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1 名前: ◆/KVxnknLxg[sage] 投稿日:2016/03/27(日) 00:02:31 ID:dA/dAzGo0
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バカな真似をするもんじゃない。
そんなことを身をもって体験してしまった。
俺はどこにでもいるような普通の高校生で成績は中の上、スポーツは下の上、顔はまぁキモくはないがといったところである。
つまるところなんの面白味もない人間であり決して漫画や小説の主人公を張れるような人間ではないことは確かだ。
でも、残念なことに俺は男であり、そしてそんな主人公たちに憧れている。
届かないとわかっていながらもどうしても憧れてしまっているのだ。
あんな風に格好いい人間になり、女性からモテるなんて、最高じゃないか。
うんでも、あれだ。
憧れは憧れのままの方がいい。
ちょっと調子に乗った結果がこれだ。
なんかかわいい子が歩いてるなーって思ってちょっと後ろから眺めて着いていってたらその子がつまずいてふらついて歩道に出そうになったところをかっこよく引き戻してやろうとしたら俺までつまずいてしまいその子は歩道に引き戻せたけど俺が今度は道路に飛び出てしまった。
もちろん轢かれた。
トラック。
めっちゃでかいの。
せめて小型がよかった。
まぁ飛び出しちゃったし、仕方ないね。
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2 名前: ◆/KVxnknLxg[sage] 投稿日:2016/03/27(日) 00:03:20 ID:dA/dAzGo0
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あ、今の俺の状況?
絶賛血の海に沈み中。
もうどこからも血が出まくってさっきから誰かが近くにいるような感じはあるのに何にもわかんね。
まあでもあれだ。
女の子が助けられたならいいや。
なんか主人公みたいで格好いいし。
「......」
あ、もうヤバイ。
何にも感じなくなってきた。
なんだろ。
もう死ぬのかな。
俺の人生なんてまぁこんな感じだよな。
でもまぁ、出来ることなら。
彼女が欲しかったなぁ。
俺を愛してくれる、夢のような。
黒髪で、綺麗で。
俺だけを愛してくれる。
そんな女の子。
まあそんなのこの世にいるわけないけど。
まぁ死んじまうならせめて夢のなかだけでも。
そんな女の子に、会いたいな。
-
3 名前: ◆/KVxnknLxg[sage] 投稿日:2016/03/27(日) 00:04:17 ID:dA/dAzGo0
-
('A`)はっぴーえんどのようです
.
-
4 名前: ◆/KVxnknLxg[sage] 投稿日:2016/03/27(日) 00:04:50 ID:dA/dAzGo0
-
......
......
......ん?
頭が痛い。
体が重い。
つまり、感覚がある。
つまり、生きてる?
体は動かそうとしても言うことを聞かない。
無理矢理体に命令し、四苦八苦して何とか重い瞼を開ける。
('A`)「......知らない天井だ」
まさか本当にこんな台詞を言う場面に遭遇するとは。
マジで俺主人公みたい。
やっべ、マジやっべ。
こんなブサメン主人公でいいの?
物語始まんないよ?
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5 名前: ◆/KVxnknLxg[sage] 投稿日:2016/03/27(日) 00:05:32 ID:dA/dAzGo0
-
('A`)「......」
ほらみろ。
折角事故後に目を覚ましたのに誰もいねーじゃねーか。
俺の主人公っぽい台詞を誰も聞いてねーじゃねーか。
あ、むしろそれはよかったか。
でも家族すらいないってどうゆうことでしょ。
泣いちゃうよ?
('A`)「......えっ、マジで誰もいないの?」
俺意識不明の状態だったってことでいいんだよな?
え、なのにこの放置プレイ?
脇役Aですらもっとましな扱いされると思うよ?
