('A`)はっぴーえんどのようです

169 名前: ◆/KVxnknLxg[sage] 投稿日:2016/05/23(月) 21:19:51 ID:yqa.651A0
以下没部分
折角なので投下するけど蛇足です

170 名前: ◆/KVxnknLxg[sage] 投稿日:2016/05/23(月) 21:21:00 ID:yqa.651A0
私は恋愛と言うものがよくわからない。
友達との会話で誰々がカッコいいみたいな話になるけどそれすらついていけない。
恋とはどんな感情なんだろう。
漫画とかだと、甘酸っぱいらしいけど。
考えても、やっぱりよくわからない。

そんなことを考えながら歩いてたからだろうか。
気づいたときには目の前にトラックが迫ってきていた。
声すら出す暇がなかった。
気づいたときには私はドンっと弾かれていた。

......轢かれた。
最初はそう思った。
でもそれにしては、それほど痛くない。
手も動く。
足も動く。
身体中に感覚がある。
あるのは尻餅をついたときのちょっとした痛みだけ。
轢かれたにしては、おかしい。
混乱してうまく働かない頭を振り絞り、辺りを見渡してようやくあることに気がついた。
人が、血の海のなかにいた。

171 名前: ◆/KVxnknLxg[sage] 投稿日:2016/05/23(月) 21:21:54 ID:yqa.651A0
从; ゚∀从「っ!?だ、大丈夫ですか!?」


慌てて駆け寄り、声をかける。
だけど、反応してくれない。
それどころか目を閉じ、動かなくなる。


从; ゚∀从「......あ」


もう、どうすればいいのかわからない。
誰か、誰か来てくれ。
そうだ、誰かを呼ばないと。
早く誰かを。
助けを呼ばなければ。


从; ゚∀从「......あっ!救急車!」


ここでようやく、その存在を思い出す。
私はバカなのか。
一分一秒争う状況で。
早く、早くしないと。


从; ゚∀从(早く!)


自分のせいで、誰かが死ぬなんて、御免だ。
それも、命の恩人であるこの人を。
死なせたくなかった。

172 名前: ◆/KVxnknLxg[sage] 投稿日:2016/05/23(月) 21:22:53 ID:yqa.651A0
.........
......
...

从 ゚∀从「......はぁ」


あの事故から数日が経った。
まだ、私を助けてくれた人は目を覚まさない。


从 ゚∀从「このまま目覚めないなんてこと、ない......よね」


誰に言うでもなくポツリと呟く。
助けてくれた人なのに。
そのせいでこんな目に合わせてしまうなんて。
それも、見ず知らずの私のために。
命を懸けて助けてくれたのに。
なのに、私は彼のために何もできない。


从 ゚∀从「はぁ......」


今日も私は、彼のもとに花を届けにいく。
せめてもの償いのために。
そして、彼に会うために。

173 名前: ◆/KVxnknLxg[sage] 投稿日:2016/05/23(月) 21:23:56 ID:yqa.651A0
从 ゚∀从「......こんにちは、今日も来たよ」


扉を開け、病室に入る。
相変わらず病室には彼以外、誰も来ていない。
その理由はよくはわからないが、私にはその方が嬉しかった。
だって、二人っきりになることができるのだから。


从 ゚∀从「......ドクオさん」


顔にかかった髪を撫でる。
細い、ひ弱そうな印象を受ける顔立ちの彼。
私を助けてくれた、彼。
ああ、やっぱりだ。
彼の顔を見るたびに胸が苦しくなる。


从 ゚∀从「......ドクオさん」


話したこともないのに。
知り合ってすらないのに。
私は彼に、恋をした。

174 名前: ◆/KVxnknLxg[sage] 投稿日:2016/05/23(月) 21:24:47 ID:yqa.651A0
七つ目の花束を買ったその日。
つまり、事故から一週間が経ったその日。
病院につくと受付の人から彼が目が覚めたときいた。
その報告に私は思わず目から涙が溢れそうになる。

