ノパ听)それでも勝負は続くようです( ゚д゚ )

34 名前:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします[] 投稿日:2016/04/02(土) 22:26:17.241 ID:YYfpLl5c0
  
太陽が昇っては沈み、日々が過ぎていく。
各人は練習や鍛錬に励み、その日を迎え入れた。

夏が間近に迫る季節。
天気は快晴。雲ひとつない日本晴れとなった。

( ゚д゚ )「宣誓!」

ノパ听)「宣誓!」

強い日差しが差し込む校庭で、
二人は白と紅の大きな旗を掲げる。
風にたなびくそれは、優雅でありながらも敵を威圧する力を持つ。

( ゚д゚ )「ボク達!」

ノパ听)「私達は!」

( ゚д゚ )「スポーツマンシップに則り!」

ノパ听)「正々堂々、正面からぶつかり合い!」

( ゚д゚ )「お互いの全力を!」

ノパ听)「出し切って戦うことを!」

( ゚д゚ )「ここに誓います!」

ノパ听)「ここに誓います!」

36 名前:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします[] 投稿日:2016/04/02(土) 22:28:50.591 ID:YYfpLl5c0
   
高らかな宣誓が、校庭に広まり、
彼らの声に耳を傾けているチームメイト達の体をビリビリと刺激する。

( ゚д゚ )「三年五組、東風ミルナ!」

ノパ听)「三年二組、素直ヒート!」

宣誓は、三年生の中で代表に選ばれた者がするのがVIP高校の伝統だ。
だが、大抵の場合は本人の希望により選出されるのが常であった。

推薦してまで誰かを自分達の代表にしたい、と思うには、
運動会に心の底から本気で取り組む姿勢と、自分達のシンボルになってほしい、
と願わずにはいられない人物の存在が必要だ。

そんな高いハードルを越え、
ミルナとヒートは選ばれた。

三年生だけではない。
入学したてであるはずの一年生までが、
彼らを自分達の代表にしてほしい、と願ったのだ。

旗は降ろされ、
二人がそれぞれのチームの先頭へと帰っていく。


こうして、VIP高等学校を二分した戦いの火蓋が、切って落とされた。

37 名前:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします[] 投稿日:2016/04/02(土) 22:30:34.084 ID:YYfpLl5c0
  
第一戦目、各学年による玉入れ。
紅白のお手玉を高い位置に上げられた籠に投げ入れるだけのお手軽な競技だ。

普段ならば、多くのボールをかき集める男子や、
弱々しいふりをして入らなぁい、と言う女子で和気藹々とこなされる競技なのだが、
やはり今年は一味違う。

整列し、互いのチームに挨拶する段階で、互いに殺気を送りあい、
相手の心をへし折ろうという気迫が見て取れた。

( ゚ω゚)「行くぞー!!!」

(゚A゚)「絶対に勝つ!!!」

号令と同時に、人が散らばる。
ある者は玉を集めることだけに集中し、
またある者は慎重に、あるいは素早く玉を投げ込む。

ゴールである籠は、通常各チームに一つのところを、
今年の運動会のみ生徒の要望によって二つずつ用意されていた。

しかし、それすらも見る見るうちに玉で溢れかえり、
あとはどれだけ投げ置くことができるのか、という勝負になる。

从 ゚∀从「投げろ投げろ投げろー!」

⌒*リ´・-・リ「はい、はい、はい。
       ハズしても大丈夫。集めるのは任せて!」

38 名前:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします[] 投稿日:2016/04/02(土) 22:32:13.041 ID:YYfpLl5c0
  
(-@∀@)「白ー、1、2、3…」

(´・_ゝ・`)「赤ー、1、2、3……」

競技が終了するのと同時に、
先生が一つずつ玉を数え始める。

数え始めこそどちらも余裕の表情を見せていたが、
ひと籠目が終わり、ふた籠目に入ると、
どちらのチームも緊張の面持ちに変わり始めた。

緊迫状態の中、
いよいよ結果が示される。

(-@∀@)「85、86、87、88!」

(´・_ゝ・`)「85、86!」

途端、沸いた歓声は白組のものだった。
わずか二つ。その僅差が命運を分けた。

小さなお手玉二つ分の重さにより、
勝敗の天秤は白へと大きく傾いたのだ。

(´<_` )「よっしゃあああああ!!!」

( ゚д゚ )「よし」

ξ゚听)ξ「まずは一歩リード!」
  _
( ゚∀゚)「この調子でいくぞ!!!」

( ^ω^)「勝ちは我らの手の中にいいい!」

⌒*リ´・-・リ「ファイトー!」

39 名前:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします[] 投稿日:2016/04/02(土) 22:34:16.107 ID:YYfpLl5c0
  
