雨上がり七日の空模様です

129 名前: ◆3TZSFRho.I[sage] 投稿日:2016/04/03(日) 23:55:50 ID:KDf5Cbvo0


( ^Д^)「こんちは」

( ^ν^)「……おいおい。ずいぶん早いな」

( ^Д^)「学校から直接来たんすよ」

( ^ν^)「んなもん制服見りゃわかる。
       どういう風の吹き回しだっつーことだよ、安織」


 時刻は午後15時過ぎ。

 相変わらず大部屋に一人きりのニュッの病室に、
 安織は一人で──いや。


ζ(゚ワ゚*ζ「ひゃー学校帰りとかいかにも青春!って感じしますね。
      この場で学生なの安織くんぐらいですけどっ」


 いったいどこからわいたのか、後ろをついてくる長網と共に
 ニュッのもとを訪れていた。

132 名前: ◆3TZSFRho.I 投稿日:2016/04/04(月) 00:00:40 ID:kqFQgo/Q0


 雨上がり七日の空模様です


 5:[金曜日]
 
.

133 名前: ◆3TZSFRho.I 投稿日:2016/04/04(月) 00:01:04 ID:kqFQgo/Q0

( ^Д^)「ちょっと聞きたいことがあって」

( ^ν^)「へえ」

( ^ν^)「キュートの前じゃ聞けないことか」

( ^Д^)「……まあ、そうっすね」


 泣いている須藤から話を聞くだけでは、涙の原因を解決できない。
 
 そう考えた安織はパン屋の営業時間中──言いかえれば、
 須藤が来ないうちに病院へ足を運んだのである。


( ^Д^)「足、本当にもう治らないんすか?」

ζ(゚ー゚*ζ「ぶっ」

( ^ν^)「……お前それ本人に聞くのかよ」

(;^Д^)「あっすんません」

 まあ、いいけど。
 ニュッはそう言うとそっけなく答える。

( ^ν^)「放っといては治んねえだろうな。
       少なくとも、畑田はそう言ってたよ」

134 名前: ◆3TZSFRho.I 投稿日:2016/04/04(月) 00:01:25 ID:kqFQgo/Q0

( ^Д^)「畑田センセーすか……」

( ^ν^)「そう疑い深い顔をすんなって」

( ・∀・)「おや、僕の話かい?」

(;^Д^)「あ」


 がらり。

 扉を開けて入ってきたのは畑田である。

ζ(゚ー゚*ζ「何ともタイミングのいい……」

(;^Д^)(どちらかというと間の悪いっすよ、これ)

