( ^ω^)の冬休みのようです

198 名前: ◆IDKgEZ2b96 投稿日:2016/04/03(日) 05:42:41 ID:0FtvOE/g0


車から降り、肺いっぱいに空気を吸い込む。

この町の冬の匂いは、3年前とまったく変わっておらず、それだけで涙が出そうになった。

そしてこの店、【喫茶ひととき】も何一つ変わっていなかった。

澄み渡った空の青さも、静かに積もった雪の白さも、張りつめた冷たい空気の透明さも、全てが同じだった。


たった3年、離れていただけなのに。

たった半月、ここで過ごしただけなのに。

何もかもが、ひどく懐かしく思えた。


この町と離れている間、みんなとの再会をずっと思い描いていた。

この町を離れたあと、ずっと一つの夢を抱いていた。

今日は、その第一歩目だ。

199 名前: ◆IDKgEZ2b96 投稿日:2016/04/03(日) 05:44:01 ID:0FtvOE/g0


ミセ;゚ー゚)リ「つーちゃん今更だけど、本当にごめんね?たくさん迷惑かけると思うけど・・・」

(*゚∀゚)「いいんですいいんです!元々、部屋も余ってましたし!」

( ´・ω・`)「気にしなくてもいいよ、ミセリ。ブーン君も、もう子どもじゃないからね」

( ´・ω・`)「それに、ブーン君にこの道を進んでもらうのは、僕らにとっては嬉しいことさ」

(´-ω-`)「あの頃から思っていたが、ブーン君の舌は中々に優秀だよ」

母たちのやり取りを少し離れて聞く。


我ながら、ひどくわがままを言ってしまっていると申し訳なく思う。

だけど、ここまで周りに迷惑をかけてまで、進みたい道があった。

多分、僕が一度もソーサクに来ていなかったら、この道は選択肢にも入らないだろう。

母と話し合い、ショボンやつーへ相談しながら、ブーンがやりたいならとオーケーをもらったのだ。

200 名前: ◆IDKgEZ2b96 投稿日:2016/04/03(日) 05:45:15 ID:0FtvOE/g0


ミセ*゚ー゚)リ「ブーン、荷物は私が運んでおくからさ。行っておいでよ、友だちのとこ」

( ^ω^)「おっ、いいのかお?」

ミセ*゚ー゚)リ「ずっと会いたがってたじゃない。ほら、行ってきなさい!」

母に背中を押され、大きく頷く。

いってきます、と3人に手を振って、【茂良菓子舗】へ向かって走る。


再会への不安は、不思議と全くなかった。

頭の中を過るのは、あの頃の思い出。

どんな顔をして、驚いてくれるだろう。


僕のリアクションが面白いからといって、いつもちょっかいを出していた人。

僕の笑顔が良いといって、最高の自信を与えてくれた人。


ソーサクに帰ってきたら、真っ先にその人へ会いたかった。

201 名前: ◆IDKgEZ2b96 投稿日:2016/04/03(日) 05:46:46 ID:0FtvOE/g0


( ^ω^)(変わってないおー)

【茂良菓子舗】もまた、3年という時間の中でも何一つ変わっていなかった。

弾んだ息を整え、店内に足を踏み入れる。


(゚、゚トソン「いらっしゃい・・・」

(゚ー゚トソン「あら、久しぶりですね」

商品の陳列をしていた店員、トソンがブーンへ笑顔を見せる。

( ^ω^)「ご無沙汰していますお。えっと、ツンいます?」

(゚ー゚トソン「はいはい、ちょっと待っててね」

トソンが店の奥へとツンを呼びに行く。


( ^ω^)(あ、このチーズケーキ凄い美味そうだお)

ショーケースの中のお菓子も、どれも相変わらず美味しそうだった。

202 名前: ◆IDKgEZ2b96 投稿日:2016/04/03(日) 05:49:02 ID:0FtvOE/g0


( ^ω^)(お、新作の抹茶シュークリーム・・・。後で買おうかお)