その後も一年生と二年生による玉入れが行われたが、
結果は二対一で白組のリードを保ったままであった。

だが、紅組とてその程度のリードで、
白組に勝利の美酒を献上してやるつもりはない。

玉入れで投げつけられた泥は、
ムカデリレーで返上される。

ミセ*゚ー゚)リ「いっくよー!」

ζ(゚ー゚*ζ「いっち、に」

从 ゚∀从「いっち、に」

元気良く、そして少しのブレもない掛け声が上がる。
足並みはピッタリと揃えられているだけではなく、
元々足の速い者につられるような形で移動速度を増していく。

ξ;゚听)ξ「はやっ!!」

⌒*リ´・-・リ「こ、こわい……」

長いボードがざりざりと校庭を削りながら進んでいく。
その速さといったら、少々気持ち悪ささえ覚えてしまうほどだ。

この勢いにのり、紅組はムカデリレーでの完全勝利を手にする。
勝負は、一進一退の図から然程変わることないまま、昼休みに入っていく。

40 名前:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします[] 投稿日:2016/04/02(土) 22:36:13.129 ID:YYfpLl5c0
  
ζ(゚ー゚*ζ「同点、だねぇ……」

( ・∀・)「いやいや、このくらいは想定内のことだよ」

持参のお弁当を口に放り込みながら、
紅組の面々は午後からの競技に思考をやる。

敵対する組に友人がいる者達も多いが、
今日ばかりは勝負が優先され、相手チームとの接触を自主的に禁じる者ばかり。
教室は紅一色で染まっている。

ノパ听)「午後はリレーに徒競走、借り物競争と競争系が多いな」

ミセ*゚ー゚)リ「期待してるよ!!」

ノパ听)「任せろおおおおおお!!!」

从 ゚∀从「うっせ。飯くらい静かに食えって」

('A`)「この調子なら勝てるかもしれないな」

( ・∀・)「何言ってんの。
      勝つ! それが決定事項!」

ノパ听)「うおおおおお!!!!」

42 名前:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします[] 投稿日:2016/04/02(土) 22:38:13.383 ID:YYfpLl5c0
  
( ^ω^)「……紅組の方から、ヒートの声が聞こえるお」

(;-д- )「まったく。騒がしい奴だ」

紅組が盛り上がっている最中、
白組もまた、仲間達と共に昼食を取っていた。

あちらこちらで上がっている雑談の内容は、
当然のごとく運動会に関するものばかり。
昨日のテレビの話だとか、好きな俳優、ゲーム、アニメの話など一切出てこない。

誰もが午前中の勝利を讃え、敗北を憂い、
午後からの競技に向けての作戦会議や渇を入れあってる。
  _
( ゚∀゚)「まだまだ同点だ。
    こっから巻き返すぞ!」

ξ゚听)ξ「あったりまえよ」

⌒*リ´・-・リ「がんばる……」

(´<_` )「紅組に負けるわけにはいかんな」

( ゚д゚ )「……ふっ」

友人達の血気盛んな様子を見て、
ミルナは小さく笑みを漏らす。

自分とヒートを客観的に見ると、こう見えるのか、と思う。
血の気が多くて、少し物騒で、とても楽しそうだ。

43 名前:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします[] 投稿日:2016/04/02(土) 22:40:10.642 ID:YYfpLl5c0
  
午後からの競技も波乱が波乱を呼ぶ結果となった。
PTAによる徒競走等々が終われば、
本格的に生徒達の戦いが再開される。

午後一には徒競走。
陸上部やサッカー部で固められた面々の中で、
ヒートは余裕の一位を獲得。

( ゚д゚ )「……オレなら負けなかった」

( ^ω^)「同着だっただろうおね」

参加が許されなかったミルナは顔を顰めていたが、
ブーンの反応はそっけないものだった。

陸上部に所属しているミルナにとって、
走る系統の競技に参加できない、というのは酷く苦痛だろう。
しかし、これも最終的な勝利のためなのだ。
我慢してもらうほかない。

