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24 名前: ◆zKMbM5FUOI 投稿日:2016/04/03(日) 16:11:48 ID:OnwC57PE0
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親友が、目の前でどこかへ落ちていった。
(゚、゚;トソン「ミセリ!?」
伸ばした手は間に合わない。
トソンの手に掠りもせずに、ミセリは消えてしまった。
∬´_ゝ`)「どうしたのトソちゃん!」
∬;´_ゝ`)「……ミセちゃんは?」
図書室の入り口にへたり込んで縋りつく。
姉者が慌ててトソンを支えた。
(゚、゚トソン「ミセリ……ミセリが……ゆ、かに」
∬´_ゝ`)「床? 床に……?」
( ・∀・)「ちょ、どうしたの」
( ゚д゚ )「ミセリは?」
(゚、゚トソン「床に」
声が震える。信じられない。
(゚、゚トソン「落ちて、しまって」
きえた、と、それこそ消え入りそうな声で、トソンは呟いた。
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25 名前: ◆zKMbM5FUOI 投稿日:2016/04/03(日) 16:13:32 ID:OnwC57PE0
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影も形もないミセリを、とにかく助けないと、とだけはすぐに浸透した。
入り口を調べ、床を調べ、図書室内にいないかと探した。
何故か、室内には戸惑った空気が流れている気がした。
( ゚д゚ )「だめだ、図書室にはいない」
∬´_ゝ`)「ねえ、階段がループしたみたいに他の教室に居るかもしれないわ。外も探しましょう」
( ゚д゚ )「そうだな、こうなった以上手分けして――」
(゚、゚トソン「待ってください」
班分けをしようとしたミルナをトソンが止める。
入り口の辺りをずっと調べていたその手は、姉者に止められるまで傷ついていたことも気付かなかった。
(゚、゚トソン「ミセリは、多分ここにいるんです」
( ゚д゚ )「だが、図書室内には」
(゚、゚トソン「勝手にどこかに行く子じゃないんです。かくれんぼしたら、ちゃんと決められた範囲を守るような」
だから、きっとここにいる。
自分たちが勝手にどこかに行っては、きっと迷う。
どこか確信した風なトソンにミルナと姉者は思わず顔を見合わせる。
( ・∀・)「……僕もそう思う」
( ゚д゚ )「モララー」
( ・∀・)「ミセリさんがどういう子かはまあ、トソンさんほどは分かんないけどさ。
この床の中に消えたっていうなら、ここにまた現れる可能性は高い」
∬´_ゝ`)「でも、探したわ。私達が床の中へ行けない以上、他の可能性も潰さないと」
( ・∀・)「トソンさん、当てはある?」
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26 名前: ◆zKMbM5FUOI 投稿日:2016/04/03(日) 16:14:30 ID:OnwC57PE0
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モララーを、トソンは見上げる。
大きな目が真っ直ぐトソンを見下ろしていた。
(゚、゚トソン「呼びます」
その目を見つめたまま、トソンは言った。
(゚、゚トソン「ミセリを、呼びます」
( ・∀・)「……分かった。やろう」
( ゚д゚ )「本気か」
( ・∀・)「本気」
∬´_ゝ`)「……そうね。どうせ分かんないことばかりなのよ。
なら一番ミセちゃんを知ってる人に賭けるわ」
( ゚д゚ )「……」
( ・∀・)「ミルナくんは?」
( ゚д゚ )「やるさ。姉者の意見に同意だ」
( ・∀・)「うし」
( 、 トソン「……ありがとう、ございます」
目を伏せたトソンに、三人がそれぞれ、頭や背を軽く撫でる。
次に顔を上げた時、トソンの目に涙はなかった。
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27 名前: ◆zKMbM5FUOI 投稿日:2016/04/03(日) 16:15:34 ID:OnwC57PE0
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(゚、゚トソン「ミセリ」
