沼男はいないようです

165 名前:名無しさん[] 投稿日:2016/04/03(日) 23:56:47 ID:gxLDXQXc0


彼女はきっと、ニセモノなのだろう。



だからって、拒絶することができるか?



俺には無理だ。



ニセモノだと分かっていても、愛していることに変わりはないんだ。

.

166 名前:名無しさん[sage] 投稿日:2016/04/03(日) 23:57:33 ID:gxLDXQXc0





case.C 茂羅モララー




.

167 名前:名無しさん[sage] 投稿日:2016/04/03(日) 23:59:02 ID:gxLDXQXc0

 内藤と別れてから、およそ1時間が経っている。

 家にはまだ着いていない。


( ・∀・)「……」


 俺は今、最寄駅前のファストフード店にいる。

 客も殆どいなく、閑散とした店内。
不味いコーヒー1杯を片手に、ずっと考え事をしていた。

 荒巻博士の、あの話についてだ。

168 名前:名無しさん[sage] 投稿日:2016/04/04(月) 00:01:53 ID:6uu3gP120

 スワンプマンについて、俺は今の段階では賛成派とも否定派とも言えない。
どちらかといえばやや否定派寄りだが、肯定的な意見も一応は持ち合わせている。

 例えば、身体。

 博士の説明によると、スワンプマンの身体は全く別の人間の分子によって構成されている。


 聞いた瞬間はなんておぞましいと思ったが、よくよく考えてみると大した問題ではないように感じた。


 その理由は、俺自身にある。


 今ある俺の腎臓は、元々俺のものではない。
どこかに住んでいる、心優しい人によって提供されたものだ。


 そう、臓器移植だ。


 臓器移植によって、俺はもっと早くに死なずに済んだ。
移植手術によって、俺は生き長らえることが出来ている。

 分子テレポート理論を否定することは、即ち俺自身という人間の否定になってしまう。

169 名前:名無しさん[sage] 投稿日:2016/04/04(月) 00:02:44 ID:6uu3gP120

 俺は手術前の自分と手術後の自分を同一の人間だと思っているし、そのことについて疑ったことは一度もない。

 つまり、スワンプマンの肉体はオリジナルと同一と見なして良いだろう。
そういう結論に至った。


 しかし。
流石に精神や心までがツクリモノだったとなると、そう易々と看過することはできない。

 それこそ内藤の質問の、「オリジナルが痛みを感じるかどうか」といった問題もある。
荒巻博士は「嘘をつかない」と前置きした上で「痛みは存在しない」と言っていたからおそらく事実であろうが、そのことを証明する手段は無い。

 もしもこれでオリジナルが筆舌に尽くしがたい苦痛を与えられて分子分解されるとしたら、このテレポート理論は大問題だろう。

170 名前:名無しさん[sage] 投稿日:2016/04/04(月) 00:03:37 ID:6uu3gP120

 それと、オリジナルの意識についての問題。

 スワンプマンの視点だと、何も問題が無い。
オリジナルの意識とスワンプマンである自分の意識は、同一のものと見なしているためだ。
そもそもスワンプマンには自分がスワンプマンという自覚が無いのだから、疑う余地すら発生しない。


 しかし、オリジナルの視点からはそういうわけにはいかない。

 一度生物的な死を遂げている以上、その個体の意識はそこで途絶えている。

 つまりオリジナルからすると新しく生み出されたスワンプマンは、自分にそっくりなだけのニセモノだ。

 自分が死んだ瞬間と、スワンプマンが生まれる瞬間に同じ意識を引き継いでいたとしても、あくまでそれはオリジナルにとって「別の意識」である。

 何も知らないものが客観的に見た場合だと、それは何の問題もない。
何故なら、そもそも成り代わっているということが分からないからだ。

171 名前:名無しさん[sage] 投稿日:2016/04/04(月) 00:05:13 ID:6uu3gP120

 帰りに電車で、スワンプマン肯定派の内藤に意見を求めてみた。
彼の視点は、「自分には見分けがつかないし、誰も気付けるわけがない」という意見から分かるように、客観的な視点に重きを置いていると感じた。

 一方猫田。
話こそ聞けなかったが、彼女は恐らく主観的な意見の持ち主だろう。
それと同時に、この事実を知ってしまったオリジナルだからこその悩みとも言える。
きっと死んでしまうオリジナルの主観性に重きを置いていたのではなかろうか。