( ・∀・)「チーズケーキと抹茶シューくらいならご馳走するよ」

( ;^ω^)「おわっ!モ、モララーさん!」


いくらショーケースに集中していたとしても、人が近づいて来たら分かるものだ。

なのに一切気配なんて感じなかった。

それに、常識的に考えて読心術なんて使えるわけがない。

( ・∀・)「ま、訓練の賜物さ」

( ;^ω^)(地の文まで読まれるし、一体何の訓練積んでんだお)


( ・∀・)「ともかく!久しぶりだね、ブーン君。話はショボンさんから何となくは聞いていたよ」

( ^ω^)「お、そうなんですかお?」

( ・∀・)「あぁ。もちろん、ツンには言ってないけどね」

そう言って、悪戯な笑みでウインクをする。

203 名前: ◆IDKgEZ2b96 投稿日:2016/04/03(日) 05:50:34 ID:0FtvOE/g0


ξ゚听)ξ「・・・え?」




( ^ω^)「お・・・」




( ・∀・)「ほら、ツン。会いたがってただろう?」

店の奥から出てきたのは、ずっと会いたかった人。

小さな顔に、切れ長の目。

あの頃から身長は伸びているが、それ以外は全く変わっていなかった。

何でここにいるの?と困惑の表情で、ブーンを見つめている。


その顔が何だか可笑しくて、笑いそうになってしまう。

ただ、後が怖い。

ここは笑うのを堪えて、帰ってきた挨拶をしよう。

204 名前: ◆IDKgEZ2b96 投稿日:2016/04/03(日) 05:51:57 ID:0FtvOE/g0




( ^ω^)「ただいま、だお」





ξ゚ー゚)ξ「・・・待たせすぎよ、バカ」






変わらない、笑顔。





そう、この笑顔が大好きなんだ。

205 名前: ◆IDKgEZ2b96 投稿日:2016/04/03(日) 05:54:15 ID:0FtvOE/g0


ツンと会った後、みんなにも顔を見せようと行くことで連絡を取り、ハインの家に集合していた。

みんな、ブーンとの再会に驚き、そして喜んでくれた。

みんなも全然変わっておらず、何だか安心した。


聞くと、ジョルジュとハインは中学校でバスケをやっていたらしい。

しかも二人ともエースだという。

ただ、体つきこそしっかりしているものの、ハインもジョルジュも身長は然程変わっていない。

特にジョルジュはその点を不満がっていた。


クーも相変わらずで、溢れんばかりの謎の自信と独創性をもってして、みんなを巻き込んでいるようだ。

ドクオはそんなクーに一番振り回されて、毎日苦労しているらしい。

206 名前: ◆IDKgEZ2b96 投稿日:2016/04/03(日) 05:55:57 ID:0FtvOE/g0


  _
(;゚∀゚)「それしても、ブーンが俺らの高校に、来るとはなぁ・・・」

( ^ω^)「おっおっ。ソーサク高校に推薦入学して、ショボン叔父さんのところでコーヒーのことを教えてもらうんだお・・・」

Σ( ;^ω^)「あぁ!ハイン、鼻水はやめて!!」

从;∀从「うぉぉ、一旦泣きやもう・・・」

(;'A`)「会ってからずっと泣いてるじゃねぇかよ・・・」


ξ゚听)ξ「それにしても、喫茶店をねぇ・・・。ま、夢があるのは良いことよね」

(*^ω^)「頑張って、将来は自分のお店を持つんだお!」

川 ゚ー゚)「ただ、ブーンは頭も良かったし、わざわざこんな田舎の高校じゃなくても良かったんじゃないか?」

( ;^ω^)「まぁショボン叔父さんから教えてもらいたかったっていうのもあるんだけどね・・・。他のとこだと、下宿代とかも結構かかるし」

207 名前: ◆IDKgEZ2b96 投稿日:2016/04/03(日) 05:57:10 ID:0FtvOE/g0


