('A`)便利屋ドクオの野暮用です

208 名前: ◆PizzaMan.c[] 投稿日:2016/05/04(水) 03:40:12 ID:GCRBwiXg0

 2kmほど歩いただろうか。
気づけば俺は見慣れない街にやってきていた。
それもそのはず。施設から近くの繁華街までの道しか行き来しなかった俺にとっては、この国はあまりに広すぎる。

 ポケットから取り出した紙に載っている住所を頼りに、俺は歩き続けた。


 辺りを歩いている人――この時間になると酔っ払いしかいなかったのだが――に聞いてみると、どうやらここから見える豪邸がその場所で間違いないらしい。


 近くで見てみるとすでに、部屋の電気は消されている。
ただ唯一、小さな小窓から、薄らぼんやりと明かりが漏れていた。


 塀を登り、あたりを見回す。
流石にこの時間になると、使用人らしき人影もない。

 いくらこれほどだだっ広い豪邸を持つ金持ちとはいえ、そんな警備に金を回すのは無駄だと思える。


('A`)「……よっと」

209 名前: ◆PizzaMan.c[] 投稿日:2016/05/04(水) 03:40:51 ID:GCRBwiXg0



       |::::::::::::::::::::::::::::::::::::|                               |::::::::::::::::::::::::::::::::::::::|
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        ゝ:::::::::::::::::::::::::::::::::::シ                            匕::::::::::::::::::::::::::::::::::::シ     (    )
      丿`  ̄ ゙ ~  ̄ ` ̄ ´i                              i ` ̄ ゙ ~  ̄ ` ̄ ´\     )   )
     r´            }                             {            `ヽ  ノ  ノノ
     ト-‐ '´ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄7 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄V ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄`' ‐イ ∠ノ ゞ゙´、
     `────────';.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.'────────´ ザッ
:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;::;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;::;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:



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210 名前: ◆PizzaMan.c[] 投稿日:2016/05/04(水) 03:41:32 ID:GCRBwiXg0

 手入れだけでも金がかかるであろう立派な芝を踏みしめて、例の小窓へゆっくりと歩き出す。

 やはり近くで見ても、人が通れるほどの窓ではない。
高い位置にあるため、中を確認することも難しそうだった。


 仕方ない。

 明かりの漏れる小窓から侵入する事を諦め、その隣の大きな窓を覗く。
カーテンのおかげか、はっきりと中は見えない。たが恐らく、目的の部屋とは繋がっていないのだろう。



              __r 、
            ///`Yヽ
            /// :/  〉
          /// :/  /'. '、
          ///_,/ ./  . .
        /ーr' /  /   ' 、
      _,/ / /  /
      //=彳/ ./      '.
    //// /o :/⌒i
    //// /  /`ー/_
  〈/// /   /  /{   Yー、
    \ / /   '´  ,人_,丿 スッ



ガシャーン


.

