( ^ω^)の冬休みのようです

1 名前: ◆IDKgEZ2b96 投稿日:2016/03/31(木) 22:01:12 ID:Zui5vrAE0
キーンコーン、カーンコーン‥‥‥。

( ^Д^)「はい、それでは皆さん。気をつけて帰るように!」

(’e’)「よし、急げ!!また隣のクラスにグラウンド取られちまうぞ!!」

さようならの挨拶もおざなりに、男子たちは乱暴にランドセルを背負うと、グラウンド争奪戦に勝利すべく教室を飛び出していく。

女子たちもまた、仲の良いグループで固まり、楽しそうにお喋りをしながら教室を出て行く。

しかし、そのような中でブーンは一人、教室の掃除をしていた。
誰も手伝おうとする人影はなかった。

本来であれば教室の掃除は当番制であり、その当番の班が全員ですることになっている。

だが、みんなブーンに掃除を押し付けて帰ってしまったのだ。
それも掃除当番の班員ではないブーンに。

それでも、ブーンは何も言い返さなかった。
言い返せなかったのだ。

2 名前: ◆IDKgEZ2b96 投稿日:2016/03/31(木) 22:02:58 ID:Zui5vrAE0
ブーンは所謂、いじめられっ子だ。

父親は、物心つく前から他所に女を作って出て行ってしまった。
「片親」というのは、まだ12歳である子どもたちにとって、
ブーンをいじめるに事足るものだった。

また、物静かで人に強く言えない性格のため、頼まれると
ノーとは言えないことが拍車をかけた。

最初は片親ということをからかわれるだけだったが、
次第にそのいじり方はエスカレートし、ついには今のように
「お前は片親なんだから俺らの代わりに掃除をしろ」とブーンを
良いように使うようになった。

時には暴力も伴うことだってある。

だが、担任はそれを知っていても、何も言わずに見て見ぬ振りを決め込んだ。

恐らく、面倒ごとから逃れるためなのだろう。

3 名前: ◆IDKgEZ2b96 投稿日:2016/03/31(木) 22:04:45 ID:Zui5vrAE0
ブーンもそれは分かっていた。

自分がいじめていることを相談したら、先生は怪訝に思うだろう。

僕がいじめの対象でなくなってしまうと、きっと別の誰かが
いじめられてしまうだろう。

彼のその気弱な性格が時として邪魔をし、相談もできず、
言い返すこともできない。

ブーンの精神的疲労は、日に日に増えていくばかりだった。

掃除を終える頃には、教室の中は夕陽によって、鮮やかなオレンジ色に染められていた。

朝陽よりも、夕陽の方が好きだ。

それは、ようやく一日が終わったと実感できるからなのだろうか?

美しい風景は、心に安らぎを与えてくれる、そんなような気がする。

4 名前: ◆IDKgEZ2b96[sage] 投稿日:2016/03/31(木) 22:06:47 ID:Zui5vrAE0
( ´ω`)「‥‥‥帰るかお」

ブーンはそう呟いて、自分のランドセルを背負う。

投げられたり蹴られたりして、傷が目立つランドセル。
母には、転んでしまったんだ、と説明している。

いじめられているということは伝えていない。
毎日仕事で疲れている母には、余計な心配をかけさせたくない。

外靴を一度ひっくり返して中に何も入っていないことを確認し、
上靴から履き替える。
そうしないと、画鋲やら何やらが入っていることがあるからだ。

外に出ると、吐いた息が白くなった。
11月、季節は秋の終わりを迎えていた。

だが、グラウンドでは同じクラスの男子たちが、ドッチボールに熱中していた。
何人かは額に汗を流し、コートを脱いでしまっている。

グラウンドの横を通り過ぎるが、誰一人として、ブーンには目も向けない。

ブーンは下を向きながら、少し足早にいつもの下校道を歩いた。

5 名前: ◆IDKgEZ2b96 投稿日:2016/03/31(木) 22:08:38 ID:Zui5vrAE0
学校から徒歩で15分程度の場所にあるアパートの
102号室が、ブーンの家だ。

