o川*゚ー゚)oカエルの子はカエルの子のようです

1 名前:名無しさん[sage] 投稿日:2016/04/03(日) 22:25:35 ID:XrrPzSEY0
 o川*゚ー゚)o「このお話は、とってもハートフルなお話ケロ!」





 o川*゚ー゚)o「だから、みんな」





 o川*^ー^)o「たのしんでねっ!」

2 名前: ◆U05kAeOd3o[sage] 投稿日:2016/04/03(日) 22:30:43 ID:XrrPzSEY0
〜〜〜



 o川*゚ー゚)o 「ケロケロッ!こんにちは!あたしは、カエルのキューちゃんケロ!」



 o川*゚ー゚)o 「あめあーめふれふーれ、けーろけろろー!」



 o川*゚ー゚)o 「おや??なんだか、とってもおもしろそうなおうちを見つけたケロ!」



 o川*>ー<)o 「のぞいてみるケロ!」

3 名前: ◆U05kAeOd3o[sage] 投稿日:2016/04/03(日) 22:32:32 ID:XrrPzSEY0
〜〜〜


 十六畳ほどのリビングを三分の一ほど埋めている茶色のテーブルに、
ゆらゆらと消えていく湯気の数々と、香ばしい匂い。

 
 その量は、作った主婦と、中肉中背の夫と、やせ型の青年、
そして、小学生の子供達には少し多く見えた。


( ・∀・) 「ああ、ありがとうペニサスさん」


 やせ型の青年は、特に必要もないのにオフィススタイルの服装であった。
ボタンダウンのライトグレーストライプシャツと、黒無地のノータックスラックスを履いている彼は、
食事の時間、数分前までブルーの水玉ナロータイを結んでいた。特に必要もないのに。

4 名前: ◆U05kAeOd3o[sage] 投稿日:2016/04/03(日) 22:34:19 ID:XrrPzSEY0
('、`*川 「たくさん食べてね、モララー」


 エプロンの肩紐を直しながら、ペニサスはテーブルの上に料理を並べていく。
焼きそば、カレー、卵サラダ、たこ焼き──最後にウーロン茶を差し出されたやせ型の青年、モララーは、
礼を言ってベルトの穴を一つ緩めた。


( -∀-)人 「うまそうだな……いただきます」


 その風貌から真面目さが伺える彼の、食事の仕方は乱暴だった。
乱暴で、本人はとても美味しそうに頬を膨らませながら、皿の上をきれいに。
そんなある種の吸収と発散は、やはり小学生には少し大仰に見えたようで。

5 名前: ◆U05kAeOd3o[sage] 投稿日:2016/04/03(日) 22:36:02 ID:XrrPzSEY0
  _
( ゚∀゚) 「モララー君、食べるの早っ」



( -〜・) 「ジョル君、男はこんなものだよ」


  _
( ゚∀゚) 「えー、そうかなぁ」


 ウーロン茶を流し込み、流暢に答えた彼の言葉に、幼きジョルジュは首を傾げた。
その様が面白かったわけではなく、何を考えているのかもわからない家長は青年を窘める。

6 名前: ◆U05kAeOd3o[sage] 投稿日:2016/04/03(日) 22:38:36 ID:XrrPzSEY0

(´・ω・`) 「ハハハ、モララー、もっとゆっくり食えよ」



( ・∀・) 「こんなものですって」



(´・ω・`) 「馬鹿野郎、そんなんだから身につかないんだ。少しは噛め」



( ・∀・) 「噛んでますよ」



('、`*川 「まぁまぁ、たくさん食べてくれるから嬉しいわ」

 
 ティッシュで口元を拭うモララーは、注がれるビールのコップを斜めにしながら答えた。
 その手元は、少し震えていた。

7 名前: ◆U05kAeOd3o[sage] 投稿日:2016/04/03(日) 22:40:13 ID:XrrPzSEY0
  _
( ゚∀゚) 「でも僕、もっと豪華な料理が食べたいなぁ……」


 誰にも気づかれないまま震えを抑えることができたのは、
隣に座っている自分よりも下の存在がこぼした何気ない一言。


( ・∀・) 「豪華?」


  _
( ゚∀゚) 「だって、しょぼいんだもん」


('、`*川 「なら食べなくていいわよ?」


 どこにでもある、普通の会話。取るに足らない、愚痴と躾のキャッチボール。


( ・∀・) 「……」


 だが、モララーにとっては、その言葉が気に食わなかったようで。

8 名前: ◆U05kAeOd3o[sage] 投稿日:2016/04/03(日) 22:42:56 ID:XrrPzSEY0
( ・∀・) 「ジョル君、年収1000万円の人は金持ちだと思うかい?」


