-
50 名前: ◆/KVxnknLxg[] 投稿日:2016/03/27(日) 00:34:06 ID:dA/dAzGo0
-
.........
......
...
(*゚ー゚)「今日で退院ですね。すっかり元気になられたみたいで良かったです」
('A`)「あ、はい。今日までありがとうございました」
(*^ー^)「いえいえ」
事故から数週間経った。
体を元のように動かせるようになり退院することとなった。
あれからも毎日ハインさんが見舞いに来てくれていた。
そんなハインさんとの毎日が無くなるのは少し寂しい。
-
51 名前: ◆/KVxnknLxg[] 投稿日:2016/03/27(日) 00:34:50 ID:dA/dAzGo0
-
从 ゚∀从「あ、ドクオさん!退院おめでとうございます!」
('A`)「あ、今日も来てくれたんだ」
从 ゚∀从「迷惑だった?」
('A`)「いや......嬉しいよ」
ああ、今日もかわいい。
恐る恐る聞いてくるその仕草。
襲いたくなる。
入院してたせいで溜まってるし。
まあ襲ったところで俺、返り討ちにされそうだけど。
-
52 名前: ◆/KVxnknLxg[] 投稿日:2016/03/27(日) 00:35:22 ID:dA/dAzGo0
-
('A`)「んじゃ、帰りますかね」
从 ゚∀从「あっ!送りますよ!荷物とかありますよね?」
(;'A`)「い、いや荷物とかは親にやってもらえばいいし......というか女性に荷物持たせるってのは」
从 ゚∀从「気にしない気にしない。私を頼ってくださいよ!これ運べばいいんですよね?よっと」
あかん、この子優しすぎる。
というかうちの親どこいった。
俺、退院だぞ?
迎えに来いよ。
あ、でもそのお陰でハインさんと二人っきりか。
やっぱ来なくていいや。
-
53 名前: ◆/KVxnknLxg[] 投稿日:2016/03/27(日) 00:35:55 ID:dA/dAzGo0
-
( <●><●>)「ドクオさん」
お、なんだ先生。
せっかくこれからハインさんときゃっきゃうふふの二人っきりの世界にはいるところだったのに。
水を指しやがって。
テンション下がるわ。
('A`)「あっ、はい」
( <●><●>)「......薬、忘れずに飲んでくださいね」
('A`)「......っす」
-
54 名前: ◆/KVxnknLxg[] 投稿日:2016/03/27(日) 00:36:26 ID:dA/dAzGo0
-
......ああ、マジでテンション下がるわ。
チラリと視線を横にずらすと黒く、長く、そして綺麗な髪が目に入る。
まだ、消えない。
川 ゚ -゚)「ドクオ、退院、おめでとう」
......嬉しくねぇよばか野郎。
頭がズキズキと痛む。
気分が悪い。
胸の奥がざわつく。
ああ、なんてこった。
まだ俺は、完治していないようだ。
-
55 名前: ◆/KVxnknLxg[] 投稿日:2016/03/27(日) 00:36:58 ID:dA/dAzGo0
-
.........
......
...
从 ゚∀从「あっ、ドクオさんって独り暮らしだったんですね」
('A`)「あー、まぁ」
从 ゚∀从「いいなぁ、憧れるなぁ」
('A`)「そんないいもんじゃないけどね......っと荷物はそこにおいてもらえる?」
从 ゚∀从「あ、ここ?」
('A`)「そ、ありがとね」
从 ゚∀从「いえいえ、これくらい。もっと頼ってくれていいんですよ?」
('A`)「はは、これくらいで十分すぎるよ......ちょっと荷物整理するから待っててね」
从 ゚∀从「むぅ」
-
56 名前: ◆/KVxnknLxg[] 投稿日:2016/03/27(日) 00:37:30 ID:dA/dAzGo0
-
現在地、俺の家。
状況、女の子と二人っきり。
いかんよこれは。
相手はしかも美少女。
もうそれだけでビンビンですよ。
从 ゚∀从
('A`)「......ハインさん?」
从; ゚∀从「......へっ!?」
('A`)「どうかした?」
从 ゚∀从「あ、いや......ちょっとボーッとしてて......」
('A`)「?......まあ、いいや。片付け終わったよ」
从 ゚∀从「もうですか?......物、少なくないですか?この部屋の家具とかもそうですけど」
('A`)「え?......まぁ男の一人暮らしってこんなもんじゃない?」
从 ゚∀从「そう、なのかな?それだと......うーん......」
-
57 名前: ◆/KVxnknLxg[] 投稿日:2016/03/27(日) 00:38:03 ID:dA/dAzGo0
-
('A`)「どうしたの?」
从 ゚∀从「あ、いや......あ、ちょっとキッチン見させてもらいますね」
('A`)「?」
从 ゚∀从「......んー」
('A`)「えーと」
何してるんだろ。
なにか探してるみたいだけど。
あそこにはエロ本隠してないから荒らされてもいいけどさ。
......あ。
俺、事故前のときエロ本ちゃんと隠してないじゃん。
普通に棚にいれっぱなしじゃん。
いかん、変な汗が出てきた。
どうしよう、今のうちに移動させるか?
