哲学科生のルサンチマンのようです

82 名前:名無しさん[◆3S9DdnK6O] 投稿日:2016/03/30(水) 21:39:35 ID:dysrMlLg0

彼女はリンゴが好きだった。だから、お見舞いにリンゴを持って行って、むいてあげようと思ったのだ。
でも、彼女がどうしても、自分でリンゴをむきたいというから、持ってきた果物ナイフを彼女に渡して、リンゴをむかせてあげた。


( ФωФ)『哲学科に受かったって、本当?』

从 ゚∀从『あぁ』

( ФωФ)『良かった。ハインくんも、学びたい哲学が見つかったのね』

从 ゚∀从『いや、そういうわけじゃないんだ』

( ФωФ)『じゃあ、どうして哲学科なんかに?』

从 ゚∀从『真理を求めようと思って、この世界の』

( ФωФ)『真理』

そう、君が人生をかけて求めたがっていた真理を求めたいんだ。

从 ゚∀从『そのために僕は勉強したくてね。僕は何にも知らないからさ』

( ФωФ)『ハインくんは、きっと哲学科に入学したら誰よりも賢いと言われるわよ』

从 ゚∀从『そんなまさか』

( ФωФ)『だからこそ、私は…』

83 名前:名無しさん[◆3S9DdnK6O] 投稿日:2016/03/30(水) 21:40:52 ID:dysrMlLg0

規則正しく、リンゴをむいていた彼女の手が止まった。それと同時に、リンゴが床に落ちてしまった。

从 ゚∀从『大丈夫かい?』

僕は、リンゴを床から拾う。彼女は、
お礼の代わりに、先ほどのセリフの続きを告げる。

( ФωФ)『…………』

僕は、彼女の言葉に動揺して、ただ固まって。

だから、とっさに行動できなかったんだ。

彼女がリンゴをむくために手に持っていた果物ナイフは、果物ナイフは果物ナイフが


.

84 名前:名無しさん[◆3S9DdnK6O] 投稿日:2016/03/30(水) 21:41:25 ID:dysrMlLg0




ナースコールを押した後、僕は泣きながら病院を飛び出した。



二度と彼女に会うことはないと思いながら、僕はただひたすらに走ったのだった。

85 名前:名無しさん[◆3S9DdnK6O] 投稿日:2016/03/30(水) 21:41:55 ID:dysrMlLg0



哲学科生のルサンチマンのようです



.

86 名前:名無しさん[◆3S9DdnK6O] 投稿日:2016/03/30(水) 21:43:06 ID:dysrMlLg0



从 ゚∀从(…久々に思い出したな)

