哲学科生のルサンチマンのようです

45 名前:名無しさん[◆3S9DdnK6O] 投稿日:2016/03/29(火) 22:53:43 ID:SMG9CKkk0

あの子に好かれたかった。

哲学を学び始めたきっかけは、本当にただそれだけの理由だった。


( ФωФ)『凄いわね、ハイン君。哲学史についてたくさん勉強したのね』

从 ゚∀从『君ほどじゃないけどね』

( ФωФ)『いいえ、私より知識豊富よ。流石ハイン君だわ』

从 ゚∀从『君に褒められると、照れるよ』

( ФωФ)『これなら哲学科の大学、どこへでも行けるわね』

从 ゚∀从『哲学は確かに面白いけど、哲学科に進む気はないよ』

( ФωФ)『あら、勿体無い』

从 ゚∀从『君が哲学科のある大学に行ったら、その大学の他学科には行くかもしれないけれどね』

( ФωФ)『そうなの。勿体無いわね、ハイン君。才能あるのに』





( ФωФ)『…本当、勿体無いわ』




.

46 名前:名無しさん[◆3S9DdnK6O] 投稿日:2016/03/29(火) 22:54:25 ID:SMG9CKkk0

从; ゚∀从「っ!!」

( ;^ω^)「おぉん!?」

(;'A`)「ビックリしたー…!いきなり起きるのやめろよ、ハイン!」

从; ゚∀从「あ、あぁ。僕、寝ちゃってたのか…」

( ;^ω^)「本当、ハインって頭良いのに抜けてる奴だおー」

从; ゚∀从「ははっ、ごめんごめん」

47 名前:名無しさん[◆3S9DdnK6O] 投稿日:2016/03/29(火) 22:55:04 ID:SMG9CKkk0

哲学科へ入ってから、前にも増して彼女のことを思い出すことが増えた。やはり、彼女が最も愛した学問をやっているからだろうか。

…あぁ、もし僕なんかではなく、君が哲学科へ入学していたとしたら




君は一体、どんな哲学を学びたかったんだろうか


.

48 名前:名無しさん[◆3S9DdnK6O] 投稿日:2016/03/29(火) 22:55:40 ID:SMG9CKkk0




哲学科生のルサンチマンのようです



.

49 名前:名無しさん[◆3S9DdnK6O] 投稿日:2016/03/29(火) 22:57:01 ID:SMG9CKkk0


('A`)「にしても、良くこの前の見破れたよな、ハイン」

从 ゚∀从「この前のって、茂羅君の?」

( ^ω^)「あんなの見抜けなかったお。茂羅の時も凄かったけど、長岡のを見破ったのも凄かったお。最近名前も聞いたことない哲学者ばっかり連続して、まったく歯が立たないお」

从 ゚∀从「確かに難問だったよね」

('A`)「またまたご謙遜を」

从 ゚∀从「ははは…」

50 名前:名無しさん[◆3S9DdnK6O] 投稿日:2016/03/29(火) 22:57:59 ID:SMG9CKkk0

入学してから二ヶ月、僕は実践哲学の講義、全ての指名者を言い当てていた。
見破るのは中々楽しいが、少し不安なこともある。

从 ゚∀从(…もし、僕に指名者の順番が回ってきたら、どうしよう)

哲学科に入学して、二ヶ月。この二ヶ月で、僕は哲学科で、自分がズレている存在なのだということを薄々感じ始めていた。

('A`)「あー、早くみんなと哲学的な談義したいよなぁ」

( ^ω^)「おっおっ、分かるお、その気持ち。でも、実践哲学の時に不利になるから出来ないおー」

('A`)「早く順番まわってこねぇかな、終わっちまえば気兼ねなく哲学の話ができるのに。なぁ、ハイン」

从; ゚∀从「え、あ、そうだね。本当、早く順番まわってくればいいのに」

( ^ω^)「ハインなんて、哲学について語りたいこと沢山あるだろうに…可哀想だおー」

('A`)「なー、早く当ててもらえるといいな」

从 ゚∀从「あぁ、うん…」

51 名前:名無しさん[◆3S9DdnK6O] 投稿日:2016/03/29(火) 22:58:31 ID:SMG9CKkk0


疎外感。
僕はみんなとは違う、根本なズレがある。僕は別に語りたい哲学的談義なんてない、ただ哲学について、座学で学んでいられれば良い。学んで、学んで、真理を追い求められればそれだけで良い。

