( ^ω^)とξ゚听)ξは虹を越えて征くようです

24 名前: ◆Tk5XFE8AeI 投稿日:2016/03/28(月) 22:44:58 ID:Az6ycBdc0

( ^ω^)「さて、集落の入り口についたわけだけど」

ξ゚听)ξ「多分馬鹿だから、正面からくるでしょうね」

( ^ω^)「俺たちに喧嘩を売るとはいい度胸だな」

ξ゚听)ξ「俺の子分にしたことの落とし前をつけてもらおうか」

( ^ω^)「賭けるかお?」

ξ゚听)ξ「いいわよ。何を賭ける?」

( ^ω^)「ぼくが勝ったらツンはぼくにちゅー」

ξ;゚听)ξ「は!? ふざけんじゃないわよ!!」

( ^ω^)「勝てばいいんだおー?」

ξ;゚听)ξ「ううううううう……」

( ^ω^)「ツンが勝ったらなんでも言うこと聞いてやるお」

ξ゚听)ξ「わかった。絶対だからね?」

( ^ω^)「おっおっ」

( ^ω^)「……ツンさん」

ξ゚听)ξ「うん」

( ^ω^)「あの大量の松明ってもしかして」

ξ゚听)ξ「多分、全員で来てると思う」

( ^ω^)「これはありがたいお。全員フルボッコにして終わりだお」

ξ゚听)ξ「そうね」

 少し遠くに見えるのは、ゆらゆらと動くいくつもの松明の炎。
 確実に盗賊団であろう集団が、暗闇から段々と近づいてくる。
 まさか全員できてくれるとは、ブーンの言う通りこちらにとってかなり都合が良い。
 
( ^ω^)「いこうお。村から少し遠ざかった方がいいお」

ξ゚听)ξ「うん」

 集団を目指し、私たちは歩き出した。
 近づくにつれ、下品な笑い声が聞こえてくる。

25 名前: ◆Tk5XFE8AeI 投稿日:2016/03/28(月) 22:45:42 ID:Az6ycBdc0
 
 そして、先頭にいたのはあの男だった。
 
(;^Д^)「なっ……てめぇら!」

( ^ω^)「おひさー」
 
(;^Д^)「やっぱりあの村に行ってやがったか!」

ξ゚听)ξ「ええ、その節はどうも」

(;^Д^)「相変わらずふざけやがって……カシラァ!!」

|(●),  、(●)、|「おうおう! こいつらかい!!」

ξ;゚听)ξ(うわっ……)

|(●),  、(●)、|「うちの奴を随分かわいがってくれたようだなぁ!?」

|(●),  、(●)、|「俺たちに喧嘩を売るとはいい度胸だ────」

 一瞬だった。
 夜ということもあるが、昼であったとしてもこの連中には何故こうなったのか気付かないだろう。
 自分たちの頭領が、一瞬にして地面に口づけをしている理由に。
 
( ^ω^)「はいぼくの勝ちー」

ξ;゚听)ξ「うううううう……私もそのセリフだと思ってたのよ……」
 
 私にとってはこちらの方が重大な問題だ。
 ブーンとの賭けに負けてしまったのである。
 
( ^ω^)「それじゃあご褒美はまた後日」

ξ;゚听)ξ「……はい」

(;^Д^)「か……かしらぁぁぁああああああ!?」

(=;゚ω゚)ノ「どどどどどどどうなってんだよう!?」

( ^ω^)「どうって、その大男の顔面を地面に叩きつけただけだお」

26 名前: ◆Tk5XFE8AeI 投稿日:2016/03/28(月) 22:46:28 ID:Az6ycBdc0

( ^ω^)「多分死んでないけど、数日は起きないと思うお」

 そうなのだ。
 大男がセリフを言い終わる前に、ブーンが大男の頭を押さえつけ、地面に叩きつけたのである。
 やはり連中にはなにも見えなかったようだ。
 
(;^Д^)「クソが……だがこっちには奥の手があるんだよ!」

( ^ω^)「お?」

(;^Д^)「先生!! お願いしますぜ!!」

ξ゚听)ξ「……?」

 ならず者たちの影から現れたのは、
 
('A`)
 
 意外にも、小柄な男だった。
 しかも百人中百人が同意するであろう不細工だった。
 
( ^ω^)「なんだお?」

('A`)「貴様ら……死にたくなければ今すぐここから立ち去れ」

ξ゚听)ξ(……)