鍵を開け、誰もいない部屋の中に、ただいまと小さく言う。

部屋の電気をつけ、隅にランドセルを置く。

テーブルの上の置き手紙には、おかずはあるものを調理してほしいこと。
味噌汁を温めなおして飲むよう書かれている。

母は仕事で、いつも帰ってくるのは遅くになってしまう。

そのため、夕飯の準備は大体いつもブーンがしているのだ。

米を研ぎ、炊飯器にセットしてスイッチを入れる。

それから米が炊き上がるまでの間、ブーンは静かに読書に耽る。

今読んでいるのは、勇敢な少年が、魔法の世界を冒険する話だ。

読むのはいつも、ファンタジーなどの現実とは違う世界の話。

本の世界へ没頭していると、自然と自分がいじめられていることなんて忘れられる。

自分は仲間と一緒にドラゴンと戦っているんだ、と思うことができる。

6 名前: ◆IDKgEZ2b96 投稿日:2016/03/31(木) 22:09:38 ID:Zui5vrAE0
ピピーっという、米の炊き上がりを知らせる音で現実に帰る。

時計を見ると、時刻は18時近くになっていた。

すると、一気にお腹も空いてくる。

読むのに熱中して、空腹を忘れてしまうことはよくあった。

読んでいたページ数を確認し、本をテーブルの上に置き、それから夕飯を作り始める。

普段からこのように料理をしているおかげで、簡単な炒め物などは作れるくらいになった。

時々、母に食べてもらう時は「美味しい」と言ってくれる。

自分の作ったもので、人を喜ばせることができる。

自分に自信のないブーンでも、その感覚は嬉しかった。

7 名前: ◆IDKgEZ2b96 投稿日:2016/03/31(木) 22:10:38 ID:Zui5vrAE0
冷蔵庫に入っていた、豚肉とピーマンを食べやすい大きさに切っていく。
もやしは面倒だが、ヒゲの部分もきちんと取り除く。

それから材料を炒め合わせていく。

香ばしい匂いが空腹をさらに刺激してくる。
同時に火にかけていた味噌汁からも、出汁の匂いが漂ってくる。

食材に十分火が通ったら、塩胡椒で簡単に味付けをする。

皿に盛り付け、ご飯と味噌汁をお椀に盛る。

( ^ω^)「・・・いただきますお」

テーブルへと運び、手をあわせる。

一人でご飯を食べることにも、もう慣れた。

自分はもう小学6年生、いつまでも母に甘えてはいられないのだ。

だから、いじめのことも絶対にバレないようにしないといけない。

8 名前: ◆IDKgEZ2b96 投稿日:2016/03/31(木) 22:11:42 ID:Zui5vrAE0
ただ・・・。

食べながら、色々な事を考えてしまう。

( うω;)「っふぅ・・・。ぅぅ・・・」

クラスメイトの顔や、今日一日されたことを思い出してしまい、どうしても涙が溢れてきてしまう。

自分がいじめられている理由なんて、実際のところよく分からない。

でも、きっと自分がダメな人間だからなんだと思う。

自分の存在が周りを不快にさせているから、いじめられているのだ。

じゃあ何故自分は周りを不快にさせているのか?

一体、自分の何が悪いんだろう?

堂々巡りの考え。
自分の情けなさに、余計に涙が出る。

ブーンがご飯を食べ終わる頃には、もう19時半を回っていた。

9 名前: ◆IDKgEZ2b96 投稿日:2016/03/31(木) 22:12:23 ID:Zui5vrAE0
<ヽ`∀´>「いつからお前は俺に楯つくほど偉くなったニダ?」

(#’e’)「そうだそうだ!内藤のくせに調子に乗んじゃねぇ!」

(  ω )「・・・・・・」

クラスのガキ大将、ニダーから殴られたブーンの唇からは血が出ている。

放課後の教室には、この3人以外誰もいない。

<ヽ`∀´>「ほんっとイライラするニダ。お前なんか早く死んじまえニダ」

(’e’)「冬休み中に自殺しちゃえばー?ww」

10 名前: ◆IDKgEZ2b96 投稿日:2016/03/31(木) 22:13:22 ID:Zui5vrAE0
<ヽ`∀´>「あ、死ぬなら宿題やった後に死ねニダwww」