 壁にもたれて言う長網に小声で返す。
 畑田は安織の姿を認めるとふむ、と左手を口に当てた。

135 名前: ◆3TZSFRho.I 投稿日:2016/04/04(月) 00:01:49 ID:kqFQgo/Q0

( ・∀・)「君はたしか……」

(;^Д^)「安織す」

( ・∀・)「ああ!安織、安織くんか。
      すまないね、僕はどうにも名前を覚えるのが苦手なようで」

( ^ν^)「おら、採血だろ」

( ・∀・)「そうそう、そうだ。いやはや須藤さんは理解があって助かるよ」

( ^ν^)「はっ」

 畑田はそう言いつつも動かす手を休めない。

 既に腕を巻くっているニュッの腕になめらかな動作で針を差しこむと、
 手元のバインダーに何か書きつける。

 安織は感心を覚えながらその様子を眺めていた。
 この医師は、どうやら黙ってさえいればまともらしい。


( ・∀・)「須藤さんと言えばね」


 目線はバインダーに落としたままでそう切り出した。

136 名前: ◆3TZSFRho.I 投稿日:2016/04/04(月) 00:02:11 ID:kqFQgo/Q0

( ・∀・)「一昨日、妹さんが来たよ。ええと、」

( ^ν^)「キュート」

( ・∀・)「そう、キュートさん」

( ^ν^)「へえ。それで?」

( ・∀・)「何と言っていいか……結果から言えば泣かせてしまってね」

( ^ν^)「……あれで泣き虫だからな、昔から」

( ・∀・)「それで彼女、最後まで話を聞かずに走って行ってしまったんだ」

( ^Д^)「それは本当すか」

 二人の視線が安織で交わる。
 急に口をはさんだのだから当然だが、聞かずにはいられなかったのだ。

(;^Д^)「……すんません」

( ・∀・)「何かあったのかい」

(;^Д^)「はあ、まあ」

( ^ν^)「言ってみろ」

137 名前: ◆3TZSFRho.I 投稿日:2016/04/04(月) 00:02:32 ID:kqFQgo/Q0

 安織は逡巡する。
 昨日須藤から聞いた話を、須藤の姿を、伝えるべきか否か。

ヾζ(゚ー゚*ζシ「私も気になりまーす!」

 はいはーい、と手を振る長網を見て嘆息する。
 結局、安織はかいつまんで話すことにした。

 要すると、ニュッの足が治らないことを悲しんでいた、という風に。

 ニュッの笑顔が怖かったこと、
 逃げだす自分が嫌なことについては触れないことにする。
 きっと、隠しておきたいことだろうし。

( ^ν^)「……はーん」

(;ー∀ー)「それは……どうにも申し訳ないことをしてしまったようだね、僕は」

ζ(゚、゚*ζ「私、もしかして相当おいしい場面を
      見損ねてしまったのでは……」

 反応は三者三様である。
 ニュッの含みのある頷きが気になったが、あえて気付かないふりをした。

138 名前: ◆3TZSFRho.I 投稿日:2016/04/04(月) 00:02:52 ID:kqFQgo/Q0


( ^Д^)「今週末に企画があるそうで……あっ俺はそれの手伝いをするんすけど、
      忙しくなるだろうし、やっぱり少し不安すね」

( ^ν^)「企画っつーと」

( ^Д^)「出張販売っす。そこの公園、花屋の裏んとこっすね。
      そこにブースを設けてパン祭りと題すらしいっす」

( ・∀・)「ほう!何とも楽しそうじゃないか」

( ^ν^)「無茶しやがる。……いや、そんためのお前、か」

 ニュッがそう言いつつ目を見開いていくのがわかる。
 視線の先は、包帯の量が多少減った安織の左腕だ。

( ^Д^)「えっと、どうしたんすか」

( ^ν^)「……安織。お前が前言ってたバイト先って」

( ^Д^)「須藤さんとこっすよ、これ厨房でこしらえたんす」

139 名前: ◆3TZSFRho.I 投稿日:2016/04/04(月) 00:03:13 ID:kqFQgo/Q0

(;^ν^)「……」

 珍しくニュッの顔色が悪い。
 額にうかんでいるのは冷や汗だろうか。

( ^Д^)「ほんと、ニュッさんどうしたんすか……?」

(;^ν^)「……鉄板」

 鉄板?
 安織が心の内で首をひねっているとニュッが続きを補った。

(;^ν^)「…………鉄板つったな、お前のその火傷」

( ^Д^)「?そうすけど」

 うなづいて、はて、疑問に思う。
 ニュッに火傷の話はしたが、何故、今になってその話が出るのだろう。

(;^ν^)「……悪い」



(;^ν^)「お前の腕、俺のせいだ」

140 名前: ◆3TZSFRho.I 投稿日:2016/04/04(月) 00:07:35 ID:kqFQgo/Q0

ζ(゚、゚*;ζ「!!」

 いち早く反応したのは長網である。
 壁にもたれていた体がずるりとすべり、明らかに動揺しているのがわかる。

(;^Д^)「それ、どういう意味すか」

 動揺している、という点であれば安織も同じだ。

 須藤を悲しませ、長網を責め、
 けれどやはりどうしようもなかったのだと、一度は呑み込んだ問題である。


 そこに何故ニュッが食い込んでくる。


( ・∀・)「……ふむ」

 ず、と注射針を抜いた畑田が息をついた。
 その痛みが不意打ちだったからか、ニュッが心なしか顔をしかめる。

( ー∀・)「どうやら込み入った話のようだ。
      僕はここらで退出させてもらおうかな」

 どうしてそこでウインクをねじ込んでくるのか。

 しかしやはり、てきぱきと仕事道具を片づける動きに無駄はなく手馴れている。
 最後に畑田は換気と言って窓を開けた。

141 名前: ◆3TZSFRho.I 投稿日:2016/04/04(月) 00:08:08 ID:kqFQgo/Q0
 
( ・∀・)「昼寝をするならちゃんとナースコールを押してくれよ、
      閉めに行かせるから。
      しっかり頼むね。でないと僕がキュートさんに責められてしまう」