('A`)「さもなくば、地獄をみることにゴョヒ」

 またも言い終わる前に、ブーンの手によって顔面を地面に叩きつけられた。
 今度は頭を掴み叩きつけたのではなく、頭を叩いてだ。
 
 しかし。
 
( ^ω^)「ッ!?」

('A`)「……痛いじゃないか。まぁ、そんなことをしても無駄なんだよ」
 
( ^ω^)「こいつ……なんだお……超ブサイク……」

('A`)「……」

('A`)「俺の名はドクオ。この盗賊団に雇われている用心棒だ」

 不細工は不敵に名を名乗った。
 妙な力は感じない。魔法使い独特の雰囲気も発していない。
 だからこそ、ブーンの一撃を受けてなお立ち上がることができたことが不思議でならなかった。

27 名前: ◆Tk5XFE8AeI 投稿日:2016/03/28(月) 22:47:16 ID:Az6ycBdc0
 
('A`)「さぁ、悪いことは言わない。今すぐここからブッホォォォォォォォーーーー…………」

(;^Д^)「せ、先生ぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!」

( ^ω^)「わりと強めにぶっ飛ばしたお」

ξ゚听)ξ「うん。お疲れ様」

(;^Д^)「くそ……一体なんなんだよてめぇら!?」

ξ゚听)ξ「悪党に名乗る名なんてないわ」

( ^ω^)「ツン」

ξ゚听)ξ「わかってる」
 
 騒ぎが大きくなれば、村のみんなを不安にしてしまう。
 そうなる前に、この茶番を終わらせなければならない。
 
ξ゚听)ξ『“Brown”────……ツン=デレンカの名において命じる』

(;^Д^)「ッ!? まさかお前……魔法使い!?」

ξ゚听)ξ『禍々しき茶色の蛇。捕縛せよ。我の敵は汝が敵でもあるのだから』

 色を紡いだ。狼狽える盗賊たちの足元から茶色の蛇が現れ、彼らへ巻き付いていく。
 相変わらず見た目に抵抗があるが、複数人数を捕縛するには最適な魔法だ。

28 名前: ◆Tk5XFE8AeI 投稿日:2016/03/28(月) 22:48:14 ID:Az6ycBdc0
 
(;^Д^)「な、なんだこりゃ!? 離せ! 離せよおおおお!!」

(=;゚ω゚)ノ「キモいよう!! キモいよう!!」

 途端に悲鳴を上げる盗賊たち。
 百人以上の悲鳴は、それなりに響き渡る。
 どちらにしろ騒がせてしまった。
 
ミセ;゚д゚)リ「きゃああああああああああああああああああああああ!!!」
 
ξ;゚听)ξ「ミセリ!?」
 
 振り返ると、少し離れた場所でミセリが蛇に絡まれていた。
 
ミセ;///)リ「ちょ……そこは……んっ……」
 
ξ;゚听)ξ「わあああああ!!」
 
 咄嗟にミセリに手をかざし、
 
ξ;゚听)ξ「“Delete”!!」
 
 彼女への色を消去する。
 
 この捕縛魔法は一定の周囲に存在する動く人間を捕縛するものだ。
 対象は一つを指定することで絞ることができるが、今回のような大人数でる場合、範囲を指定するしかない。
 今回は範囲内の動く人間を指定したために、ミセリが捕まってしまったのだ。