無論、ミルナもそのことは重々承知している。
ただ、楽しげに走り、一位の旗を掲げるヒートを見ていると、
どうにも抑えられない気持ちがでてしまうのだ。

(´<_` )「おい、ミルナ。
     次の障害物競走、お前だろ」

( ゚д゚ )「……あぁ」

44 名前:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします[] 投稿日:2016/04/02(土) 22:42:16.629 ID:YYfpLl5c0
  
四種の障害を越え、ゴールしなければならない競争。
ただ足が速ければいい、というものではないけれど、
一定のレベルがなければ話にならないのもまた確か。

故に、こちらの競技でも走ることに特化した人物が並ぶのは仕方のないことであった。
陸上部所属のミルナを挟む形で並んでいるのは、
サッカー部にバスケットボール部。
どちらも強敵だ。

(-@∀@)「よーい、ドン!」

号令と共に全員が走り出し、障害を乗り越えていく。

( ゚д゚ )「よ、っと!」

ヒートと共に公園で練習した成果か、
ミルナは軽々とした様子で障害を越えていく。
あっという間に二位と距離を開けた状態を作り出し、
その差を縮められることなく一位を掻っ攫う。

一年生から三年生まで、
白組女子による黄色い声援がわっと溢れかえった。

ノパ听)「私だったらもっと早いぞ!!」

ミセ*゚ー゚)リ「目の前の小さな勝利より、後の大きな勝利よ」

45 名前:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします[] 投稿日:2016/04/02(土) 22:44:16.907 ID:YYfpLl5c0
  
男女混合リレー、騎馬戦、借り物競争……。
男子による応援合戦、女子によるダンス合戦。

いくつもの勝負を乗り越えた今、
校庭に掲げられている得点版は白紙に帰っている。

誰もが夢中になり、途中から点差を数える余裕をなくしていた。
故に、発表があるまでは誰一人として、
どちらの色が勝利したのかわからない。

ξ゚听)ξ「……いよいよ、ね」

( ・∀・)「さて、どっちが勝ったのか。
      今日一日の結果が、出る」

校庭に並ばされた全校生徒は、
固唾を呑んで得点版を見上げていた。

僅差であることは間違いないだろう。
勝利数、敗北数だけで言えば、紅も白も似たようなものだ。
後は得点の配分に望みをかけるしかない。

(´・_ゝ・`)「それでは、発表します!」

ドラムロールの音が響く。
デミタスの手が、二つの得点版にかかった。

(´・_ゝ・`)「第57回、VIP高校運動会は――」

46 名前:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします[] 投稿日:2016/04/02(土) 22:46:13.335 ID:YYfpLl5c0
   

(´・_ゝ・`)「紅組の、勝利です!!!」


わっ、と歓声があふれる。

紅組の面々が、額にまいていた鉢巻を空へと放り投げ、
傍らにいた者を男女、学年関係なく抱きしめて回る。

彼らは互いを讃え、
勝利を喜ぶ言葉を紡ぎ続けた。
中には感極まって涙を流す者までいる始末。

開校始まって以来の様子に、
教師達はどのような感情を顔に浮かべるべきなのか悩んでしまう。
まだ校長の話が残っている、と言って
生徒達の喜びに水を差すのは気が引ける。

かといって、黙って見守っているだけではこの騒ぎが収まることはないだろう。
時間の経過に任せていては日が暮れてしまうに違いない。

(;-@∀@)「ほらほら、騒ぐのは運動会がちゃんと終わってからにする!」

(;´・_ゝ・`)「白組のことも考えろー!」

狂喜乱舞、という言葉が似合いの紅組の横では、
地の底に沈みかねない雰囲気の白組が立っていた。

47 名前:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします[] 投稿日:2016/04/02(土) 22:48:12.141 ID:YYfpLl5c0
悔し涙を流す者、唇を強く噛み締める者。
反応は様々であったが、誰もが勝敗を重く受け止めていた。
誰一人として、軽い気持ちで勝負に臨んでいなかった証拠がそこにはある。