こんな疎外感を感じる時、決まって僕は彼女を思い出す。


( ФωФ)『ハイン君って、本当、勿体無いわよね』


勿体無い、勿体無いのか。それはきっと、色んな意味が込められていたのだろう。

彼女から見たら、僕はきっと様々な面で宝の持ち腐れをしていたのだろうから。

52 名前:名無しさん[◆3S9DdnK6O] 投稿日:2016/03/29(火) 23:00:37 ID:SMG9CKkk0

ξ゚听)ξ「はぁ…」

('A`)「あ、ツンだ」

ξ゚听)ξ「あんたたち、また一緒にいたの?飽きないわねぇ」

从 ゚∀从「ツン、どうかしたの?元気なさそうだけど」

ξ゚听)ξ「それがさぁ、電車でスリにあっちゃったのよ」

(;'A`)「スリ!?怪我とかはなかったのか?」

ξ゚听)ξ「ないわよ、お財布からお金すられたけどね」

( ;^ω^)「おーん、満員電車って怖いお」

ξ゚听)ξ「本当よね。あーぁ、最近ついてないわ。現実世界って本当最悪。やっぱ二次元最高」

从; ゚∀从「そんなやさぐれないでよ、そのうちいいことあるよ、きっと」

('A`)「そうだぞ。まぁ、二次元最高ってのは分かるが、現実世界だって良いこと絶対あるさ」

53 名前:名無しさん[◆3S9DdnK6O] 投稿日:2016/03/29(火) 23:03:57 ID:SMG9CKkk0

ξ゚听)ξ「…そうよね。みんな慰めてくれてありがと」

( ^ω^)「おっおっ!可哀想なツンの昼飯は、ドクオが奢ってくれるってお」

ξ゚听)ξ「あら、本当に?」

('A`)「構わないぞ、奢って進ぜようじゃないか」

ξ*゚听)ξ「やったー、早速いいことあったわ」

(*'A`)「つ、ツンが幸せそうなら良かった」

54 名前:名無しさん[◆3S9DdnK6O] 投稿日:2016/03/29(火) 23:05:19 ID:SMG9CKkk0

( ^ω^)「いい雰囲気だおー。ここは若い二人に任せて、僕たちは外にメシでも食いに行こうかお、ハイン」

从 ゚∀从「そうだね、それがいいね。では、お二方、ごゆるりと」

(;*'A`)「え、ちょっと待てよ、二人とも!」

ξ*゚听)ξ「全く、なに言ってんだか!」

文句を言いながらも、二人は満更でもなさそうだ。まったく、ドクオも早く好きなら好きと言えばいいのに。


…そう、遅すぎたと後悔する前に。


仲睦まじく話す二人を見ると、心の中に少しだけドロッとしたものが溶け出す。僕も、本来ならあの子とこういう関係を築けただろうと思うと、二人を見ているのが少しだけ、辛いのだ。

55 名前:名無しさん[◆3S9DdnK6O] 投稿日:2016/03/29(火) 23:06:16 ID:SMG9CKkk0

从 ゚∀从(…本当なら、忘れられれば楽なのかも知れない)

