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79 名前: ◆H/3wgXUnC2[] 投稿日:2016/04/03(日) 06:48:57 ID:CCACwx0U0
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('A`)「…………さてと」
これまでの騒ぎを聞いてか、敷地内にいた多くの人々はすでに消えていた。
この敷地内で一番目立つ建物、礼拝堂。
俺は真っ先にそこへと歩みを進めていた。
('A`)「案内なんか聞かずに、初めからここに来りゃ良かったぜ」
大きな扉をゆっくりと引くと、中から漏れ出す異様な空気を感じる取ることができた。
そして俺が見たものは――。
(;'A`)「デレ!!」
――十字架に磔にされている、デレの姿だった。
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80 名前: ◆H/3wgXUnC2[] 投稿日:2016/04/03(日) 06:49:29 ID:CCACwx0U0
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ζ(゚ー゚;ζ「ど、ドクオ! 助けて……!!」
幸い、意識はある。見たところ怪我も無いようだ。
('A`)「今降ろしてやるからな!」
『――無駄だよ』
('A`)「……!?」
――カツ、カツ、カツ。
一歩一歩、音を堂内に響かせながら、暗闇から姿を現した、一人の男。
爪'ー`)「私の能力で磔にしているからね。簡単には外せないさ」
(;'A`)「――ッ……お前は……フォックス……!!」
半年前、ある大手企業の社長を殺す依頼を成し遂げ、100万レスもの金を手にした。
俺が店を持つ為の元手になった金だ。
この男フォックスは、その依頼主であった。
爪'ー`)「ッ……。おやおや、まさか侵入者が君だったとは……」
爪'ー`)「驚いたよ、“Killer-D”」
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81 名前: ◆H/3wgXUnC2[] 投稿日:2016/04/03(日) 06:50:38 ID:CCACwx0U0
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“Killer-D”とは、俺が店を持つ前に呼ばれていた名前だ。
ブーンと合わせて、“Killer-B.D.”なんて呼ばれていた事もあった。
('A`)「……今は便利屋“All Trades”のドクオだ」
爪'ー`)「便利屋、ねぇ……。あの君が、今じゃ水道管工事をしてるのか……笑えるね」
('A`)「ハッ……生憎これが初仕事さ」
爪'ー`)「……半年ほど前か……君に仕事を依頼したのは」
('A`)「お前、あの社長を殺して自分の会社をでかくするんじゃなかったのか?」
爪'ー`)「ああ、その通りさ。カデレス社は邪魔だったからな。君のお陰でうちの売上は大きく上がったよ」
ζ(゚ー゚;ζ「……か……カデレス……?」
デレが青白い顔を引きつらせて、そう言った。
大事なものを何か、失ったかのように。
爪'ー`)「そう、カデレス。彼らは事業を広げすぎたんだ。当然、あの社長を殺したがってたのは私だけじゃなかったはずだ」
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82 名前: ◆H/3wgXUnC2[] 投稿日:2016/04/03(日) 06:51:26 ID:CCACwx0U0
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('A`)「俺が聞きてぇのはそんな話じゃねぇんだよ。そんなお前がなんでこんな宗教団体なんて――――」
ζ(゚ー゚;ζ「――待ってよ!!」
('A`)「ッ……?」
ζ(゚ー゚;ζ「カデレスの……カデレスの社長を……殺したの……?」
('A`)「ああ。こいつの依頼でな」
ζ( ー ;ζ「……そんな……嘘…………」
('A`)「お、おい」
ζ( ー ζ「…………私の……」
「……私のお父さんは……カデレスの社長だったんだよ……」
(;'A`)「――ッ!」
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83 名前: ◆H/3wgXUnC2[] 投稿日:2016/04/03(日) 06:52:03 ID:CCACwx0U0