29 名前: ◆Tk5XFE8AeI 投稿日:2016/03/28(月) 22:48:49 ID:Az6ycBdc0
 
ミセ;゚ー゚)リ「び、びっくりした……」
 
ξ;゚听)ξ「ごめんね? まさか近くにいるなんて……」

ミセ*゚ー゚)リ「いえ……私が悪いんですから……」

( ^ω^)「おっおっ。ツン、いけないんだーおー」

ξ;゚听)ξ「うるさいわね! あんたは気づいてたんでしょ!」

( ^ω^)「おっおっ」

 ひとまずは事態の収集がついた。
 一人残らず捕縛された盗賊たちだったが、離せなど上げる声はまだ元気が良い。
 一日経てば静になるだろう。
 
(;^Д^)「馬鹿強い野郎に魔法使いだったとは……クソが!!」

( ^ω^)「相手を選んで喧嘩した方がいいお?」

ξ゚听)ξ「これから騎士団に通報して、あなた達を連行してもらうわ。一週間はそのまま放置だからあしからず」

(;^Д^)「一週間だと!? 死んじまう! 死んじまうよ!!」

ξ゚听)ξ「大丈夫よ。 水 だ け はあげるようにしてもらうから」

( ^ω^)「さながら盗賊農園だおね」

ξ゚听)ξ「ね。農園には水をまかないとね」

30 名前: ◆Tk5XFE8AeI 投稿日:2016/03/28(月) 22:49:34 ID:Az6ycBdc0
 
(;^Д^)「お前らそれでも人間か!?」

ξ゚听)ξ「人間よ。それよりも、あなたたちがしたことの方がひどいと思うけれど」

ξ゚听)ξ「一体何人村人を殺したの? 私の勝手にしていいなら今すぐ全員殺してもいいんだからね」

(;^Д^)「ぐ……」

ξ゚听)ξ「一応、派遣される騎士団がくるの、多分数日後だけど、その前に村人たちがどうするかはわからないわ」

ξ゚听)ξ「彼らがあなたたちをどうするか。それはもう私の知ったことじゃないし、止めもしないから」

(;^Д^)「……」

ξ゚听)ξ「わかったらここで大人しくしていなさい」

 そこまで言うと、盗賊たちは項垂れ、声を発する者は一人もいなくなった。
 
 ────はず、だった。
 
('A`)「あらら……みんな捕まっちまってる」

( ^ω^)「……」
 
 ブーンが無言で私とミセリの前に立った。
 あの男と私の直線上を遮る形でだ。
 
('A`)「魔法使いか……ついてねぇな……」

31 名前: ◆Tk5XFE8AeI 投稿日:2016/03/28(月) 22:50:25 ID:Az6ycBdc0
 
( ^ω^)「お前、何者だお?」

('A`)「だからさっき言ったじゃないか。俺の名はドクオ」

( ^ω^)「そうじゃないお。さっきの一撃は並の人間なら死んでるはずだお」

('A`)「じゃあ、俺が並じゃないってことじゃないか?」

( ^ω^)「ありえないお。どんだけ鍛えたって耐えられるレベルを超えているお」

( ^ω^)「死なないにしても……無傷はありえないお」

ξ゚听)ξ(……こいつ……明らかに何かが違う……Brownでも捕縛できてない……)

ミセ;゚ー゚)リ「あわわわわ……」

('A`)「だから、俺が並じゃないってこと────」

 ブーンが動いた。ドクオに向けて一直線に疾駆する。
 駆ける勢いを殺さずに、右の拳を腹に打ち込んで、打ちぬく。
 
ミセ;゚ー゚)リ「────ひっ!」
 
ξ゚听)ξ(結構本気だな……)

 ドクオの背中からはブーンの手が生えていた。
 つまり、腹を貫通しているのだ。
 並の人間であれば、痛みにのたうちまわり、夥しい量の血液を辺りに撒き散らしているはずだ。

32 名前: ◆Tk5XFE8AeI 投稿日:2016/03/28(月) 22:50:57 ID:Az6ycBdc0
 
 それなのに、一滴の血も流さずドクオはただその場に立っていた。

( ^ω^)「お前、人間じゃねーお?」

('A`)「人間だって言っただろう? さっきから人の話を遮りやがって……」

ミセ;゚ー゚)リ「あわわわわわ……」

( ^ω^)「……」

 ミセリがいなければ、恐らくブーンは即座に首を飛ばしているだろう。
 さすがに彼女の前ではそうもいかない。
 
('A`)「まぁ、お前らにブラフは通用しないだろうしこのまま見逃してくれないか?」

( ^ω^)「そういうわけにはいかないお」

('A`)「俺は雇われていただけだ。手を下したわけじゃない。誰も殺してないぜ?」

( ^ω^)「……」

('A`)「だからまず、この手を抜いてくれよ?」

 ブーンは静かにドクオの腹に刺さった腕を引き抜いた。
 
('A`)「いって……つつつ……」
 
 穴が空いた腹を押さえて、暫くうずくまった。
 少ししてから立ち上がった時、腹の傷は完全に塞がっていた。

33 名前: ◆Tk5XFE8AeI 投稿日:2016/03/28(月) 22:51:30 ID:Az6ycBdc0
 
( ^ω^)「……」

('A`)「見ての通り、俺は不死身なんだよ。わかってくれたか?」

( ^ω^)「ッ!」

ξ゚听)ξ(不死身!?)