畜生以下の扱いじゃねーか。
やっべ、興奮して視界が歪んできた。
決して泣いてなんかない。
ちょっと昂って目からしょっぱいものが溢れそうになってるだけだ。
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6 名前: ◆/KVxnknLxg[sage] 投稿日:2016/03/27(日) 00:06:07 ID:dA/dAzGo0
-
('A`)「......はぁ」
川 ゚ -゚)「目覚めていきなり溜め息とはな。どうかしたのか?」
('A`)「......は?」
川 ゚ -゚)「ん?」
('A`)「......いつからそこに?」
川 ゚ -゚)「私は君が目覚めたときからずっとそばにいるぞ?」
('A`)「mjd?」
川 ゚ -゚)「mjd」
('A`)「」
え、なに。
え、マジでなに?
誰この人。
看護婦......じゃないな、私服だし。
でも、友達でもないな。
友達いないし。
おっと、危ない。
またなんか目から溢れそうになった。
オーケー、クールになれ。
-
7 名前: ◆/KVxnknLxg[sage] 投稿日:2016/03/27(日) 00:06:41 ID:dA/dAzGo0
-
で、だ。
落ち着いて目の前の子について思い出すんだ。
('A`)「......」ジー
川 ゚ -゚)「?」
......
うん、該当者なし。
もし知っていれば絶対忘れられないような黒髪美人だし絶対知らん人だ。
え、じゃあなに?
目が覚めたら知らない黒髪の美人が俺のそばにずっといたってこと?
ホラー?これホラーなの?
('A`)「......あの」
川 ゚ -゚)「ん?」
('A`)「どちら様......ですか?」
川 ゚ -゚)「ん?ああ、そうか。自己紹介がまだだったな」
コホンと、小さな咳をする。
その動作すらめっちゃ美しい。
美人ってすごい。
チートじゃん、こんなん。
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8 名前: ◆/KVxnknLxg[sage] 投稿日:2016/03/27(日) 00:07:14 ID:dA/dAzGo0
-
川 ゚ -゚)「私は素直クールだ。よろしくドクオ君」
('A`)「あ、うん......よろしく」
なんかよろしくされた。
てかなんか向こうさんこっち知ってるっぽいし。
まあ、じゃなきゃ病室なんてこないよな。
うん。
何かよくわかんないけど納得しとこう。
('A`)「えーとそれで」
川 ゚ -゚)「ん?」
('A`)「素直さんは......」
「......ドクオさん?」
('A`)「ん?」
不意に新たな声が聞こえてくる。
女性の声だ。
立て続けに女性との遭遇イベントとは。
え、なに?モテ期?
違う?
うん、知ってた。
-
9 名前: ◆/KVxnknLxg[sage] 投稿日:2016/03/27(日) 00:07:55 ID:dA/dAzGo0
-
(*゚ー゚)「あ、目が覚めたんですね。よかった」
('A`)「あ、えーと」
白い服に包まれた若い女性。
ナース。
今度こそ看護婦さんだ。
よかった、俺、放置されてなかった。
病院ですら俺のことをスルーするのかと思った。
まあ俺のステルス迷彩はスゴいから仕方ないけどな。
修学旅行の班決めで名前無かったりとか。
あれなんか視界が歪んできた。
うんまあ目覚めたばかりだからね。
仕方ない、仕方ないんだうん。
(;*゚ー゚)「えっと大丈夫?」
色々とダメみたいです。
お医者さんを呼んでください。
出来たら可愛い人。
あ、お姉さんでも大丈夫です。
-
10 名前: ◆/KVxnknLxg[sage] 投稿日:2016/03/27(日) 00:08:31 ID:dA/dAzGo0
-
('A`)「......はい、大丈夫です。で、その俺は......」
(*゚ー゚)「あ、はい。なんでも事故に遭ったみたいで。確か一週間ほど寝てたんですよ?」
('A`)「一週間ですか」
一週間か。
長いような短いような。
何とも微妙なところだな。
まあ少なくとも教室に俺の席はないな。
あ、元からか。
HAHAHA。
(*゚ー゚)「詳しくは後程先生が来ますのでその時にお話しします」
('A`)「あ、はい」
(*゚ー゚)「あ、そうそう。そこのお花、見ました?」
('A`)「花?」
-
11 名前: ◆/KVxnknLxg[sage] 投稿日:2016/03/27(日) 00:09:03 ID:dA/dAzGo0
-
ふと横を見ると花瓶に花が生けられていた。
名前はわかんねーけど色とりどりの花が生けられている。
普通にきれい。
え、これってあれだよな?