211 名前: ◆PizzaMan.c[] 投稿日:2016/05/04(水) 03:42:19 ID:GCRBwiXg0

 取り出した拳銃を振りかぶって、グリップエンドで窓を強く叩いた。


 思わず自分でも耳を塞ぎたくなるほどの音が響く。
粉々に砕け散ったガラスは、チリチリと音を立てながら地面に転がっていく。


 あまり時間はかけるべきではない。
俺はすぐに屋敷に侵入し、辺りを見回した。

 月明かりでうっすらとしか見えなかったが、ちょうど正面にあった扉へと駆けだす。

 あまり時間はない。
扉のノブを回して、廊下へと出る。


 廊下は、先程の部屋よりもずっと暗い。
壁伝いに手探りで、先ほどの小窓がある部屋を探す。

 指先に触れた冷たい物。それがドアノブであることを理解した俺は、すぐにそれを回した。

212 名前: ◆PizzaMan.c[] 投稿日:2016/05/04(水) 03:43:15 ID:GCRBwiXg0


       ||:::::::::::::::::::::::::::::::::::::/. . : : 、へ : : : : : : : : : ::l' :: : : :.::|:.:
       ||::,r‐r⌒ヽー─‐-イ . : : /::::::::|\ : : : : : : .: : | : : : :::|:.:.:.:i
   ガチャ ||::lヽ^づ 〈: : : :.:: :.:: :.:/ : ::::::::::!  \ :. : : : : : |_ :: : : ::|:.:.:.:
       ||::::ヾ_つっ'ー──一´:::::::::::::::::::|   .ヽ,:..: : ::/⌒:: : ::/:.::
       ||:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::|    ヾ.::/ .. :.:.::/
       ||:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::|   iて ̄` ヽ::.::/ _
       ||:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::|   し'て_, ノ'ij`´´ ..:.
       ||:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::| 



 しかし、いくら回しても扉は開かない。


('A`)「チッ…………」


 鍵が、中からかけられている。


('A`)「……仕方ねぇ……なぁッ!!」



__________
   |
   |_
   ||    ドンッ
   ||('A`)
  . c||f|:-:fヽ= -
   ||' V_ |、 , 、
   || し^ヽ) , .' ;
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄



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214 名前: ◆PizzaMan.c[] 投稿日:2016/05/04(水) 03:44:48 ID:GCRBwiXg0

 勢い良く、扉に体当たりをする。
だがそうそう簡単に破れるはずもない。


('A`)「クソッ……」


 拳銃を構え、銃口を蝶番に向ける。





                        ダァン           .ィ≦,
                      i              .イl  ∧
                 \      .|!   .i           } l   ∧
      \ 、         \    .|l  .|           -= l l ̄l ∧
        \`''<_)'" ̄ ̄ ̄\  |.!   |        ,, '" 7  .l l_l ∧
         ヽ           \j l、Ⅵ      ,,'    ̄}. .l   ∧
          }               |   ,, '     -=≦ .l 「 ̄∧
       、_           __    |  /         -≧,l l  ∧
     __}              ̄ ̄ /          , ≧《∧ l l  ∧
      \                 / ≧=-      /   V∧ l l  ∧
    -==          [〕       ⊆二二 ̄    ,l    V∧ l l  ∧
     }        ,       〈〉  ( ̄ ̄ ̄        j    V∧ l l  ∧
---  ̄\         i   rュ       \       r'"     V∧ l l  ∧
       )      l      「y7  --く ̄ ̄  . イ        V∧ l l  ∧
    _≠---ァ    ` 、        \   \    .ノ        V∧ l l___∧
        /           /`勺\.        ,|             V∧ l  |l |l ∧
       ̄ ̄ ̄〕       イ           / 、           }`ヾ l |l 斗'”
           ̄`'つ_,,'"                 Λ          ,ノ斗'"
                ̄ /                  ‘、         {
            /                      /ヽ            l
                                     /   \        ;
                                      ヽ         ‘、
                                     ‘.       ‘、
                                     ‘.         ‘、
                                      ‘.         ‘、
                                      ‘.           ‘、



.

215 名前: ◆PizzaMan.c[] 投稿日:2016/05/04(水) 03:45:29 ID:GCRBwiXg0

 拳銃から放った一発きりの銃弾で、蝶番は根本からひん曲がり、少し力を入れれば簡単に外れてしまいそうになる。


 もう一度、扉に体当たりをした。




__________
   |
   |
       ドカッ
/  ('A`)
   f|:-:fヽ= -
、// ' V_ |、 , 、
 'ヽ、し^ヽ) , .' ;
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄



 蝶番を弾き飛ばして、木製の扉は勢い良く倒れ込む。

 体勢を整えながら、俺はすぐに室内を見た。



 そこで見たものは、ナイフを構える一人の男と、後ろで泣きじゃくるミセリの姿だった。



.