忘れられるわけ、ないけれど。

( ^ω^)「…ハイン、大丈夫かお?」

从 ゚∀从「ん?なにがだい、ブーン」

( ^ω^)「いや、またボーッとしてるから。ラーメンのびちゃうと思ったんだお」

从; ゚∀从「あぁ、いけないいけない!ありがとう、ブーン」

( #^ω^)「本当、ハインはいっつもボーッとしすぎだお!伸びたラーメンなんて食えたもんじゃないのに!」

从; ゚∀从「うぅ、ごめんよ」

56 名前:名無しさん[◆3S9DdnK6O] 投稿日:2016/03/29(火) 23:07:10 ID:SMG9CKkk0

( ^ω^)「…でも、前から気になってたけど、いつもどんなこと考えてるんだお?哲学的なことかお?」

从 ゚∀从「…いや、そんな立派な話じゃないんだ。ただ、ふとした時に、高校時代、好きだった女の子のことを考えちゃってね」

( *^ω^)「おー!ハインの恋バナ聞きたいお!どんな子だったんだお?」

从 ゚∀从「どんな子かぁ…長い黒髪で、黒いセーラー服がよく似合う子だったよ。それと、哲学が好きな子だった」

( *^ω^)「いいじゃないかお、顔は美人系かお?それとも可愛い系かお?」

从; ゚∀从「顔は…そのー…」

( ^ω^)「お?」

57 名前:名無しさん[◆3S9DdnK6O] 投稿日:2016/03/29(火) 23:08:17 ID:SMG9CKkk0

从 ゚∀从「実は思い出せないんだ、彼女の顔が」

( ;^ω^)「え、なんでだお?」

从 ゚∀从「わからない。何故か、思い出の中の彼女はすべて、猫の被り物をしていて、素顔が分からないんだ」

( ;^ω^)「意味わかんないお」

(´・_ゝ・`)「ふーん、猫の被り物ねぇ。中々面白いじゃない」

从 ゚∀从「面白いですけど、なんでだかよくわからないんですよね。別に彼女は特別、猫が好きだった訳じゃないのに…」

从; ゚∀从「って、うわっ!?」

( ;^ω^)「で、デミタス先生!?なんでラーメン屋なんかに…!」

(´・_ゝ・`)「僕がラーメン食べちゃいけない法律でもあるのかい?」

( ;^ω^)「そんなことはないですお…」

58 名前:名無しさん[◆3S9DdnK6O] 投稿日:2016/03/29(火) 23:09:05 ID:SMG9CKkk0

(´・_ゝ・`)「それにしても、高岡くん。君の甘酸っぱい恋のお話、いいねぇ、もっと詳しく聞かせてくれないかな。僕の知的好奇心はそれを欲しているようだから」

この二か月でわかったことだが、盛岡教授は相当の変わり者だった。哲学者らしいといえば、らしいけれども。

从 ゚∀从「面白い話じゃありませんよ、僕はもう彼女と会っていませんから」

( ^ω^)「なんでだお?」

从 ゚∀从「…彼女は、高校三年生の時、入院してね。しばらくはお見舞いにも行っていたんだけど、ある日を境にお見舞いに行くのをやめてしまったんだ。それ以来、彼女とは会っていないんだよ」