  _
( ゚∀゚) 「え、うん」



( ・∀・) 「その人たちの食事は、これよりもっと粗末だよ」



  _
(;; ゚∀゚) 「えっ……!?」



 ひどく極端な例で、子供に衝撃を抱かせた。

9 名前: ◆U05kAeOd3o[sage] 投稿日:2016/04/03(日) 22:44:22 ID:XrrPzSEY0
 そして、間髪を容れずに相槌を打った彼”ら”の父親であるショボンの言動は──



(´・ω・`) 「こんな豪勢な料理を食べられるのはママのおかげだぞ、ジョルジュ」


('ー`*川 「あら、パパが頑張っているからじゃないの」


(´^ω^`) 「はっはっは!」


( ・∀・) 「……」


( -∀-) (ああ)


(^、^*川 「さあ、食べましょう」




( ・∀・) (とっとと死なねぇかな、この男)




 そんな極端な例を持ち出すほどに頭でっかちな彼の、根本的な思想を作っていた。

10 名前: ◆U05kAeOd3o[sage] 投稿日:2016/04/03(日) 22:45:27 ID:XrrPzSEY0
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━   幕 間  モララーの生い立ち━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━



 モララーは今年で二十四歳になる。実の父親であるショボンとは二十年ほど連絡を取っていなかった。
端的に言えば捨てられた。ショボンは今現在に至るまで五人の女性と関係を持ったり、捨てたりしていた。その全て、戸籍謄本に記載される関係を。


 ショボンはモララーの他に六人ほど子供を捨てていた。そして、女性達は押し並べて、どこか歪んでいた。


 彼が捨てられた先は、ショボンの妹であり、モララーにとって叔母にあたるレモナと、
その母親であるミルナの元であった。レモナは独身、ミルナは夫を早くになくしていて、
叔母にとっては子供ができたように、祖母にとっては文字通りの孫だということで、歓迎された。

11 名前: ◆U05kAeOd3o[sage] 投稿日:2016/04/03(日) 22:49:00 ID:XrrPzSEY0
|゚ノ ^∀^) 「モララー、よろしくね」


( ゚д゚ ) 「モラ、おばあちゃんだよ」


( ・∀・) 「……」


ζ(゚ー゚*ζ 「……」


 彼は、人生の大切な時期を肉親の下で過ごせなかったことに特別、悔いを感じてはいなかった。
そうでなければ、この年齢まで満足に生きてこれなかったことを知っていた。


( ・∀・) 「……お母さん」



ζ(゚、゚*ζ 「……ねぇ」


 では、なぜ。悔いを感じていなかったのか。なぜ、彼の心は憎しみを持つようになったのか。


ζ(゚ー゚*ζ 「タクシー呼んでくれる?早く行きたいんだけど」


 モララーはこのとき、一度も母親を追いかけなかった。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

12 名前: ◆U05kAeOd3o[sage] 投稿日:2016/04/03(日) 22:56:52 ID:XrrPzSEY0
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


 高校を中退した彼は、在学中と変わらずアルバイトに励んでいた。とにかく金がなかった。

 

 レモナとミルナの居場所を離れたのは、高校二年生の夏だった。歪んだ女性達とは違った、まともな人情味を持つ彼女たちだったが、
その分、どこか腑抜けていたところがあった。



 レモナは独身の身でありながら、同年代の男性と比べても遜色のない年収を稼いでいた。だから、モララーを育てることができた。
しかし、それが無くなれば、自分と祖母で精いっぱいの生活だった。

13 名前: ◆U05kAeOd3o[sage] 投稿日:2016/04/03(日) 22:59:06 ID:XrrPzSEY0
|゚ノ ^∀^) 「海が、見たいの」



 モララーが高校を辞めて、一人暮らしを始めたのがリアリストとするならば、
レモナは究極のメルヘンチックで、彼女は長年勤めた仕事を辞めた。レモナの父親が立てた、田園に囲まれている大切な家は値切られた。海は一週間で飽きた。



 残ったのは後先考えていなかったことが容易に理解できる、貯金通帳に刻まれた数字だけだった。


 果たして、モララーが家を出たのも、卒業が見えてきた矢先の退学も、全ては金が原因だった。
それは今も続き、その延長線上にあったのが、父親の存在であった。金を得るための手段と思った。