( ´ω`)「……ごめんお」

( ゚д゚ )「何がだ?」

頭を垂れ、落ち込んでいるブーンの肩をミルナは軽く叩く。
そこに悲しい色はなかった。

( ゚д゚ )「オレも、お前達も、みんな頑張ったじゃないか。
    その結果がこれなら、オレは満足だ」

敗北を悔しく思わないわけではない。
長きに渡る勝負の結末が、己の負けであることを受け入れがたい気持ちもある。
だが、ミルナは一人で戦い、一人で負けたわけではない。

努力や苦労は全員で分かち合ってきた。
ならば、悲しみや悔しさもまた、皆で分かち合えるはずだ。

そのことが、ミルナはとても嬉しかったのだ。
負けはしたものの、どこか清々しい思いも胸に存在している。

( ゚д゚ )「勝敗はどうれあれ、オレも踏ん切りをつけることができた。
    そのことに感謝している気持ちに、嘘はない」

( ^ω^)「ミルナ……」

彼の口調はとても穏やかで、
自身の気持ちに区切りをつけたことを如実に示していた。

48 名前:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします[] 投稿日:2016/04/02(土) 22:50:11.849 ID:YYfpLl5c0
  
不意に、周囲がざわついた。

(´<_`;)「おい! あれ!」

弟者の声に、ブーンとミルナは顔を上げた。
全校生徒、全教師が同じ方向を見ている。

( ゚д゚ )「…………は?」

彼らが見るのは、学校の屋上。
得点版よりもさらに上。
本来ならば、生徒が立ち入ることのできない場所。
フェンスすらない、屋根の縁。

そこに立つ、一人の女子生徒。



ノパ听)



素直ヒート。
風に揺れる髪を、誰もが目に映していた。

50 名前:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします[] 投稿日:2016/04/02(土) 22:52:11.225 ID:YYfpLl5c0
  
足を肩幅に開き、
堂々とした面持ちでヒートは屋上に立っている。
少なくとも、勝敗が決するまでは紅組の列に並んでいたはずの彼女が、
いつの間に移動したのかは誰も知らない。

ただ、危険極まりない場所に立つ彼女を心配する声だけが、
ざわざわと校庭に蔓延していく。
ミルナは目を見開き、必死に現状を理解すべく頭を働かせていた。

(;゚д゚ )「……あの、馬鹿。
     何するつもりだ?」

そんな地上の様子など知りもしないのか、
ヒートは大きく息を吸い込み、空気を声に変える。

ノパ听)「三年!五組いいいい!
    東風! ミルナアァァァァ!!」

学校中どころか、
町中に響くのではないかと思うような大声。
拡声器も使っていない生身の声は、
想像以上に真っ直ぐ聞く者の耳と胸を貫いた。

誰もが口を閉ざし、動きを止め、
ヒートの一挙手一動一声を見守る。

52 名前:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします[] 投稿日:2016/04/02(土) 22:54:18.088 ID:YYfpLl5c0
   
ノパ听)「私ぃいい! 三年! 二組いいいい!!
     素直! ヒートォはぁああ!」

一声一声に全力が込められている。
たった一つも消えることのないように、
伝わりきらぬ思いがないように。

ノハ )「ミルナのことがああああああ!!」

ヒートの顔が上を向く。
下からは彼女の表情がわからない。

ノハ )「ずっとずうううううっと!」

力強い声が反射し、こだまになる。
音の余韻が地面に沈み込み、ゆっくりと消えていく。
その間、ヒートは無言だった。

躊躇するような、
自分を鼓舞するような。

そんな時間だった。

53 名前:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします[] 投稿日:2016/04/02(土) 22:56:08.316 ID:YYfpLl5c0
  

ノハ///)「好きでしたあああああああ!!!!」



心の全てを吐き出すように、
いっそ大きく発せられた言葉は愛を告げるための言葉だった。

体はくの字に曲げられ、
下げられた顔は地上から見ても分かってしまうほどに赤い。

校庭では黄色い悲鳴が上がる。
全校生徒の前で実行された告白劇が
女子生徒の心をわし掴みにしたらしい。

無論、男子生徒も盛り上がらぬはずがなく、
はやし立てるような雰囲気こそ出来上がりはしなかったが、
ミルナを見る者、ヒートに声援を送る者、と、
様々な反応をしてみせた。