いやでもそれはそれで見つかりそうな気もするが。
-
58 名前: ◆/KVxnknLxg[] 投稿日:2016/03/27(日) 00:38:57 ID:dA/dAzGo0
-
从 ゚∀从「ドクオさーん」
(;'A`)「ひゃいっ!」
从; ゚∀从「......どうしたの?」
('A`)「え?あ、い、いや?べ、別に?」
从 ゚∀从「??」
怪しまれてる。
いかん。
これはいかんぞ。
ここでエロ本なんて見つかったら間違いなく嫌われる。
こんな風に接してくれる女性なんてこの先会える気がしない。
何としてでも死守しなくては。
-
59 名前: ◆/KVxnknLxg[] 投稿日:2016/03/27(日) 00:39:28 ID:dA/dAzGo0
-
('A`)「そ、それよりさ!何か探してるの!?」
从 ゚∀从「え?あ......ん、いや探してるって言うか何が足りないか見てるって感じで」
('A`)「足りない?」
从 ゚∀从「......その、退院祝いに何か料理しようかなって思ってて」
(*'A`)「えっ!マジで!?」
从; ゚∀从「あっ、でもキッチン勝手に借りちゃ迷惑ですよね!ご、ごめんなさい!」
('A`)「いやいやいや!使っちゃってください!思う存分使っちゃってください!めっちゃ作ってくれたら嬉しいです!」
从; ゚∀从「......ほ、ほんとですか?」
('A`)「もちろん!」
从 ゚∀从
从* ゚∀从「じゃ、じゃあこれから買い物に行ってくるんで、た、楽しみにしててください」
(*'A`)
-
60 名前: ◆/KVxnknLxg[] 投稿日:2016/03/27(日) 00:40:12 ID:dA/dAzGo0
-
ええそりゃもう楽しみにしてますとも。
例え何が出てきても美味しくいただかせてもらいます。
あ、でも勿体なさすぎて食べれないかも。
まあなんにせよ、心踊る。
今日は、最高の日になりそうだ。
(*'A`)「......楽しみだなぁ」
川 ゚ -゚)「随分楽しそうだな、ドクオ」
......気のせいだったようだ。
一気に気分が落ち込む。
胸の奥がモヤモヤして、頭がズキズキする。
気分が、悪い。
ああ、最悪だ。
-
61 名前: ◆/KVxnknLxg[] 投稿日:2016/03/27(日) 00:40:53 ID:dA/dAzGo0
-
('A`)「......」
川 ゚ -゚)「好きなのか?」
うるせえ。
('A`)「......」
川 ゚ -゚)「ふむ、それは困ったな」
何がだよ。
('A`)「......」
川 ゚ -゚)「私も君のことが好きだからな」
......やめてくれ。
-
62 名前: ◆/KVxnknLxg[] 投稿日:2016/03/27(日) 00:41:25 ID:dA/dAzGo0
-
('A`)「......薬」
先生からもらった薬を探す。
早く、気分を落ち着かせたい。
早く、はやく、はやく。
焦ってるせいか、なかなか見つからない。
おかしい、貰った荷物はここに置いたはずなのに。
川 ゚ -゚)「ドクオ」
('A`)「っ!?」
急に後ろから抱きつかれる。
女性の柔らかい感触が、背中から伝わる。
暖かな体温が、背中から伝わる。
まるでそこに、誰かがいるかのように。
なにもそこに、いないはずなのに。
-
63 名前: ◆/KVxnknLxg[] 投稿日:2016/03/27(日) 00:42:00 ID:dA/dAzGo0
-
川 - -)「......」
('A`)「......あ」
ただ、抱き締められる。
心が、安らいでいくのを感じる。
頭痛が消えていくのを感じる。
胸の奥が、熱くなる。
抱き締め返したくなる。
でも、ダメなんだ。
('A`)「......やめてくれ」
川 ゚ -゚)「......何故だ?」
('A`)「......お前は、存在しない」
川 ゚ -゚)「私は、ここにいるぞ?」
('A`)「いない」
川 ゚ -゚)「君に見えているんだ。君が感じているんだ。なら、いいじゃないか」
('A`)「......」
-
64 名前: ◆/KVxnknLxg[] 投稿日:2016/03/27(日) 00:42:34 ID:dA/dAzGo0
-
口の中が渇いていく。
言葉がでない。
心臓の鼓動が早くなる。
ダメだ。
このままじゃ、ダメなんだ。
川 ゚ -゚)「......ドクオ?」
('A`)「......あ」
ようやく、見つけた。