ああ、よかった。
彼は、助かったのか。
早く、早く会いたい。
廊下を走り、彼の病室へと急ぐ。
ああ、もうすぐ、もうすぐ会えるんだ。

ようやく、話すことができるんだ。
会ったらなんと言おう。
ありがとう?
ごめんなさい?
わからない。
わからないけど。
今はただ。
早く。
彼のもとへ。


从; ゚∀从「はぁ......はぁ......」


彼の病室の前に来る。
鼓動がはやくなり息が切れる。
走ったせいだけではない。
彼に会うのに、緊張してる。

175 名前: ◆/KVxnknLxg[sage] 投稿日:2016/05/23(月) 21:25:48 ID:yqa.651A0
胸の奥が苦しい。
早く会いたいのに、会いたくないような気もする。
もしこれであって嫌われたらどうしよう。
私のせいで入院することになったんだ。
嫌われても仕方ない。
いや、嫌われて当然なのかもしれない。
でも、だとしたら。
私は耐えきれない。
だって私は彼のことが。


从 ゚∀从「......いこう」


ああ、もう。
うだうだ考えるのはあまり性に合わない。
会おう。
会えば、分かる。
今はただ、祈るのみ。
どうか、私のことを。
受け入れてくれますように。

176 名前: ◆/KVxnknLxg[sage] 投稿日:2016/05/23(月) 21:26:38 ID:yqa.651A0
从 ゚∀从「っ!」


ガラリ、と部屋の扉を開ける。
いつもと変わらず彼しかいない病室。
だがひとつ違うのは。
彼が、目を開けていた。


从 ゚∀从「......あ」


从 ;∀从「あぁ......」


本当に、本当に目を覚ましていた。


从 ;∀从「ほ、本当に起きてる......」


涙が止まらない。
止めたくても、止まらない。
嬉しい。
嬉しい。
嬉しい。
ただ、その気持ちで一杯だった。


从 ;∀从「よ、よがっだー。も、もじめざめながったらどうじようかと......」


(;'A`)「......おおぅ」


言わなきゃいけない言葉はたくさんあるのにうまくまとまらない。
なんて、何て言おう。
何て言えば伝わるんだろうか。

177 名前: ◆/KVxnknLxg[sage] 投稿日:2016/05/23(月) 21:27:06 ID:yqa.651A0
ああ、ドクオさん。
私は。


(;'A`)「......ん、っと確か君は」


从 ;∀从「は、はいっ!わ、私!ハインっていいます!あなたに命を助けられました!」


(;'A`)「あ、うん」


从 ;∀从「ほんっとおおぉおおに!ありがとうございましたあ!」


そうだ、ありがとうだ。
助けてもらったのだ。
こんなんじゃ、とても足りないだろうけど。
何度もありがとうも言おう。
少しでも、私の思いが伝わるように。


('A`)「えっと、ハインさんでいいんだよね?」


从 ;∀从「は、はい!」


(;'A`)「......うん、とりあえず涙拭こっか」


......あ
ようやく、私の顔の現状を把握する。
私、今の顔、絶対大変なことになってる。
早く拭かなくては。

でも、よかった。
嫌われては、ないようだ。
その事に私は安堵していた。

178 名前: ◆/KVxnknLxg[sage] 投稿日:2016/05/23(月) 21:30:05 ID:yqa.651A0
そこから少し、話を続けていく。
二人っきりの病室で話をする。
ああ、さっきから胸がドキドキいっている。

彼の視線が私を捉えているのがよくわかる。
嬉しい。
心の底からそう感じる。
好きな人の視線を、世界を独占できることがこんなにも嬉しいことだなんて知らなかった。

ああ、ドクオさん。
私を、私をもっと、私だけを見てください。


('A`)「......言いたいことがあるなら言いなよ」


从; ゚∀从「へっ!?」


あれ?
もしかして今考えてること、顔に出てたのだろうか。
だとしたら恥ずかしすぎる。
だって私だけを見てくれなんて、そんな馬鹿げたことをいってしまったのだ。

顔が暑くなる。
あー、やだ。
もう、ダメかもしれない。
嫌われるかもしれない。
あぁ、私のバカ。
何をしているんだ。

179 名前: ◆/KVxnknLxg[sage] 投稿日:2016/05/23(月) 21:30:54 ID:yqa.651A0
('A`)「ん、あ、いや、ハインさんじゃなくて」