∬´_ゝ`)「ミセちゃん」
( ゚д゚ )「ミセリ」
( ・∀・)「ミセリさん」
呼ぶ。
(゚、゚トソン「ミセリ」
あの時のように。
( ・∀・)「ミセリさん」
あの時と違って、皆と。
∬´_ゝ`)「ミセちゃん。ミセリちゃん」
あの時と違って、あだ名を。
( ゚д゚ )「ミセリ」
早く、帰ってきて。ミセリ。
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28 名前: ◆zKMbM5FUOI 投稿日:2016/04/03(日) 16:17:34 ID:OnwC57PE0
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(;、;トソン『理子ちゃん』
幼い頃、かくれんぼをしたら理子ちゃんが見つからなかった。
真紀が何度呼んでも、出てこなかった。
(;、;トソン『理子ちゃあん』
勝手におうちに帰る子じゃない。
でも、見つからない。
だれか、わるいひとに見つかったのだろうか。
(;、;トソン『どこぉ、理子ちゃあん』
へんじして、理子ちゃん。
それとも、名前だけだからいけないんだろうか。
全部呼ばないと、もしかして理子ちゃんは自分の名前を忘れてしまったんだろうか。
幼い故の不思議な発想だったけど、一度そう思うとそうなのだと真紀は思ってしまった。
だから、呼び方を変えた。
(;、;トソン『水瀬、理子ちゃん』
どこにいるの。おなまえわすれたなら、呼ぶよ。
ねえ、どこ。
かえってきて。
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29 名前: ◆zKMbM5FUOI 投稿日:2016/04/03(日) 16:18:50 ID:OnwC57PE0
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(;、;トソン『みなせ、りこ、ちゃ』
声が嗄れそうになっても、やめなかった。
(;、;トソン『みな、せ、りこ、』
『もうだいじょうぶだよ』
(;、;トソン『え』
ミセ*゚ー゚)リ『まき、ちゃん?』
(;、;トソン『あ……』
ミセ*゚ー゚)リ『まきちゃん、ただいま』
(;、;トソン『りこちゃん』
そうして理子は、真紀の前に帰って来たのだ。
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30 名前: ◆zKMbM5FUOI 投稿日:2016/04/03(日) 16:20:04 ID:OnwC57PE0
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(゚、゚トソン「ミセリ」
だから、呼び続ける。
(゚、゚トソン「ミセリ」
今度は一人じゃないよ。
みんなで呼んでるよ。
( 、 トソン「みせり」
ぎゅっと、後ろから姉者がトソンを抱きしめる。
モララーが右手を、ミルナがおずおずと左手を握った。
ねえ、ミセリ。
帰ってきて。
『ほら』
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31 名前: ◆zKMbM5FUOI 投稿日:2016/04/03(日) 16:21:07 ID:OnwC57PE0
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ミセ*゚ー゚)リ「……あ、トソン」
∬´_ゝ`)「ミセちゃん!」
( ・∀・)「ミセリさん、来た!」
( ゚д゚ )「無事か、ミセリ!」
ミセ*゚ー゚)リ「あ、ども、ご心配おかけしまして」
へらへらといつものようにミセリが笑う。
(゚、゚トソン
ミセ*゚ー゚)リ「はは。ただいま」
正面から、馬鹿な親友を抱きしめる。
(-、-トソン「おかえり、ミセリ」
ミセ*゚ー゚)リ「ん」
ありがとね、と耳元で情けない声が囁いた。
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32 名前: ◆zKMbM5FUOI 投稿日:2016/04/03(日) 16:23:01 ID:OnwC57PE0
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それから気付くとすっかり日が暮れていて、用事がないなら帰れと先生がやってきた。