 そこまで深く語ったわけでもないし、そもそも2人とはまだ会って1週間ちょっとしか経っていないので不確定だが、大体こんな認識でいる。

 しかし、それはあくまでスワンプマンという思考実験についての彼らの意見だ。
自分が当事者となった今、その意見がどのように変化するは分からない。

172 名前:名無しさん[sage] 投稿日:2016/04/04(月) 00:06:06 ID:6uu3gP120

 ここで初めて、自分が考えているのがスワンプマンの思考実験についてのことだけだと気付く。

 違う。この実験の趣旨は、そこじゃない。

 この実験で試されているのは、人間の愛についてだ。

 博士は確か、スワンプマン問題についての議論を交わしたいわけではないと語った。
つまりスワンプマン肯定派も否定派も、人間の愛という感情を前にしてどういった行動を取るか、という結果を求めているのだろう。

173 名前:名無しさん[sage] 投稿日:2016/04/04(月) 00:08:01 ID:6uu3gP120



 愛、か。


 なるほどこれは確かに立派な「人体実験」だ。

 こんな安っぽい机と椅子に座ってウダウダと考えるより、今一度「愛」と向き合ってみるとしますか。

 少し古い型の携帯電話で彼女にメールを打ちながら、席を立つ。

 すっかり覚めてしまったコーヒーは、相も変わらず不味かった。


* * *

174 名前:名無しさん[sage] 投稿日:2016/04/04(月) 00:09:20 ID:6uu3gP120

(゚、゚トソン「おかえりなさい。遅かったですね」


 都村トソン。俺の恋人だ。
俺は彼女と同棲している。

 所謂大学生カップルというやつだが、俺とトソンは同い年じゃない。
学年は一緒だけど、俺の方が2つ歳上だ。

 高校時代に手術や通院を経験していたので、大学に入るのが遅れた。
そしてやっと大学に入学し、出会ったのが彼女だ。


( ・∀・)「ただいま。遅くなってごめんね、夕飯はもう食べた?」

(゚、゚トソン「まだです。モララーのことを待ってたので、お腹ペコペコですよ」

(;・∀・)「そ、それはごめん。待っていてくれてありがとう。一緒に食べようか。俺も腹ペコだ」

(゚、゚トソン「わかりました。準備しますね」

175 名前:名無しさん[sage] 投稿日:2016/04/04(月) 00:11:52 ID:6uu3gP120

 時刻はもう、8時を過ぎている。
つい考え事をし過ぎていたせいだ。
あのまま真っ直ぐ帰っていたら、6時半頃には家に着いていたことだろう。

 家の中に入ると、何かを醤油で煮込んだ良い香りが漂ってくる。


( ・∀・)「煮物?」

(゚、゚トソン「はい。今日は肉じゃがです」


 それは楽しみだ。
彼女はとても料理が上手い。
痩せ型だった俺の体重が同棲してから3キロ増えたのは、ひとえに彼女のおかげだ。

 食事の準備を2人でしていく。
彼女は料理を温め直し、俺は食器を用意する。
同棲したての頃はお互いどこかぎこちなかったが、今はもう淀みなくこなせるようになった。

 食事の準備が整ったので、食卓につく。
一緒にいただきますの号令の後、食べ始める。
さて、どれから食べよう。

176 名前:名無しさん[sage] 投稿日:2016/04/04(月) 00:12:52 ID:6uu3gP120

 まずは味噌汁から。
具は豆腐と油揚げ。
この中身はいつも冷蔵庫に余っているものの中からランダムに選ばれるが、俺はこの2つの具が一番好きだ。
ちなみに彼女は豆腐とワカメが一番好きらしい。

 味噌汁のお椀を持ち、一口啜る。
出汁と味噌の香りが鼻を抜ける。
何やら美味しい出汁パックを最近購入したらしい。
あれから一気に味噌汁が美味しくなった。
少し値が張ったらしいが、その価値は十分にあるだろう。

 温かいうちに、メインの肉じゃがに手をつける。
具はジャガイモ、ニンジン、玉ねぎ、牛肉。
ジャガイモを少し箸で割り、牛肉と一緒に食べる。

 美味しい。
ほっくりとしたジャガイモに、醤油ベースの煮汁がしっかりと染みている。
単体でもしっかりと味わえるが、そこに牛肉の旨味がジワッと溢れてきた。

 人参と玉ねぎも、よく味が染み込んでいる。
人参本来の優しい甘みと、甘っ辛い煮汁に浸かった玉ねぎが調和する。
それぞれの具を別々に食べても勿論美味しいが、この肉じゃがはどの組み合わせで食べても美味しくなる。