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デレの顔は、まるで日の射さない路地裏のように暗く翳り、表情の判別はできない。
――冗談じゃない。
どうしてそんな偶然が。
どうして、よりによってこんな時に。
爪'ー`)「……おやおや……よもやこんな偶然があるなんてね……! Killer-Dの死を彩る最高のスパイスじゃあないか!」
(;'A`)「……チッ……」
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84 名前: ◆H/3wgXUnC2[] 投稿日:2016/04/03(日) 06:52:37 ID:CCACwx0U0
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――何を感情的になっているんだ、俺は。
頭に“元”が付くとはいえ、俺はKiller-Dと呼ばれ怖れられた人間だ。
フォックスの言う通りさ。最高のスパイスじゃないか。
( ∀ )「…………ククッ……ハハハハハハッ!!!」
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85 名前: ◆H/3wgXUnC2[] 投稿日:2016/04/03(日) 06:53:17 ID:CCACwx0U0
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ただ、死ぬのは俺じゃない。
('∀`)「殺してやるよフォックス!!」
爪'ー`)「……そう来なくてはね……!!」
ホルスターから取り出した二丁の愛銃。
俺はこの結び目だらけの感情を乗せて、いくつもの銃弾を放った。
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86 名前: ◆H/3wgXUnC2[] 投稿日:2016/04/03(日) 06:53:55 ID:CCACwx0U0
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爪'ー`)「ハァッ!!」
真っ直ぐにフォックスへと向かう銃弾を防ぐようにして、どこからとも無く血の盾が現れた。
アサピーが出していた物と同じだ。
それならば、一点に銃弾を打ち込み続けていればいずれは砕ける。
――だが、そう甘くは無かった。
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87 名前: ◆H/3wgXUnC2[] 投稿日:2016/04/03(日) 06:54:46 ID:CCACwx0U0
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('A`)「……堅ぇな」
爪'ー`)「……そう簡単に壊せるようなものじゃないさ」
('A`)「あのイカレ眼鏡よりゃマシってことか」
爪'ー`)「……アサピーの事か……」
フォックスは口角を軽く吊り上げながら、フッと鼻で笑った。
爪'ー`)「彼はダメだな。通常の帰天すら中途半端にしか出来なかった男だ」
('A`)「まーた帰天かよ。そろそろそいつの正体を教えてほしいね」
爪'ー`)「君が知る必要はない。ただ見ていればいいさ」
爪'ー`)「私がこれから行う“帰天”をね……!」
そう言いながらフォックスが両手を広げると、まるで天井から引っ張り上げているかのように、その身体が宙に浮かんだ。
(;'∀`)「……空まで飛ぶわけ……?」
爪'ー`)「これは儀式のうちさ……」
爪 ー )「この大地に住みし我らの神よ……生娘の生き血を吸い……我に降臨されたし……!!」
爪'ー`)「“帰天”!!!」
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88 名前: ◆H/3wgXUnC2[] 投稿日:2016/04/03(日) 06:55:52 ID:CCACwx0U0
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地鳴りのような轟音が堂内に響き渡り、フォックスの身体は直視できないほどの光を発した。
それも数秒ほどで収まり、俺は再びフォックスに目を向けた。
爪'ー`)
そこにあるのは、先程と何も変わらない一人の男の姿だった。
ただひとつ、この堂内で変化したのは――。
(;'A`)「デレ!!!」
先程まではその虚ろな瞳で遠くを見つめていたはずのデレが、今では目を閉じぐったりと項垂れている。