ただ、ミルナだけは、
何も発せず、何も反応せず、
黙って上を見上げる態勢を崩さずにいた。

54 名前:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします[] 投稿日:2016/04/02(土) 22:58:28.061 ID:YYfpLl5c0
  
( *^ω^)「ミ、ミルナ!」

ブーンは喜色に声を染め上げ、ミルナの背を叩く。
長年、片思いをしていたのであろう人物から、
熱烈な告白があったのだ。

これに応えぬ道理はない。
勝利することで彼女に良いところを見せるのは失敗してしまったが、
終わりよければ全て良し、と言うではないか。

これ以上ないハッピーエンドの予感に、
ブーンだけではなく、五組全員が色めき立っていた。

( -д- )「…………」

ミルナは一度、静かに目を閉じる。
次に彼が目を開いたとき、
そこには覚悟の色が見てとれた。

わずかな時間、彼は瞼の裏で何を思ったのか。
委細を知る者はいない。

ミルナは、先ほどのヒートと同じく、
息を大きく吸い込み、大きな声を発する。

( ゚д゚ )「……ヒートオォォォオオ!!」

57 名前:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします[] 投稿日:2016/04/02(土) 23:00:10.829 ID:YYfpLl5c0
   
地上から大空へ。
遠く分かたれた校庭と屋上を
直線最短距離で突き抜けていく声。

全員の鼓膜を劈き、
周囲に音が溶ける。

けれども、ミルナが声を届けたい人物はたった一人だ。
彼が見上げる先。
いつもはすぐ隣にいたライバル。

ノパ听)

ミルナの声を受け、
ヒートはじっと校庭で立つ。

その顔に赤色はない。
彼女もまた、覚悟しているのだ。

相手からの答えを受け止める覚悟を。

59 名前:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします[] 投稿日:2016/04/02(土) 23:02:10.279 ID:YYfpLl5c0
   


( ゚д゚ )「ごめええええええん!!」


続けられた言葉は、
是ではなく、否。

( ゚д゚ )「オレはあああああ!!!」

周囲がざわつく。
ブーンが驚きに目を見開き、
どういうことだと体操服を引っ張っているが、
ミルナはそんなものを全て無視して言葉を続けていく。

( ゚д゚ )「クールさんがあああああ!!
    昔っから! 好きなんだああああああ!!!」

それは、ヒートの実の姉であるクールに恋慕する気持ち。
彼が告白に応えられない理由。

( ゚д゚ )「だからぁ!!
    お前の気持ちにはぁあああ!! 応えられん!!」

途切れることなく、擦り切れることなく伝えきられた彼の声は、
ヒートの思いを真っ向から切り落とすためのものだ。

60 名前:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします[] 投稿日:2016/04/02(土) 23:04:47.254 ID:YYfpLl5c0
  
ノパ听)「…………」

衝撃的な返事にざわめきが収まらない校庭を眼下に、
ヒートは無言を貫く。
ショックを受けているのか、
あるいは理解できていないのか。

その判別を校庭に立つ友人達が下すよりも先に、
再び彼女が大きく息を吸い込んだ。

次第に、ざわめきが収まりをみせ始める。
大勢の前でフられてしまった彼女の言葉を聞くため。
悲しみに暮れているであろう言葉を受け止めるために。

誰かが固唾を呑んだ。
同時に、空から地へ、声が降り注ぐ。


ノハ。゚听)「知ってたああああああ!!!」


その声は、涙に濡れていた。
嗚咽を上げて泣き出すのを懸命に抑えているらしく、
顔を赤くして告白したときと同じ大きさの声は震えている。

63 名前:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします[] 投稿日:2016/04/02(土) 23:06:39.716 ID:YYfpLl5c0
  