お見舞いだよな?
俺に?
花を?
マジかよやるじゃん俺。
(*゚ー゚)「ほら、君って女の子助けて車に轢かれたんでしょ?」
('A`)「え?あ、っと、はい」
(*゚ー゚)「その助けられた子がね、毎日お花持ってきてくれてたのよ」
('A`)「おっふ」
マジかよ。
漫画?
小説?
とりあえず現実ではないよなうん。
そんなラブコメ主人公みたいなこと起きる訳ねーもん。
え、でもマジで起きてるんだよな?
つまり、俺、春来た?
永遠の友になると思ってたDTちゃん捨てれるの?
奇跡かよ。
('A`)「神はいたっ!」
(*゚ー゚)「へ?」
('A`)「あ、え、その......はい」
-
12 名前: ◆/KVxnknLxg[sage] 投稿日:2016/03/27(日) 00:09:37 ID:dA/dAzGo0
-
(*゚ー゚)「ん、まあとりあえず元気そうでよかったわ。じゃあ先生を呼んでくるから待っててくれるかしら」
('A`)「あ、はい」
看護師さんが部屋から出ていく。
おっふ、いいケツ。
いやいや、俺には花をくれる天使がいるんだ。
浮気はいかんいかん。
まぁまだ顔すら知らんけど。
何となく可愛かった気はするけどどんなんだったっけな。
んー......確かショートカットで銀色っぽい髪の毛で......
川 ゚ -゚)「......」ムー
('A`)「......あ」
-
13 名前: ◆/KVxnknLxg[sage] 投稿日:2016/03/27(日) 00:10:12 ID:dA/dAzGo0
-
忘れてた。
この黒髪のかわい子ちゃん。
てかほんと誰なのこの子。
しかもなんでむくれてるの?
可愛いんだけど。
めっちゃムニムニしたいんですけど。
川 ゚ -゚)「......お前はああいう女性が好きなのか?」
('A`)「へ?」
川 ゚ -゚)「だからお前の好きな女性のタイプだ」
('A`)「え、あ、へ?」
何?
え、まじで何?
何でこんな話の流れに?
今日日修学旅行ですら恋ばなしないよ?
俺がしたことないだけかもしれんけど。
-
14 名前: ◆/KVxnknLxg[sage] 投稿日:2016/03/27(日) 00:10:44 ID:dA/dAzGo0
-
('A`)「え、えー......まぁきれいだなーとは思いましたですよ?はい......」
川 ゚ -゚)「......ふーん」
なによふーんって!
答えたのに失礼しちゃう!
......マジで何だったの。
なに、そんなこと聞くって俺のこと好きなの?
勘違いしちゃうよ?
('A`)「えっと、それで君は」
「ほ、本当に起きてる......」
('A`)「......」
また新しい人来た。
しかもまた女性の声。
ヤバイな。
これが確変か。
-
15 名前: ◆/KVxnknLxg[sage] 投稿日:2016/03/27(日) 00:11:21 ID:dA/dAzGo0
-
从 ;∀从「よ、よがっだー。も、もじめざめながったらどうじようかと......」
(;'A`)「......おおぅ」
顔を向けると短い銀髪の美少女がいた。
いや、いるけどさ。
何かめっちゃ泣いてる。
もうぐっちゃぐっちゃ。
それでも可愛いとか。
反則すぎる。
(;'A`)「......ん、っと確か君は」
从 ;∀从「は、はいっ!わ、私!ハインっていいます!あなたに命を助けられました!」
(;'A`)「あ、うん」
从 ;∀从「ほんっとおおぉおおに!ありがとうございましたあ!」
-
16 名前: ◆/KVxnknLxg[sage] 投稿日:2016/03/27(日) 00:11:54 ID:dA/dAzGo0
-
何かものすごい勢いで頭を下げまくってる。
ここまでされると逆に申し訳なくなるのは何故だろう。
そのくらい凄い謝り方だ。
なんか頼めば何でもしてくれそう。
いや、頼まないけどさ。
俺紳士だし。
('A`)「えっと、ハインさんでいいんだよね?」
从 ;∀从「は、はい!」
(;'A`)「......うん、とりあえず涙拭こっか」
まあこれはこれで可愛いけどさ。
それでもやっぱ普通の顔の方がいいに決まってる。
俺、女の子泣かせて喜ぶような性癖はないしね。
-
17 名前: ◆/KVxnknLxg[sage] 投稿日:2016/03/27(日) 00:12:27 ID:dA/dAzGo0
-
从 う∀从グシグシ
