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32 名前: ◆IDKgEZ2b96 投稿日:2016/03/31(木) 23:04:00 ID:Zui5vrAE0
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( ^Д^)「えー、それじゃあ皆さん。ケガや病気には気をつけて、冬休み楽しんでくださいね!」
*(‘‘)*「先生、さよーならー!」
( ^Д^)「はい、良いお年をー!」
(’e’)「お前餅食べ過ぎて太るんじゃねーぞー!www」
<ヽ`∀´>「よし、飯食ったらウリの家に集合ニダ!」
今日は終業式のため、午前中で学校は終わる。
クラスメイトたちは、ちょっとの時間を無駄にしないよう、走って教室から出て行く。
ブーンも急いで荷物をまとめて、学校を出る。
( ;^ω^)(きっと、叔父さんはもう家に来てるはずだお)
少しでも早く帰ろうと、いつもの帰り道を小走りで進んでいく。
ふと見上げた空はからりと晴れていて、青空が澄んでいる。
12月の下旬とあって、空気は冷たいが、太陽の光がほんのりと暖かいため、そこまで寒いとは感じなかった。
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33 名前: ◆IDKgEZ2b96 投稿日:2016/03/31(木) 23:05:07 ID:Zui5vrAE0
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結局、あれからニダーたちからは絡まれなかった。
恐らく、彼らの中ではブーンが了承したものとなっているんだろう。
( ´ω`)(まぁ、殴られるよりは宿題の方がマシかお)
ほっとするが、胸の奥がチクリと痛む。
その痛みは気にしないようにして、ブーンは走りながら、もう一度空を見上げる。
そこには、やはり先ほどと何も変わらない青空が広がっていた。
アパートの前に着くと、駐車場には見覚えのない車が止まっていた。
( ^ω^)(きっと叔父さんの車だおね)
深呼吸をして、上がった息を整える。
( ^ω^)「ただいまだお!」
玄関には見知らぬ靴が揃えており、部屋の中からは、ふわりとコーヒーの匂いが漂っている。
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34 名前: ◆IDKgEZ2b96 投稿日:2016/03/31(木) 23:06:26 ID:Zui5vrAE0
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ミセ*゚ー゚)リ「おかえり、ブーン」
( ´・ω・`)「やぁ、おかえり。久し振りだね、ブーン君」
母と一緒に出迎えてくれたのは、温かな笑みを浮かべたショボン叔父さんだった。
短く整えられた髪と口ひげ。
そのどちらにも、白髪が混じっている。
服装は白のネルシャツとジーンズという、シンプルなもの。
その笑顔と雰囲気から、温和な印象を受ける。
ブーンのイメージしている"喫茶店のマスター"をそのまま絵に描いたような人だ。
年齢は母と3,4歳ほどしか変わらないはずだが、良い意味でさらに歳上に見える。
( ^ω^)「久し振りですお、ショボン叔父さん」
ブーンは軽く頭を下げて挨拶をする。
緊張しないようにと意識すると、逆に緊張してしまう。
( ´・ω・`)「最後にあったのは3年前か。相変わらず、礼儀正しい子だ」
ショボンにそう微笑みかけられ、素直に嬉しい気持ちになる。
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35 名前: ◆IDKgEZ2b96 投稿日:2016/03/31(木) 23:07:27 ID:Zui5vrAE0
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ミセ*゚ー゚)リ「さ、まずはお昼ご飯を食べちゃいましょう」
( ^ω^)「おっ、わかったお」
母に促され、ブーンも後に続いて部屋に入る。
ショボンへの挨拶はきちんとできたはずだ。
小さく息を吐いて、緊張していた体をほぐす。
机の上にはショボンが淹れたのであろう、飲みかけのコーヒーがある。
( ^ω^)「家の中、コーヒーのいい香りがするお」
( ´・ω・`)「ふふ、ブーン君にそう言ってもらえると、何だか嬉しいな」
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36 名前: ◆IDKgEZ2b96 投稿日:2016/03/31(木) 23:09:27 ID:Zui5vrAE0
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( ´・ω・`)「ブーン君はコーヒー飲めるのかい?」