177 名前:名無しさん[sage] 投稿日:2016/04/04(月) 00:14:00 ID:6uu3gP120

 口が醤油味に占拠されたところで、次はご飯だ。
帰る前にちゃんと連絡を入れておいたおかげで、炊きたてだ。

 炊きたてツヤツヤのお米を、パクリと口に含む。
やはり、醤油味はご飯に合う。
胃に送った後も口内に余韻として残っている牛肉の濃い味が、ご飯によって中和されていく。
この組み合わせだけでどれだけでも食べられそうだ。

 ひとつ箸休めに、小鉢をつつく。
ほうれん草のお浸しだ。
醤油は控えめに垂らされ、軽くかつお節が振りかけられており、噛めば噛むほどほうれん草のスッキリとした青臭さとかつお節の旨味が混ざり合う。

 一通り味わったところで、彼女に声をかける。


( ・∀・)「相変わらず美味しいね」

(゚、゚トソン「ありがとうございます。肉じゃがの味付けはどうでしょう?」

( ・∀・)「ちょうどいいと思うよ。俺好みだ」

(゚、゚トソン「ありがとうございます」

178 名前:名無しさん[sage] 投稿日:2016/04/04(月) 00:15:51 ID:6uu3gP120

 そう言って、また食事に戻る。
無表情に見えるが、料理を褒められて喜んでいるのが俺には分かる。

 こうした些細な感情の変化も敏感に感じ取れるようになったのは、一体いつからだろうか。
付き合い始めの頃はそこがよく分からず、困ったりもしていた記憶がある。


 このトソンが、完全なニセモノだと割り切ることは俺には出来ない。

 かと言って、今までと全く同じトソンだというのも少し違う気がする。


 彼女がスワンプマンになったのは、つい最近のことだ。

 それまでずっとトソンがテレポート装置を使わなかった理由は、特にないらしい。
たまたま乗る機会が無かっただけだそうだ。

 その機会が、つい最近訪れた。
先月、彼女の友達と一緒にVIPタワーに行くことになったそうだ。
良い機会だし、一度使ってみようと思ったとのこと。
帰ってきた彼女は、「特になんともなかった」と言っていたのを覚えている。