最近、彼女のことをよく思い出すようになったからか、思い出したくもないようなことも思い出してしまう。

最悪の別れだった。

彼女が僕に告げた最後の台詞がどんなものだったかは忘れてしまったが、確か、逃げ出さねばならないほどの台詞だった気がする。

从 ゚∀从「こんなはずじゃなかったのにな…」

( ^ω^)「何がこんなはずじゃなかったんだお?」

从; ゚∀从「あー、えっと…」

知らない間に口から心の声が漏れてしまったらしい。

87 名前:名無しさん[◆3S9DdnK6O] 投稿日:2016/03/30(水) 21:43:46 ID:dysrMlLg0

从 ゚∀从「…世の中って、難しいなぁって思っただけ」

( ^ω^)「おー、例えば?」

从 ゚∀从「この世界にあるものがすべて、白黒はっきりしてれば良いのに…とかね。なんで世界ってこんなに曖昧なんだろうね」

( ^ω^)「はっきりしてることもあるじゃないかお。生と死とか、曖昧じゃないことなんて沢山あるお」

从 ゚∀从「そうかなぁ」

( ^ω^)「そうだとも、おっおっ」

88 名前:名無しさん[◆3S9DdnK6O] 投稿日:2016/03/30(水) 21:45:38 ID:dysrMlLg0

从 ゚∀从「…じゃあ、ブーン。今、ここに砂が十粒あるとしよう」

( ;^ω^)「お?」

从 ゚∀从「この砂十粒を、砂山ということは出来るかな?」

( ^ω^)「できるわけないお」

从 ゚∀从「じゃあ、十一粒は?」

( ^ω^)「一粒増えたところで、砂山とは呼べないお」

从 ゚∀从「じゃあ、どれくらいあれば砂山と呼べるかな」

( ;^ω^)「んー…よくわかんないけど、百万粒くらいあれば、砂山できるんじゃないかお?」

从 ゚∀从「百万粒か、そんだけあれば砂山と言えるだろうね」

( ^ω^)「おっ、そうだお」

从 ゚∀从「じゃあ、百万粒から一粒抜いたらどうなる?」

( ;^ω^)「お?どうなるとは?」

从 ゚∀从「砂山は、砂山じゃなくなるのかな?」

( ^ω^)「まさか。一粒抜いても砂山は砂山だお」

从 ゚∀从「じゃあ、さらに十粒抜いたら?」

( ^ω^)「きっとまだ砂山だお」

从 ゚∀从「じゃあ、さらに百粒抜いたとしたら?」

( ;^ω^)「おー、それでもきっと、まだ砂山だと思うお。…あれ、でも、それじゃあ砂山ってどこからが砂山になって、どこから砂山じゃなくなるんだお?」

从 ゚∀从「そう。つまりだね、砂山の例を一つ取り上げただけでも、この世界は曖昧さに満ちている事がわかるんだよ。僕たちはどこからが砂山になり、どこからが砂山じゃなくなるかということすら分からないんだから」

( ;^ω^)「…」

从 ゚∀从「この世界に、明確な境界線なんてないってのを、この『砂山のパラドクス』は提示しているのさ」

89 名前:名無しさん[◆3S9DdnK6O] 投稿日:2016/03/30(水) 21:47:28 ID:dysrMlLg0


( ;^ω^)「おー、ハインは本当に物知りだお。哲学科で一番賢いお!」

从 ゚∀从「…そんなことないさ、僕はこの哲学科で一番、不出来な学生だよ」

( ^ω^)「ハインが不出来なら、僕とかドクオはどうすりゃいいんだお」

(´・_ゝ・`)「その通り。内藤君なんて、哲学史のテスト、散々な結果とってて荒巻先生が困ってたくらいだからねぇ」

( ;^ω^)「おぉん!?すいませんお!!」

从; ゚∀从「本当に神出鬼没ですね、盛岡教授」

(´・_ゝ・`)「食堂のご飯も好きなんでね。そういえば、鬱田君と津出君は?君達四人で仲良くしてるのにいないの?」

( ^ω^)「今頃二人は中庭のベンチで仲良くお昼ご飯食べてる頃だと思いますお」

(´・_ゝ・`)「あの二人そういう関係だったのか、知らなかったなぁ」

( ^ω^)「デミタス先生ならなんでもお見通しかと思ってましたお」

(´・_ゝ・`)「哲学的なこと以外はからっきしだよ」

从 ゚∀从「でも、僕の思い出の中にいる彼女が、どうして猫の被り物をしているのかは見抜いたじゃありませんか」

(´・_ゝ・`)「だって、それは哲学的なことだったし」

从; ゚∀从「え…?」

思い出の中の彼女が、猫の被り物をしているのが哲学的なこと?そんな、意味がわからない。

90 名前:名無しさん[◆3S9DdnK6O] 投稿日:2016/03/30(水) 21:48:31 ID:dysrMlLg0

( ^ω^)「もったいぶらないで、教えてあげて欲しいですお。ハイン、ずっとそのことで悩んでるみたいだし」

(´・_ゝ・`)「まぁ、教えてあげてもいいけど」

从; ゚∀从「お願いします、教えてください!」

(´・_ゝ・`)「じゃあ、その代わりに質問ね」

从; ゚∀从「質問…なんでしょうか?」



(´・_ゝ・`)「君、何のために哲学を学んでるの?高岡君、別に哲学好きじゃないでしょ」



从; ゚∀从「えっ…」

91 名前:名無しさん[◆3S9DdnK6O] 投稿日:2016/03/30(水) 21:51:12 ID:dysrMlLg0


( ;^ω^)「何言ってるんですかお、デミタス先生。ハインが哲学好きじゃないとか、ありえないですお」

(´・_ゝ・`)「むしろ、見りゃわかるでしょ。高岡君の何処が哲学を楽しんで学んでるのさ」

( ;^ω^)「だって、ハインは誰よりも勉強家だし、知識だってありますお」

(´・_ゝ・`)「確かに高岡君は勉強家だ、成績も誰よりもいい。知識も内藤君や鬱田君や他の学生よりもある。ただ、他の学生にはあるものが、高岡君には足りていない」

( ;^ω^)「一体何が足りてないというんですかお?」

(´・_ゝ・`)「高岡君以外の学生は、自分の学びたい哲学者や思想、哲学的問題として取り扱いたい事柄があって哲学科に入学している。だから、みんな特定の分野については知識はあるが、他の哲学史についての知識はまるっきりない」