217 名前: ◆PizzaMan.c[] 投稿日:2016/05/04(水) 03:46:45 ID:GCRBwiXg0

ミセ*;ー;)リ「……ど……ドクオ……?」



('A`)「……、ミセリ……」



「ッ……なんだお前……」

  (;^Д^)          (A` )
  /  vロ|っA         |-h.|
  |U_ : _ |           i_U_j 
  (/^ヽJ     .      し^J
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄



('A`)「…………」





                lニゝ!∨ミl、
               i".,,∠二-、゙'、
               │.|.l.;;;;;;;;;゙l.} !  スチャッ
             ! `'`-ニ'" .l
              |       |
               .!   .○   |
          _..-'''゙.!       l.'''‐、
          /´   .|"ーi--‐i''''}  .l
         l     ゙'!、 l  .! ,! '!、.ヽ
        !      ̄` !  .l  ミヽ..,__丿
       ,/ ヽ       .|  .,! .'''''/'i 
     l゙   .ゝ....-- ..,,,|  .し,,,,,,ゾ
      ヽ         、 .`'"     / .
       /  .\   !     ./ ,〃



.

218 名前: ◆PizzaMan.c[] 投稿日:2016/05/04(水) 03:53:24 ID:GCRBwiXg0

(;^Д^)「くっ…………」


('A`)「……プギャー、だったか」


(;^Д^)「……だから……どうした……」


('A`)「いや、特に意味もないさ。名前くらい聞いても悪くないと思ってな」


(;^Д^)「……クソガキィ……何しに来やがった……」




(;^Д^)「――――ッ!!」




    
                                         /^ヽ
                                        (⌒)'
           _ , . ; :'''"´"'' 、                     ; ;,,
        _ , .            、, ___-l二ヽ_______ ;  ;    _-、──、__/三'>
   --=" ;,_  ; :   .       ()======| ───────┐.|     .|,,;;,,, ,,,;;;,,()~-/ ̄l/、 ◎)\
                       l_,' ̄ ̄  |__┌--┬──┴┴─┴────── ' l l l l l ',__.`-' l. l
            ´"''''- ''"   l,_ヽ__   __|三三三三|_________l_l_l_l_l_l_l_l_l_l_l_l_.l
                      ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄`- 、_ O __○二二三l/ ̄ ̄ ̄ ヽ ̄
                          ダァンッ      `v'~ |  | |`) |::::::(_,ノ-,/      ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
                                     l'、_ヽ_)' ノO l:::::::::::::::::::`、
                                     ` ̄ ̄ ̄ ̄(  ̄ ̄)::○::::::::ヽ
                                          (`─ー&llt;::::::::::::::::ヽ;;::..
   .                                        (ヽ___ ,ノ:::::::::::::::/     ノ___
                                            ヽ__/二二二l_,.-~ ̄


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219 名前: ◆PizzaMan.c[] 投稿日:2016/05/04(水) 03:54:11 ID:GCRBwiXg0

 銃口が火を吹き、目の前の男が額に大きな穴を開けて、ゆっくりと崩れ落ちる。
硝煙が、まるでタバコの煙のようにゆらゆらと立ち昇り、やがて消えてゆく。



ドサッ



ミセ;゚ー゚)リ「……ッ……」


('A`)「……ミセリ……」


 怯えた表情で俺を見つめるミセリに、投げかけられる言葉などなかった。


ミセ;゚ー゚)リ「……そいつは……死んだの……?」

('A`)「ああ。死んださ」

ミセ;゚ー゚)リ「……助けに来てくれたんだね……」

('A`)「…………」

ミセ;゚ー゚)リ「……怖かった……」



.

220 名前: ◆PizzaMan.c[] 投稿日:2016/05/04(水) 03:59:33 ID:GCRBwiXg0


         V: : :ム   、    u   /: : : : : : ,:|: : : ,: l
.        /;ィ: : : ::.   ` _    /イ: :/: : : : /:l: : :/ヽ!
         / l: : : ::ゝ、  '─`   / l: : : : /: リ' |: :/
          }: : /ノリ:>, 、   , ィ '.i: : ;ィ"}イ'  |/'
          l: / ' レ'V  / = l , ェ= |/   |ヘ、
          V,-、  _ ィリ_/^∧     /  `ー 、__  _
          / / >'´___, !!-rュ_」__  __/       /´ `ヽ
.         /  ' / /    zム」ー  ` ー,     ./     ∧


          「……怖かったよ………」


 






 彼女はそう言って、涙を落とした。

 いくつも、いくつも零れ落ちる涙が、彼女の足元を濡らした。



.