179 名前:名無しさん[sage] 投稿日:2016/04/04(月) 00:16:49 ID:6uu3gP120

 その話を聞いた後、俺がトソンについて違和感を覚えたことは一度もなかった。

 彼女がスワンプマンになってからも、食事は美味しいし、些細な感情の変化も読み取れるし、性生活も特に問題はなかった。

 彼女が別人に成り代わっていたというのに、俺は全く変わらずその人といつも通りの生活をしていたということだ。

 完璧な擬態、とでも言うべきか。

 それとも、彼女がトソン本人だと認めるべきか。

 中途半端な、だけど決して無視できない心のもやもやを抱えたまま、俺は食事に戻る。


 コツン。
箸が茶碗の底を突いた。
考え事をしていたら、もう食べ終わっていたようだ。

 あぁ、もっと味わいたかった。



* * *

180 名前:名無しさん[sage] 投稿日:2016/04/04(月) 00:18:25 ID:6uu3gP120

 それから、俺たちは特に何事もなく過ごしていた。
何事もなく、というのはあくまで表面上のことであって、俺は四六時中彼女のことについて考えていた。

 出した答えは、やはりスワンプマンは同一ではないというものだった。

 俺を愛してくれていたトソンは、あくまでオリジナルのトソンだ。
スワンプマンの彼女は、それを引き継いでいるだけに過ぎない。

 つまり、スワンプマンになってからの彼女の記憶は紛れもない彼女のものであるが、それ以前のオリジナルのトソンの記憶はスワンプマンとしての彼女のものではない。

 よって俺は、オリジナルとスワンプマンを別人だと結論付けた。

 ここまでは良い。

 しかし、そこで一つ問題が生じる。

 俺は彼女と、都村トソンのスワンプマンと離れ離れになりたくないのだ。

181 名前:名無しさん[sage] 投稿日:2016/04/04(月) 00:19:31 ID:6uu3gP120

(;-∀-)「……」


 どうしたものか。
オリジナルとスワンプマンの共生なんて、出来るのか。

 そう自問して、気付く。
出来るに決まってるだろ。

 現に今の社会は、オリジナルとスワンプマンが入り乱れている。
この街に関して言えば、スワンプマンの方が多いくらいだ。

 だが、世界は変わらずに回っている。
何も混乱など起きていない。
オリジナルとスワンプマンの共生は、可能だ。

 だがしかしそれは、オリジナルがスワンプマンの存在を知らなければ、という枕詞が必須である。

 俺は知ってしまった。
共生出来るか出来ないかは、俺の意識次第ということか。

182 名前:名無しさん[sage] 投稿日:2016/04/04(月) 00:20:29 ID:6uu3gP120

( ・∀・)「……」


 正直、出来るとは思う。
だがどこかで綻びが生まれるのが怖い、というのが正直な感想だ。

 何よりこの結論を出したからには、オリジナルの彼女に申し訳が立たない、といった気持ちがある。

 俺は、トソン以外の女性を愛することになるのか。

 そしてスワンプマンの彼女は、本当に俺を愛しているのか。

 その愛という感情も、プログラムによって埋め込まれた「愛」「のようなもの」なのではないだろうか。

 そんな漠然とした不安を抱えながら、また日常を過ごす。



* * *

183 名前:名無しさん[sage] 投稿日:2016/04/04(月) 00:21:13 ID:6uu3gP120

 事態が動いたのは、それから2週間後。
相変わらず俺は、自分の出した煮え切らない答えについて悩んでいた。

 風呂から上がると、寝巻き姿のトソンが布団の上で正座をしていた。

 そういうことかと思い手を出そうとしたら、手を叩かれた。痛い。


(゚、゚トソン「モララー、正座」

(;・∀・)「……はい」


 なんだろう、この空気。
手を出そうとした自分が恥ずかしくなる。
よく見ると、少し怒っているようだ。


(゚、゚トソン「最近のモララー、少し態度がおかしいです」

(;・∀・)「へ?」

184 名前:名無しさん[sage] 投稿日:2016/04/04(月) 00:22:05 ID:6uu3gP120

(゚、゚トソン「私に対して、なんというか……よそよそしくなった気がします」


 ドキッとする。
なんでこんなに鋭いんだ。
そんなところまで、オリジナルのトソンを真似なくても良いと思う。

 荒巻博士は、本当に天才だ。
こんなの何の説明も無くニセモノだなんて言われても、信じられるわけがない。

 いや、コピーという観点から見るとそれは当然のことなのだろうか。

 取り敢えず一旦思考を放棄して、トソンの話に集中する。


(゚、゚トソン「あなたは他の人に比べて、少し考え過ぎる節があります」


 多少の自覚はある。
黙って頷き、肯定する。

185 名前:名無しさん[sage] 投稿日:2016/04/04(月) 00:23:06 ID:6uu3gP120

(゚、゚トソン「つまり、一度考えることを放棄して、遊ぶ必要があります」

(;・∀・)「……はぁ、そうですか」


 いやその理屈はおかしい、と言いたかったが、口を挟める余裕なんか無かった。
オリジナルの彼女も、こういう風に熱くなると話を聞かなくなる節があった。


(゚、゚トソン「と、いうわけでですね」

( ・∀・)「はい」

(゚、゚トソン「ゲームをやりましょう」

(;・∀・)「……はい?」


 そう言って彼女は、いそいそと手元のリュックから携帯ゲーム機を取り出す。
ピンク色のボディにやたらと可愛らしいシールが貼ってあるのと、そういった装飾が何もない黒くてシンプルなものの2つだ。

 待て待て、どういうことだ。
ていうかそのゲーム機はなんだ。

186 名前:名無しさん[sage] 投稿日:2016/04/04(月) 00:24:23 ID:6uu3gP120

(゚、゚トソン「この前に話した知り合いと、また最近会いまして」


 この前、というと恐らくVIPタワーに行った友達のことだろう。


(゚、゚トソン「その子から借りてきました。少し古い型ですけど、ちゃんと動作するはずです」

(;・∀・)「どういうこと? ていうか、トソンってゲームとかやるんだ」

(゚、゚トソン「最近は全くやってませんが。こっちのはわざわざ実家に帰って取りに行きましたよ」


 そう言って、コホンと小さく咳払いをする。


(゚、゚トソン「何に悩んでるか知らないし、相談もしてくれないようですけどね」

(゚、゚トソン「励ますことくらい、私にもさせてくださいよ」


( ・∀・)


