとか言いやがったんです」

( ゚д゚)「神様なら電気代と菓子代をきちんと払ってくれるんだろうな?神様だもんな?」

( ><)「貴重な御賽銭としてありがたく頂戴したんです」

( ゚д゚)「子供が難しい言葉を使って大人をはぐらかすのはよくないぞ」

( ><)「そろそろ信じてほしいんですー」

ポテチの袋を放り投げ、フローリングの上をごろごろと転がる 自称『土地神様』

( ゚д゚)「あーはいはい、もう腹も膨れただろ。そろそろ帰ろうな」

( ><)「いやですぅー。このままここに居付くんですぅー」

( ゚д゚)「自称土地神が地縛宣言とか、格下げもいいところだろう」

( ><)「御神体をここに持ってくれば無問題なんです」

( ゚д゚)「問題しかないな」

13 名前: ◆cYvcLUF1CM 投稿日:2016/04/04(月) 00:03:15 ID:NP9rgBes0

しばらく駄々をこね続けた少年は、唐突に何かをひらめいたかのように「はっ!」とわざとらしい声を上げた後、
またすっくと立ち上がり、腰に手を当てて胸を張って見せた

( ><)「ぼくが神様だって証明すれば、きっと信じてもらえるんです!」

( ゚д゚)「まぁ……そうだな」

( ><)「信じてもらえれば、きっと信仰してもらえるんです!」

( ゚д゚)「ん?」

( ><)「そしたらここに御神体を移してもらえて、ぼくは毎日空調の整った部屋で、献上された美味しいお菓子をたらふく食べながら、新しく雇ったかわいいお巫女さんに膝枕で頭をなでなでしてもらえるんですね!!!!」

( ゚д゚)「おいちょっと待て」

ヒートアップの末に欲望を暴走させた少年は、勝手に妄想を口走り勝手にガッツポーズをしている
あまりにも欲望に忠実すぎて、土地神を自称する少年がただの年相応の少年にしか見えなかった
そろそろ問答無用で頭をひっぱたいて追い出すのが正解なのかもしれない

しかし少年は先程「証明すれば」と言っていた
何か、神様を自称するだけの証拠を見せてくれるのかもしれない
興味本位というか、怖いもの見たさだった

( ゚д゚)「証明……って、何か出来るのか」

( ><)「朝飯前なんです!」

( ゚д゚)「ほう……」

( ><)「きちんと証明できたら、冷蔵庫のプリンくださいなんです!」

( ゚д゚)「それだけは許さん」

14 名前: ◆cYvcLUF1CM 投稿日:2016/04/04(月) 00:03:43 ID:NP9rgBes0


( ><)「すぐ入ってくるので、みててくださいなんです」


彼はそう言って、すんなり家から出て行った
鍵をかけても構わないとまで言っていた
幼い少年を寒空の下に放り出すのは少々気が引けたが、証明の為、仕方なく、鍵を二重にかけ、チェーンをしっかりかけ、扉の前に荷物が入った段ボールを積み上げた

( ゚д゚)「これで入ってはこれないだろう……なんかよく分からんが、やっと追い出せた……」

一仕事終えたとばかりに息をついて、夕食を作るべくリビングに戻った



( ><)「ただいまーなんです」


( ゚д゚)「……」

( ゚д゚)「……」

( ゚д゚ )「……?」

15 名前: ◆cYvcLUF1CM 投稿日:2016/04/04(月) 00:04:06 ID:NP9rgBes0

( ゚д゚)「……は?」

( ><)「信じてもらえましたか?」

( ゚д゚)「どこから入った?」

( ><)「鍵さんが通してくれたんです」

少年がこともなげに言ったことが、どうにも信じられなかった

( ゚д゚)「びろーど、もう一回頼む」

( ><)「えー?お外寒かったからいやなんですぅー」

( ゚д゚)「プリン」

( ><)「いってくるんです!」


少年を連れて、もう一度玄関へ

( ><)「うわぁ……こんなに厳重に閉め出されてたんですね……」

( ゚д゚)「気にするな。証明のためだ」

( ><)「大人って怖いんです」

16 名前: ◆cYvcLUF1CM 投稿日:2016/04/04(月) 00:04:32 ID:NP9rgBes0


『もーいーかーい  なんです』

玄関の扉の向こうから、少年の声が聞こえる

( ゚д゚)「もーいーぞー」

もう一度少年を外に出した後、また二重に鍵を閉め、チェーンをかけ、段ボールを積み上げた
今度はきちんとここを通って入ってくると宣言されたので、扉から目をはなすことはない

少年を待つ間、背筋はずっとぞわぞわしていた
恐怖と不気味さと、ほんの少しの嫌悪感に戦慄していた

外に出す前にもう一度確認したが、少年の足はちゃんとあった
外に出す時に背中に手を添えたが、貫通したりはしなかった
なりは変わってはいるが、普通の少年だ
普通の少年のはずだ

いまに「こんなの通れるわけないじゃないですかぁ〜開けてください〜」と声をかけてくるに決まっている
そう信じている

そう、信じていたかった

17 名前: ◆cYvcLUF1CM 投稿日:2016/04/04(月) 00:04:57 ID:NP9rgBes0


キィ……

( ゚д゚)「!!!?」

最初に音を立てたのは、鍵だった
回すタイプの鍵のつまみが、二つともゆっくり、あまり音も立てずに回っていく
次に動いたのはチェーンだった
じゃらりと持ちあがり、ゆっくりと外れ、じゃらんと勢いよく落ちる

( ゚д゚)「…………」

開いた口が塞がらなかった
今まさに、目の前で怪奇現象がおこっていた

全身の毛がぞわぞわと立ち上がる
可愛らしい少年の存在に、やっと本格的に恐怖した

( ゚д゚)「なんなんだあいつは……!?」

今更になって警戒心が湧きあがってくる
今まさしく、怪奇現象の元凶が再び部屋の中に入ってこようとしていた

ギィ……

ドアノブが回る
そしてゆっくりとドアが動き出……

(;゚д゚)「っ……!」

18 名前: ◆cYvcLUF1CM 投稿日:2016/04/04(月) 00:05:22 ID:NP9rgBes0

ゴッ  という鈍い音と、少年の「ひゃっ」という小さな悲鳴が聞こえた

(。><)「荷物の存在を忘れてたんです……」

( ゚д゚)「…………」

怪奇現象の元凶は、気付いたら荷物を超えて玄関の中に立っていた
立って、たんこぶのできた頭をさすっていた



***

( ><)「たんこぶつくってプリン一つとか、わりにあわないんです」

( ゚д゚)「だからって二つ目はやらんからな」

( ><)「大人なのにけちんぼなんです」

唇にカラメルをつけながらプリンを頬張る少年をじっと眺める

(*><)「そんなに見つめられると照れちゃうんです」

( ゚д゚)「お前気持ち悪いな」

少年を眺めながら、考える
あの後結局、土地神とは認めないまでも、人ではない事は理解した
探している親御さんもいなければ、匿っていても警察沙汰にならないことになるので、不承不承ではあるが、再度家に上がらせた

