-
1 名前:名無しさん 投稿日:2016/04/03(日) 22:12:28 ID:BwRLmA9U0
-
『この町で殺された人間は、死後三か月が経過すると、神の許しを得て、幽霊として現世に戻ってくる』
『そして、生前もっとも憎んでいた相手を呪い殺すと、そいつを道連れにして、地獄へと旅立っていく――』
―――っていう言い伝えが、うちの地元にはあるんですが
みなさん、聞いたことあります?
違う県の従兄弟には通じなかったんで、たぶん、ほんとにローカルな伝承なんだと思うんですけど
( ,,-Д-) 「……おはよーございまーす……朝ごはん、なんですか?」
('、`*川 「食べる前に顔洗ってきなさい」
( ,,-Д^) 「はーい……」
そこそこ田舎のこの町の、ど真ん中 そこには、わりと大きめの神社が建っていて
そこに祭られている神様が、そういう神様なんだそうです 死と、復讐にまつわる神様
-
2 名前:名無しさん 投稿日:2016/04/03(日) 22:13:08 ID:BwRLmA9U0
-
正直言うと、言われてみれば「ああ、そういやそんな話あったな」ってくらいで
たまに大学の教授だかなんだかがフィールドワークに来てたりはしますけど、民俗学的なアレで来てたりはしますけど
だからって「地元の人の話を聞きたい」とか、いやそんなこと聞かれてもぶっちゃけ何も考えてないですとしか言えないんですけど
( ,,-Д-) バシャバシャ |洗面所|
所詮は、単なる言い伝え 学校の七不思議とか、ああいうのと同じレベルのオカルト
そう、思ってたんです
( ,,∩Д∩) フキフキ |鏡|
思ってたんです、けど……
( ,,∩Д∩) フキフキ |鏡|
( ,,∩Д∩) 「……」 |鏡|
(^Д^,, ) 「……?」 |鏡|
-
3 名前:名無しさん 投稿日:2016/04/03(日) 22:13:35 ID:BwRLmA9U0
-
(#゚;;-゚)
(^Д^,, ) 「……」
△
(#゚;;-゚) (^Д^,, )
( ∪∪
)ノ
(^Д^,, )
(#゚;;-゚)
( ,,^Д^) |鏡|
( ,,^Д^) |鏡| (映ってない……僕しか映ってない……)
-
4 名前:名無しさん 投稿日:2016/04/03(日) 22:14:03 ID:BwRLmA9U0
-
(^Д^,, ) クルリ
(#゚;;-゚)(^Д^,, )
(#゚;;-゚)(^Д^,, )
(#゚;;-゚) (^Д^,, )
(#゚;;-゚) (^Д^,,;)
-
5 名前:名無しさん 投稿日:2016/04/03(日) 22:14:24 ID:BwRLmA9U0
-
「……もしかして、見えてる?」
△
(#゚;;-゚) (^Д^,, )
( ∪∪
)ノ
(^Д^,,; ) 「……………………………………………………」
(#゚;;-゚) 「見えてる?」
(^Д^,,; ) 「…………まあ……ええ……」
所詮は、単なる言い伝え 単なるオカルト、そう思ってたんですけど
……どうも、これ、マジ……な、話、だった……みたい…でして……
-
6 名前:名無しさん 投稿日:2016/04/03(日) 22:15:21 ID:BwRLmA9U0
-
彼には見えているようです (^Д^,, )
-
7 名前:名無しさん 投稿日:2016/04/03(日) 22:15:55 ID:BwRLmA9U0
-
〜〜〜〜〜
( ´∀`) ジロジロ
(#゚;;-゚)
( ´∀`) 「……ん〜………」
( ;´∀`) 「……う"〜〜〜〜〜〜〜〜ん……」
(;#゚;;-゚)
( ;-∀-) 「……やはり、ダメだ。微妙すぎる!」
(#゚;;-゚)
(゚;;-゚#) 三 (#゚;;-゚) キョロキョロ
(;#゚;;-゚) 「……あの」
|゚ノ ^∀^) 「どうしたの?」
(#゚;;-゚) 「えっと、……ここ、どこなんですか? 私は……確か、橋の上にいて……」
(#゚;;-゚) 「あと、あなたたちはいったい……」
-