2人はそう言ってカバンから冬休みの宿題を取り出し、床に座り込む
ブーンに投げ渡して教室から出て行く。

(’e’)「ていうかニダー、内藤の顔触ったじゃん?きったねぇーwww」

<ヽ`∀´>「そういやそうニダ。早く洗わないとニダねwww」

ブーンの耳には、廊下から聞こえてくる悪口など届かなかった。

ただ頭の中は、泣くのを堪えることと、押し付けられた2人分の
宿題のことでいっぱいだった。

11 名前: ◆IDKgEZ2b96 投稿日:2016/03/31(木) 22:14:56 ID:Zui5vrAE0



終業式まで、後3日。

もう冬休みは目前まで迫ってきている。

<ヽ`∀´>「俺クリスマスに新しいゲーム買ってもらうニダ!」

(*’e’)「うっそ、お前マジかよ!」

<ヽ`∀´>「マジニダよー」

(-@∀@)「うらやましいなぁ。そしたらさ、25日はニダーの家に1時集合な!」

(’e’)「そうしよそうしよ!ていうかお前今どんだけゲーム持ってんだ?」

12 名前: ◆IDKgEZ2b96 投稿日:2016/03/31(木) 22:15:55 ID:Zui5vrAE0


クラスメイトたちはみな浮き足立っていて、
冬休みの予定なんかを楽しそうに話している。

( ´ω`)(もう少し・・・。あと3日の辛抱だお・・・)