19 名前: ◆cYvcLUF1CM 投稿日:2016/04/04(月) 00:05:48 ID:NP9rgBes0

少年ばかりものを食べ続けていて、自分は帰って来てから何も食べていないことに気がついた
作る気力もないのでコンビニに行こうと、財布を持って立ちあがった

( ><)「どこか行くんです?」

( ゚д゚)「飯買ってくる」

(*><)「あ、ぼくおいなりさんがいいんです!お茶は五右衛門一択なんです!あと、お夜食のカップめんとー、夜おやつのポップコーンとコーラもほしいんです!」

( ゚д゚)「清々しいほどに図々しいな」


コンビニから帰ると、少年は玄関までお出迎えをしてくれた

( ><)「おかえりなさいなんですー!ぼくの食べ物さんたち♪」

( ゚д゚)「おいなりさんとコーラしか買ってきてないぞ」

( ><)「最悪の組み合わせなんです。センスのかけらも感じないんです」

( ゚д゚)「そうかいらんか。なら俺が食おう」

( ><)「これだから大人はきたないんです。いたいけな子供の足元見てきやがるんです」

( ゚д゚)「いたいけな子供はそもそもそんな図々しい要求してこないと思うぞ」

20 名前: ◆cYvcLUF1CM 投稿日:2016/04/04(月) 00:06:19 ID:NP9rgBes0

文句たらたらな少年だったが、テーブルに弁当とお稲荷さんを並べたら、黙って隣に座ってきた

( ゚д゚)「…………」

( ><)「……コーラに免じて五右衛門は我慢してあげるんです。でも神様にお神酒もお茶も出さないのはいただけないんです」

( ゚д゚)「……」

( ><)「……」

( ゚д゚)「ほうじ茶でいいか」

( ><)「ありがとうなんです」


何かと図々しい少年だが、家でひとと食事をするには久々だった
嬉しいわけではないが、時々襲ってくる寂しさを感じることなく食事ができたと思う
普段生活音もろくにない我が家が、すこしだけ賑やかになった気がした





( ゚д゚)「…………で、いつまで居る気なんだ?」

( ><)「え?」

一週間経っても、少年が帰る気配はなかった

21 名前: ◆cYvcLUF1CM 投稿日:2016/04/04(月) 00:06:41 ID:NP9rgBes0

少年が居付いて、気がついたら一週間が経っていた
あれから何度か帰ることも促したし、休日を使って外に連れ出したりもした
何度聞いても少年は、どこの社に祀られているかを教えてはくれなかった

( ><)「社に置き去りにする気なんです!絶対そうに決まってるんです!」

( ゚д゚)「当り前だろう……いつまでも居られても困る。主に食費面で」

( ><)「甲斐性の無い男は嫌われるんですよ」

( ゚д゚)「ヒモ男に言われたくはないな」


今日も今日とて、リビングでひなたぼっこをしながらコーラ片手にテレビに突っ込みを入れている
掃除をしようにも掃除機もかけさせてくれそうにないし、洗い物の水音にも文句を言われそうだった
実は荷解きもあと半分ほど残っているが、リビングを占拠されているせいで始めようがない
洗濯も外に干したいが、干すと窓からの日光が遮られてしまう
ひなたぼっこの邪魔をして洗濯物を外に飛ばされてしまった前回の休日のことを思い出して頭を抱えた

22 名前: ◆cYvcLUF1CM 投稿日:2016/04/04(月) 00:07:19 ID:NP9rgBes0

( ゚д゚)「まったく……折角の休日が……」

( ><)「ん?今日お休みなんです?」

( ゚д゚)「そうだが……なんだ、動物園には連れて行かんぞ」

( ><)「いや……まぁ、仕方ないんです」

( ゚д゚)「なんだ、居ると都合が悪いのか」

( ><)「実は今日、お友達が遊びに来るんです」

( ゚д゚)「は?」

少年はむくりと起き上がると、外出用に買い与えた服に着替え始めた

( ゚д゚)「出掛けるのか?」

( ><)「お友達の為のおやつを買いにいくんです」

( ゚д゚)「そうか」

( ><)「だからお小遣いほしいんです♪」

( ゚д゚)「家にある菓子じゃだめなのか」

( ><)「仙人の子なんですけど、彼は霞と林檎しか食べないんです」

( ゚д゚)「それ本当に仙人か?変なノート持った死神とかじゃないか?」

23 名前: ◆cYvcLUF1CM 投稿日:2016/04/04(月) 00:07:45 ID:NP9rgBes0


少年に小銭を握らせ、送り出した
付き添う事も考えたが、相手は怪奇現象を起こせる自称土地神だった  人間の子供と違って誘拐の心配はないだろう

( ゚д゚)「……さて、今のうちに洗濯と掃除機……」

( <●><●>)「おや、では少し席を外した方がよさそうですね」

( ゚д゚)「いや、気遣いは御無用…………」


( ゚д゚)   (<●><●> )


( ゚д゚ )   (<●><●> )


びろーどのような艶やかな黒髪、二重瞼のおおきな瞳
白いパーカーにベージュのハーフパンツ 男の子らしからぬ二―ハイソックス
いきなり家の中に現れたのでなければ特に驚かないような、(びろーどに比べると)普通の子供のようななりをした少年が、家の中に立っていた


( ゚д゚)「……に、二回目だから驚かんさ」

( <●><●>)「声、震えてますよ」

( ゚д゚)「……すまん見栄を張った。だが頼むから背後からいきなり声をかけるのはやめてくれ」

( <●><●>)「失礼いたしました」

24 名前: ◆cYvcLUF1CM 投稿日:2016/04/04(月) 00:08:11 ID:NP9rgBes0

( <●><●>)「私の名前は若桝 あなたのことはびろーどから聞いています」

きちんと正座して座り、膝に両手をついてハキハキと喋る少年は、びろーどとは雲泥の差だった
外見はびろーどより少し年上くらいにしか見えないが、700年ほど差があるらしい