キッチンのコンロの近くにポツリと。
赤と白の小さなカプセルがそこにあった。
その中から数粒を掌にのせる。
軽いはずなのに、重い。
早く飲まなきゃ、いけないのに。
腕が、思うように動かない。
-
65 名前: ◆/KVxnknLxg[] 投稿日:2016/03/27(日) 00:43:16 ID:dA/dAzGo0
-
川 ゚ -゚)「......そう、まだ、ダメなんだ」
('A`)「......」
川 ゚ -゚)「......でも、忘れないで」
薬を無理矢理飲み込んだその瞬間。
愛してる。
そう聞こえた気がした。
でもそれは、気のせいだろう。
だってこれは、全部、俺の妄想なんだから。
だからこの、胸の奥の不快感も、頭の中から彼女の顔が消えないのも。
全部、ありはしないんだ。
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66 名前: ◆/KVxnknLxg[] 投稿日:2016/03/27(日) 00:43:51 ID:dA/dAzGo0
-
.........
......
...
トントンと何かを刻む音が部屋に響く。
グツグツと何かを煮込む音がする。
そしてその音の方にはエプロンを着た天使がいる。
うん、いい。
从 ゚∀从「〜♪」
相変わらずの音程の微妙にずれた鼻歌がさらに可愛さを倍増させる。
思わず頬が緩くなる光景だ。
('A`)「何か手伝おっか?」
从 ゚∀从「え?いいよ、今日はドクオさんのお祝いなんだから」
('A`)「ん......じゃあお言葉に甘えて」
もう少し、ハインさんを視姦することにしよう。
エロ本にはないリアルなエロが、そこにある。
俺は今後のためにもしっかりとこの光景を脳にインプットすることにしよう。
うん、それがいい。
-
67 名前: ◆/KVxnknLxg[] 投稿日:2016/03/27(日) 00:44:51 ID:dA/dAzGo0
-
从 ゚∀从「......っし、出来た!」
('A`)「おおっ!」
从 ゚∀从「今そっち持ってくからー」
(*'A`)
ああ、俺って幸福者だ。
神様、ありがとう。
こんな天使をこの世に産んでくれてありがとう。
从* ゚∀从「さ、食べよっか」
(*'A`)「うん!」
-
68 名前: ◆/KVxnknLxg[] 投稿日:2016/03/27(日) 00:45:23 ID:dA/dAzGo0
-
食卓に並べられた料理はどれも本当に美味しくて。
それをハインさんと一緒に食べれて。
ああ、なんて素晴らしい時間なんだ。
「......」
('A`)「......」
从 ゚∀从「どうかした?」
('A`)「あ、いや......何でもない」
-
69 名前: ◆/KVxnknLxg[] 投稿日:2016/03/27(日) 00:46:14 ID:dA/dAzGo0
-
そう、何でもない。
こんな幸せな時間に、二人っきりの部屋なのかで。
他の女性の声が聞こえたり、別の女性が見えたりするはずがない。
川 ゚ -゚)「......ドクオ」
('A`)「......」
川 ゚ -゚)「......私を、見てくれ」
それが例え、俺のすぐ横にいても、だ。
-
70 名前: ◆/KVxnknLxg[] 投稿日:2016/03/27(日) 00:46:47 ID:dA/dAzGo0
-
从 ゚∀从「んじゃ、洗いますかな」
('A`)「いや、それくらい俺が」
从 ゚∀从「いーのいーの、私を頼って」
('A`)「むぅ......」
なにもしないってのも辛いが。
ここは好意に甘えるとしよう。
まあハインさんを視姦出来るのは嬉しいけど。
......うん、最低だな俺。
改めてそう思う。
-
71 名前: ◆/KVxnknLxg[] 投稿日:2016/03/27(日) 00:47:19 ID:dA/dAzGo0
-
('A`)「ふぅ......」
川 ゚ -゚)「疲れてるな」
誰のせいだと思ってんだこの野郎。
('A`)「......」
川 ゚ -゚)「失礼するぞ」
クールは静かに俺のとなりに座る。
チラリと横を見ると彼女の綺麗な顔がすぐ近くに見えた。
思わず、ドキリとする。
川 ゚ -゚)「......ふふっ」
('A`)「?」
-
72 名前: ◆/KVxnknLxg[] 投稿日:2016/03/27(日) 00:47:53 ID:dA/dAzGo0
-
川 ゚ ―゚)「もっと見てもいいんだぞ?」