( ;^ω^)「おぉん、どうして行くのをやめちゃったんだお?」

从 ゚∀从「それは秘密」

( ^ω^)「そうかおー…まぁ、色々あるおねぇ」

59 名前:名無しさん[◆3S9DdnK6O] 投稿日:2016/03/29(火) 23:10:26 ID:SMG9CKkk0


从 ゚∀从「まぁ、でも、だからと言ってどうして彼女の顔が思い出せないのかはわからないんだけれどね」

( ^ω^)「うーん、不思議なこともあるもんだお」

(´・_ゝ・`)「え、分かったけど?」

从 ゚∀从「え?」

( ^ω^)「お?」


(´・_ゝ・`)「こんな簡単なこともわからないとは、まだまだ勉強が足りないね、君たち」

从; ゚∀从「分かったって、どういうことですか!?」

(´・_ゝ・`)「知りたい?」

从; ゚∀从「知りたいですよ、そりゃ」

(´・_ゝ・`)「そのうち教えてあげるよ、そのうちね。じゃあ、君たち、明日の実践哲学講義で会おう。今回のナゾナゾも解けるといいね」

そう告げると、盛岡教授は何気なく、僕たち二人分のお会計もすまして、店をそそくさと出て行ってしまった。

60 名前:名無しさん[◆3S9DdnK6O] 投稿日:2016/03/29(火) 23:11:33 ID:SMG9CKkk0


( ;^ω^)「デミタス先生凄いお、あの会話だけで謎を解くなんて…」

从; ゚∀从「凄すぎだよ、カウンセラーになれるんじゃないかな、あの人」

( ^ω^)「デミタス先生目指して勉強、頑張ろうお、ハイン。とりあえず、今回の指名者、誰かわかったかお?」

从; ゚∀从「いや、実は今回はまだ分かってないんだ。ブーンは?」

( ^ω^)「ハインがわかってないのに僕が分かってるわけないお」

盛岡教授のことも気になるけど、まずは今回の指名者を見破らなければ。

一体、今回の指名者はどんな実践哲学を行っているのだろうか

61 名前:名無しさん[◆3S9DdnK6O] 投稿日:2016/03/29(火) 23:12:36 ID:SMG9CKkk0

(;'A`)「お前らどこまで食いに行ってたんだよ」

从 ゚∀从「近くのラーメン屋だけど、盛岡教授と話してたんだ」

( ^ω^)「そっちこそ、どうしたんだお。そのズボン」

(;'A`)「そうなんだよ、聞いてくれよ。スパゲッティをひっくり返しちまってさぁ…」

从; ゚∀从「ツンの前で?格好悪いなぁ…」

(;'A`)「うるせーやいっ!」

僕たちがドクオをからかっていると、見慣れた顔が近づいてきた。

62 名前:名無しさん[◆3S9DdnK6O] 投稿日:2016/03/29(火) 23:14:08 ID:SMG9CKkk0


( *・∀・)「あ、鬱田!ここにいたのか、探したぞ!」

('A`)「茂羅じゃないか、どうかしたのか?」

( ・∀・)「昨日さ、ライブのチケット外したって言っただろ?」

('A`)「あぁ、うん。残念だったな」

( *・∀・)「それが今日になって、譲ってくれる人がツイッターで見つかったんだよ!」

(*'A`)「本当かよ、よかったな!」

从 ゚∀从「茂羅君、良かったね」

( ・∀・)「おう!最近、高岡に実践哲学講義で見破られちゃったり散々だったからな、久々に嬉しいことが起きて良かったぜ」

从; ゚∀从「うっ…面目無い」

('A`)「まぁ、でも、本当良かったな、茂羅!」

( ・∀・)「あぁ、鬱田の言うとおり、生きてりゃいいことあるもんだな。お天道さんは見てるんだね」

('A`)「そういうことだな」

63 名前:名無しさん[◆3S9DdnK6O] 投稿日:2016/03/29(火) 23:14:44 ID:SMG9CKkk0

ξ*゚听)ξ「ちょっとみんな聞いてよ!」

从 ゚∀从「ツン、どうかしたの?」

ξ*゚听)ξ「鞄の中整理してたら、すられたと思ってたお金、入ってたのよ!」

( ^ω^)「お?じゃあスリにあったんじゃなくて、ただ財布の口が開いてたってことかお?」

('A`)「全く、人騒がせだなぁ。でも、良かったな、ツン」

ξ゚听)ξ「うん、本当良かったわ。あ、お昼奢り損になっちゃったわね、ごめんね、ドクオ 」

('A`)「良いってことよ。でも、言った通りだったろう?二次元も良いけど、この世界も良いもんだってこと」

ξ゚听)ξ「大袈裟ねぇ。まぁ、そうだけど」

64 名前:名無しさん[◆3S9DdnK6O] 投稿日:2016/03/29(火) 23:15:27 ID:SMG9CKkk0

从 ゚∀从「まぁ、ツンと茂羅君のことは良かったとして、自分のスパゲッティ塗れのズボンに関してはどうなんだい?」

('A`)「なぁに、他の人にかからず、被害が俺だけで済んでよかったよ」

( *^ω^)「ヒュー!ドックンかっくいいおー」

('A`)「よせやい。ただ、これが一番良い結果だったんだなと思っただけさ」

ξ゚听)ξ「良く不幸な目にあったのに、そんな風に捉えられるわね。ポジティブというか、なんというか…」

(;'A`)「そこはハードボイルドとか、クールとか言って褒めて欲しかったんだけどなぁ…」

( ・∀・)「鬱田の顔で言われてもなぁ」

(;'A`)「顔のことはやめろ、顔のことは!」

从 ゚∀从「…」

65 名前:名無しさん[◆3S9DdnK6O] 投稿日:2016/03/29(火) 23:16:16 ID:SMG9CKkk0


みんながドクオを囲んで笑っている。僕だけは遠巻きに見ている、僕も笑えば良いのに。あぁ、また、疎外感を覚えてしまう。

ドクオはなんて、良い奴なんだろう。思えば入学式から、誰とも話さず一人でいた僕に話しかけてくれたのも、きっと彼なりの優しさだったのだろう。

ドクオだけじゃない、僕が実践哲学で見破った茂羅君も長岡君も、もちろん、ツンもブーンも僕にないものを持っている。

哲学科のみんなは、僕にはない、大切なものを持っている。

それなのに、どうして、盛岡教授は、僕を哲学科の中で一番優秀だなんて言っていたのだろうか。



僕は誰よりも、ダメな学生なのに。


.