('A`)「じゃ、そういうことで……」

( ^ω^)「待てお!」

('A`)「え? なに?」

( ^ω^)「不死身ってどういうことだお?」

('A`)「どういうことって……不死身は不死身としか……」

( ^ω^)「お前、竜……にしては弱すぎるおね。どこかで何かされてたんじゃないのかお? 例えば……“実験”とか」

(;'A`)「ッ!?」
 
 ブーンの言葉に、ドクオは身を固めた。
 どうやら当たりのようだ。
 
ξ゚听)ξ「話してもらうわ。ゆっくりとね」

34 名前: ◆Tk5XFE8AeI 投稿日:2016/03/28(月) 22:52:05 ID:Az6ycBdc0
 
(;'A`)「あっ……いて!! いって!!」
 
 ブーンが男の腕を握り、そのまま背中の方へ捻じりあげた。
 
( ^ω^)「やっぱり痛いんだおね?」
 
ξ゚听)ξ「不死身だけど、死なない程度の痛みは感じるようね」

(;'A`)「な、なんだよお前ら!? 不死身の俺を見て冷静に分析しちゃってるの!?」

( ^ω^)「不死身には驚いたけど、今はそんなブサイクな顔で不死身になってしまったお前にちょっと同情してるお」

(;'A`)「まって! 俺のコンプレックスをショベルカーで抉らないで!?」

ξ゚听)ξ「たしかに。死ぬより苦痛ね……」

(;'A`)「お前、盗賊捕まえた時からいちいち言うことキツイんだよ!!」

ミセ;゚ー゚)リ「あの……あの……」

ξ゚听)ξ「ミセリさん、納屋かどこか空いているところない? 豚小屋でもいいわよ?」

(;'A`)「人間扱いして!?」
 
 なにやらわめくドクオを拘束して、私たちは村へと戻った。
 モナーさんに盗賊の事を含め事情を話せば、豚小屋を快く提供してくれた。
 
(;'A`)「どういうことだよ! 結局豚小屋かよ!!」

35 名前: ◆Tk5XFE8AeI 投稿日:2016/03/28(月) 22:52:45 ID:Az6ycBdc0
 
(;´∀`)「この男は……?」

ξ゚听)ξ「こいつは盗賊団に雇われていた用心棒です。事情がありまして、私たちが確保します」

(;´∀`)「そうですか……」

ξ゚听)ξ「モナーさん。モナーさんには話しておかないといけないことがあります」

( ´∀`)「はい、なんでしょうか?」

ξ゚听)ξ「気を遣って頂いて話しませんでしたが……ここまでお世話になった以上、説明する義務があります」

ξ゚听)ξ「私たちの旅の目的は……ブーンの病気を治療するためです」

( ´∀`)「病気……病気なら、旅をしていては……」

ξ゚听)ξ「ブーンの病気は、“竜化病”です」

(;´∀`)「なッ!?」

ξ゚听)ξ「大丈夫です。この病気は感染しませんし、ブーンは私の魔法で竜化を制御することができます」

(;´∀`)「……そうですか……いやしかし、竜化病とはまた……」

ξ゚听)ξ「私たちは、竜化病を治せる研究者を探す旅をしているんです」

36 名前: ◆Tk5XFE8AeI 投稿日:2016/03/28(月) 22:53:24 ID:Az6ycBdc0
 
 竜化病。
 厳密に言えば病気ではないのだが、一般的にこう呼ばれている。
 
 古い文献によれば、初出は今から約八百年前にまで遡る。
 文字通り、人が竜になってしまう病気とされている。
 年に数回、突然発作が起き、竜になる。その後、破壊の限りを尽くしてまた人に戻る。
 
 それを何十年も繰り返し、やがて発病者は完全な竜になるのだ。
 
 記録に残っている発病者たちは、全員がその道を辿っていった。
 どの発病者も、竜になると自我が消滅し、周囲にあるものをことごとく破壊する。
 その点で、ブーンは特殊だった。
 
 彼は竜化に対して、ある程度のコントロールが可能なのだ。
 そこに私の魔法によるサポートを加え、破壊を尽くす竜化は十年以上、なんとか防いでいる。
 しかし、ブーンの竜化が止まっているわけではなかった。
 
 異常な身体能力もそうだし、皮膚の硬質化もそうだ。
 ブーンは自分の意志一つで、鉄の剣を弾く皮膚を作り出すことができる。
 また、移動手段にしているが竜の翼を生み出すこともできる。
 
 恐らくここまで竜化を操れる者はいないであろう。
 利便性が高く、抑えられるなら無理をしなくても良いと思う人がいるかもしれない。
 それでも私とブーンはこの病気を治すために、旅を続けているのだ。
 