8 名前:名無しさん 投稿日:2016/04/03(日) 22:16:26 ID:BwRLmA9U0
-
( ´∀`) 「……ここはあの世で僕は神様だが。それがどうかしたか」
|゚ノ ^∀^) 「あ、私は天使みたいなものだと思ってね」
(#゚;;-゚)
(#゚;;-゚) キョトン
(#゚;;-゚) 「神様」 パチクリ
|゚ノ ^∀^) 「そう、神様」
(#゚;;-゚) 「……じゃあ、私は、死んだんですか」
( ´∀`) 「ああ、おまえは死んだ。だから今僕がこうして頭を抱えている」
(#゚;;-゚) 「……?」
( ;´∀`) 「……自分でわかっていないのが、余計にややこしい……」
|゚ノ ^∀^) 「……」
(#゚;;-゚) 「……? あの、どういう……」
( ´∀`) 「……ざっくり説明しよう」
-
9 名前:名無しさん 投稿日:2016/04/03(日) 22:17:09 ID:BwRLmA9U0
-
( ´∀`) 「自殺なら、そいつは地獄行き。僕がくれてやった命を自分から捨てる不届き者。論外」
( ´∀`) 「他殺であれば、殺したやつは問答無用で地獄行き。論外。マジ論外。
殺されたやつは霊体で現世に送り返して復讐させてやる。よっぽど自業自得でない限り、その後は天国に行かせてやれる」
( ´∀`) 「どちらでもない、事故死や病死なら、死んだそいつに罪が無ければ、基本的には天国に送ってやれる」
( ´∀`) 「それが、基本的なルールだ。が……」
(#゚;;-゚) 「……」
( ;´∀`) 「……が、おまえの死は、そのどれにも当てはまるような気がするし、どれにも当てはまらない、そんな気もする」
(#゚;;-゚) 「どれにも……?」
|゚ノ;^∀^) 「このままだと、あなたを天国に送ってあげられるかどうかわからないの……」
(#゚;;-゚) 「……そうなんですか」
|゚ノ ^∀^) 「ごめんなさいね。死後の魂の行き先については、本当に厳しいルールが決められてて。私たちにも、あんまり勝手なことはできないの」
( ´∀`) 「……」
-
10 名前:名無しさん 投稿日:2016/04/03(日) 22:17:53 ID:BwRLmA9U0
-
(#゚;;-゚)
(#゚;;-゚) 「いいですよ、私は別に。天国でも、地獄でも、どこでm」
( #´∀`) 「ダメだ!」
(#゚;;-゚) そ ビクッ
( #´∀`) 「……ちっ」
|゚ノ ^∀^) 「……ダメよ。そんな若い姿でここに来ておいて、そんな寂しいことを言っちゃダメ」
(#゚;;-゚) 「……」
(#-;;--) 「私、は……」
(#-;;--)
(#-;;--) 「……あれ」
(#゚;;-゚) 「私、どうやって死んだんでしたっけ……」
( ´∀`) 「待ちなさい。無理に思い出してはいけない」
(#゚;;-゚) 「?」
-
11 名前:名無しさん 投稿日:2016/04/03(日) 22:18:27 ID:BwRLmA9U0
-
( ´∀`) 「死の記憶というのは、人間にくれてやったものの中で、最も辛く苦しいもの。無理に、一気に思い出そうとしてはいけない」
(#゚;;-゚) 「……はあ、そうなんですか」
( ;´∀`) 「……しかし……ううむ……」
( ; ∀ ) 「……この子が……この子だけが地獄に行くなど……断じて……!」
(#゚;;-゚)
(#゚;;-゚) 「……よく、思い出せません、けど」
(#゚;;-゚) 「とりあえず、私は……別に、誰かに殺されたりしたわけでは、なかったような……」
( # ∀ ) 「殺されたようなものだ!」
(#゚;;-゚) ビクッ
( #´∀`) 「……直接手を下した者がいるわけじゃない。だから殺人ではない。そんな理屈が通っていいものか……本当にこの愚か者共は……」
|゚ノ ^∀^) 「……」
-
12 名前:名無しさん 投稿日:2016/04/03(日) 22:18:58 ID:BwRLmA9U0
-
( ´∀`) 「……決めた」
(#゚;;-゚) ?