( ゚д゚)「……まさか仙人をもてなすことになるとは思わなかったな」

( <●><●>)「恐縮です。どうかお構いなく」

( ゚д゚)「…………はぁ〜……」

( <●><●>)「?」

( ゚д゚)「月とすっぽん  炭とダイヤ  ヒモと神様」

( <●><●>)「……あぁ、びろーどですか」

( ゚д゚)「いやぁ……開いた口が塞がらん」

( <●><●>)「心中お察しします」

彼の瞳が少しだけ曇った気がした
彼もまた、びろーどの被害者なのかもしれない

25 名前: ◆cYvcLUF1CM 投稿日:2016/04/04(月) 00:08:35 ID:NP9rgBes0

バターン  と、喧しさの元凶が帰って来た

( ><)「ただいまーなんで……あ、わか!」

( <●><●>)「びろーど、お久しぶりです」

( ><)「久しぶりなんです!半世紀と三ヶ月ぶりなんです」

( <●><●>)「半世紀と二ヶ月半ですね」

( ><)「わかはいつも細かいんです!」


半世紀ぶり  という単語か当たり前のように少年達の口から飛び出して来て、わかっていたはずなのに頭を抱えたくなった

( ><)「わかのために林檎を買って来たんです!てあらいうがいビタミンレモンしたら、この下僕にむかせるんです」

( ゚д゚)「おいちょっと待て」

( ><)「宮司も祭司も巫女も、みんな僕の召使いなんです。家主は下僕くらいなんです」

( ゚д゚)「ほぉうそうか、お前は俺をそんなふうに見ていたのか」

( ><)「僕は神様ですからね」

( ゚д゚)「若桝君」

( <●><●>)「は、塩はここに」

(;><)「あれ!?わかはそっちサイドなんです!?あっ祓いの清め塩はやめてっ!心にっ、話せばわか……あ―――――――――――――!!!!!」


若桝特製の清め塩は、心が穢れきった土地神にも有効なようだった
後で閉め出し用に分けてもらおうと思った

26 名前: ◆cYvcLUF1CM 投稿日:2016/04/04(月) 00:09:02 ID:NP9rgBes0

あの後しばらく、びろーどは若桝にみっちりと説教されていた
部屋の隅に追い詰めて正座させ、仁王立ちでくどくどねっちりと、外見に似つかわしくない難しい言葉を多用して、びろーどを追い詰めていた


( <●><●>)「……まったくあなたという人は、いつまで経っても成長の兆しも見せずにいつまでも稚拙な態度をとり続けて……何年生きているのですか?恥ずかしくないのですか?
       人間は今20ほどで成人するんですよ?あなたは?いつまでも幼稚なまま?そんなことが許されるとお思いですか?いっそ神様なんかやめたらどうです?
       転生して……ひとに生まれ変わっても迷惑ですね、ダンゴムシにでもなったらどうです?向いてますよ?」

(。><)「ぅー……ううぅ〜……」

( <●><●>)「泣いて許されるなら閻魔様はいらないのですよ」


辛辣だった
聞いているこっちの肩身まで狭くなるほど辛辣だった

そそくさと林檎の皮をむき、切り分け、芯を取り除いて皿に並べた
早くこれを差し入れて部屋に引っ込もうと思った

( ゚д゚)「ほ、ほら……林檎がむけたぞ。変色する前に食べろよ」

( <●><●>)「あ、すみません。お見苦しいところをお見せしてしまいました」

( ゚д゚)「いや、むしろ助かった。そのまま連れ帰ってくれるとなお助かるんだがな」

( ><)「うさぎさんじゃないんですー……」

( <●><●>)「びろーど」

( ><)「なんでもないんです」

27 名前: ◆cYvcLUF1CM 投稿日:2016/04/04(月) 00:09:27 ID:NP9rgBes0

( ゚д゚)「じゃ、じゃあ、ごゆっくり……」

( <●><●>)「ありがとうございます」

寝室に逃げ込もうと、後ろ手でドアを開けた
若桝に会釈して、そのまま下がるようにフェードアウトしていこうとした

と、尻に何かが当たった

( ゚д゚)「おっと……ん?」

(* ω  *)「ん――…ん〜〜」

( ゚д゚)「?」

そっと距離を取って、呻いている何かの正体を確認した

(*‘ω‘ *)「童貞の匂いだっぽ。青臭い童貞の匂いだっぽ。何が悲しくて張り合いのないおっさんの尻に顔を埋めなきゃいけないんだっぽ」

若桝とそう変わらないくらいの年頃の少女が、童貞を連呼していた

28 名前: ◆cYvcLUF1CM 投稿日:2016/04/04(月) 00:09:59 ID:NP9rgBes0

( ゚д゚)「どどど童貞ちゃうわ!」

(*‘ω‘ *)「なんにせよ御無沙汰だっぽ?女の匂いがしない」

(;゚д゚)「ぐぬっ……!」

(*‘ω‘ *)「あーあーいやだっぽねぇ最近の男は。みーんな枯れてやがるっぽ」

( ><)「ぽぽちゃん!」

(*‘ω‘ *)「おー素人童貞、久しぶりだっぽ」


ぽぽちゃん と呼ばれた少女は、気だるげに片手を上げて応えた

( ゚д゚)「……素人、童貞…?」

( <●><●>)「こんななりのヒモクズでも、300年生きてれば過ちの一つや二つ、ありますよ」

(*><)「照れちゃうんです」

(*‘ω‘ *)「褒めてねーっぽ」

29 名前: ◆cYvcLUF1CM 投稿日:2016/04/04(月) 00:10:22 ID:NP9rgBes0

テーブルをみんなで囲い、お茶を啜った
若桝にリンゴジュースを作って振る舞った


( ><)「改めて紹介するんです。仙人の若桝君。齢1000年の仙人なんです」

( <●><●>)「霞より林檎が好きです」

( ゚д゚)「だからそれ本当に大丈夫か?ノートに名前書かれたりしないか?」

( ><)( <●><●>)「?」


( ><)「弁天様のぽぽちゃんなんです」

( ゚д゚)「やけにぶっ飛んだ七福神だな」

( ><)「好物は妻子持ちなんです」

( ゚д゚)「ちょっと待て」

(*‘ω‘ *)「新婚からおしどり夫婦までなんでもござれだっぽ」

( ゚д゚)「本当に七福神なのか?疫病神とか色情魔とかじゃないよな?」

(*‘ω‘ *)「趣味は参拝に来た妻子持ちを引き裂くことだっぽ」

( ゚д゚)「触らぬ神に祟りなしとは聞くが、ここまでとは思わなかったわ」

30 名前: ◆cYvcLUF1CM 投稿日:2016/04/04(月) 00:10:46 ID:NP9rgBes0

( ゚д゚)「しかし……いち土地神にも、こんな人脈があるもんなんだな」

( ><)「この地域は小さな神社で弁天様を祀ってるんです。だからぽぽちゃんは、僕が土地神様になった時からのお友達なんですよ」

(*‘ω‘ *)「引き裂いて余った妻子の斡旋もおまかせだっぽ」

( ゚д゚)「おいやめろそれは聞きたくない」

( <●><●>)「私は仙人ですが、尸解仙というものでして……死後肉体を消滅させ、肉体があった場所から離れた地で仙人になったクチだったのですが、それがたまたまこの界隈で……」