('A`)「えっとそれで、ハインさん」
从 ゚∀从「はい!」
('A`)「あの花、ハインさんが持ってきてくれた......ってことだよね?」
从* ゚∀从「あっ!そうっす!」
('A`)「そっか、ありがと」
从* ゚∀从「い、いやその、別になんかこういうのよくわかんなかったんで適当に綺麗なの買ってきただけだったんですけど」
从* ^∀从「気に入ってくれたならよかった」
('A`)
-
18 名前: ◆/KVxnknLxg[sage] 投稿日:2016/03/27(日) 00:13:05 ID:dA/dAzGo0
-
あかん、この子メチャクチャ可愛い。
何て言うの?
後輩タイプって言うの?
とにかくストライク。
この子と二人っきりだったら告白して振られてたわ。
そして泣いてたわ。
二人っきりじゃなくてよかったうん。
ん?二人っきりじゃない?
('A`)「......あ」
またあの黒髪の子忘れてた。
てかなんか話せばいいのに。
無視されてむくれるくらいなら自己アピールしなくちゃ。
ま、俺も出来ないけど。
てへぺろ。
-
19 名前: ◆/KVxnknLxg[sage] 投稿日:2016/03/27(日) 00:13:56 ID:dA/dAzGo0
-
川 ゚ -゚)ムー
('A`)(またむくれてる......)
从 ゚∀从「あ、それでドクオさん!」
('A`)「え?あ、ああ、なに?」
从 ゚∀从「今度退院したらでいいんですけど......」
('A`)「ん?」
从;* ゚∀从「あー......その、恩返しと言うか?まぁ、っと......えー」
('A`)「?」
-
20 名前: ◆/KVxnknLxg[sage] 投稿日:2016/03/27(日) 00:14:39 ID:dA/dAzGo0
-
从;* ゚∀从「その、一緒に、出掛けたり......とか」
('A`)
('A`)
('A`)「えっ」
え、なにそれ。
女の子とお出かけ?
デートのお誘い?
俺が受けてるの?
......オーケー、クールになれ。
こういうときこそビークールだ。
-
21 名前: ◆/KVxnknLxg[sage] 投稿日:2016/03/27(日) 00:15:11 ID:dA/dAzGo0
-
('A`)「い、いいでひゅよ」
噛んだ。
从;* ゚∀从「い、いいんでひゅか!?」
噛み返された。
川 ゚ -゚)ムー
まだむくれてた。
なんだこれ。
-
22 名前: ◆/KVxnknLxg[sage] 投稿日:2016/03/27(日) 00:15:51 ID:dA/dAzGo0
-
流石にここまで露骨にされると反応しないわけにはいかない。
なんか釣られてる気もしなくはないが反応してあげることにしよう。
わあ俺って優しいなぁ。
......うん、素直に今のはちょっとキモいな。
('A`)「......言いたいことがあるなら言いなよ」
川 ゚ -゚)「ん?」
从; ゚∀从「へっ!?いやっ!私としては来ていただけるだけでもう!はい!」
('A`)「ん、あ、いや、ハインさんじゃなくて」
从 ゚∀从「へ?」
('A`)「君だよ」
川 ゚ -゚)「ああ、私か」
何あからさまに気づきませんでしたオーラ出してるのよ。
あんなに構ってちゃんオーラ出しといて。
これでマジで俺の勘違いだったら死ぬほど恥ずかしいんですけど。
-
23 名前: ◆/KVxnknLxg[sage] 投稿日:2016/03/27(日) 00:16:24 ID:dA/dAzGo0
-
('A`)「いやさっきからメチャクチャなんか言いたそうじゃん」
川 ゚ -゚)「別に」プイッ
(;'A`)「......いや、メチャクチャなんかありそうなんですけど」
从 ゚∀从「あ、あの、ドクオさん」
('A`)「ん、ああ、ごめん。なんか」
从; ゚∀从「あ、いやその......誰と話してるんですか?」
('A`)「ん?......クールさんって言うらしいんだけど俺もよく知らないんですよね。ハインさんは......その感じ、知らないっぽいですね」
从; ゚∀从「あ、いや......というかその」
('A`)「?」
-
24 名前: ◆/KVxnknLxg[sage] 投稿日:2016/03/27(日) 00:17:02 ID:dA/dAzGo0
-
从; ゚∀从「この部屋、私以外誰もいない、ですよね?」
.