从 ゚∀从「へ?」


('A`)「君だよ」


彼の視線が私から外れる。
その視線の先。
そこには、何もない。
だけど、彼はまるでそこになにかがいるかのように話を続ける。

何がどうなってるのか、分からない。
でも、それよりも重要なことがある。
それは彼の視線。
その視線は私を見る目と違う。
その視線の意味。

心が痛む。
やめて。
ドクオさん、私じゃない人を、そんな目で見ないで。
私を見てよ。
私は、あなただけを見てるのに。
どうして。

180 名前: ◆/KVxnknLxg[sage] 投稿日:2016/05/23(月) 21:32:07 ID:yqa.651A0
その後、病室に先生が入ってきてその日の面会は終わった。
だけど、帰る気にはなれない。

当たり前だ。
彼は、私を見ていない。
彼が見ているのは見えないクールとかいう存在。
病室の扉の前から、病室の中の会話を盗み聞きする。
すると思った通りに彼はその見えないはずの存在について話始めた。

なるほど、黒髪の長髪か。
聞いた感じ、とても美人なのだろう。
顔は、私も負けてない......はず。
スタイルもまぁ、悪くない、と思う。
となると、髪。
流石にショートカットのこの髪を長髪にするのは無理がある。
つまり、手詰まり?


从 ゚∀从「はぁ......」


ため息をひとつつき、帰り道を歩く。
まあ、頑張って伸ばすしかないか。

181 名前: ◆/KVxnknLxg[sage] 投稿日:2016/05/23(月) 21:33:15 ID:yqa.651A0
いや、そもそも真似するのが間違いなんじゃないか?
そうだ、なに諦めようとしてるんだ。
彼はあの存在を妄想と拒絶している。
なら、そのうちに私を好きになってもらえばいい。
弱気になっちゃ、ダメだ。
相手は、単なる妄想なのだから。


从 ゚∀从(......うし!)


気合いを入れ、携帯をポケットから取り出す。
とりあえずやることはひとつ。
彼との時間を作るために、全部の予定をキャンセルする連絡をすることにした。

182 名前: ◆/KVxnknLxg[sage] 投稿日:2016/05/23(月) 21:33:55 ID:yqa.651A0
.........
......
...

それから毎日、私は病院に通った。
毎日、ドクオさんと会話した。
毎日、ドクオさんと笑った。
毎日、ドクオさんと遊んだ。
毎日、ドクオさんと過ごした。

ああ、毎日が充実している。
幸せで、溢れている。
でも、その幸せもどこか、欠けている。

理由はただひとつ。
彼の視線。
あれは、私だけを見ていない。
時折、何もないところをふと見るときがある。

ああ、ドクオさん。
どうしてそっちを見るんですか。
私を、私だけを見てください。
私なら、何でもしてあげられる。
でも、その存在はなにもしてくれない。

だから、私を愛して、私を見て。
その視線を、その愛する人を見る目を私にください。
でも、その祈りは届かない。
彼はまだ、私を見てくれない。

183 名前: ◆/KVxnknLxg[sage] 投稿日:2016/05/23(月) 21:34:36 ID:yqa.651A0
心が痛む。
でも、彼への気持ちはどんどんと膨れていく。
押さえきれないほどに、大きく、強くなっていく。

ああ、どうすれば。
彼は私を見てくれるのだろう。
どうすれば。
どうしても、彼は私ではなくあの存在を見てしまう。

二人っきりだと思っても。
あの存在がいるから。
あの存在がいるせいで。


从 ゚∀从「......邪魔、だなぁ」


ああ、そうか。
消しちゃえばいいんだ。

184 名前: ◆/KVxnknLxg[sage] 投稿日:2016/05/23(月) 21:35:30 ID:yqa.651A0
.........
......
...

彼が退院した。
めでたいことだ。
なのにテンションは下がる一方。
せっかくの二人の時間が終わってしまったのだ。
まだ、これからも入院してて欲しいと思ってしまう。
ああ、酷く醜いな、私。


从 ゚∀从「あ、ドクオさん!退院おめでとうございます!」


('A`)「あ、今日も来てくれたんだ」


从 ゚∀从「迷惑だった?」


('A`)「いや......嬉しいよ」


ドクオさんが私に微笑みかけてくれる。
私を見て、私に笑顔をくれる。
私のための笑顔。
ああ、嬉しい。
彼も私をようやく見てくれている。

185 名前: ◆/KVxnknLxg[sage] 投稿日:2016/05/23(月) 21:36:17 ID:yqa.651A0
......でも。


(; 'A)


ああ、まただ。
まだ、私以外を見ている。
まだ、足りないの?