( ゚д゚)「待った。死後肉体が無くても動きまわるのは、幽霊や妖怪と何が違うんだ?」

( <●><●>)「格……ですかね」

(;゚д゚)「…………気の持ちよう、という解釈で構わんか?」

( <●><●>)「私は仙人です」

( ゚д゚)「……」

( <●><●>)「私は、仙人です」

(;゚д゚)「わかったもういい仙人でいい」

(*‘ω‘ *)「ケツの穴の小さい仙人だっぽ」

( ><)「肉体が無いならむしろ限界が無いわけだし、可能性は無限大なんです」

( ゚д゚)「お前達頼むからその外見でそういう話するのをやめろ」

31 名前: ◆cYvcLUF1CM 投稿日:2016/04/04(月) 00:11:13 ID:NP9rgBes0

(*‘ω‘ *)「とことで……」

お茶をぐっと飲み干した少女が、びろーどをじっと見つめる

(*‘ω‘ *)「お前、最近見かけなかったと思ったらこんなところに居付いて……社はどうしたっぽ?」

( ><)「ぎくぅ」

思い出したように、若桝も顔を上げた

( <●><●>)「あぁ、私もそこは気になっていたので、聞いておこうと思ったんですよね」

( ><)「ぎぎぎぎくぅ」

びろーどはびくりと肩を震わせ、ギギギとブリキのような音を立ててそっぽを向いた

( <●><●>)「御神体が見当たらなかったのですが、まさかここに安置しているのですか?」

(*‘ω‘ *)「いや、御神体の気配はないっぽ」

(;><)「そそそそんなことはどうでもいいんです。ポテチのおかわりを要求するんです」

( ゚д゚)「こいつは来たときから、今までいた社の位置を吐かないんだ」

( ><)「そんなことしたら社に縛り付けられて置き去りにされるのが目に見えてるんです!」

( ゚д゚)「当り前だろう」

32 名前: ◆cYvcLUF1CM 投稿日:2016/04/04(月) 00:11:35 ID:NP9rgBes0

( ><)「と、とにかく、もう社なんてしらないんです。僕はここに住むんです」

お茶をぐっと飲み干したびろーどは、その場で寝転んでごろごろとのたうった
お茶を濁すびろーどと、眉間に皺を寄せて思案する若桝とぽぽ

( <●><●>)「まさか、社に何かあったのです?」

(*‘ω‘ *)「こいつが無事だから御神体には影響が無いってことだと思うっぽけど……」

( <●><●>)「では事故や災害のせいではなさそうですね」

(*‘ω‘ *)「…………そういえば」

無言で空の湯飲みをつきつけておかわりを要求しながら、ぽぽが何かを思い出したかのようにきり出した

(*‘ω‘ *)「社のそば、最近工事してるっぽね」

( ><)「!」

( ゚д゚)「!」


びろーどがひくりと跳ねた
自分も、工事と聞いて心当たりがあった

( ゚д゚)「もしかして、近日開店のショッピングモール……?」

( ><)「…………」

眉間に皺を寄せるびろーど
どうやら図星のようだった

33 名前: ◆cYvcLUF1CM 投稿日:2016/04/04(月) 00:12:04 ID:NP9rgBes0

ここ2年ほど、大型のショッピングモールを建てる為に工事している区画があった
言われてみると確かに、あの辺りに2畳分ほどの土地にしめ縄と社があったような気もする

( ゚д゚)「なるほどな……あのへんか」

ぽぽと自分の湯飲みに新しいお茶を注ぎ足した
ぽぽは礼も言わないどころか、目も合わせずにお茶を啜った

( ゚д゚)「……」

(*‘ω‘ *)「もしかして、社移転すんのかっぽ?」

( ><)「……」

座布団を丸めて抱きつき、ごろごろ転がるびろーど

( <●><●>)「図星のようですね……もういいでしょうびろーど、洗いざらい話しなさい」

( ><)「…………ぐぬぅ……」

睨みつけるようにこちらを見上げるびろーど
意図はなんとなく汲み取った

( ゚д゚)「まぁ、事情だけは聞こう」

( ><)「……」

不貞腐れたような顔のままむくりと起き上がり、抱きしめていた座布団を敷いてもぞもぞと正座した

34 名前: ◆cYvcLUF1CM 投稿日:2016/04/04(月) 00:12:32 ID:NP9rgBes0

( ><)「……いま御神体は、工事現場の中にあるプレハブに安置されています」

大きな座布団の上でこぢんまりと座ったびろーどが、ようやく重い口を開いた

( ><)「プレハブは暗くて、寒くて……誰も遊びに来てくれないんです」

(*‘ω‘ *)「建て替えの時は確かに心にくるっぽねぇ……」

( ><)「誰も遊びに来てくれないし、参拝にもこないんです」

( <●><●>)「まぁ、一般人は立ち入り禁止ですしね」

( ><)「そうなんです……だから、寂しくて……」

訥々と語られる、御神体の安置所の話  そして、社の話

( ><)「社はもうとっくに取り壊されてて……」

( <●><●>)「土地の問題ですかね」

(*‘ω‘ *)「びろーど、次、どこにいくんだっぽ?」

( ><)「完成したショッピングモールの屋上の……貯水槽の隣になるらしいんです」

(*‘ω‘ *)「うわぁ……」

ぽぽがあからさまに顔を顰めた

35 名前: ◆cYvcLUF1CM 投稿日:2016/04/04(月) 00:12:58 ID:NP9rgBes0

貯水槽の隣
聞いただけで大体景色の想像がついた

( <●><●>)「配置によっては、日が当たらないじめじめした立地になりそうですね」

若桝も同じ感想を抱いたようだ

(*‘ω‘ *)「お散歩ついでに寄ってくれてた参拝客も、さすがにそんなところまでは来てくれないっぽよねぇ……」

( ><)「遊び相手どころか、手入れすらおざなりにされる可能性があるんです」

( <●><●>)「ありえますね……綺麗なのは最初だけとか」

(*‘ω‘ *)「夏はボウフラ湧き放題かもしれないっぽねぇ」

( ><)「いやなんですー!!だから僕はあんなところに入りたくないし、ここに御神体を安置してのびのびくらしたいんですー!!」


末端神属の井戸端会議は、びろーどの行き先を案じる流れになっていた
……が、ここで同情して流されるわけにはいかなかった

36 名前: ◆cYvcLUF1CM 投稿日:2016/04/04(月) 00:13:20 ID:NP9rgBes0

( ゚д゚)「……ふむふむ……いや、だからって許可はしないけどな?」

(*‘ω‘ *)「は?」

( ><)「やっぱり人間は血も涙もないんです」

(*‘ω‘ *)「一方的に困ったときだけ神頼みに来るくせに、こっちが困ったら知らぬ存ぜぬかっぽ」

( ><)「都合が良すぎるんです」

(*‘ω‘ *)「家も狭ければ器もちいさいのかっぽ?ちんこも小さい上にきんたまついてるのかもあやしいっぽ」

勝手に棲みついておいて、酷い言われようだった

( ゚д゚)「だからそのなりでそういうこと言うのやめろ」

もう一度言うが、ぽぽの外見は、若桝とそう変わらないくらいの年頃の少女だ
まんまる二重にふっくらほっぺの愛らしい少女の口から、やれちんこだきんたまだなどと聞きたくはなかった