-
25 名前: ◆/KVxnknLxg[sage] 投稿日:2016/03/27(日) 00:17:38 ID:dA/dAzGo0
-
......
......
......は?
('A`)「え、いやそこに......」
川 ゚ -゚)
いる。
確かに俺の目には黒髪の美少女が写っている。
俺のすぐ横にいる。
ハインさんからは絶対に見える場所に。
从; ゚∀从「......」
何だその顔は。
まるで俺がおかしいみたいな。
-
26 名前: ◆/KVxnknLxg[sage] 投稿日:2016/03/27(日) 00:18:09 ID:dA/dAzGo0
-
......いや、おかしいのか?
从; ゚∀从「......あの」
('A`)「......なーんてね」
从; ゚∀从「へ?」
('A`)「その......冗談です、なんか、すみません」
从; ゚∀从「え?......あ、あー!あー、そうですよね!あー、もう、驚かせないでくださいよ!」
('A`)「あ、ごめん」
この反応。
間違いない。
見えてない。
彼女には。
俺のとなりにいるクールという少女が。
-
27 名前: ◆/KVxnknLxg[sage] 投稿日:2016/03/27(日) 00:18:44 ID:dA/dAzGo0
-
じゃあ、なんなんだ。
この俺に見えているこの少女は。
俺の妄想?
それにしては何ともリアル。
童貞も来るところまで来るとこんなになるのか。
知らなかったわ。
从 ゚∀从「......あ」
('A`)「ん?」
从 ゚∀从「先生来たみたいなんで少し、席はずします」
('A`)「ん......ああ、うん、ありがとう」
从 ゚∀从「いえ、では」
ペコリと小さくお辞儀をして部屋を出ていく。
うん、可愛らしい。
あの子を助けた過去の俺、グッジョブ。
-
28 名前: ◆/KVxnknLxg[sage] 投稿日:2016/03/27(日) 00:19:26 ID:dA/dAzGo0
-
ハインさんが部屋から出ていくと入れ替わりで白衣の男が入ってきた。
男だ。
確変はどうやら終わったみたいだ。
短い確変だったなうん。
なんともまぁ、俺らしい。
( <●><●>)「......おはようございます、ドクオさん」
('A`)「あ、はい......えっと、先生、でいいんですよね?」
( <●><●>)「はい、まだ起きたばかりで辛いかもしれませんが少しだけ質問させてください」
('A`)「ん、分かりました」
-
29 名前: ◆/KVxnknLxg[sage] 投稿日:2016/03/27(日) 00:19:59 ID:dA/dAzGo0
-
その後、軽い質問をいくつかされる。
気分はどうだとかそんな感じの。
あとは事故のときの様子などをちょこちょこ話してくれた。
あとついでに俺の見舞いに来た人の話をしてくれた。
まあそれについては約一名しか来てなかったみたいだけど。
おかしいな。
俺の親とかまだみんな生きてるんだけど。
忙しいのかな?
そうじゃなかったら泣くよ?