(;^ν^)「……ああ」

( ・∀・)「それから安織くん。
      週末はお邪魔させてもらおう、メロンパンでも置いてあると嬉しいな」

(;^Д^)「はあ、はい。伝えとくっす」

( ー∀ー)「また会おう」

 そう言うと、それはそれは綺麗に白衣を翻し、病室を出た。

 窓を開けたのは換気ではなく、
 風を当てるためだったのではないかとつい考えてしまうほど綺麗に。

ζ(゚、゚*ζ「終始きざな人でしたね」

( ^Д^)(っすね。あんな人、普通なら舞台の上でしか見れないはずっすよ)

 小声で同意する。
 変わった人間もいたものである。

142 名前: ◆3TZSFRho.I 投稿日:2016/04/04(月) 00:08:30 ID:kqFQgo/Q0

( ^Д^)「それで」

 ニュッに視線を投げる。
 そこにあるのは疑問と、不謹慎ながらも少しばかりの好奇心であった。

( ^Д^)「どうして俺はニュッさんに謝られてるんですかね」

ζ(゚、゚*;ζ「あっそうですよ、それです!」

 長網もニュッの方を見る。
 壁から離れ、ベッド横の椅子に腰掛けるあたりはちゃっかりしている。
 
 ニュッはというと長く息を吐き出している。
 やがて、決心したように話し始めた。

143 名前: ◆3TZSFRho.I 投稿日:2016/04/04(月) 00:09:15 ID:kqFQgo/Q0

( ^ν^)「聞いてるだろうが、そこのパン屋は俺の家でもある」

( ^ν^)「まあ面倒なのはごめんで、店長やら経営やらは
       全部キュートに投げてたが……」

 ちなみに両親は海外進出を意気込み、二年ほど前から海の向こうらしい。

 ニュッの事故のことは意識が戻ったなら、と見舞いはしばらく見送りで、
 落ち着いたら戻ってくるのだとか。
 何とも自由なことである。 

( ^ν^)「で、俺の仕事と言えばこねたり焼いたり、
       器具の不具合を直したり……ちらっと宅配もしたが、
       あれは向いてねぇな」

 安織はぎくりとする。
 なにせ昨日須藤から宅配の下りを聞いたばかりなのだ。

 ここで彼女を非難する言葉でも出たらと思うと気が気でなかった。
 が、どうやらそれは杞憂であったらしい。

( ^ν^)「どうにもお客さんへのお渡しっての?あれがやっぱり面倒だ」

 ニュッは頭をがしがしとかき、顔をしかめるだけである。
 そこに須藤を責めるなどという要素は微塵も読み取れない。

(  -ν-)「……悪い、話がそれた。問題は不具合のくだりだよ」

( ^Д^)「不具合、すか」

( ^ν^)「事故の日、宅配出る直前に手入れしてたオーブンがあんだよ。
       ……多分それだ。問題の、鉄板が落ちてきたやつ」

144 名前: ◆3TZSFRho.I 投稿日:2016/04/04(月) 00:09:53 ID:kqFQgo/Q0


 いわく、ネジを閉め忘れたのだと。

 そのことに気が付いたのは宅配の帰り──事故の直前で、
 病院で目を覚ましてからはすっかり忘れてしまっていたらしい。

 すぐにどうこうなるものではなく、何度か使っている内にやがて、
 運が悪いとがつり、とずれてしまう……そういう部分だったそうだ。

ζ(゚、゚*;ζ「じゃ、じゃあじゃあキュートさんが今のはって、
       声を上げてたのは!」

( ^ν^)「そりゃゆるみ切ってたら違和感ぐらい感じるだろ。
       使い慣れてたんならなおさらだ」

( ^Д^)「……デレさんのせいじゃ、なかった……?」

 いや、これはむしろ。


 長網がいたからこそ、須藤に怪我を負わせずに済んだのでは、ないか──?