( ゚д゚)「事情は理解したし、同情もしたいところだ。しかし俺にも生活があるんだ。わがままで大食らいな得体の知れない子供を、いつまでも匿っているわけにもいかないんだ」

( ><)「さらっとディスられたんです」

( <●><●>)「まぁ、もっともですよね」

(*‘ω‘ *)「ブルータスお前もかっぽ」

37 名前: ◆cYvcLUF1CM 投稿日:2016/04/04(月) 00:13:40 ID:NP9rgBes0

( ゚д゚)「まぁ事情は事情だし、プレハブに一人なのは確かに寂しいかもしれない」

( ><)「です」

( ゚д゚)「とりあえずショッピングモールが開店するまでは、仕方がないからうちで面倒をみよう」

( ><)「!!」

( ゚д゚)「だが、オープンしたらきちんと新しい社に戻るんだぞ。そこから先は知らんからな」

( ><)「……!!」

( <●><●>)「……嬉しいような、納得しきれないような」

(*‘ω‘ *)「ゴネればもう一声もらえそうなんです ……とか考えていそうな顔だっぽね」

( ゚д゚)「これ以上は一切譲歩しないからな」

( ><)「チッ……まぁでも、ひとまず安心なんです」

( ゚д゚)「他に何か言う事はないのか」

( ><)「一日三食デザートにプリンと、一日一本のコーラも要求するんです」

( ゚д゚)「温情をかけた俺が馬鹿だった。今すぐ若桝の祓いの清め塩で追い出してやる」

( ><)「おのれブルータスなんですううううぅぅぅぅぅ」

38 名前: ◆cYvcLUF1CM 投稿日:2016/04/04(月) 00:14:01 ID:NP9rgBes0

若桝とぽぽが遊びに来た日から二週間ほど経った、ショッピングモールの開店を三日後に控えたある日


( ゚д゚)「……確かに、モールの開店まで面倒を見るとは言ったが…………」


( <●><●>)「なんか、申し訳ないです」

(*‘ω‘ *)「ケツの穴のちぃせぇこと言うんじゃねーっぽ!お茶のおかわりまだかっぽ!?」

( ><)「あーPS4ほしいんですうううぅぅぅぅぅぅl!!!!」


(#゚д゚)「お前達の面倒まで見るとは言ってないし、わがままを許すとも言った覚えはないぞ!!!!二週間も居座りやがって!!!!」


家計簿と睨めっこしている隣でPS4を堂々とねだられ、つい堪忍袋の緒が切れた


(#゚д゚)「子供の食費三人分で家計がこんなに逼迫されるとは思っていなかった!若桝は欲しがらないから負担は軽いが、お前ら二人は何様だ!?」

(*‘ω‘ *)「神様だっぽ」

( ><)「神様なんです」

(#゚д゚)「――――ッ!!」

39 名前: ◆cYvcLUF1CM 投稿日:2016/04/04(月) 00:14:27 ID:NP9rgBes0

( <●><●>)「腹を立てるだけ骨折り損ですよ」

若桝がお手製の薬湯を差し入れてくれた
ここ数週間で痛んだ胃を慰めてくれる、ありがたい薬湯だ
もう何度かお世話になっていて、今日もそれをぐっと飲み干して深呼吸をした

( ゚д゚)「……すまんな若桝、ついカッとなってしまった」

( <●><●>)「心中お察しします」

(*‘ω‘ *)「ブルータスがまたごますりしてるっぽ」

( ><)「どうせごまをするなら、僕らの方がまだ御利益あるんです」

(*‘ω‘ *)「なんたって神様なんだからっぽ」

( ><)「ですですそうなんです」

(*‘ω‘ *)「ぽっぽっぽっぽっぽ」

( <●><●>)「こんなクソみたいな神様にごまをすってもたかが知れてるのは、はじめからわかっています」

変顔までして煽ってくるびろーどやぽぽを歯牙にもかけず、しれっと言い返してみせる若桝

ものへの執着や俗っぽさを一切見せない若桝が、一番神…否、仏様に近い気がした

( ゚д゚)「流石は仙人……といったところか」

( <●><●>)「ありがとうございます」

40 名前: ◆cYvcLUF1CM 投稿日:2016/04/04(月) 00:14:48 ID:NP9rgBes0

家計簿をそっと閉じ、ため息を吐いた
ろくでもない自称神様達はまだやいのやいのと騒いでいたが、耳を貸すことすら拒否した

( ゚д゚)「……夕食の買い物にでも行くか」

時計を見ると、15時過ぎ
自称神様達におやつを与え、留守番でも頼もうかと考えていた

( ゚д゚)「……びろーど、ぽぽ、プリンの時間だぞ」

( ><)「プリン!!」(*‘ω‘ *)

( ゚д゚)「ほーらプリンだぞー……」

( ><)「いただきまーす!なんです!」

(*‘ω‘ *)「ぷぷぷ、ももももも……」

( ゚д゚)(……ぷっちんしたプリンに上から吸いつく弁天様…………)

自称神様達の、きたない捕食シーンから目を逸らし、出かける支度を整えた

( ゚д゚)「じゃあ買い物に行ってくる。大人しくお留守番……」

( ><)「お買い物なんです!?PS4!PS4!」

( ゚д゚)「買わん!」

(*‘ω‘ *)「ぽ……ぽぽもいむっも……」

( ゚д゚)「吸いつきながら喋るんじゃない。その顔でこっちを見るな」

41 名前: ◆cYvcLUF1CM 投稿日:2016/04/04(月) 00:15:14 ID:NP9rgBes0

結局、あの惨状を若桝に全て託して家を飛び出してきた
もしかしたら冷蔵庫のプリンが全滅するかもしれないが、それだけで大人しくしていてくれるなら安いものだった

( ゚д゚)(夕食は何にしようか……)

家にある調理器具は限られていて、全て男の一人暮らしに適したサイズのものばかりだった
若桝は林檎だけ与えておけばいいとして、他の二人はそれなりに食欲旺盛だった

ここ二週間の経験から、だんだんと分量ミスを起こす頻度は減っていた
最初は慣れない三人分の食事の用意だったが、慣れてくれば、野菜を余らせずに品目を増やすことも出来るようになった