( ;^ω^)「まだ一回も飲んだことないですお」
( ^ω^)「でも、よく母さんが飲んでいるから、コーヒーの香りは好きになりましたお」
( ´・ω・`)「そうかそうか。本当は今飲ませてあげたいところだけど、あいにく持ってきたコーヒー豆が切れてしまってね」
( ´・ω・`)「うちに着いたら、コーヒーを淹れてあげるから、飲んでごらんよ」
( ^ω^)「おっおっ、ありがとうございますお。楽しみですお」
ミセ*゚ー゚)リ「はい、ブーン。ショボンがドーナツを買ってきてくれたの」
そう言って母がドーナツを皿に2つ、プレーンとチョコ味のものを盛ってきてくれた。
( ´・ω・`)「うちの近所にあるお菓子屋さんのなんだ。とても美味しいから食べてごらんよ」
( ^ω^)「ありがとうですお!いただきます!」
どちらも美味しそうだが、まずはプレーンから手にとる。
持つとズッシリとしており、チェーン店などのドーナツとは全く違う。
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37 名前: ◆IDKgEZ2b96 投稿日:2016/03/31(木) 23:10:59 ID:Zui5vrAE0
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一口食べてみると、口の中にほのかな甘みが広がる。
その甘みはしつこくなく、それでも確かに舌へと残るものだ。
( ^ω^)「とっても美味しいですお!」
( ´・ω・`)「口に合ったのなら良かったよ。ソーサクに着いたら、自分でお礼を言いに行くといい」
( ^ω^)「はい、そうしますお!」
ミセ*゚ー゚)リ「はい、ホットミルクよ」
母がホットミルクを作って持ってきてくれた。
(*^ω^)「お、ありがとだお」
熱すぎない程度に温めてあり、砂糖は多め。
母の作ってくれるホットミルクも、ブーンは大好きだった。
火傷をしないように、ホットミルクを飲む。
甘い香りが鼻を通り抜け、温かいミルクが胃の中へと流れていく。
外から帰ってきて、冷えていたブーンの体がポカポカと温まっていく。
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38 名前: ◆IDKgEZ2b96 投稿日:2016/03/31(木) 23:12:05 ID:Zui5vrAE0
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あっという間にプレーン味を食べてしまい、チョコ味へと手を伸ばす。
こちらも甘すぎず、ビターな味わいだ。
プレーンよりもしっとりとしていて、ホットミルクとの相性は抜群だった。
( ^ω^)「そういえば、つーおばさんは?」
つーとは、ショボンの奥さんだ。
( ´・ω・`)「つーは店の方に出てもらっているよ。帰ったら挨拶をするといい」
( ´・ω・`)「つーも、ブーン君が来るのを楽しみにしているからね」
( ^ω^)「おっおっ、それなら良かったですお」
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39 名前: ◆IDKgEZ2b96 投稿日:2016/03/31(木) 23:12:48 ID:Zui5vrAE0
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(*^ω^)「ごちそうさまでしたお」
ホットミルクも飲み干して、手を合わせる。
お腹だけでなく、心まで満たされた気がした。
ミセ*゚ー゚)リ「さ。大きな荷物はもう詰めてるし、あとは細かいものだけ用意してね」
母にそう言われ、手持ちカバンに荷物を入れていく。
読みかけだった本と、財布と、そして・・・。
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40 名前: ◆IDKgEZ2b96 投稿日:2016/03/31(木) 23:13:34 ID:Zui5vrAE0
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( ;^ω^)(3人分の宿題かお・・・)
この宿題をソーサクへと持って行こうかどうか、少し躊躇してしまう。
( ´ω`)(これがなかったら、もっと乗り気でソーサクに行けるのに)
クシャクシャにして、ゴミ箱へ捨ててしまいたい。
ため息をかみ殺して、それもカバンへと突っ込む。
( ω )(今日の夜も、少しやらないと終わらなさそうだおね)
叔父たちには疲れたと言って、早く部屋に行かせてもらおう。
心なしか、手に持ったカバンがとても重く感じた。
