('A`)便利屋ドクオの野暮用です

168 名前: ◆PizzaMan.c[] 投稿日:2016/05/02(月) 16:09:39 ID:/bf6AHok0

「ハァ……ハァ……ッ!!」

    (;'A)
   ノ/-/o
    j._/|  ダッダッ
  ;.、ノイ、)
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄







 俺はなんて、馬鹿なことを。







「ハァ…………うぐ……ッ!!」

       、 ,
       ;.、vr⌒ち(;'A)っ ドサッ
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄






.

169 名前: ◆PizzaMan.c[] 投稿日:2016/05/02(月) 16:10:18 ID:/bf6AHok0

 でもまだ、死ぬわけにはいかないんだ。







『待てやクソガキィ!!』






         「……クソッ!!」

            (;'A)
            /,-|、  スクッ
            j._/U
           .,」^、〉 .,
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄










.

170 名前: ◆PizzaMan.c[] 投稿日:2016/05/02(月) 16:11:01 ID:/bf6AHok0

 男たちの叫び声が聞こえなくなるまで俺は走り続けた。



 もう何十分走っただろうか。

 脚は棒のようになり、走る速度も先程よりも随分と遅くなってしまった。

 それでも、ふらふらとよろけながら走り続けた。



 そして暗い路地の角を曲がったその時。


ドンッ

(;'A`)「うわっ!」ドサッ


 不意に何かにぶつかって、地面に転んでしまった。




「おっと…………」


.

171 名前: ◆PizzaMan.c[] 投稿日:2016/05/02(月) 16:11:52 ID:/bf6AHok0

 そんな声が聞こえてはじめて、ぶつかったのが人だと理解した。



 見上げるとそこにいたのは。




「……大丈夫か坊主」
    _
   ( ゚∀゚)
   ri:::|_|::|
  /ロ/n|j:|     (A`;)
   し/^J 、, ∧イ-.人
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄


 黒いロングコートに見を包み、右手をポケットに突っ込んで佇んでいた、一人の男だった。

 太くしっかりとした眉毛が特徴的なその男は、地面に尻をついて倒れ込んだ俺に手を差し伸べていた。



「……手を貸せよ」
    _
   ( ゚∀゚)
   ri:::|_|::|っ
  /ロ/n|j:|     (A`;)
   し/^J 、, ∧イ-.人
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄


.

172 名前: ◆PizzaMan.c[] 投稿日:2016/05/02(月) 16:12:38 ID:/bf6AHok0

(;'A`)「…………」

 ぶつかってしまったのは俺の方だ。
急いでいるとはいえ彼の好意を邪険にする必要もなく、俺はその手を掴んだ。


  \
    \
      \, -. . ,_  ガシッ
  \       ノ  ';,
    'ヽ, .   し^ ' .ヾヽ、
     '-:'_'、     .'ヽ、) ヽ、
       '-ヽ、 ',._',-'   \
            ^'   \
                'ヽ 