( <●><●>)「さて......今日はここら辺にしておきましょうか」
('A`)「......先生」
( <●><●>)「ん?」
-
30 名前: ◆/KVxnknLxg[sage] 投稿日:2016/03/27(日) 00:20:33 ID:dA/dAzGo0
-
('A`)「......その、変なことを聞いてもいいですか?」
( <●><●>)「はぁ、なんでしょうか?」
('A`)「今、この病室に何人いますか?」
( <●><●>)「......?二人、ですが。私とドクオさんの」
('A`)
......ああ、まただ。
この人にも見えないのか。
つまり、俺が見えているこの子は。
普通じゃない。
人じゃない。
-
31 名前: ◆/KVxnknLxg[sage] 投稿日:2016/03/27(日) 00:21:05 ID:dA/dAzGo0
-
じゃあ、なんなんだ。
この、目に写るものは。
この人のような存在は。
川 ゚ -゚)「......ドクオ君」
('A`)「......」
反応はしない。
いや、しちゃダメだ。
だって、そこにはなにもいないはずなのだから。
川 ゚ -゚)「そうか、反応してくれないのか。それでもいい」
( <●><●>)「ドクオさん、何故そのようなことを?」
('A`)「いえ、その」
-
32 名前: ◆/KVxnknLxg[sage] 投稿日:2016/03/27(日) 00:21:50 ID:dA/dAzGo0
-
川 ゚ -゚)「だがな」
('A`)「何て言うか......ングッ!?」
不意に唇に熱いものを感じる。
そして、言葉が出ない。
口を塞がれた。
目の前には目を閉じた少女の顔が広がっている。
なんだ、これは。
柔らかな感触が脳に伝わってくる。
確かにそこに存在しているという証が、伝わってくる。
-
33 名前: ◆/KVxnknLxg[sage] 投稿日:2016/03/27(日) 00:22:28 ID:dA/dAzGo0
-
(;'A`)(......なんだよ、これ)
頭を動かし、唇と唇を離す。
それでも唇に残る熱は消えない。
感触が、残っている。
初めてしたキスの感触が。
俺の知らない感触が確かに残っている。
川 ゚ -゚)「私は、ここにいるぞ。誰が何と言おうと。君が、私を見てくれている限り」
訳が、分からない。
-
34 名前: ◆/KVxnknLxg[sage] 投稿日:2016/03/27(日) 00:23:00 ID:dA/dAzGo0
-
('A`)「......君は」
( <●><●>)「......ドクオさん」
('A`)「......」
( <●><●>)「ドクオさん!」
(;'A`)そ「えっ!?あ、はいっ!」
( <●><●>)「......何か、見えているんですか?」
('A`)「あ......」
( <●><●>)「そのようですね......ふむ」
医師の表情が変わる。
まあ当たり前か。
見えないものが見えるといってるわけだし。
医師からしたらそんなのどっかに異常があるとしか考えられないしね。
-
35 名前: ◆/KVxnknLxg[] 投稿日:2016/03/27(日) 00:23:33 ID:dA/dAzGo0
-
('A`)「......」
( <●><●>)「......詳しく聞いても?」
('A`)「はい」
従うしかない。
自分でも自分がおかしいというのは分かっている。
訳が分からないんだ。
なら、他人に頼るしかない。
('A`)「お願いします」
狂っていることを、認めるしかないんだ。
-
36 名前: ◆/KVxnknLxg[] 投稿日:2016/03/27(日) 00:24:06 ID:dA/dAzGo0
-
.........
......
...