“生娘の生き血”。それがデレの血の事を指しているのであれば、命が危ない。
爪'ー`)「安心するといい。まだ死んではいないさ」
フォックスの言う通り、確かにまだ死んではいない。
微かながら、呼吸によって肩が揺れているのがわかる。
爪'ー`)「だが、戦いが長引けば長引くほど、彼女の命は危なくなる。私は彼女の血を使って戦わせてもらうからな」
爪'ー`)「彼女の身を案ずるなら、とっとと死ぬべきだ」
('A`)「……てめぇ……」
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89 名前: ◆H/3wgXUnC2[] 投稿日:2016/04/03(日) 06:56:27 ID:CCACwx0U0
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爪'ー`)「しかし全く呆れるよ。あの非常な殺し屋だった君が、小娘一人の命を心配するとはな」
('A`)「…………」
('A`)「……違うな」
爪'ー`)「……?」
一歩、前に踏み出す。
堂内に均等に並べられた長椅子の中の、一番手前にあるものに足を載せて、銃口をフォックスに向ける。
('A`)「あいつは俺の“依頼主”だ。報酬を受け取るためには、あいつには生きててもらわねーとならねぇんだよ」
爪'ー`)「……なるほど。まあそれでもいいでしょう」
爪'ー`)「どっちにしても、君は死ぬのだからね!!」
フォックスが叫ぶのと同時に、彼の背後からいくつもの血の塊が飛来してくる。
速度は拳銃の銃弾と同等か、それ以上だろうか。
すぐに俺は足を載せていた長椅子を蹴って跳躍する。
フォックスが放った血の塊は、俺に直撃すること無く後ろの扉へと突き刺さっていく。
('∀`)「ほらよ!!」
地上数メートルの高さから、銃弾の雨を降らす。
当然ながら、フォックスはそれを盾で受け止めていた。
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90 名前: ◆H/3wgXUnC2[] 投稿日:2016/04/03(日) 06:57:16 ID:CCACwx0U0
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爪'ー`)「飛び道具相手に跳躍するのは頷けないな!! 着地点が丸わかりだ!!」
やがてフォックスは銃弾を受け止めながら、俺が着地するであろう場所に向かって血の塊をいくつも放った。
('∀`)「無駄だぜ狐野郎ッ!!!」
飛来するいくつもの血の塊に向かって、二丁の愛銃から銃弾を放つ。
銃弾は一発の無駄もなく血の塊一つ一つにぶつかって、それを弾いた。
('∀`)「……悪いな、俺にはそんな盾なんて必要ねぇんだ」
爪'ー`)「それは面白い……」
爪'ー`)「ならばこれはどうかな……!!」
フォックスの背後に浮き上がる、複数の血の塊。
それだけじゃない。扉に突き刺さった血や、俺が弾いて散らばった血でさえ、空中に浮き上がっていた。
爪'ー`)「アサピーには、この数は不可能だったはずだ」
彼が振り上げた右手を勢い良く振り下ろすと同時に、浮いていた血の塊は一斉に俺へと向かってきた。
('∀`)「ハッハァ!!!」
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91 名前: ◆H/3wgXUnC2[] 投稿日:2016/04/03(日) 06:58:37 ID:CCACwx0U0
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背後からの攻撃を身を捻るようにして躱しながら、辺りに連射する。
とてもこの程度の連射で防ぎきれる数ではない。ただし、お陰で数は減った。
俺は両手の愛銃からマガジンを放り出して、身を屈めた。
爪'ー`)「…………フッ」
ガシャン、と放り投げたマガジンが落ちる音がする。
いくつもの血の塊や薬莢が、地面に転がる音が耳に届く。
爪'ー`)「流石に躱し切れなかったようだねぇ……」
( ∀ )「……ククク……」
爪;'ー`)「ッ……?」
俺は屈んで身を包んでいたジャケットを外して、ゆっくりと立ち上がった。
爪;'ー`)「なっ…………」
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92 名前: ◆H/3wgXUnC2[] 投稿日:2016/04/03(日) 06:59:17 ID:CCACwx0U0