( ;^ω^)「ぐうの音もでないですお」

(´・_ゝ・`)「だけど、高岡君。君は様々なことを知っている、僕も驚くほどに。君は確かに優秀だよ、よく勉強している。しかし、君には決定的なものが抜けている、そうだろ?」

从 ゚∀从「…えぇ、盛岡教授の言うとおり、僕には哲学科で学ぶには決定的なものが足りていません」

( ;^ω^)「何が足りないっていうんだお?」

92 名前:名無しさん[◆3S9DdnK6O] 投稿日:2016/03/30(水) 21:52:45 ID:dysrMlLg0
僕に足りないもの、それこそ、僕がこの哲学科において、最も不出来な学生だという証。


从 ゚∀从「僕には学びたいと思う特定の哲学者や思想、哲学的な問題として取り扱いたい事柄なんて一つもないのさ」

( ;^ω^)「お?」

从 ゚∀从「僕はただ、人生をかけてこの世の真理を求めたいだけなんだ。この世界を司る真理を、彼女の代わりに…」

(´・_ゝ・`)「…なるほどね。だから、そんな一生懸命勉強してるのか」

从 ゚∀从「はい。全ては真理を求めるために」

(´・_ゝ・`)「真理、真理ねぇ。さっきまで『砂山のパラドクス』を語っていた癖に、明確な真理があると信じているなんて、おかしな話だこと」

全くもってその通りだ。世界は曖昧さに満ちているのなら、確固たる真理なんて存在しないだろう。それなのに、真理を求めるだなんて、馬鹿げている。正常な頭であれば、こんな非効率的なことはしなかっただろう。でも、非効率でも、答えが見つからなかったとしても、僕は真理を求め続けるしかないのだ。それが彼女に対して僕ができる唯一のことなのだ。