( ´∀`) 「今から、お前を霊体として現世に戻す。だから、そこでひとり、道連れを見つけろ」
(#゚;;-゚) 「道連れ……」
( ´∀`) 「幽霊は普通人間には見えない。それを利用してひとり見つけろ。そいつだけはこの僕が地獄に落としてやる」
( ´∀`) 「……それでも、おまえを天国に送ってやれるかはわからんが……」
(#゚;;-゚) 「……」
〜〜〜〜
-
13 名前:名無しさん 投稿日:2016/04/03(日) 22:19:21 ID:BwRLmA9U0
-
(#゚;;-゚) 「……って、言ってた」
( ,,^Д^)
( ,,-Д-) 「……」
(;,,-Д-) 「…………神様って、どんな顔してました?」
(#゚;;-゚) 「おじいちゃんだった。怖そうな」
(;,,^Д^) (……あ、マジでいるんだ神様……へえ……へ、へえ……)
平日の朝っぱらから、幽霊と自宅の洗面所で出くわす、このシチュエーション
いい加減家出ないと遅刻、って時間ではあるんですけど、とりあえず
とりあえず僕は、冷静に、冷静に 幽霊を、2階の自分の部屋へと冷静に案内し、冷静な対話を試みていました
-
14 名前:名無しさん 投稿日:2016/04/03(日) 22:20:01 ID:BwRLmA9U0
-
( ,,^Д^) 「……えっと、……」
( ,,^Д^) 「……どうして、僕のところに来たんですか?」
(#゚;;-゚) 「……私も、何すればいいのかわからなくて。いろんな人のところに、行ってみてたんだけど」
(#゚;;-゚) 「ほんとに、誰も、私のことが、見えてないみたいだったから……」
( ,,^Д^)
( ,,^Д^) 「……つまり、でぃさんの姿は僕にしか見えていない?」
(#゚;;-゚) 「今のところは。きみが初めて」
( ,,^Д^) 「……」
……僕、実は霊感とかあるほうだったんでしょうか
そんなの、今までまったく考えたことなかったんですけど
-
15 名前:名無しさん 投稿日:2016/04/03(日) 22:20:25 ID:BwRLmA9U0
-
( ,,^Д^) 「……なんで僕には見えるんでしょう。普通の人には見えないんですよね?」
(#゚;;-゚) 「それは……」
(#゚;;-゚)
(#゚;;-゚) 「言っちゃダメって言われてた」
( ,,^Д^) 「ダメって……」
(#゚;;-゚) 「私のことが見える人間を探せって言われたけど、なんで見えるかの理由は教えるなって、神様が」
( ,,^Д^) 「神様が」
(#゚;;-゚) 「うん」
( ,,^Д^)
( ,,^Д^) (え、それもしかしてヤバイやつなんじゃ……?)
……えっと、現状を整理しましょうか
-
16 名前:名無しさん 投稿日:2016/04/03(日) 22:20:58 ID:BwRLmA9U0
-
僕の名前はタカラギコ、この街のソーサク高校に通う3年生です
で、彼女の名前はでぃ 僕と同じクラスの女子……でした
過去形、です
( ,,^Д^) 「……ええっと……聞くかぎり」
( ,,^Д^) 「でぃさんは、自分が死んだときのことを……覚えていないんですか?」
(゚;;-゚#) 「……ぼんやりとしか」
( ,,^Д^) 「……」
■ (゚;;-゚#)
話している間、でぃさんがどこを見ていたかというと
僕の、勉強机の上に置いてあった、卓上カレンダー
-
17 名前:名無しさん 投稿日:2016/04/03(日) 22:21:28 ID:BwRLmA9U0
-
■ (゚;;-゚#) )))) (^Д^,, )
ふと、でぃさんは するりと滑るように移動すると、カレンダーを手に取ろうとして……
□⊂(゚;;-゚#) スカッ (^Д^,, )
⊂(゚;;-゚#) (^Д^,, )
⊂(#゚;;-゚) (^Д^,,;)
すり抜けていました
どうも、ものに触ることはできないみたいです
そりゃまあ、そうですよね
(^Д^,, ) 「……たしか、6月の……14日、だったと思います」
(#゚;;-゚)
仕方がないので、僕がやることにしました
9月になっていたカレンダーを、パラパラとめくり直して
およそ、3か月前の日付を出します
-
18 名前:名無しさん 投稿日:2016/04/03(日) 22:21:56 ID:BwRLmA9U0
-
(^Д^,, ) 「ちょうど、梅雨の時期で。台風かなんかも、来てたんでしたかね」
(^Д^,, ) 「ファイナル橋から足を滑らせたあなたは、雨続きで増水したソーサク川に転落して、そして亡くなった」
(#゚;;-゚)
(^Д^,, ) 「……事故、だったと。そんなふうに、僕は聞いています」
(#゚;;-゚)
(#゚;;-゚) 「事故……うん」
(#゚;;-゚) 「私も……たしか、死ぬとき、他の人は見なかった気がする」
( ,,^Д^) 「……やはり、はっきりとは思い出せない?」
(#゚;;-゚) 「うん……」
-
19 名前:名無しさん 投稿日:2016/04/03(日) 22:22:33 ID:BwRLmA9U0
-
( ,,^Д^) 「……」
自分の死んだ日がいつだったか、死因がなんだったか それを聞かされるのは、どんな気分なんだろうと
いまいち、でぃさんの目を直視できなかったのですが 本人には、気にした様子もなくて
(#゚;;-゚)
( ,,^Д^)
しばしの沈黙
誰かが階段を昇ってくる足音だけが、部屋に響いていました
階段?
