('A`)便利屋ドクオの野暮用です

1 名前: ◆H/3wgXUnC2[] 投稿日:2016/03/27(日) 23:08:48 ID:BKUgdd360
('A`)「ったくよ……」

 楽器や銃、スピーカーに囲まれた狭苦しい部屋。
奥に行けば寝室もあるが、俺は主にこの部屋で過ごしていた。

 何故なら、ここは俺の店だからだ。


('A`)「開店日だってのに、客は一人も来やしねぇ……」

 仕方なのない事だ。
 この街“ソウサク”は、決して平和なわけじゃあない。
だが何か厄介事があっても、俺のような便利屋に仕事を頼むくらいなら、近くのバーで酒を飲んで面倒ごとを忘れようと考える頭の悪い連中ばかりだ。

 俺には都合の悪い街だと言える。
友人にも、“よくこんな所で便利屋なんか開くね”、と呆れられるくらいだ。

 まあ、暇なのは嫌いじゃないんだがな。


('A`)「しっかし……金がねぇのは辛いとこだ」スッ

 机に置かれたピザを一切れ、口に運ぶ。
先程近くの店から買ってきたばかりで、熱を持ったチーズがドロリと溶けて黒い机に強いコントラストを残した。


('A`)「……うめぇな」

 ずっとこの調子で客が来なければ、いずれはピザを食う金すら尽きる。
それだけは避けたい。

2 名前: ◆H/3wgXUnC2[] 投稿日:2016/03/27(日) 23:09:38 ID:BKUgdd360
('A`)「まあ何日かすりゃ来るだろ……」

 箱からタバコを一本取り出し、それを咥える。
煙を深く吸い込んで、それをゆっくりと吐き出した。
タバコの先から立ち昇る紫煙が、ゆらゆらと揺れていた。

 茶色い大きな扉が初めて自分以外の手で開かれたのは、その時だった。


( ^ω^)「ドクオ、開店おめでとうだお」

('A`)「……なんだよブーンか」


 扉を開けて顔を出したのは、仕事仲間のブーンだった。
友人と言うよりは、腐れ縁に近いだろうか。


( ^ω^)「わざわざ顔を出してやったのにそれはないお」

('A`)「うっせーな、客がこねーんだよ」

( ^ω^)「だから言ったお、こんな所で便利屋なんて……」

('A`)「あーわかってるよ。だが店を借りるにはこの街じゃねーと金が足りなかったんだよ」


 半年ほど前の事だ。
大手企業の社長を殺してくれとの依頼を受け、報酬で得た金をブーンと分け合った。
 その額は100万レス。借金を返して手元に残ったのは、そのわずか三分の一程度だ。
 なんとか店を借りて、数ヶ月やっていける程度の額ではあった。

3 名前: ◆H/3wgXUnC2[] 投稿日:2016/03/27(日) 23:10:25 ID:BKUgdd360
( ^ω^)「ギターやらドラムやら買いすぎなんだお」

('A`)「はあ? 俺が持ってるのは全部安物だぞ」

( ^ω^)「そうなのかお? てっきり拘ってるのかと」

('A`)「んなもん弾けて音が出りゃいいんだよ。コイツと一緒さ」コトッ

 引き出しに入れてあった二丁の黒い銃を取り出して、机の上に置く。
アウターバレルがスライドから剥き出しになったこの銃が、お気に入りだった。

( ^ω^)「その銃好きなくせに何言ってんだお」

('A`)「…………確かに」

( ^ω^)「そのうちグリップやスライドも改造しそうだお」

('A`)「お前と一緒にすんなっての」

 ブーンの持っている銃には、原型がわからないほどの改造が施されている。
バレルは長いものに交換してあり、グリップにはブーンの大きな手に合うように厚めの木製グリップパネルが取り付けられている。
 どうも知り合いに腕の良いガンスミスがいるのだとか。