66 名前:名無しさん[◆3S9DdnK6O] 投稿日:2016/03/29(火) 23:16:59 ID:SMG9CKkk0


(´・_ゝ・`)「おはよう、諸君。さぁて、今回は誰が指名者で、どんな実践を行ったかわかったかな?」

( ^ω^)「先生、きっと、今回は誰もわからなかったと思いますお」

(´・_ゝ・`)「どうしてだい?」

( ^ω^)「だって、ハインですら昨日わからないって言ってましたから」

(´・_ゝ・`)「へぇ、珍しいこともあるもんだね、高岡君」

从 ゚∀从「えぇ、まぁ…」

('A`)「ハインでも分からないんだったら、誰も分からないよなぁ」

从 ゚∀从「ははは、そうだね、今回は難問だったよ」


(´・_ゝ・`)「高岡君、嘘は良くないなぁ」


…やっぱり、盛岡教授はカウンセラーに向いている。教授の瞳は、何だって見抜いてしまう。

67 名前:名無しさん[◆3S9DdnK6O] 投稿日:2016/03/29(火) 23:17:43 ID:SMG9CKkk0

ξ;゚听)ξ「まさか、ハイン。今回も見破ったの?」

从 ゚∀从「…」

(´・_ゝ・`)「僕の目は誤魔化せないよ、さぁ、説明してもらおうか。誰が僕に指名され、どんな哲学者や思想に基づいて行動していたのかを」


从 ゚∀从「…わかりました」

できれば今回は、見破りたくなかったなぁ

68 名前:名無しさん[◆3S9DdnK6O] 投稿日:2016/03/29(火) 23:18:35 ID:SMG9CKkk0



从 ゚∀从「…盛岡教授に指名された今回の指名者は、鬱田ドクオ」

(;'A`)「え?俺!?」

ξ;゚听)ξ「ドクオが?この一週間、普通にしてたのに…」

从 ゚∀从「それは普段からドクオが優しいから気付きにくかっただけさ」

(´・_ゝ・`)「どうして鬱田君だと思ったのか、説明してもらおうか」

69 名前:名無しさん[◆3S9DdnK6O] 投稿日:2016/03/29(火) 23:19:14 ID:SMG9CKkk0

从 ゚∀从「今回はかなり難しかったですけど、茂羅君とツンのおかげで分かりました」

( ;・∀・)「え、俺と津出のおかげ?」

从 ゚∀从「茂羅君、ライブのチケットを譲ってくれるってツイッターでいった人、おそらくドクオだよ。もちろん、捨て垢だろうけどね」

( ;・∀・)「え?」

从 ゚∀从「それと、ツン。君のお金はきっとスリにあってなくなってるハズだよ」

ξ;゚听)ξ「え、でも、鞄の中にちゃんとあったわよ?」

从 ゚∀从「大方、ドクオが入れたんだよ。今回の実践哲学講義のために」

ξ;゚听)ξ「どういうこと?なんでそんなことを?」

70 名前:名無しさん[◆3S9DdnK6O] 投稿日:2016/03/29(火) 23:20:07 ID:SMG9CKkk0

从 ゚∀从「茂羅君の発言は詳しくは知らないけれど、ツンは僕やドクオの前で、現実世界について文句を言ったよね」

ξ;゚听)ξ「え、まぁ、言ったけど…」

从 ゚∀从「茂羅君も、ドクオの前でなんか言ったんじゃないかな?」

( ;・∀・)「確かに言ったような気がするけど…」

从 ゚∀从「ドクオはこの世界が善いものだと二人に言って欲しかったんだろうね。自分の実践が正しいということを実証するために」

