蒼い春

29 名前:名無しさん[sage] 投稿日:2016/04/03(日) 20:57:15 ID:cHnDGMZU0


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


≪アスキーアート学園 ライブ会場内≫


 ざわざわ        ざわ・・・
       ざわざわ


ミセ;*゚ー゚)リ「あー始まる、始まるよぉー」

(*゚ー゚)「うん」

ミセ;*゚ー゚)リ「そわそわするね! トイレ大丈夫!?」

(;*゚ー゚)「さっき行ったよ!? ほら、もう始まるから――」


 バッ(照明が落ちる音)


( ^ω^) !?

('A`) !?


 デレレレレレレレレレ(ドラムロール)


 『――レデース、エーン、ジェントルメェーーン!!』


ミセ;*゚ー゚)リ「うおあキタッ!! ああーーーー!!」ドキドキ!ドキドキ!!

(;*゚ー゚)「……」ヒエー


.

30 名前:名無しさん[sage] 投稿日:2016/04/03(日) 20:58:50 ID:cHnDGMZU0


 暗転した会場内。そこに響き渡った司会兼アイドルの声。
 ざわめきは途端に失速し、観客達の目は暗いステージの方に集中する。

 カッ!(ステージに一点のライトが!)

ミセ;*゚ー゚)リ「ああっ! ほら、あれ!」

(;*゚ー゚)「ハローさんだっ」


ハハ ロ -ロ)ハ

 照らされ出したその場所には、見知った顔のアイドルがマイクを持って立っていた。


ハハ ロ -ロ)ハ 『ハロー! 司会進行、晴峰ハローデス!』

ハハ ロ -ロ)ハ 『今回のライブ、前置きはナシッ! まずは一曲!』

 デレレッ レーレン ズデデデデデデデデ・・・(イントロ)

ハハ ロ -ロ)ハ 『ご存知学園のビッグスター!
       タッグを組んで早一年、急成長して大活躍の、超新星スーパーユニット!!』


 カッ!(ライトが点く!)(白い衣装だ!)

ノハ ) 川  -゚)


ミセ;*゚Д゚)リ「うお、うおおおおおお!! キタ、バニブリ、ああ!_?」


 『バーニングブリザードの二人で、≪サザンクロス×ディストーション≫からだ!』


.

31 名前:名無しさん[sage] 投稿日:2016/04/03(日) 21:00:19 ID:cHnDGMZU0

 イントロの最中、二人はステージの左右に散って互いに熱い視線を送りあった。
 ユニット代表曲であるこの曲は二人の個性のぶつかりあい、能力バトル物のような一曲!
 客にしてみれば「こんな序盤にバニブリを!?」と言いたくなるような、死ぬほど燃える一曲であった!!

 デッデーデデデン ズデデデデデデデ――!
             デデデデデデデ――!
                デデデデデ――!

 鼓膜を横殴りにするような爆音ドラム!
 それが一瞬の静止、静寂――

ミセ;*゚ー゚)リ「来るぞ・・・鳥肌注意・・・」

 ステージ上が真っ赤に染まり、エレキギターが産声を上げる――ッ!!

 ギュイッッッッ

ノハ#゚听) 『HEY! ここで逃げる訳がねえ!』

 デッデー

ノハ#゚听)『まだまッ・・・だ、まだ! 走り足りねえ!』

 爆発する歓声――熱狂は拡散するッ!!!

32 名前:名無しさん[sage] 投稿日:2016/04/03(日) 21:00:57 ID:cHnDGMZU0


 ポロロ〜ン ポロロ〜ン(悲しみを表現)

 だがしかし、その熱量に反するはグランドピアノの冷たい旋律だった。
 ステージは青一色に! 躁鬱のような曲!

 曲調は一気に地の底へ――!


川  - ) 『――ずうと立ち止まった足が、今も動かない』

川  - ) 『悩み苦しみ、ここに残り、安心していた、自分を見つける―――』

川  - ) 『ああ、辛く苦しい悩みで、本当の自分を誤魔化している――――』


 なんという歌声! かなしみ!
 だが! 直後に曲は一転する!

 再び赤いライトが注がれ、ステージは赤と青の二色に分かれた――!


ミセ;*゚Д゚)リ「スゲー!! ワー! ウオアアアアア」

(;*゚ー゚)「……きれい……」


.

33 名前:名無しさん[sage] 投稿日:2016/04/03(日) 21:01:22 ID:cHnDGMZU0


ノハ;><)『――ッッ!!』

 熱く叫び上げる素直ヒート!

川 ゚ -゚)『――――』

 それを冷たくいなし、かわす素直クール!