( ゚д゚)(大所帯での食事は、本当に理にかなっていたんだな……)

一人分の食事では使い切れなかった人参も、三人分の食事でなら一本使い切ることが出来る
三人分の食事なら、大根はハーフサイズを買うより一本買ってしまう方が安い
一人ならプチトマトを買って何回かに分けて使うが、三人なら大きいトマトを買って分けた方が安い
買い物時の野菜を見る目が変わっていた

( ゚д゚)(……一人で食べるわけじゃないから自炊の頻度も上がったな……これはいい傾向かもしれない)

買い物が、以前よりもずっと楽しかった


夕食はハンバーグにした
合びき肉と玉ねぎと卵を買い、付け合わせのサラダ用の野菜も数種類買った
神様とはいえ、なりは子供だ
自分の手元に居る間は、子供達にはきちんと栄養のある食事をしてほしかった

( ゚д゚)(少し買い過ぎたな……まぁびろーどを追い出すまであと二日もある。なんとか使いきれるだろう)

大きな買い物袋を下げ、帰路を急いだ

42 名前: ◆cYvcLUF1CM 投稿日:2016/04/04(月) 00:15:42 ID:NP9rgBes0

( ゚д゚)「ただいま」

帰ると、なんだか家の中が騒がしかった

( ゚д゚)「なんだ喧しい……騒ぐのをやめろ!ご近所にバレたら……」

(*‘ω‘ *)「粗チン野郎、やっと戻ったかっぽ!」

( ゚д゚)「だからその言葉遣いを何とかしろと……」

( <●><●>)「おかえりなさい。大変です!」

( ゚д゚)「若桝まで声を荒げてどうしたんだ?ゴキブリでも出たか?」

(*‘ω‘ *)「それどころじゃねーっぽ!びろーどが!!」

( ゚д゚)「!?」

リビングに入るなり、買い物袋を手からむしり取られて床に投げ出された

( ゚д゚)「おい!卵が!」

(*‘ω‘ *)「いいから!!」

ぽぽと若桝に手を引かれ、寝室まで引っ張っていかれる
寝室の扉を開けた若桝が、びろーどの姿を探した

( <●><●>)「びろーど!」

43 名前: ◆cYvcLUF1CM 投稿日:2016/04/04(月) 00:16:02 ID:NP9rgBes0


( ><)「…………ぁ……」


寝室の真ん中で、何故か四方を盛り塩に囲まれて座っているびろーどは


(。><)「…………あ……!」


身体がうっすらと透けていた


( ゚д゚)「びろーど!?」

( <●><●>)「それ以上近付かないでください」

びろーどに駆け寄ろうとしたところを、若桝に止められた

( <●><●>)「簡易しめ縄で空間を区切っています。入らないでください」

若桝が床を指差す
荷造り用の麻縄をよじって作られた簡易しめ縄が、びろーどの周りをぐるっと囲っていた

44 名前: ◆cYvcLUF1CM 投稿日:2016/04/04(月) 00:16:36 ID:NP9rgBes0

( <●><●>)「ここから御神体を確認しに行く時間も惜しかったので、一時的に私の仙術でびろーどをこの世界から隔離しました」

(*‘ω‘ *)「長くはもたないっぽけど、とりあえず今は御神体の影響に左右されないっぽ」

ぽぽと若桝が交互に状況を説明してくれたが、展開が急すぎて理解が追いついてこなかった

( ゚д゚)「よく分からんが、びろーどが危ないことはよくわかった」

(*‘ω‘ *)「ちいせぇ脳みそだっぽ」

( <●><●>)「人間に理解しろという方が酷でしょう……びろーどの姿があやふやになっているということは、御神体に何かあったという事でしょう」

( ゚д゚)「何か?」

( <●><●>)「…………御神体に、傷がついたとか」

(*‘ω‘ *)「最悪、破壊されたとか……とにかくよくない事が起きた可能性が高いっぽ」

(。><)「うぅ……自分の御神体の事なのに全くわかんないんですぅ……」

しめ縄と盛り塩の中で、びろーどが膝を抱えて座り込んだ

( ゚д゚)「大丈夫かびろーど……?体調はどうだ?」

(。><)「なんか、からだがぽかぽかするんです……さっきまでこんなことなかったのに……」

( ゚д゚)「熱があるのか?」

(。><)「わかんないんですぅ……こわいぃ……」

仙術によって隔離されたびろーどは、膝に顔をうずめて泣き出してしまった

45 名前: ◆cYvcLUF1CM 投稿日:2016/04/04(月) 00:17:04 ID:NP9rgBes0

(。><)「こわいんですぅ……まだ、消えたくないんですぅ……」

震えている肩を、抱きしめてやることが出来なかった

( ゚д゚)「…………くっ……」

歯痒い思いだった
華奢な見た目の、普段はあれほどに図々しい少年が、今はこんなにも小さく見えた
自分はその小さな肩に何もしてやれず、少し離れた場所から声をかけることしかできなかった