93 名前:名無しさん[◆3S9DdnK6O] 投稿日:2016/03/30(水) 21:53:40 ID:dysrMlLg0

( ^ω^)「…ハイン」

从 ゚∀从「僕が自分のことを哲学科で、一番不出来な生徒だと思うのはそういう理由さ、ブーン」

( ^ω^)「不出来なんかじゃないお、今は好きな哲学者や思想がなくても、これからの大学生活で見つければ良いんだから!」

(´・_ゝ・`)「まぁ、哲学科以外にも学科なんて沢山あるんだから、学科変えちゃっても良いんじゃない?編入とかで」

( ;^ω^)「なんてこというんですかお」

(´・_ゝ・`)「だって、高岡君。可哀想だから」

从 ゚∀从「別に可哀想なんかでは…」

(´・_ゝ・`)「哲学を学んでいる間は、彼女のこと、嫌でも忘れられないんだよ?本当は忘れたいと思っている癖に」

从; ゚∀从「…」

正論だ。でも、忘れたいと思いつつも、忘れたくないのだ。僕は、とってもわがままだから。

94 名前:名無しさん[◆3S9DdnK6O] 投稿日:2016/03/30(水) 21:54:51 ID:dysrMlLg0

(´・_ゝ・`)「まぁ、それでも高岡君が哲学科で勉強したいというなら、いいことを教えてあげよう」

从; ゚∀从「いいこと、ですか?」

(´・_ゝ・`)「あぁ。実は君が学ぶのにピッタリの哲学者がいるのさ。真理を求めたいなら、君はその哲学者を学ぶのが良いだろう」

从; ゚∀从「それは一体誰なんですか!?」

(´・_ゝ・`)「さぁてね。まずは自分で考えなさい、今までの大学生活を振り返ってみれば自ずと答えが出るはずさ」

从; ゚∀从「そんな…」

(´・_ゝ・`)「…今回の実践哲学講義のナゾナゾが解けたら、答え合わせをしてあげよう。だから、頑張って解きなさい。中々難問だろうからね。では、また講義で会おう」

95 名前:名無しさん[◆3S9DdnK6O] 投稿日:2016/03/30(水) 21:55:42 ID:dysrMlLg0

( ;^ω^)「行っちゃったお、自由な先生だお」

从 ゚∀从「とりあえず、今回の実践哲学講義の指名者、絶対に当てないと…」

( ^ω^)「目星はついてるのかお?」

从 ゚∀从「全く。まぁ、頑張るさ」

( ^ω^)「おっおっ、頑張れおー」

从 ゚∀从「だけど、盛岡教授が難問だなんていうなんて、余程今回は難しいんだろうなぁ…」

( ^ω^)「お、そういえば、難問といえば、一般教養で取った理数系講義、来週中間テストだおね」

从; ゚∀从「そうだっけ?!参ったなぁ…」

96 名前:名無しさん[◆3S9DdnK6O] 投稿日:2016/03/30(水) 21:56:31 ID:dysrMlLg0


('A`;)「ブーン!それとハイン、お前ら食堂にいたのか」

从 ゚∀从「そんなに慌ててどうしたんだい、ドクオ。三限目は休講だよ?」

('A`)「そりゃ知ってるよ。ブーンの噂を聞いて駆け付けたんだよ」

( ^ω^)「僕の噂?」

('A`)「お前、あの難しい一般教養の理数系講義について、分かりやすく解説してるアプリを作ったんだって?」

从; ゚∀从「え、凄い。ブーン、あの講義分かるの?」

( ^ω^)「おっおっ、実は理数系得意なんだお。だから、文系大学の一般教養レベルの問題なら余裕だお」

从 ゚∀从「アプリまで作っちゃうなんて、凄いね」

( ^ω^)「ちょっとした趣味だお」

97 名前:名無しさん[◆3S9DdnK6O] 投稿日:2016/03/30(水) 21:57:28 ID:dysrMlLg0

('A`;)「そのアプリ、ダウンロードするからアプリの名前教えてくれよ」

从; ゚∀从「あ、僕にも教えて」

( ^ω^)「いいけど、ダウンロードするのにお金かかるお?」

('A`;)「構わん、幾らだ?」


( ^ω^)「五千円だお」

从; ゚∀从「ご、五千円!」

一人暮らしで貧乏学生をしている僕には大金だ。とてもじゃないけど、払えない。

98 名前:名無しさん[◆3S9DdnK6O] 投稿日:2016/03/30(水) 21:58:15 ID:dysrMlLg0

('A`)「五千円か、よし、買った!」

从 ゚∀从「ドクオって前から思ってたけど、お金持ちだよね」

('A`)「そんなことねぇよ、まぁ、親がちょっとばかし偉いだけで」

( ^ω^)「ツン、玉の輿かお、羨ましいおねぇ。…はい、LINEにアプリサイトのURL送ったお」

('A`)「さんきゅー!早速ダウンロードするぜ。あ、ハイン、これ使って俺と一緒に勉強しようぜ」

从 ゚∀从「ドクオ…君って本当、顔以外はイケメンだよね」