うん、きっと、そうに違いない。
もっと、頑張らなくては。
そうすれば、いつか、きっと。
私だけを、見てくれるはず。
そうですよね、ドクオさん?

186 名前: ◆/KVxnknLxg[sage] 投稿日:2016/05/23(月) 21:38:42 ID:yqa.651A0
それからなんとかドクオさんを押しきり、彼の家に着いていくことができた。
一人暮らしの男の人の部屋に入る。
もうこれ、あれだ。
彼女みたいだ。

顔が赤くなりそうだ。
というか、顔が熱い。
多分もう、赤くなっている。
こういうとき、変な顔してないか不安になる。
これでもし変な顔をしてて、嫌われたらと考えると。



('A`)「......ハインさん?」


......
......
ん?
あれ?今、呼ばれた?



从; ゚∀从「......へっ!?」


私は何してるんだ。
今日ももっとアピールしようと思ってたのに。
こんな変なところ見られたら呆れられちゃうかもしれない。
もう、最悪だ。

187 名前: ◆/KVxnknLxg[sage] 投稿日:2016/05/23(月) 21:40:14 ID:yqa.651A0
从 ゚∀从(......あ)


でも、テンションが下がったお陰でやることを思い出した。
まあ、結果オーライかな?
このくらいのミス、取り返せるはず。

多分だけど。


从 ゚∀从「あ、ちょっとキッチン見させてもらいますね」


私はそういい、キッチンへと向かう。
ちょっとした、探し物。
大体どこら辺にあるかは想像できる。
だってドクオさんのことだ。
短い間だったがずっと見てたのだ。
彼のことは大分わかる。

188 名前: ◆/KVxnknLxg[sage] 投稿日:2016/05/23(月) 21:42:16 ID:yqa.651A0
その証拠に。


从 ゚∀从(......あった)


探し物は簡単に見つかった。
赤と白のカプセル。
忌々しい見えない女を消すためのものだ。
これを使い続ければ、見えない女を殺せる。
ちょっとずつじゃダメだ。
今すぐ、殺さないと。

負けたくない。
初めて好きになった人を、盗られたくない。
だから、私はなんだってする。


从 ゚∀从(......ふふっ)


さぁ、美味しいものを作ろう。
彼の退院祝いに。
薬が入ってることなど気づかないくらい美味しい料理を。
愛情がたっぷりこもったあなたのための料理を。
ドクオさん、だから私を見てくれますよね?

189 名前: ◆/KVxnknLxg[sage] 投稿日:2016/05/23(月) 21:42:51 ID:yqa.651A0
.........
......
...

なんで。
どうして。
訳が分からない。
なんで私じゃないの?
どうして私じゃないの?

今日は彼と二人でお出かけして、楽しみたかったのに。
だからこんなにお洒落をしてきたのに。

今、私は彼の部屋の前にいる。
でも、中には入らない。
いや、入れない。
彼は何もない空間を見つめている。
ああ、どうして。
その視線は私が浴びるはずのものだった。

なのに、なぜ。
ドクオさん。
気付いて。
私があなたを愛してること。
あなたのためならなんでもできる。
だから。
だから、そんな存在、早く忘れて。

190 名前: ◆/KVxnknLxg[sage] 投稿日:2016/05/23(月) 21:43:34 ID:yqa.651A0
彼は出掛けても様子は変わらなかった。
いや、むしろ悪化している。
どこか、少なくとも私ではなく何かを見つめている。
どうして?
今日は私と約束したのに。

嫌だ。
私を見て。

ドクオさん。
お願い。

ドクオさん。
こっちだよ。

ドクオさん。
どうして。

ドクオさん。
なんで。

ドクオさん。
ドクオさん。
ドクオさん。
ドクオさん。
ドクオさん。
ドクオさん。
ドクオさん。
ドクオさん。
ドクオさん。


从 ∀从「どうして」


ああ、もうダメだ。
こんなに近くにいるのに。
まるで一人っきり。
それは彼が私でなく他の人を見てるから。

191 名前: ◆/KVxnknLxg[sage] 投稿日:2016/05/23(月) 21:44:08 ID:yqa.651A0
耐えられない。
吐き気がする。
目眩がする。
助けてよ。
前のように。
ドクオさん。
私のヒーロー。
私だけの大切な人。