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41 名前: ◆IDKgEZ2b96 投稿日:2016/03/31(木) 23:14:41 ID:Zui5vrAE0
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( ^ω^)「叔父さん、準備できましたおー」
( ´・ω・`)「そうか。そしたら、そろそろ出発しようか」
ミセ;゚ー゚)リ「・・・本当にありがとうね、ショボン」
( ´・ω・`)「いいよ別に。うちには子どもいないし、冬休みの間はブーン君を息子として迎えるさ」
ミセ*゚ー゚)リ「ブーンも、迷惑かけないようにね。それと、風邪だけはひかないようにね!」
( ^ω^)「平気だお!」
ミセ*゚ー゚)リ「そしたら、いってらっしゃいね」
( ^ω^)「いってきますお!時々電話かけるおー!」
母への挨拶を済ませた後、ショボンの車へと乗り込む。
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42 名前: ◆IDKgEZ2b96 投稿日:2016/03/31(木) 23:15:43 ID:Zui5vrAE0
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( ´・ω・`)「さて、ソーサクへは結構かかるからね。具合が悪くなったりしたら言ってくれ」
( ^ω^)「わかりましたお」
ショボンがエンジンをかけ、ゆっくりと駐車場の外へと車を進める。
(*^ω^)ノシ「いってきますおー!」
窓を開けて、家の前で見送ってくれている母へと手を振る。
ミセ*゚ー゚)リ「いってらっしゃーい」
ブーンの声に手を振り返す母の笑顔を見ると、何故だか胸が締め付けられる。
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43 名前: ◆IDKgEZ2b96 投稿日:2016/03/31(木) 23:17:07 ID:Zui5vrAE0
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ショボンの運転する車は、国道へと抜けていく。
カーステレオからは、ショボンのイメージとはあまり結びつかないような、ロックな曲が流れている。
( ´・ω・`)「こう見えて、元々はパンクロック好きなんだよ」
ショボンがブーンの心を見透かしたかのように言う。
( ^ω^)「おっおっ、やっぱり叔父さんのイメージはジャズとか、そういうオシャレな曲でしたお」
( ´・ω・`)「もちろん、ジャズとかも大好きだよ。コーヒーを飲むときの雰囲気に合うからね」
( ´・ω・`)「でも、ドライブとかの時は、こういうノリやすい曲の方が良いんだ」
( ^ω^)「確かに。英語だから歌詞はわからないけど、何だかかっこいいですお」
( ´・ω・`)「そうだろう?」
( ´・ω・`)「〜♪」
曲に合わせ、ショボンはフンフンと鼻歌を歌う。
Day after day your home life's a wreck...
The powers that be just breathe down your neck...
You get no respect, you get no relief...
You gotta speak up and yell out your piece....
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44 名前: ◆IDKgEZ2b96 投稿日:2016/03/31(木) 23:18:35 ID:Zui5vrAE0
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ショボンの運転する車は、ソーサクへと繋がる高速道路を走っていた。
( ´・ω・`)「あと30分ほどで着くからね」
景色はどんどんと、後ろへ流れていく。
ソーサクに近づくにつれ、周りは雪景色へと変わっていった。
(*^ω^)「綺麗だおー」
遠く見える山も、広大な畑も、雪に覆われて太陽の光を反射している。
ブーンの住んでいる町、ビップには、雪があまり降らない。
そのため、このきらめくソーサクの雪景色に胸を打たれる。
( ´・ω・`)「そうだね。こう晴れた日には、余計にそう見える」
( ´・ω・`)「白く輝く大地に、青く澄んだ空。僕は冬のソーサクの景色が大好きなんだ」
( ´・ω・`)「ブーン君も、少しでもこの景色を好きになってくれたら嬉しいよ」
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45 名前: ◆IDKgEZ2b96 投稿日:2016/03/31(木) 23:19:13 ID:Zui5vrAE0