ノハ;凵G)「そんなん、昔っからああああ!!
     知ってましたああああああ!!」

号泣だ。
目からは大粒の涙がボロボロと溢れ、
声には嗚咽が混じり始める。

ノハ;凵G)「だからぁ! 今日!
     初勝利を手にしたときにぃい! 告白! したんだよおおおお!!!」

フられると、ヒートは知っていたのだ。
幼い頃から隣にいて、
気づけば好きになってしまっていたミルナの目が、
いつだって姉に向いていることに気づかぬはずがない。

恋する乙女の目は、
常に愛おしい人を追いかけてしまうのだから。

わかっていてなお、
全校生徒の前で断られると確信してなお、
ヒートは想いを告げずにはいられなかった。

これ以上、決着のつかぬ恋を引きずり続けることは、
地獄の底に縫い付けられているのと同じくらい、熱く苦しいことだったのだ。

64 名前:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします[] 投稿日:2016/04/02(土) 23:08:07.327 ID:YYfpLl5c0
  
ノハ;凵G)「これでぇええ!
     1勝1敗4万飛んで685引き分けだからあああああ!!!」

運動会、ヒートは勝利した。
しかし、告白してフられてしまい、敗北した。

彼女は乱暴に涙を拭う。
目尻から顎まで伝っていた水分が、
体操服に吸い込まれ、汗と一つになる。

ヒートはキッ、と顔を引き締める。
まだ涙が滲み出ているのかもしれないが、
少なくとも校庭からはその様子は見えない。

ノパ听)「次の決着がつくまでええええ!!
    またあぁあああ!!! 勝負してくれますかあああああ!!!」

決めていたのだろう。
運動会で初勝利を収めたら、告白して、フられて、
恋人にはなれずとも、隣に一生いられる場所を作ろうと。

離れがたい、など、女々しいかもしれない。
だが、隣にミルナがいない一生を、もうヒートは想像できない。

65 名前:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします[] 投稿日:2016/04/02(土) 23:10:07.894 ID:YYfpLl5c0
  
もはや、誰も何も言わなかった。

今まで見守ってきたミルナとヒートの勝負が、
ここで一生の終わりを告げようとも、
今後一生続くのだとしても、
蚊帳の外である自分達には何も出来ないし、
口出しする権利すらない。

出来るのは見守ることだけで、
二人が導き出した結論を肯定してやることだけだ。

( ゚д゚ )「…………」

ミルナはしばし、間を空けた。
ヒートの声が消え、身に染み込み、
体全体を循環するのを待つかのような空白だった。

(。゚д゚ )「あったりまえだろおおおお!!!!」

爆発的に、突然上げられた叫びは、涙に震えていた。
一筋の涙と共に、ヒートの在り方を肯定する言葉は進む。

( ゚д゚ )「お前とはぁ! 恋人にはなれないけどぉおおお!!」

残酷な言葉だろう。
好きだ、と言ってきた子に返す言葉ではないかもしれない。

( ゚д゚ )「一生! ライバルだからなぁあああぁああぁあ!!!」

しかし、これでいいのだ。
男女の在り方は、必ずしも恋人である必要はない。

67 名前:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします[] 投稿日:2016/04/02(土) 23:12:09.593 ID:YYfpLl5c0
  
心の底から発せられた声は、
何よりも鋭く、また、美しく直線を飛ぶ。
真っ青な空の中、透明が零れ落ちた。


ノハ;凵G)「……ありがとうございまあああああすううううう!!!!!」


拭ったかいもなく、再び溢れた涙と共に、
ヒートは真摯なミルナの言葉に礼を述べる。

恋人にはなれなかったけれども、
一生ものの約束をしてもらえた。

それは、エンゲージリングに勝るとも劣らない、
何よりもの繋がりであり、証だ。

69 名前:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします[] 投稿日:2016/04/02(土) 23:14:14.230 ID:YYfpLl5c0
  
(;´・ω・`)「素直! 危ないからこっちへきなさい!」

从#゚∀从「センセー! 水差すなよ!」

校庭にいた生徒達がじんわりと胸を暖かくしていると、
上の方からヒートとは違う声が聞こえてきた。

どうやら、ようやく我に帰り、彼女を連れ戻すべく動いた教師がいたらしい。

(#´・ω・`)「屋上の鍵を開けたのはお前か!」

从 ゚∀从「そーだよ」

(#´・ω・`)「素直がこんなとこにいるなんておかしいと思った」

从 ゚∀从「ケッ。アタシは不良だけど、女でもあるんでね。
     全校生徒の前での告白劇に付き合わないわけねーだろ!」

(#´・ω・`)「どんな理屈だ!」

ぎゃいぎゃいとした言い争いによると、
どうやらハインリッヒがヒートを屋上まで手引きしたらしい。
同クラスである二組の面々は、運動会の準備以降、
やけに二人が仲良くしていたことを思い出し、合点がいった、という顔をしていた。