( ^ω^)「それに、みんなに会いたかったし・・・」






从 ゚∀从






从;∀从






从;∀从つ「ブーーーーーン!!!」

(; ゚ω゚)「おごぉ!!鳩尾はだめ・・・」


('A`)「ま、ブーンの決めた進路だからな。俺らが口出しなんて出来ねぇよ」

('∀`)「これから一緒に遊べんのは嬉しいしな」

208 名前: ◆IDKgEZ2b96 投稿日:2016/04/03(日) 05:58:03 ID:0FtvOE/g0


  _
( ゚∀゚)「そーだな!よし、これから鬼ごっこしに行くか!」

川 ゚ー゚)「ほう、私たちに勝負を挑むとは。ジョルジュも偉くなったもんだ」

ξ゚听)ξ「自惚れは身を滅ぼすわよ」

  _
(;゚∀゚)「くっ!言ってやがれ!うし、外行くぞ外!!」

  _
(;゚∀゚)「おら、ハインも泣いてねぇで!」

从;∀从「うぐっ、いまいぐってば・・・」

209 名前: ◆IDKgEZ2b96 投稿日:2016/04/03(日) 05:59:13 ID:0FtvOE/g0


みんな張り切って、外へと飛び出していく。

(*^ω^)「行くおー!」

ブーンもみんなに続いて、外へと出る。


川 ゚ -゚)「おっと、ブーン」

( ^ω^)「お?どうしたお?」

急にクーとハインに呼び止められ、耳を貸せと言われる。

从 ゚∀从「ツンはな、彼氏いたことないぞ」

川 ゚ -゚)「告白されても、ちゃんと断ってたぞ」

二人が悪いことを企んでいる顔で、そっと耳打ちする。

( ;^ω^)「き、急に何の話だお!?」

从 ゚∀从「なーにもー?ただの情報提供だぜー?」

川 ゚ー゚)「じゃ、健闘を祈る」


にやけ顔でそう言うと、前を行くジョルジュたちの方へと走っていく。

210 名前: ◆IDKgEZ2b96 投稿日:2016/04/03(日) 06:00:31 ID:0FtvOE/g0


( ;^ω^)(全く、何なんだお・・・)

( ;^ω^)(べ、別にツンに彼氏がいるかどうかなんて、気にしてなかったしー!)

ポーカーフェイスを意識して、動揺している気持ちを落ち着かせる。


( ^ω^)(それにしても、懐かしいおね・・・)

昔は、毎日のように見ていた光景。

昨日まで、夢にまで見ていた光景。

ジョルジュとハインがふざけあって、クーとドクオがそれを笑っていて。

そして・・・。

211 名前: ◆IDKgEZ2b96 投稿日:2016/04/03(日) 06:01:43 ID:0FtvOE/g0


ξ゚ー゚)ξ「・・・何か、懐かしいね」


( ^ω^)「だおね・・・。でも、みんなあんまり変わってなくて良かったお」


ξ゚听)ξ「確かにね。小学生から、体だけ大きくなりましたーって感じね」


ξ゚听)ξ「高校生になるっていうのに、鬼ごっこしてる人たちなんて、なかなかいないわよ」


( ^ω^)「そのくせ、ツンも結構ノリノリだったお」


ξ゚听)ξ「まっ、遊べるうちに、遊んどかないとね」

212 名前: ◆IDKgEZ2b96 投稿日:2016/04/03(日) 06:03:03 ID:0FtvOE/g0






ξ*゚ー゚)ξ「それに・・・。ブーンも帰ってきたし」







(*^ω^)「・・・ありがとだお」







そして、ツンが優しく微笑んでくれていて。


雪はあの頃と同じように、心奪われるほど真っ白だった。

213 名前: ◆IDKgEZ2b96 投稿日:2016/04/03(日) 06:04:46 ID:0FtvOE/g0


以上、最終章【雪の季節に】でした

たくさんの乙、ありがとうございました

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