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('∀`)「このジャケットで防がせてもらったのは二回目だな……。全く……意外とやるな、オカルト集団よォ……」
重たいジャケットを地面に放り投げると、石で出来たこの床ですら微かに揺れた。
たまには鎖から放たれるのも、悪くはない。
爪'ー`)「……まさか無傷とはね……。面白い、面白いよ」
('∀`)「お遊びはここまでだぜ」
石の床を蹴って、フォックスへ急接近する。
重たいジャケットを着ていないだけで、身体が羽根のように軽く感じた。
('∀`)「ほらよッ!!」
愛銃を振りかぶり、グリップエンドをフォックスの頭へと振り下ろす。
爪;'ー`)「く……ッ!!」
どこからか現れた血の盾が、それを防ぐ。
だがその一撃だけで、血の盾には亀裂が走っていた。
('∀`)「ハァッ!!」
爪;'ー`)「――ガハッ……!!」
フォックスを蹴り飛ばすようにして、後ろへ跳躍する。
俺が離れると、フォックスの身体全体を守るように盾が広がった。
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93 名前: ◆H/3wgXUnC2[] 投稿日:2016/04/03(日) 07:00:40 ID:CCACwx0U0
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('∀`)「んなもん無駄だろ!!」
射撃の精密さよりも連射速度を重視して、盾に無数の銃弾を放つ。
それだけでその盾は、容易く砕け散った。
再び床を蹴って、フォックスへと急接近する。
爪;'ー`)「まだだッ!!」
駆けながら放った銃弾がフォックスの額に直撃するよりも速く、赤い何かがそれを防いだ。
爪;'ー`)「……よもやこれを出すことになるとは……君は接近戦にも長けているようだな……」
フォックスが手に持っているのは、赤い長剣。
血を固めて作り出した物のようだ。
('A`)「…………」
奴は血を使いすぎている。
このままでは本当に、デレの命が危ない。
依頼主がなんだ。
そんなものは関係ない。
――俺はただ、俺が殺す以外で目の前で人が死ぬのを見たくないだけなんだ。
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94 名前: ◆H/3wgXUnC2[] 投稿日:2016/04/03(日) 07:01:54 ID:CCACwx0U0
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('∀`)「……終わらせようぜ」
爪'ー`)「……いいだろう」
じりじりと、詰め寄る間合い。
元より俺は近接戦闘向きの武器を持っていない。
だが、この愛銃で戦えないわけではない。
爪'ー`)「……ハァッ!!」
強く床を蹴って、その長剣を振りかざしながら接近してくるフォックス。
俺は後方のジャケットに銃弾を放つ。
ジャケットの中に収まっているマガジンに銃弾が直撃し、弧を描きながらこちらへと向かってくる。
それを空中でリロードし、狙いをフォックスへと戻した。
('∀`)「ハッハァ!!!」
真っ直ぐに振り下ろされた刃をグリップエンドで弾きながら、フォックスの顔に向かって片手で連射する。
フォックスはそれを血の盾で防ぎ、振り下ろした長剣を素早く斜めに振り上げた。
('∀`)「掠りもしねぇぜ!!」
ジャケットを着ていない俺に、避けられないものはない。
どんなに速かろうと、どんなに不意をつかれようと、俺は最小限の動きで躱した。
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95 名前: ◆H/3wgXUnC2[] 投稿日:2016/04/03(日) 07:02:41 ID:CCACwx0U0
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爪;'ー`)「クソッ!!」
フォックスは再び長剣を構え、横へ大きく振るう。
同時に、いくつもの血の塊が俺へ向かって飛来してくるのがわかった。
その血の塊を全て拳銃の側面で弾き、躱した長剣の刃をもう一つの拳銃のグリップエンドで上から叩いた。
キィン、と鋭い音が鳴り響き、弾かれた長剣の切っ先が石の床に突き刺さる。
爪;'ー`)「く……ッ!!」
('∀`)「ゲームオーバーだ」
長剣を抜くことも出きず、隙だらけになったフォックスの額に、銃口を突き付けた。
('A`)「ちょいと話をしようや」
爪;'ー`)「…………」
フォックスは長剣からゆっくりと手を離し、そのまま抵抗の意思は見せなかった。