('A`)「......」
からかうように彼女は笑う。
でも、そんな姿も綺麗で。
川 ゚ -゚)「少し、肩を借りるぞ」
('A`)「......あ」
彼女がしなだれかかってくる。
触れ合っているところが、温かい。
胸の奥がざわついている。
川 ゚ -゚)「好きだ」
('A`)「......」
-
73 名前: ◆/KVxnknLxg[] 投稿日:2016/03/27(日) 00:48:33 ID:dA/dAzGo0
-
川 ゚ -゚)「ドクオ......私は君が好きだ」
('A`)「......」
川 ゚ -゚)「君は?」
('A`)「......俺は」
俺の、気持ちは。
从 ゚∀从「ドクオさん!」
-
74 名前: ◆/KVxnknLxg[] 投稿日:2016/03/27(日) 00:49:04 ID:dA/dAzGo0
-
('A`)「っ!?な、なに!?」
从 ゚∀从「何じゃないですよ。さっきから呼んでたのに......」
顔を上げるとそこにはむくれたハインさんがいた。
危なかった。
あのままだったら俺は。
......俺は。
......
いや、考えないことにしよう。
それがいい。
そうじゃなきゃ、ダメだ。
('A`)「それで、どうしたの?」
从 ゚∀从「ん、いやその......今日なんですけど......」
('A`)「......?」
-
75 名前: ◆/KVxnknLxg[] 投稿日:2016/03/27(日) 00:49:36 ID:dA/dAzGo0
-
从 ゚∀从「泊まってっちゃ、駄目ですか?」
(゚A゚)
もう、これあれだよな?
事実上の夜オッケーですサインってことでいいんだよな?
大人の階段登っていいんだよな?
从 ゚∀从「......やっぱ駄目ですか?」
('A`)「......い、いいよ。と、泊まってって」
从* ゚∀从「あ......はい」
心臓の音がうるさい。
顔が熱くなるのを感じる。
ふとハインさんの顔を見ると彼女も真っ赤になっていた。
......もう、勘違いしてもいいよな。
-
76 名前: ◆/KVxnknLxg[] 投稿日:2016/03/27(日) 00:51:33 ID:dA/dAzGo0
-
(*'A`)「......」
从* ゚∀从「......」
ただただ見つめ合う。
ただそれだけなのに。
こんなにも胸が高鳴るのは。
ああ。
そうか。
俺は今、恋をしているんだ。
-
77 名前: ◆/KVxnknLxg[] 投稿日:2016/03/27(日) 00:52:13 ID:dA/dAzGo0
-
.........
......
...
......
......ん?
なんだか、いい匂いがする。
腹を刺激する、とてもいい匂いだ。
一度、そう感じるともう止まらない。
腹がぐうぐう鳴り始め、寝てるどころではなくなった。
目をうっすらと開け、時計を確認するとまだ時間は6時と早くいつも起きる時間より1時間以上早い。
道理でまだこんなに眠いわけだ。
('A`)「......んぁ?」
从 ゚∀从「あ、起こしちゃった?」
('A`)「......?......あ、そっか」
-
78 名前: ◆/KVxnknLxg[] 投稿日:2016/03/27(日) 00:53:14 ID:dA/dAzGo0
-
そうだ、昨日、ハインさん泊まってったんだった。
すっかり忘れてた。
結局、昨日は何もなかったから忘れてた。
うん、昨日、何もなかったんだよな。
......別に悔しくはない。
ちょっと目から汗が出る程度だ。
('A`)「ハインさん、おはよ」
从 ゚∀从「ん、おはよ。ごめん、またキッチン使わせてもらってる」
('A`)「ん......で、これってもしかしなくても朝食?」
从* ゚∀从「え?う、うん。泊めさせてもらったしこれくらいのことはしないと」
('A`)「マジか、ありがとう」
-
79 名前: ◆/KVxnknLxg[] 投稿日:2016/03/27(日) 00:53:46 ID:dA/dAzGo0
-
ああ、もう、幸せだなぁ。
こんな幸せな朝はいつぶりだろ。
嫁さんができたらこんな風に朝を毎日迎えることになるんだろうか。
朝食の匂いに誘われて目が覚めて、キッチンにはエプロン姿の嫁さんがいて朝からうまい朝食が食える。
なんて、なんて素晴らしいんだ。
ああ、結婚したい。
急激に結婚したくなってきた。
('A`)「......」
もし、もしもだ。