 決して交わらない二人の歌声は、この曲の最後、ほんの一瞬交差する!
 後ろの楽器が、とても曲の一部とは思えないひずみに吸い込まれて消え去り――


ノハ#゚听)『――だけど、決して!』

川  -゚)『人の言葉では終わらない――』

ノハ#゚听)『アタシは――』

川  -゚)『私は――』

 ドンッ ズデデッ



ノハ#゚听)『――ただ真っ直ぐ! 前に向かって転がり落ちていく――――!!』

      『――ただ真っ直ぐ、私の言葉を信じていく――――』 川 ゚ -゚)


 音楽が止まる……会場が静まり返る。
 二つの答え、二人の在り方。観客の胸の内でぶつかりあったそれは、すぐさま大歓声に変貌した!

34 名前:名無しさん[sage] 投稿日:2016/04/03(日) 21:02:09 ID:cHnDGMZU0


「ウオオオオオオオオオオオオオ!!!」 「めっちゃ尊い・・・」
 「ぴぎゃあああああああああああ!!!」
                    「■■■■■――――ッッッッ!!」
 「ありがとーーーーーー!!」

ミセ;*゚Д゚)リ「カッコイイーーーー!! ヒートちゃーーーーーー!!」


ノハ;゚听)ノシ 「・・・あー疲れた」

川 ゚ -゚)ノシ 「大変だよな、ヒートは」

ノハ;゚听)ノシ 「まあ、今日のラストを考えたらこれでも足りねえけどな……」

 歓声に笑顔で手を振り、ステージから消えていく二人。
 それと入れ替わり、ふたたびハローがマイクをふりかざす。


ハハ ロ -ロ)ハ『ハーイ! バニブリ凄かったネー!!』

ハハ ロ -ロ)ハ『曲はまだまだ用意してあるから、どんどん行っちゃうゼーーッ!!』


ハハ ロ -ロ)ハ『次は彼女! キュートでクール! ギャップ萌え爆釣!』

ハハ ロ -ロ)ハ『ハインリッヒちゃんだ! 今日もフリフリだぞ!』


〜ステージ裏〜


从;゚∀从「おい待て!! 今日なんかいつにも増してフリフリ多くねえか!?!?」

*(‘‘)*「さっさと行ってくるですよーっ」 ドンッ

从;゚∀从「いやちょまッ! テメー覚えとけよ!?!?」

*(‘‘)*(クソザコハインちゃんかわいい・・・)

.

35 名前:名無しさん[sage] 投稿日:2016/04/03(日) 21:03:04 ID:cHnDGMZU0



━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━



 ――ライブは滞りなく進行し、アンコールまで終了。
 そして最後に残されたるは、学園トップアイドルの一曲――


ζ(゚ー゚*ζ「……よし。衣装もメイクもバッチリ!
       歌っておいで、歌姫さん」

ξ゚听)ξ「うん。歌ってくる、今の私で……」

 カツン カツン・・・

 ピンヒールが舞台床を打ち鳴らす。
 デレはステージに向かうツンの背中を見送りながら、腕を組んで溜め息をついた。


ζ(゚ー゚*ζ「まったく……やんちゃなんだから……」


 カツッ カツッ カツッ カツッ・・・




.