('、`*川 「ほんとにもーあの子は、ほっとくと部屋の掃除をしないから……」ガチャッ
( ,,^Д^)
(#゚;;-゚)
('、`*川
-
20 名前:名無しさん 投稿日:2016/04/03(日) 22:23:07 ID:BwRLmA9U0
-
('、`#川 「アンタなんでまだ出てないの!? 何時だと思ってるの今! 9時半!!」
(;,,^Д^) 「くじはっ……!? そんな!?」
('、`#川 「しかも着替えてすらいない!」
(;,,^Д^) 「あわたたたた、え、いつの間にそんな―――」
(^Д^,,;) 「――って!」
('、`#川 「立ち止まってる暇があるか―――ッ!! いいから急……」
(#゚;;-゚)
('、`*川 「……あ、ちょっと待った。ちょうどいいから言っとくわ、お母さん今晩は町内会の寄り合いで遅くなるから」
( ,,^Д^) (……見えてない……?)
僕の部屋に踏み込んできた母は、でぃさんに何の反応も示さず
とりあえず、('、`*川『黙ってたけど実はうち陰陽師の一族だったんだ』とか
そんな可能性は消えたと思っていいのかな、なんて考えつつ 制服と鞄をひっつかみ、食パンをくわえて家を出ました
-
21 名前:名無しさん 投稿日:2016/04/03(日) 22:23:39 ID:BwRLmA9U0
-
( ,,^Д^) 「とはいえ、もう一時間目どころか二時間目すら間に合うか怪しいんですよね」 テクテク
(#゚;;-゚) フワフワ
( ,,^Д^) テクテク
(#゚;;-゚) フワフワ
( ,,^Д^) 「……えっと、学校まで来るんですか?」
(#゚;;-゚) 「……あ」
(#゚;;-゚) 「ごめんなさい。迷惑だった」
( ,,^Д^) 「ああ、いや、迷惑というか……」
( ,,^Д^) 「……っと」
いつも通りの登校ルートを、どうせ遅刻確定だからと、ゆっくり歩いていたら
ふと、思い出しました
(#゚;;-゚) 「あ」
( ,,^Д^) 「……」
今、ファイナル橋は、柵の修繕のため工事中だってことと
普段意識していないけど、この橋は、僕の登下校ルートの途中にあるんだってこと
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22 名前:名無しさん 投稿日:2016/04/03(日) 22:24:13 ID:BwRLmA9U0
-
……ファイナル橋を目の前にして、でぃさんは、少しの間 立ち止まっていました
(#゚;;-゚) 「……ここで、私は……」
( ,,^Д^)
( ,,^Д^) 「……あの、えっと、ですね」
(#゚;;-゚) 「……学校、先に行ってきて。私は、あとで行くから」
( ,,^Д^) 「へ?」
(#゚;;-゚) 「……私は、しばらくここにいるから」
( ,,^Д^) 「……」
振り返ると、でぃさんは 工事中の橋の上で、ふわふわと浮かびながら
広いソーサク川の、今は穏やかな川面を、眺めていました
-
23 名前:名無しさん 投稿日:2016/04/03(日) 22:24:45 ID:BwRLmA9U0
-
二時間目終わりの休憩時間
そのタイミングをばっちり見計らって、僕は教室に入りました
( ,,^Д^) 「おはようございまーす……」 コソコソ
(-_-) 「あれ、タカラだ」
<_プー゚)フ 「おー。今日はもうこねーと思ってた」
( ,,^Д^) 「来ないと思ってたって……。ちょっと寝坊しただけですよ」
<_プー゚)フ 「や、朝起きて二度寝して家出て一限間に合わないって思ったらめんどくせーしそのままバックれるのが普通じゃん?」
(-_-) 「学校サボんのを普通って言う受験生、普通に考えて終わりだよね」
<_プー゚)フ 「んでしゃーねーから今日は一日学校じゃなくて図書館で勉強しよーと思って図書館行ってー、
漫画でわかる日本史みたいなの読み始めて、いつのまにか完全な漫画にシフトしてる系の」
( ,,^Д^) 「君も一応受験生ですよね?」
<_プー゚)フ 「夢は大きく東京大学」
(-_-) 「模試の判定は」
<_プー゚)フ 「EZ DO DANCE」
щ(-_-щ) 「Foo!」
( ,,^Д^) 「いい加減第一志望にネタ枠入れていい時期じゃないと思いますよ……」
-
24 名前:名無しさん 投稿日:2016/04/03(日) 22:25:27 ID:BwRLmA9U0
-
……なんていう、くだらない話を 体操服に着替える途中の、半裸の友人たちとしていると
朝の一件が、全部僕の見た幻覚だったような そんな気さえしてきますね……
……ところで、半裸?