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96 名前: ◆H/3wgXUnC2[] 投稿日:2016/04/03(日) 07:03:18 ID:CCACwx0U0
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('A`)「なんでこんな事をしてるんだ? わけのわからねぇ能力やら帰天やら……ビジネスには見えねぇが」
爪;'ー`)「……初めはビジネスのつもりだったさ。宗教は金になるからね」
('A`)「この街には宗教を信仰してるような連中はいねぇ。だからこそって思ったのかもしれねぇが、俺にはそうは思えねぇな」
爪;'ー`)「……私も、この街でやっていけるか不安だったさ。しかし、調べてみると面白い話が出てきてね……」
爪;'ー`)「この街には神が住んでいるのさ……」
真剣な表情で、フォックスはそう語った。
嘘や狂言を吐いているようには思えない、そんな表情で。
('A`)「……そいつは知らなかったな。こんなネオンとアルコールとタバコの煙しかねぇような街を好む神様じゃあ、祈りを捧げる価値も無さそうだが」
爪;'ー`)「馬鹿にしてはならないよ。事実、私たちは力を手に入れた」
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97 名前: ◆H/3wgXUnC2[] 投稿日:2016/04/03(日) 07:04:12 ID:CCACwx0U0
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('A`)「ハッ。女の血を使ってか? まぁある意味ではこの街の神様らしい、って感じだな。趣味が悪すぎる」
爪;'ー`)「“帰天”のためには仕方ないんだよ……!」
('A`)「ビジネスやってたあんたの方が好みだったぜ」
爪;'ー`)「…………」
('A`)「ミイラ取りがミイラになるってのは、まさにこの事だな。まぁせいぜい神に祈りを捧げて死ぬといいさ」
拳銃のハンマーを起こして、引き金に力を込める。
('A`)「天に帰れよ」
大きな音を立てて、拳銃は火を吹く。
フォックスの後頭部から鮮血が飛び散り、薬莢が地面に転がって小気味よい音を立てた頃、フォックスの身体も地面に崩れ落ちていた。
('A`)「……アーメンハレルヤピーナッツバターだ……」
.
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98 名前: ◆H/3wgXUnC2[] 投稿日:2016/04/03(日) 07:05:00 ID:CCACwx0U0
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二丁の愛銃をホルスターに仕舞っていると、何やら赤い霧状の物が浮かんでいるのが目に入った。
その霧はやがて磔になったデレの元へと集まり、姿を消した。
フォックスに使われた血が、デレの身体へと戻ったのだろうか。
同時に、十字架からデレの身体が真っ直ぐに地面に落下した。
(;'A`)「おっと!」
瞬時に駆け寄って、床にぶつかる前にデレの身体を両手で抱える。
ジャケットを脱いでいて良かった。
着ていたら、間に合わなかったかもしれない。
('A`)「……おい、デレ。起きろ」
ζ(-、-*ζ「……ん…………?」
('A`)「自分で立ってくれ」
ζ(-、-;ζ「……ん……」
ゆっくりとデレを立たせると、ふらふらと揺れながら、閉じていた目を擦って無理やりに開いた。
ζ(゚ー゚;ζ「……あれ……ドクオ……?」
('A`)「終わったんだよ」
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99 名前: ◆H/3wgXUnC2[] 投稿日:2016/04/03(日) 07:06:30 ID:CCACwx0U0
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ζ(゚ー゚;ζ「…………」
('A`)「……なんだよ……」
デレは一歩下がり、俺を見つめている。
怯えている様子はない。
ただ、見つめている。
ζ(゚ー゚;ζ「……どうして……私のお父さんを……」
('A`)「…………仕事だったからだ」
ζ(゚ー゚;ζ「…………なんで……」
('A`)「……言ってるだろ、仕事だったからだ」
ζ( 、 ;ζ「……違うよ……」
「――――なんで、あなたなの…………」
.