36 名前:名無しさん[sage] 投稿日:2016/04/03(日) 21:04:26 ID:cHnDGMZU0

(;*゚ー゚) ピクッ

ミセ;*゚ー゚)リ「……あっ来た! 来たよ、風桐ツンちゃん!」

 お開きムードになりつつあった会場に、もう一度火が点いた。
 しかしなぜか客席の照明までも点いてしまい、期待の声には少しばかりのどよめきが混ざっていた。



ハハ ロ -ロ)ハ 『……エー。最後の一曲、の前に』


ξ゚听)ξ「いいわ。あと自分でやるから、ありがとう」カツカツカツ

 前振り完全無視! ツンちゃんはステージに現れ、ハローに話しかけた。


 「え?」
    「お?あれ、ツンちゃんじゃね?・・・」


ハハロ -ロ)ハ「……オーケー。曲を始める時は目配せだからネ」

ξ゚听)ξ「うん」

ハハ ロ -ロ)ハ「……知らないヨ」

ξ゚听)ξ「うん。覚悟してきたから」

 ツンに舞台を譲り、ハローは裏方に消えていった。

37 名前:名無しさん[sage] 投稿日:2016/04/03(日) 21:05:29 ID:cHnDGMZU0


ξ゚听)ξ『――……こんにちは。風桐ツンです』

 マイクを両手で持ち、ツンは会場に向かって話し始めた。
 歓声はあがらなかった。彼女の雰囲気が、それをさせなかった。


ξ゚听)ξ『今日はお集まりいただいて、本当にありがとうございます。
      新入生、それ以外の方でも、こうして私達に興味をもってくれた事、嬉しく思います』

ξ゚听)ξ『……ここは、私がアイドルとして初めて歌ったステージです』

ξ゚听)ξ『そのステージを覚えているかた、いらっしゃいますか』

 彼女の問い掛けに、まばらな答え。
 彼女のファーストステージを知る人間はそう多くはなかった。


ξ゚ー゚)ξ『……ありがとう。これから歌うのは、あの時と同じ曲です』

ξ゚听)ξ『蒼い春、と言えば皆さんご存知かと思います。
      私が作った歌詞を親友のデレが曲にしてくれた、という裏話も、これで何度目でしょう……』


ξ゚听)ξ『学園の皆さん、私のワガママを聞いてくれてありがとう。
      私が始まった場所で、終わる事ができて、私はとても嬉しいです』

 なにかを察した客席。徐々に強まっていく雑音。

 ツンは舞台裏に視線を送る。会場が暗転し、『蒼い春』のイントロが始まる。
 ピアノの高音が雑音をかき消す。始まる――

.

38 名前:名無しさん[sage] 投稿日:2016/04/03(日) 21:06:34 ID:cHnDGMZU0



 『私は今日、この一曲を最後にステージを降ります』


 『せめて皆さんの蒼い春が終わる事のないよう、祈りを込めて歌います――』



.

39 名前:名無しさん[sage] 投稿日:2016/04/03(日) 21:06:57 ID:cHnDGMZU0


















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40 名前:名無しさん[sage] 投稿日:2016/04/03(日) 21:07:44 ID:cHnDGMZU0


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≪ライブ後 風桐ツン 控え室前≫




ハハ ロ -ロ)ハ「……お、来たね」


ミセ;*゚Д゚)リ「おおおお、お、お疲れさまです!」ペコペコ

ハハ ロ -ロ)ハ「センキュー! 楽しんでくれたかい?」


ミセ;*゚ー゚)リ「それはもう!! 豚のような悲鳴を上げましたッッッ!!」

ハハ;ロ -ロ)ハ「それは、女子としてどうかと……」

(;*゚ー゚)

(;*゚ー゚)「……あの、風桐さんは」

ハハ ロ -ロ)ハ


ハハ ロ -ロ)ハ「居るよ。中で待ってる。
       先客が居るって取材とかも断って、二人を待ってた」

(;*゚ー゚)「……」

ミセ*゚ー゚)リ「……行ってきて! 私はハローさんとツーショット撮ってるから!」

(*゚ー゚)「……うん。行ってくる」


.

41 名前:名無しさん[sage] 投稿日:2016/04/03(日) 21:08:26 ID:cHnDGMZU0


 ガチャ(ドアを開ける音) 

 キィー(きしみ)

 バタン(ドアを閉める音)




(;*゚ー゚)「……」


ξ゚听)ξ「――あ、お疲れさま。いらっしゃい」


.

42 名前:名無しさん[sage] 投稿日:2016/04/03(日) 21:08:52 ID:cHnDGMZU0



 〜〜お茶やらお菓子やらを用意した後〜〜


(*゚ー゚)

ξ゚听)ξ


(*゚ー゚)

ξ゚听)ξ

(*゚ー゚)


(*゚ー゚)

(*゚ー゚)

(*゚ー゚)


ξ;゚听)ξ「……えっと、まず写真とる?」

(;*゚ー゚)「え、あ!? はいっ!」


 並んでパシャッ(写真をとる音)


ξ;゚听)ξ

(;*゚ー゚)

 (沈黙)


.

43 名前:名無しさん[sage] 投稿日:2016/04/03(日) 21:10:53 ID:cHnDGMZU0


ξ;゚听)ξ「……」


ξ゚听)ξ


ξ--)ξ「……『志ヶ谷』って言ったら、私はね」

 ツンは、静かに語り始める。


ξ゚听)ξ「あの人を思い出すよ。志ヶ谷つうさん」

ξ゚听)ξ「間違ってたら失礼だけど、貴方のお母さん……でしょう?」


(;*゚ー゚)「……はい」

【 (*゚∀゚)ノシ ←つーちゃんママ(死亡) 】


ξ゚听)ξ「……あのね、私、あの人の歌に惚れ込んで、この学園に来たんだ」

ξ゚听)ξ「歌もダンスも、凄かった。多分、今の私でも手が届かない、凄い人だった」

ξ゚听)ξ「私にとっては今も夢で目標なの。本当にお星様になった今でも……」


(*゚ー゚)「……なんで、辞めちゃうんですか?」

ξ゚听)ξ

ξ゚听)ξ「……ごめんね。イメージ崩れると思うけど、甘えさせて」


.