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ソーサクで過ごす冬休みが楽しみになればなるほど、押し付けられた宿題のことを思い出してしまう。
( ^ω^)(楽しくなればいいお・・・)
段々とモヤモヤが広がっていき、胸がチクリと痛む。
ふと、車の窓から見えた雪原には、キツネの親子がじゃれ合いながら走っていた。
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46 名前: ◆IDKgEZ2b96 投稿日:2016/03/31(木) 23:20:39 ID:Zui5vrAE0
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( ´・ω・`)「さて、着いたよ」
( ^ω^)「ありがとうございましたお」
ずっと同じ体勢で座っていたため、身体が強張っている。
車から降り、ぐっと伸びをすると、全身に血が巡っていく。
( ;^ω^)「おっ、やっぱり寒いおね」
温かかった車内から出たため、余計に寒く感じる。
【喫茶 ひととき】
ショボンの家、喫茶ひとときのドアにはOPENの札が掛かっている。
店の外見は、普通の2階建の民家のようだ。
( ´・ω・`)「流石に荷物を持ったまま、店の方から入るのはあれだからね。まずは荷物を運ぼうか」
ショボンの手を借りて、車から荷物を運び出す。
( ´・ω・`)「1階を店として使っていて、2階が生活スペースだ。ちょっと狭く感じるかもしれないが我慢してくれ」
そう言って、ショボンが家のドアを開ける。
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47 名前: ◆IDKgEZ2b96 投稿日:2016/03/31(木) 23:21:41 ID:Zui5vrAE0
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その瞬間、コーヒーのいい香りが漂ってきた。
(*^ω^)「すごくいい香りがしますお。いつもコーヒーの匂いがするなんて、何だか羨ましいお」
( ´・ω・`)「僕にとってはどんな香水よりも、コーヒーの香りの方が魅力的に思えるよ」
重たい荷物を落とさないように気をつけながら、階段を上っていく。
( ´・ω・`)「ブーン君はこの部屋を使ってくれ」
( ^ω^)「わかりましたお」
( ´・ω・`)「僕は店に出て、つーと交代してくるよ。ひと段落ついたら、ブーン君も店に降りてくるといい」
ショボンは部屋の真ん中へブーンの荷物を置いて、1階へと降りていく。
荷ほどきといっても、とりあえずは手持ちかばんから細々したものを出すだけだった。
( ;^ω^)(あっ、この宿題は見られたらマズいおね‥‥‥)
流石に3人の宿題を持っているのがバレたら、疑問に思われるに違いない。
( ;^ω^)(とりあえず、こうして誤魔化すかお)
ニダーたちの分の宿題は、自分の宿題の間に挟み込んで隠す。
( ^ω^)(こうしたら、ぱっと見量が多いだけだおね)
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48 名前: ◆IDKgEZ2b96 投稿日:2016/03/31(木) 23:23:08 ID:Zui5vrAE0
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荷物の整理が終わった頃、1階の方から人が上がってくる気配がした。
(*゚∀゚)「やぁブーン、久し振りだね」
つーが部屋に入ってきて、笑顔で頭を撫でてくる。
(*^ω^)「お久しぶりですお、つーおばさん。冬休みの間は、お世話になりますお」
(*゚∀゚)「いいんだよ、かしこまらなくたって!荷ほどきは終わったのかい?」
( ^ω^)「何となくは終わらせましたお」
(*゚∀゚)「そしたら、下に降りよっか。今はお客さんもいないしね」
(*゚∀゚)「ブーンも早くコーヒーデビュー、しないとでしょ」
(*^ω^)「そしたら、今行きますお」
つーの後に続いて、1階の店へと降りていく。
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49 名前: ◆IDKgEZ2b96 投稿日:2016/03/31(木) 23:24:03 ID:Zui5vrAE0
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(*^ω^)「おお・・・」
店の中は、より一層コーヒーの香りで満ちていた。
木目調の落ち着いた内装に、暖色系の照明。
レコードからは小さく、ジャズが流れていて、喫茶店の雰囲気を作り出している。
何とも大人な空間で、緊張してしまう。