( <●><●>)「......どうやら事故のショックで何らかの影響が出てるようですね」
クールと名乗ったその存在の見た目やどんな風に現れてるか等、一通り話し終え、医者が出した結論はこれだった。
うん、知ってる。
聞かなくてもわかってるわそんなもん。
だからどうすりゃいいんだよ。
( <●><●>)「一度、脳に異常がないか確かめてみましょう」
('A`)「はぁ......」
( <●><●>)「大丈夫ですよドクオさん。必ずなんとかしますから」
何が大丈夫なんだろ。
しかも何とかするって。
何もわかってないこと丸出しじゃないですか。
何一つ安心できないですはい。
-
37 名前: ◆/KVxnknLxg[] 投稿日:2016/03/27(日) 00:25:08 ID:dA/dAzGo0
-
( <●><●>)「では、今日はこれで」
('A`)「あ......はい」
どうやら今日、俺に対して何か出来ることはなにもないらしい。
まってくれよ。
こんな妄想かなんなのか分からないやつと二人きりっとか。
見た目美少女でも俺レベルになると余裕でチビるぞ。
まぁそんなこと、言えないけど。
('A`)「......」
バタンと扉が閉められ部屋に一人取り残される。
-
38 名前: ◆/KVxnknLxg[] 投稿日:2016/03/27(日) 00:25:41 ID:dA/dAzGo0
-
そう、一人。
一人のはず、なんだ。
川 ゚ -゚)「......何故君はそんなに私を拒絶するんだ?」
('A`)「......」
川 ゚ -゚)「話してもくれないのか......流石に傷付くな......」
ああ、ならそのまま消えてくれ。
川 ゚ -゚)「でも、私はここにいるぞ」
('A`)「......」
川 ゚ ―゚)「私は、君の事が好きだからな」
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39 名前: ◆/KVxnknLxg[] 投稿日:2016/03/27(日) 00:26:19 ID:dA/dAzGo0
-
ニコリと微笑むその彼女の顔は本当に綺麗で。
拒絶しなければならないはずなのに自分の心の中に溶け込んでくる。
鼓動が早くなる。
顔が暑くなる。
ほんと、自分が嫌になる妄想だ。
......妄想、なんだ。
............そこには、何もないはずなんだ。
だからこの、沸き上がる感情も。
体の暑さも。
心の昂りも。
存在、しない。
そして、してはいけない。
受け入れては、いけないんだ。
-
40 名前: ◆/KVxnknLxg[] 投稿日:2016/03/27(日) 00:26:58 ID:dA/dAzGo0
-
.........
......
...
从 ゚∀从「ドクオさん、おはようございます」
('A`)「あ、ど、ども」
目が覚めてから一週間が経った。
今日もハインさんが俺の病室へと来てくれた。
この一週間欠かさず来てくれるとか天使なのかなこの子。
从 ゚∀从「あ、今日はこれ持ってきたんですよ」
('A`)「?」
从* ゚∀从「その、リンゴが好きって言ってたのでリンゴを......」
天使でした。
文句なく天使でした。
なにこれ。
もうこれ以上俺の好感度上がんないよ?
カンストしてるよ?
-
41 名前: ◆/KVxnknLxg[] 投稿日:2016/03/27(日) 00:27:39 ID:dA/dAzGo0
-
('A`)「あ、ども......」
从 ゚∀从「じゃあ、ちょっと待っててくださいね。今剥きますから」
('A`)「......」
从 ゚∀从「〜♪」シャリシャリ
小さな手にナイフを握り、リンゴを剥いてく。
リンゴを剥く音と何処か少し音程のズレた鼻歌が病室に響く。
......なんかいいなこういう感じ。
なんかカップルみたいで。
あ、もちろんそんなこと言わないけど。
言ったら拒絶されて俺泣いちゃうし。
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42 名前: ◆/KVxnknLxg[] 投稿日:2016/03/27(日) 00:28:17 ID:dA/dAzGo0
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从 ゚∀从「うっし、出来ました!」
('A`)「おおっ」
从 ゚∀从「はい、どうぞ!」
('A`)「ん、ありがとう」
从 ゚∀从「食べられる?」
('A`)「......頑張れば、多分」
忘れてた。
俺、怪我してるんだった。
一週間寝込むような怪我してたわ。
あまりにリンゴ食べたすぎて忘れてたけど普通に起き上がれねぇわ。
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43 名前: ◆/KVxnknLxg[] 投稿日:2016/03/27(日) 00:29:00 ID:dA/dAzGo0
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でも、でもだ。
ここで起き上がらなきゃあのリンゴはお預けだ。
ただのリンゴならまぁ、我慢する。
だがしかし、あれは美少女、ハインさんが剥いてくれたリンゴだぞ?