  _
( ゚∀゚)「よっと」


 グイッ、と強い力で引っ張られ、俺の身体は簡単に持ち上がる。

  _
( ゚∀゚)「……ガキか?」


 俺の顔や背丈、体重からそう思ったのか、彼はそう言った。

 俺はまだ、子供に見えてしまうのか。

173 名前: ◆PizzaMan.c[] 投稿日:2016/05/02(月) 16:13:17 ID:/bf6AHok0

('A`)「…………」
  _
( ゚∀゚)「前見て歩けよ。……いや、走ってたか」

('A`)「…………」
  _
( ゚∀゚)「……ひょっとして、逃げてんのか?」

(;'A`)「ッ…………」
  _
( ゚∀゚)「やっぱりか」


 なんだ、この男は。

 俺が子供だと見抜いたり、逃げていると見抜いたり。


 まさか――。

  _
( ゚∀゚)「警察じゃねぇよ、安心しろ」

(;'A`)「ッ…………」


 俺が思った事すら、見抜かれる。

  _
( ゚∀゚)「……警察だと都合が悪そうだな。ってことは……何かやらかしたな?」

(;'A`)「…………」
  _
( ゚∀゚)「だんまりかよ」

174 名前: ◆PizzaMan.c[] 投稿日:2016/05/02(月) 16:13:50 ID:/bf6AHok0

 怯えているのでも、不審に思っているのでもない。

 驚いているのだ。
驚いて、何も言えない。

  _
( ゚∀゚)「安心しろよ、追手は来てねぇみたいだからよ」

(;'A`)「……それならよかった……」
  _
( ゚∀゚)「んで、その封筒は?」

(;'A`)そ「ッ!」


 そう言われて気がつく。
 大事に抱えていたはずの封筒が、手元にない。

 男が指差す方向を見ると、封筒は俺が先ほど転んだ辺りに転がっていた。


(;'A`)ササッ
っロ゛
  _
( ゚∀゚)「……金か。盗んだな?」

(;'A`)「…………」
  _
( ゚∀゚)「誰から盗んだ」

(;'A`)「…………ギャング……」
  _
( ゚∀゚)「ギャング? ってーと……ギコあたりか?」

(;'A`)「……そう……」
  _
( ゚∀゚)「…………プッ……」


 _
(*゚∀゚)「……ハハハハハッ!!」

  _
( ゚∀゚)「おいおい、マジかよ。やるじゃん」

175 名前: ◆PizzaMan.c[] 投稿日:2016/05/02(月) 16:14:41 ID:/bf6AHok0

 男は、笑った。


  _
( ゚∀゚)「で、その追手から逃げてるってわけ?」

((;'A`)コクコク
  _
( ゚∀゚)「……いやー、面白い奴もいるもんだな。笑えるぜ」


 男はそう言いながら、ロングコートを捲くって腰のあたりから何かを取り出した。

  _
( ゚∀゚)「こいつをやるよ」
   っ=y


 男が俺に差し出したのは、拳銃。

 黒いスライドから剥き出しになった銀色のバレルが、月明かりを反射させていた。


(;'A`)「えっ?」
  _
( ゚∀゚)「銃は持っておくと便利だ。見せびらかすだけでお前の身を守る盾になり……」






「……相手を殺す武器になる」





.

