( ^ω^)とξ゚听)ξは虹を越えて征くようです

2 名前: ◆Tk5XFE8AeI 投稿日:2016/03/28(月) 22:27:53 ID:Az6ycBdc0
 
 『あなたはどこからきたの?』
 
 
『……』
 
 
 『あなたはどうしてここにいるの?』
 
 
『…………』
 
 
 『ことばがはなせないの?』
 
 
『………………』
 
 
 『……あなたのおなまえは?』
 
 
『………………………』

3 名前: ◆Tk5XFE8AeI 投稿日:2016/03/28(月) 22:29:33 ID:Az6ycBdc0
 
 そこは、不思議な世界だった。
 白く霞がかった、とても視界の悪い場所で、私は一点だけを見つめていた。
 見つめながら、問いかけていた。
 
 ぼんやりと目に映るのは、とても弱々しく、小刻みに震えている小さな小さな竜だった。
 けれども竜は、私の問いかけに答えてくれる気配を感じさせてはくれなかった。
 
 まだ幼い竜は言葉が話せないのか、言葉が理解できないのか、耳が聞こえていないのか。
 様々な憶測が浮かんでは消え、浮かんでは消えていった。
 
 そもそも竜が言葉を話せるか知らなかった私は、諦めずに問いかけた。
 
 『ねぇ? どこかけがしてない?』
 
『…………』
 
 聞こえたのは、無音だった。
 とてもつらそうな竜を見ていて、私も、とてもつらくなった。

4 名前: ◆Tk5XFE8AeI 投稿日:2016/03/28(月) 22:30:05 ID:Az6ycBdc0
 
 
 
 私は竜を抱きしめた。
 
 冷たくて、でも少しだけ、暖かかった。
 
 
 
 強く、抱きしめながら、
 
 
 
 
 『………………………………?』
 
 
 
 
 
 また、問いかけた。

5 名前: ◆Tk5XFE8AeI 投稿日:2016/03/28(月) 22:30:49 ID:Az6ycBdc0
 
 
 
 
『……逃げて……』
 
 
 
 
 
『早く……早くしないと……きみを』
 
 
 
 
 
『……ぼくは…………きみを……────食べて────…………』

6 名前: ◆Tk5XFE8AeI 投稿日:2016/03/28(月) 22:32:45 ID:Az6ycBdc0
 
 
 
 
 
 
  
 

 
 