从 ∀从「どうして......私を見てくれないんですか?」


('A`)「......え?」


彼を抱きしめ、思わず本心が口からあふれでる。
声が震える。
体が震える。
なんでこんなに震えるんだろう。
ドクオさんに触れているのに。

でも。
それでも。
ドクオさんは振り向いてくれない。
どうして?
私はまた、傷ついているのに。
あのときのように私を助けてよ。
私を見てよ。
ねぇ、なんで。
なんで、私じゃないの?

192 名前: ◆/KVxnknLxg[sage] 投稿日:2016/05/23(月) 21:45:09 ID:yqa.651A0
ドクオさん。
ダメ。
ダメだよ、そんなの。
絶対。
だから。
否定してくれるはず。


从; ∀从「......好きなんですか?」


ああ、いってしまった。
でも、私は信じてる。
ドクオさんだもの。
絶対、分かってくれる。
こんなに好きなんだもの。
絶対、報われる。


(;'A`)「す、好きとかそんなの、あるわけないじゃないか......」


ああ。
良かった。
やっぱり、ドクオさんは分かってくれていた。
これで、これでようやく。
ようやく私を......

193 名前: ◆/KVxnknLxg[sage] 投稿日:2016/05/23(月) 21:45:38 ID:yqa.651A0
なんで?
......どうして。


从 ∀从「......なら」


......どうして。


('A`)「え?」


......どうして。


从 ∀从「どうして、私を見てくれないんですか?」


まだ、彼女を見ているの?

194 名前: ◆/KVxnknLxg[sage] 投稿日:2016/05/23(月) 21:46:23 ID:yqa.651A0
('A`)「......」


从 ∀从「私はドクオさんをずっと見てるのに、どうして......私じゃなくて彼女を見るんですか......」


('A`)「そんなこと」


ドクオさんの言葉がつまる。
否定の言葉がない。
つまり、それは。
いや、イヤ、嫌!
こんなの嘘に決まってる。


从 ∀从「......」


('A`)「......」


ドクオさん、ダメだよそんなの。
ああ、そうか。
もしかしたらドクオさんは勘違いしてるのかもしれない。
私があなたが好きだって気づいてないだけ。
うん、そうに違いない。
そうじゃないと、おかしいもの。

195 名前: ◆/KVxnknLxg[sage] 投稿日:2016/05/23(月) 21:47:16 ID:yqa.651A0
从 ∀从「......好きです」


('A`)「っ」


从; ∀从「私はドクオさんが好きです!だから、ドクオさんも私を好きになってください!私を見てください!」


('A`)「......」


私の全部をぶつける。
これで、ドクオさんは振り向いてくれる。
それで、ハッピーエンド。
全部、オールオッケー。
そうでしょ?

そうじゃないなら私は。
私はどうなる?
私はどうすればいい?
好きな人を奪われて、全部を失って。
そんなの、おかしい。
だから、ドクオさんは振り向いてくれる。

196 名前: ◆/KVxnknLxg[sage] 投稿日:2016/05/23(月) 21:48:18 ID:yqa.651A0
そう、信じてた。
でも、ドクオさんは振り向かない。
もう私に、残されているものは何もない。

全部、拒絶されてしまった。
ドクオさんが私を、受け入れてくれることはもう。
もう、ないのだ。


从 ∀从「......答えてくれさえ、しないんですね」


('A`)「......」


ああ、何なんだろう。
この気持ち。
泣きたいはずなのに涙が出ない。
叫びたいはずなのに声が出ない。

心が、空っぽ。
何も、感じられない。
この現実を、受け入れられない。

197 名前: ◆/KVxnknLxg[sage] 投稿日:2016/05/23(月) 21:48:47 ID:yqa.651A0
从 ∀从「......ごめんなさい」


そういい、私は早足で彼から離れる。
背中に視線は感じない。
ああ、彼はこんなときでも私を見てくれないのか。
何でダメだったんだろう。
何で私じゃなくて彼女なのだろう。
何で。
何で。

......あ。
そうか。


从 ∀从「......私、だからか」


ああ、そういうことなんですね。
わかりました。
あなたがそう、望むなら。


从 ゚∀从「......」


私は全部、叶えてあげる。


从 ゚∀从「ドクオさん」


私はあなたが好きだから。

198 名前: ◆/KVxnknLxg[sage] 投稿日:2016/05/23(月) 21:49:42 ID:yqa.651A0
.........
......
...