ブーンも冬休みの到来を心待ちにしていた。

もっとも、それは何か予定がある訳ではなく、しばらくの間いじめから解放されるからだった。

クラスメイトに陰口をたたかれても、もう少しの辛抱だと
自分に言い聞かせることで、堪えていた。

大半の児童たちも冬休みを楽しみにしているため、
ブーンを相手にすることはここ数日は少なかったのだが。

13 名前: ◆IDKgEZ2b96 投稿日:2016/03/31(木) 22:33:52 ID:Zui5vrAE0


しかし、そんな日の放課後に事件は起こった。

<ヽ`∀´>「内藤内藤、ちょっと待つニダ」

一人教室の掃除を終え、帰ろうと廊下に出たブーンをニダーとセントが呼び止める。

(;´ω`)「な、なんだお・・・」

(’e’)「『な、なんだお』だって、気持ち悪りぃwww」

<ヽ`∀´>「まあまあ、良いニダよ。とりあえず教室入るニダ」

走って逃げ出したい気持ちを抑えて、ニダーに促されるまま、ブーンは教室へと戻る。

14 名前: ◆IDKgEZ2b96 投稿日:2016/03/31(木) 22:34:47 ID:Zui5vrAE0


ニダーが適当な机に腰掛け、取って付けたような笑顔で口を開く。

<ヽ`∀´>「俺ら冬休みの予定ありすぎて忙しいからさ、代わりに宿題やっといて欲しいニダ」

(’e’)「なぁいいだろー?どうせ内藤ヒマなんだし」

(;´ω`)「え・・・!?」

小学校生活最後の冬休みの宿題は、来年から中学生ということもあって量も多く、難しい問題もある。

よくある冬休み終了間際に猛ラッシュ作戦は出来ないものだ。

いくら予定のないブーンでも、3人分の宿題をやるのはかなり無理がある。

15 名前: ◆IDKgEZ2b96 投稿日:2016/03/31(木) 22:36:10 ID:Zui5vrAE0


(;´ω`)「そ、そんなの無理だお・・・。あの量はちょっと・・・」

(#’e’)「あ?何で内藤のくせに言い返してんの?」

(#’e’)「あんだけ量があるからお前に頼んでんだろ!」

両手を振って断ろうとするも、セントの強い言い方に体がビクついてしまう。

(;´ω`)「嫌、その、言い返した訳じゃなくて・・・。字見たら僕がやったって
バレちゃうし・・・」

(#’e’)「そんなもんお前がバレないように変えたら良いだろうがよ!!」

怒ったセントが肩を突き飛ばしてくる。

16 名前: ◆IDKgEZ2b96 投稿日:2016/03/31(木) 22:37:29 ID:Zui5vrAE0


<ヽ`∀´>「おい、内藤」

先ほどの顔とはうってかわり、さも不機嫌な顔をしてニダーが立ち上がる。

それをみると、足が震えてしまい後ずさってしまう。

<ヽ`∀´>「3秒数えるから、やるのか、やらないのかハッキリさせるニダ」

(;´ω`)「僕は、その・・・」

焦りと恐れで頭の中がこんがらがる。

この場を乗り越えるための答えを出すことが出来ず、下を向いて黙り込むことしかできない。

(’e’)「さぁーん」

<ヽ`∀´>「にーい」

何か言わなければ、何か言わなければ。
その考えが頭の中をグルグルと回る。

ただ、その肝心な『何か』を出すことが出来ない。

<ヽ`∀´>「いーちぃ!」

17 名前: ◆IDKgEZ2b96 投稿日:2016/03/31(木) 22:38:18 ID:Zui5vrAE0


(;´ω`)「や、やっぱり僕には…!」

咄嗟に口から出たのは、拒否の返答。

その言葉を聞いたニダーは、ブーンの左頬を思い切り殴る。

(; ゚ω゚)「いっつ…!」

殴られた勢いで、尻餅をつく。

唇が切れてしまい、口元をおさえる手に血がついてしまった。

<ヽ`∀´>「・・・いつからお前は俺に楯つくほど偉くなったニダ?」

(#’e’)「そうだそうだ!ブーンのくせして調子に乗んじゃねぇぞ!」

声を荒げ、二人が言う。

18 名前: ◆IDKgEZ2b96 投稿日:2016/03/31(木) 22:39:25 ID:Zui5vrAE0


(  ω )「・・・・・・」

<ヽ`∀´>「ほんっとイライラするニダ。お前なんか早く死んじまえニダ」

(’e’)「なんなら冬休み中に自殺しちゃえばー?ww」

<ヽ`∀´>「あ、死ぬなら宿題やった後に死ねニダwww」

2人はそう言ってランドセルから冬休みの宿題を取り出し、
床に座り込むブーンに投げ渡して教室を出ていく。

二人の顔を見ることも恐ろしくて立ち上がることもできず、
ブーンはただただうつむいていた。

(’e’)「ていうかニダー、内藤の顔触ったじゃん?きったねぇーwww」

<ヽ`∀´>「そういやそうニダ。早く洗わないとニダねwww」

ブーンの耳には、廊下から聞こえてくる悪口など届かなかった。

ただ頭の中は、泣くのを堪えることと、
押し付けられた2人分の宿題のことでいっぱいだった。

19 名前: ◆IDKgEZ2b96 投稿日:2016/03/31(木) 22:40:21 ID:Zui5vrAE0


ニダーたちの宿題をカバンの中に入れ、学校を出る。

外はもう既に薄暗くなっており、冷たい風が肌を刺すように吹いている。

( ´ω`)「寒いお・・・」

ブーンは両手を上着のポケットに突っ込み、俯きながら家へと帰った。

家の中は、ストーブによって暖められていたため、かじかんでいた指先や
冷えた耳が、緩んでいくような感覚になる。

ブーンはランドセルを置き、上着を掛ける。

20 名前: ◆IDKgEZ2b96 投稿日:2016/03/31(木) 22:42:31 ID:Zui5vrAE0


『今日は早く帰れそうなので、晩御飯の用意はしなくても良いよ』

ふと机の上をみると、そのように書かれた母からの置き手紙があった。

一体どうしたんだろうか、と少し考える。

( ^ω^)(まぁ晩御飯の支度をする手間が省けたし、ラッキーだお)

( ^ω^)(それに、久しぶりに母さんとご飯が食べられそうだし)

そう思って、そのまま本を読むことにした。

本を開き、読みかけだったところから読み始める。

しかし、いくら字を目で追いかけても、ニダーたちから押し付けられた宿題のことが頭をよぎる。

そして殴られた頬の鈍い痛みで読書に集中することが出来ず、一向に物語は進まなかった。

( ´ω`)(一体どうしたらいいんだお・・・)

結局、そのまま全然集中できずに本は閉じてしまった。

(;´ω`)(嫌だと言ったら今日よりも強く殴られるだろうし。かといってあの量はとてもじゃないけど厳しいお)

21 名前: ◆IDKgEZ2b96 投稿日:2016/03/31(木) 22:44:02 ID:Zui5vrAE0

頭の中で考えがこんがらがる。

ハッキリと嫌だと言えなかった、どうしようもない自分への叱責。

どんどんと負のスパイラルに巻き込まれていく。

目をギュっと閉じる。
そうしないと、涙が溢れ出してきそうで。

(  ω )(・・・やるしかないのかお)