( ´・ω・`)「さぁ、ブーン君。座るといいよ」
( ;^ω^)「し、失礼しますお」
ドキドキしながら、カウンター内にいるショボンの向かいへと座る。
( ´・ω・`)「ブーンの記念すべきコーヒーデビューだからね。一応、まずはメニューを見てもらおうか」
ショボンから手渡されたメニューを開く。
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50 名前: ◆IDKgEZ2b96 投稿日:2016/03/31(木) 23:26:03 ID:Zui5vrAE0
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( ^ω^)「・・・コーヒーってこんなにたくさん種類があるんですおね」
メニューにはブレンドが4種類、そしてストレートコーヒーが10種類用意されている。
( ^ω^)「ブレンドは何となくわかりますけど、ストレートコーヒーっていうのは?何か色んな国の名前書いてますけど」
( ´・ω・`)「ブレンドコーヒーの反対の意味、と言えば良いのかな?」
(*゚∀゚)「ブレンドっていうのは、何種類かの豆を混ぜているのを言うよね?」
(*゚∀゚)「それに対して、ストレートコーヒーは1種類の豆だけで淹れたコーヒーだよ」
( ^ω^)「なるほどですお」
( ´・ω・`)「コーヒーは農作物だからね。当然品種によって味がガラリと変わるんだ」
( ´・ω・`)「だから、色々なコーヒーを飲んでみて、自分の好きな味の豆を見つけるのも醍醐味なんだよ」
ショボンにそう言われ、もう一度メニューへと目を戻す。
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51 名前: ◆IDKgEZ2b96 投稿日:2016/03/31(木) 23:27:30 ID:Zui5vrAE0
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( ;^ω^)(とは言っても、何が何だかわからないし、適当でいいかお)
( ^ω^)「それじゃあ、この"グァテマラ"っていうのをお願いしますお」
( ´・ω・`)「グァテマラだね、わかったよ」
ショボンがコーヒー豆を取り出し、電動ミルで粉にする。
(*゚∀゚)「グァテマラは中々いい選択だと思うよ。とても飲みやすいし、美味しいからね」
( ^ω^)「おっおっ、楽しみになってきましたお」
ショボンがネルドリッパーにコーヒー粉を入れ、お湯を注いでいく。
手慣れている、一連の動作。
手に持つポットの口からは細いお湯がゆっくりと注がれている。
コーヒーを淹れているショボンの姿は、正に職人だった。
慎重に、気持ちを込めて、淹れてくれている。
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52 名前: ◆IDKgEZ2b96 投稿日:2016/03/31(木) 23:28:59 ID:Zui5vrAE0
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( ´・ω・`)「はい、お待たせ。グァテマラだよ」
( ^ω^)「ありがとうございますお」
(*゚∀゚)「まずは一口飲む前に、鼻を近づけて香りを嗅いでごらん」
つーの言う通りに、カップを鼻のそばへ持ってくる。
(*^ω^)「・・・」
インスタントのものとは比べ物にならないほど、いい香りだ。
( ´・ω・`)「いい香りだろう?さぁ、飲んでごらん」
火傷をしないように、慎重にコーヒーを啜る。
( ^ω^)「・・・おぉ」
口に入れた途端、広がる香りと苦味。
しかしその苦味は顔をしかめるようなものでは無く、心が落ち着くような苦味だ。
( ^ω^)「思ったよりも苦くなくて、これなら飲める気がしますお」
( ´・ω・`)「グァテマラはスッキリとした苦味が特徴なんだ。朝に飲むと、また一層美味しく感じるよ」
(*゚∀゚)「良いコーヒーデビューが出来たじゃないか」
つーの言葉に、ブーンも笑顔で返す。
もう一口、コーヒーを飲んでみる。
少し舌が慣れてきたのか、先ほどよりも味がよく分かる気がする。
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53 名前: ◆IDKgEZ2b96 投稿日:2016/03/31(木) 23:30:08 ID:Zui5vrAE0
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窓からは、夕陽が優しく差し込んでくる。
聞こえるのは、静かなジャズと、お湯の沸くクツクツという音だけ。
( ^ω^)(とても落ち着くお・・・)
何だか、自分が随分と大人になった気がした。