4 名前: ◆H/3wgXUnC2[] 投稿日:2016/03/27(日) 23:11:15 ID:BKUgdd360
('A`)「……で? 用件はねぇのか?」

( ^ω^)「ないお」

('A`)「……だろうな」

( ^ω^)「ちょっとシャワー借りるお」

('A`)「それが目的かよ。奥にあるから勝手にしろ」

( ^ω^)「ごめんだお」

 ブーンは部屋の奥、ちょうど自分が座っている椅子の真後ろにある扉に入っていった。

 しばらくして、シャワーの音が聞こえてきた。 


('A`)「ったく……」


 ため息をついてつまみ上げたピザを口に放り込むと、再び入り口の扉が開かれた。

 ――今度は誰だ。


(-@∀@)「あの……私、創作教団のアサピーという者なのですが……」

('A`)「チッ、宗教勧誘かよ……」

 創作教団。どうも新しく出来たらしい宗教団体で、最近やたらと耳にするようになった名前だ。

 この辺りに住む人間のうちほとんどは、宗教を信仰していない。
そんな街にどうして、宗教団体を立ち上げたのだろうか。
俺にはわからないが、さして興味も無かった。

5 名前: ◆H/3wgXUnC2[] 投稿日:2016/03/27(日) 23:12:14 ID:BKUgdd360
(-@∀@)「本日は特別に新しい教徒様のための礼拝を行っておりまして、ぜひともうちの教会に足を運びいただけ――」

('A`)「――帰れ」

(;-@∀@)「ッ……」

(-@∀@)「あ……もしお越しになるのがご面倒であれば、今こちらで当教団の説明をさせていただきますが」

('A`)「……あのな」


 椅子から立ち上がり、フォックスと名乗った彼の元へと近寄る。


 ――愛銃を、強く握りしめて。


(-@∀@)「あ、こちらパンフレットになります」 

('A`)「興味ねぇっつってんだよ」

(-@∀@)「……いや説明を聞いてからご判断いただければ――」

(;-@∀@)そ「――ッ!?」


 親指でセーフティを外し、ハンマーを起こした銃の先を男の額に当てて、一つため息をついた。

6 名前: ◆H/3wgXUnC2[] 投稿日:2016/03/27(日) 23:13:10 ID:BKUgdd360
('A`)「……そんなに説教がしてぇんなら、コイツでてめぇの額にもう一つ口を作ってやろうか?」

(;-@∀@)「ヒッ……あ……」

('A`)「とっと帰れ」

(;-@∀@)「しし、失礼しました……!」


 扉が強く開かれる音だけを残して、男はよろけながら去っていった。
ご丁寧に、パンフレットを一冊落として。


('A`)「…………」

('A`)「客は来ねぇのかよ……」



 気づけば、夕日が長い影を作っている。
そろそろ日が暮れる頃だ。


('A`)「もうちょっとだけ待つか……」

 再び机に戻り、残りのピザを食べ終えた。
また腹が減ったら、晩飯を買いに行こう。そんな事を思った。



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7 名前: ◆H/3wgXUnC2[] 投稿日:2016/03/27(日) 23:14:28 ID:BKUgdd360
――夜――

( ^ω^)「案外ギターって楽しいもんだお!」

 ブーンがアンプに繋いだギターを煩く鳴らしながら、そう言った。
下手なものを聞いてるのは、こんなにも苦痛だったとは。

('A`)「やめろやめろ、近所迷惑だろうが」

( ^ω^)「近所なんて気にする柄かお」

('A`)「俺がうるせーと思ってんだよ」

( ^ω^)「ちぇっ」

 そう言われてブーンは、アンプの電源を落とし、ギターを置いてソファーに寝転がる。

 言われてすぐに辞めたところを見ると、本当はそれほど楽しさを見出だせなかったのだろう。

('A`)「いい加減帰れよ」

( ^ω^)「ドクオが店仕舞いするまで居座るお」

('A`)「今日はもう閉店だ」

( ^ω^)「あーここは一体何屋さんだったんだおー」

('A`)「客がこねーからって馬鹿にすんじゃねーよ」

 近くのバーでテイクアウトしてきたフィッシュアンドチップスを食べながら、俺は漫画を読んでいた。
ブーンもやる事がなくて暇になったのか、俺が読んでいる漫画を一巻から読み始めていた。



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8 名前: ◆H/3wgXUnC2[] 投稿日:2016/03/27(日) 23:15:25 ID:BKUgdd360
 それから三十分も経った頃、入り口の扉がノックされる音が、この静かな部屋に響いた。