176 名前: ◆PizzaMan.c[] 投稿日:2016/05/02(月) 16:15:24 ID:/bf6AHok0

(;'A`)「…………」

  _
( ゚∀゚)「構うことはねぇよ。俺はもう一丁持ってるからな」


(;'A`)「…………なんで……」
  _
( ゚∀゚)「?」

(;'A`)「なんで俺みたいな知らない奴に、こんなものを渡すんだ……?」
  _
( ゚∀゚)「……ハッ。何を言い出すかと思ったら、そんなことか」



 彼は笑って、空を見上げながら言った。


  _
( ゚∀゚)「昔の俺に、よく似てるからだよ」



('A`)「…………」
  _
( ゚∀゚)「いいから受け取っとけ」
   っ=y

('A`)「……じゃあ……」ガシッ
っy=゛

177 名前: ◆PizzaMan.c[] 投稿日:2016/05/02(月) 16:15:57 ID:/bf6AHok0

 彼から拳銃を受け取る。
拳銃を手に持つのは、初めての事だ。


('A`)「ッ……」
  っy=


 想像していたよりも、重い。

 グリップは大きく、自分の手には少し余る。
だが、トリガーやマガジンリリースボタンに届かないほどではない。

  _
( ゚∀゚)「使い方はわかるか?」

('A`)「……まあ、本とかで……」
  _
( ゚∀゚)「ならいいな。とりあえず撃てればいいんだ。メンテナンスなんかはまた覚えればいい」


 セーフティの位置も、見ればわかる。
弾も既に入っているようだ。


('A`)「……こんなもの、本当にもらっていいのか? 高いんじゃ……」
  _
( ゚∀゚)「気にすんなよ。俺は結構稼いでるし、仕事柄いくつも持ってるからな」

('A`)「仕事柄……?」
  _
( ゚∀゚)「ここらじゃ結構名の知れてる殺し屋さ。もっとも、お前みたいなガキが知ってるわけもねーが」

('A`)「殺し屋……か……」

178 名前: ◆PizzaMan.c[] 投稿日:2016/05/02(月) 16:17:09 ID:/bf6AHok0

 殺し屋がどういったものなのか、想像はできる。
ただ実際に、俺の目の前にいるこの親切な男が殺し屋だなんて――、正直なところ合点がいかない。

 こんなものだろうか。

 檻に閉じ込められた子犬を解き放つような、そんな優しさが。
殺し屋の心にはあるのだろうか。



 ――いや、これは優しさと似ているようで、きっとまるで別ものなのだ。

 そうでないと、子犬に牙を与える理由にならない。




('A`)「……ひとつ聞いていいか」
  _
( ゚∀゚)「……なんだ?」

('A`)「そういう生き方って……大変じゃないのか」
  _
( ゚∀゚)「……ハッ。そりゃ大変さ。人を殺し回ってりゃ、警察や法律と戦わなきゃなんねー時もある」

  _
( ゚∀゚)「ただよ……」

  _
( ゚∀゚)「俺たちみてーな人間が手っ取り早く“自由”を手に入れるためには、“銃”を手にするしかないんだよ」

179 名前: ◆PizzaMan.c[] 投稿日:2016/05/02(月) 16:17:46 ID:/bf6AHok0

('A`)「…………」

  _
( ゚∀゚)「とても人にオススメできるようなもんじゃねぇ。けど…………、お前は望んでるんだろ?」


('A`)「…………ああ」






:.| ∨: : :|ハ:!         //‐ ´   i: : :    : : : : : /::::::::/
:.ゝ-V: :.| ヘ、                |: : : .  . : : : : :厶イ/ _
: : :.|..∨ム                   |: : : : . : : : : : : : /:/    > .
ハ: :.! iヾ:.i                 {: : : : : : : : : : : イ:/ \     > .
.∧..i.....i \              __    j: : : : : : : : : , i:::/    \       `
.... Ⅵ.....i  \            `  〃: : : : : : : , '....|::′、     \
........ヘ.....i    \       ___,........__: : : : : :., '........j/......∧     \
.................i      \       ` ー─一 ´: : : /∨...................∧      \
..................i        \       ̄:::::: : : :./   i..................... ∧       \

       「……こいつがあれば、俺は自由だ」




.

180 名前: ◆PizzaMan.c[] 投稿日:2016/05/02(月) 16:18:39 ID:/bf6AHok0
  _
( ゚∀゚)「……ハッ。そいつはよかったな――――」



『この辺にいるはずだ!!』




(;'A`)「ッ……!」



 不意に、後方から声がする。

 大勢の足音とともに、その声は段々と近づいてくる。


  _
( ゚∀゚)「…………さて、俺はこの辺りでお暇するか」

('A`)「…………」
  _
( ゚∀゚)「ビビってるのか?」

('A`)「……いや……」



('A`)「…………ウズウズしてるだけさ」

181 名前: ◆PizzaMan.c[] 投稿日:2016/05/02(月) 16:19:29 ID:/bf6AHok0

       「……ハッ。……それじゃあな」
              _
.    (A` )     n( ゚∀゚)
    |-h.|  .    'ヽ|:::|_|::|
    i_U_j      /ロ/n|j:|
    し^J    ; .、し/^J ザッ
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄




 やがて彼は、この路地裏から姿を消した。

 まるで初めからいなかったかのように。
夢でも見ていたのではないかと思わせる。


 しかし俺の右手には、確かに銃が握られている。



Ω「いたぞ!!」ダッ


 やがて路地の影から姿を表した3人の男たち。

 ギコはいない。そもそも追いかけて来なかったのだろう。

183 名前: ◆PizzaMan.c[] 投稿日:2016/05/02(月) 16:21:25 ID:/bf6AHok0

('A`)「…………」



      |    |
      |    |
      |    |     グッ
     -'     '- ノ;_
     | |  . ,  | | 7
     t.'-'-'-'t;_;| J| |
 .         '==| ,:| _| 
 .            | | |'|
             | | |.|
 .            | |.|_|
             | | |,
 .            '-'-┘






        スチャッ

                      ____
               _ . -r--'-┴-t
        ,.-,__.- =≦三三| γ⌒ヽ|
        |三三二二三三| |:::::::: | |
        |三三三三三三|人 ___ ノ |
       _〈≧て⊇____人t .○ yノ
  = ≦__/ ̄   ̄, ̄ ヽ | |__又_彡' 
     '.  ..  ._  y//     '   '
 ::::::  〈     : ̄  ̄'.     '.'  ','
 ::::::   .'  -- =  __y        
  :::  '.'     '.    '.       '
  ヽ   〉  -= =   _/     ,' 'ノ
   ヽ  '.     .'   '.
      r' . - -= .._/
      '-'-t:≦__::::j
  
          '
         ノ,
  
  
      '



.

184 名前: ◆PizzaMan.c[] 投稿日:2016/05/02(月) 16:21:59 ID:/bf6AHok0

 セーフティを外して、銃口を男たちに向ける。




('A`)「…………」
  っy=


Ω「――ッ!!」


 それを見て男たちは、眉をひそめてたじろいでいた。


Ω「てめぇ……銃なんてどこで手に入れた……」

('A`)「…………さあな」

Ω「……俺たちに銃を向けたら、取り返しがつかねぇぞ」

('A`)「……取り返したいものなんて、ありゃしねぇんだ」

Ω「…………そうかよ」



Ω「だったらここで死にな!!」スッ


 一人の男が、懐から拳銃を取り出した。

 今更出したって遅い。俺は引き金を引くだけでこいつの命を取ることができるんだ。

185 名前: ◆PizzaMan.c[] 投稿日:2016/05/02(月) 16:22:41 ID:/bf6AHok0

('A`)「ッ……」


 一瞬だけ、身震いする。


 ここで引き金を引いたら、俺は一線を越えることになる。




 なんて、簡単なのだろうか。

 なんて、か弱いものなのだろうか。


 命というものは、こんなにも軽い。




バァン




 拳銃は、耳を劈くような大きな音を鳴らして、その銃口から火を吹く。

 放たれた銃弾は一人の男の額を貫き、やがて男は地面に崩れ落ちた。



 こんなにもあっさりと、人は命を落とすのだ。


.

186 名前: ◆PizzaMan.c[] 投稿日:2016/05/02(月) 16:23:32 ID:/bf6AHok0

Ω

Ω「ッ……て……てめぇ!!!」スッ

('A`)「おせぇよ」
  っy=


バァン




 一つ、二つ、三つ。


Ω「――ひッ……ヒィッ……!」ドサッ


 次々と、地面に屍が転がる。


('A`)「…………」


Ω「ッ……やっ……やめろ俺は撃つな……!!」


 最後に残った男が言う。


 殺さないでくれ、殺さないでくれ。

 か細い声で、彼は言う。

187 名前: ◆PizzaMan.c[] 投稿日:2016/05/02(月) 16:24:23 ID:/bf6AHok0

('A`)「…………終わりなんだよ」
  っy=

Ω「ッ…………」

('A`)「……いや。もう、終わってたのかもしれねぇな」

Ω「…………?」

('A`)「バーン」

Ωそ「ひッ……!!」

('∀`)「……ハハハハッ!!」



バァン








 地面に転がった四つの死体を踏み越えて、俺は路地を抜け出した。



 銃声を聞いて誰かが通報したのか、ネオンの街にはサイレンが鳴り響いていた。


 俺はまた、人混みに紛れるように、闇に溶けるように、ゆっくりと歩みを進めた。




.