    ( ^ω^)とξ゚听)ξは虹を越えて征くようです

7 名前: ◆Tk5XFE8AeI 投稿日:2016/03/28(月) 22:33:18 ID:Az6ycBdc0
 
『…………ン………ツン…………』
 
ξ;--)ξ「……ぅ……」
 
 頭に響くのは聞き慣れた声だった。
 発音しているのはまた、聞き慣れた名前だった。
 
 私の名前。
 
 「ツン!起きろお!」
 
ξ;゚听)ξ「えっ! なになに!?」

( ^ω^)「おはようございます」

ξ;゚听)ξ「……」

 驚いて飛び起きれば、今度は見慣れた顔だった。
 いつもと変わらない声と顔。旅の相棒、ブーンだ。
 
ξ;゚听)ξ「…………また?」

( ^ω^)「まただおー。いい加減慣れてくれお?」

ξ;゚听)ξ「無理よ! 無理! 慣れとかそういう問題じゃないから!」

8 名前: ◆Tk5XFE8AeI 投稿日:2016/03/28(月) 22:34:09 ID:Az6ycBdc0
 
( ^ω^)「毎回毎回気絶される身にもなってみろお?」
 
ξ;゚听)ξ「だってしょうがないじゃない! 高いところはダメなんだから……」

 どうやらまた気絶してしまっていたようだった。
 呆れたようにブーンが言い私が言い訳するのは、これまで何度も通過してきたことだった。
 
ξ;゚听)ξ「そ、それで……ここはどこなの?」
 
( ^ω^)「うーん……ニューソクから南に三時間くらいのところ?」

ξ゚听)ξ「ってことは……ニューソクの外れの中の外れね……アスキー領辺りかしら?」
 
 ニューソクは世界に多くある国家の中で、最も広大で繁栄している国だ。
 それでも、ブーンの速度で三時間ということは国境近くまではきていることになる。
 
( ^ω^)「そうだおね。この辺りくらいからが丁度いいんじゃないかお?」

ξ゚听)ξ「そう思うわ。近くの町か村を探しましょ……」

ξ;゚听)ξ「ってなにここ!? どこに降りたのよ!!」

( ^ω^)「森」

ξ;゚听)ξ「森って……よくこんなところに降りられたわね」

9 名前: ◆Tk5XFE8AeI 投稿日:2016/03/28(月) 22:35:39 ID:Az6ycBdc0
 
( ^ω^)「降りたというかツンが落ちたんだお」

ξ; )ξ「っ……落ちっ……」

( ^ω^)「急いで拾いにいってギリギリで捕まえたんだお」

ξ; )ξ「っ……ギリギリ……」

( ^ω^)「ちなみに黙ってたけどこれで八回目だお」

ξ;゚听)ξ「八回目!?」

 よろめき、また気絶しそうになった。確かに、ブーンの背中はしがみつき辛い。
 でもまさか気絶中にそんなことになっているなんて夢にも思わなかった。
 
( ^ω^)「もう何年一緒にやってると思ってるんだお?」

ξ;゚听)ξ「う、うっさいバカ! 怖いんだから仕方ないじゃない! バカバカ!」

( ^ω^)「命の恩人にバカとか……」

ξ;゚听)ξ「アホ! アホー!」

( ^ω^)「言ってるツンがアホみたいだお」

10 名前: ◆Tk5XFE8AeI 投稿日:2016/03/28(月) 22:36:10 ID:Az6ycBdc0
 
ξ;゚听)ξ「うぐぐ……」

( ^ω^)「まぁ、ちょっと落ち着けお。幸いこの森はそんなに広くないから、歩いて平地にでるお」

ξ;゚听)ξ「……わかった」

ξ;゚听)ξ「でも次に飛ぶ時はもっと────」
 
 言いかけた、その時だった。
 
( ^ω^)「お?」

ξ゚听)ξ「悲鳴ね」
 
 女性の悲鳴。明らかに、何かに襲われているような声だった。
 最も繁栄しているニューソクと言えども、国境付近までは管理が行き届いていない。
 恐らくは近くの住民がモンスターにでも襲われているのだろう。
 
( ^ω^)「近いお」

ξ゚听)ξ「いくわよ」
 
 このまま放置は夢見が悪い。私とブーンは悲鳴があがった方向へと駆け出した。

11 名前: ◆Tk5XFE8AeI 投稿日:2016/03/28(月) 22:37:18 ID:Az6ycBdc0
 
 ブーンが前を、その後ろに私が続く。
 最短の道を選び、障害になりそうな木の枝を折って進んでくれている。
 それでも、常人では追いかけることすら難しい速度で走っていた。
 
( ^ω^)「見えたお!」

ξ゚听)ξ「うん!」
 
 少し開けた場所、というよりは森に作られた道にでた。
 その中央に私たちが現れ、
 
ミセ;゚д゚)リ「きゃああああああああああああああああああああああ!!!」

 女性が二回目の悲鳴を上げる。
 
ξ゚听)ξ(あ、多分私たちにびっくりした)
 