本当にこれが勘違いじゃないのなら。
そんな未来があるのだろうか。
-
80 名前: ◆/KVxnknLxg[] 投稿日:2016/03/27(日) 00:54:23 ID:dA/dAzGo0
-
......ハインさんがいる日常か。
悪くない。
てか、最高。
从 ゚∀从「んじゃ、持ってくよ」
('A`)「ん、手伝うよ」
从* ゚∀从「ん、ありがと」
('A`)「お、和食か。いいね」
从 ゚∀从「朝はご飯に味噌汁の和食が一番ですから!」
('A`)「ん、確かに。俺もそう思うわ。まあ朝食あるだけでありがたいんだけどね」
从 ^∀从「ふふっ。なら、作ってよかった」
-
81 名前: ◆/KVxnknLxg[] 投稿日:2016/03/27(日) 00:55:15 ID:dA/dAzGo0
-
ただまあ、妄想に留めておくけど。
だって怖いじゃん。
言葉にして、拒絶された日には死ぬ。
相手の気持ちなんて、言葉にしてくれなきゃ分からん。
('A`)(......)
川 ゚ -゚)「ん?」
ちらりと、視線をハインからそらすとそこにまだ彼女がいた。
真っ直ぐと想いをぶつけてきた彼女が。
......何を考えてるんだ俺は。
あれは、存在しないんだ。
考えちゃいけない。
今は目の前のご飯のことを楽しもう。
-
82 名前: ◆/KVxnknLxg[] 投稿日:2016/03/27(日) 00:56:24 ID:dA/dAzGo0
-
.........
......
...
('A`)「ご馳走さま、ほんと、料理うまいな」
从* ゚∀从「そ、そうかな......」
('A`)「いや、ほんとうまいよ。ありがとな。味噌汁とか大変だったろ」
从 ゚∀从「え?」
('A`)「ほらこれ、煮干しから出汁取ってるんじゃないの?」
从 ゚∀从
('A`)「どうかした?」
-
83 名前: ◆/KVxnknLxg[] 投稿日:2016/03/27(日) 00:57:01 ID:dA/dAzGo0
-
从* ゚∀从「あ......う、嬉しくって」
('A`)「へ?」
从* ゚∀从「その......味わって食べてくれてるんだなって......」
そりゃハインさんの手料理ですもの。
どんな状況でも味わいますわ。
('A`)「うん、本当にうまかったよ。ごちそうさま。ほんとにありがと」
从* ゚―从
ああ、照れてる顔も可愛いなぁ。
-
84 名前: ◆/KVxnknLxg[] 投稿日:2016/03/27(日) 00:57:44 ID:dA/dAzGo0
-
('A`)「......それで、これからなんだけど何かする?」
从 ゚∀从「あ、それなんだけど」
('A`)「ん?」
从 ゚∀从「ほら、入院してたときにさ、出かける約束してたでしょ?」
('A`)「あぁ、そういえば」
从 ゚∀从「今日、どうかな?......まあ一旦家に帰ってからになるから午後からになっちゃうけど......」
('A`)「んー」
从 ゚∀从「ダメ......かな?」
-
85 名前: ◆/KVxnknLxg[] 投稿日:2016/03/27(日) 00:58:25 ID:dA/dAzGo0
-
......それは、反則でしょう。
その、上目遣い。
断れるわけがない。
どんな男でも頷いてしまうわこんなん。
(*'A`)「い、いいですよ」
......よく考えたらそもそも、断る理由もないな、うん。
しかもハインさんとのデートだぞ。
こっちが金払って頭下げて頼みたいぐらいだ。
从* ゚∀从「ほ、ほんと?」
(*'A`)「う、うん......」
从* ゚∀从「じゃ、じゃあ一旦家帰って準備してくるから......」
(*'A`)「うん、じゃあまた」
从* ^∀从「うん」
-
86 名前: ◆/KVxnknLxg[] 投稿日:2016/03/27(日) 00:59:16 ID:dA/dAzGo0
-
(*'A`)
(*'A`)「......楽しみだなぁ」
ハインさんが出ていった後にポツリと呟く。
まさかたった数日のうちにこんなに俺の人生が変わるなんて思ってもみなかった。
もうこれ俺、リア充爆発しろとか言えないな。
(*'A`)「はぁ......」
川 ゚ -゚)「嬉しそうだな」
(*'A`)「......」
川 ゚ -゚)「君は彼女が好きなのか?」
('A`)「......」
-
87 名前: ◆/KVxnknLxg[] 投稿日:2016/03/27(日) 00:59:48 ID:dA/dAzGo0