44 名前:名無しさん[sage] 投稿日:2016/04/03(日) 21:11:57 ID:cHnDGMZU0


ξ゚听)ξ「なんていうかね、ああ、終わったなあと思っちゃったんだ」

ξ゚听)ξ「もちろんまだまだ先はある。今も全然トップじゃない。
       アイドルとしてあと20年、歌手としてなら50年は戦えるし」


ξ゚听)ξ「……でもね、なんていうか、違うの。
       私は、私の為にしか歌えなくて、みんなの言うような理想のアイドルじゃなくてさ……」

ξ゚听)ξ「……なんだろうな。場違い、っていう感じかな。
      アイドルは私の居場所じゃないって、思い始めちゃって……」


ξ゚听)ξ「……理想の私と、今の私が、違うの。
       歌いたいように歌っていた筈なのに、私はもう、自分がどこに居るのか分からなくて……」


(;*゚ー゚)「そ、そんなっ……!」ガタッ


(;*゚ー゚)「ツンちゃんは凄いアイドルだよ!?
     わたし、ライブのビデオ何回も見直してて、歌も踊りもっ……」

(;*゚ー゚)「……お母さんみたいだなって、思ってたのに……!」


ξ゚听)ξ「……それは、私にとって褒め言葉じゃない。
       私は私として、ここまで来たかった……」

ξ゚ー゚)ξ「……いいえ、これはワガママかな。
      そうね、私が私を認められないから、ここまでにするって決めた、かな」


.

45 名前:名無しさん[sage] 投稿日:2016/04/03(日) 21:13:06 ID:cHnDGMZU0


ξ゚听)ξ「……それで、貴方はどうなの?」

(;*゚ー゚)


(*゚ー゚)「……え、いや、私ですか?」

ξ゚听)ξ「私は答えたよ。だから今度は貴方の番」

(;*゚ー゚)

ξ゚听)ξ「どうして、アイドルを目指さなかったの?」


(;*゚ー゚)「……私が、そう望まないからです」

ξ゚听)ξ「……ふふ」


(;*゚ー゚)「……おかしいですか?」

ξ゚ー゚)ξ「いいえ。でもね、ふつうは答えないわよ。
      目指さなかった人はね、目指さなかった理由なんて考えないもの」

(;*゚ー゚)「そ、そうですか……?」

ξ゚听)ξ「諦めたーとか、無理そうだったーとかならすぐ言えるけど、それは目指さなかった理由じゃない。
       頑張らなかった言い訳でしかない。今の答えはね、用意しないと出せないものよ」

(;*゚ー゚)

ξ゚听)ξ「……この後ね、新入生だけでやるコンテストがあるの。
       よかったら出てみない? 貴方の歌とダンス、とても興味がある」

ξ゚听)ξ「つーちゃんの娘は、いったいどんなアイドルなんだろうって」

46 名前:名無しさん[sage] 投稿日:2016/04/03(日) 21:15:28 ID:cHnDGMZU0


(#*゚ー゚)「……いいんですか?」

ξ゚听)ξ「もちろん」

(#*゚ー゚)「……人生で、二度目のステージです」

(#*゚ー゚)「やるからには優勝しますけど、いいんですか」

ξ゚听)ξ「もちろん。参加者みんな同じ気持ち。
      そこに参加する意味、つまり、プロ意識はあるかしら」

 しぃは席を立ち、控え室を出ようとドアに向かって歩き出した。

(*゚−゚)「……追ってきた背中が違います。心意気だけは、出来てます」

ξ゚ー゚)ξ「……うん。私、見てるから」


ξ゚听)ξ


ξ゚听)ξ(……私は、あの人の背中を追いかけてここまで来た。
       貴方もそれは一緒のはず。だから、見せて……)

ξ )ξ(ここで終わりじゃないって、思わせて……)


.

47 名前:名無しさん[sage] 投稿日:2016/04/03(日) 21:16:23 ID:cHnDGMZU0


 ガチャ(ドアを開ける音)


 キィー(KISHIMI)


 バタン(ドアが閉まる音)



(*゚ー゚)「――終わったよ」

ミセ;*゚ー゚)リ「あっやべ切るね」 ササッ

(*゚ー゚)「……電話?」


ミセ;*゚Д゚)リ「ままままままああぁんね!?」アタフタ

(*゚ー゚)「……まあいいや。ハローさん、私この後のコンテストに出ます」

ハハ;ロ -ロ)ハ「え、でもあれは新入生だけのヤツで……」

ミセ*゚Д゚)リ「マジで!?!??!?! じゃあ急がなきゃ!!!!!」セナカグイーー

(;*゚ー゚)「おっ押すな! 危ないでしょっ!」


ハハ;ロ -ロ)ハ

ミセ;*^ー^)リ「えへへ、えへ、うふ、エフッ!」


.

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