(゚、゚トソン「貴方はいつも勝手に抱え込んじゃうんですから。ゴミ掃除くらいなら手伝ってあげますよ」

187 名前:名無しさん[sage] 投稿日:2016/04/04(月) 00:25:24 ID:6uu3gP120

 自然と、言い放つ。
しかし俺には分かる。彼女は少し照れていることが。
最後のセリフは、きっと照れ隠しだろう。

 どうやら相手の感情を敏感に読める能力を持っていたのは、俺だけでないらしい。
随分と心配をかけさせてしまったようだ。

 それにしても、ゴミ掃除と言ったか。
俺の今までの悩みを、ただのゴミと捉えて一蹴しやがった。


 全く、敵わない。


 オリジナルだろうがスワンプマンだろうが、都村トソンには本当に敵わない。


(゚、゚トソン「分かったら、さっさと始めますよ。対戦だと圧勝してしまいそうなので、協力プレイのソフトです」

188 名前:名無しさん[sage] 投稿日:2016/04/04(月) 00:26:16 ID:6uu3gP120

(;・∀・)「え、俺ゲームとか全然やらないんだけど……って、俺こっちのキラキラした方なの!?」

(゚、゚トソン「当たり前じゃないですか。私がそんな頭の悪そうなシール貼ると思いますか?」

(;・∀・)「いや、そうだけど……って、何気に酷いこと言うね……」


 小言を言いながらも、起動する。
にしても、この出っ張ったシール邪魔だな。


(゚、゚トソン「準備できましたか? それじゃあここの『通信プレイ』にしてですね……」

( ・∀・)「了解了解……えーっと、これか」

(;・∀・)「……プレイ時間200時間!?  めっちゃやり込んでるじゃん!!」

(゚、゚トソン「そんなもんですよ。ほらほら始めますよ」

189 名前:名無しさん[sage] 投稿日:2016/04/04(月) 00:26:53 ID:6uu3gP120

 そう言い、ゲームを始める。
彼女のキャラクターは俺に構わずスイスイと進んでいく。
おい、協力プレイじゃないのか。
俺を置いて先に進むな。


(;・∀・)「だァーもう! 待てったら!」

(゚、゚トソン「早くこっちまできてください。暇です」

(;・∀・)「初心者相手に無茶言うな! ちょっと待ってろ……うわ、なんだこれ!!」

(゚、゚トソン「それくらい1人で狩れますよ。頑張って下さいね」

(;・∀・)「助けろよ!! 肉焼いてんじゃねーよ!!」

190 名前:名無しさん[sage] 投稿日:2016/04/04(月) 00:27:38 ID:6uu3gP120

 どうやら俺は、勘違いをしていたようだ。

 ここまで想われておいて、愛されていないかもしれないだなんて言えるわけがない。

 俺は愛されている。
トソンだけでなく、スワンプマンの彼女にも。

 このトソンは、俺の知っているトソンとはきっと別人なのだろう。
それでも、俺以上にトソンのことを熟知している。当たり前か。

 俺はトソンの友達のことなんて知らないし、トソンがこんなにゲームが上手いとも知らなかったし、思いの外毒を吐くといったことも知らなかった。


 そして俺は、そんな彼女を愛してしまっている。
スワンプマンとしての彼女のことも、愛してしまった。

191 名前:名無しさん[sage] 投稿日:2016/04/04(月) 00:28:21 ID:6uu3gP120



 オリジナルのトソンには申し訳ない。
これじゃ二股みたいだな。



 それでもきっと君は、表情を変えずにこう言うんだろうね。



『当然です。私のニセモノなんですから、それくらいしてくれないと困ります』


.

192 名前:名無しさん[sage] 投稿日:2016/04/04(月) 00:29:09 ID:6uu3gP120



「なー、トソンー」

「なんです?」

「いつまでも一緒にいような」

「……当然です」

「あ、肉焦げてる」

「失敗したので次焼きます」

「おいちょっと待て!! だから助けに来いよ!!」

193 名前:名無しさん[sage] 投稿日:2016/04/04(月) 00:30:03 ID:6uu3gP120



case.C 茂羅モララー



実験終了

inserted by FC2 system