あれから、私は彼と暮らしている。
朝には彼のためにご飯を用意し、食べ終わったら洗濯、それから掃除、全部終わったら買い物をして最後に夕飯の準備。
あんなことがあったあとだから少し時間を置こうかと思い様子を見ていたが彼は一人だとなにもしようとしていなかった。

駄目ですよ、ドクオさん。
ちゃんとしないと。
でも、大丈夫。
私が全て、やりますから。


从 ゚∀从「〜♪」


今日もお母さんに教わった味噌汁を作る。
彼に美味しいと言われたから。
毎日美味しそうに食べてくれるから。


从 ^∀从「うん、出来た!」


彼がそろそろ起きる時間だ。
早く配膳しないと。

199 名前: ◆/KVxnknLxg[sage] 投稿日:2016/05/23(月) 21:50:38 ID:yqa.651A0
('A`)「......ん?」


あ、彼が起きた。
ほら、早く食べて。
私の愛情がたっぷり入った朝食を。


('A`)「おお、またクーが作ってくれたのか?」


('A`)「いやーいつも美味しいしほんと嬉しいよ」


('A`)「はは、嘘じゃないって」


('A`)「んじゃ、いただきます」


('A`)「ん、これ美味しいな」


('A`)「ははは、本当だって」


('A`)「いつも美味しいよ」


('A`)「うん、これも。これも。ほんとうまいわ」


ああ、良かった。
ちゃんと、食べてくれている。
美味しいと笑ってくれてる。
胸の奥が暖かい。
この気持ち、幸せだ。
私、今、幸せなんだ。
私の料理が彼を笑顔にしたんだ。
私が、私が。

ふふ、じゃあ、次は洗濯をしよう。
これも全部、ドクオさんのため。
でも大変なんかじゃない。
これが私の幸せ。
私と共に彼が生きている。
私は今、満たされているんだ。

200 名前: ◆/KVxnknLxg[sage] 投稿日:2016/05/23(月) 21:51:15 ID:yqa.651A0
あれから、数週間が経った。
どのくらい経ったかは覚えてない。
でも、髪が邪魔になるくらい長くなったから結構長かったのだろう。
まあ毎日が幸せで私にとってはとてつもなく短い時間だったが。

さてそれより。
最近ドクオさんの様子がおかしい。
ドクオさんのために念のため部屋においておいたカメラが役に立つときが来るとは思わなかった。
今日も彼に異常がないか確認するため、映像を確認していると彼がいつもと違う動きをし始めた。


('A`)「?......クー?」


('A`)


('A`)「ああ、探したぞ?どうしたんだ?」


どうやらドクオさん、彼女が見えなくなってきているようだ。
思わず、笑いそうになってしまう。

201 名前: ◆/KVxnknLxg[sage] 投稿日:2016/05/23(月) 21:51:54 ID:yqa.651A0
ああ、そうか。
薬が効き始めたんだ。
彼の顔に、不安が見てとれる。

ごめんなさい、ドクオさん。
そんな顔をさせてしまって。
でも、仕方ないんです。
私とあなたのために、必要なことなんです。

でも、分かってくれますよね?
だって、私たちのハッピーエンドのために必要なことなんですから。

ああ、ドクオさん。
あと少し、あと少しです。
だからもう少しだけ。
私は、あなたに辛い想いをさせることになってしまいます。
でも、絶対幸せになれますから。
だから、許してくれますよね?