 それが彼と交わした、約束なのだから。

37 名前: ◆Tk5XFE8AeI 投稿日:2016/03/28(月) 22:55:21 ID:Az6ycBdc0
 
ξ゚听)ξ「そして……この男に不死身化する術を施した人間がいる」

(;'A`)「……」

ξ゚听)ξ「竜も不死身に近い存在です。きっと何か共通点があるはず……」

(;´∀`)「なるほど……しかし……」

 モナーはドクオの顔を一瞥して、
 
(;´∀`)「この顔で死ねないとは……」

(;'A`)「お前までそういうこと言っちゃうの!?」

( ^ω^)「まぁまぁ、誰もが思うことだから……」

(;'A`)「自分がどんな顔してるのかわからなくなってきた!」

ξ゚听)ξ「で、あなたはどこからきたの?」

(;'A`)「……」

ξ゚听)ξ「言わないなら、これから死なない程度の痛みを与え続けるわ」

ξ゚ー゚)ξ「死なないからやりすぎてもいいし、本当の地獄が見られるかもね?」

(((((;'A`)))))「鬼だこいつ! 鬼! 悪魔!!」

38 名前: ◆Tk5XFE8AeI 投稿日:2016/03/28(月) 22:55:54 ID:Az6ycBdc0
 
ξ゚听)ξ「悪魔で結構。目的の為なら手段を選ぶつもりはないわ」

ξ゚听)ξ「さぁ、どうなの?」

(;'A`)「……話すしかねぇだろ……」

( ^ω^)「賢い判断だお」

(;'A`)「クソッ……やっと逃げ出してきたってのに……ついてねぇ……」

(;´∀`)「なにやら込み入った話になりそうなので私は失礼しますね」

ξ゚听)ξ「すみません、ありがとうございます」

ξ゚听)ξ「あ、外の盗賊団に巻き付いている蛇は絶対に噛まないので好きにしていいですよ」

( ´∀`)「……わかりました」

 そう答えたモナーの目は、何かを決めた目をしていた。
 恐らく、村が受けた被害に対しての復讐をするのだろうが、そこまで私は関与するべきではない。
 私たちにとって、今は目の前にいるドクオが最優先事項なのだ。
 
('A`)「……はぁ」

( ^ω^)「とりあえず、なんで盗賊の用心棒なんかしてたんだお?」

('A`)「……生きるためさ」

39 名前: ◆Tk5XFE8AeI 投稿日:2016/03/28(月) 22:57:06 ID:Az6ycBdc0
 
('A`)「実験場から逃げ出した俺に家族なんていない。働き口も、家もない。
.   だから不死身の特性を使って、奴らにアピールしたのさ。用心棒にどうかって。
.   単純な奴らだ。好きに殴らせてその程度かとかやってれば賞賛の嵐。喧嘩もできない男が用心棒になれる」
 
( ^ω^)「なるほど」

ξ゚听)ξ「で、どこから逃げ出してきたの?」

('A`)「……この辺り一帯を統治する領主、モララーの城だよ」

ξ゚听)ξ「モララー? 善政で有名な領主じゃない」

('A`)「表向きはな。発展している都市、町はそりゃもう豊かそのものさ」

('A`)「少し辺境に出れば、ここが良い例だろ? 盗賊はいるし、なんの援助もない村が点在してる」

('A`)「自分に利益があることしかしないんだよ、実際の話」

( ^ω^)「そんな奴がリスクを冒して危ない実験なんかすんのかお?」

ξ゚听)ξ「いずれは国政にもでるんだろうし……たしかにね」

('A`)「俺にはわからねぇ。でもこれだけはわかる。モララーは狂ってる」

ξ゚听)ξ「狂ってるって?」

('A`)「あいつが何の実験をしているのかは知らねぇが、実験以外に奴個人の部屋があるんだよ」

('A`)「趣味の部屋だ。……どこまでやれば人間が死ぬのかを試す……拷問部屋だよ」

40 名前: ◆Tk5XFE8AeI 投稿日:2016/03/28(月) 22:57:46 ID:Az6ycBdc0
 
ξ゚听)ξ「あなたよく逃げ出せたわね……」

('A`)「自殺を図ったんだ。どうみても死んでるように見せて、死体処理場まで持ってこられたところで、逃げ出した」

ξ゚听)ξ「なるほど……不死身とはばれてなかったのね」

('A`)「だと思うが……十人くらいが注射をうたれて、俺だけが生き残ったんだ。その時の注射が何かの薬だったんだと思う」

('A`)「その一週間後に不死身になってることに気づいて、すぐに逃亡計画を実行したのさ」

( ^ω^)「ほんとに気づいてなかったのかお?」

ξ゚听)ξ「こんなに情報をもってる奴、もし逃げたってわかってたら血眼になって探すわよね」

川 ゚ -゚)「ほんとにな。めっちゃ探したわ」

('A`)「実験台はかなりの人数がいたし、一人一人の顔なんて覚えてないはずだ」

川 ゚ -゚)「うむ。超絶ブサイクという情報しかなかったぞ」

( ^ω^)「そんな情報だけじゃ……一目でわかりそう」

ξ゚听)ξ「そうね……残念ながら……」

(;'A`)「なんで納得してんの!?」

川 ゚ -゚)「はっはっは」

( ^ω^)