 それだけだったなら良かったが、あいにく最初の悲鳴の原因がいる限り、そうはいかない。
 
( ^Д^)「あぁん? なんだお前ら」

(=゚ω゚)ノ「邪魔するんじゃないよう! 今いいところなんだよう!」
 
 へたり込んでいる女性の前に立っていたのは、モンスターではなく人間だった。
 質の悪そうな男が二人。恐らくは盗賊かなにかだろう。

12 名前: ◆Tk5XFE8AeI 投稿日:2016/03/28(月) 22:37:57 ID:Az6ycBdc0
 
( ^ω^)「悲鳴が聞こえたからきてみただけだお」

( ^Д^)「へっ、そうかい。死にたくなかったらさっさと消えな」

(=゚ω゚)ノ「そうだよう!」

ξ゚听)ξ「そういうわけにはいかないのよ。その人とはどういう関係?」

( ^Д^)「聞こえなかったのか? さっさと消えろって言ってんだよ!」

ξ゚听)ξ「聞こえなかったかしら? その人との関係を聞いたんだけど?」

(=゚ω゚)ノ「うるさいんだよう! 早くどっかいくんだよう!」

( ^Д^)「まぁまてよ。そんなに知りたいなら教えてやるぜ」

ξ゚听)ξ「あら、言葉が理解できたのね」

(#^Д^)「……関係はこれから結ぶんだよ! てめぇをぶっ殺した後でな!!」

ミセ;゚д゚)リ「きゃああああああああああああああああああ!!」
 
 あっさりと男の興味は女性から外れ、こちらに移ってくれた。
 男がショートソードを抜き、それに驚いてまた女性が悲鳴をあげている。

13 名前: ◆Tk5XFE8AeI 投稿日:2016/03/28(月) 22:38:27 ID:Az6ycBdc0
 
(=゚ω゚)ノ「馬鹿な奴らだよう! アニキが手を下すまでもないよう!」
 
 片割れもショートソードを抜き、こちらに駆けて来た。
 標的は私の前に立つブーンのようだ。
 
ξ--)ξ(ご愁傷様)
 
(=゚ω゚)ノ「死ねよう!!」
 
 大きくショートソードを振り上げ────振り下げることなく、男は仰向けに倒れた。
 
(;^Д^)「なっ……!?」
 
 胸の位置で右手を握るブーン。
 剣を振り上げ、がら空きになった顎へ一撃、というところだろう。
 
( ^ω^)「殺してないから、さっさとおうちへ帰るんだお」

(;^Д^)「く……なめやがって……!」

( ^ω^)「なめてないお。歯牙にもかけてないだけだお」

(#^Д^)「それをなめてるっていうんだよ!!」

( ^ω^)「バレたお。まぁ、やるならやるからさっさと来いお」

14 名前: ◆Tk5XFE8AeI 投稿日:2016/03/28(月) 22:39:04 ID:Az6ycBdc0
 
(;^Д^)「…………」
 
 さすがに、尋常ではない強さを見せつけたブーンに立ち向かえるわけがないだろう。
 狙いを私に絞っても、必ずブーンを相手にしなくてはいけない。女性を狙っても同じことだ。
 
 弱い者しか相手取れない男の選択肢は一つ。
 
(;^Д^)「……覚えてろよ!!」
 
 のびている男を抱え、逃げ去っていった。
 
ξ゚听)ξ「大丈夫だった?」

ミセ*;д;)リ「ふええええええん!! ありがとうございましたあああああ!!」

ξ゚ー゚)ξ「いいえ、もう大丈夫だから、ね?」

ミセ*;д;)リ「はい! はいいいいいい!!」
 
 安心して泣きじゃくる女性、もとい女の子。
 落ち着いて見た感じ、十五歳くらいだろうか。私より少し若い印象を受けた。
 
( ^ω^)「家は近いのかお? よければ送るというか、近くの村まで案内してほしいんだお」

ミセ*;д;)リ「っく、ひっく……はい……」

15 名前: ◆Tk5XFE8AeI 投稿日:2016/03/28(月) 22:39:35 ID:Az6ycBdc0
 
 女の子は立ち上がり、長いスカートについた土を払って、
 
ミセ*゚ー゚)リ「本当にありがとうございました。私はミセリ=アデレートと申します」

ξ゚听)ξ「私はツン。ツン=デレンカ」

( ^ω^)「ぼくはブーンだお」

ミセ*゚ー゚)リ「ブーン様とツン様ですね!」

ξ;゚听)ξ「様はいいから……」

ミセ*゚ー゚)リ「よろしければ私の村にご招待したいのですが、お時間はありますか?」

ξ゚听)ξ「ありがたいわ。今日泊まる宿を見つけないといけないし」

ミセ*゚ー゚)リ「でしたら丁度良いですね! お礼もしたいですし是非いらしてください!」

( ^ω^)「お言葉に甘えるおー」

ミセ*゚ー゚)リ「村はこの森を抜けて、すぐ近くにあります。行きましょう!」
 
 言い、森の道を進もうとした時だった。
 最初に歩き出したミセリがすぐに止まり、うずくまって右足を押さえた。

16 名前: ◆Tk5XFE8AeI 投稿日:2016/03/28(月) 22:40:07 ID:Az6ycBdc0
 
ミセ;゚ー゚)リ「いたた……」

ξ゚听)ξ「大丈夫? もしかして怪我をしたの?」

ミセ;゚ー゚)リ「追いかけられていた時に足をひねって……落ち着いたら痛くなってきました……」

ξ゚听)ξ「ひねった……足首ね? ちょっと見せてみて?」

ミセ;゚ー゚)リ「は、はい」

 ミセリの前にしゃがみ、スカートの裾を少しあげる。
 右足の足首は少しだけ腫れていた。触れてみると少し熱ももっている。
 このまま放置しておくと腫れは更にひどくなっていくだろう。
 