 だが、ショボンはレモナに対し、総額にして、四千万円を借りていたままだった。



━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

14 名前: ◆U05kAeOd3o[sage] 投稿日:2016/04/03(日) 23:01:58 ID:XrrPzSEY0
〜〜〜



(,,゚Д゚) 「いやぁ、すみませんね、遅くに」



 図体の良い男が、食卓も片付いた後に来たのは、仕事のためだった。
ショボンは田舎町であるしたらば町で経歴を隠し、注意力の足りない人間たちの上に立とうとしていた。



(´・ω・`) 「とんでもない!さ、どうぞギコさん」



(,,゚Д゚) 「おっと、これはこれは……」


 注がれるビールの量は、変わらず。隣で缶に入ったまま惰性で飲み続けるモララーは、
父親と共に新たな事業展開を立ち上げるべくして協力──協力しているように見える──者であるギコの話に
アンニュイな相槌を打ちながらつまらなそうに笑っていた。

15 名前: ◆U05kAeOd3o[sage] 投稿日:2016/04/03(日) 23:04:38 ID:XrrPzSEY0
('、`*川 「モララー?この方は大丈夫よ、信頼できるわ」


('、`*川 「この町はどこか閉鎖的ですから、誰が何を考えているのかわからない。でも、ギコさんはまともよ。そう固くならないで」


 ペニサスが察したのか、笑顔でしかめっ面をしていた青年に優しく語りかけた。酔いが回っていたのか、モララーは少し気持ちが落ち着いた。


(,,゚Д゚) 「いや、しかしモララー君はすごいですな。自分で金を貯めて、大学まで卒業して」


( ・∀・) (大学?なんのことだ?)


(´・ω・`) 「いえいえ、愚息ですわ。ほんと」


 ショボンは謙遜しながら、アイコンタクトで愚息の疑問に答える。
なるほど、自分だけじゃなく、周りの人間まで理想に仕立て上げるつもりかと納得した。

16 名前: ◆U05kAeOd3o[sage] 投稿日:2016/04/03(日) 23:07:33 ID:XrrPzSEY0
 なまじ、彼のルックスは理想のそれだった。少しだけ長めの黒髪と、利発的な顔。
丁寧な物言いと、振る舞いに、とても彼が粗末で苦渋を得てきた人間だとは考えられなかった。



(,,゚Д゚) 「なぁ、モララー君。今度、うちの息子に色々と教えてやってくれよ」



( ・∀・) 「恐縮です。私は何も……」



(,,^Д^) 「ショボンさんとモララー君がいれば、したらば町も、もっとよくなるなぁ!ギコハハハ!!」



(´^ω^`) 「ハッハッハ!」

17 名前: ◆U05kAeOd3o[sage] 投稿日:2016/04/03(日) 23:08:16 ID:XrrPzSEY0
( ・∀・) 「ハハハ。それより例の件ですが……」



(,,゚Д゚) 「例の件?」


( ・∀・) 「ええ、あの──」


(´・ω・`) 「ん、ああ、それは問題ない。こちらでなんとかする」



(,,゚Д゚) 「……」



(´・ω・`) 「──おっと、ギコさん。お酒、お酒」



(,,゚Д゚) 「おお、すみませんな!」



 こうして、夜は更けていった。

18 名前: ◆U05kAeOd3o[sage] 投稿日:2016/04/03(日) 23:12:10 ID:XrrPzSEY0
〜〜〜




(´゚ω゚`) 「バカ野郎!!!!!!!!!!」




(;; ・∀・) 「っ!」




 怒声が響いたのは、ギコがいなくなってから。赤らめた顔は、まるで鬼のようだった。



(;; ・∀・) 「な、なんですか急に──」



(´゚ω゚`) 「初対面の人間を隣に、好き勝手喋る人間がいるかボケッ!!」



(;; ・∀・) 「は、はぁ?」

19 名前: ◆U05kAeOd3o[sage] 投稿日:2016/04/03(日) 23:14:21 ID:XrrPzSEY0
(´-ω-`) 「例の件に関して、ギコは何も知らん!!それをお前は話題に出しやがって……!!頭が悪い……!!」



 追及は止まらない。海千山千を越えてきた昭和の男の、怒りが牙を剥いて実の息子を責め立てる。



(;; ・∀・) 「い、いや、だって、ギコさんは全部わかっていると……」



(´・ω・`) 「何度も言わせるな、お前は初対面の人間だろう?なのになぜベラベラベラベラと話す?
       知っているか知っていないかもわからん、ましてや信用できるかどうかもわからない人間を前にして、だ」