ミルナと姉者は部活があったのだが、そんな気分じゃないと全員で下校することにした。
ミセ*゚ー゚)リ「いや、ほんと心配かけちゃってごめんね。助かったよー」
ミセリは簡単に「よくわかんない隙間に入っちゃったけど、呼んでくれたから帰れた」と説明した。
トソンの「呼ぶ」が大正解ということで、全員がトソンに一つ奢ることした。
ミセ*゚ー゚)リ「あの、奢るのはいいんだけど、みんな無事生還したわたしに何かあったりは」
∬´_ゝ`)( ・∀・)「「「「心配かけた分でチャラ」」」」( ゚д゚ )(゚、゚トソン
ミセ*゚ー゚)リ「ハモんなくてもいいじゃん!」
結局、近所のクレープ屋やコンビニでわいわい買い食いして、それぞれ家路につく。
∬´_ゝ`)「じゃあね。気を付けて帰るのよ」
と姉者が大家族の長女らしく注意して。
( ゚д゚ )「お疲れ様。また明日」
とミルナがクラスメートらしい挨拶をして。
( ・∀・)「やー、楽しかったよ。ばいばーい」
とモララーがミルナに小突かれながら能天気な発言をした。
家が近所のミセリとトソンは、二人並んで歩く。
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33 名前: ◆zKMbM5FUOI 投稿日:2016/04/03(日) 16:24:35 ID:OnwC57PE0
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ミセ*゚ー゚)リ「いやあ、モララーじゃないけどなかなか楽しかったよ」
(゚、゚トソン「私は肝が冷えました」
ミセ*゚ー゚)リ「ごめん。でも、探索してる時は楽しくなかった?」
(゚、゚トソン「……それは同意します」
ミセ*゚ー゚)リ「でしょ」
(゚、゚トソン「ねえ、ミセリ」
ミセ*゚ー゚)リ「なーにー?」
(゚、゚トソン「また、あの子が助けてくれたんですか?」
ミセ*゚ー゚)リ「へ」
思わず足を止め、ミセリはトソンを見る。
こくりとトソンは首を傾げた。
(゚、゚トソン「違うんですか?」
ミセ*゚ー゚)リ「え、あの子って、トソン、知ってるの?」
(゚、゚トソン「ああ、やっぱりそうなんですね。昔、かくれんぼした時の」
ミセ*゚ー゚)リ「そ、そうなんだけど、なんで?」
(゚、゚トソン「あの時、だいじょうぶって声がしたんです。そしたら、ミセリが帰ってきました。
今回も声が聞こえて……やっぱり、帰ってきました」
何という新事実。トソンもまたんき――という名前は知らないが、少年、いや青年?――を知っていたとは。
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34 名前: ◆zKMbM5FUOI 投稿日:2016/04/03(日) 16:26:25 ID:OnwC57PE0
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ミセ*゚ー゚)リ「そっかー、そうだったんだ」
(゚、゚トソン「はい」
ミセ*゚ー゚)リ「うん、そうなの。助けてもらった」
(゚、゚トソン「よかった。……ああ、またお礼言い損ねました」
ミセ*゚ー゚)リ「うーん、きっと大丈夫じゃないかなあ。
それとねトソン、ありがとう」
(゚、゚トソン「さっきも聞きましたよ」
ミセ*゚ー゚)リ「うん。でも何回でも言いたいの。トソンが呼んでくれたから帰れた」
ミセ*゚ー゚)リ「ありがとう」
(゚、゚*トソン「……どういたしまして」
いつも通りそっけない口調だけど、ミセリは知っている。
ほんのりトソンの目元が染まっている。それで十分なのだ。
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35 名前: ◆zKMbM5FUOI 投稿日:2016/04/03(日) 16:27:29 ID:OnwC57PE0
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ミセ*゚ー゚)リ「ミセリって呼び方も馴染んだねえ、しかし」
(゚、゚トソン「あなたが言い出したんじゃないですか」
ミセ*゚ー゚)リ「んえ?」
(゚、゚トソン「んえ、じゃなくて。あのかくれんぼの後から、あなたがミセリって呼んでって」
ミセ*゚ー゚)リ「え。そうだっけ」
(゚、゚トソン「そうですよ。覚えてないんですか?」