( ゚д゚)「…………びろーど。今晩は、ハンバーグだぞ」

(。><)「…………ハンバーグ?」

( ゚д゚)「あれはな、簡単に作れるんだ。元に戻ったら、一緒に作ろう」

(。><)「…………」

( ゚д゚)「どうやれば元に戻るか知らんが、早く戻ってこい。そんな透けた身体じゃ、肉を捏ねられないだろう」

(。><)「…………」

涙をいっぱいに溜めた細い目で、じっと見つめてくるびろーど
何かを言いたげにぱくぱくと動いては、きゅっと噛み締められる口元

袖で何度も涙をぬぐったびろーどは、ようやく一言だけ紡ぎ出した

(。><)「……ハンバーグ作り……やってみたいんです……」

ぐっと、口角が上がった

46 名前: ◆cYvcLUF1CM 投稿日:2016/04/04(月) 00:17:27 ID:NP9rgBes0

びろーどが笑ったのを見て、皆少しだけ安堵の息をついた
少し考え込んでいた様子の若桝が、口を開けた

( <●><●>)「……賭けですが、一旦御神体の元に戻ってはどうですか?びろーど」

(。><)「え?」

( <●><●>)「御神体に傷がついて力が出ないだけの状態であれば、御神体に戻って傷を癒しながら力をためることで、元に戻ることができるはずです」

(。><)「なるほどなんです」

(*‘ω‘ *)「でも失敗したら、結界から出た途端に消滅しちゃうっぽよ!?」

(。><)「!?」

( <●><●>)「だから、賭けなのです。それにこの結界も、そう長くもつものではありません」

(*‘ω‘ *)「だからって……」

(。><)「…………」

ぽぽもそれ以上は言葉が出てこなかったようだ
びろーども俯いて、真剣な顔で悩んでいる

しかしどんなに考えてもほかの選択肢が無い以上、賭けるしかなかった

47 名前: ◆cYvcLUF1CM 投稿日:2016/04/04(月) 00:17:52 ID:NP9rgBes0

( ><)「……一旦、戻るんです」

(*‘ω‘ *)「びろーど!」

( ><)「このままここにいても、僕も、わかの術もジリ貧なんです。ならいっそ、今のうちに試しちゃった方がいいんです」

(*‘ω‘ *)「びろーど……」

( ><)「きっと、大丈夫なんです。なんとかなるんです」


袖で顔をぐしゃぐしゃに拭いて、びろーどは立ちあがった


( ><)「ハンバーグ、約束ですよ?」

屈託のない笑みを浮かべて、まっすぐにこちらを見上げてきた
負けじと胸を張って、毅然として返す

( ゚д゚)「おう、三日でも一週間でも、一年でも十年でも待っててやる」

返事を聞いて安心したのか、びろーどは えへへ と笑って頬を掻いた

( ><)「神様との約束は絶対なんですよ?嘘ついたら針飲ませてやるんです」

( ゚д゚)「こわいな。まぁ大丈夫だろうさ」

( ><)「楽しみにしてるんです」

( ゚д゚)「俺もだ」

48 名前: ◆cYvcLUF1CM 投稿日:2016/04/04(月) 00:18:26 ID:NP9rgBes0


ひとしきり笑い合った後、びろーどは若桝に向き直った

( ><)「わか、ありがとうなんです」

( <●><●>)「これくらいはデザート前です」

( ><)「うまくいったら、特別に僕が作ったハンバーグ振る舞ってやるんです」

( <●><●>)「残念ですが一口も食べられません。林檎で手を打ちましょう」

( ><)「そこは お気持ちだけで とか言うところなんです」

( <●><●>)「そんな要求をしてくるのはわかっていたので、あえて別角度から攻めてみました」

( ><)「一本取られたんです」


二人してふふっ と笑った後、どちらともなく深呼吸をした

( <●><●>)「では、術を解きますね」

( ><)「はいなんです」

( <●><●>)「では、気をつけて行ってくるのですよ」

49 名前: ◆cYvcLUF1CM 投稿日:2016/04/04(月) 00:18:59 ID:NP9rgBes0

若桝が唇に手印を当て、ふっと……何かを解きほぐすように息を吹きかけた
途端に空間にひずみが生じ、空気がみしりと悲鳴をあげる

(;゚д゚)「ぬおっ」

気圧の変化について行けず、唐突な耳鳴りに顔を顰めた
次の瞬間には、蓮の花が咲くように空間がふわりと解れ、気付いた時には耳鳴りも空間のひずみも、そしてびろーどの姿も

嘘のように綺麗さっぱり消えていた


(;゚д゚)「……これが、仙術……」

びろーどのポルターガイストを見たとき以来の衝撃だった


隣では、術をかけた少年が大人びた表情でしめ縄を眺めていた

( <●><●>)「……びろーど、うまくいくとよいのですが」

(*‘ω‘ *)「殺しても死ぬようなタマじゃねーっぽ。プリン出せば飛びついてくるっぽ」

幼い顔をした口の悪い少女も、今回ばかりは落ち着き払った表情でびろーどがいた場所を眺めていた

( <●><●>)「それもそうですね。今は様子を見ましょう」

ゆっくりとした所作でしめ縄と盛り塩を片付けていく少年の手は、声とは裏腹に、少しだけ震えていた

50 名前: ◆cYvcLUF1CM 投稿日:2016/04/04(月) 00:19:56 ID:NP9rgBes0

びろーどがいなくなってから6日が経っていた
3日も前にショッピングモールがオープンしていたが、仕事の都合上、結局休みになるまで顔を出せなかった


( ゚д゚)「……そういえば、びろーどの社に参拝に行くのは初めてだな。……なんか緊張してきた」

(*‘ω‘ *)「何言ってるっぽ!びろーどだと思えばそんなに神々しくも感じないっぽ」

( ゚д゚)「それもそうだな」

( <●><●>)「そう言いながらもそのワンカップ……お神酒を供える気満々なんですね」

( ゚д゚)「腐っても自称土地神だったからな。この地域に住む人間としては、一応作法に則って挨拶しないとな」

(*‘ω‘ *)「正直コーラ供えた方が喜びそうだっぽ」

( <●><●>)「まぁ……そうですよねぇ……」


若桝とぽぽを連れ、ショッピングモールへ向かった


あれから6日、買い過ぎてしまった食材の処理の為に、二人にはうちで過ごしてもらった
食材なんて言い訳で、急に一人になるのが今更心細くなってしまった為だと自覚はしていた

びろーどがいなくなっただけでも、家の中はだいぶ静かだった
自分だけでなく、若桝もぽぽも、常に頭のどこかでびろーどのことを考えていたせいかもしれない
若干の気まずさと心配する気持ちを、三人で分かち合っていた


やっときた自分の休日で、皆と一緒にびろーどに会いに行った

51 名前: ◆cYvcLUF1CM 投稿日:2016/04/04(月) 00:20:18 ID:NP9rgBes0

オープンして間もないショッピングモールは、大混雑を極めていた
建物の三倍はある駐車場に順番待ちの待機列が出来ているほどだった


(*‘ω‘ *)「ファー――wwwwショッピングモールに集まる愚民wwww田舎にはお似合いの光景だっぽwwwwwwww」

( ゚д゚)「おいやめろ」

( <●><●>)「軽くブーメラン刺さってますよ」


ぽぽも若桝も、びろーどと同じように子供服を支給してあった
今の自分は、子供を二人連れた保護者のようなポジションだ
ぽぽの全方位射撃毒舌を制御する義務があった


家からモール前まではバスで、バス停からモールへは徒歩で入った

( ゚д゚)「びろーどは屋上だと言っていたな」

( <●><●>)「とりあえず先に、そちらに顔を出しましょう」

二重の自動ドアをくぐり、エントランスホールに出る
屋上を目指すべく、エスカレーターへ向かった


…………と、その時

52 名前: ◆cYvcLUF1CM 投稿日:2016/04/04(月) 00:20:55 ID:NP9rgBes0



(*><)「ひゃ―っはーーー!!なんですぅ―――!!!!」





( ゚д゚)(*‘ω‘ *)(<●><●> )


エントランス中央にあるエスカレーターの手摺を、滑り台のようにして滑走してくる少年がいた
いや、紛れもなくびろーどだった

びろーどは、初めて会った時のように脛の中ほどまでしかない短い浴衣を着ていた
浴衣姿のびろーどを見咎める者もいなければ、手摺滑り台を注意する者もいない

( ゚д゚)(……これ、周りには見えていないのか)