-
川 ゚ -゚)「まぁ、だとしても諦めはしないが」
('A`)「......」
川 ゚ -゚)「私は、何があろうと君を愛し続けるよ」
......やめてくれ。
頼むから、そんな言葉を俺にぶつけないでくれ。
胸の奥がざわつく。
違う。
なにも、感じでない。
なにも、聞こえない。
感じちゃいけないんだ。
聞こえちゃいけないんだ。
-
88 名前: ◆/KVxnknLxg[] 投稿日:2016/03/27(日) 01:00:21 ID:dA/dAzGo0
-
川 ゚ -゚)「私を、見てくれ」
('A`)「......」
先程まであんなに心が踊っていたのに。
今も楽しみにしているはずなのに。
何で、俺。
こんなに、苦しんでるんだ。
川 ゚ -゚)「......待ってるから」
('A`)「......何をだよ」
川 ゚ -゚)
......答えは、帰ってこない。
ただ、彼女は俺を見つめ続ける。
俺からの、言葉を待つように。
真っ直ぐ。
ただ、ひたすらに俺のことを。
そして俺も。
そんな彼女から。
視線をそらすことが出来なかった。
-
89 名前: ◆/KVxnknLxg[] 投稿日:2016/03/27(日) 01:00:53 ID:dA/dAzGo0
-
ただひたすらの見つめ合い。
言葉はない。
それでも、胸の鼓動は早くなる。
その意味は、分かっている。
その理由も、分かっている。
ただ、分からないフリをしているだけ。
狂ってないフリを、しているだけ。
脳裏に浮かぶのはハインさんの顔。
ただそれも、すぐに彼女の顔で消されていく。
ああ、俺は。
いったい、どうしちまったんだ。
-
90 名前: ◆/KVxnknLxg[] 投稿日:2016/03/27(日) 01:02:09 ID:dA/dAzGo0
-
.........
......
...
从 ゚∀从「お待たせしました!」
('A`)「ん、早かったね」
気がつくと時計の針は昼を指し示していた。
......俺は、さっきまで何をしていた?
......
思い、出せない。
いや、それは正しくないか。
正確には思い出したくない。
思い出してはいけない。
('A`)「......さ、行こうか」
从 ゚∀从「え?......あっ!はい!」
だから、早く、忘れてしまおう。
あんなに楽しみだったんだ。
楽しめば、忘れられるはずだ。
頭を空っぽにして。
バカみたいに笑えば。
そうすれば。
頭から離れない彼女の顔も。
この胸の奥の感情も。
全部、なくなる。
なくなる、はず。
なくさなきゃ、いけないんだ。
-
91 名前: ◆/KVxnknLxg[] 投稿日:2016/03/27(日) 01:03:27 ID:dA/dAzGo0
-
从; ゚∀从「ど、ドクオさん!」
('A`)「え?......あ」
声をかけられ、ようやく自分が早足になっていたことに気がついた。
......何を焦っているんだ、俺は。
今日はゆっくり、楽しむつもりだっただろ。
折角のハインさんとの、美少女との時間で。
人生ではじめてのデートなんだ。
あんなに心踊った予定だったんだ。
じっくり、楽しまないと。
('A`)「......ご、ごめんごめん!ちょっと俺、楽しみすぎて、焦ってたみたいだ」
从 ゚∀从「え?あ、あー!そうなんですか?」
从 ^∀从「そんなに楽しみにしててくれたなら、嬉しいや」
('A`)
-
92 名前: ◆/KVxnknLxg[] 投稿日:2016/03/27(日) 01:04:24 ID:dA/dAzGo0
-
変わらない、綺麗な彼女の笑顔。
だが、胸は高鳴らない。
痛い。
この気持ちは、なんなんだ。
从 ゚∀从「......いきましょ!今日は私が恩返しするんですから!」
('A`)「......うん」
視界の端に黒髪が見える。
......ドクン。
胸が高鳴る。
目を、奪われる。
何もない、虚空に。
誰にも見えない、少女に。
俺だけの、少女に。
-
93 名前: ◆/KVxnknLxg[] 投稿日:2016/03/27(日) 01:04:56 ID:dA/dAzGo0
-
「......んで」
('A`)「......え?」
从 ゚∀从「ほらドクオさん!行きますよ!」
(;'A`)「あ......うん」
気のせい......だろうか。
今の声。
何かに絶望したかのようなか細い声。
それが、彼女の方から聞こえた気がした。
......