-
100 名前: ◆H/3wgXUnC2[] 投稿日:2016/04/03(日) 07:09:21 ID:CCACwx0U0
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('A`)「…………」
ζ(゚、゚;ζ「……こんなの酷いよ……」
('A`)「俺だって知らなかったんだよ。それに、悪かったって思ってるさ……」
ζ(゚ー゚;ζ「……私じゃなかったら思わなかったんでしょ!?」
('A`)「――ッ……」
確かにその通りだ。
今までは、悪いなんて思ったことも無かった。
むしろ店を持つための金になってくれてありがたいとまで思っていた。
ζ( ー ;ζ「……どうしたらいいのか……わかんないよ……」
('A`)「……父親の事、好きだったのか?」
ζ( ー ;ζ「……当たり前でしょ……」
('A`)「会社の金に手を付け、社員の給料をピンハネし、お陰で自殺した社員までいる。そんな父親でも、か? 報道されただろ」
ζ( ー ;ζ「…………」
デレは何も言わず、黙っていた。
呼吸の音だけを鳴らして。
しかし暫くすると口を開いて、ゆっくりと返事をした。
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101 名前: ◆H/3wgXUnC2[] 投稿日:2016/04/03(日) 07:10:36 ID:CCACwx0U0
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ζ( ー ;ζ「……それでも……だよ……」
('A`)「…………」
案の定、だ。
彼女は案の定、そう返事した。
父親どころか、生まれつき家族が一人もいなかった俺には理解できない話だ。
('A`)「……報酬はいらねぇよ。とっとと帰れ」
ζ(゚ー゚;ζ「……え?」
('A`)「お前の父親が死んだのも、お前がこんな街の寂れたレストランでウェイトレスやるはめになったのも、俺のせいだ」
('A`)「報酬なんていらねぇよ。消えてくれ」
ジャケットを拾い上げて、長椅子に腰を降ろす。
ポケットに仕舞ってあったタバコを取り出して、オイルライターで火をつけた。
吸い込んだ煙を吐き出す。
たったそれだけの動作を繰り返すだけで、俺の心は深く満たされた気がした。
野暮用を、終えた。
タバコがフィルターの先まで短くなった頃には、堂内にデレの姿はもう無かった。
.
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102 名前: ◆H/3wgXUnC2[] 投稿日:2016/04/03(日) 07:11:47 ID:CCACwx0U0
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('A`)「…………帰るか」
吸い殻を靴底で踏みつけて、立ち上がる。
礼拝堂から出た頃には、夕日が地面を赤く染め上げていた。
('A`)「……腹減ったな……」
ジャケットから財布を取り出して、中身を確認する。
――しまった。ツンの店で1万レスも払ってしまって、残金が少ない。
('A`)「……チッ。一度店に帰っ――」
「ちょっと待って」
('A`)「……?」
.
-
103 名前: ◆H/3wgXUnC2[] 投稿日:2016/04/03(日) 07:12:39 ID:CCACwx0U0
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不意に後ろからジャケットを掴まれる。
仕事を終えて気が抜けていて、誰かに接近されていた事に気が付かなかった。
振り返るとそこには――。
ζ(゚ー゚*ζ「……報酬、まだ払ってないから」
先程とはまるで違う表情の、デレがいた。
('A`)「……いらねぇって言ったろ」
ζ(゚ー゚*ζ「それじゃ私の気が済まないもん。お金なら持ってきたから」
('A`)「チッ…………。じゃあ……」
「……晩飯奢ってくれ」
.
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104 名前: ◆H/3wgXUnC2[] 投稿日:2016/04/03(日) 07:13:28 ID:CCACwx0U0
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ζ(゚ー゚*ζ「……えっ? 晩飯?」
('A`)「晩飯だ」
ζ(゚ー゚*ζ「そんなのでいいの?」
('A`)「ああ。契約するときに言ったろ? “朝飯前だ”ってな」
ζ(゚ー゚*ζ「……プッ……」
('A`)「……おい、笑う所じゃねぇよ。ここは“かっこいい、惚れちゃう”って所だろうが」
ζ(゚ー゚*ζ「……童貞、拗らせちゃったのね」
(;'A`)「どっ……童貞とかやめろよ……チッ……ほんとやめろよ……やめろ……」
ζ(゚ー゚*ζ「……いいよ、行こ? 私が働いてるお店、ピザも美味しいから」
('A`)「…………ああ。腹一杯奢ってもらうぜ」
夕日はやがて沈み、月明かりが夜道を照らす。
開店したバーのネオンが点滅し、眩しく目に染みる。
彼女と歩くこの吸い殻まみれの小汚い道も、案外悪くないものだと思えた。
.