188 名前: ◆PizzaMan.c[] 投稿日:2016/05/02(月) 16:25:01 ID:/bf6AHok0

 しばらく歩いて、俺は施設の前まで来ていた。

 庭を抜け、開けっ放しにしておいた自分の部屋の窓から中へと入る。



 施設内は、静かだ。部屋の様子も変わりない。
どうやら外出したことに気づかれてはいないようだ。



 必要なものは、何もない。
 この部屋に――、この俺に大事な持ち物なんて、大してありはしなかった。



 ふと、ベッド脇の机に目を移す。

 そこには、ミセリに渡すつもりだったペンダントの入った箱が置いてあった。

('A`)「…………持ってくか……」



 ドラッグが無くなったことで再び軽くなっていたショルダーバッグに、ペンダントの箱を入れる。



 もっと早く、渡しておけば。
 後悔の念に苛まれ、しばらくの間俺はベッドに座り込んでいた。

189 名前: ◆PizzaMan.c[] 投稿日:2016/05/02(月) 16:25:38 ID:/bf6AHok0

('A`)「……行くか」



 冷蔵庫に入れ忘れたままぬるくなった安物銘柄の缶コーラの栓を開けて、その中身を一気に飲み干す。

 しばらくして落ち着きを取り戻し、俺はタバコに火をつけた。


('A`)y‐~~「……ふぅ」


 この部屋でタバコを吸うのは初めてだ。
もしも先生にバレてしまったら、面倒な事になるからだ。

 しかし、そんな生活ももう終わりだ。



 ベッドから立ち上がって、部屋の扉を開ける。
軋む廊下を歩いて、ホールの近くの扉の前に立つ。

 その扉をゆっくりと開け、足音を立てぬように少しずつ部屋の中へと入り、扉の鍵をかけた。



 やがて見えてくる、大きなベッド。
そこに横になる、一人の女。

 豪快にいびきを立てている。



.

190 名前: ◆PizzaMan.c[] 投稿日:2016/05/02(月) 16:26:14 ID:/bf6AHok0



('A`)「起きろよ」


 声をかける。
だが、いびきは収まらない。


('A`)「おい、クソババァ」

 
 再び声をかける。
いびきが止まり、寝息が微かに聞こえてくる。


.

191 名前: ◆PizzaMan.c[] 投稿日:2016/05/02(月) 16:26:56 ID:/bf6AHok0



           「目を覚ませよクソババァ!!」


                                  ,.ィ´::::::::::
                              ,...,..ィ´:::::::::::::::::::::::
                            , イ´:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
                            , イ´:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
                      _/:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
                    /:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::;:. .'''"´
                  /:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::_:_;: '''"´
                _,ィ、'´::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::,ィ´
                 ,イ'´:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::;: '´
 、|,'        ,r'´ニ`:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::,:ィ''´
  人、/      ,r'´ ̄ヽヽ, :::::::::::::::::':::::::::::::,:ィ''´
人,"       /´ ̄`ヽ、ヽ\ :::::::::::::,ゝ__‐'´
,/,      / : : : : : :::::ヽ \ ヽイ::::::::/
v/     / ,...___ : : : : : :::::ハ ヽ/
,v    ,イ,ィ:: : : : :`:‐-::、:_:,r‐l/ 三 ニ 一 -
.     /:::::: : : : : : : : ::::::::::/
   /::::_: : : : : : : : : : : :/
    {::::::::::`ヽ:、: : : : : :./ 三 ニ 一 -
   ヽ::::::::::::::::::::::::. : /
     ` 、:::::::::::::::::/ 三 ニ 一 -
       ` 、::/

ドンッ



.