ξ;゚听)ξ「意味わからないわよ、どうしてそれで茂羅にチケット譲ったり、私の盗まれたお金をドクオが肩代わりしたりするのよ」

71 名前:名無しさん[◆3S9DdnK6O] 投稿日:2016/03/29(火) 23:20:57 ID:SMG9CKkk0
从 ゚∀从「例えば、この世界はどんなに嫌なことがあったとしても、嫌なことをなかったことに、もしくは、嫌なことを上回るような良いことが起こるとしたら、世界のことをどう思う?」

( ;・∀・)「そりゃまぁ、なんだかんだ世界って良いもんだなーって思うよ」

从 ゚∀从「そう。もし、そんな世界があるとすれば、まるで世界は最善に出来ていると言えるだろうね」

(;'A`)「…!」

72 名前:名無しさん[◆3S9DdnK6O] 投稿日:2016/03/29(火) 23:23:09 ID:SMG9CKkk0
从 ゚∀从「…でも、現実はそうじゃない。この世界は最善だ、なんて言うのは難しい。だって、現実世界では、善人が不幸に、悪人が幸福になることなんて、ザラにある」

从 ゚∀从「不幸な目にあっても、これが世界にとって最善の選択であった、なんて普通なら言えない。そういうことが言えたとしたら、どんなに辛い目にあっても、それを打ち消すほどの良いことが起きると信じていなければ到底無理な話だ」

从 ゚∀从「ドクオ、きっと君はみんなが幸せになれば良いって思ってたんだろ?だから、可哀想だなと思った茂羅君とツンを選んで、二人の不幸を打ち消して、この世界は最善に出来ていると思って欲しかったんだろ」

('A`)「…さぁな、証拠不十分じゃないか?」

73 名前:名無しさん[◆3S9DdnK6O] 投稿日:2016/03/29(火) 23:24:16 ID:SMG9CKkk0


从 ゚∀从「往生際が悪いなぁ。君がスパゲッティでズボンを汚してしまった時に、ポジティブに言ったあの言葉、あれこそ君が指名者だという動かぬ証拠だよ」


【('A`)「よせやい。ただ、これが一番良い結果だったんだなと思っただけさ」】


从 ゚∀从「…この世界は、全知全能の神が創造した世界だとすると、世界は善でなければならない。何故なら、全知全能の神は善であるに決まってるから」

从 ゚∀从「つまり、善として創造されたこの世界で起きるありとあらゆる出来事は、考えられうる可能性の中で、最も良いものが選ばれていると考えるその世界観…」



从 ゚∀从「これぞまさしく『最善世界説』、またの名を『ライプニッツ的オプティミズム』」


(;'A`)「!」



从 ゚∀从「…ドクオ、優しい君らしい、実践方法だったね。危なく見破れないとこだったよ」

('A`)「…ちっくしょー、流石ハイン。お前の目は欺けなかったな」

74 名前:名無しさん[◆3S9DdnK6O] 投稿日:2016/03/29(火) 23:25:32 ID:SMG9CKkk0


(´・_ゝ・`)「今回も大正解だったね、高岡君」

从 ゚∀从「ありがとうございます」

(´・_ゝ・`)「ライプニッツ的オプティミズムか、鬱田君も中々面白いのを選んだね。君なら、このライプニッツ的オプティミズムが他人に実践するのが難しいことくらいわかってたんじゃないのかな?」