(;; -∀-) 「っ……」



(´・ω・`) 「今はいい、大した問題じゃない。だがな、お前が将来、そういう人間たちと関わっていく中でこんなバカなことをしてみろ」



(´・ω・`) 「一瞬で消えるぞ」

20 名前: ◆U05kAeOd3o[sage] 投稿日:2016/04/03(日) 23:20:19 ID:XrrPzSEY0
 筋は通っていた。たとえ誰かの評価によって決められた情報でも、それが正しいかどうかなどわからないのだから。
 


(  ∀ ) 「──すみません」



(´・ω・`) 「それが大人のルールだ、基本中の基本の、な」



 言って、人生のほとんどを散らかし、片付けもしない大人の耳に聞こえてきたのは、ジョルジュよりも幼い子供の声だった。



*(‘‘)* 「パパぁ……?」



(´^ω^`) 「おお!ヘリカル!!すまない、起こしてしまったか!ごめんな!!」



*(‘‘)* 「もう、パパうるさいー!」



(´^ω^`) 「ごめんよー!」

21 名前: ◆U05kAeOd3o[sage] 投稿日:2016/04/03(日) 23:21:30 ID:XrrPzSEY0
 先ほどの形相とは打って変わって、赤らめた顔で小さな子供の頭をなでる。



*(‘‘)* 「モララーもうるさいよー、眠れないよー」



( ・∀・) 「ごめんな、ヘリカル」



 萎縮しながらも、モララーは彼女に謝った。



 ヘリカルは彼の血のつながる妹にあたる。おそらく、最後の、”六十歳を越えるショボン”の、実の子供だった。
ヘリカルは三歳だった。この時間に起きてしまうと、朝まで眠れない。そして彼女は捨てられてはいない。

22 名前: ◆U05kAeOd3o[sage] 投稿日:2016/04/03(日) 23:24:17 ID:XrrPzSEY0
          
  *(‘‘)*     「きゃっきゃ!」
   (( (´^ω^`)           
。。。。o(_uu              「ほうら、お馬さんだぞー」




 四つん這いになりながら、背中に幼女を乗せて、床の上を進む男の姿に、モララーは問う。



( ・∀・) 「……今回、私がこの町に来たのは、あなたを手伝うためです。それと金のため」



( -∀-) 「……」



( ・∀・) 「そのために必要な、信頼できる人間とは誰なのですか?私は誰を信頼すればいいんですか?」

23 名前: ◆U05kAeOd3o[sage] 投稿日:2016/04/03(日) 23:26:00 ID:XrrPzSEY0
 愚直なまでに青らしい質問に対し、父親が放った言葉は、息子にとってこれからの人生に強い影響を与えるものだった。








                       *(‘‘)*     
                        (( (´・ω・`) 
                     。。。。o(_uu    「誰も信じるな」








 その言葉が、彼がこの世で唯一殺したいほど憎い存在の、たった一つの好きな言葉だった。

24 名前: ◆U05kAeOd3o[sage] 投稿日:2016/04/03(日) 23:27:35 ID:XrrPzSEY0
───────────────────────────────────────────────────────────


 o川*゚ー゚)o「……」






 o川*゚∀゚)o「キューーーーー!!ケロケロ!!!!ウケるケロォオオオオ!!!!」                



 o川*゚∀゚)o「げららららげはげへ!!なんだこれ、なんだこいつらケロ!!」                     


 
 o川*゚ー゚)o「六十越えて盛ってる、オスとしてだけは優秀な下種のクズ男に」                   
                                                            


 o川*゚ー゚)o「自分じゃ何もできない中卒クズ男!!」
 


 o川*^∀^)o「くそ面白いケロ!!笑えるケロね!」

25 名前: ◆U05kAeOd3o[sage] 投稿日:2016/04/03(日) 23:29:05 ID:XrrPzSEY0
 o川*゚ー゚)o「もっと見てみるケロ!!そしてこいつらがどこに落ち着くのか見てみたいケロ!!」          




 o川* ー )o「……いや」                                                     






 o川*^ー゚)o「つーか、全員死んだ方がいいんじゃないケロ?」                              







 o川*゚∀゚)o「ケーロケロケロケロ!!!!!」

26 名前: ◆U05kAeOd3o[sage] 投稿日:2016/04/03(日) 23:31:29 ID:XrrPzSEY0
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━   幕 間  ショボンの所業━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━



 ショボンは生物学上に於いてのみ、優れた人間だった。種をたくさん撒いた。一切の世話を放棄した。それでも彼は子供たちにとって父親だった。
バブル期に手に入れた金と名誉だけが、客観的に見た彼を形成する要因だった。