( ,,^Д^) 「次の授業なんでしたっけ?」
<_プー゚)フ 「体育。サッカー。疲れた受験生たちのオアシス」
(-_-) 「そして文科系学生たちの砂漠」
(;,,^Д^) 「体操服! やっ、忘れ……」
( ,,^Д^) 「……て、ませんでしたね。セーフ! いっそ四限までまるごとボイコットするとこでしたよ」
(-_-) 「……いやさ、タカラも結構マジメみたいなツラしといてサボるときサボるよね……?」
<_プー゚)フ 「なんせぼくの親友だからね!」
( ,,^Д^) 「ははッ。死ね」
<_プー;)フ 「しんゆー……」
……こんなバカをやっていると、本当に、朝のことを、忘れてしまいそうで
もしかするとあれは、僕が見た、ただの幻だったのかもしれないと そう思ってしまいそうで
-
25 名前:名無しさん 投稿日:2016/04/03(日) 22:26:03 ID:BwRLmA9U0
-
「後で来る」と言っていたでぃさんは、いったい、いつごろ来るんでしょうね
教室をぐるりと見回してみても、どこにも見つかりませんでした
………
ミ,,゚Д゚彡 「キックオーフ!」 ピピッ
<_プー゚)フ 「おっしゃ行くぞー!」
( ,,^Д^) 「ヘイパース! ヘイパスパス! パ……ナイッシュー!」
ミ,,゚Д゚彡 「キックオーフ!」 ピピッ
<_プー゚)フ 「おっしゃ行くぞー!!」
( ,,^Д^) 「ヘイパース! ヘイパスパスパ……ナイッシュー!」
-
26 名前:名無しさん 投稿日:2016/04/03(日) 22:26:39 ID:BwRLmA9U0
-
ミ,,゚Д゚彡 「キックオーフ!」 ピピッ
<_プー゚)フ 「おっしゃ行くぞー!!!」
(#,,^Д^) 「ヘイパース! ヘイパ……たまにはこっちにボールをよこせ!!!」
「了解!」
_人_ ,∵
∧_ Y,'_ (ヽ
< ゚^)/) /( )
と と / /し VV 「え、ちょっ」
〉 / (/(ノ
(_/
)\,'
( _ ) 「ぶげェっ」
<_;プー゚)フ 「ヒッキィ―――z_____ッ!!! オメーなんつーとこ突っ立ってんだ真後ろって!! 真後ろっておまえ!!」
( _ ) 「ち、ちが……おまえが、おまえがちょろまか早いから……どこへ逃げればいいか……」
<_プー゚)フ 「逃げてんじゃねェーよサッカーで!!」
-
27 名前:名無しさん 投稿日:2016/04/03(日) 22:27:05 ID:BwRLmA9U0
-
_
( ゚∀゚) 「せんせェ――! ヒッキーがエクスト必殺の飛び蹴りの餌食に!!」
( ^ω^) 「エクストが無駄にアクロバティックなパス出そうとしたばっかりに!!」
( ´_ゝ`) 「たまたま近くにいたヒッキーのフナムシのような身体が真っ二つにィ―――ー!!!」
ミ,,;゚Д゚彡 「なんと!! しかし選手がひとりふたり死のうとシュートが入らん限りホイッスルは鳴らせん決まりなのだ!!」
( ゚ω゚) 「うわァァァァ修羅ルールゥ―――――ッ!!!」
<_プー゚)フ 「うるせェ――――パス出せっつったのはタカラだよ!! 慰謝料はあいつ宛て!! 訴訟!!!」
(#,,^Д^) 「おい飛び火ィ!!」
……と、まあ、サッカーは その、エネルギーの有り余ってるバカどもの独壇場って感じでして
クールに真面目な感じのキャラで売ってる僕としては、ちょっとついていくのが厳しい感じですね、ええ ええ
前線は熱狂するバカどもに任せて、僕はテキトーにゴール前で待機しておきましょう……
と、小走りにコートの中を移動していると、蘇生したヒッキーが体操服の砂を払いながら近づいてきました
-
28 名前:名無しさん 投稿日:2016/04/03(日) 22:27:53 ID:BwRLmA9U0
-
(-_-) 「ひどい目に遭った」
( ,,^Д^) 「わりと余裕ですね君」
(-_-) 「まあ、ぶっちゃけエクストそんなに足上がってなかったし。ネタで済む範囲」
( ,,^Д^) 「受験生の運動不足ですねー……」
一応同じチームなので 3人に囲まれて袋叩きにされているエクストを遠目に眺めつつ
僕たちは、雑談に興じることに……
( ,,^Д^) (……ネタで済む範囲。ネタで済む範囲……)
(-_-) 「すごい。なんて言うんだっけあれ、四の字固め? じゃなくて……バックブリーカー?」