すると、つーが店の冷蔵庫からチョコレートケーキを一切れ持ってきてくれた。
(*゚∀゚)「うちはデザートだとかは置いていない、完全に飲み物だけの店なんだけどね」
(*゚∀゚)「モララーさんっていうお菓子屋をやってる人が、時折こうやって差し入れをくれるんだよ」
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54 名前: ◆IDKgEZ2b96 投稿日:2016/03/31(木) 23:31:05 ID:Zui5vrAE0
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( ´・ω・`)「ほら、今日のお昼に食べたドーナツのお店だよ」
(*^ω^)「なるほど、それなら絶対に美味しいですお!」
(*゚∀゚)「コーヒーにはやっぱり、甘いものが合うからね。食べてごらん」
(*^ω^)「それじゃあいただきますお」
見た目はシンプルなチョコレートケーキだ。
お昼のドーナツが美味しかったこともあり、期待して口に入れる。
(*^ω^)「すっごく美味しいですお」
甘すぎないチョコレートクリームが、苦味に覆われていた口の中を中和してくれる。
何よりスポンジ部分がとても美味しかった。
もう一口と、どんどん食べられてしまう。
その合間に、甘くなった口の中にコーヒーを入れる。
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55 名前: ◆IDKgEZ2b96 投稿日:2016/03/31(木) 23:32:23 ID:Zui5vrAE0
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(*´ω`)「幸せだお・・・」
(*゚∀゚)「その年でもうコーヒーの美味しさがわかるなんて、やっぱり最近の子は大人だねぇ」
( ;^ω^)「おっおっ、全然そんなことないですお」
恥ずかしくなって、顔が熱くなる。
( ;^ω^)(ちょっと調子に乗りすぎたかお・・・)
あんまりいい気になっちゃいけないと自分に言い聞かせ、残りのケーキとコーヒーを食べる。
(*^ω^)「ごちそうさまでしたお」
(*゚∀゚)「口にあったようで何よりさ」
( ´・ω・`)「店閉めるまでまだ時間もあるし、モララーさんのところへお礼を兼ねて挨拶に行っておいでよ」
( ´・ω・`)「ブーン君が遊びに来ていることは話していたし」
(*゚∀゚)「それがいいね。この道沿いに行ったら見えてくるから、すぐわかると思うよ」
( ^ω^)「そしたら、そうしますお」
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56 名前: ◆IDKgEZ2b96 投稿日:2016/03/31(木) 23:33:18 ID:Zui5vrAE0
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自分の荷物の中から、コートを取り出して羽織る。
( ´・ω・`)「もう日も暮れてるし、気をつけるんだよ?」
(*゚∀゚)「あ、ツンちゃんにも挨拶忘れないでね」
( ;^ω^)「ツ、ツンちゃん??」
(*゚∀゚)「モララーさんのとこの娘さんだよ。丁度ブーンと同い年だから、仲良くしなよ」
( ;^ω^)「わ、わかりましたお・・・。そしたら行ってきますお」
急に女の子の話が出て、何だかよくわからないままに頷いて家から出る。
外に出るとだいぶ暗くなっていて、空気も一段と冷たくなっている。
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57 名前: ◆IDKgEZ2b96 投稿日:2016/03/31(木) 23:34:19 ID:Zui5vrAE0
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((( ;^ω^)))「おおお、かなり寒いお・・・」
コートのポケットに手を突っ込み、ショボンたちに言われた通りに道沿いをずっと歩く。
ぎゅっぎゅっと雪を踏む音が道に響く。
(;´ω`)(女の子かお・・・。ウザがられたりしたら嫌だおね)
普段、クラスメイトの女子からは無視されたり、陰口を言われたりしている。
そのため、まともに女子と話したことなんて数える程しかない。
夜道を1人で歩いているのもあり、心細くなってくる。
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58 名前: ◆IDKgEZ2b96 投稿日:2016/03/31(木) 23:36:16 ID:Zui5vrAE0
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( ^ω^)(お、あれかお?)