 もともとは、まじめな好青年にも関わらず、そうなってしまったことを、古くからの親しい友人はこう言った。




( ФωФ)「屋根から落ちたんだ。それから彼は変わった」




 それは比喩でも、暗喩でもなく。補修工事を請け負った若き日の野心家は、確かに屋根から落ちたらしい。
果たして、脳に異常が出てしまったのか、あるいはまったく関係がないのか。今となっては誰にもわからなかった。

27 名前: ◆U05kAeOd3o[sage] 投稿日:2016/04/03(日) 23:42:25 ID:XrrPzSEY0
 口だけは返済の意を唱え、被害を受けた人間が法的手段に訴えようとも、
なんの意味もなさなかったのは、同じ血の通う一族以外からの借金ですら踏み倒していることからも明らかだった。
計五社の消費者金融と、様々な税金の請求元からは、今でも督促状が送られてくる。



 ある日、レモナのクレジットカードが無断で使用されていたらしい。そのことに気付いた彼女は、当然の権利で兄を責め立てた。




|゚ノ ゚д゚) 「お兄ちゃん、なんでこんなことしたの!!200万って……いったい、何に使って」





(´^ω^`) 「ああ、バレたか」





 彼はまるで、悪意のない泥棒のように純粋にそう答えた。


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

28 名前: ◆U05kAeOd3o[sage] 投稿日:2016/04/03(日) 23:45:05 ID:XrrPzSEY0
〜〜〜



 ある日の晩だった。ジョルジュの宿題は算数だった。モララーが先生だった。


  _
( ゚∀゚) 「ここわからないな……」


( ・∀・)⊃ 「貸してみな」



 手慣れた様子で、彼はノートに式を書き込んでいく。筆跡を除いて百点満点の回答を書き終えた後、そのままジョルジュに見せた。


  _
( ゚∀゚) 「これ、答え……?モララー君、代わりにやってくれるの!?」



( ・∀・) 「バカ、そんなわけがないだろう。いいか、これが結果だ。結果の対義語は原因だ。なぜこうなったのかを解いていけばお前ならわかるよ」

29 名前: ◆U05kAeOd3o[sage] 投稿日:2016/04/03(日) 23:48:11 ID:XrrPzSEY0
 モララーの教え方は、先に結論を出すものだった。


それは、成人している人間からすれば簡潔なやり取りだったのかもしれないが、子供である彼にとっては解が先に出てくることに戸惑いを隠せなかった。



(´・ω・`) 「モララー、いきなり答えを教える必要があるか」


*(‘‘)* 「モララーはダメ―」



 横やりを入れたのは、血のつながりがある親子だった。ヘリカルを抱きかかえたまま、続ける。



(´・ω・`) 「勉強というものはな、まず自分で解かせるものだ。そうしないと覚えられないし、身につかんぞ」



( -∀-) 「いえ、彼の場合はきっかけの問題です。先に解を提示してからのほうが全体を見渡しやすいはず」



(´・ω・`) 「だいたいだな、ジョルジュ。宿題など自分の力でやるものだ。人の力を借りるな、バカ者」


  _
( ゚∀゚) 「だ、だって……」

30 名前: ◆U05kAeOd3o[sage] 投稿日:2016/04/03(日) 23:49:37 ID:XrrPzSEY0

 ジョルジュはショボンが嫌いだった。思春期に追うべき背中が変わってしまったことが一因としても、
ましてや後から生まれたヘリカルがちやほやされている現状が一因だとしても、本当の理由は別にあった。



 端的に、子供目線で言えば、単純に厳しいからだった。穿ってみれば、ショボンがジョルジュを嫌いだからだった。連れ子だからである。



 血の繋がりもない子供の世話をすることは、彼にとって人生で初めてのことで、とても嫌悪感を抱いていた。



(´・ω・`) 「まったく……小学生の宿題程度、もっとさっさと終わらせられないものかね。なぁヘリカル」



*(‘‘)* 「うん!パパ大好き!」

31 名前: ◆U05kAeOd3o[sage] 投稿日:2016/04/04(月) 00:01:35 ID:CgwTSlI20
 だからこそ、モララーはこう思う。決して口には出さないことは、彼なりの配慮か、それとも──







( ・∀・) (だったらあんたが教えろよ、父親だろうが)







 二人は無言で、次の問題に着手した。

32 名前: ◆U05kAeOd3o[sage] 投稿日:2016/04/04(月) 00:03:02 ID:CgwTSlI20
〜〜〜



('、`*川 「でね、モララー、聞いて」



( ・∀・) 「ああ、聞いてる。さっきから、何度も」



('、`*川 「どう思う?」



( ・∀・) 「そうだな、俺にもわからないよ。あの人間が何を考えて、何をしようしているのかなんて」



 これだけなら、赤の他人、それもさほど縁のない人間のことを指している会話に過ぎない。


しかし、どうにもこの内容は、彼らにとって死活問題で、もっとも身近にいる人間を指していた。

33 名前: ◆U05kAeOd3o[sage] 投稿日:2016/04/04(月) 00:04:47 ID:CgwTSlI20
 ある日の深夜だった。ペニサスは缶ビールを十二本開けていた。しらふなら小奇麗で淑女な彼女は、軽度のアルコール依存症だった。