('A`)「分かった上で、です。この世界が最善に出来ていればいいのになぁと思ってやっただけですから。まぁ、実際はそうもいきませんけど…」

(´・_ゝ・`)「そうだな。では、今回はライプニッツ的オプティミズムについて残りの時間で学んでいこう。今回はライプニッツ的オプティミズムに対して批判している書物、ヴォルテールの『カンディード』という本を使おうかな」

( ;^ω^)「批判してる方からやるとは、流石デミタス先生」

(´・_ゝ・`)「僕は否定派だから。僕はこの世界が最善に出来ているだなんて、そんなの口が裂けても言えないからね」

(;'A`)「厳しいなぁ…」

(´・_ゝ・`)「鬱田君も、今日の講義で考え方変わるかもしれないよ。さぁ、講義を始めよう」

75 名前:名無しさん[◆3S9DdnK6O] 投稿日:2016/03/29(火) 23:26:11 ID:SMG9CKkk0



('A`)「うん、考え方改めちゃいそうになったわ…」

( ;^ω^)「おー、あの本、読んでてなんか辛かったお。面白かったけど」

从 ゚∀从「物語形式だから読みやすいけどね」

('A`)「それにしても、まさか見抜かれるとは本当に思ってなかったからビックリしたぜ」

从 ゚∀从「ごめんよ。最善世界説は昔、勉強したことがあったからさ」

('A`)「なんだ、そうだったのか。ハインも好きなのか?」

从 ゚∀从「さぁ、それは秘密ということで。実践哲学講義で出番が終わるまでは哲学談義はしないことにしてるんでね」

('A`)「ちぇっ、早くブーンとハインも順番来るといいな」

( ^ω^)「まったくだおー」

从 ゚∀从「そうだね」

76 名前:名無しさん[◆3S9DdnK6O] 投稿日:2016/03/29(火) 23:27:17 ID:SMG9CKkk0


最善世界説、嫌でも彼女のことを思い出してしまう。
広い病室の中、ポツンと置かれたベッドの上で横たわり、哲学を語るのが好きだったあの子。
その語られた哲学談義の中に、もちろん、最善世界説もあって…


( ФωФ)『全知全能の神様が世界を創造したとするなら、この世界で起きることはありとあらゆる可能性の中で、最も最善なものなんでしょうね』

从 ゚∀从『それ、最善世界説のことかい?』

( ФωФ)『どう思う?ハイン君』

从 ゚∀从『僕は好きじゃないかな』

( ФωФ)『ハイン君なら、そういうとおもった』

从 ゚∀从『君の予想は当たったということだね』

( ФωФ)『えぇ、嬉しいわ』

この世界が最善だなんて、そんなこと、言えるわけがないだろう。

だって、そんなことを良しとすれば


( ФωФ)『…どうかしたの?黙っちゃって』





長くは生きられないであろう君の人生すら、世界においては最善の選択だということを認めることになってしまうじゃないか


.

77 名前:名無しさん[◆3S9DdnK6O] 投稿日:2016/03/29(火) 23:27:51 ID:SMG9CKkk0



(´・_ゝ・`)「んー…」

/ ,' 3「おや、また何かお悩みですかの?」

(´・_ゝ・`)「高岡君は、僕が思っていたより賢い子だったみたいで」

/ ,' 3「ふぉっふぉっ、それはいいことじゃないですか」

(´・_ゝ・`)「えぇ、難しい問題をよく解けています。ですが、一番解かなければいけない大切な問題は解けないみたいです」

/ ,' 3「ほう、でも、解けるでしょう?彼なら」

(´・_ゝ・`)「解けないと困りますよ」

78 名前:名無しさん[◆3S9DdnK6O] 投稿日:2016/03/29(火) 23:28:26 ID:SMG9CKkk0





(´・_ゝ・`)「だって、彼のためだけに、実践哲学講義を、ナゾナゾのような講義にしたんですからね」




.

79 名前:名無しさん[◆3S9DdnK6O] 投稿日:2016/03/29(火) 23:31:29 ID:SMG9CKkk0


第二講義、おわり。

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