41 名前: ◆Tk5XFE8AeI 投稿日:2016/03/28(月) 22:59:21 ID:Az6ycBdc0
 
('A`)

ξ゚听)ξ

川 ゚ -゚)

( ^ω^)

('A`)

ξ゚听)ξ

川 ゚ -゚)

('A`)

( ^ω^)

ξ゚听)ξ

川 ゚ -゚)「ん?」

( ^ω^)「誰だお」

('A`)「誰だよ」

ξ゚听)ξ「誰?」

42 名前: ◆Tk5XFE8AeI 投稿日:2016/03/28(月) 22:59:53 ID:Az6ycBdc0
 
川 ゚ -゚)「これはこれは申し遅れた。私の名はそうだな……クール。クーとでも呼んでくれ」

川 ゚ -゚)「モララー様の命令でそこにいるブサイクを連れ戻しに来たのと……そちらの男にも用がある」

( ^ω^)「ぼくかお?」

川 ゚ -゚)「そうだ。モララー様が是非あなたとお会いしたいそうだ」

(;'A`)「な……」

ξ゚听)ξ「へぇ、モララー直々になんて気前がいいじゃない」

( ^ω^)「豪華な食事が出るなら行くのもやぶさかではないお」

川 ゚ -゚)「生憎、詳細は聞かされていないので申し訳ないがそれはわからないな」

ξ゚听)ξ「いいわよ。行ってやろうじゃない」

川 ゚ -゚)「いやいや、招待されたのはその男だけだ。キミは呼んでない」

( ^ω^)「ツンも一緒じゃないといかないお。そこは譲歩できないお」

川 ゚ -゚)「ふむ……困ったな……」

ξ゚听)ξ「いいじゃない。一人くらい増えたって」

川 ゚ -゚)「ではこうしよう」

川 ゚ -゚)「ツンと言ったか、キミには実験台になってもらおう。モルモットが増えるのは良いことだ」

43 名前: ◆Tk5XFE8AeI 投稿日:2016/03/28(月) 23:00:32 ID:Az6ycBdc0
 
 緩み気味だった空気が、一瞬にして張り詰めた。
 クーと名乗ったこの女、私たちに気付かれずいつのまにか豚小屋に侵入している。
 かなりの実力者であることは間違いないのだ。
 
( ^ω^)「ふざけんなお。だったらいいお。実力でいくから」

川 ゚ -゚)「強行突破なんてしたらニューソクでお尋ね者になるぞ?」

( ^ω^)「モララーが実験場でしていることを暴露すれば、逆に英雄になれるお」

川 ゚ -゚)「それもそうだ。それは困るな」

川 ゚ -゚)「では────」

ξ;゚听)ξ「ッ!!」
 
 かろうじて、見えた。けれども、見えただけだった。
 あまりに突然で、あまりの速さに体は全く反応できなかった。
 ブーンがいなかったら私は確実に死んでいただろう。
 
( ^ω^)「……どういうことだお」

川 ゚ -゚)「おっと……まさか止められるとは、さすがだな」

 クーの手刀が私の首にかかる前に、ブーンが彼女の右手を握り、止めていた。
 そのままの態勢で二人は睨み合っている。
 
川 ゚ -゚)「モルモットにもできない。強行突破はさせられない。それならこの場で殺してしまおうと思ったんだが」

44 名前: ◆Tk5XFE8AeI 投稿日:2016/03/28(月) 23:01:03 ID:Az6ycBdc0
 
( ^ω^)「お前もう一人で帰れお。ちゃんと後でいくから」

川 ゚ -゚)「ガキの使いでもないしそういうわけにはいかないな」

( ^ω^)「柔軟に対応できないお前は、ガキと一緒だお」

川 ゚ -゚)「モララー様はお前とブサイクを連れて来いと仰ったんだ。結果がそれなら過程はどうでもいいだろう?」

( ^ω^)「気が変わったお。お前は今ここで殺しておくお」
 
 大きく、クーの右腕を掴んでいた右腕を壁に向かって振りぬいた。
 クーを投げ飛ばしたのだ。壁を突き破り彼女はかなり遠くまで飛んでいく。
 ブーンはすぐさま後を追いかけていった。
 