('A`)「……開いてるぜ」


 そう言うと、扉を叩いた人物はゆっくりと姿を表した。


ζ(゚ー゚;ζ


 現れたのは意外にも、女性だった。
年齢は二十歳前後、自分と変わらないくらいだろうか。


('A`)「何の用だ? レストランなら50m先にあるが」

ζ(゚ー゚;ζ「……困ってるの……」

('A`)「……ほう」


 彼女の表情を見る限り、どうやら仕事の話のようだ。
俺は手に持っていた漫画を放り投げて、彼女の顔をじっと見つめた。


ζ(゚ー゚;ζ「変な男につけられてるの。数日前からなんだけど、今日もついてきてて……」

('A`)「……なるほど。んで偶然本日開店の便利屋の看板を見つけて、扉をノックしたってわけか」

ζ(゚ー゚;ζ「う、うん……」

('A`)「……で?」

ζ(゚ー゚;ζ「……え?」

9 名前: ◆H/3wgXUnC2[] 投稿日:2016/03/27(日) 23:16:33 ID:BKUgdd360
('A`)「え? じゃねーよ。看板見たんだろ?」

ζ(゚ー゚*ζ「うん……」

('A`)「ここは店だ。依頼人は報酬を払わなきゃあならない。まあもちろん、後払いで結構だが」

(;^ω^)「そんな態度じゃ客も来ないお」

 口を挟む男を無視し、俺は話を続けた。


('A`)「もっとも、金を払わずにトンズラしちまったら……わかるな?」

ζ(゚ー゚;ζ「……いくらくらい……?」

('A`)「……ほら見ろよブーン。ちゃんと話がわかってるじゃねーか」

( ^ω^)「…………」

('A`)「……払えるだけで構わんさ」

ζ(゚ー゚;ζ「……えっ?」

( ^ω^)「やっぱりだお」

('A`)「なんなんだよ、いちいち口を挟みやがって」

( ^ω^)「おっおっ、そのちょっとした優しさがドクオらしいと思ったんだお。それなら最初から優しくすればいいのに」

('A`)「うっせーな」

10 名前: ◆H/3wgXUnC2[] 投稿日:2016/03/27(日) 23:17:36 ID:BKUgdd360
ζ(゚ー゚;ζ「……いくら払えるかわかんないけど……報酬は出すから……」

('A`)「じゃ、交渉成立だな。ブーン、銃は持ってるな?」

(;^ω^)「おっ!? なんでブーンに聞くんだお!?」

 ブーンはそう言いながらも、腰のホルスターを触り銃があるかどうかを確認していた。

('A`)「暇なんだろ、付き合えよ」

( ^ω^)「……しょうがないお。今日だけだお」

('A`)「ああ。……えっと、名前はなんていうんだったか?」

ζ(゚ー゚*ζ「あっ、まだ教えてなかったね。私はデレだよ」

('A`)「OK、デレ。俺はドクオ、こいつはブーンだ。あんた運がいいぜ。その辺のチンピラよりゃぁよっぽど腕の立つ二人組だ」

ζ(゚ー゚*ζ「ほんと? じゃあお願いしたいところだけど……大丈夫なの?」

('A`)「……ハッ、そんなもん“朝飯前”だよ」

ζ(゚ー゚*ζ「……ちょっと頼もしいね……」

11 名前: ◆H/3wgXUnC2[] 投稿日:2016/03/27(日) 23:18:10 ID:BKUgdd360
('A`)「だろ? ……さて……どうやるかだが……」

 俺はゆっくりと椅子から立ち上がり、机の上に置かれたままのピザの箱を袋に詰め直して、それをデレに手渡した。

('A`)「今日はうちの開店日でな。まだここが何をやっているかはあんま知られてないだろう。って事で、こいつを持って家に帰れ」

ζ(゚ー゚*ζ「……それでいいの?」

('A`)「ああ。あんたをつけてる奴を見つけたら、とっちめてやるからよ」

ζ(゚ー゚*ζ「……うん、わかった。信用するからね?」

('A`)「安心しろ」

ζ(゚ー゚*ζ「じゃあ、よろしくね」

 ピザの空箱が入った袋を整えながら、デレは扉を開けて静かに店から出ていった。

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12 名前: ◆H/3wgXUnC2[] 投稿日:2016/03/27(日) 23:19:14 ID:BKUgdd360

 俺とブーンは裏口から出て、デレを尾行している人物を探していた。

 難しい事じゃない。この時間に街を彷徨く奴はそういない。
街灯の少ない暗闇だが、足音や月明かりを頼りに、すぐに犯人を見つけることができた。


( ´ー`)「…………」

('A`)(なんだ、相手は一人か……)


 デレの数十メートル後ろを、ゆっくりと歩く男。
体格こそ普通だが、何故だが妙に気になる服装をしていた。


('A`)(あの服、どっかで見た気がするんだよな……)