('、`*川 「口座、見たよ。別れた奥さんと子供に、お金送ってる」



( ・∀・) 「みたいだね」



('−`*川 「信じられないっ」


( -∀-) 「ああ」



 髪を乱し、声を荒げる。流しにたまった食器とカップ麺の容器は、水に浸かったまま浮いていた。



('、`*川 「私たちだって、お金ないんだよ?ギリギリで生活しているんだよ?なのにどうしてこんなことするの!?」


( ・∀・) 「そう、だな」



 モララーは十三本目を開けるそぶりと、迫真の口調に欺瞞を覚えるが、自身も口をつけていることに気付いたので相槌を打つ。

34 名前: ◆U05kAeOd3o[sage] 投稿日:2016/04/04(月) 00:08:32 ID:CgwTSlI20
 ショボンの計画していた仕事は折れかかっていた。収入面でもそうだが、なによりも田舎町特有の閉鎖空間が、彼らを村八分にしようとしていた。
その矢先、甲斐性のない男の優しさが発覚した。ペニサスは壊れかけていた。



( 、 *川 「ありえない、本当にありえない……」



(´・ω・`) 「いつまで起きてるんだ、お前達」



 二階から、ヘリカルを寝かしつけた父親が降りてきた。昼間に激しい口論をしたにも関わらず、なおも食らいつく。

35 名前: ◆U05kAeOd3o[sage] 投稿日:2016/04/04(月) 00:09:18 ID:CgwTSlI20
 二階から、ヘリカルを寝かしつけた父親が降りてきた。昼間に激しい口論をしたにも関わらず、なおも食らいつく。



(゚д゚*川 「お前が!!お前がやったからだろうが!!ああ!?金は返してもらうぞ!!」



(´゚ω゚`) 「家族のためにやってるんだ!!お前は口を出すな!!」



('、゚"川 「家族のためぇ!?しょうもな、バカじゃないの!?なにが家族のためよ!!」



⊂≡(´・ω・` ) 「うるさい!」



( 、 (###川 「ああっ」



( ・д・) 「おいっ」

36 名前: ◆U05kAeOd3o[sage] 投稿日:2016/04/04(月) 00:15:24 ID:CgwTSlI20

 現場で鍛え抜かれた、歳を感じさせない右腕が、ペニサスの眉間に降りかかる。暴力。握りしめられた拳骨は、鈍い音を立てる。


('、゚"川 「ああ、痛い、痛い」


( ・д・)⊃ 「やめろ!やめろ、あんたいい加減にしろ!!」


(´゚ω゚`) 「お前がちゃんとしていないからだろうが、母親のくせに子供の面倒もみれんのか!!」


('、゚"川 「う、ううううううあああああああ」


 モララーはショボンを引き離す。どこか冷静で、心の中は穏やかだった。彼にとっては、この騒動がどう収束し、自身にどう影響するかしかなかった。


( ・д・) 「殴ったらダメでしょうが!!」


(´゚ω゚`) 「黙れ!こいつは、こいつはぁ」


(∩、゚"川≡ 「ううっ!!」


 ペニサスは額を抑えながら、埋め尽くされた机の上から車のキーと財布を持って、勝手口から出る。
追いかけようとしたのは、なんの義理もないはずの、義理の息子だった。

37 名前: ◆U05kAeOd3o[sage] 投稿日:2016/04/04(月) 00:21:42 ID:CgwTSlI20
(・д・ ) 「ペニサスさん、待って!」



(´゚ω゚`) 「モララー」



( ・д・) 「なんですか!?」



(´゚ω゚`) 「連れ戻して来い」



(  − ) 「……ッ」




 聞こえるように舌打ちをして外に出る。エンジン音が鳴り響く中で、誰かを待っているように動かない車に、彼は乗り込んだ。

38 名前: ◆U05kAeOd3o[sage] 投稿日:2016/04/04(月) 00:23:22 ID:CgwTSlI20
 薄暗い車内だった。かろうじて見える顔を認識してから、モララーは額に注視する。血は出ていなかった。