71 名前:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします[] 投稿日:2016/04/02(土) 23:16:22.885 ID:YYfpLl5c0
  
ノハ;凵G)「せんせ……。ごめんなさい。
     わ、私が悪いんだ。ハインを怒らないでやってくれ」

从 ゚∀从「馬鹿。アタシは怒られなれてるからいいんだよ」

縁から離れ、ハインリッヒとショボンが言い争いを繰り広げている階段前までヒートがやってくる。
同時に、ハインリッヒのほうもトテトテと彼女に近づき、優しく肩を抱き寄せてやった。
偉業を成し遂げた人間に対する、ハインリッヒなりの激励だ。

从 ゚∀从「それより、お前だ。
     フられるのは覚悟の上だったのか?
     馬鹿だなぁ。んな顔するくらいなら、奪ってやりゃいいのによぉ」

乱暴な手つきでヒートの涙を拭ってやる。
強くこすってしまったため、彼女の目尻がよりいっそ赤みを増して見えた。

从 ゚∀从「なあ先生。アタシが二人分怒られるからさ、
     こいつのことは勘弁してやってよ」

不良娘ではあるが、ハインリッヒは心の優しい子なのだ。
授業をサボったことこそあれど、彼女は誰かを虐めたり、理不尽な暴力を振るったことはない。

从 -∀从「失恋って、どんな罰よりも辛いから、さ」

ノハ;凵G)「いいんだ、ハイン。私は、全部、知ってたし、覚悟もしてたから」

从 ゚∀从「そういうことは、泣き止んでから言うんだな」

72 名前:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします[] 投稿日:2016/04/02(土) 23:18:07.662 ID:YYfpLl5c0
  
(´-ω-`)「あのねぇ……」

ショボンは目を閉じ、呆れたようにため息をつく。

(´・ω・`)「ここでキミ達を許して前例を作ったら、
     後輩達が後に続いてしまうかもしれない。
     屋上から告白なんてロマンがあるしね。
     そして、いつか衝動的に飛び降りる子が出てくるかもしれない」

屋上を封鎖しているのは、ルールであるから、というわけではない。
危ないから、生徒の安全を守らなければならないから。
その前提があってこそのルールだ。

(´・ω・`)「無罪放免なんて出来るわけないでしょ?」

从;゚∀从「うっ……」

ノハ;凵G)「ごめんなぁ、ハイン……」

あまりの正論にハインリッヒは言葉を失くした。
ヒートはそんな彼女を見て、また涙を流す。
どうにも感情の昂ぶりが収まらず、ちょっとしたことで揺れ動いてしまうようだ。

(´・ω・`)「……でも、キミ達の友情は素晴らしいと思うよ」

ショボンは小さく笑う。
嫌味ったらしい笑みとも、苦笑いとも違った、正真正銘の笑顔だ。

73 名前:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします[] 投稿日:2016/04/02(土) 23:20:06.875 ID:YYfpLl5c0
  
結局、ハインリッヒとヒートに与えられた罰は、
一週間の雑用とトイレ掃除だけであった。
職員会議では数日の謹慎、という案も出たらしいが、
ショボンの口添えのおかげでどうにか回避できた。

彼女達は高校三年生。
就職するにせよ、進学するにせよ、
謹慎処分を受けたなどという事実はないに越したことない。

ノパ听)「今日も働いた!!」

( ゚д゚ )「お疲れさん」

運動会が終わって数日が経った今も、
ミルナとヒートは共に登下校をする毎日を送っている。

どこからどう見ても、運動会前と変化した部分は発見することができない。
何も知らなければ、片方が告白し、もう片方がフった方だとは思えないだろう。

( ゚д゚ )「……なあ、ヒート」

ノパ听)「何だ?」

( ゚д゚ )「オレはお前のライバルだ」

ノパ听)「あぁ」

( ゚д゚ )「だから、お前の隣に立っていても恥ずかしくない男でありたいと思う」

74 名前:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします[] 投稿日:2016/04/02(土) 23:22:06.463 ID:YYfpLl5c0
  