193 名前: ◆PizzaMan.c[] 投稿日:2016/05/02(月) 16:28:13 ID:/bf6AHok0

「きゃあ!!」


 靴底で、女の腰に蹴りをいれる。

 流石にまだ寝ているということはない。
彼女は張り付いた瞼をむりやりこじ開けるようにして、事態を理解しようとしていた。


 やがて、目が合う。


J(;'ー`)し「……えっ……?」


 起き上がって再び俺を見つめるが、どうやら彼女はまだ、現状を理解できていないみたいだ。

 蹴り飛ばしたのが俺であることすら――――いや、蹴り飛ばされた事すら、わかっていないようだ。


J(;'ー`)し「……何……なんなの……?」

('A`)「なぁ、先生」

J(;'ー`)し「…………」

('A`)「ミセリはどこに連れてかれたんだ」

J(;'ー`)し「……は? 言えるわけないじゃない……あんたみたいな金食い虫に……」

('A`)「…………」

194 名前: ◆PizzaMan.c[] 投稿日:2016/05/02(月) 16:28:58 ID:/bf6AHok0

('A`)「言えよ」チャッ
  っy=

J(;'ー`)し「――ッ!?」


 拳銃を向けると、彼女は竦み上がってその皺だらけの頬に汗を流した。


('A`)「……言わねーなら、殺して書類を漁るだけだ」

J(;'ー`)し「……なっ……まさか殺せるわけ……」

('A`) カチャッ
  っy=゛


 撃鉄を起こす。
その動作だけで、俺の言葉が嘘ではないと理解するのには十分だったようだ。


J(;'ー`)し「――ッ……わかった……わかったから……」ゴソゴソッ


 彼女は恐る恐るその身を起こして、机の引き出しから一枚の紙を取り出した。


J(;'ー`)し「……ここよ……」ペラッ
   っロ゛

('A`) パシッ
  っロ゛

J(;'ー`)し「…………」

195 名前: ◆PizzaMan.c[] 投稿日:2016/05/02(月) 16:30:09 ID:/bf6AHok0

 彼女から奪い取った紙は、養子縁組の手続きに使われたと思われる書類の控えだった。

 大きな枠に囲われた部分に、ミセリを引き取った男の名前と、住所が書いてある。
その下には、ミセリの名前もあった。


 どうやら、これで間違いはないようだ。


J(;'ー`)し「……あんた……」


 紙を畳んでポケットに入れていると、彼女が俺の顔色を伺いながら口を開いた。


J(;'ー`)し「あんた……なんであの子のためにこんな事を……」


('A`)「…………」




 これは決して、ミセリのためではない。

 自分ではそう、理解していた。


 あくまでこれは、自分のためなのだ。
自分を満足させるために、やっているだけの事なのだ。

196 名前: ◆PizzaMan.c[] 投稿日:2016/05/02(月) 16:30:43 ID:/bf6AHok0

 そしてもう一つ、わかりやすい理由がある。


 この女には、それすらもわからないのだろう。






J(;'ー`)し「……こんなことして……どうなるかわかってるの……?」

('A`)「……さあな」

J(;'ー`)し「…………」

('A`)「一つ、ためになる耳寄りな情報を教えてやるよ」

J(;'ー`)し「……何……?」

('A`)「これから俺がやる事は――――」









 ――――単なる憂さ晴らしに過ぎない。








.

197 名前: ◆PizzaMan.c[] 投稿日:2016/05/02(月) 16:31:47 ID:/bf6AHok0

 そう言って、俺は彼女に向けた拳銃の引き金を引いた。


 白いシーツが赤く染まり、その中央に倒れ込んだ死体。


 俺はそれにタバコの吸い殻を押し付けて、この部屋を漁り始めた。



('A`)「……金庫の鍵はどれだ……」


 机の引き出しや、バッグの中。
様々な場所を探し、最終的にたどり着いたのが、ベッドの下だった。
 奥の方にある小さな木箱を引きずり出す。
その中に、金庫のものと思われる鍵と、ダイヤルのメモが入っていた。