221 名前: ◆PizzaMan.c[] 投稿日:2016/05/04(水) 04:00:08 ID:GCRBwiXg0

('A`)「お前に、これを渡したかったんだ」


 バッグの中から小さな箱を取り出して、それをうずくまる彼女にそっと手渡す。


ミセ*゚ー゚)リ「……これって……」


 彼女が包みを解いて蓋を外すと、その中から、小さなペンダントが姿を現した。


ミセ*゚ー゚)リ「ッ…………」


('A`)「…………ごめんな」


ミセ*゚ー゚)リ「……どうして……?」


ミセ*゚ー゚)リ「どうして謝るの……?」


('A`)「…………」


 握りしめたままの拳銃をベルトの隙間に挟み、再びバッグの中からひとつの封筒を取り出した。

222 名前: ◆PizzaMan.c[] 投稿日:2016/05/04(水) 04:01:30 ID:GCRBwiXg0

('A`)「……もう、会えないからだ」


 29枚の紙が包まれた封筒を、床に置いた。


ミセ;゚ー゚)リ「……どうして?」


('A`)「……わかってるだろ……?」


ミセ;゚ー゚)リ「…………」



                !       i
            ,L. __    /'
            Y´ ̄二 /〉
             |       /!
            |    ./ 」!
                l       !l
               |        |ム
             │     | ∧
                 !      |'/∧
                 |        ! /L_
                |        l / ̄〉
               |       |  /∧
              |     /`i ′,∧
             |L... _     │ /'/∧.
                  「 ̄ `   /  ′/ ∧.
               |..__ , /〕、   _」.
             / ̄ `   ̄|    ̄ ,〉
                ∠.. _     /!-‐=ニ />..
          ∠ ̄   ̄二ニ、 厶-、 , '/ 〉
       r‐=≦ ̄ `      ∨   //`ー'´
       iL.. ____r‐=iニニ」二ニ´/'  キュッ
       `  ̄ ̄ ̄ ̄ ´  ` ̄  ̄ ̄´

    「お前は、まっとうに生きてくれよ……」




.

223 名前: ◆PizzaMan.c[] 投稿日:2016/05/04(水) 04:02:04 ID:GCRBwiXg0

 踵を返して、扉へと戻る。



 これでいいんだ。


 汚れてしまったこの手で、彼女に触れることは許されない。


 どんなにねじ曲がった運命でも、どんなにひねくれた生き方でも、俺はそうすることを望まない。


ミセ; ー )リ「……ドクオ……」


('A`)「……じゃあな」

ミセ; ー )リ「……待ってよ…………」




      _/,. <: : : :.     l     u  /: : : : : : : : :l: : : : :|
       ̄  ,.>: : : ',    `      ,/:.ィ: : : : : : : : ト=、; ;|
       /: : : : ::ム.    rー--‐‐、 "´ |: : : : : x: : |}  `ー==ヽ__ _
      /:/´|: : : : 人.   ∨、_ノ)   ,.|: : : ::/ ヽ||      }::::::}´ ヽ
      "   |: : :∧: : }7> 、`ー - ' . < 〉: /   リ     /::::/   丶、
         ヽ::/ /〉ノ:l   |>ー <  / Y     /      l::::l       ヽ
           / |::::::|   {   rヽf´ミ      /      /::::|       \
          {  {::::::{   ヽ  j  ′∧     /      /::::::|         \

           「……待ってよドクオ!!!」




.