('A`)「喧嘩売ってんのか」

99 名前:名無しさん[◆3S9DdnK6O] 投稿日:2016/03/30(水) 21:58:53 ID:dysrMlLg0

( ^ω^)「お。もうダウンロードできたんじゃないかお?」

('A`*)「よーし、では、早速…」


('A`;)「って、なんじゃこりゃ!!」

从 ゚∀从「どうしたんだい?」

('A`;)「解説は確かにしてるけど、全部英語で書かれてる」

从; ゚∀从「え!?」

( ^ω^)「僕、実は帰国子女なんだお。だから、英語で説明する方が得意なんだお」

('A`;)「うおおお、ふざけんな!こちとら英語は大の苦手なんだよぉお!」

( ^ω^)「日本語パッチも売ってるお、千円で」

('A`;)「千円か…それで買えるならまぁ、安いか…」

从; ゚∀从「アコギな商売だなぁ…」

100 名前:名無しさん[◆3S9DdnK6O] 投稿日:2016/03/30(水) 21:59:28 ID:dysrMlLg0

( ;・∀・)「あ、ブーン!ここにいたのか!」

( ^ω^)「今度は茂羅かお。どうしたんだお?」

( ;・∀・)「お前の特製手作りドリンクを売ってくれ!頼む!」

从; ゚∀从「特製手作りドリンク?」

('A`)「なんで男の手作りドリンクなんか売って欲しいんだよ、ホモなのか?」

( ;・∀・)「違うよ、バカ!今、ブーンの特製手作りドリンクを飲むと、眠気覚しになって、テスト前に便利だって噂になってんだよ」

('A`)「つまり、すげぇマズイってことで良いのか?」

( ^ω^)「おっおっ。でも、ちゃんと体にいい成分になってるお」

101 名前:名無しさん[◆3S9DdnK6O] 投稿日:2016/03/30(水) 22:00:05 ID:dysrMlLg0

( ;・∀・)「頼むよ、売ってくれ」

( ^ω^)「いいけど、一リットル千円だお」

从; ゚∀从「高っ!!」

( ;・∀・)「貧乏学生の俺には痛すぎる…もうちょい安くならないか?」

( ^ω^)「おっおっ、ビタ一文値下げはしないお」

( ;・∀・)「ぐぬぬ…。仕方ない、単位のためだ、買うよ」

('A`)「俺も買うわ」

( ^ω^)「ハインはどうするお?」

从; ゚∀从「僕はお金無いから…」

( ^ω^)「効率よく勉強できるのに本当にいいのかお?みんなも買ってるのに」

从; ゚∀从「じ、自力で頑張るよ」

( ^ω^)「そうかお、残念だおー」

102 名前:名無しさん[◆3S9DdnK6O] 投稿日:2016/03/30(水) 22:00:37 ID:dysrMlLg0


('A`)「そういや四限目って、ハインは空きコマだよな?一緒に勉強しようぜ」

从 ゚∀从「うん。ブーンと茂羅君はどうする?」

( ^ω^)「僕と茂羅は四限目体育なんだお」

( ・∀・)「また明日な、ハインとドクオ」

从 ゚∀从「そっか。体育頑張ってね」

('A`)「また明日なー」

103 名前:名無しさん[◆3S9DdnK6O] 投稿日:2016/03/30(水) 22:01:31 ID:dysrMlLg0

('A`;)「それにしても、高い買い物だったなぁ。このアプリ」

从; ゚∀从「日本語パッチ用意してるなら、最初から日本語でアプリ作れただろうにね」

('A`)「それにこの特製手作りドリンクも、一リットル千円だからなぁ。一人暮らしのハインとかには、買いたくても中々買えないよな」

从; ゚∀从「ね、例えみんなが使ってたとしても、貧乏学生の僕にはちょっとね…」


从 ゚∀从「あ」


('A`)「どうかしたか?」

104 名前:名無しさん[◆3S9DdnK6O] 投稿日:2016/03/30(水) 22:02:14 ID:dysrMlLg0

从 ゚∀从「…そういうことだったのか」

('A`;)「何が?」

確かにこれは難問だ。もし、僕が貧乏学生じゃなかったら、気付けなかったかもしれない。

从 ゚∀从「…ご褒美は頂けそうだよ、ドクオ」

('A`)「はぁ?」



全部の謎を解いてもらいますよ、盛岡教授。

105 名前:名無しさん[◆3S9DdnK6O] 投稿日:2016/03/30(水) 22:03:20 ID:dysrMlLg0


(´・_ゝ・`)「おはよう、諸君。今回は難問だったんじゃないかと思うが、ナゾナゾは解けたかな?」

( ・∀・)「今回、なんか変な行動してる奴いたか?」

ξ゚听)ξ「私にはさっぱり」

('A`)「同じく」

( ^ω^)「ハインは?解けたかお」

从 ゚∀从「あぁ、解けたとも」

('A`)「毎度のことながら、すげぇな」