ため息をついて本を置き、ランドセルから自分の宿題を取り出す。

国語は漢字プリントと、読解問題。
読書感想文が出ていないだけましだ。

算数は6年生で習った範囲を満遍なく。理科と社会も問題数が多い。

自由研究がなくて、本当に助かったと思う。

(  ω )(まずは国語からやるかお‥‥‥)

比較的サクサク解けるであろう国語の漢字プリントから片付けていくことにした。

22 名前: ◆IDKgEZ2b96 投稿日:2016/03/31(木) 22:51:29 ID:Zui5vrAE0


静かな部屋の中には、ストーブの音と字を書く音が響いている。

漢字プリントの2枚目を終えた辺りで、玄関のドアが開く音がした。

ミセ*゚ー゚)リ「ただいまー」

( ^ω^)「おかえりだお、母さん」

外の寒さのせいで、鼻を赤くした母が帰ってきた。

母からは、冬の外のにおいがしている。

ミセ*゚ー゚)リ「あら、もう冬休みの宿題してるの?偉いけど、少し早すぎるんじゃない?」

母が机の上に広げられていた宿題を見て言う。

23 名前: ◆IDKgEZ2b96 投稿日:2016/03/31(木) 22:53:11 ID:Zui5vrAE0


( ^ω^)「来年は中学生になるからって、宿題がたんまり出されちゃったんだお」

( ^ω^)「だからどうせ暇だし、今からやっとこうと思ったんだお」

ミセ*゚ー゚)リ「そうなのね。あら、唇のとこどうしたの?」

ニダーに殴られた場所を母に指摘され、ギクリとする。

( ;^ω^)「今日は寒かったからって走って帰ったら、転んじゃったんだお」

ミセ;゚ー゚)リ「えぇー・・・。本当にもう。気をつけなさいよ?」

24 名前: ◆IDKgEZ2b96 投稿日:2016/03/31(木) 22:54:20 ID:Zui5vrAE0


苦笑いで、嘘の出来事をさも本当にあったかのように伝える。

嘘をつくことには慣れてしまっている自分に対して、嫌悪感を抱いてしまう。

( ;^ω^)(でも、殴られた事を伝えるよりかはマシだお・・・)

もう傷が塞がりかけている唇ではなくて、胸の奥がズキリと痛んだ気がした。


ミセ*゚ー゚)リ「さて、お腹すいたでしょう?今パパッとオムライス作っちゃうからね」

(*^ω^)「やったお!久しぶりにオムライスが食べられるお!」

ブーンは母の作る、シンプルなオムライスが大好きだった。

食べると心も嬉しくなる、そんな味がするからだ。

25 名前: ◆IDKgEZ2b96 投稿日:2016/03/31(木) 22:55:51 ID:Zui5vrAE0


( ^ω^)「何か手伝うことあるかお?」

ミセ*゚ー゚)リ「いいのよー、いつもしてもらってるし。宿題も忙しいんでしょう?」

( ^ω^)「んー、そしたらそうするお!」


母はブーンの返答に微笑み、エプロンを着けて台所に立つ。

それから、髪を後ろでひとつに結び、ケチャップライスの具材を切っていく。

包丁の、トントントンという軽やかな音。

その音を聞くと、ブーンは不思議と安心感に包まれた。


( ^ω^)(母さんが偉いっていってくれたお)

( ^ω^)(・・・尚更、余計な心配はさせたくないお)