ξ゚听)ξ「……モララーが狂ってるっていうのは、従者のあいつを見て納得したわ」

(;'A`)「俺はまた……あそこに連れて行かれるのか……」

ξ゚听)ξ「大丈夫よ。あなたはただの被害者みたいだし、ここで解放してあげる」

ξ゚听)ξ「ただし、真面目に働くこと。それさえ守れば後は好きにするといいわ」

(;'A`)「……あいつ、ブーンだっけか? あの女もかなり強そうだったけど大丈夫なのか?」

ξ゚听)ξ「大丈夫よ」

ξ゚听)ξ「ブーンは誰よりも強いから────」

45 名前: ◆Tk5XFE8AeI 投稿日:2016/03/28(月) 23:01:36 ID:Az6ycBdc0
 
 
──村の近郊・荒野──


 壁を壊してしまった。後でモナーさんに謝らないといけない。
 そんなことを考えながら、あの女を追いかけていた。
 
 女は仰向けの状態のまま、地面と平行に吹っ飛んでいる。まだ動く様子はない。
 女を殺すのは気分が良くないが、ツンに危険が迫っているなら話は別だ。
 この女は、生かしておくべきではない。
 
( ^ω^)「ッ!」
 
 女が動いた。地に足をつけて滑走している。
 かなり強めに投げた所為で、なかなか勢いを殺せないようだ。
 
 自分のスピードを上げる。一瞬で距離を詰め、終わらせるために。
 
( ^ω^)「シッ!!」
 
 手刀、一閃。
 女がツンにしたように、首をめがけて手刀を放った。
 だが、女は小さく身を屈めるだけの動作で、あっさりと躱す。
 
 この反応、やはり普通の人間ではない。
 と、確信を得たと同時のことだった。

46 名前: ◆Tk5XFE8AeI 投稿日:2016/03/28(月) 23:02:26 ID:Az6ycBdc0
 
 腹部に衝撃が走る。腹を蹴り上げられていた。
 痛みはないが、あの態勢で反撃する余裕まであるとは思わなかった。
 
川 ゚ -゚)「硬い体だな!」

( ^ω^)「柔らかい体だおね!」
 
 蹴りの威力は軽い。
 自分の重い体を吹き飛ばすには至らない。
 すぐさま女の足を掴み、最初と同じように振り上げて、
 
( ^ω^)「おおおッ!!」
 
 思い切り、ツルハシを振り下ろすようにして地面に叩きつけた。
 並の人間なら手に持っている足以外、木っ端微塵に吹き飛んでいるはずだ。
 しかし、形成された小さなクレーターの中心にいる女は五体満足の状態だった。
 
( ^ω^)「お前、竜かお」

川 ゚ -゚)「半分正解。私は後天的に竜の遺伝子を組み込まれたハーフだよ」

( ^ω^)「それもモララーの実験かお?」

川 ゚ -゚)「それは言えないな。詳しくはモララー様の口から聞いてもらおう」

( ^ω^)「……」

47 名前: ◆Tk5XFE8AeI 投稿日:2016/03/28(月) 23:03:15 ID:Az6ycBdc0
 
( ^ω^)「もう一度言うお。ツンも連れて行って、ツンに危害を加えないならついてってやるお」

川 ゚ -゚)「あの女を連れてこいとは言われていない。よってそれはできない」

( ^ω^)「殺せとも言われてないんじゃないかお?」

川 ゚ -゚)「そうだな。私が殺した方が良いと思っただけだ」

( ^ω^)「だったら考えを改めろお」

川 ゚ -゚)「うーん……」

( ^ω^)「まぁいいお。もうラチがあかないからお前はやっぱり殺すお」

川 ゚ -゚)「そうはいかない……なっ!」

 言い終えると同時に、女が高速で身を回転させた。
 自分の腕が振り払われる。女はそのまま回転しながら立ち上がり、止まる。

川 ゚ -゚)「そうだ。あの女はここに置いていこう? そうすればよくないか?」

( ^ω^)「ダメだお。ぼくはずっとツンと一緒にいるんだお。そう約束したんだお」

川 ゚ -゚)「ええいロマンチストめ……これは困ったな」

( ^ω^)「どっちにしろお前もモララーもこのまま野放しにしておくわけにはいかないお」

川 ゚ -゚)「むぅ……」

48 名前: ◆Tk5XFE8AeI 投稿日:2016/03/28(月) 23:04:04 ID:Az6ycBdc0
  
川 ゚ -゚)「仕方がないな」

川 ゚ -゚)「モララー様はお前と話がしたいと言っていた」

川 ゚ -゚)「口がきければどんな状態でも構わないということだ」

川*゚ -゚)「それになんだか、さっきからワクワクが止まらないんだ」
 
( ^ω^)「……」

 女の空気が変わった。滲みでるのは殺気以外の何者でもない。
 漸く、やる気になったようだ。
 自分としてはそっちの方がやりやすい。
 
 だが。
 
( ^ω^)(このままじゃしんどそうだおね……)