(´・_ゝ・`)「…へぇ、やるじゃない。じゃあ、早速、誰が僕に指名され、どんな哲学者や思想、または哲学的問題として取り上げたい事柄に基づいて行動したのかな?」

106 名前:名無しさん[◆3S9DdnK6O] 投稿日:2016/03/30(水) 22:04:21 ID:dysrMlLg0


从 ゚∀从「今回、盛岡教授に指名されたのは内藤ホライゾン」

( ;^ω^)「おっ!?」

从 ゚∀从「まさか一番身近にいたブーンが今回の指名者だなんて、思いもしなかったけどね。僕が貧乏学生だったのもあって、見抜くことができたよ」

(´・_ゝ・`)「ほほう、どうやって見破ったんだい?」

从 ゚∀从「…今回は非常に変則的でした。今までの指名者は、“一人の哲学者”や“一つの思想”だったのに対して、今回は“二つ”の事柄を実践したんです」

(;'A`)「二つ?一体どんなことを実践したんだよ」

107 名前:名無しさん[◆3S9DdnK6O] 投稿日:2016/03/30(水) 22:05:19 ID:dysrMlLg0

从 ゚∀从「まず、ブーンが作ったあの英語のアプリ…」

从 ゚∀从「あれは情報の格差を哲学的問題として取り上げるために作ったものだったんだ」

( ^ω^)「…!」

ξ;゚听)ξ「え、なにそれ。どういうことよ。哲学者でも思想でもなんでもないってこと?」

从 ゚∀从「あぁ。それもブーンが他の人とは異なる点だね。でも、思い出して欲しいんだ。一番最初の授業を」


【( ^ω^)「質問ですお。実践していいのは、哲学者や思想だけですかお?」】


从 ゚∀从「ブーンは最初から、特定の哲学者や思想についてやる気なんてなかったのさ」

108 名前:名無しさん[◆3S9DdnK6O] 投稿日:2016/03/30(水) 22:06:16 ID:dysrMlLg0

(;'A`)「だとしても、なんで英語のアプリなんて…」

从 ゚∀从「僕たちは、今、インターネットを使えばウェブ上で様々な情報を得ることができる。でも、インターネットを使用できないお年寄りと若者の間に情報格差があるのはわかるかな?」

( ・∀・)「そりゃわかるけど」

从 ゚∀从「でも、実はインターネットを使える僕たちの中でも情報格差は存在しているんだ。何故なら、ウェブ上にある情報の95%は英語によって書かれている。だから、自分が使用できる言語によって情報格差は現れてしまうんだよ」

(;'A`)「なるほど、だから、わざわざ英語のアプリを作ったのか」

从 ゚∀从「そう。インターネットなどの技術が現れるまでは、どこの国で生まれ、育つことによって得られる情報に大きな差が出るなんてことはあまり意識されていなかった。でも、技術の革新によって、得られる情報に差がでるというのが顕在化してしまったのさ」


( ^ω^)「…」

109 名前:名無しさん[◆3S9DdnK6O] 投稿日:2016/03/30(水) 22:07:21 ID:dysrMlLg0


从 ゚∀从「次に、あのテスト前に飲めば眠気が覚めてテスト勉強に利用できるという特製手作りドリンク」

从 ゚∀从「どっかで聞いたことがあると思ったんだよね、似たような問題がアメリカであったのをさ」

(;'A`)「アメリカで?」

从 ゚∀从「うん、昔アメリカで健常な大学生がテスト前にリタリンという薬を服用するということが起きたんだ。このリタリンという薬は、本来はADHDの子供が服用する薬で、効果としては気持ちが落ち着くという効果を持っていた」

从 ゚∀从「それをテスト前に服用することで、薬を飲んだ学生と飲まなかった学生との間に実際に成績の差がでたんだ。それで、病気を治すための薬を勉強のために飲むのは倫理的に如何なものかということが問題になったんだよ」

从 ゚∀从「これは『スマートドラック問題』。頭が良くなる条件を整える薬、ってことでそう呼ばれているんだ」

110 名前:名無しさん[◆3S9DdnK6O] 投稿日:2016/03/30(水) 22:08:38 ID:dysrMlLg0

( ;・∀・)「薬は確かに不味いけど、今回のブーンのお手製ドリンクは別にいいんじゃないか?実際、飲めば眠気覚めて勉強集中できるし」

从 ゚∀从「そうだよね。でも、考えてみて欲しいんだ。全ての人が薬やブーンのお手製ドリンクを飲めるわけではないってことを」

('A`)「あ、そうか。ハインはお金がないから買えなかったもんな」

从 ゚∀从「その通り。手に入れたくても、手に入れられない人だっているんだよ。今まではみんな平等の集中力だったのに、スマートドラックやお手製ドリンクによって、お金がある人とない人の間に、また新しい格差を生むことになってしまうんだ」