(;^Д^)「……!!」

 ひゅう、と息を吸い込む。
 そうだ。そうじゃないか、実際自分はそう考えていた。


 長網を引きはがそうとして駆け寄って、その結果として鉄板を退けたのだ、と。

145 名前: ◆3TZSFRho.I 投稿日:2016/04/04(月) 00:10:17 ID:kqFQgo/Q0
 
( ^ν^)「……おい安織。デレさんってのは誰、だ」

(;^Д^)「あっいや、何でもないす」

 つい素で長網の名を出していたことに気づき、あわてて口をつぐむ。

 つぐむ、が。

 何やらニュッの様子がおかしい。
 その目線はとっくに安織を外れているのである。


 いや、正確には。

(;^ν^)「…………はあ?」

ζ(゚、゚*ζ「……」




Σζ(゚、゚*;ζ「ほへぁっ!?」


 ──ばっちり長網を見ていたのである。

146 名前: ◆3TZSFRho.I 投稿日:2016/04/04(月) 00:10:38 ID:kqFQgo/Q0


(;^ν^)「何だお前。いつからいた?」

ζ(゚、゚*;ζ「いつからと言われれば最初からいましたがっ」

(;^Д^)「デレさん駄目っすそれ、むしろ混乱を招く発言っす!」

 異常事態であるのは明らかだった。
 なにせ、ニュッに長網が認知されている。

 というか既に先ほど、自然な調子で会話していなかったか。

ζ(゚、゚*;ζ「ちょっと安織くん時計見せてください!」

 ぐい、と長網が安織の腕を引っ張る。相変わらずの馬鹿力だ。
 なすすべもなく腕をまくられるが、当然、手首付近には何もない。


ζ(゚、゚*;ζ

 唖然とする長網にことの顛末──朝のコーヒー事案についてを説明する。



ζ(゚□゚*;ζ

 始めは閉じていた口がそれこそネジが外れたように開いていく様子は、
 正直、クルミ割り人形のように見えた。

(;^Д^)「……あの、ほんと、なんと謝ったらいいか」

ζ(゚□゚*;ζ

ζ(゚□゚*;ζ



ζ(゚□゚*;ζ

( ^ν^)「……おい」

147 名前: ◆3TZSFRho.I 投稿日:2016/04/04(月) 00:11:44 ID:kqFQgo/Q0

ζ(゚□゚*;ζ「ひゃい」

( ^ν^)「ふざけてないで俺にもわかるよう説明しろ」


 しびれを切らしたのか、ニュッはベッドから乗り出すと
 長網の襟首をつかんで言った。

 疲れるからかすぐに離したが、安織はひやりとする。 
 見える、聞こえる――それだけではない。


 ニュッは自ら長網に触れられたのである。


 もともと安織以外は何の干渉もできないはずであったのに。
 自分がこの事態を招いてしまったのかと思うと、いよいよ焦燥を覚える。


ζ(゚∩゚*;ζ「んしょ」

 そんな安織を知ってか知らずか、
 長網は自身の顎を押し戻すと今度は真顔になり、言った。



ζ(゚、゚*;ζ「……ちょっとときめいた……」


(; Д )「ぶっふぉ!!!!!」

( ^ν^)「は?」

 事態が複雑化していく。
 安織は頭を抱えるばかりである。

148 名前:名無しさん 投稿日:2016/04/04(月) 00:12:10 ID:kqFQgo/Q0

 


 