( ,,^Д^) (……なんか、前にもありましたね、こーいうの)
(-_-) 「あ、すごい。エクスト抜けた」
-
29 名前:名無しさん 投稿日:2016/04/03(日) 22:28:19 ID:BwRLmA9U0
-
<_プーメ)フ 「た、タカラ……おいタカラぁ! パスだ! パース!!」
_
( ;゚∀゚) 「あっクソっ! ボール逃がした!!」
( #^ω^) 「だがこいつの背骨ももう限界よォ!!」
<_;プーメ)フ 「あががががががががが、た、タカラ、ボール、行ったぞ」
( ,,^Д^) ○ 三 (あのときは確か、サッカーじゃなくて、っていうか体育でもなくて……)
(-_-) 「あ。タカラ、ボール来て……タカラ?」
(´<_` ) 「タカラ行ったー……タカラ? おいタカラー!?」
( ,,^Д^) ○ 三 (……っていうか、たしかあれ、2年のときの話だったよう――)
( ,,^Д^(○ 三
―――――――――――
-
30 名前:名無しさん 投稿日:2016/04/03(日) 22:28:58 ID:BwRLmA9U0
-
あれは確か、2年の……5月? 6月? いつでしたっけ……
……ともかく、掃除当番とか、委員会とか、そういうものを軒並み決めてしまった後で
ミ,,゚Д゚彡 「ットラーイッ! バッターアウッ!」
(^Д^,,;) 「……」 スゴスゴ
<_プー゚)フ 「テメ―――アウトはいいけど三振はねーだろ三振は! 出塁は期待してねーけどさあ! 三振! 恥! 昼飯奢れ!!」
週に一度のロングホームルームの時間、やることがなくなってしまったので じゃあテキトーにレクリエーションでもするかと
体育じゃないので格好も制服、ガチでやるわけじゃないので、男女も混合
グラウンドが空いていたからという理由で、そんな、テキトーな野球をやってたときのことでした
<_プー゚)フ 「しょ―――がねえよなまったくよぉ。こうなったら俺が本物のバッティングっつーもんを見せてやるしかないじゃんか」
(`・ω・´) 「なるほど、現役野球部ピッチャーの前で本物のバッティングを名乗るか。つまり遠慮は要らんということだな」
<_プー゚)フ 「ごめんシャキン。ほどほどに加減して」
――そう、たしか、エクストの打席でした
ほんとに手加減してくれたらしい、でも結構速度のある一球目を、いきなり打ったんです
いまいちスッキリしない打撃音がして、ライナー気味の打球が――
-
31 名前:名無しさん 投稿日:2016/04/03(日) 22:29:22 ID:BwRLmA9U0
-
ミ,,゚Д゚彡 「ファー……る、ッ……!」
<_;プー゚)フ 「あ……っ!」
(# ;;- ) 「つ……っ」
……フェンスのそばで、ひとり、突っ立っていたでぃさんの、ちょうど脛のあたりに
おもいっきり、ぶつかったんです
<_;プー゚)フ
(;`・ω・´) 「あ……で、でぃさん大丈夫!?」
<_;プー゚)フ 「! ご、ごめん! でぃさん大丈夫!?」
(#゚;;-゚) 「……大丈夫です。ほんとに、大丈夫です」
-
32 名前:名無しさん 投稿日:2016/04/03(日) 22:29:53 ID:BwRLmA9U0
-
ミ,,゚Д゚彡 「……本当に大丈夫か? 保健室とか……」
(#゚;;-゚) 「はい。ほんとに、大丈夫なんで」
(`・ω・´) 「……まあ、エクストの打球だからな。大したことないといえばそうか」
<_;プー゚)フ 「お、俺のせいかよ!? テメーの球が遅いせいってのもあるんじゃねーの?」
ミ,,゚Д゚彡 「俺のせいってなんだ俺のせいって。エクストの打球が貧弱だったから大事に至らなかったんだ、むしろ誇っていい」
<_;プー゚)フ 「先生までぇ!?」
あははははは……、と そこで、見ていたみんなの笑いが起きて
それで、一応の決着は、一応のオチは、ついたような感じでした、けど……
从 ゚∀从 「……もっとネタになるやつに当たれよって話だよな」 ボソッ
(´・_ゝ・`) 「やめてやれ」
……誰かが、ぼそりと呟いた、そんな言葉が
妙に、記憶に残っています
-
33 名前:名無しさん 投稿日:2016/04/03(日) 22:30:38 ID:BwRLmA9U0
-
(^Д^,, ) 「……」