 しかし、暗闇かつ遠距離からではしっかりと視認する事ができない。

 ――まあどうせ、すぐにわかる事だ。
俺とブーンは足音を立てないよう、ゆっくりと男に近寄った。


('A`)「ブーン、お前は遠回りしてデレを保護してこい。
タイミングを見計らえよ」

( ^ω^)「わかったお」

 そう言うとブーンは、路地に入って駆け足でデレの元へと向かっていった。



('A`)(……今日は涼しいな)


 このくらいの気温なら、寝苦しいこともないだろう。
早く仕事を済ませて、ベッドに横になりたいものだ。

.

13 名前: ◆H/3wgXUnC2[] 投稿日:2016/03/27(日) 23:20:31 ID:BKUgdd360
('A`)(……そろそろか)

(;´ー`)「…………?」


 数メートル手前まで近寄ると、男が不審な気配を感じ取ったのか、表情をこわばらせながらこちらに振り向いた。


('A`)「よう、今日はいい夜だな」

(;´ー`)「はっ……えっ……!?」

('A`)「酒で熱った身体にゃ、涼しい夜風が丁度いいねぇ。あんたどうせ、そこのバーで飲んでたんだろ?」

(;´ー`)「あ、ああ、よくわかったな。あそこのバーテンダーは最高のカクテルを作るからな」

('A`)「ああ。あそこは最高だ」


 気づかれないように何気なく遠くを見ると、ブーンがデレに声をかけているのが確認できた。

 頃合いだ。


('A`)「しっかし……おかしいな」

(;´ー`)「……何がだ?」

('A`)「今日は、あのバーテンダーは休みだったはずだが……」

(;´ー`)「……ッ!!」

14 名前: ◆H/3wgXUnC2[] 投稿日:2016/03/27(日) 23:21:20 ID:BKUgdd360
('A`)「あんたは一体なんの話をしてたんだ?」

(;´ー`)「……てめぇこそ何なんだ……?」

('A`)「俺はあそこで便利屋を営んでいる者だ」

(  ー )「…………そうか。そういう事か……」


 チャキン、と鋭い音が僅かに聞こえた。
男の右手は、背中へ回されていた。



( ´ー`)「ならとっとと死ねや!!」



 男はそう叫ぶのと同時に、短いナイフを俺の腹目掛けて一直線に付き出してきた。


('A`)「甘いな」


 火花が散ったように見えた。恐らく気のせいだろうが、そう思ってしまうほどの甲高い音が響いていた。

 男のナイフは、俺の拳銃のグリップエンドに当たって動きを止めていた。



 正確には、俺がそうしたのだ。


.

15 名前: ◆H/3wgXUnC2[] 投稿日:2016/03/27(日) 23:22:26 ID:BKUgdd360
('A`)「叫んだらタイミング取りやすくなっちまうだろ? 最初の一発で仕留めたいんなら、次からはやめておく事だ」

(;´ー`)「――ッ!!」

('∀`)「もっとも……次はねぇけどな……」


 男が手元に引いたナイフを、もう一丁の愛銃で撃ち抜く。
小さな刃に亀裂が入り、粉々になっていくのが見えた。


(;´ー`)「なっ……!?」

('A`)「悪いけど、俺の射撃は正確なんだ」


 距離、射角、跳弾。あらゆる要素を一瞬で計算し、目標を確実に撃ち抜く。それが俺の特技だった。

 もっとも、この距離ではあまり意味を成さないが。


('A`)「さて、お前はなんであの女をつけてたんだ?」

(;´ー`)「……女なんて……しらねーよ……」

('A`)「そうか」

(;´ー`)「――ッ!」


 男の顎に、銃口を突き当てる。
そしてゆっくりと、撃鉄を起こした。


.