( ^ν^)「──んな荒唐無稽な話信じられるか」


(;^Д^)「……まあ、そうっすよね」

ζ(゚ー゚*ζ「でも事実ですよー本当なんですよー」

 安織がやっとのことで長網のことを
 説明(安織の恋愛がどうだとかいう部分は完全に省いた)するも、
 ニュッの反応はこの通りである。

 それもそうだ、とは思う。

 長網が表れて五日ほど経つが、
 積極的に関わっている安織ですら、時々夢なのではないかと考えるのだ。

(  -ν-)「過去だとか別世界だとかな、簡単に言ってくれるなよ」

(;^Д^)「…………すいません」

 安織が謝るのを聞き、ニュッは目をそらす。
 今のはもしかすれば無意識に出た、泣き言だったのかもしれない。
 
 ニュッの泣き言。そういえば、初めて聞いたように思う。
 須藤の口からもそんな話は出なかった。

 この人もやはり、つらいのだろうか。
 表に出さな過ぎるだけで、あまりにもわかりにくいだけで。

 過去に別世界。修正に調整。
 それが出来ればどんなに良かったか、今、一瞬でも考えたのではなかろうか。

149 名前:名無しさん 投稿日:2016/04/04(月) 00:13:29 ID:kqFQgo/Q0

(;^Д^)「!!」

 はっとする。
 そうだ、どうして気付かなかったのだろう。

 ニュッの交通事故──それ自体を
 長網の世界の技術で修正≠オてしまえばいいのではないか。


ζ(ーーー*ζ「安織くんはわかりやすいですね」


 しかし、長網は安織が声をかける前に首を振った。

ζ( - *ζ「私たちは『そういうことのない世界』を作りに来てるんです。
      なのに訪れた先でその技術を行使してたら、ちぐはぐじゃないですか」

(;^Д^)「……それは」

 正論である。
 それに長網の息の詰まるような表情を見ると、もう何も言えない。

 落胆する安織におい、と後ろから声がかかる。

( ^ν^)「何をどうとったか知らないがな」

( ^ν^)「俺は現実を受け入れてる。
       んな空想真に受けて、期待するほどガキじゃねえよ」
 
(;^Д^)「でも」

150 名前: ◆3TZSFRho.I 投稿日:2016/04/04(月) 00:14:12 ID:kqFQgo/Q0

 ニュッはあくまでも食い下がろうとする安織に、
 これ見よがしにため息をついて見せる。

 何故か伏せた目に表れているのは非難の色でも怒りでもなく、
 どこかほっとしたような安堵だ──だが、その理由が安織にはわからない。

( ^ν^)「……それに」

( ^ν^)「俺が事故ったことで助かったガキどもがいるらしいな」

 ネットで見た、とニュッは言う。
 安織はすぐに東屋の顔を思い浮かべた。


<_プー゚)フ『バイクのあんちゃんがいなかったらな、きっと、
       トラックが突っ込んでたのは塀じゃなくてハインらの集団だ』


(; Д )「……それは」

(; Д )「そん中には、俺の友人の妹もいたらしいっす」

( ^ν^)「へえ、驚いた。
       そいつはますます俺は事故に遭わざるをえないらしいな」

 ニュッは本当に驚いたようで軽く目を見開くと、そう言って笑った。

 それは須藤の言う得体のしれない笑顔ではなく、
 あくまでも普通の、ごく自然な笑い顔。


 それでようやく、安織は先ほどのニュッの瞳の安堵の意味を理解した。


 この人は、どうしようもなく強いのだ。
 だからこそ辛いことも隠し通せるし、泣き言だってそうやすやすとは零さない。

 きっと自分の中で完結できるのだろう。 
 まわりがニュッの現状に震えていようが泣いていようが、おかまいなしに。


 彼の安堵とは、今、そういう自分をはっきりと言葉にできたことにあったのだ。

151 名前: ◆3TZSFRho.I 投稿日:2016/04/04(月) 00:15:58 ID:kqFQgo/Q0

(;^Д^)「……なんか、俺、勘違いしてました」

( ^ν^)「勝手な奴だな」

(;^Д^)「すんません。でも多分、俺よりもずっと重くて、
      ずっとつらい勘違いをしてる人がいるんすよ、俺の身近に」

( ^ν^)「……それは」

(;^Д^)「うす。だからちゃんと、もっと」


 かたん。

 小さな物音に、つと安織の言葉がとまる。
 

ζ(゚ー゚*ζ「あーあ、安織くん。時計ちゃんとつけないから」

 椅子に座ってしばらく二人のやりとりを見守っていた長網が、
 呆れたように言った。

 時刻はいつの間にか18時過ぎ。
 三人が三人とも同じ方向を見て、同じ人物を見つめていた。



o川*゚ー゚)o「私、邪魔しちゃったかな?」

 より具体的に言うなら、
 病室の入り口で苦笑する須藤の姿を見つめていたのである。
 

                              [金曜日] 了

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