うちの高校は、一クラスがだいたい36人で 野球の守備は、9人ですから 18:18で分けても余るわけで
攻撃のときは、一応全員打つことにしてましたけど 守備のときは、暇そうに見てる人も何人かいました
(#゚;;-゚)
でぃさんは、攻撃の間も守備の間も、ずっとひとりで フェンスのそばに、ひとり、ぼーっと立っていて
50分間の授業中、1度だけ打席が回ってきたときは
それまで、ギャーギャーと騒がしかった周りの連中が ほんの少し、微妙に、声量を落としたことも 妙に、覚えています
… … …
<_プー゚)フ 「なー三振王、おまえ今日弁当? 学食?」
( ,,^Д^) 「学食ですけど」
<_プー゚)フ 「ならよかった。俺今月厳しいんだ」
( ,,^Д^) 「何もよくないですね……」
-
34 名前:名無しさん 投稿日:2016/04/03(日) 22:31:11 ID:BwRLmA9U0
-
二年と三年のときは、一応、でぃさんと僕は同じクラスでした
だから、一年のときどうだったかは知らないんですけど それ以降同じクラスにいた身として
少なくとも、二年の……二年の、一学期の間は いじめられてるとか、そんなことはなかったように思います
(^Д^,, ) チラッ
(#゚;;-゚) モグモグ
(^Д^,, ) 「……」
いじめられては、いませんでした
ただ、孤立していただけで
<_プー゚)フ 「おらタカラはよはよ。おまえが来ないと俺今日昼飯食えねえんだよ」
( ,,^Д^) 「あ、はい。……いやはいじゃない。初手からたかりに来るのやめましょうよ」
<_プー゚)フ 「今日からおまえはタカリギコ」
( ,,^Д^) 「この上なく不名誉」
-
35 名前:名無しさん 投稿日:2016/04/03(日) 22:31:45 ID:BwRLmA9U0
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お昼は、いつもひとりでお弁当を食べていて
クラス行事では、それこそあの野球みたいに、いまひとつ馴染めていない
「活気ある、楽しそうなクラス」に、ぽつりと浮かび上がった、腫れ物のような――
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( ,,-Д-)
(;,,-Д-) 「う、うーん……」
( ,,^Д^)(゚;;-゚#) 「あ」
( ,,^Д^)(゚;;-゚#)
(;,,^Д^)(゚;;-゚#)
(゚;;-゚#) 「起きた。おはよう」
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36 名前:名無しさん 投稿日:2016/04/03(日) 22:32:18 ID:BwRLmA9U0
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(;,,^Д^) 「……おはようございます。えっと、ここは……」
(゚;;-゚#) 「保健室。……汗すごいよ」
(;,,^Д^) (よかった……本当によかった……あの世とか言われたらどうしようかと……)
起床即幽霊のインパクトは、ちょっと色々と凄まじいものがある 僕覚えました
言った後、そういえば他に人がいたら僕は錯乱独り言野郎になってしまうのでは、と危惧したものの
どうも、今の保健室には先生も誰もいないらしく とりあえず一安心
( ,,^Д^) 「……えっと、いつの間に学校に?」
(#゚;;-゚) 「さっき。サッカー、途中から見てた」
( ,,^Д^) 「あ、そうなんですか……いや、なんというかまあ、お見苦しいところを……」
(#゚;;-゚) 「ううん。よかった」
( ,,^Д^) 「……よかった、って……」
(#゚;;-゚) 「なんだか、久しぶりに見た気がするけど……」
(#゚;;-゚) 「学校だと、みんな、いつも通りみたいで。なんか、よかった」
( ,,^Д^)
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37 名前:名無しさん 投稿日:2016/04/03(日) 22:32:57 ID:BwRLmA9U0
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( ,,^Д^) 「……、……」