ξ゚听)ξ「国とか会社とか学校が配給してくれればいいのにね」

从 ゚∀从「それだと、使用しない自由が侵害されてしまうだろうね」

( ;・∀・)「使用しない自由?」

111 名前:名無しさん[◆3S9DdnK6O] 投稿日:2016/03/30(水) 22:09:32 ID:dysrMlLg0

从 ゚∀从「例えば、スマートドラックみたいな薬に頼らず、自分の実力だけで勉強に励みたいと思ってる人が居たとする。でも、他のみんなが飲んでいるんだから、君も飲むべきだろうと言われると、本当は使いたくないのにもかかわらず、使わざるを負えない環境に追い詰められてしまう」

ξ゚听)ξ「そんな大袈裟な…」

从 ゚∀从「そうでもないよ?携帯電話やLINEだって、本当はやりたくないと思っている人は多くいるはずだけど、会社に勤めてたらまず携帯電話を所持しないということは難しいでしょ?社会のみんなが使っていると、使用しない自由ってのは、簡単に侵害されてしまうんだよ」

ξ;゚听)ξ「なるほどね…」

112 名前:名無しさん[◆3S9DdnK6O] 投稿日:2016/03/30(水) 22:10:54 ID:dysrMlLg0


从 ゚∀从「ブーンは今回、『情報格差の問題』と『スマートドラック問題』という二つの事柄を取り上げてた」

从 ゚∀从「…おそらく、ブーンは技術の進歩が決して、良い方向にだけ影響を与えるものではないということを哲学的問題として実践したんだとおもうんだ。技術の進歩は確かに便利だけど、隠れていた格差を顕在化させたり、また新たな格差を生じてしまったりね」


从 ゚∀从「ブーンが実践した二つの問題、これはまさしく『科学哲学』」


( ^ω^)「…おっおっおっ、その通りだお。科学は便利だけれど、世界が実は不平等であることも同時に明らかにしてしまうんだお。僕はそのことを提示したかったんだお」

从 ゚∀从「…世界は不平等、ね」

113 名前:名無しさん[◆3S9DdnK6O] 投稿日:2016/03/30(水) 22:11:45 ID:dysrMlLg0

(´・_ゝ・`)「まさか、今回のナゾナゾまで解けるとは思ってもいなかったよ、高岡君」

从 ゚∀从「哲学史ではなかったので、確かに難問でした」

(´・_ゝ・`)「流石だね。しかし、内藤君も科学哲学とは、いいね。これからの科学について、哲学は科学哲学の分野として、向き合わねばならないからね」

( *^ω^)「おっおっ!出来れば科学哲学について、四年間学びたいですお!」

(´・_ゝ・`)「いいだろう。では、今日の残りの時間は、科学哲学問題として、人工知能について学んでいこうか」

( *^ω^)「人工知能!楽しみだおー!」

114 名前:名無しさん[◆3S9DdnK6O] 投稿日:2016/03/30(水) 22:13:14 ID:dysrMlLg0


(´・_ゝ・`)「…というわけで、今日の講義は終わり」

('A`)「人工知能ってすげーな」

( *^ω^)「だおだお!フレーム問題とか、本当に楽しいおっ!」

(´・_ゝ・`)「あ、そうそう。高岡君」

从 ゚∀从「はい」

(´・_ゝ・`)「ご褒美に、君が疑問に思っている謎を解こうか」

从 ゚∀从「お願いします」

(´・_ゝ・`)「じゃあ、今週の金曜日の五限後、僕のオフィスに来て」

从 ゚∀从「分かりました」

(´・_ゝ・`)「それまでは、自分でも考えてみなよ。出来れば僕は、答え合わせだけしたいから」

从 ゚∀从「分かりましたけど、何かヒントありませんか?」

(´・_ゝ・`)「ヒント、ヒントねぇ…」

115 名前:名無しさん[◆3S9DdnK6O] 投稿日:2016/03/30(水) 22:13:49 ID:dysrMlLg0




(´・_ゝ・`)「…あるとすれば、全てを振り返ってみることだね。疑問に思う様々なこと全てに対しても。そうすれば何故思い出の中の彼女が猫の被り物をしているのか、君が真理を求めるためにはどの哲学者が君に合うのか…といったことも自ずと見えてくるはずさ、きっとね」






.

116 名前:名無しさん[◆3S9DdnK6O] 投稿日:2016/03/30(水) 22:14:32 ID:dysrMlLg0


第三講義、おわり。

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