気のせい、だろう。
最近、俺は疲れすぎているのだ。
そうだ、きっとそうに違いない。
生活がここまで変わったんだ。
そりゃ疲れるよな。
女性とこんな風に話したりするなんて今までなかったから。
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94 名前: ◆/KVxnknLxg[] 投稿日:2016/03/27(日) 01:05:51 ID:dA/dAzGo0
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('A`)「......あ」
从 ゚∀从「ドクオさん?」
('A`)「ん、いや......まずどこにいこっか?」
从 ゚∀从「んー、とりあえずお店に行きませんか?」
('A`)「うーん......いいね、そうしよう」
俺は、疲れてるのか?
この関係に。
この、ハインさんとの関係に。
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95 名前: ◆/KVxnknLxg[] 投稿日:2016/03/27(日) 01:06:28 ID:dA/dAzGo0
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('A`)(......でも)
嫌な訳じゃない。
嫌なわけがない。
でも、こんなに疲れてしまうのは何故なんだ。
......そんなの、分かってる。
分かってるんだ。
だから視線が、視界の端に映る黒髪へと、引かれていく。
('A`)「......」
川 ゚ -゚)「......ん?」
こちらが見ていたのに気がついたのか、彼女もこちらを見つめ返してくる。
真っ直ぐ、その綺麗な瞳で。
その瞳に俺しか写っていないかのように。
真っ直ぐ、ただ、ひたすらに。
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96 名前: ◆/KVxnknLxg[] 投稿日:2016/03/27(日) 01:07:18 ID:dA/dAzGo0
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川 ゚ -゚)「......深呼吸をしたらどうだ?」
('A`)「え?」
川 ゚ -゚)「酷い顔をしている。少し、落ち着け」
('A`)「......」
川 - -)「ドクオ、大丈夫だから」ギュッ
('A`)「あ......」
抱き締められる。
なんだ、これ。
心の奥にあったモヤモヤしていたものが、消えていく。
落ち着いていく。
暖かい。
ずっと、このままでいたい。
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97 名前: ◆/KVxnknLxg[] 投稿日:2016/03/27(日) 01:07:50 ID:dA/dAzGo0
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ああ、でもダメだ。
ダメなんだ。
俺は。
だって、俺は。
俺は......
「ドクオさんっ!」
('A`)「っ!?」
後ろからドンと抱きつかれる。
顔は見えない。
だがこの声、間違いない。
ハインさんだ。
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98 名前: ◆/KVxnknLxg[] 投稿日:2016/03/27(日) 01:08:33 ID:dA/dAzGo0
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('A`)「は、ハインさん?どうかしましたか?」
「......して」
('A`)「え?」
泣いているのだろうか。
声が震えている。
体が震えている。
「どうして......私を見てくれないんですか?」
('A`)「......え?」
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99 名前: ◆/KVxnknLxg[] 投稿日:2016/03/27(日) 01:09:36 ID:dA/dAzGo0
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「私を......見てください」
震える声で。
すがるような声で。
俺にそう、彼女は頼んでくる。
見てくれ?
どういうことだ?
とりあえず、振り返ればいいのか?
('A`)「え、えっと......」
体は抱きつかれているから動かせない。
だから顔だけを動かし、後ろを見ようとする。
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100 名前: ◆/KVxnknLxg[] 投稿日:2016/03/27(日) 01:10:09 ID:dA/dAzGo0
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川 ゚ -゚)「ドクオ」
('A`)「え?」
だが。
それを止めるように彼女は俺に声をかけてきた。
無視すればいい。
無視すればよかった。
だけど。
俺は、振り向くのをやめて彼女の方を向いてしまった。
「......どうして」
('A`)「あ......」
バカなのか、俺は。
また、ハインさんを傷つけて。
何がしたいんだよ、俺。
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101 名前: ◆/KVxnknLxg[] 投稿日:2016/03/27(日) 01:10:42 ID:dA/dAzGo0
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「......好きなんですか?」
('A`)「へ?」
「......いるんですよね、そこに」
(;'A`)「な、へ?」
何を、言ってるんだ?
そこに、いるかだと?