224 名前: ◆PizzaMan.c[] 投稿日:2016/05/04(水) 04:02:39 ID:GCRBwiXg0


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 ̄  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄




 扉越しに聞こえた、“ありがとう”という言葉を。




 俺は一生忘れることはないのだろう。










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225 名前: ◆PizzaMan.c[] 投稿日:2016/05/04(水) 04:03:45 ID:GCRBwiXg0

 しばらく歩いて、俺は繁華街へとやってきた。

 再び小汚い路地を歩いて、ギャングたちの溜まり場へと向かう。
空き缶、吸い殻、ゴミ袋、ギャング。まさにゴミ溜めと呼ぶに相応しい。
俺はきっと、こんな街でしか生きられないのだろう。



     ( 'A)
     |":-っ" 、
     j._-|
    ,、し^J
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄


 咥えていたタバコを放り投げて、歩みを進める。


 そんな時だった。



.

226 名前: ◆PizzaMan.c[] 投稿日:2016/05/04(水) 04:04:22 ID:GCRBwiXg0


    Ω  ( 'A)
 - = j.-) . |":-っ
ダッ j__/  j._-|
 、,し^j  、.し^J  、.' ポトッ
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄


「オラッ!!」
       Ω (;'A)
  グイッ  j'-|=|":-っ ,
   - = j__/ j._-|⊇.
    、,し^ j  |_)  、'. ,
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄


       Ω
       j'-|    ドサッ
       jU|  (;'A)彡   . ,
     '. (/^j 人_-ヽ∧'、. ,
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄



 不意に後ろから掴みかかられ、俺は地面に尻餅をついた。
突然の事に、状況を理解するのに時間がかかる。


Ω「動くなよ、クソガキ」
 っy=゙ チャッ

(;'A`)「――ッ!」



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227 名前: ◆PizzaMan.c[] 投稿日:2016/05/04(水) 04:06:54 ID:GCRBwiXg0

 一人の男が、俺の脳天に銃を突き付ける。

 いや、一人ではない。
前後からぞろぞろと姿を現す、男たち。


 俺が来ることを、予見していたのか。
彼らは揃って俺に銃を向け、鋭い目つきで俺を睨み付ける。


ザッザッ


Ω「ほんとに来るとはなァ。ギコの言ったとおりだぜ」

(;'A`)「…………」


 俺の正面に立つ6人の男たちを押し退けるようにして、ギコがゆっくりと姿を現した。


(,,゚Д゚)「どこから手に入れたんだから知らねえが、拳銃なんて持ってるんじゃあな。下手に力を手に入れた奴は、調子に乗るもんさ」


 彼はその頬に残る傷跡を指でなぞりながら、ため息をこぼす。


(,,゚Д゚)「眠らせろ」


 彼のそんな言葉と同時に、俺の後頭部に走る重たい衝撃。
俺はそれに抗うこともできず、意識は暗い闇の底へと落ちていった。









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228 名前: ◆PizzaMan.c[] 投稿日:2016/05/04(水) 04:07:37 ID:GCRBwiXg0