ξ゚听)ξ「そのままでいてね?」

 ミセリはこくりと頷く。
 私は彼女の足首に手を触れたまま、

ξ゚听)ξ『“White”────ツン=デレンカの名において命じる。白き光により彼の者へ安寧をもたらせよ』
 
 色を紡いだ。
 私の手から白い光が現れ、ミセリの怪我を優しく包み込む。
 
ミセ;゚ー゚)リ「えっ? えっ?」

17 名前: ◆Tk5XFE8AeI 投稿日:2016/03/28(月) 22:40:37 ID:Az6ycBdc0
 
 十数秒したところで、光が消え去った。
 同時に足首の腫れも消え、熱も引いた。
 
ξ゚听)ξ「どう? もう痛くないはずだけど……」

ミセ;゚ー゚)リ「ほんとです! 痛くないです!」

ξ゚ー゚)ξ「ん、よかった」

ミセ;゚ー゚)リ「魔法? 魔法ですか? もしかして魔法使いですか!?」

ξ゚听)ξ「うーん、そんなところかなぁ……」

ミセ*゚ー゚)リ「すごいです! 魔法使いさんなんて都市部にしかいないと思ってました!」

ξ゚听)ξ「そうね。その辺では珍しくないわね」

ミセ*゚ー゚)リ「ブーン様もお強いですし、もう最高です!!」

ミセ*゚ー゚)リ「さぁ! 早く村へいきましょう!」

 そうしてミセリは上機嫌で軽くスキップしながら進みだす。
 私とブーンは顔を見合わせ、静かに笑った後、彼女に続いた。

18 名前: ◆Tk5XFE8AeI 投稿日:2016/03/28(月) 22:41:09 ID:Az6ycBdc0
 
──辺境の集落──
 
 
 
 案内された村は、予想よりも規模が大きな集落だった。
 通されたのは、その中で一番大きな家。
 聞けばミセリは、この村の村長の一人娘だという。
 
 彼女は到着するなり興奮して両親に説明し、私とブーンは家の中へと招かれた。

( ´∀`)「さぁさぁ、お座り下さい」
 
 中央に大きなテーブルがある広い部屋で、私とブーンは椅子に腰掛ける。
 向かい側にミセリと、村長である父、モナーが腰掛けた。
 
( ´∀`)「改めまして……ミセリを助けていただき本当にありがとうございました」

 言って、深々と頭を下げる。
 
ξ゚听)ξ「そんな……私たちは偶然通りかかっただけなので……」

 モナーは、私たちがこの家に着いてからここまでで、もう二十回以上は頭を下げている。
 逆に申し訳なくなってきたのと同時に、彼の人柄の良さも感じさせられた。
 
( ´∀`)「この辺りには最近……ああいう輩が増えているんです……」

19 名前: ◆Tk5XFE8AeI 投稿日:2016/03/28(月) 22:41:40 ID:Az6ycBdc0
 
ξ゚听)ξ「盗賊……ですか?」

( ´∀`)「仰るとおりです。近くの山に盗賊団が住み着いて……この辺りは小さな村が多いもので……」

( ^ω^)「騎士団に討伐要請はしたのかお?」

( ´∀`)「それが……領主様もお忙しいのか、なにぶんこの田舎にまで手が回らないそうで……」

ξ゚听)ξ「まぁ……そうでしょうね」

( ´∀`)「私たちはひっそりと耐えながら暮らしていくしかないんです……」

ξ゚听)ξ「その盗賊団、規模はどのくらいなんですか?」

( ´∀`)「恐らく、百人ほどでしょう。一度この村に全員でやってきたことがあります」

(;´∀`)「奴らは一週間に一度村にやってきては……食料をよこせと……」

(;´∀`)「若い女も……別の村では、立ち向かった若者は皆殺しにされたそうです……」

(;´∀`)「物騒な世の中になりました……毎年毎年、忽然と人がいなくなる村もいくつか……」

ξ゚听)ξ「人が……いなくなる?」

(;´∀`)「はい。その村に一度行ったことがあるのですが……家は破壊され、地面は抉れ、凄惨な光景でした……。
      とてもあれは人間の仕業ではない気がします……恐らく、あれは」