諦められるわけがない。
(;'A`)「ふんむぐぐぐ......」
あ、これ辛い。
めっちゃ辛い。
てか動かねぇ。
無理だわ。
こんなこともう、一生ないかも知れないのに。
(;A;)「ぉぉ......」ググッ
从; ゚∀从「ちょ、ちょっとやめときなって!」
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44 名前: ◆/KVxnknLxg[] 投稿日:2016/03/27(日) 00:29:42 ID:dA/dAzGo0
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(;A;)「ふぐぅ!」グッ
从; ゚∀从「無理なのわかったから!私が食べさせてあげるから!」
(;A;)「むぐ......へ?」
......今なんつった?
タベサセテアゲル?
えーと何語かな?
日本語?
え?
それって食べさせてあげるってこと?
え?
ええ?
それってつまり?
从;* ゚∀从「ほら、口開けて。あ、あーん」
(゚A゚)
从; ゚∀从「め、眼は見開かなくていいかなー」
(;'A`)「......はっ!」
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45 名前: ◆/KVxnknLxg[] 投稿日:2016/03/27(日) 00:30:17 ID:dA/dAzGo0
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なんか意識飛んでた。
ヤバイって。
なにあれ。
あれがあーんの魔力ってやつか?
めっちゃかわいい。
顔赤くしながらおそるおそるリンゴ差し出されるとか。
色んな意味で食べちゃいたいです。
だめ?
知ってた。
从; ゚∀从「......やっぱ嫌ですよね」
('A`)「へっ!?」
从; ゚∀从「す、すみません、やっぱな」
('A`)「食べさせてくださいお願いします!」
从; ゚∀从「......」
('A`)「......」
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46 名前: ◆/KVxnknLxg[] 投稿日:2016/03/27(日) 00:30:50 ID:dA/dAzGo0
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从; ゚∀从「じゃ、じゃあ......」
(;'A`)「あ、う、うん......」
从;* ゚∀从「......口、開けてください。あーん」
(;*'A`)「あ、あー......ん」
口の中に甘い味が広がる。
甘い。
めっちゃ甘い。
今まで食べたもののなかで一番甘い。
胸のなかが温かい。
ああ、今俺、めちゃくちゃ幸せだ。
ずっと、こんな時間が続けばいいのに。
从* ゚―从「まだまだあるから沢山食べてね」
(*'A`)
ハインさんといるこの時間。
ああ、幸せだ。
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47 名前: ◆/KVxnknLxg[] 投稿日:2016/03/27(日) 00:31:36 ID:dA/dAzGo0
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.........
......
...
从 ゚∀从「......あ」
('A`)「?」
从 ゚∀从「そろそろ面会時間終わりみたいですね」
('A`)「あー」
从 ゚∀从「じゃあ、私はそろそろ」
('A`)「ん......いつもありがと」
从 ゚―从「好きでやってることだし」
('A`)「そっか」
从 ゚∀从「じゃ、また明日」
('A`)「うん」
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48 名前: ◆/KVxnknLxg[] 投稿日:2016/03/27(日) 00:32:08 ID:dA/dAzGo0
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また、明日か。
明日また来てくれるのか。
いかん、今絶対すげぇ変な顔になってる。
頬が緩みまくってる。
ああ、誰かに見られたら絶対キモいって言われるわこれ。
誰もいないからいいけど。
川 ゚ -゚)「ずいぶん幸せそうだな」
('A`)「......」
川 ゚ -゚)「ふむ......誰かに食べさせてもらうのは嬉しいものなのか?」
('A`)「......」
川 ゚ -゚)「どれ、私もしてやろう」
('A`)「......」
川 ゚ -゚)「......口を、開けてくれないか?」
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49 名前: ◆/KVxnknLxg[] 投稿日:2016/03/27(日) 00:32:40 ID:dA/dAzGo0
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('A`)「......」
川 - )「......流石に、泣きそうだ」
('A`)「っ」
......そんな顔、するんじゃねぇよ。
川 - )「......」
('A`)「......」
「......」
望んでいた静寂のはずなのに。
なんでこう、落ち着かないんだ。
胸の奥が痛む。
この気持ちはなんなんだ。
だけどそれに気づいてはいけない。
知らないふりをしなきゃいけない。
だってこの気持ちは。
存在しないはすなんだから。