ミルナの声は真剣だ。
ヒートは黙って彼の言葉を聞く。

( ゚д゚ )「……オレも、告白しようと思う」

この世界が少女漫画の世界であったならば、
彼が告白する相手はヒートなのだろう。
堂々とした告白に胸を打ちぬかれたミルナとヒートが結ばれてハッピーエンド。

しかし、現実の世界は甘くできていない。
ヒートもそれは重々承知している。

ノパ听)「クー姉には彼氏がいるぞ」

( ゚д゚ )「知ってる」

クールは大学で恋人を得た。
時折、彼氏の方が素直家にやってくることもあるため、
ミルナも相手の姿を何度も目にしている。

背は低めで、運動は欠片もできそうにない。
けれども、とても優しげで、クールのことを大切にしてくれている男だった。

ノパ听)「……失恋は辛いぞ」

( ゚д゚ )「あぁ。そうかもな」

76 名前:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします[] 投稿日:2016/04/02(土) 23:24:15.469 ID:YYfpLl5c0
  
先にある苦痛を知っていても、やらなければならない。
そうしなければ、ミルナは自分がヒートの隣に立つことを許せそうになかった。

フられるとわかっていていながらも一歩を踏み出しただけでなく、
大勢の人間を前にして告白をやってのけた最高に格好良いライバルと並ぶためには、
ミルナも相応のことを成し遂げなければならない。

( ゚д゚ )「だが、思いを伝えることは、無駄ではないはずだ」

ノパ听)「そっか」

( ゚д゚ )「あぁ」

二人分の足音が響く。
家はもう近い。

ノパ听)「フられたら慰めてやろうか?」

( ゚д゚ )「いらん」

ノパ听)「胸なら貸してやるぞ」

( ゚д゚ )「バーカ」

ノハ#゚听)「馬鹿とは何だ!
     私は総策に入学する女だぞ!」

( ゚д゚ )「は? お前も志望大学そこか?」

ノパ听)「……お前もか」

78 名前:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします[] 投稿日:2016/04/02(土) 23:26:20.923 ID:YYfpLl5c0
  
二人は顔を見合わせ、
同時にニッ、と口角を上げた。

( ゚д゚ )「勝負だ!」

ノパ听)「勝負だ!」

綺麗にそろった声に二人はまた笑う。
きっと、この勝負も引き分けに終わるのだろうけれど、
死ぬまで1勝1敗を貫ければ、この上なく幸福で、充実した人生になるに違いない。
ヒートは胸の奥が心地良い暖かさに包まれるのを感じていた。

( ゚д゚ )「ヒート」

二人は家の前で立ち止まる。

ノパ听)「ん?」

( ゚д゚ )「…………いや、何でもない」

ノパ听)「何だそれ」

ヒートはクスクスと笑う。

ノパ听)「そうだ。クー姉呼んできてやろうか?」

( ゚д゚ )「いや、遠慮しておく。
    どうせなら綺麗な夕日をバックに告白したい」

ノパ听)「ヒュー! ロマンチックだなぁ!」

79 名前:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします[] 投稿日:2016/04/02(土) 23:28:30.957 ID:YYfpLl5c0
茶化すような口調のヒートをあしらいつつ、
ミルナはそっと目を細めた。

クールのような愛おしさを抱くことはできないけれど、
世界で二番目くらいには幸せになって欲しい、と願うことができる女。ライバル。

( ゚д゚ )「いつかお前が――」

ヒートが家に入っていくのを見届けた後、
ミルナは小さく小さく呟いた。

( ゚д゚ )「オレなんかよりもずっとずっと良い男と結婚したら、
    無理やりにでもスピーチに割り込んで、言ってやるよ」

思い出すのは、堂々と立つヒートの姿。
真っ赤になった顔。
涙でぐちゃぐちゃになった顔。

( ゚д゚ )「――完敗だった、って」

1勝1敗などではない。
ヒートの2勝0敗だった、と。




ノパ听)それでも勝負は続くようです( ゚д゚ )

END

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