これを魔女の九九というようです - ⊂ブンツンドー⊃
- 100 名前:名無しさん[] 投稿日:2016/03/07(月) 17:51:52 ID:jbBr2g3w
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('、`*川「ねえ、デミタスは子供の頃運動は得意だった?」
(´・_ゝ・`)「え? 運動?」
淹れたて熱々のコーヒーを飲もうとしていたのに、ペニサスの一言によってそれはふいになった。
(´・_ゝ・`)「どうだったかなぁ」
答えつつ、ペニサスの視線を辿る。
どうやら彼女は目の前にあるショートケーキよりもテレビに夢中らしい。
('、`*川「今、秋よりも春に運動会をする学校が増えてるんだって」
(´・_ゝ・`)「へえ」
('、`*川「それで、さっきの答えは?」
(´・_ゝ・`)「可もなく不可もなく、だったと思うよ」
僕の頃の運動会といえば、短距離走に中距離走、障害物競走にパン食い競争、玉入れやあとはリレーだった。
今テレビでやっているような、ムカデ競走だのハリケーンだの、そういう変わった競技は一切なかったのだ。
(´・_ゝ・`)「ペニサスは、」
どうだったんだ、と聞きかけて、口を噤んだ。
(´・_ゝ・`)(そうだ、この子には記憶がないんだった)
自分の年さえも知らないペニサスに、学生時代の思い出を問うたところでそれはなんの意味もないのだった。
('、`*川「なあに?」
テレビから僕へと視線を移し、ペニサスはその先を促してきた。
(´・_ゝ・`)「魔女にも運動会とかそういうのはあるのかな」
今までの流れを無視し、僕はそう切り出した。
ペニサスは一瞬変な顔をし、それからショートケーキにくっついているフィルムを剥がし始めた。
- 101 名前:名無しさん[] 投稿日:2016/03/07(月) 17:55:43 ID:jbBr2g3w
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('、`*川「運動会はないけれど、ヴァルプルギスの夜っていう、春の訪れを祝うお祭があるわ」
くるくると、フィルムはフォークによって器用に巻き取られていく。
そのフィルムを、改めて広げたペニサスは生クリームを次々こそげとっていった。
('、`*川「世界中の魔女が集まって、どんちゃん騒ぎをするって師匠が言っていたわ」
(´・_ゝ・`)「どんちゃん騒ぎねえ」
意地の悪そうな顔をした魔女たちが、イヒイヒギャアギャアと笑いたてながら大鍋を囲う様を僕は想像してしまった。
きっとペニサスに言えば、そんなことないと頬を膨らませるに違いないのだが。
('、`*川「楽しいお祭だって聞いてるわよ」
(´・_ゝ・`)「へ、へえ」
心の中を読まれたような気分になり、一瞬どきりとした。
が、当のペニサスはショートケーキに関心が向いているようだった。
('、`*川「箒に乗ってレースをしたり、スクライングで隠された財宝を探したり、誰の使い魔が優秀かコンテストをしたりするんだって」
(´・_ゝ・`)(魔法を使う以外、やることはあまり人間と変わりがないな)
('、`*川「毎年行方不明になる魔女がいるくらい楽しくて賑やかなお祭なんですって」
(´・_ゝ・`)「それは本当に楽しいお祭なのかい……?」
- 102 名前:名無しさん[] 投稿日:2016/03/07(月) 17:56:42 ID:jbBr2g3w
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どう考えても危ない奇祭であった。
('、`*川「大丈夫よ、大体の魔女はすぐ帰ってくるって言ってたし」
(´・_ゝ・`)「いや残りはどこに行っちゃうんだそれ」
('、`*川「さあ」
あっけらかんとしたその返事に、僕は絶句した。
('、`*川「大丈夫よ、帰ってくるのが遅れてるだけだって言ってたし」
(´・_ゝ・`)(そんなお祭行きたくない……)
なんて思っても、彼女が行きたいと言えば僕はそれに着いていくしかないのだろう。
なにせ僕は、彼女の使い魔なのだから。
('、`*川「あーっ!」
(´・_ゝ・`)「あ、」
('、`*川「倒れちゃった……」
心底がっかりしたように、ペニサスはそう言った。
(´・_ゝ・`)「倒さずに食べようなんて無理な話だよ、ペニサスくん」
('、`*川「分かってるけどやってみたくならない?」
(´・_ゝ・`)「ならないよ」
僕はもう大人だからね、と付け加えてテレビを見る。
もう運動会の特集は終わってしまったらしい。
今度は政治家の汚職事件についての映像に切り替わっていた。
('、`*川「つまんない大人にはなりたくないわね」
(´・_ゝ・`)「ブラックが飲めないうちはまだ大丈夫だよ」
笑っているのがばれないように、僕は今度こそコーヒーを口にしたを
すっかり冷めてしまったそれは、いつもよりも苦い味がした。
- 103 名前:名無しさん[] 投稿日:2016/03/07(月) 17:57:42 ID:jbBr2g3w
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というわけで白の皆さんよろしくね