悩みながら歩いていると【茂良菓子舗】と書かれた看板が見えてきた。
( ^ω^)(オシャレなお店だおね)
外から店の中が見えるように、道路に面した壁がガラス張りになっている。
そこから、女性の店員がケーキを並べているのが見える。
呼吸を整えてから、店内へと入る。
(゚、゚トソン「いらっしゃいませー」
店員がケーキを並べる手を止めて、ブーンに声をかける。
( ;^ω^)「あ、あの、モララーさんいますかお?」
(゚、゚トソン「あら、もしかしてショボンさんのところに遊びに来てるっていう・・・」
( ^ω^)「あ、そうですお。内藤ホライゾンと言いますお。叔父さんとかからはブーンって呼ばれてますが」
(゚、゚トソン「じゃあ、改めていらっしゃいませ、ブーン君。今モララーを呼んできますね」
( ^ω^)「はい、お願いしますお」
店員さんが厨房へとモララーを呼びに行く。
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59 名前: ◆IDKgEZ2b96 投稿日:2016/03/31(木) 23:37:55 ID:Zui5vrAE0
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待っている間、ケーキが並べられているショーケースを眺める。
ショートケーキやチーズケーキ、シュークリームなど、美味しそうな洋菓子が綺麗に陳列されている。
( ・∀・)「ドーナツはお口に合ったかな?」
急に声がしたので、驚いて顔を上げるとモララーが笑顔で立っていた。
( ・∀・)「ブーン君だね?ショボンさんから聞いてるよ。僕がモララーで、こっちが妻のトソンだよ」
( ^ω^)「おっ、はじめましてですお。ドーナツもケーキも、とても美味しかったですお」
( ・∀・)「ははは、それなら良かったよ。冬休み中はこっちにいるんだろう?いつでも遊びに来るといいよ」
(゚、゚トソン「そうですね、ツンとも仲良くしてあげてください」
( ・∀・)「そうだ、ツンとも顔合わせておいたほうがいいね」
ちょっと待っててくれ、とモララーがツンを呼びに行く。
( ;^ω^)「あ、ま・・・」
( ;^ω^)(うう、やばいお。まだ心の準備もできてないし。というか今日は緊張することが多すぎるお)
(゚、゚トソン「大丈夫ですよ。ツンは少し気が強いけど、根は優しい子ですから」
不安そうなブーンを見て、トソンが微笑む。
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60 名前: ◆IDKgEZ2b96 投稿日:2016/03/31(木) 23:39:00 ID:Zui5vrAE0
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( ・∀・)「お待たせ。これがうちの娘のツンだよ」
モララーの後ろについてきたツンは、小さな顔に切れ長の目、小柄ながらその雰囲気は自信に満ちている。
( ;^ω^)(か、かなり可愛いお・・・)
ξ゚听)ξ「はじめまして、ツンよ。冬休み中はソーサクにいるんですって?」
( ;^ω^)「な、内藤ホライゾンです。ブーンって呼んでくださいお」
( ;^ω^)「ショボン叔父さんのところでお世話になってますお・・・」
心の準備も出来ていないうちに、さらに予想以上に可愛い女の子が出てきて、うまく挨拶ができない。」
ξ゚ー゚)ξ「ブーン、ね。私のことはツンでいいわ。それに、同い年なんでしょ?敬語なんて使わなくてもいいわよ」
おどおどしているブーンが可笑しかったのか、ツンが笑いながら言う。
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61 名前: ◆IDKgEZ2b96 投稿日:2016/03/31(木) 23:39:50 ID:Zui5vrAE0
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ξ゚听)ξ「そうだ、明日は暇?他にも同い年の子がいるし、会わせてあげるわ」
( ;^ω^)「特に何も予定はないお!」
( ;^ω^)(あっ、吃らないようにしたら声おっきくなったお・・・)
ξ゚听)ξ「わかったわ。そしたら明日の13時に迎えに行くわ」
言葉での返答は諦め、コクコクと頷く。
( ・∀・)「そしたら、気をつけて帰るんだよ?ショボンさんにもよろしく言っておいてくれ」
( ^ω^)「わかりましたお!」
3人に見送られ、ショボンの家へと帰る。
冬の夜風は先ほどと変わらず冷たかったが、気持ちは軽くなっていた。
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62 名前: ◆IDKgEZ2b96 投稿日:2016/03/31(木) 23:40:59 ID:Zui5vrAE0
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明日は友だちに会わせてあげると言っていた。
そのことがとても嬉しかった。
(;´ω`)(ただ、話すときに動揺しすぎたお。笑われて恥ずかしかったし・・・)
歩きながら、自分の挨拶を思い出して情けなくなる。
今日みたいな挨拶だったら、バカにされてしまうかもしれない。
( ;^ω^)(十分、気をつけないといけないおね)
( ^ω^)(それにしても、ツンは可愛かったお・・・)
思い出して、少し顔が熱くなる。
明日への不安もあるが、友だちが出来るかもしれないという希望と、またツンに会えるという事実が嬉しかった。
( ´ω`)(だから今日は、少しでも宿題進めるかお・・・)
一瞬風が強くなり、積もっていた雪が中へと舞い上がった。
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63 名前: ◆IDKgEZ2b96 投稿日:2016/03/31(木) 23:41:41 ID:Zui5vrAE0
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以上、第1章【冬休みのはじまり】でした