確かに、俺の目にはそこに何かがいるといっている。
だけどそれは、俺だけにしか見えない、存在しない存在のはず。
でも、じゃあなんで。
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102 名前: ◆/KVxnknLxg[] 投稿日:2016/03/27(日) 01:11:15 ID:dA/dAzGo0
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(;'A`)「ハインさん、まさか見えてる?」
「......ううん」
(;'A`)「じゃあ......」
「......黒髪の女性のこと。先生に相談してるの、聞いてしまったんです」
(;'A`)「......」
思い当たったのは目を覚めたその日。
先生に相談したとき。
頭がうまく回っていなかったときとはいえ迂闊だった。
まさか聞かれてたとは。
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103 名前: ◆/KVxnknLxg[] 投稿日:2016/03/27(日) 01:12:53 ID:dA/dAzGo0
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だが、だとしてもだ。
(;'A`)「す、好きとかそんなの、あるわけないじゃないか......」
そう、だって。
そこには何もない。
だから俺も何も感じてない。
そう、そのはずなんだ。
「......なら」
('A`)「え?」
「どうして、私を見てくれないんですか?」
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104 名前: ◆/KVxnknLxg[] 投稿日:2016/03/27(日) 01:13:26 ID:dA/dAzGo0
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('A`)「......」
「私はドクオさんをずっと見てるのに、どうして......私じゃなくて彼女を見るんですか......」
('A`)「そんなこと」
ない、と言おうとして口を閉じる。
そんなこと言っても、無意味だ。
だって俺は今もなお、ハインさんを見ていないのだから。
「......」
('A`)「......」
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105 名前: ◆/KVxnknLxg[] 投稿日:2016/03/27(日) 01:14:02 ID:dA/dAzGo0
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「......好きです」
('A`)「っ」
「私はドクオさんが好きです!だから、ドクオさんも私を好きになってください!私を見てください!」
('A`)「......」
誰かに愛されること。
誰かに好きだと言われること。
何度も夢を見たことがあった。
だけど俺は、それに何も感じられない。
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106 名前: ◆/KVxnknLxg[] 投稿日:2016/03/27(日) 01:14:50 ID:dA/dAzGo0
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......ああ、そうか。
「......答えてくれさえ、しないんですね」
('A`)「......」
もう、俺は。
狂ってしまっていたんだ。
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107 名前: ◆/KVxnknLxg[] 投稿日:2016/03/27(日) 01:15:26 ID:dA/dAzGo0
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「......ごめんなさい」
彼女が背中から離れ、走り去っていく音が聞こえる。
だけど俺は、それを追いかけない。
視線も、追わない。
ただ、目の前の彼女を見つめる。
('A`)
川 ゚ -゚)
ただ、ひたすらの見つめ合い。
すると、心の奥からふとひとつの言葉が浮かんでくる。
言ってはいけない。
頭のどこかでそんな声が聞こえた気がした。
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108 名前: ◆/KVxnknLxg[] 投稿日:2016/03/27(日) 01:16:14 ID:dA/dAzGo0
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だけどもう、押さえられない。
狂ってしまったものはもう、戻らない。
('A`)「......俺はお前が好きだ」
川 ゚ -゚)「......」
川 - -)「ああ」ギュッ
だから狂ったことを受け入れる。
ただ、目の前のクールを抱き締める。
ああ、暖かい。
腕の中に温もりがある。
それは、そこに何かがいると言う存在の証。
('A`)「......お前は、ここにいるんだな」
川 - -)「ああ、いるとも。今までも、そしてこれからも」
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109 名前: ◆/KVxnknLxg[] 投稿日:2016/03/27(日) 01:16:51 ID:dA/dAzGo0
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('A`)「うん......ありがとう」
川 ゚ -゚)「ふふっ、なんだそれは?何に対してだ?」
('A`)「俺を愛してくれたことに対して、かな?」
川 ゚ -゚)「似合わないな」
('A`)「駄目か?」
川 ゚ -゚)「いや、もっと好きになった」
('A`)「そっか」
ああ、心が暖かい。
体が、軽い。
幸せだ。
こんな近くに幸せがあったのに。
俺は何をしてたんだ。
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110 名前: ◆/KVxnknLxg[] 投稿日:2016/03/27(日) 01:18:37 ID:dA/dAzGo0
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('A`)「ずっと、一緒にいよう」
川 ゚ -゚)「ああ」
周りの人々の声が聞こえる。
皆が俺達を見ている。
ああ、そんなにこっちをみて。
俺達を祝福してくれてるのか。
ありがとう。
ありがとう、みんな。
なんて俺は、幸せなんだ。