-
105 名前: ◆H/3wgXUnC2[] 投稿日:2016/04/03(日) 07:14:55 ID:CCACwx0U0
-
.
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106 名前: ◆H/3wgXUnC2[] 投稿日:2016/04/03(日) 07:15:28 ID:CCACwx0U0
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――――――――――――――――――――――――――――――――――
――――――――――――――――――――――――――――――――――
「悪くねぇダンスナンバーだったぜ。ただちょっと、テンポが悪かったな」
('A`)
r/|/Rっy=
' j_H,j
し; J
“便利屋ドクオ” a.k.a. “Killer-D”
――――――――――――――――――――――――――――――――――
――――――――――――――――――――――――――――――――――
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107 名前: ◆H/3wgXUnC2[] 投稿日:2016/04/03(日) 07:17:35 ID:CCACwx0U0
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――――――――――――――――――――――――――――――――――
――――――――――――――――――――――――――――――――――
「……仕方ないお。ブーン達は、そういう人間だから……」
__
_/:::::::|_
( ^ω^)
/ b|≡| |
|_|_:^_| j
(__)_)
“ブーン” a.k.a. “Killer-B”
――――――――――――――――――――――――――――――――――
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108 名前: ◆H/3wgXUnC2[] 投稿日:2016/04/03(日) 07:18:51 ID:CCACwx0U0
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「……私は……一人でいるのも怖いよ……」
ζ(゚ー゚*ζ
jV,l.j
/mw\
"し^J''
“依頼人 デレ”
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109 名前: ◆H/3wgXUnC2[] 投稿日:2016/04/03(日) 07:19:48 ID:CCACwx0U0
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「久々よ、こんな酷い銃を持ち込まれたのは」
ξ゚听)ξ
jh =l|oi
|z ;z|
し^J
“ガンスミス ツン”
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110 名前: ◆H/3wgXUnC2[] 投稿日:2016/04/03(日) 07:22:06 ID:CCACwx0U0
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「……女なんて……しらねーよ……」
∧ ∧
( ´ー`)
/,,v__v|っA
|_-,,-,,|
し^ヽJ
“役立たず シラネーヨ”
――――――――――――――――――――――――――――――――――
――――――――――――――――――――――――――――――――――
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111 名前: ◆H/3wgXUnC2[] 投稿日:2016/04/03(日) 07:24:08 ID:CCACwx0U0
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「一度使ったものを再利用するのは当然ですよね……!!」
∧_∧
(-@∀@)
y/,, ,,|r
|_-,,-,,|
し;^ヽJ
“祓魔師 アサピー”
――――――――――――――――――――――――――――――――――
――――――――――――――――――――――――――――――――――
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112 名前: ◆H/3wgXUnC2[] 投稿日:2016/04/03(日) 07:25:23 ID:CCACwx0U0
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――――――――――――――――――――――――――――――――――
「……すぐに終わらせてやろう」
_
/:::::::ヽ /|
(´・_ゝ・`) //
jh: :ljh//
jh :njoJ
し^ヽJ
“司祭 デミタス”
――――――――――――――――――――――――――――――――――
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113 名前: ◆H/3wgXUnC2[] 投稿日:2016/04/03(日) 07:26:31 ID:CCACwx0U0
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――――――――――――――――――――――――――――――――――
「この街には神が住んでいるのさ……」
爪'ー`) ;j
n/::::::|d t||r
^/:_:_:| ||
と^tゝ |;
“教皇 フォックス”
――――――――――――――――――――――――――――――――――
――――――――――――――――――――――――――――――――――
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114 名前: ◆H/3wgXUnC2[] 投稿日:2016/04/03(日) 07:27:10 ID:CCACwx0U0
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115 名前: ◆H/3wgXUnC2[] 投稿日:2016/04/03(日) 07:28:00 ID:CCACwx0U0
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Thanks for reading!
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116 名前: ◆H/3wgXUnC2[] 投稿日:2016/04/03(日) 07:28:35 ID:CCACwx0U0
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('A`)便利屋ドクオの野暮用です
fin.
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