川 ゚ -゚)「むっ!」
 
( ^ω^)「……!」
 
 右腕を横に薙ぐ。
 久しぶりだが、腕だけなら問題無いだろう。
 
 右腕が黒く変色していき、大きな鱗が形成されていく。
 指が伸び、次第に同化して、五本の指が三本の指────鉤爪となった。
 
川 ゚ -゚)「驚いたな……部分的な竜化か!」

49 名前: ◆Tk5XFE8AeI 投稿日:2016/03/28(月) 23:04:36 ID:Az6ycBdc0
 
川 ゚ -゚)「さすがオリジナルの竜だ! どうやったんだ!? 教えてくれ!」

( ^ω^)「黙ってろお」

 疾駆。
 竜化させた腕を女の脳天から叩きつける。
 
川 ゚ -゚)「はははっ!」
 
 しかしそんな大振りの攻撃は、当然避けられてしまった。
 腕を止め、衝撃が走り、大地に三筋の爪痕が刻まれた。
 
川 ゚ -゚)「素晴らしいな! 触れてもいないのにその威力か!」

川 ゚ -゚)「私にもその血が流れているんだよな! これはいい!」

( ^ω^)「……?」
 
 女の様子が変だ。
 殺気を放ちだした辺りから、高揚が増している。
 
川 ゚ -゚)「ふんッ!!」
 
 女が、駆けて来た。
 慣性のまま繰り出されるのは右の回し蹴り。
 それを、人のままの左腕で受け止めた。

50 名前: ◆Tk5XFE8AeI 投稿日:2016/03/28(月) 23:05:19 ID:Az6ycBdc0
 
( ^ω^)「ッ!」
 
 体がブレる。女の力が増しているようだ。
 女はすぐに受け止められた右足を下ろし、右拳を繰り出してきた。
 それを見て左に体を開きつつ、鉤爪を薙ぐ。
 
川 ゚ -゚)「なんの!」
 
 女は更に踏み込み、自分の懐に飛び込む形で鉤爪を回避した。
 
 跳躍。
 自分を飛び越えて後方に回り込まれる。
 女が着地する前、振り向き様に左の後ろ回し蹴りを放つ。
 
 が、その足を踏み台にして、更に後方へと飛んだ。
 
( ^ω^)(すばしっこいお……)
 
 機敏性だけなら上を行かれているかもしれない。
 
川*゚ -゚)「いいぞ! こんなに緊張する戦いは初めてだ! もっと見せてみろ!」

( ^ω^)「ごちゃごちゃうるせーお!!」
 
 全力で右腕を薙いだ。
 女をめがけ、不可視の真空波が駆けて行く。
 
川*゚ -゚)「おおっ!」

51 名前: ◆Tk5XFE8AeI 投稿日:2016/03/28(月) 23:05:57 ID:Az6ycBdc0
 
 女が両の腕を交差させ、真空波を受け止めた。
 両腕に三本の爪痕が生まれ、血が噴出する。
 常人であれば輪切りになっているところだが、竜相手ではそうもいかない。
 
川*゚ -゚)「痛いな!」
 
 傷口に手を当て、血を舐めた。
 
川*゚ -゚)「……うまい! これが竜の血か! 私にもしっかりと流れているぞ!!」

( ^ω^)(……こいつは……)
 
 似ている。
 竜化病に犯され、狂った人間に、似ている。
 
 竜化病にまとわりつくのは、常軌を逸した破壊衝動と、食欲だ。
 周囲を破壊し、人間を食す、糞のような本能に襲われるのだ。
 長い年月をかけて竜化を繰り返し、段々と理性を竜に奪われ、最後は完全な竜になってしまう。
 
 女が舐めた自分の血からは、人間の血の味がしているだけだろう。
 
 それを美味いと感じている。
 竜に侵食されている証拠だ。
 早く、終わらせなければいけない。
 
( ^ω^)(ツン……ちょっとだけ約束を破るお)

52 名前: ◆Tk5XFE8AeI 投稿日:2016/03/28(月) 23:06:30 ID:Az6ycBdc0
 
川*゚ -゚)「むっ!?」

 一分間だけの、奥の手を使う。
 一分あればこいつを仕留めるには充分なはずだ。
 
( ^ω^)「本当の竜を見せてやるお」
 
川*゚ -゚)「……! そうだ! どんどん見せてくれ! 私に流れている力を!」
 
 どす黒い何かが、体の内から這い上がってくる。
 自分の中に住む竜が、解放しろと叫んでいる。
 
( ^ω^)(お前の好きにはさせねーお)
 
 両の眼に女の姿を焼き付ける。
 目標を見誤らない為にだ。
 
 
 そして────
 
 
 ────1分間の、殺戮が始まった。

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