てっきりあの子と何かあってそんな気になったのかと、というトソンの呟きはミセリには届いていない。
ポンコツな頭を再稼働していたからだ。
あれはそう、またんき当時の少年と別れる直前の更に直前のこと。
ミセ*゚ー゚)リ『り……ん? み、? よくきこえないや』
(・∀ ・)『み……? みせ、り?』
ミセ*゚ー゚)リ『み……せ、り』
ミセ*゚ー゚)リ『ミセリ』
(・∀ ・)『ミセリ。おまえのこと?』
ミセ*゚ー゚)リ『うん。そうだね』
呼ばれたことないけどきっとそうだ。
だってしんゆうの声だもの。
ミセ*゚ー゚)リ「おうふ」
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36 名前: ◆zKMbM5FUOI 投稿日:2016/04/03(日) 16:28:34 ID:OnwC57PE0
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思い出した。そうでした。
自分を呼んでくれた声が嬉しくて、またそう呼ばれたくなったからお願いした。
だって、あの呼び声があったから帰れた。守ってくれた。呼んでくれた。
いっぱい、呼んで欲しいと思ったのだ。
何ということだ。忘れ過ぎではないか。
一番の当事者の筈なのに。これはまたんきに呆れられても仕方ない。
ミセ*゚ー゚)リ「……トソンは呆れないでね!」
(゚、゚トソン「大丈夫ですよ。大体、常に呆れてます」
ミセ*゚ー゚)リ「ひどい!」
いつも通りのやりとりをして、肘で軽く小突く。やり返されて、ミセリは笑った。
(゚、゚トソン「あなた、こういうのをあの子にもやって呆れさせてたりするんじゃないでしょうね」
ミセ*゚ー゚)リ「あああああ呆れさせてたりしないもん!」
(゚、゚トソン「それはそれは。昔より向こうの方が大きいんですから、手加減してもらってたんでしょうね」
ミセ*゚ー゚)リ「だからしてな、って見たの?」
(゚、゚トソン「ちらっと。声と一緒にちょっとだけ」
ミセ*゚ー゚)リ「マジかーマジかよー」
(゚、゚トソン「今も昔もよく見えませんでしたが、何となくモララーくんに似てる気がしますね」
ミセ*゚ー゚)リ「え」
そ、そうだっけ。
ミセリにはいまいち分からない。またんきはまたんきだ。
まあ、よく見えなかったと言うからそうなのだろう。
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37 名前: ◆zKMbM5FUOI 投稿日:2016/04/03(日) 16:30:10 ID:OnwC57PE0
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ミセ*゚ー゚)リ「ってそれはつまり、タイプということ!?」
(゚、゚トソン「はい?」
ミセ*゚ー゚)リ「だ、だって似てるって思うモララーに笑いかけてたじゃん、つまりあいつが好みってこと!?」
(゚、゚トソン「えー……と。……私の好みがあの子だ、と言ってるので合ってますか?」
ミセ*゚ー゚)リ「合ってる!」
(゚、゚トソン「違います。あの子もモララーくんも特に好みだというわけではありません」
まあ一般的にはよい評価だと思いますが、という一言はトソンの心の中に留めておく。
(゚、゚トソン「モララーくんを見ると、あの子を思い出します。
ミセリを助けてくれたと連想すると、ちょっと気が緩むみたいですね」
ミセ*゚ー゚)リ「へー……なんだ、そーゆーことかー」
あからさまにほっとしたミセリは、全くもって隠し事に向かない。
こういうのは、気付くまでが面白い。
もちろん、気付いてからも面白い。
何といっても、モララーが好みか、ではなく、あいつが好みか、ときたのだから。
きっと前途多難だぞ親友よ、とやはり言葉にはせず、そっとトソンは微笑んだ。
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38 名前: ◆zKMbM5FUOI 投稿日:2016/04/03(日) 16:31:23 ID:OnwC57PE0
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ミセ*゚ー゚)リきみを呼ぶようです(・∀ ・)
おわり
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