ξ゚听)ξ「“竜”、ですか」

(;´∀`)「……はい。この周辺に“竜化病”に冒された人間がいるのではないかと噂されています」

( ^ω^)「決まりだお」

ξ゚听)ξ「そうね」

( ´∀`)「……?」

ξ゚听)ξ「アジトがある山を教えて下さい。私たちが追い払ってきます」

(;´∀`)「モナッ!?」

20 名前: ◆Tk5XFE8AeI 投稿日:2016/03/28(月) 22:42:26 ID:Az6ycBdc0
 
ミセ*゚ー゚)リ「パパ大丈夫だよ! お二人超強いんだから!」

(;´∀`)「いやいや……そうはいっても二対百では……あれから増えている可能性もありますし……」

ξ゚听)ξ「大丈夫ですよ」

( ^ω^)「安心してください。潰しますお!」

(;´∀`)「よかった〜ってなりませんよ!」

ミセ*゚ー゚)リ「ツン様は魔法使いで、ブーン様もすっごく強いのよ!」

(;´∀`)「なんと! 魔法使いでしたか!」

ξ゚听)ξ「……まぁ……そんなところです」

(;´∀`)「いやしかし……それでも……」
 
 モナーが渋るのは無理も無い。
 私が彼の立場だったら、馬鹿な真似はやめろと言うはずだ。
 しかし、ただの盗賊など千人いようが負ける気はしない。
 
 それにいざとなれば、奥の手もあるのだから。
 
|゚ノ ^∀^)「お待たせしました〜!」

ミセ*゚ー゚)リ「ママ!」
 
 家に入る前、慌てて御飯作らなきゃ!と駆けていったミセリの母、レモナだ。
 左手に大皿、右手にも大皿を持ち、テーブルの真ん中にそれを置く。
 どこからどうみても美味しそうな料理が盛られていた。
 
( ^ω^)「うっ……うまそうだお……!」

|゚ノ ^∀^)「どうぞどうぞ! ミセリの命の恩人ですもの! いっぱい食べてくださいね〜!」

|゚ノ ^∀^)「ってやだ! スプーンとフォークを忘れたわ!」

 また慌てて駆けていった。
 ここにきて一時間も経っていないのにここまで作れるのは、これが百戦錬磨の主婦というものなのだろうか。
 百人の盗賊を倒すよりも、こっちの方が不可能だと思った。
 
( ´∀`)「……お話は食事の後に……さぁ、食べて」

( ´∀`)「あ、フォークがないのか」

( ^ω^)「素手で食べるのもやぶさかではないですお!」

ξ゚听)ξ「やめなさい」

21 名前: ◆Tk5XFE8AeI 投稿日:2016/03/28(月) 22:43:05 ID:Az6ycBdc0
 
|゚ノ ^∀^)「おっまたせ〜! はいどーぞ!」

( ^ω^)「ありがとうございますお! いただきますお!」

ξ゚听)ξ「すみません、いただきます」

( ´∀`)「モナモナ。たくさん食べてください」

ミセ*゚ー゚)リ「ママのお料理、すっごく美味しいんですよ!」

( ^ω^)「うめぇおwwwwwwやばいおwwwwwwwww」

ξ゚听)ξ「静かに食べなさいよ!」

|゚ノ ^∀^)「あらあらいいのよ〜! お食事は楽しくね〜!」

ξ゚听)ξ「すみません……いただきます……」
 
 一口、口へと運ぶ。
 
ξ*゚听)ξ「……美味しい!」
 
 一つの大皿に盛られていたのは、切り分けられたキッシュだった。
 オリーブオイルの香りと、取り分ける時に糸を引くチーズが食欲をそそる。
 じゃがいもがふんだんに使われており、食べごたえも抜群だ。
 