 全く、不用心な女だ。
そんな事を思いながら、部屋の隅にぽつんと置かれた大きな金庫にその鍵を差し込んだ。

 その頃、廊下を走り回るような音がどこかから聞こえてくる。
銃声を聞きつけた子供たちが、何があったのかと不安な気持ちでこの先生の部屋へと向かってきているのだろう。

 俺はそんな事は大して気にも止めず、メモの通りにダイヤルを数回だけ回した。

 そして、金庫が開かれる。

198 名前: ◆PizzaMan.c[] 投稿日:2016/05/02(月) 16:32:28 ID:/bf6AHok0

(;'A`)「ッ…………」




 想像以上だった。


 金庫の中に入っていたものは、ぱっと見ただけでも数千万レスは越える大金だった。


 一体どれだけの人が、どれだけの大金で、この施設の子供たちを買っていったのか。



 吐き気にも近い怒りを、ぐっと胸の奥に押さえつけて、俺はその大金を手に取った。






 これだけあれば、やり直せる。



 新しい人生を、手に入れる事ができる。



('A`)「…………」



 彼らに、選ばせよう。





.

199 名前: ◆PizzaMan.c[] 投稿日:2016/05/02(月) 16:33:02 ID:/bf6AHok0

 気づけば、鍵のかかったこの部屋の扉を強くノックする音が響いていた。
扉の向こうからは、不安そうな声で先生を呼ぶ声がいくつも聞こえる。



 俺は大金を机の上に置き、ポケットから取り出したタバコに火をつけながら扉へ近づいた。


 そしてゆっくり、その鍵を開けた。




(;’e’)そ「うわ〜!! ドクオ兄ちゃん!?」




 鍵を開けたと同時に、扉は勢い良く開かれた。

 この施設の子供たちの中で、俺を除いて最年長であるセントジョーンズが、その扉のノブをしっかりと握っていた。


(;’e’)「……兄ちゃん…………その……血は……」



('A`)「……ああ……。気にすんなよ」

200 名前: ◆PizzaMan.c[] 投稿日:2016/05/02(月) 16:34:27 ID:/bf6AHok0

(;’e’)「怪我してるの?」



('A`)「俺は平気さ」



(’e’)「ッ……じゃあ……先生……?」



('A`)「……そうだな……」



 子供たちからは、俺の身体が影になって中の様子を見ることができないだろう。
俺は身体を退かすこともせず、言葉を続けた。



('A`)「お前らには、まだわかんねーかもしれねぇけど……。先生はな、ミセリを……ミセリ姉ちゃんを、悪い人にお金で売ったんだ」

(’e’)「…………」


 セントジョーンズだけではない。
10歳かそこらの子供たちが、真剣な眼差しで俺の言葉に耳を傾けていた。

 他の年端もいかない子供たちは、いまいちよくわかっていない様子であった。

201 名前: ◆PizzaMan.c[] 投稿日:2016/05/02(月) 16:35:21 ID:/bf6AHok0

('A`)「そこに、その金がある。それを分け合って自分たちで生きるか……、警察に任せて新しい施設へ移るか。お前ら次第だ」


('A`)「好きに選べ。自由に生きてくれ」


 セントジョーンズの肩をぽんと叩き、呼び止める子供たちの声を無視して俺は施設の玄関を抜けた。


 この施設とは、もうこれでおさらばだ。





                        :'.;′
                          :.
                       : '
                         . '
                         ,: .'
                     ,. '.:´ ´
                  .' ´
                   ,. '.゙   ポトッ
                 ' :
                ;. ;          />
                  ゙、( _,..、      //
                `~⌒ヽ;...;;.. _/>'
                     ヽ:,;;:゙ー`'


 フィルターのぎりぎりまで吸い尽くしたタバコを地面に放り投げて、薄暗い道をただひたすら歩き続けた。







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