(∩、゚"川 「……」



 視点は一点を見、微動だにしていない。どこか遠くをみているようで、何も見えていない。



 黙ったまま、うるさく響くエンジン音の中で、時が動き出したのは彼の一言。



 たとえそれが、どういう方面から見たところで、決して褒められることではないとしても、
それしか彼女を落ち着かせる方法を思いつくことはできなかった。



( -∀-) 「……飲みに行くか」



(∩、`"川 「……うん」

41 名前: ◆U05kAeOd3o[sage] 投稿日:2016/04/04(月) 20:55:40 ID:UkLswZfw0
〜〜〜


 したらば町の、ペニサスが行きつけのスナックだった。それなりに繁盛していた。
 カウンター席でペニサスは店主と、モララーは一人、焼酎を煽る。


('、`*川 「ハイン―……」


从 ゚∀从 「どったの、また旦那と喧嘩した?」


('、`*川 「ううー」


( -∀-) 「……」


 ひとしきり、義理同士の会話は終わっていた。既に崩壊しかけている家庭のことも、なんの進捗もなく、感情論だけでの無駄な会話だった。

42 名前: ◆U05kAeOd3o[sage] 投稿日:2016/04/04(月) 20:56:14 ID:UkLswZfw0
从 ゚∀从 「お連れさん、困ってんじゃん。ねぇ?」


( ・∀・) 「いや、俺には構わないでくれなくていい」


从 ゚∀从 「はは、そりゃ失礼」


 もはや諦観している彼にとって、考えていることは進退。実際のところ、彼がこの町にやってきたのも、誘われたところが大きい。


 夫の手伝いをしてくれという夫婦の頼みと得られる報酬に目がくらんだと言えば、今の現状はあまりにも悲惨だった。


( ・∀・) 「……?」


 携帯のバイブに気付いたモララーは外に出る。発信元はショボンだった。間をおいて、五コール目で通話ボタンを押した。

43 名前: ◆U05kAeOd3o[sage] 投稿日:2016/04/04(月) 20:56:43 ID:UkLswZfw0
( ・∀・) 「もしもし」


 「まだ外にいるのか、早く連れ戻して来い」


( ・∀・) 「無茶を言わないでください。誰のせいでこうなったと……」


 「いいから早くしろ」


 怒気交じりの声と裏腹に、ヘリカルの寝ぼけた声も聞こえてくる。いい加減に限界だった。


( -∀-) 「はぁ……善処します」

44 名前: ◆U05kAeOd3o[sage] 投稿日:2016/04/04(月) 20:57:21 ID:UkLswZfw0
 言い切って返答も待たずに通話を切り、彼は店に戻っていった。多少、回復したペニサスは酒を片手に笑いながらハインに溢していた。






(^ー^*川 「それでも私はね、ショボンが好きなの。ショボンじゃなきゃ嫌なの」





 何も言わずに隣に座りなおしたモララーは、迷った末におかわりをした。彼にとってそれは、現実逃避と再出発を兼ねた祝杯だった。

45 名前: ◆U05kAeOd3o[sage] 投稿日:2016/04/04(月) 21:00:07 ID:UkLswZfw0
───────────────────────────────────────────────────────────



o川*゚∀゚)o 「キュッキュッキュ!!」



o川*^∀^)o 「ケーロ、ケロケロケロ!!」



o川*゚ー゚)o 「どいつもこいつもクソみたいだケロ!!つーか、働ケロ!身内で固まって傷の舐めあいって気持ち悪いケロ!」



o川*゚ー゚)o 「金もないのに無駄遣い、あげくに暴力と育児放棄!それでも好きって家畜以下だケロ!」



o川*゚ー゚)o 「残された子供は絶対にいい大人になれないケロ!!」

46 名前: ◆U05kAeOd3o[sage] 投稿日:2016/04/04(月) 21:00:57 ID:UkLswZfw0











o川*゚ー゚)o 「所詮、キューちゃんたちと同じように、カエルの子はカエル!クズの子はクズだケロ!」







o川*゚ー゚)o 「ケーロケロケロケロ!!さぁ、次はどんどんこいつらの本性がむき出しになって──」



o川*゚д。)o 「ぐえっ」



───────────────────────────────────────────────────────────

47 名前: ◆U05kAeOd3o[sage] 投稿日:2016/04/04(月) 21:01:42 ID:UkLswZfw0
〜〜〜



( ・∀・) 「……ん」



 雨上がりの昼間だった。モララーは他県に引っ越していた。歩いている途中にカエルを踏んでいた。



( ・∀・) 「ついてないな。まぁいいけど」



 あの日からも続く、生産性のない話と、一向に改善されない事業展開。町はショボン一人を悪者にしようと法的手段を考えていた。
残された貯金がつきかけたとき、催促される対象は決まっていた。