 まさかここまで美味しいとは思わず、朝から何も食べていない私とブーンは、一心不乱に食べ続けた。
 その姿をモナーとレモナはにこにこと微笑みながら見つめ、ミセリも美味しそうに食べていた。
 
ξ゚听)ξ(……いい家族だな)
 
 三人を見る限り、普段からこのままの、温かい家族なのだろう。
 少し、少しだけ、ミセリが羨ましかった。
 
( ´∀`)「ところで、お二人は旅人……ですか」
 
ξ゚听)ξ「はい」

( ´∀`)「そうですか……どんな旅かは深く聞きませんが、こんなところで良ければゆっくりしていって下さい」

ξ゚听)ξ「ありがとうございます」

ξ゚听)ξ「あの……よければ数日の間泊まれる宿を教えてもらえませんか?」

|゚ノ ^∀^)「あら〜! うちに泊まればいいじゃない!」

ミセ*゚ー゚)リ「そうですよ! ぜひぜひ!」

ξ゚听)ξ「……いいんですか?」

22 名前: ◆Tk5XFE8AeI 投稿日:2016/03/28(月) 22:43:52 ID:Az6ycBdc0

( ´∀`)「断る理由はありません。どうぞこの家を好きに使って下さい」

ξ゚听)ξ「……ありがとうございます」

 食事も終わり、食後のお茶がだされる。
 これもまた良い香りで、温かさが体中に巡るようだった。
 気がつけば、外はもう夜になっていた。
 
( ^ω^)「いや〜本当においしかったですお」

|゚ノ ^∀^)「やだ〜! お上手ね!」

( ^ω^)「レモナさんはお料理がお上手ですお!」

ミセ*゚ー゚)リ「そうですよね! 私も教わってるんです!」

|゚ノ ^∀^)「ミセリはね〜三回の内五回は塩と砂糖を間違えるのがね〜」

( ^ω^)「二回多いお」

ミセ;゚д゚)リ「ちょっと! それは言わないでよ!」

( ´∀`)「モナモナ。お父さん塩分の過剰摂取か糖尿で死ぬかもしれない」

ミセ;゚д゚)リ「死なせないよ!」

( ^ω^)「おっおっwwwwwwww」
 
ξ゚ー゚)ξ「ふふっ」

ξ゚听)ξ「さて……モナーさん」

( ´∀`)「はい?」

ξ゚听)ξ「さっき、盗賊団はほとんど全員を連れてここに来たことがあるって言いましたよね?」

( ´∀`)「ええ」

ξ゚听)ξ「もしかしたら、ミセリさんの顔を知っているかもしれません。そうすると……」

(;´∀`)「……この村にやってくると……?」

ξ゚听)ξ「多分、っていうか絶対きますね」

( ^ω^)「もうそろそろ来るんじゃないかお?」

ξ゚听)ξ「私たちも村にいるだろうと考えて、そうですね。今日中にはきそうな」

23 名前: ◆Tk5XFE8AeI 投稿日:2016/03/28(月) 22:44:25 ID:Az6ycBdc0

(;´∀`)「そんな……」

ミセ*゚ー゚)リ「大丈夫! ブーン様とツン様がやっつけてくれるよ!」

(;´∀`)「……」

ξ゚听)ξ「そういうことなので、ちょっと村の監視をしてきますね」

( ^ω^)「はいおー」

(;´∀`)「あの……お気をつけて!」

ξ゚ー゚)ξ「はい。大丈夫ですよ」

(;´∀`)「私は昔、医者をしていました。もし怪我などをしたら仰って下さい」

ξ゚ー゚)ξ「ありがとうございます」

 そう言い残し、私とブーンはモナーの家を後にした。
 
( ^ω^)「良い家族だったお」

ξ゚听)ξ「……そうね」

 空には満点の星たちが煌めいていた。
 私には星たちと同じように、ミセリたちも眩しく見えた。
 
 村にはあんな家族がたくさんあるのだろう。
 盗賊団を決して許すわけにはいかない。
 
( ^ω^)「ツン、寒くないかお?」

ξ゚听)ξ「大丈夫よ」

( ^ω^)「このマントも、だいぶ傷んできたお」

ξ゚听)ξ「そろそろ新しいのを作ろうかしら……」

( ^ω^)「盗賊から奪い取ればいいお」

ξ゚听)ξ「なんかそれは嫌ね……」

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