そう思い、オムライスが出来上がるまでの間、ブーンは黙々とプリントを解いていった。

26 名前: ◆IDKgEZ2b96 投稿日:2016/03/31(木) 22:56:56 ID:Zui5vrAE0


ミセ*゚ー゚)リ「さぁ、出来たわよ」

食欲をそそる匂いが、ブーンの鼻に届く。

ミセ*゚ー゚)リ「ブーン、運ぶの手伝ってくれる?」

( ^ω^)「おっおっ、わかったお!」

宿題をランドセルへしまいこみ、二人分のスプーンを用意する。


ミセ*゚ー゚)リ「それじゃ、いただきます」

(*^ω^)「いただきますお!」

手を合わせてから、なるべくケチャップ・卵・ライスがいいバランスになるよう心がけて、スプーンをいれる。

27 名前: ◆IDKgEZ2b96 投稿日:2016/03/31(木) 22:57:49 ID:Zui5vrAE0


特別な調味料だとかは使っていない、シンプルな味。

だが、それ故にとても美味しく感じる。

ミセ*゚ー゚)リ「ブーンは本当に美味しそうに食べるねぇ」

むしゃむしゃと頬張るブーンを見て、母が微笑む。

(*^ω^)「ほんとに美味しいからだお!やっぱり母さんのオムライスは絶品だおね」

ブーンもそれに笑顔で返す。

ミセ*゚ー゚)リ「そう言ってくれると嬉しいよ」

母も満足気に、オムライスを口へ運んだ。

28 名前: ◆IDKgEZ2b96 投稿日:2016/03/31(木) 22:59:31 ID:Zui5vrAE0


ミセ;゚ー゚)リ「悪いね、皿洗いしてもらって」

緑茶を啜りながら、母が言う。

( ^ω^)「いいんだお。母さんは仕事で疲れているだろうし、それくらいやらなきゃだお」

皿洗いを終えてかじかんだ手を湯呑みで温めるようにして、ブーンもお茶を飲む。

外を吹く風が、窓をカタカタと叩いている。


ミセ*゚ー゚)リ「そうだ、ブーンに一つ話があったんだ」

( ^ω^)「何だお?」

ミセ*゚ー゚)リ「冬休みのあいだ、ショボン叔父さんのところに遊びに行かない?」

( ^ω^)「ショボン叔父さんって、ソーサクにいる?」

ショボン叔父さんとは、母の弟で、今はソーサクで小さな喫茶店を営んでいたはずだ。

最後にあったのは小学3年生のお正月。

人あたりが良く、柔和な人という印象が残っている。

なによりお年玉をたくさんくれたため、ブーンはショボンに好感を持っていた。

29 名前: ◆IDKgEZ2b96 投稿日:2016/03/31(木) 23:00:38 ID:Zui5vrAE0


( ^ω^)「ショボン叔父さんのとこに行くのは全然構わないけど、それって冬休み丸々かお?」

ミセ*゚ー゚)リ「そのつもりよ。ちょっと長いけどね」

ミセ*゚ー゚)リ「終業式が終わったら、ショボン叔父さんが迎えに来てくれることになってるの」

ブーンは少し考える。

冬休みの間、ソーサクに遊びに行くのはきっと楽しいだろう。

だが、今日の宿題の件がある。

ソーサクに行っていたら、宿題をやる暇なんてないんじゃないだろうか。

30 名前: ◆IDKgEZ2b96 投稿日:2016/03/31(木) 23:01:38 ID:Zui5vrAE0


( ^ω^)(いや、でも・・・)

逆に冬休み中に自分がいなければ、母の家事の負担が減るんじゃないだろうか。

( ;^ω^)(何だか最近、前より疲れて見えるし)

母だって、仕事が休みの日くらい一人でのんびりしたいはずだ。

( ^ω^)「そしたら、折角だし行ってみるお。お年玉もらえそうだし!」

ミセ*゚ー゚)リ「ブーンったら、それ目当てね?」

ミセ*゚ー゚)リ「まぁわかったわ。後でショボン叔父さんに連絡しておくから、明日の夜には荷作りしておいてね?」

( ^ω^)「わかったお!」

ミセ*゚ー゚)リ「そしたら、先にお風呂入っちゃってね」

(*^ω^)「はーい」

31 名前: ◆IDKgEZ2b96 投稿日:2016/03/31(木) 23:02:29 ID:Zui5vrAE0


(*´ω`)(はぁ、あったまるお・・・)

湯船の中でお湯に肩まで浸かりながら、目を閉じる。
今日1日の疲れが、体の外へ滲み出していくような感覚だ。

( ^ω^)(ショボン叔父さんの家かお。久し振りに会うから少し照れくさいおね)

普段、他人とはあまり話さないブーンにとって、叔父たちとの会話が少し不安に思える。

( ;^ω^)(・・・疎まれたりしないかお)

色々なことを考えていたら、だんだんとのぼせてきた。

( ;^ω^)(ふぅ、そろそろ上がるかお)

風呂から出て、バスタオルで体を拭く。

( ´ω`)(宿題は、空いてる時間にコツコツやれば何とかなるお)

(  ω )(きっと、何とかなるはずだお・・・)

少しでも前向きに考えよう。
そう思いながら、パジャマへと着替えた。

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