202 名前: ◆/KVxnknLxg[sage] 投稿日:2016/05/23(月) 21:52:38 ID:yqa.651A0
またあれから何日経ったんだろうか。
髪はもう伸びに伸び、以前の私の髪型の原型はどこにも残されていないほどになった。

そしてそんな私の髪型が変化したように彼にもまた、変化が現れた。
今日も映像をつけると彼は絶叫していた。
顔はひどく絶望しており、悲壮としか言いようがない。

ああ、ドクオさん。
辛いんですね。
分かります。
私も、この気持ちが届かないと知ったとき心が壊れるかと思いました。

でも、大丈夫です。
私があなたを救います。
待っててくださいね。
すぐに、あなたのもとに行きます。
あなたの愛する人が、今。
会いに行きますから。

203 名前: ◆/KVxnknLxg[sage] 投稿日:2016/05/23(月) 21:53:27 ID:yqa.651A0
日も暮れ辺りが暗くなり、外灯がつき始めた頃。
私は彼の部屋にたどり着いた。
彼の家の鍵を開け中にはいる。

するとなかは電気をつけていないのか真っ暗であった。
暗闇のなか、目を凝らし辺りを見てみると奥にひとつ、うずくまる人らしきものが見える。
その姿を見て、私は思わず泣きそうになる。
彼が苦しんでいるのが辛くて。
そして、これから起きる出来事を考えて。
溢れそうに涙を必死に堪える。

ああ、ドクオさん。
ようやく。
ようやくです。
ようやく、私とあなたが本当に幸せになれるときが来ました。
さあ、顔を上げてください。
ドクオさん。
あなたが望む幸せが、ここにありますから。

204 名前: ◆/KVxnknLxg[sage] 投稿日:2016/05/23(月) 21:54:02 ID:yqa.651A0
彼に近づくためにゆっくりと歩く。
その音に気がついたのか、彼が顔を上げた。

その顔はひどく疲れていた。
その顔に心が痛む。
でも、それもこれで終わり。
さあ、ドクオさん。
私を、私を見て。


('A`)「......あ」


彼の表情が変わっていく。
何かに気がついたのか、驚きの表情を浮かべたかと思うとすぐにそれも歪み、涙を流し始めた。


('A;)「......ぁあ」


ああ、見てる。
その、その視線だ。
愛する人を見る目だ。
私が欲しかった、彼の視線。
私が欲しかった、彼の世界。
それがようやく、手に入ったんだ。

205 名前: ◆/KVxnknLxg[sage] 投稿日:2016/05/23(月) 21:54:45 ID:yqa.651A0
(;A;)「クー!」


「......ああ、私だよ。ドクオさん」


そう、私はクーだ。
ハインなんかじゃない。
ドクオさんに好かれないような女なんかじゃない。
あなたが大好きなクーだ。
あなたが望む、あなたが愛するクーだ。


(;A;)「あぁああああ!!」


この涙も。
この叫びも。
全部、私のために彼が出してくれている。
愛する、私のために。


(;A;)「クー!」


彼が私に駆け寄り、抱きついてきた。
彼が、私を求めてきてくれたのだ。
彼が抱き締めてくれている部分が暖かい。
私を愛してくれているのが伝わってくる。

ようやく、私の愛が伝わったのだ。
その事を再確認し、私はまた泣きそうになる。
私は、なんて幸せなんだ。

206 名前: ◆/KVxnknLxg[sage] 投稿日:2016/05/23(月) 21:55:36 ID:yqa.651A0
暗闇のなか、私と彼は抱き締めあう。


「もう二度と、離さないからな」


「うん、私も、絶対離さない」


「あぁ、あぁ!」


「私だけを見てね、ドクオさん」


「あぁ!」


ああ、私は今、満たされている。
こんな奇跡が起こるなんて。
私はもう、この幸せを手放すつもりはない。
だからこれからもこの幸せは続いていくだろう。
彼の側に私は居続ける。
ドクオさんが私の側にいてくれる。
ただそれだけで。
それだけでいい。
もう他に欲しいものなど、ない。

207 名前: ◆/KVxnknLxg[sage] 投稿日:2016/05/23(月) 21:56:02 ID:yqa.651A0
「幸せだ」


「うん、私も」


闇に包まれた部屋のなか。
二人っきりの世界で抱き締めあう。
いつまでも、いつまでも。
この幸せが続くように願いながら。
ああ、私、幸せだ。

208 名前: ◆/KVxnknLxg[sage] 投稿日:2016/05/23(月) 21:57:02 ID:yqa.651A0




        ハッピーエンド



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