 俺が目を覚ました時には、あれから数時間が経過していた。


 トタンの壁に囲まれた、薄暗い部屋。
元はどこかの工場か、あるいは作業場のようなもの。恐らく、彼らのアジトなのだろう。
その中心に、俺は転がされていた。


(,,゚Д゚)「ようやく目を覚ましたか」


 両腕は背中に回され縄で縛られており、簡単には外せそうにない。
かろうじて、立ち上がる事だけは出来そうだった。
だが今はまだ、その時ではない。

 ギコは落ちていた角材を拾い上げて、俺の顔を睨みつける。
彼の周りには、男が数人。皆、拳銃や角材を手に持っていた。


(,,゚Д゚)「お前に聞きたいことがあってな」


 コツ、コツと音を立てて、ギコは俺に歩み寄る。


(;'A`)「……なんだよ……」

(,,゚Д゚)「わかってるだろう? 金の在り処だ」

(;'A`)「……30万ごときに、そんな必死になってるのか?」

(,,゚Д゚)「……、ゴルァ!!」ブンッ

(;'A`)「――ッ!!」ドゴッ

229 名前: ◆PizzaMan.c[] 投稿日:2016/05/04(水) 04:08:18 ID:GCRBwiXg0

 ギコが振り上げた角材が、俺の肩へ直撃する。

 それほど重い角材ではない。だが痛みは確実に、俺の神経を蝕む。
これは、俺を殺す事が目的なのではない。あくまで、痛めつけて情報を吐かせるつもりなのだ。


(,,゚Д゚)「30万なんて金はどうだっていい」


 吐き捨てるように、彼は言う。


(,,゚Д゚)「お前の暮らしていた、施設の金だ」

(;'A`)「…………」

(,,゚Д゚)「あの施設が子供を大金で売り捌いてるのは、この界隈じゃ有名な話だ。その金だよ」

(;'A`)「……知るわけ無いだろ……」

(,,゚Д゚)「ゴルァ!!」ブンッ

(;'A`)「――ッ!!」ドゴッ

(,,゚Д゚)「言え!!」


 角材を振り回しながら、彼は凄みをきかせる。
それを恐ろしいとは思わない。だが、角材が食い込む痛みは、味わっていて楽しいものではない。

230 名前: ◆PizzaMan.c[] 投稿日:2016/05/04(水) 04:09:13 ID:GCRBwiXg0

(,,゚Д゚)「……あの施設に、警察が集まっていた。聞いた話じゃ、先生が殺されたそうだな」

(;'A`)「…………」

(,,゚Д゚)「先生を殺す理由なんて、一つしかないだろう。それは、金だ」


 確かに、彼の言う事も間違ってはいない。いや、そう考えるのが妥当だろう。
実際に俺がどういう目的をもって彼女を殺したかなど、彼らには関係がない。
そして事実、あの時俺は大金の在り処を探していた。


(,,゚Д゚)「教えてもらおうか」

(;'A`)「……知らないって言ってんだろ……」


 今更、彼に教えたところでどうなると言うのだ。
あの金は、子供たちの誰かが持ち去ったかもしれない。もしくは、警察が管理しているかもしれない。
そして、それを教えてしまったら、俺は用済みになってしまう。

 彼に教えるか、教えないか。どちらを選んでも意味はない。選択肢など、無いも同然だった。


(,,゚Д゚)「……ならば、見当がつくまで考えてもらうしかないなッ!!」ブンッ

ドゴッ

ブンッ

ドゴッ

231 名前: ◆PizzaMan.c[] 投稿日:2016/05/04(水) 04:09:47 ID:GCRBwiXg0

 肩に、足に、痛みが走る。
何度も何度も振り下ろされる角材は、俺を絶え間なく痛めつける。

 時折休憩を挟むようにして、彼は俺に同じ問いかけをする。
俺の返事も、また同じものだった。

 止むことのない痛みに、終わりは来るだろうか。
いや、俺がそう望んでいるだけであって、ギコには一切そのつもりはないのだろう。

 しかし俺は、その僅かな希望に縋り付く。縋り付こうとする。









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232 名前: ◆PizzaMan.c[] 投稿日:2016/05/04(水) 04:12:02 ID:GCRBwiXg0

 それから、一時間ほど経過しただろうか。
血が流れ出るほどの怪我を負わされることはなくとも、俺の全身にはいくつものアザが出来上がっていた。

 もはや痛みなど通り越して、俺はただ、全身の苦しさだけを味わっていた。


(,,゚Д゚)「吐く気になったか?」

(; A )「…………」


 もうこのまま、リタイアしてもいいのではないだろうか。

なぜ俺は、ギコが諦めるなんていうあり得もしない希望に縋り付いているのだ。

 真実を話せば、きっと彼は俺を楽にしてくれる。


(,,゚Д゚)「……足りないようだな」スッ

(; A )「ッ……まっ……まて……」

(,,゚Д゚)「…………」


 俺にはもう、耐えきれない。

 どうせこんな生き方では、命も長くは保たないのだ。
数年もすれば、路上に転がる空き缶のように、俺は無様な死を遂げる。あるいは灰皿に放置された煙草のように、じわじわと息絶えるのだ。


(; A )「…………金は…………」


 ゆっくりと、口を開く。
脳内から無抵抗に流れ出す言葉を、遮ることはしない。


 全てを諦めた。その時だった。

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