16 名前: ◆H/3wgXUnC2[] 投稿日:2016/03/27(日) 23:23:41 ID:BKUgdd360
('A`)「もう一度聞く。なんであの女をつけてた」

(;´ー`)「…………」

(; ー )「……しらねーよ」

('A`)「……そうか」


 引き金に、グッと力を込めた。


('A`)「何も言えねーんなら、この口はいらねーな」


 大きな音を立てて、愛銃が火を放つ。
上空に飛び散った血液が月明かりを反射させて、キラキラと煌めいていた。


(  ー )

('A`)「……役に立たねぇ男だ……」


 銃に付着した血液を振り払って、ホルスターに戻す。
返り血はできるだけ浴びないように心がけているが、銃を突き付けている場合だけはどうしようもなかった。


( ^ω^)「ドクオー」


 遠くの方から俺の名前を呼びながら、ブーンとデレが走ってきていた。
銃声を聞いて、終わったとわかったのだろう。


( ^ω^)「終わったかお」

('A`)「ああ。この通りな」

 ポケットからタバコを取り出しながら、血溜まりを作る男の死体に銃口を向けてそう言った。

17 名前: ◆H/3wgXUnC2[] 投稿日:2016/03/27(日) 23:25:44 ID:BKUgdd360
ζ(゚ー゚;ζ「なっ……えっ……!?」

('A`)y‐「どうした?」

ζ(゚ー゚;ζ「こ、殺してなんて言ってないのに……!! そんな……!!」

('A`)「喚くなよ。この街に住んでりゃ、死体ぐらい見たことあるだろうが」

ζ(゚ー゚;ζ「そ、そうだけど……でも……」

('A`)y‐「でも?」

ζ(゚ー゚;ζ「なんで殺しちゃったの!? 捕まえるとか脅すとか、方法はあったでしょ!?」

('A`)「……はぁ……」


 タバコの先に溜まった灰を捨て、もう一度咥える。
フィルターに付着していた唾液が冷えていて、少しだけ不快な気分になった。


('A`)「あのな……。捕まえるとか脅すとか……ガキの遊びじゃねーんだよ。それにナイフを出されてんだ。殺す以外ねーだろ」

('A`)「オマケにこいつは何も喋らないときた。だから生かしておく必要がなかった。Do you understand?」

ζ(゚ー゚;ζ「…………そんな……」

18 名前: ◆H/3wgXUnC2[] 投稿日:2016/03/27(日) 23:26:56 ID:BKUgdd360
( ^ω^)「……仕方ないお。ブーン達は、そういう人間だから……」

ζ(-、- ζ「…………そう……」


 デレは拳を握りしめて、俯いた。

 確かに、彼女には悪いことをしたと思う。しかし俺には、そういうやり方しかできないのだ。


('A`)「……それよりもよ、こいつに見覚えはねーのか?」

ζ(゚ー゚;ζ「……まったく知らない人だよ……」

( ^ω^)「……お? この服どこかで……」

ζ(゚ー゚;ζ「……あっ!」

('A`)「……?」

ζ(゚ー゚;ζ「この服……創作教団の人たちが着てたのと同じだ……」

('A`)「……! ……ほぉ……」


 言われてみれば確かに、夕方店にやってきた男の着ていたものと同じだ。
既視感の謎は解けた。

19 名前: ◆H/3wgXUnC2[] 投稿日:2016/03/27(日) 23:27:54 ID:BKUgdd360
( ^ω^)「なんで創作教団なんだお……?」

('A`)「こいつはなーんか臭うぜ……」

( ^ω^)「……だお……」

ζ(゚ー゚;ζ「ね、ねぇ。この人殺しちゃったら、また私創作教団の人に狙われちゃうんじゃ……」

('A`)「かもな」

ζ(゚ー゚;ζ「……ッ」

ζ(゚ー゚;ζ「そんな……今度は殺されちゃうよ……!」

('A`)y‐「……かもなぁ」


 二本目のタバコに火をつけて、煙を吸い込む。
タバコの先から揺れ動きながら昇る紫煙を、ただ見つめていた。


( ^ω^)「……ドクオの店に泊まればいいお」

('A`)y,.、ポロッ 「……は?」

ζ(゚ー゚*ζ「……! いいの……!?」

('A`)「いやいや何言ってんだ。俺一人で定員オーバーだ」

( ^ω^)「あの広さなら一人くらい余裕だお」

('A`)「うさぎ小屋かなんかと勘違いしてんのか?」

20 名前: ◆H/3wgXUnC2[] 投稿日:2016/03/27(日) 23:28:38 ID:BKUgdd360
ζ(゚、゚;ζ「お願い……! 一人はこわいの……!」