感動の再会を果たす前から、冷や汗が止まらなかった


(*‘ω‘ *)「何遊んでんだっぽおおおぉぉぉぉぉ!!!!!!!!!」

(# ><)「そげふぅっ!」

ぼいんっ! と跳ねあがったぽぽの蹴りが、空中でびろーどに炸裂した

53 名前: ◆cYvcLUF1CM 投稿日:2016/04/04(月) 00:21:30 ID:NP9rgBes0

(# ><)「ご、御無沙汰しておりま…………」

( <●><●>)「言い訳は舌を抜いてからです。口を開けなさい」

( ><)「舌抜いたら言い訳できないんです!」


屋上の片隅
アスレチック群には小さい子供達が並んでいるが、屋上のはずれの社の方には、やはり人っ子一人いなかった

そこにびろーどを連れ込み正座させ、閻魔様御用達らしいペンチのようなものをちらつかせていた


(*‘ω‘ *)「心配させるだけさせて、自分はこんなとこで悠々と遊んでたのかっぽ?えらく薄情だっぽねぇ?」

(;><)「あ、いやあの……」

( <●><●>)「あなたの鶏以下のおつむでは私達の事なんか覚えていられませんでしたか、それは残念ですね」

(;><)「鶏!?僕はちゃんと……」

( <●><●>)「はい、あーん」

(;><)「舌は勘弁して下さいなんですううううぅぅぅ!!」

( <●><●>)「仏の顔も三度までなんですよ」

(*‘ω‘ *)「閻魔様なら一度でもアウトだっぽ」

(;><)「ひいいいぃぃぃん」

七福神と仙人によるお仕置きは容赦がなかった

54 名前: ◆cYvcLUF1CM 投稿日:2016/04/04(月) 00:21:57 ID:NP9rgBes0

( ゚д゚)「ほらお前達、感動の再会が正座ガン詰めとかシャレにならんぞ」

ひとまずびろーどの無事を確認出来て、心底安心していた
安否を知らせず遊んでいた事は後で詰めるとして、とりあえず事の経緯を聞いておきたかった


( ><)「あの後御神体に戻ったんですけど、御神体、お酒まみれだったんです」

( <●><●>)「は?」

( ><)「御神体をここに移して、なんか挨拶の儀式的なのやってたみたいなんですけど、呼んだ神主がクソで、御神体にお神酒を直接ぶっかけてたみたいで……」

(*‘ω‘ *)「ぁー……肩書きだけ継いで仕事はまともに継がなかったってことかっぽ」

( ><)「みたいなんです。 僕、あの時からだがぽかぽかしてたんですけど……」

( ゚д゚)「不調じゃなくて、ただの酔いか」


は―――……  と、三人でため息を吐く

(*‘ω‘ *)「心配して損したっぽ」

( <●><●>)「まったくです」

口では辛辣だったが、二人の表情は柔らかかった

えへへ  と笑うびろーどは、小さく「ごめんなさいなんです」と付け加えた

55 名前: ◆cYvcLUF1CM 投稿日:2016/04/04(月) 00:23:12 ID:NP9rgBes0

(*><)「お詫びに、この新居の紹介をするんです!」

ぴょこんと立ちあがったびろーどは、両手を広げて自慢げに胸を張って見せた

(*><)「お腹がすいたらフードコートか地下食品街!おススメはお惣菜屋さんの揚げシュウマイなんです!」

(*‘ω‘ *)「ぽぉぅ」

(*><)「暇つぶしには映画館やゲームセンター!おもちゃ屋さんもあるんです!」

( <●><●>)「充実してますね」

(*><)「眠くなったら家具屋の寝具コーナー!毎日違う柔らかさのベッドでもふもふぐっすりなんです!」

( ゚д゚)「やりたい放題だな」

(*><)「もう一人暮らしのムサいおっさんとシングルサイズのベッドに入ることもないんです!」

( ゚д゚)「今さらっとディスったな」

(*><)「きっと気のせいなんです!とにかくここでの暮らしはすっごく快適なんです!」

(*‘ω‘ *)「ぽぽぉぅ……いいっぽね」

(*><)「わかやぽぽちゃんも、寂しいおっさんの家なんかやめて、こっちに移り住むべきなんです!!」

( ゚д゚)「おい」

( <●><●>)「まぁ……元々ショッピングモールのオープンまでっていう約束でしたしね」

( ゚д゚)「お前達まで泊めると言った覚えはなかったんだがな?」

(*‘ω‘ *)「いつまでちんこ小さいこといってんだっぽ」

56 名前: ◆cYvcLUF1CM 投稿日:2016/04/04(月) 00:24:42 ID:NP9rgBes0


ひとしきり雑談をした後、三人を連れてショッピングモール内をぐるっとまわった

( ><)「クレープ!クレープ食べたいんです!!」

(*‘ω‘ *)「3段アイスクリームだっぽ!」

( <●><●>)「これは……魔法少女ヘリリリ☆の限定フィギュア……!まさかこんな所に入荷してたなんて……!!」

(;゚д゚)「買わん!買わんぞ!!お前ら自分で買え!俺の財布にたかるな!!」

( ><)「ありがたい御賽銭なんです」

(*‘ω‘ *)「だっぽ」

( ゚д゚)「だから、御賽銭は強請るもんじゃないとあれほど……!」



3人を連れたウィンドウショッピングは、財布のひもさえぐっと締めておけば、とても楽しかった
次はもう少し予算を立てて、たまに3人で遊びに来るのも悪くないかもしれない

57 名前: ◆cYvcLUF1CM 投稿日:2016/04/04(月) 00:26:52 ID:NP9rgBes0


( ><)「まぁ生活はこっちの方が断然いいんですけど」

( ゚д゚)「?」

( ><)「今度一度だけ、そっちに行くんです」

( ゚д゚)「なんでだ?」

(*‘ω‘ *)「あんな狭い部屋より、こっちで遊んだほうが楽しくないかっぽ?」

( ><)「まぁそうなんですけど」



(*><)「ハンバーグ、一緒に作りにいくんです。約束したんですからね」



にっこり微笑んで、びろーどは右手の小指を立てて見せた


( ゚д゚)「…………そうだったな、約束だもんな」

自分も、右手の小指を立てて見せた




( ゚д゚)「約束だ。次はうちで、ハンバーグを作ろう」

( ><)「嘘ついたら、針飲ませてやるんです」

58 名前: ◆cYvcLUF1CM 投稿日:2016/04/04(月) 00:27:43 ID:NP9rgBes0


( ゚д゚)土地神様に憑かれちゃったようです




おしまい

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