( ・∀・) 「俺の貯金もすっからかん、か……ハハ」

48 名前: ◆U05kAeOd3o[sage] 投稿日:2016/04/04(月) 21:02:43 ID:UkLswZfw0
 あれだけ雄弁で不遜な態度を取っていた父親は一変、慇懃無礼なほどに丁寧に息子へ金をせびった。彼らの中に自ら働いて自分たちを律するという選択肢はなかった。
身近にいる存在から金を借りることがどれだけ早く、楽かを知っているからである。



( ・∀・) 「まぁ……手切れ金と思えばいいか」



 ついぞ、モララーは何も言わなかった。涙すら流さなかった。これが自分の父親だということを、とうの昔に知っていた。



 無職になった男の新天地は六畳一間のアパートだった。保証人関係は叔母を頼った。
一人で住むのにも少し、狭く感じたが、心なしか空気は澄んでいた。無気力で他力本願の人間がいないことが、
この場所と自分自身を清浄させているのかもしれないと自虐した。

49 名前: ◆U05kAeOd3o[sage] 投稿日:2016/04/04(月) 21:04:51 ID:UkLswZfw0
( ・∀・) 「さて、明日からアルバイト生活だな……」



 背水の陣である彼の懐には今日明日を生きるほどの路銀しかなかった。
結局のところ、彼もまた借金をしてこれから生きていくしかないのだ。
部屋に戻り、荷物を整理していたマイナスからのスタートは、聞こえてくる音に遮られた。



( ・∀・) 「ん?」



 それでもなお、掃溜めの中で息をしているよりもよほど清潔なこの場所で、
鳴り響いたインターホンに反応したモララーはドアを開ける。
覗き窓で来客を確認しなかったのは、ひどい顔をしていないことと、
オフィススタイルをしていたこと。そして部屋がキレイで何もなかったからだった。

50 名前: ◆U05kAeOd3o[sage] 投稿日:2016/04/04(月) 21:07:12 ID:UkLswZfw0








(´^ω^`) 「おお、すまんの」




*( ; ;)* 「パパぁ、パパぁ!うええええええええん!」




( ・∀・) 「な、なにをしに来たんですか?」


 心のどこかでショボンが来ることを想定していたのかもしれない。さらに、何をしに来たのかもわかっていた。
うるさく泣き止まない子供をしり目に、動揺もそこそこに、要件を問う。

51 名前: ◆U05kAeOd3o[sage] 投稿日:2016/04/04(月) 21:07:54 ID:UkLswZfw0
(´・ω・`) 「いやぁ、ちょっと金を……」



( ・∀・) 「ありません」



(´・ω・`) 「千円、千円でいいんだ。頼む、頼む……」



( ・∀・) 「……はぁ」



 ため息をついた息子は、財布から一枚、札を抜き取り裸のまま差し出した。
泣き止まないヘリカルをじっと見ながら、彼は苛立ちと苦痛を感じる。

52 名前: ◆U05kAeOd3o[sage] 投稿日:2016/04/04(月) 21:08:38 ID:UkLswZfw0
(´・ω・`) 「お、おお、すまん、すまんの。ありがとう。絶対返すからな」


( ・∀・) 「返すわけがない」


(´・ω・`) 「いや、ちゃんと返すよ。わかっているわかっているから、返す」


*( ; ;)* 「うええええええええんっ!!」


 どこか、似たような光景だった。自分と同じように、勝手な都合で振り回されるヘリカルを見て、モララーは昔を思い出す。
一度でも子供を捨てたことがあるのなら、二度、三度捨てることは十分にあり得る。



 捨てられる子は、どうあがいても捨てられる子。カエルの子はカエルの子。



 せめて、彼女だけでも幸せな人生を、とひどく安直な思いと同時に、近所迷惑なのでドアを閉めようとした。

53 名前: ◆U05kAeOd3o[sage] 投稿日:2016/04/04(月) 21:09:28 ID:UkLswZfw0
(-∀- ) 「……ちょっと忙しいんで、これで」



(´・ω・`) 「あ、待ってくれ」



(・∀・ ) 「まだなにか?」





 そうして、大好きな父親といるのにも涙が止まらなかったのは理由を痛感した子は──

54 名前: ◆U05kAeOd3o[sage] 投稿日:2016/04/04(月) 21:11:09 ID:UkLswZfw0









(´^ω^`) 「悪いけど、こいつ育ててくれんか?」

 











カエルの子はカエルの子のようです 終わり




o川* ー ;;;; ケーロケロケロ、キュッキュ♪

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