('A`)「…………」

ζ(゚、゚;ζ「報酬なら払うから……!」

(*^ω^)「ヒュ〜♪」

(*'A`)「…………」

ζ(゚、゚ ζ「そういうのは無いけど」

('A`)「…………」

( ^ω^)「こう見えてもドクオ、童貞なんだお」

(A` )「っせーな……うっせーな……」

ζ(゚ー゚*ζ「そうなんだ、なんか意外……」

(;'A`)「やめろやこんな話!!」

ζ(゚ー゚*ζ「じゃあ、泊めてくれる?」

21 名前: ◆H/3wgXUnC2[] 投稿日:2016/03/27(日) 23:29:15 ID:BKUgdd360
('A`)「……チッ……わーったよ。ただし、寝るのはソファーだ」

ζ(゚ー゚*ζ「……うん!! ありがとう!!」

( ^ω^)「よかったお」

('A`)「……はぁ……」


 ため息をつきながら、落としたタバコを拾い直した。
ただでさえ金がなくて、タバコ一本ですら勿体無いのだ。
金になるのなら、引き受けるしかない。


( ^ω^)「じゃあブーンは、ちょっと創作教団について調べてみるお」

('A`)「そいつは助かるぜ。よろしく頼んだ」


 俺よりもブーンの方が、いろいろとコネクションを持っている。そういう意味ではとても頼りになるやつだ。
明日には何かしらの情報を持ってきてくれるだろう。

 軽くブーンに手を振って、俺とデレは店へと戻った。




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22 名前: ◆H/3wgXUnC2[] 投稿日:2016/03/27(日) 23:30:16 ID:BKUgdd360

('A`)「……さて、シャワーも浴びたし、寝るとするか」

ζ(゚ー゚*ζ「そうだね」

('A`)「……ベッド使うか?」

ζ(゚ー゚*ζ「いやいいよ、悪いし……」

('A`)「これでも俺は紳士なんだよ」

ζ(゚ー゚*ζ「……ブーンの前では適当に扱ってたくせにー」

('A`)「それはそれ、これはこれだ」

 部屋の電気を消しても、月明かりでソファーの位置はわかった。
俺は靴を脱いでソファーに寝転がり、近くのテーブルに銃を置いた。

ζ(゚ー゚*ζ「……ありがとね」

('A`)「ああ」

23 名前: ◆H/3wgXUnC2[] 投稿日:2016/03/27(日) 23:30:50 ID:BKUgdd360

 眠気は無い。ただ目を閉じている。
しばらくしてベッドの軋む音が聞こえた。

 時計の秒針が進む音だけが、この暗闇を支配している。



('A`)「……お前さ」

ζ(゚ー゚*ζ「ん?」

('A`)「この街には似合わねーように見えるんだが」

ζ(゚ー゚*ζ「……そうかな」

('A`)「ああ。いかにも、いいとこのお嬢さんって感じだ」

ζ(゚ー゚*ζ「…………」

 しばらくの間、彼女は何も言わない。
寝返りをうつ布擦れの音が聞こえた時、ようやっと口を開いた。

ζ(゚ー゚*ζ「お父さんは、殺されちゃったから」

('A`)「……殺された?」

ζ(゚ー゚*ζ「うん。まあ有名人だったから、いろいろと恨みも買ってたんだと思う」

('A`)「……ふーん」

24 名前: ◆H/3wgXUnC2[] 投稿日:2016/03/27(日) 23:31:53 ID:BKUgdd360
ζ(゚ー゚*ζ「そこから紆余曲折あって……この街に越して来たの。半ば逃げるようにして」

('A`)「なるほどね。じゃあやっぱりこの街の人間じゃあないわけか」

ζ(゚ー゚*ζ「……そうなるね」

 彼女の父親がどういう人物だったのか。また、そこから何があったのかは聞かない。
ただ、彼女がどういう人生を送ってきたのかが少しでもわかればそれで良かった。
信頼に値するかどうかの判断がつく。

 そして彼女は嘘を付いているようには思えなかった。
この街でつく嘘にしては、ちょいと臭すぎる。
信頼してもよさそうだ。

('A`)「ところで、お前のバッグからはみ出してた服、あそこのレストランの制服だろ? ウェイトレスでもやってんのか?」

ζ(゚ー゚*ζ「……よくわかったね。そうよ、あそこで働いてるの」

('A`)「ふーん……。食いに行ったことはねぇが、近いうちにお邪魔するか」

ζ(゚ー゚*ζ「外観はちょっとあれだけど、結構良いお店なんだ。ナポリタンが絶品だからぜひ来るといいよ」

('A`)「そいつはいいな。んじゃ、明日の昼飯はそこにすっか」

ζ(゚ー゚*ζ「……うん、そうだね!」




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