(;,, Д ) 「……」
( ,, Д ) 「……さん……ヶ月、経ちましたから、ね。まあ、そろそろ、皆、立ち直るでしょう」
(#゚;;-゚) 「うん。そうかもね」
(;,, Д ) 「……」
あまり感情を表に出さない 何を考えているかわからない 生きてた時から、そうでしたけど
今、幽霊として、僕の目の前にふわふわと浮いているでぃさんは
別に、何を言うわけでもなく 僕を、誰かを、責めるでもなく ずっと、無表情でした
だから、僕にはわかりません
だから、僕にそう見えたのは、気のせいだったのかもしれません
言葉、声色、表情 すべてが
「白々しいことを言うな」と、そう伝えているように見えたのは
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38 名前:名無しさん 投稿日:2016/04/03(日) 22:34:12 ID:BwRLmA9U0
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事故なのか、自殺なのか
普段が、普段でしたから
でぃさんの死は、それ自体よりも、その死がどんなものであったのか
誰もが、そこを気にしていたように思いますし
事故、ということで決まったときの あの
みんなが、ホッとしたような あの空気――――
(#゚;;-゚) 「最初に」
( ,,^Д^) 「え?」
(#゚;;-゚) 「教室、行ってみたんだけど、体育だったから、誰もいなくて」
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39 名前:名無しさん 投稿日:2016/04/03(日) 22:34:43 ID:BwRLmA9U0
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(#゚;;-゚) 「しばらく、廊下とか、あちこちうろうろしてたけど。ほんとに、誰も見えてないみたい」
( ,,^Д^) 「……そうなんですか。教室……」
( ,,^Д^) 「……」
ソーサク高校の席替えは、月に一度行われます
でぃさんが死んだ六月、でぃさんの席は教室の一番後ろ、一番隅 廊下側の、一番後ろにありました
隅の、都合のいい位置にあったからでしょうか でぃさんの席は、空席のまま残されるなんてことはなく
生徒なのか、教師なのか、誰の発案なのか
誰が持ち出したのかもわからないうちに、いつの間にか、教室から撤去されていて
6×6で一クラス36個あったはずの席は、今では角が欠けて、35個になっています
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40 名前:名無しさん 投稿日:2016/04/03(日) 22:35:12 ID:BwRLmA9U0
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( ,,^Д^) 「どうしてでしょうね。僕にだけ見えるの」
(#゚;;-゚) 「……言っちゃダメって言われてるから」
( ,,^Д^) 「……ということは、でぃさんにはその理由がわかってるんですか?」
(#゚;;-゚)
(#゚;;ー゚) 「さあ?」
( ,,^Д^)
( ,,^Д^) (今の、もしかして笑ってました……?)
思えば、笑顔のでぃさんというのに、僕は見覚えがありません
ちょうど、今みたいな表情ばかり、見ていたような気がして
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41 名前:名無しさん 投稿日:2016/04/03(日) 22:35:41 ID:BwRLmA9U0
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場の流れからすると、たぶん笑っているのだろうけど
傍から見ると、笑っていると思っていいのか判断しかねる、そんな微妙な表情を
初めて見たのは、たしか―――
――初めて、話しかけたとき
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